経営学総論B(風間信隆) ドイツの企業統治 コーポレート・ガバナンス 加盟国 27ヶ国(2008年現在) 人口:4億9千万人 GDP:14兆9530億ドル 単一通貨=€ (ユーロ)の導入は15ヶ 国) 外国人 :734万人 (≒9%) 人口は8,231万 人(2006年末)。 首都はベルリン (約339万人)で、 同国最大の都 市。 16の州 一人当たりGDP ― 世界[18] ― 欧州連合[19] 1 ルクセンブルク 2 ノルウェー 83,922.50 2007年 3 カタール 72,849.07 54,311.61 4 アイスランド 63,830.08 5 アイルランド 59,924.42 6 スイス 58,083.57 主要国のGDP の国際比較(2007年) GDPランキング(2007年) 順位 ― 国名 世界 8,354.95 33,251.80 104,673.28 ― 欧州連合 16,830.10 1 アメリカ合衆国 13,843.83 7 デンマーク 57,260.95 2 日本 4,383.76 8 スウェーデン 49,654.87 フィンランド 3 46,601.87 ドイツ 3,322.15 9 10 オランダ 46,260.69 4 中華人民共和国 3,250.83 11 アメリカ合衆国 45,845.48 12 イギリス 45,574.74 13 オーストリア 45,181.12 5 イギリス 2,772.57 6 フランス 2,560.26 14 カナダ 43,484.94 7 イタリア 2,104.67 15 オーストラリア 43,312.32 16 アラブ首長国連邦 42,934.13 8 スペイン 1,438.96 17 ベルギー 42,556.92 18 フランス 41,511.15 19 ドイツ 40,415.41 20 イタリア 35,872.42 21 シンガポール 35,162.93 22 日本 34,312.14 出所:ウィキペディア国の国内総生産順リスト http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E3%81%AE%E5%9B%BD%E5%86%85%E7%B7%8F%E7%94%9F% E7%94%A3%E9%A0%86%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88 ドイツの就業構造(2003年) 農林漁業 製造業(炭鉱・建設・電力を含む) 加工組立産業 928 10418 7734 自動車 929 機械製造 1169 電機 1125 化学 568 サービス業 26900 全産業部門 38246 (千人) 20.2% サービス経済化 70.3% 出所:ドイツ連邦統計局ホームページより作成。 ドイツの企業(1万7500€以上の売上高のある企業) 経済部門 全部門 納税義務のある企業数(千) 売上高(億€) 一企業あたりの売上高(百万€) 2915 42481 1.46 71 247 0.35 鉱業 3 266 9.10 建設 317 1867 0.60 製造業 279 15323 5.49 小売 412 4289 1.04 不動産 794 5038 0.63 電力 12 1783 14.3 金融 15 2426 15.8 農林漁業業 出所:ドイツ連邦統計局ホームページより作成。 ドイツのモノづくり メード・イン・ジャーマニー 1)ドイツの工業には約5万社(就 労者数・640万人)、売上高総 額(1.4兆€) 2)全体の約98%を占める企業が 従業員数500人以下の中小企 業(工業分野の全就労者のう ちの4割が働く) 3)全工業製品の3分の1以上は 輸出 4)なかでも自動車産業、機械工 業、化学産業は依然として高 い国際競争力を保持している ドイツ・マイスター制度の象徴 80%以上が従業員数200人以下の中小企業 輸出比率(売上高に占める国外売上高の比率) 1991年 2001年 機械・プラント 52% 69% 自動車 43% 69% 化学 50% 70% 電機 31% 42% 出所:ドイツ連邦共和国外務省 『ドイツの実情』2003年235- 236頁および280頁参照。 出所:『平成20年版 経済財政白書』144頁。 出所:http://www.h4.dion.ne.jp/~syj/ereport/e2005_12_30_2.htm 出所:http://www.shiruporuto.jp/finance/tokei/stat/pdf/data02a.pdf(最終アクセス日:2008年9月17日) ドイツの株式会社 1960年 2627社 1965年 2541社 1970年 2305社 1975年 2188社 1980年 2147社 ノイア・マルクト 272 1985年 2148社 自由取引 163 1990年 2685社 1996年 4043社 1997年 4548社 1998年 5468社 1999年 7375社 2000年 10582社 2001年 12116社 ドイツ上場企業の数(2001年末) 1)フランクフルト取引所 2003年 公式取引 廃止 規制市場 2)その他の取引所 1)ドイツ再統一(90年) 2)経済のグローバル化 3)ITベンチャー・ブーム 出所:Deutsche Aktieninstitut,Factbook,August,2001,01-1参照。 359 118 167 ドイツの株式会社(AG)の数の推移 16,000 Anzahl Aktiengesellschaften 14,291 13,713 14,000 13,598 Bösenkapitalosierung in 100T€ 12,040 12,000 10,582 10,000 9,316 8,000 7,586 6,000 4,000 5,458 5,287 4,050 2,943 2,873 3,085 3,957 3,527 4,223 4,041 3,780 7,375 4,548 2,000 0 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 世界の主要証券取引所の上場会社数 主要証券取 引所 2004年末 2001年末 国内会社 外国会社 上場会社数 国内会社 外国会社 上場会社数 1,834 459 2,293 1,939 461 2,400 NASDAQ 2,889 340 3,229 3,618 445 4,063 東京証券取 引所 2,276 30 2,306 2,103 38 2,141 ドイツ証券取 引所 660 159 819 748 235 983 ロンドン証券 取引所 2,486 351 2,837 1,923 409 2,332 NYSE 出所:http://www.hi-ho.ne.jp/yokoyama-a/torihikisho.htm 2.