本資料の利用について 本資料は、「平成24年度特許庁大学知財研究推進事業」において、特許庁の委託 を受けた国立大学法人大阪大学 知的財産センターが開発したものであり、著作者 人格権は国立大学法人大阪大学に、著作財産権は特許庁に帰属しています。 本資料は、著作権法上認められる利用のほか、非営利目的に限り、改変・引用・ 複製・頒布を行うことができますが、これらの行為及びその内容に関する責任は利 用者自身が負うものとします。 本資料は、正確を期して開発したものですが、不正確な情報や、古くなった情報を 含んでいる可能性があります。 本資料を利用したことから生じるあらゆる損害・損失について、国立大学法人大阪 大学及び特許庁は、一切の責任を負いません。 営利目的での利用、翻訳の希望その他、不明な点がありましたら、以下へご連絡く ださい。 特許庁 企画調査課 活用企画班 03-3581-1101 (内線)2165 第15時限 その他の知的財産制度(4) 不正競争防止法、その他周辺制度 2 第15時限 目次 15-1 不正競争防止法 15-2 その他の知的財産制度 (種苗法、半導体集積回路配置法) 15-3 知的財産に関係する制度 水際措置と知的財産 15-4 PL法 15-5 安全保障貿易管理 3 15-1 不正競争防止法の概要 不正競争行為の定義 ④ 営 業 秘 密 の 侵 害 ⑤ す技 る術 製的 品制 等限 の手 販段 売を 解 除 民事的措置 民事的救済的措置として、以下の措置を規定。 ○差止請求権(3条) ○損害賠償請求権(4条) ○損害額の推定等(5条等) ⑥ 正ド 取メ 得イ ン ネ ー ム の 不 ⑦ 質虚 等偽 のの 表原 示産 地 、 品 ⑧ 信 用 毀 損 行 為 措置の内容 ⑨ 用代 行理 為人 等 の 商 標 冒 の外 不国 正国 使旗 用、 紋 章 等 不国 正際 使機 用関 の 標 章 の 不正競争のうち、一定の行為を行った者に対して、以下の処罰を規定。 ○罰則(21条) ( ④:10年以下の懲役刑又は1000 万円以下の罰金 (併科可)、①、②、③、⑦、ⅰ、ⅱ、ⅲ、秘密 保持命令違反:5年以下の懲役刑又は500万円以下の 罰金(併科可)) ○法人処罰(22条) ○営業秘密の民事訴訟上の保護(10条等) (①、②、③、④の一部、⑦、ⅰ、ⅱ、ⅲ及び秘密保持命 令違反:3億円以下の罰金 ○国外での行為に対する処罰(21条4項、5項、6項) (④の一部と秘密保持命令違反及びⅲ) ○信用回復の措置(14条) 外 国 公 務 員 贈 賄 刑事的措置 ○書類提出命令(7条) (非公開審理、秘密保持命令) ⅲ ③ 商 品 形 態 の 模 倣 刑事的措置のみ ⅱ ② 示著 の名 冒な 用商 品 等 表 ⅰ ① 示周 の知 混な 同商 惹品 起等 表 刑事的措置あり 4 15-1 主な行為類型 混同惹起行為 他人の商品等表示(商品・営業の表示)として、周知性があるも のを使用・販売し、その他人の商品・営業と混同を生じさせる行 為 著名表示冒用 行為 他人の商品等表示として著名なものを、自己の商品等表示とし て使用する行為 ①顧客吸引力や良質感にただ乗りする行為(フリーライド) ②出所表示機能や良質感を希釈化する行為 ③良質感を汚染する行為 形態模倣行為 他人の商品の形態を模倣する行為(商品形態のデッドコピー) (既に存在する他人の商品形態に依拠して、同一形態の商品を作り出 しているものが対象) 最初の販売から3年以内の商品が対象 5 15-1 営業秘密 営業秘密とは! ○不正手段等によって営業秘密を取得し、使用等する行為を規制 ○保護対象=営業秘密(製造ノウハウ、設計図等、顧客リスト、販売 マニュアル等) 保有者の管理下以外では一般に入 秘 手できないことが必要 ○保護要件=秘密管理性、有用性、非公知性 ★特に秘密管理性→①アクセス制限、②営業秘密であることの表示 ①情報にアクセスできる人を特定すること ②情報にアクセスした者が、それが秘密であると認識できること ○効果 ⇒一定の場合の秘密の取得・開示・使用等が不正競争行為として規制の対象となる。 