• ベンチャー企業の成長段階別事 業立ち上げプロセス (出展、松田修一『ベンチャー企業の経営と支援』 p116) 事業構想 ゼロベースで事業構想 企画・開発 明確な目的意識を持って企画・開発。この 段階ですでに、顧客対象への調査や取引 見込み先との関係作りを開始。 事業計画 それを受けて、事業計画を策定。 企業設立 エンジェルなどからの資金調達に成功すれ ば、その段階で一気に企業設立。 試行 この段階まできたベンチャーは成功確率が 従来型よりも高い。試行前の周到なマーケ ティングに反映された事業計画があること、 外部からの潤沢な資金と優秀な人材の採 用がポイント。 事業開始 試行を行い、事業・製品が出来上がる。事 業開始段階で、事業システム化のみならず、 管理システム化を行うことで事業拡大ス ピードが速くなる。 (事業システム化・ 管理システム化) 事業拡大 外部の監視下で事業開始、拡大を一気に 図る。 経営革新 1事業の成長鈍化、次へ。 • ベンチャー企業の成長段階別事業立ち上げプロセス (出展、同じ p119) (1)「事業構想」段階 • まだ企業になるかどうかわからない事業の構想を自 由に発想し、まとめていく段階。 • この段階で必要とされるもの、3つ。 – 卓抜な事業構想 – それを実現するためのコアスキル獲得の可能性 – センスの良い構想者の存在 • 『事業構想』は、単なるアイデアや発想ではなく、それ を一歩進めて、事業の中核部分(誰のどのようなニー ズに対して、どのようなソリューションを、いかなる方 法で提供するか)が明確になっていることが必要。 • さらに、それが時代の潮流をリードするものであるこ とに加え、他社の参入がそれほど用意でないもので あることが重要。 • 『コアスキル』(たとえば、超精密加工力、特殊材料の 調達力、強力な営業力、特別な顧客との関係、特殊 な業界での人脈、知的財産権、システム構造全体な ど)を他社に比べて優位に開発あるいは獲得すること が可能でなければならない • 『構想者』の資質。単に新しいことを考え出す能力だ けではなく、それがどの程度深い問題意識から生み 出されているのかが重要。また、それを現実のものに する実行力も求められる。 • これらの条件がそろってはじめて、その事業構想は 次の企画・開発段階に入っていくことが出来る。 • ベンチャー企業の成長段階別事業立ち上げプロセス (出展、同じ p119) (2)「企画・開発」段階 • この段階になると、ビジネスモデルが明らかになって くる。ビジネスモデルとは、「事業構想」から一歩進ん で、 – ①具体的な対象顧客と製品・サービス内容ならびにそ のメリットを明確にするとともに – ②それを実現する仕入れ、製造、開発、物流、回収と いった事業システムを明らかにしたもの。 – ③また、事業システムの運営コストと収入の発生パ ターンを明確にし、 – ④その結果、当事業に関わる全てのステークホルダー がメリットを受けるようにシステムを構築していることが 必要条件である。 • 資源調達面についてみると、 – 人材では、経営者に加えて、企画あるいは開発人材の 採用も視野に入ってくる。 – 資金面では、この段階では事業リスクが読めないため、 主に自己資金で手当てすることになるが、公的助成金 などを活用した資金調達も可能。 • この時期の経営者の資質としては、企画・開発力に 優れていることが最も重要であるが、幾人かの社員 が加わる可能性もあることを考えると、この事業を起 こす必然性、すなわち理念やビジョンを明らかにして いくことが求められる。 • ベンチャー企業の成長段階別事業立ち上げプロセス (出展、同じ p119) (3)「試行」段階 • この段階に入ると、事業色が一気に強まってくるため、この 段階で企業を設立するケースが多い。まだ事業会社ではな いが、一歩手前の事業開発会社とでも言える段階。事業の 進行状況で見ると、 – – – – • • • • • 製造業であれば試作開発、 ソフト会社であればベータ版開発・配布を行うまでになる。 流通業であればモデル店による営業活動がスタートし サービス業であれば一定の地域や顧客層にテスト的にサービ スが開始される。 コアスキルについても、すでに開発・獲得は終わっており、 特に知的財産権については、出願を済ませている。 この段階では、事業システムが60%程度まで固まっている 状態。ただ、最終的にどの事業者と正式に関係を結んで取 り組んで行くかについて選択の可能性を残している。 人材面については、数人以上が正社員として参加するよう になり、事業化にむけて一丸となって推進している。した がって企業として進む方向についても、しっかりした理念・ビ ジョンの確立が欠かせない。 試行開発のためには相当の資金が必要になるため、資金 調達は極めて重要になる。自己資金の豊富な経営者以外 は、外部からの調達に頼ることになる。ただ、まだ試作がで きていない中での資金調達となるため一般的なベンチャー キャピタル(VC)からの調達には苦戦することが多い。した がってエンジェル的な投資家、あるいは、シード専門のVC からの調達が中心とならざるをえない。 この段階から必要になるのが管理業務。まず組織管理で 重要なことは全員周知の意思決定。形式的なフォーマル化 も必要。また、実績管理についても、まずは資金繰り中心で はあるが、予算実績管理をスタートさせるとともに、個別業 務処理についての管理をスタートさせる必要がある。規定 類についても最小限のものを揃えて運用することが求めら れる。 • ベンチャー企業の成長段階別事業立ち上げプロセス (出展、同じ p119) (4)「事業開始」段階 • • • • • • • この段階は、本格的に事業を立ち上げるための極めて短い 期間。ただ、どのようなスタンスで事業を立ち上げるかが、 その企業の将来のポテンシャルを決める重要な時期でもあ る。 ある1事業について、「試行」段階でのトライアンドエラーを 繰り返して構築してきた事業システム、管理システム両面 の「システム化」を受けて、事業を一気に立ち上げる。これ まで同企業がネットワーク化してきたすべての人材、取引 先などとの関係をフォーマル化して、本格的に動き出す。た だ、さまざまな問題が発生してくるため、それらへの修正を 逐次かけながら動かしていく。極めて緊張感に満ちた時期。 人材的にも、各業務経験者を要所に配置しておき、その連 携についてもスムーズにいくような手はずを取る必要があ る。 「事業開始」のためには、相当の資金が必要。建物・装置な どの設置設備、サンプル品や在庫、売掛金などの運転資 金に加え、先行的な採用による人件費などが発生。顧客か らのクレームや検収待ちによる追加資金など、当初予定以 上の資金が必要となるため、余裕資金の用意が不可欠。 したがって、本格的なVCからの資金調達が必要で、事業 計画書を基にしたVCとの信頼の中で進めることが肝要。ま た、事業展開を一気に拡大させるために、戦略的に事業投 資家からの出資をあおぐことも視野に入ってくる。 クリティカルな時期であるため、管理体制については、タイ ムリーな運用体制が求められる。業務、資金繰りなどの状 況をリアルタイムに把握するとともに、迅速な意思決定が出 来るシステムの構築が求められる。その一方で外部からの 支援を得るために、オープンな体制を構築することが必要。 経営者には、このような状況をリードできるリーダーシップと、 冷静な判断力、体力が求められる。 • ベンチャー企業の成長段階別事業立ち上げプロセス (出展、同じ p119) (5)「事業拡大」段階 • この段階は、急速な成長を実現する時期。前段階で 高レベルの事業運営の仕組みを作り上げれば、急成 長を実現することも可能。ただこの時期には企業参 入が激しくなるうえ、顧客からもさまざまな要求が突き つけられる。これらに対して、企業としても常に新しい 製品・サービスを開発して、顧客の信頼を高めること が求められる。 • そのためには、コアスキルやそれに基づいたシステ ムを、より一層強化するための研究開発投資を持続 的に実践していく必要がある。 • 人材面でも、多彩な才能を持った人材を採用する必 要がある。そのためには、常にやりがいのある仕事を 創造できる環境を整備し、成果に対するインセンティ ブを高める制度の導入が不可欠。 • 企業としてのリスクが相当低下するため、資金提供 者は増えてくる。事業が順調であれば、株式公開が 視野に入ってくるため、資金が必要な場合はそれま での間のブリッジファイナンスを行うことになる。また 最近ではマザーズなどの開設で、この段階での株式 公募による調達も可能に。ただ、現在の問題は、株 価がオーバーバリューになりがちなこと。短期的に企 業は潤うが、その結果、従業員に対するストックオプ ションの行使価格が上がったり、株主もその後損失を 蒙ることになるなど、中期的にはデメリットが大きい。 適正なディスクロージャーと株価政策が求められる。 • 経営者の資質としては、事業の推進力に加えて、ス テークホルダー全体のメリットを考慮するバランスの ある経営力が求められてくる。 • ベンチャー企業の成長段階別事業立ち上げプロセス (出展、同じ p119) (6)「経営革新」段階 • この段階に入ると、すでにベンチャーマネジメントの 領域を越えてきている。「ある1事業」の成長力は鈍 化。新たな事業を立ち上げることが求められる。言い 換えると、次々に新しい事業を立ち上げることができ るマネジメント環境を整備する段階。 • この段階の最大の競争相手は「マーケット」そのもの。 • 2つ目、3つ目の事業では、経営者自らがその事業に 関われるという点で、企業の中で行うのが有利である ことが多い。ただそれ以上の数になってきたときには、 どうか。仕組みとして企業の中で新規事業を行うメ リットを提供し続けることができる企業になることが、 「経営革新」段階に入るための条件。 • 企業参加者が共感できる理念・ビジョンの共有化が 必要であるし、それに基づいた先見力のある事業ドメ インの設定とコアスキルの先行的蓄積などが必要。 そのためのインフラとしての事業システムはさらに強 化されなければならないが、ただ、その一方で環境変 化に対して柔軟でなければならない。また管理システ ムについても、参加者が納得できるシステム作りが必 要。 • 特に経営者には、これらの参加者の方向付けができ るビジョンの提示とリーダーシップが求められる。 • (参考、基本モデルは以下) • 事業立ち上げプロセス“基本”モデル (松田修一『ベンチャー企業の経営と支援』p113) 事業アイデア発 テクノロジー発 調査会社 1)事業構想 1)研究 研究会社 企画会社 2)企画 2)開発 開発会社 事業開発会社 3)事業試行 事業開発会社 事業会社 4)事業開始 事業会社 事業会社 5)事業拡大 事業会社 事業会社 6)多様化 事業会社
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