(付加価値産出額) 上位最大100社の企業形態 企業形態 1992年 2002年 株式会社(AG) 69 74 有限会社(GmbH) 15 7 株式合資会社(KGaA) 2 2 合資会社(KG) 4 3 合名会社(OHG) 2 1 協同組合(eG) 0 1 有限合資会社(GmbH & Co.KG.) 3 3 相互保険会社1) 0 2 公法人(Körperschaft öffentlichen Recht) 0 3 その他(財団、公法人2)分類不可能) 5 5 100 100 出所;Monopolkommission,Hauptgutachten,1994/1995, Baden-baden,1996,S.256.ibid., 1998/1999,1999,S.230 und 2002-2003, S.234より作成した。 ドイツにおける資本市場のインフラ整備 1990 年 第1次「資本市場振興法」 ドイツ先物取引所の設立、ドイツ証券取引所の電子取引・情報システム(IBIS)の導入、有価証券取引税 等の諸税の廃止、債券の発行認可制度の廃止等 1994年 第2次「資本市場振興法」 証券取引法の制定(連邦証券取引監督庁の創設、インサイダー取引規制の導入)、取引所法の改正(州政府、各 取引所の取引監督権限の拡大、公認仲立人の売買制約の緩和等)、投資信託会社法の改正(MMF 解禁等)、株 式法の改正(株式の最低額面引下げ[50 マルク→5 マルク]、金融機関の自己株式保有の解禁) 1997年 第3次「資本市場振興法」 資本市場利用促進(証券取引所への上場基準の緩和、上場手続きの簡素化、外国企業への上場促進、上場廃 止基準の制定)、投資家保護強化、投資信託に関する規制緩和(新しい形態の投資信託の認可、投資の運用規制 緩和)、ベンチャーキャピタルの促進 個人の株式投資についての優遇策 ①ドイツ財産形成制度において、株式や株式投信に投資した 場合、年間800マルクを限度として貯蓄奨励金の支払い、②税制面での優遇措置(キャピタルゲイ ンについて原則非課税、損益通算) ドイツ株式市場の活況(DAX指数 91年1577.3 → 99年6958.1 ←ITベンチャー・ブーム 出所:http://www.scbri.jp/PDFgeppou/2003/2003-02.pdf ドイツ100大企業の上位15位(2002/03年年付加価値生産額順位) 順位 企業名 経済部門 1 ダイムラー・クライスラー 自動車 61,400 191,574 2 ドイツ・テレコム 通信 35.207 175,586 3 ジーメンス 電機 41,200 175,000 4 フォルクスワーゲン 自動車 65,308 167,005 5 ドイツ・ポスト 通信 23,068 219,067 6 E.ON 電力 27,990 74,748 7 ドイツ鉄道 交通 18,685 259,241 8 RWE 電力 28,003 76,202 9 ローバート・ボッシュGmbH 自動車部品 21,137 94,050 10 BMW 自動車 35,835 76,143 11 ティセッセンクルップ 鉄鋼 19,856 103,123 12 ドイツ銀行 金融 687,069 53,915 13 ドイツルフトハンザ 交通 14,367 57,201 14 メトロ 流通 27,704 111,637 15 ミュンヘン再保険 保険 34,229 31,063 売上高 出所;Monopolkommission,Hauptgutachten, 2002-2003,Baden-baden, S.217より作成した。 従業員数 ドイツ100大企業の企業の資本参加状況 資本参加状況 企業数 1982年 1992年 1998年 2002年 外国単独過半数所有 16 16 17 25 公的機関による過半数所有 11 11 13 11 個人・同族・同族財団による過半数所有 25 19 18 19 50%以上の分散所有 23 29 22 22 DGBおよび傘下個別労働組合による過半数所有 2 0 0 0 その他所有主体による過半数支配 3 5 9 8 過半数所有主体なし 20 20 21 15 出所;Monopolkommission,Hauptgutachten,(1984), S.119.( 1994 )S.215.(1999) S.265. (2003) S.266 より作成した。 ドイツ非金融法人の金融負債残高 1992年 1993年 1994年 1995年 銀行借入 749.9(45%) 786.6(40%) 784.1(38%) 金額単位: 826.6(40%) 10億€ 株式 435.5(26%) 620.2(31%) 642.8(31%) 670.9(32%) 負債合計 1668.3(100) 1977.1(119) 2048.9(123) 2068.3(124) 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 1004.3(34%) 1077.2(31%) 1202.5(35%) 1343.3(37%) 1357.1(43%) 1311.0(44%) 1654.5(48%) 1414.4(39%) 1309.4(36%) 754.6(24%) 2993.3(180) 3473.4(208) 3620.1(217) 3643.6(218) 3142.4(188) 出所:日本政策投資銀行『ドイツにおける一般企業の資金調達と金融シス テム』(駐在員事務所報告:F-87)、3-4頁を参照。 (2007年末) 出所:『平成20年版 経済財政白書』143頁。 企業統治(Corporate Governance) 背景:① 大規模株式会社における所有と経営の分離 →専門経営者の登場と経営者支配 ② 相次ぐ企業の不祥事→企業不祥事への対応 ③ 構造的な低収益構造→企業競争力の強化 →経営者は誰の利益のために経営すべきか? →経営者を誰が、いかに監視・チェックすべきか? →経営者の動機付けをいかにすべきか? 