営業秘密管理指針(平成17年10月12日改訂) (経済産業省HP→知的財産政策→知的財産政策/不正競争防止→営業秘密管理指針) http://www.meti.go.jp/policy/competition/downloadfiles/ip/051012guideline.pdf 大学における営業秘密管理指針作成のためのガイドライン(平成18年5月改訂) (経済産業省HP→技術革新→産学官連携) http://www.meti.go.jp/policy/innovation_corp/tlo2/0600608himitu-sisin.pdf 6 15-1 営業秘密 ①秘密管理性(秘密として管理されていること) 秘密管理性が認められるためには、事業者が主観 的に秘密として管理しているだけでは不十分であり 、客観的にみて秘密として管理されていると認識で きる状態にあることが必要である。 ・ 営業秘密の収納・保管・破棄方法を規定しているか ・ 営業秘密の収納・保管・破棄方法について具体的な指示・ 指導をしているか ・ 保管場所を特定しているか ・ 就業規則により秘密保持を厳しく要請しているか ・ アクセスできるものを制限しているか ・ アクセスを制限するためのパスワードが設定されている か ・ パスワードを知られないよう毎月変更しているか ・ 紙媒体への出力が制限されているか、 ・ 他のコンピューター及びインターネットに接続されている か ・ アクセスに使用されるコンピューターに対し、立ち入り制 限区域を設置するなどしてアクセスを制限しているか ・ マル秘の印や秘密であることを示す文字等が表示され ているか ・ 施錠可能なロッカー内に保管しているか ・ 従業員に秘密にするよう指導しているか ・ 秘密保持契約を締結しているか 7 15-1 営業秘密 ②有用性 保有者の主観によって決められるものではなく、客観的に有用である必要がある。 この有用性とは、競争優位性の源泉となる場合を含め、そもそも当該情報が事業活 動に使用されたり、又は使用されることによって費用の節約、経営効率の改善等に 役立ったりするものである。 例えば: ・ネガティブ・インフォメーション(ある方法を試みてその方法が役立たないという失敗の知識情報) ・公序良俗に反する内容の情報 、反社会的な行為についての情報 ・顧客名簿、販売マニュアル、仕入先リスト 8 15-1 営業秘密(不正競争防止法) ③非公知性 非公知性が認められるためには、当該情報が刊行物に記載されていないなど、保有者の 管理下以外では一般に入手できない状態にあることが必要である。 刊行物掲載 学会発表 人数の多少にかかわらず、当該情報を知っている者に守秘義務が課されてい れば、非公知情報といえる。 9 15-1 特許とノウハウの選択 発明 例えば、 ○権利行使が困難な方法の発明 ○工場見学をしなければ分からない製造プ ロセス 戦略的な出 願管理 特許取得をめざす(出願) ノウハウとして秘匿 先使用権 ガイドライン (事例集)の活用 例えば、 ○権利行使ができる発明 ○他社の追随が容易な発明 営業秘密管理 社内管理の徹底 管理指針の活用 先使用権の証拠確保 ○設計図、発注書類を保存 ○公証制度の活用 等 先使用による通常実施権の確保 公開 外国出願 を検討 審査請求 審査 グローバル出願 率UPを目指す 特許権取得 先使用権ガイドライン(事例集)について 特許庁ホームページ→印刷物→その他参考情報 http://www.jpo.go.jp/torikumi/puresu/press_senshiyouken.htm 10 第15時限 目次 15-1 不正競争防止法 15-2 その他の知的財産制度 (種苗法、半導体集積回路配置法) 15-3 知的財産に関係する制度 水際措置と知的財産 15-4 PL法 15-5 安全保障貿易管理 11 15-2 種苗法 目的 保護対象 手続 権利の効力 権利存続期間 特許法 種苗法 技術を保護、発明を奨励し、産業の 発達を目的とする 新品種を保護し、品種の育成の振興 と種苗の流通の適正化を図り、農林 水産業の発展を目的とする 発明 植物の品種 出願手続(実体審査あり) 出願手続(実体審査あり) 特許権=発明の業としての実施: 実施品の生産・使用、 譲渡、譲渡申出、輸出入 育成者権=品種の業としての利用: 種苗・収穫物・加工物の生産、 譲渡、譲渡の申出、輸出入 出願から20年 登録から25年 特許法の保護: りんごの育成方法等に与えら れる 種苗法の保護: 赤のりんご、緑のりんごの 各々の品種に与えられる 12 15-2 