市場指向型ガバナンス 資本市場の規律 アングロ・サクソン型 機関指向型ガバナンス 銀行・労組の影響力 日本・ドイツ型 株主重視経営 企業(株主)価値重視 共生型経営 企業の社会性・ステークホールダー重視 金融機関による「企業支配」 「金融機関による企業支配」 ⇒銀行による産業会社の大量の株式保有と「寄託議決権制度」による議決権保有 ⇒産業会社への監査役派遣 ⇒大規模な融資による影響力 銀行権力(die Macht der Banken)[ドイツ銀行・コメルツ銀行・ドレスナ-銀行] =ユニバーサル・バンク制度(銀行業務と証券業務の兼営) 寄託議決権制度(Depotstimmrecht) =銀行が機関投資家や個人投資家より寄託された株式について株主の委任に基づき株主総 会で行使する議決権 →一般の株主がその議決権の行使を特定の銀行に全面的に寄託する制度 ドイツ銀行によるポスト・バンク実質傘下に組み込む コメルツ銀行によるドレスナー銀行の買収 巨 大 金 融 機 関 巨大銀行による経営監視 株式保有+寄託議決権 監査役会役員派遣 大量の資金貸付 巨 大 産 業 企 業 株 式 の 相 互 持 合 巨 大 産 業 企 業 労使共同決定 資本会社=株式会社と有限会社 拡大共同決定法 (1976年) モンタン共同決定 (1951年) 経営組織法 (1952年) モンタン産業以外の、 従業員2千名以上の 資本会社 石炭・鉄鋼 従業員5百名から2 千名未満の資本会 社 労資同数方式1) 労資同数+1(中立 代表)方式 3分の1方式 監査役会の規模 12名・16名・20名 (従業員数に応じて) 労働側:6・8・10 資本側:6・8・10 11名・15名・21名労 働側:5・7・10 資本側:5・7・10 中立 :1・1・1 3名・6名・9名 労働側:1・2・3 資本側:2・4・6 適用分野 人事・労務担当執 行役については労 働側代表監査役の 承認 1)但し、監査役会会長は必ず出資者側代表から選出され(副会長は労働側 から選出)、この会長は2票目の投票権を保持する。 ドイツのトップ・マネジメント組織 株主総会 (Hauptversammlung) 出資者代表 監査役会 二 層 型 組 織 労働側代表 (Aufsichtsrat) 組織的・人的分離 執行役会 (Vorstand) 労働組合代表 従業員代表 監査役会(従業員2000名以上) 監査役の人数:法律により規定され、12・16・20名 (うち半数は労働側代表) 任期は4年 任務 : 業務執行の監督機関 1) 執行役会役員の選任・解任 2) 業務執行の継続的監督 3) 会計の監査および年度決算書の確定 4) 業務執行措置に対する事前同意権(定款の規定による) 監査役会が取締役の業務執行を監督する手段 1)情報入手権(取締役の報告義務・取締役への情報請求権) 2)会社の帳簿・財産の閲覧・調査権 3)決算書の監査権(取締役から提出された決算書および利益処 分案等を監査し、その結果を株主総会に報告) 執行役会(Vorstand) ①執行役会の構成 1)人数は2名以上(資本金300万€以上) 2)監査役会により、1名の執行役会会長の指名 3)監査役と執行役の相互兼任禁止 4)任期は5年 ②執行役の任務:業務の執行 1)執行役は自己の責任で会社を指揮する 2)業務執行および会社代表に関して、複数の執行 役が共同して行うことを原則とする ドイツ型ガバナンスの問題点 ①金融機関(銀行)の強い権力 ⇒間接金融優位・資金調達コストの高さ ⇒経営の保守的体質・イノベ-ションの遅れ ②労働者側の経営参加→労働組合の大きな影響力→ 世界一高い労働コストと短い労働時間 ③監査役会の無機能化←メタルゲゼルシャフト事件 (1993年に発覚した石油先物取引の失敗による巨額損失) ④資本市場のグローバル化→国内規準の国際的調和 化・透明性の確保・国際競争力の確保 ドイツのユニバーサル・バンク(銀行業務と証券業務を兼業 する銀行形態)・システム 金融機関数では97%、総資産ベース及び貸付額ベー スでも75%程度を占める。 出所:日本政策投資銀行『ドイツにおける一般企業の資金調達と金融システム』(駐在員事務所報 告:F-87)、11頁を参照。 ドイツ4大銀行 総資産額 従業員数(万人) (10億ユーロ) ドイツ銀行 840 65,417(うち41.4%国内) ドレスナー銀行 524 35.946(うち82.7%国内) コメルツ銀行 425 32,820(うち90%国内) 出所:各行ホームページ参照。 出所:http://www.campus.ne.jp/~labor/toukei/jikan_kokusaihikaku.html 主要国の単位労働コスト (全産業、製造業米ドルベース日本=100) 出所:http://wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wpdocs/hpaa200201/b0076.html 企業領域における監督および透明性に関する法律 (Gesetz zur Kontrolle und Transparenz im Unternehemnsbereich) (KonTrag:1998年) 監査役会の監視機能の強化による「経営の透明性」向上と「リス ク管理の法的整備」 ①執行役会の説明責任を明確化し、執行役会が財務計画、投 資計画、人事計画などを定期的に報告することを義務付ける ②監査役の兼任数を10社まで、監査役会会長の兼任を5社まで に制限する ③監査役候補者は現在の兼任状況を株主総会に報告しなけれ ばならない ④上場企業は監査役会の開催回数を年2回以上から年4回以 上に増加させる。 ⑤決算審議監査役会に会計監査人の出席を義務付ける→監 査役会と会計監査人との連携強化 ドイツ企業統治規範 (Der Deutsche Corporate Governance Kodex:2002年) 1.株主の権利の保護(1株1票の原則:複数議決権等は禁止) 2.情報アクセス権の株主の平等性 3.執行役・監査役の報酬基準(固定的部分と変動的部分により 構成)の明確化 4.監査役会の中への各種専門委員会(とくに監査委員会:とくに計算 およびリスク管理問題、決算監査人への監査の委託・独立性問題、監査の重点の決定、監査報酬の決 )の設置 5.上場企業の執行役は監査役職を5社を越えて兼務すべきで はない。また監査役会の職等の副業は監査役会の同意を得 てのみ引き受けることができる。 定 出所:正井正筰著『ドイツのコーポレート・ガバナンス』成文堂、2003年、 第10章に詳しい。 Ⅲ.VW社のトップ・マネジメント組織と多元的企業統治構造 VWグループの生産・販売台数の動向 7000 6000 5000 4000 3000 2000 1000 国内販売成熟化 世界販売台数 世界生産台数 国内販売台数 国内生産台数 20 06 年 20 05 年 20 04 年 20 03 年 20 02 年 20 01 年 20 00 年 19 99 年 19 98 年 19 97 年 19 96 年 19 95 年 19 94 年 19 93 年 19 92 年 0 海外販売台数 海外生産台数 出所:VW,Geschäftsbericht,2001,S.142f. und ibid., 2006, S.75.のデータに基づいて作成。 32 VWコンツエルンの生産拠点と生産台数シェア(2006年) 欧州 22拠点(68%)うちドイツ国内 は8拠点(34%) 北米 1拠点(6%) アジア 3拠点(12%) 南アフリカ 1拠点(2%) 南米 5拠点(12%) 出所:VW Geschäftsbericht,2006,S.92. VWの2008年1-3月期で販売が27万 台(18.4%)とドイツ国内の25万台を 上回る (『日本経済新聞』5月1日) 69.4万台(06年)→93,0万台(07年) Beetle フェルディナンド・ポルシェ博士の開発した「カブト虫」(累計 Golf1(1974年発売後のVWのフラッグ シップカー) 2,153万台生産:4輪乗用車世界最多量産記録 ) 33 VW地域別売上高(2006年) 欧州全体で71.3% 出所:VW Geschäftsbericht,2006,S.72. Wolfsburg本社工場(生産能力:70万台) 34 AUDI Ingolstadt・ Neckarsulm VW工場名 主要製品 従業員数 Wolfsburg Golf 49,200 Emden Passat Hanover Transporte r Salzgitter エンジン Kassel 変速機等 Braunschwei gVW Sachsen アクスル部品 Mosel Zwickau Golf・ Passat Chemnitz エンジン 8,800 14,900 6,900 14,900 主要製品 6,300 従業員数 6,200 900 Automobilmanufaktur Dresden GmbH Dresden 400 フェートン 数字はフォーイン編『2007年欧州自 動車産業』119頁を参照。 35 VWの東欧進出 Poznan Mlada Boleslav Bratislava Pamplona Györ Palmela 出所:マイクロソフト・エンカルタ(2006年) 36 VWの欧州新設生産拠点展開(1990年以降) 工場名 所在地 VW Sachsen GmbH ドイツ Automobilmanufakutur Dresden GmbH ドイツ Dresden 1998 400 Auto Europa Automoveis ポルトガル Palmela 1991 2700 VW Pozen Sp. Z.o.o. ポーランド Pozen 1993 4600 VW Motor Ploska Sp. Z.o.o. ポーランド Plokowice 1998 1090 Bratislava 1991 Maltin 2000 Mosel Chemnitz 設立年 従業員数* 生産者名 1990 6200 900 8200 VW Slovakia a.s. スロバキア SEAT S.A. スペイン Martorell 1993 10400 Audi Hangaria Motoren Kft ハンガリー Györ 1993 5022 1991 23500 Mlada Boleslav Skoda Auto a.s. チェコ Kvasinz Vrchlabi *従業員数は2005年現在 出所:FOURIN『欧州自動車産業2007年』117‐118頁参照した。 37 VWコンツェルンの連結業績(2007年度) 販売台数:621万台 売上高:1089億€(約17.5兆円) (参考:トヨタ約26.3兆円) 営業利益 61.5億€ 純利益 41億€ 自己資本利益率:16.1% VW Konzern, Geschaeftsbericht,2007,S.4. (約6500億円) (『日本経済新聞』 2008年3月14日) 38 VWグループの グローバル・マルチ・ブランド化戦略 ドイツ イタリア ドイツ スペイン フランス 英国 チェコ ドイツ Volkswagen Konzern 39 VWグループの グローバル・マルチ・ブランド化戦略 VW法 ポルシェ家・ピエヒ家 07年欧州司法裁判 所は資本の自由な 移動を認めるEUの 法令違反判決 50% Porsche SE 持ち株会社 100% 31% ポルシェ →75%超取得へ VW AG 金融サービス部門 レ ン タ カ ー 事 業 金 融 サ ー ビ ス (68.6%) ニーダーザクセン州政府 自動車事業部門 事商 業用 車 スカニア 20% Man ラ ン ボ ー ル ギ ー ニ ー ブ ガ ッ テ イ ベ ン ト レ ー 高級4ブランド ア ウ デ ィ シ ュ コ ダ セ ア ト ゲフ ンォ ル ク ス ワ ー 量産3ブランド 40 1976年拡大共同決 定法適用対象企業 Volkswagenのトップ・マネジメント組織 執行役員の選・解任 年次決算書の承認 重要事項に対する同意権 監査役会(Aufsichtsrat) 出資者代表 業務執行監督機関 労働側代表 選・解任権 執行役会(Vorstand) IGメタルの 組合員 業務執行機関 41 年4回定時+ 臨時3回会議 開催 多元的企業統治モデル VW監査役会(Aufsichtsrat)メンバー 出資者側代表 労働側代表 1 会長 F・ピエヒ(元VW執行役会会長) 副会長 J. ペータース(IGメタル会長) 2 M.フレンツェル(TUI執行役会会長) B.フレーリッヒ(IGメタル本部役員) 3 H.M.ガウル(E.ON執行役会役員) O.クンツ(IGメタル本部役員) 4 J.グロスマン(Georgmarienhuette Holding CEO) B.オスターロー(VWコンツエルン事業所評議会議長) 5 H.P.へルター(ポルシェ執行役会役員) B.ヴェーラウアー(VWコンツエルン事業所評議会副議長) 6 W.ヒルヒェ(ニーダーザクセン州大臣) P.ヤコブス(エムデン事業所評議会議長) 7 R.エクター(ドイツ有価証券保護連盟会長) H,ゼフィア(VW商用車部門事業所評議会議長) 8 H.v.ピエラー(ドイツ銀行監査役) J.シュトゥンプ(カッセル事業所評議会議長) 9 W.ビィーデキング(ポルシェ執行役会会長) P.