半導体集積回路配置法 目的 保護対象 手続 権利の効力 特許法 半導体集積回路配置法 技術を保護、発明を奨励し、産業の発 達を目的とする 回路配置の適正な利用を図り、開発を促進し、国民 経済の健全な発展に寄与する 発明(自然法則を利用した技術的思 想の創作のうち高度のもの) 半導体集積回路における回路素子及びこれらを接 続する導線の配置(回路配置) 出願手続(実体審査あり) 登録申請 発明の業としての「実施」に対して及 ぶ 回路配置の業としての「利用」に及ぶ 権利存続期間 出願から20年 登録から10年 新たな回路配置を開発するためには、莫大な費用がかかる。一方、複製は比較的に容易かつ安価で行うこと ができる しかし無断模倣を認めてしまうと、高額の開発費用を負担してまで 半導体集積回路の集積度を高めようというインセンティブが働かなくなる 半導体集積回路の配置を保護する制度が必要! 13 第15時限 目次 15-1 不正競争防止法 15-2 その他の知的財産制度 (種苗法、半導体集積回路配置法) 15-3 知的財産に関係する制度 水際措置と知的財産 15-4 PL法 15-5 安全保障貿易管理 14 15-3 知的財産に関係する諸制度 知的財産は、特許法などの知的財産制度で守られていることを学んできたが、 それ以外の制度と知的財産との関わりについても概観してみよう。 外国為替及び外国貿易法 研究成果物との関わり で定められているもの 知 的 財 産 製品化 物品、技術情報の 輸出の場面での取 り決め 安全保障 貿易管理 輸出 ・研究成果物 ・技術情報など 製品 販売 製造物についての責任 を定めた制度 製造物責任(PL) 関税法で定められた 知的財産侵害物品 輸出入の場面での 知的財産の保護 輸出入 水際措置 15 15-3 水際措置と知的財産 水際措置 輸出入の場面での知的財産の保護手続 知的財産侵害物品は、関税法第69条の2及び第69条の11により輸出及び輸入して はならない貨物と定められている。 →税関で取締りが行われ、知的財産侵害物品を輸出した者、輸入した者若しくは輸 入しようとした者は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金!(法人等業務 主についても両罰規定あり) 知的財産侵害物品はどうなる? ⇒税関により没収、廃棄。 16 15-3 輸入差止申立制度 輸入差止申立制度 (輸出もほぼ同様) 自己の権利を侵害すると認める貨物が輸入されようとす る場合に、税関長に対し、その貨物の輸入(輸出)を差し 止め、認定手続を執るべきことを申し立てる制度。 認定手続によって、その貨物が知的財産侵害物品に該 当するかどうか判断される。 該当すれば輸入禁止等の措置。 ※兵器等とは違って、知的財産については私的な利益が絡む問題であるから、権利者のイニシアチブにより 侵害を阻止する手続を準備している。 17 15-3 水際措置がとられた事例 メモリーカード(商標権侵害) ステンレス製魔法瓶(特許権侵害) 電子ゲーム機用操作器等(意匠権侵害) 平成24 年3月1日 財務省報道発表 「平成23 年の税関における知的財産侵害物品の差止状況(詳細)」 http://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/shihanki/h23all.pdf に基づき作成 18 15-3 知的財産侵害物品の差止実績 平成23年度のデータ ◆ 5年連続で差止件数が2万件を超過 1日平均60 件以上を差止め ◆ 差止点数は前年比で15.5%増加し 1日平均約2000 点を差止め ◆ 中国来の知的財産侵害物品の差止件数シェア が更に増加。2年連続で9割を超過 ◆商標権侵害品が大半、続いて著作権侵害品。 19 第15時限 目次 15-1 不正競争防止法 15-2 その他の知的財産制度 (種苗法、半導体集積回路配置法) 15-3 知的財産に関係する制度 水際措置と知的財産 15-4 PL法 15-5 安全保障貿易管理制度 20 15-4 PL法(製造物責任法)とは 製品の欠陥によって損害を被ったことを証明した場合に、被害者は製造会社などに対し て、過失の有無に関わりなく損害賠償を求めることができる法律である。 円滑かつ適切な被害救済を目的とする。 