モッシュ(アウディ事業所評議会議長) C.ヴルフ(ニーダーザクセン州首相) W.リトマイヤー(VWマネジメント執行役会会長) 10 , 出所:VW Geschäftsbericht 2007,S.193ff. 42 監査役会内各種委員会 幹部会(Präsidium) F・ピエヒ(委員長) W.ビィーデキング C.ヴルフ J. ペータース(副委員長) B.オスターロー B.ヴェーラウアー 仲裁委員会(Vermittlungsausschuss) F・ピエヒ(委員長) C.ヴルフ J. ペータース(副委員長) B.オスターロー 監査委員会(Prüfungsausschuss) H.P.へルター (委員長) H.M.ガウル B.ヴェーラウアー (副委員長) B.フレーリッヒ IR委員会(Ausschuss für Geschäftsbeziehungen mit Aktionären) R.エクター (委員長) M.フレンツェル W.リトマイヤー (副委員長) B.ヴェーラウアー 出所:http://www.volkswagenag.com/vwag/vwcorp/content/de/investor_relations/corporate_governance/organe.html(2008 43 年5月10日アクセス) VWの株主構造(2000年12月末) VWの株主構造(2006年12月末) (%) (%) 個人投資家 41.1 個人投資家・その他 35.5 外国機関投資家 23.3 外国機関投資家 23.9 ニーダーザクセン州 13.7 ニーダーザクセン州 14.8 国内機関投資家 12.1 国内機関投資家 自社株 9.8 ポルシェ社 5.8 20.0 注)優先株式および普通株式全体に占める割合。2007年の日本経済新聞の報道によ れば,議決権ベースでは,ニーダーザクセン州は20%,ポルシェ社が31%を占める(『日本 経済新聞』2007年9月5日付記事)。その後ポルシェ社は100億€(1.6兆円)を投じてVWを 子会社化することが方針決定(『同』2008年3月5日付記事) 出所:VW Geschäftsbericht, 2001,S.16.および2006,S.30. 44 Ⅳ.ドイツの大量失業問題とVW社の社会的責任 ザクセンアンハルト州 202.996人 / 失業率 15.5% (2007) ニーダーザクセン州 出所:JETRO(日本貿易振興機構)HP(アクセス:2007年9月27日) 45 http://www3.jetro.go.jp/jetro-file/search-text.do?url=13001521 Auto 5000(5000×5000 )プロジェクト成立の背景 1.シュレーダー政権(当時)とVW首脳陣との親密な関係 →当時の大量失業問題を背景とする「雇用のための同盟」 →Auto 5000プロジェクトの背景として政治的背景 2.VWの(部分)公企業としての性格 3.VW国内工場のニーダーザクセン州への集中(新連邦州拠点を除く) →コミュニティとの強い繋がり 4.VW社内でのIGメタルの影響力の強さ →労使協調的企業文化 46 Auto 5000プロジェクトと企業の社会的責任 VWによる持続可能な発展に対する戦略的貢献 株主価値の向上 グループ環境方針 国際的環境管理 環境に配慮した製品革新 透明性の高い環境コミュニケーション 外部との協力 エコロジー 「社会的権利・労使関係に関する宣言」(2002年6月) より柔軟な労働条件 グループ・グローバル事業所評議会 ダイナミックな報酬体系 社会 グローバルコンパクト1)の支持 経済 顧客満足 自動車生産におけるモジュール戦略 モビリティ・サービス 柔軟な生産 地域の構造的発展:AUTOVISON2) 注 1)1999年1月にアナン国連事務総長(Kofi A. Annan, Secretary-General of the United Nations)が環境と社会に配慮したグローバル化 への自発的な取組みを多国籍企業に対して唱え,人権,労働基準および環境保護に関する9原則に基づいている. 2)アウトビジョン(AutoVision GmbH)は,VWとヴォルフスブルク(Wolfsburg)市が失業者の半減を目指して1998年に設立した企業で約5 千人の雇用を新たに生み出した. 出所:Volkswagen, Environmental Report 2003/2004, p.15【『環境レポート2003・2004』(日本語版),15頁】【一部日本語訳を変更】. 47 2003・2004年版『環境報告書』の中で,当時のVW人事担当執行役員で あったハルツ(P. Harz)以下のように述べている。すなわち, 「VWは社会的責任を新たに定義した。企業が社会的責任を果たすために, 従業員の職業能力の継続的向上(エンプロイアビリティ)を図り,定年退職に 至るまでの雇用の可能性が開かれるようにしなければならない。さらにVW は事業を営む地域社会においてパートナーとしての役割を果たそうとして いる。」 また同報告書はVW社のCSRの3大原則として,1)既存の仕事の確保と 新たな雇用の創出,2)職業能力の継続的向上そして3)従業員参加の実 現を掲げ,「社会的責任を一貫して果たし続けることによって『ワークホール ダーバリュー(workholder value)』を長期的に高めていく」ことを強調してい る。 出所:Volkswagen, Environmental Report 2003/2004, pp.90-91. VW社『環境レポー ト2003・2004』(日本語版)7-8頁 。 すでに1994年,当時の国内従業員10万人の30%にあたる3万人の余剰人員の解 雇を回避するために,週休3日・28.8時間労働のワークシェアリングを実施したこと で知られており,伝統的に従業員の雇用の確保・安定に大きな責任を果たしてきた ことで知られている。 48 Auto 5000プロジェクトの概要 “Ohne Wettberbsfähigkeit keine Standortsicherung” (競争力なくして生産拠点の保証はありえない) ゴルフをプラットフォームとするミニバン Microbus Touran 本社ボルフスブルグ工場 で3500人を新規雇用 Golf Touran年間生産台数 2003年 137 2004年 189 2005年 185 2006年 178 千台 2001年北米自動車 ショーで発表されたコン セプト・カー ドイツ・ハノーバー工場で 1500人を新規雇用 失業者5千人を5千マルク で新規雇用 2005年計画中止 トゥーラン(VW) TSI Trendline TSI Highline 275万円 325万円 ティグアン 49 VW・ボルフスブルク本社工場 50 ボルフスブルク本社工場 工場建屋 日産:4千台、49,700人(うち2万3千人のブルーカラー労働者) Auto 5000 GmbH (2001年9月設立) 事務棟 従来“Lupo”を生産し ていた跡地の利用 Halle 10 Halle 9 Halle 8 →車体・塗装・組立て部門 バッフア 2007年秋発売されたSUV Tigan の生産決定(05年) VW Microbus Hannover工場で生産予定 (2007年) VW Touran(日産:8百台) 51 Ⅴ.Auto 5000プロジェクトと協約革新 VW企業内労働協約(Haustarifvertrag)から独立したAuto5000社従業員に適用される 協約:2001年9月締結(2006年3月まで有効) プロジェクト労働協約 :週平均35時間労働(42時間まで延長可 能)(6週間の休暇+病休6週間の休暇) :5000DM(約2500€)の統一的報酬制度 :完全な解雇保護権 ニーダーザクセン州金属産業の域内包 括労働協約の労働条件(但し,VW企業内 協約より20%低い報酬水準) 職業資格形成協約 :週3時間の職業資格形成時間(うち半分 のみが有給) :「学習する工場」(職場内訓練:労働=学 習の結合) :「商工会議所」(IHK)職業資格取得 拡大された共同決定協約 共通の事業所評議会についての労働協 :Auto5000GmbHの監査役会(出資者側6 約 名+労働側6名)(資本参加等の重要事 :VWとAuto5000 のボルフスブルグ工場共 項は労働側代表の支持なくして決定でき 通の事業所評議会 ない) :生産立上げ前にVWボルフスブルグ事業 :生産計画,業績給,労働時間規制など 所委員会の4名の委員から構成される については事業所協定 (Prozesspapiere) 「Auto 5000委員会」が設置され,労働者 出所:Helmut Meine/Helga Schwitzer, Neuland erfolgreich bearbeitet, M, Schumann(2006),Ibid.,S.29. 52 保護機能。 Auto 5000社の労働協約の特質: 1.VWボルフスブルグ本社工場の従業員の報酬よりも20%下回る(基本給 4500DM+最低成果ボーナス500DM *‐1 )が,ニーダーザクセン州金属産業の地 域別労働協約水準で,全ての直接生産部門の従業員に統一的に適用される平 等な賃金【概括的・分析的職務評価(die summarische oder analytische Arbeitsbewertung)による賃金格付け*‐2の放棄】。 *-1 6ヶ月の試用期間中は4000DMとされた。 *‐2 VW企業別労働協約(Haustarifvertrag)では22報酬等級と400以上の仕事内容分析に基づく報 酬格付けによる賃金決定が行われている。 2.生産計画遵守報酬(Programmentgelt)制度:「チームがシフト内の生産台数と 品質に関する生産計画が実現されることに責任を有している」とされ,もし生産台 数と品質が達成されず,それがチームの責任であれば追加的手当てなしに残業 (1シフトあたり0.5時間まで)を引き受けなければならない。 → 経営側と労働側とで「生産計画未達成」の把握(8つの欠陥分類の確定)と責任の帰属に関する 詳細な手続きを取り決める経営協定(Prozesspapier)(2002年11月)の締結 →「Auto 5000社では重要な係争事項になっていない。技術的・組織的撹乱がより頻繁に生じていた 生産立上げ段階では,通常,疑わしい場合には経営側が責任とコストを引き受けている。」(H. J. Sperling, ibid. In M. Schumann(2006), ibid. S.77.)「実際,残業のケースの95%は有給である。」(H. Meine,et.al. , ibid. In M. Schumann(2006), ibid,S.30 ) 53 Auto 5000社の労働協約の特質: 3:個人業績給:(前年の会社の業績に対する)最初の業績給の支給(2005年) :平均1000€(800€~1200€) :個人別業績給支給基準と方法に関する経営協定【4つの次元(生産台数・コスト・ 動機付け・品質)の評価とそれを確認する12の指数に操作化) → 2005年の最初の評価では,製造領域での欠陥指数,チーム・ミーティングへ の出席状況および健康状態) → 従業員・事業所評議会の異議申し立て権 (この個人能率ボーナス制度のほかに利益参加制度(Ergebnisbeteiligung)があるが売上高利益率目標が未達成で あったためプログラム期間中その支給はなかった) 4:VWボルフスブルグ工場の28.8時間(当時)の週労働時間よりも長い週35時間労働* :週42時間までの一層の柔軟化が可能(シフト交替や受注状況に応じて週7時間、年間200 時間までの労働時間延長が認められる。残業時間は個々の従業員の「労働時間口座」に カウントされ、会社側はこの口座の残り時間を利用することで、必要なら土曜日の3交替操 業) :通常の労働日としての土曜労働 :週3時間のOJT中心の職業訓練時間:うち1.5時間のみ有給 *2006年11月に旧西ドイツ内の6工場で従業員の標準労働時間は週28.8時間(週休3日 制)から最長34時間に引き上げられた(『Fourin 欧州自動車産業2007』113頁)。 54 2006年3月31日のプロジェクト労働協約の終了に伴い,新たな協約改定交渉 :Auto 5000社のIGメタル組合員から選出された16名の協約委員会が設立 (組合要求:5%の賃上げと27€の財産形成もしくは基礎年金負担) :Auto 5000の生産従業員の90%以上がIGメタルにより組織(2006年3月には Auto5000社の従業員は事業所評議会のメンバー選出に参加し,IGメタルのリストに 85%以上が同意した。 :3回の交渉の後で,IGメタルはAuto5000の従業員に警告ストを呼びかけ,それぞれ のシフトでほとんどの従業員が約3時間の職場放棄に参加。 :2006年6月の25時間に及ぶ第4回協約改定交渉で妥結 現代的労働者タイプ(SOFI):「一面では経営と一体化しており,仕事への コミットメントと自己責任を通して企業の成功に大きく貢献したいという意 欲を持っている。しかし,他面では,包括的な利害の一致は想定されない。 