この法律の対象となる製造物 この法律では製造物を「製造又は加工された動産」と定義して いる。 一般的には、大量生産・大量消費される工業製品を中心とした (人為的な操作や処理がなされ、引き渡された)動産を対象と する。 不動産、未加工農林畜水産物、電気、ソフトウェアなどは該当 しないことになる。 21 第15時限 目次 15-1 不正競争防止法 15-2 その他の知的財産制度 (種苗法、半導体集積回路配置法) 15-3 知的財産に関係する制度 水際措置と知的財産 15-4 PL法 15-5 安全保障貿易管理制度 22 15-5 安全保障貿易管理に関する法律 武器そのものの他、高性能な工作機械や生物兵器の原料となる細菌など、軍事的に転用 されるおそれのある物が、大量破壊兵器の開発者やテロリスト集団など、懸念活動を行う おそれのある者に渡らないようにするのが安全保障貿易管理である。 日本を含む国際社会が一体となって安全保障貿易 管理に取り組んでおり、日本にとっても、 他国や テロリストから攻撃を受けないようにするための方策が必要。 我が国を始めとする主要国では、武器や軍事転用可能な貨物・技術が、安全保障上 懸念のある国家やテロリストの手に渡ることを防ぐため、国際的に安全保障貿易管理 の枠組みを作り、国際社会が協調して厳格な管理を行っている。 日本では、一定の機微度の高い貨物輸出、技術移転が国の許可制になっている。 国際 産学連携や国際研究交流の推進の上で、輸出管理体制の確立は必須。そのため、我が 国では外為法という法律に基づき輸出規制がおこなわれている。 23 15-5 法令条文概要(物・技術) 外国為替及び外国貿易法(外為法)第48条第1項 物 の 輸 出 政令で定める特定貨物(物)を特定の地域に向けて輸出しようとする者は、経済産業 大臣の許可を受けなければならない。 輸出貿易管理令(輸出令) 第1条第1項 特定貨物(物)とは輸出令・別表第1に掲載されているものをいう。 外為法第25条第1項 技 術 の 提 供 政令で定める特定技術を特定国において提供することを目的とする取引を行おうとす る居住者若しくは非居住者又は特定技術を特定国の非居住者に提供することを目的 とする取引を行おうとする居住者は、経済産業大臣の許可を受けなければならない。 外国為替令(外為令) 第17条第1項 特定技術とは、特定の種類の貨物の設計、製造又は使用に係る技術であり、外 為令別表に掲載されているものをいう。 ※外に出すことを禁止しているのではなく事前に許可申請をしなければならないとしていることに注意! 24 15-5 安全保障貿易管理制度の仕組み 法 律 政 (物) 外 国 為 替 及 び 外 国 貿 易 法 貨物 第48条 ( 外 為 法 ) リスト規制 輸出貿易管理令 (輸出令) 大量破壊兵器 キャッチオール規制 (平成14年4月導入) 別 表 1~15項 第25条 役務 外国為替令 (外為令) 令 1~15項 第 1 16項 別 通常兵器補完的 輸出規制 (平成20年11月導入) 16項 表 16項 16項 ・武器 ・兵器の開発等に用 いられるおそれの 高いもの リスト規制以外で、大 量破壊兵器の開発 等に用いられるおそ れのあるもの リスト規制以外で、 通常兵器の開発 製造又は使用に 用いられるおそれ のあるもの 全地域向けが対象 ホワイト国を除く 全地域向けが対象 (技術) 物 : 機械、部品、原材料など 技術 : 物の設計、製造、使用に関する技術 (ソフトウエアも含む) な規 る制 も対 の象 に ホワイト国 : 米、加、EU諸国等の輸出管理 を厳格に実施している26カ国 国連武器禁輸国:国連の安全保障理事会の 決議により武器の輸出が禁止されているイラク、北 朝鮮、アフガニスタン等10カ国 等象規 地制 域対 国連武器禁輸国向けが 対象 ※特定の品目について はホワイト国を除く全地 域向けが対象 25 15-5 安全保障貿易管理上特に注意を要する研究分野 ①原子力分野 ②航空宇宙分野 ③化学分野 ④生物学分野 ⑤精密工学分野 (制御工学、電子工学、機械工学等を含む。) ⑥情報工学分野 (通信工学、ソフトウェア工学を含む。) 勿論、これら研究分野以外でも注意が必要。 