自己の利害の貫徹のためには会社と対立することも辞さないとする利害 理解が典型的である。」 出所:H.Meine/H. Schweizer,Neuland erfolgreich bearbeitet, In. M. Schumann et.al.(2006), ibid., S. 34 55 VW Auto 5000社採用プロセス 2001年9月にVWの企業別労働協約とは独立した新しい労働協約が締結され,Auto 5000GmbH設立 採用条件:①失業もしくは失業の脅威に晒されているもの,②金属関連職業教育を受け ていなくても自動車業界で働いた経験がなくも良い,③「大きな自己責任」「学習能力と意 欲」「誠実さと産業親和性」を重視する. 2001年11月に最初は職業安定所を通して採用開始,その後,2002年3月から03年5月 までインターネット採用に転換 Auto5000社HPへの閲覧200万回超 第1段階:インターネットでオンラインによる採用試験:応募者=48000人 約2万人弱が応募 第2段階:地域のジョッブ・センターでのコンピュータを活用した採用試験 約12500人の応募 第3段階:地域のジョッブセンター内での面接・集団討議 約 6200人の応募 地域内の職業教育機関での基礎的事前職業教育(3ヶ月間) (理論教育+実務教育) Auto5000社での職業訓練教育(6ヶ月間の期限付き雇用) 期限の定めのない雇用関係(05年以降約3500人) 56 採用された従業員の属性 :10人のうち9人は応募時点で失業していた。10人に1人が転職者であったが,いずれも 失業の脅威(整理解雇の通知等)に直面していた。 :マイスターの操業エンジニア(Betriebsingenieur)の3分の2は失業していた。 :生産要員の3分の1と操業エンジニア(BI)の4分の1は6ヶ月以上失業していた。 :平均年齢(32歳:18歳から57歳まで) :女性の割合は10%以下(ドイツ自動車業界では一般的水準) :遠距離通勤者の割合は高い(新しい連邦州在住者が多い) :従業員は高い水準の学校教育・職業教育修了者が多い(ほぼ4分の3は実業学校を修 了し(ないしそれに対応する10年間の総合技術教育を修了了し)ている, :操業エンジニアの場合10分の9以上がマイスターないし準技術員の職業訓練を修了し ており,スペシャリストの場合には4分の3以上がマイスターもしくは準技術員の資格ある いは大学卒業資格を有している。 スライド24および25の出所:H. J. Sperling, Ein Novem: Rekrutierung einer neuen Belegschaft aus Arbeitlosen, In. Auto 5000:ein neues Produktionskonzept, Die deutsche Antwort auf den ToyotaWeg,VSA-Verlag, Hamburg,2006, S. 85ff. 57 AUTO 5000社の能力開発プログラム 試用期間 資格能力要件 期限の定めのない雇用関係 (最終目的) 自動車関連専門工 自動車生産適性 (prozeßhaft Lernen) 現場学習(コミュニケーション・仕事) 一般的な産業適性 3ケ月9ヶ月(生産開始) 42ヶ月時間の経過 出所:2001年11月でのインタビューに基づく。 58 Golf Touranの生産台数とVWグループ応援者 生産台数 VWグループ応援者 2001年 2002年 - 55人 519 126人 2003年 136,510 158人 2004年 187,450 126人 2005年 185,370 95人 2006年 178,122 -(不明) Auto5000社の内部 からの昇進可能性: 25人がBIに登用 出所:H. J. Sperling, Ibid., In:M. Schumann(2006),ibid.,S. 70f. 59 Ⅵ.Auto 5000プロジェクトと生産・経営システム革新 Auto 5000社の工場組織の中心的要素 *作業組織:拡張された(自己組織的)チーム労働 *第一線管理レベルの拡張された機能プロフィール(操業エンジニ ア;マイスター) *フラットな階層組織(工程チームより上の3つの階層レベル) *現場志向的分権的管理組織(大部屋方式の現場主義:「学習工 場(Lernfabriken)」) *事業所内制御形態(現場・チームをベースとする目標管理・現場 に基礎をおく指標) *現場チームの現場最適化(カイゼン)への積極的包摂 出所:M.Kuhlmann, Good Practice einer integrierten Fabrikorganisation, In: M. Schumann et.al.(2006), Ibid., S. 91. 60 出所:Michael Schumann, et.al., Auto 5000:ein neues Produktionskonzept, Die deutsche Antwort auf den Toyota-Weg,VSA-Verlag, Hamburg,2006,S.53. 61 監査役会 Auto 5000 GmbH 重要事項決議のた めには3分の2以上 の賛成が必要 (出資者側6名+労働側6名) 執行役会 技術担当・購買担当・販売担当 分権的なフラットな管理組織 製造部門管理者 製造コーディネター 車体部門 塗装部門 組立て部門 「学習工場」 操業エンジニア代表 (1シフト一人) 大部屋方式 操業エンジニア(約60人) 間接スペ シャリスト (Betriebsingenieur) マイスター 自己組織 チーム労働 3つから7つのチーム(50人から100人の被用者の管理) チーム代表 車体部門 工程チーム 塗装部門 組立て部門 62 組立部門に配置された「学習工場」 現場への間接部門の統合 出所:Michael Schumann, et.al.,. Auto 5000:ein neues Produktionskonzept, Die deutsche Antwort auf den Toyota-Weg,VSA-Verlag, Hamburg,2006,S.104 . 63 自動化技術領域でのチーム労働 高度な機能統合の実現 :装置運転工(Anlagenführer)は簡単な保守・整備作業を引き受けている。 :現場チームは装置運転工と挿入工(Einleger)から構成されているが,その仕事の分 業の程度は弱い。 流れ作業領域でのチーム労働 :生産労働自体は依然として反復的で(2分以下のタクトタイム)専門性が要求されな い仕事が中心を占める。 :単純な品質保証・ロジスティクス機能が統合 :チーム内でのジョッブ・ローテーションの推進 集団自己組織(Gruppenselbstorganisation)の分野ではいずれの仕事領域でも著しい 進展が見られ,ドイツ自動車産業においてもっとも革新的労働政策が展開されている。 :高い自己組織とメンバー間の協力可能性(休暇取得計画・作業方法・最適化プロセ ス・職業能力形成計画) :内外の調整は互選によるチーム・リーダーが行う。 :定期的に開催されるチーム・ミーティングは自主管理に委ねられている。 64 職務統合の程度 周囲との協力 内部のジョッブ・ローテーション 第一線管理レベル(BI)の 役割・機能様式 負荷調整の可能性 集団内の協力の可能性 自己組織の程度 自己組織のための資源 集団代表の役割 集団対話の質 拡張された集団作業方式の自動車産業の平均値 Auto 5000社の平均値 Auto5000社の最高値と最小値 テイラー主義的作業組織 流れ作業部門における作業組織の形成プロフィール 65 あなたは自分のところで展開されているチーム労働につ いていかなる経験をしてきましたか? チーム労働の具体化の程度(ベ ルト・コンベア作業のみ) (2005年) (全体) 具体化 総体的にみて,あなたはあ なたの部門のチーム労 働の具体化に満足して いますか? 部分的に 非常に満足 13% 3% 7% 満足 77% 50% 56% どちらとも言えない 8% 38% 29% 不満 3% 7% 8% 1% 1% 非常に不満 あなたは同僚との協力をど のように評価しています か? 非常に良い 28% 13% 20% 良い 66% 63% 59% どちらとも言えない 5% 21% 18% 悪い 2% 2% 3% 0% 非常に悪い チーム内で十分な相互援 助・支持がありますか? 現場チーム はい 43% 25% 31% どちらかといえばはい 48% 46% 44% 部分的はい,部分的にいいえ 8% 24% 20% どちらかといえばいいえ 2% 3% 4% 1% 1% いいえ 66 重要な意思決定はチーム全体 で決定されていますか? はい 46% 25% 31% どちらかといえばはい 32% 35% 44% 部分的はい,部分的にいいえ 17% 27% 20% 5% 10% 4% 4% 1% どちらかといえばいいえ いいえ 意見が違う場合,公正な議論 が行われ,妥協が模索さ れている はい 25% 11% 14% どちらかといえばはい 44% 30% 36% 部分的はい,部分的にいいえ 22% 36% 31% 8% 14% 13% 9% 7% どちらかといえばいいえ いいえ チームは外部から干渉される ことなく自主的に仕事をし ていますか? はい 51% 32% 35% どちらかといえばはい 33% 40% 35% 部分的はい,部分的にいいえ 11% 18% 18% 5% 8% 11% 3% 2% どちらかといえばいいえ いいえ 出所:M. Schumann et.al.(2006), Ibid., S. 194f. 67 VW Auto 5000社の生産システム特性 1)8つのモジュール(コックピット、シート、ルーフ、ドア、フロントエンド、ト ランスミッション、車軸、タンク)を供給するモジュール・サプライヤーの徹 底した活用とヴォルフスブルグ近郊のサプライヤー・パークからのジャス ト・イン・シーケンス納入 但し、コックピット・モジュールは自社内で組立 て 2)本社工場よりも著しく低い27%の内製率水準 3)「非連結(Entkoppelung)」を中核概念とする短いラインの自律完結生 産工程 4)低い自動化率(10%)(大型モジュール部品の組み付けにのみロボッ トを採用=半自動化)⇔35%(GOLFの最終組立部門) 5)新しい技術(レーザー溶接:Laserschweissen)の導入 6)部品棚(Warenkorb)方式(1台毎の組み付け部品一式が組み立てライ ン上の車体の背後に置かれる部品棚に一括して組み込まれ、作業者は この棚から必要な部品を取り出して組み付ける方式) 68 最終組立部門 :ラインは2つ設置される :新しいロジスティックス(組み付け車体の背後に置かれ、ラインに沿って動く商品バ スケット(Warenkorb:他のモデルにも適用可能:モデル・チェンジにも適用可能)に一 つの車体の組みつけに必要な大型部品が全て入っている) :高い集団自律性と集団責任(製品品質、生産量、コスト、動機付け)に責任を有する チーム作業(Teamarbeit)(3交代制職場で1チーム80人から112人:さらにこのチーム 内で8人から15人の作業チームに細分化)の採用 :チーム代表(Teamsprecher)の互選、規則的な集団対話そして被用者の生産計画と 生産最適化プロセスへの積極的な統合 部品棚 部品棚 高さの調節可能 可動式台車 : VWブランド最高級車「フェ-トン」を製造するドレスデン工場(「透明なガラスの工場」) でもすでに商品バスケット方式の最初の導入 :モジュール部品生産のためにボルフスブルク郊外のバルメガウに工業団地(インダスト リーパーク)を造り、800人程度の新規雇用 69 「洗練された株主価値」モデルと企業統治 一元的企業観 多元的企業観 会社は株主のものである。従って株 主利害の最大化を目指して会社は経 営されねばならない。 会社は「社会的存在」であり、株主のためのもの というよりも、広く社会のものであり、企業活動 に多様な利害を有する利害関係者の利害を考慮し た経営を志向すべきである。 「洗練された株主価値」モデル 会社は株主のものであるとはいえ、その活動は社会性を持ち、利害関係者(顧 客・従業員・地域社会の諸利害を満たしてこそ、長期・安定的な利益を実現する ことができ、会社の存続が可能となる。そのことによって長期的・安定的な企業 価値の最大化は可能となる。 「共生型」モノづくりと競争優位性 企業の社会性に配慮した営利性の実現 利害関係者 社会 利害関係者 社会性 企業のバリューチェーン(価値連鎖)★ コスト・品質・性能・スピード・差別化 全般管理 支 人事労務管理 援 技術開発 活 調達活動 動 (主活動) 戦略性 購買物流→製造→出荷物流→販売・マーケティング→サービス 利害関係者 利害関係者 ★ M・E・ポーターの『競争優位の戦略』ダイヤモンド社 利害関係者 利 潤
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