26 15-5 許可取得を検討する必要がある事例として紹介されてい る技術提供の具体例 ○海外の研究者にSiCエピタキシャル成長技術を提供する ○海外の研究機関に薄膜を形成する装置のメンテナンスに係るノウハ ウを教える ○海外の企業に特許使用許可とともに製造ノウハウを開示する ○海外からの受け入れ研究者に電子ビーム描画装置・真空蒸着装置・ 電子顕微鏡などを使用して半導体基板を加工・評価する技術を提供す る ○海外からの研修生に圧力構成技術の提供に伴い天秤の使用技術 及びソフトウェアの使用技術を提供する ○海外からの研修員にレーザー発振器の使用技術、半 導体ナノ結晶の製造技術、分光光度計の使用技術を提 供する。 経済産業省『安全保障貿易管理に係る機微技術管理ガイダンス(大学・研究機関用)改訂版』より 27 27 15-5 安全保障管理上規制されない例外 規制対象技術を提供する場合であっても、以下のような場合は例外として規制対象外 ア) 無償の経済協力等に関する二国間協定等に基づいた取引 イ) 公知の技術を提供する取引又は技術を公知とするために当該技術を提供する 取引 ウ) 基礎科学分野の研究活動において技術を提供する取引 注:「基礎科学分野の研究活動」とは、自然科学の分野における現象に関する原理の究明を主目的とした研究活動であって、理論的 又は実験的方法により行うものであり、特定の製品の設計又は製造を目的としないものをいいます。 エ)工業所有権の出願又は登録を行うために、当該出願又は登録に必要最小限の 技術を提供する取引 オ)貨物の輸出に付随して提供される使用に係る技術であって必要最小限のものの 取引 カ)プログラムの提供に付随して提供される使用に係る技術であって必要最小限の ものの取引 キ)市販のプログラムに関する取引 28 15-5 補論:居住者及び非居住者の判定 居住者 日本人の場合 ①我が国に居住する者 ②日本の在外公館に勤務する者 外国人の場合 ①我が国にある事務所に勤務する者 ②我が国に入国後6月以上経過している者 法人等の場合 ①我が国にある日本法人等 ②外国の法人等の我が国にある支店、出張所 その他の事務所 ③日本の在外公館 ※平成21年11月1日の外為法改正以前は、 居住者から非居住者への提供のみが規制 対象であった。 非居住者 日本人の場合 ①外国にある事務所に勤務する目的で出国し外国に 滞在する者 ②2年以上外国に滞在する目的で出国し外国に滞在 する者 ③出国後外国に2年以上滞在している者 ④上記①~③に掲げる者で、一時帰国し、その滞在 期間が6月未満の者 外国人の場合 ①外国に居住する者 ②外国政府又は国際機関の公務を帯びる者 ③外交官又は領事官及びこれらの随員又は使用人 (ただし、外国において任命又は雇用された者に限る) 法人等の場合 ①外国にある外国法人等 ②日本法人等の外国にある支店、出張所その他の 事務所 ③我が国にある外国政府の公館及び国際機関 その他、合衆国軍隊等及び国際連合の軍隊等 ※財務省通達「外国為替法令の解釈及び運用について(抄)」より 29 15-5 補論:リスト規制 ・リスト規制品に該当する物の輸出(15項目をリストアップ) - 兵器そのもの - 兵器もしくはその一部になりそうな高い性能を持つ汎用品 - 兵器の開発などにも利用できる高い性能を持つ汎用品) リスト規制はスペックが明示されておりキャッチオール規制等と比較し規制対象範囲は わかりやすい!! ① 武 器 …鉄砲、軍用の細菌製剤、軍用探照灯等 ② 原子力 …核燃料物質、原子炉、人造黒鉛、直流電源装置等 ③-1 化学兵器…毒性物質の原料、耐腐食性の熱交換器、弁、ポンプ、反応器、貯蔵容器等 ③-2 生物兵器…細菌製剤の原料生物、クロスフロー濾過器、凍結乾燥器、密封式発酵槽等 ④ ミサイル …ロケット、無人航空機に使用できる集積回路、加速度計、風洞、振動試験装置等 ⑤ 先端材料 …超電導材料、有機繊維、セラミック複合材料等 ⑥ 材料加工 …数値制御工作機械、ロボット、測定装置等 ⑦ エレクトロニクス …高電圧用コンデンサ、集積回路、半導体基板、大容量電池、周波数分析器等 ⑧ コンピュータ …高性能電子計算機 ⑨ 通信関連 …暗号装置、特殊な通信装置等 ⑩ センサー・レーザー…センサー用光ファイバー、光学機器、特殊カメラ等 ⑪ 航法関係 …慣性航法装置、衛星航法システムからの電波受信装置等 ⑫ 海洋関連 …潜水艇、水中用のカメラ・ロボット等 ⑬ 推進装置 …ガスタービンエンジン、人工衛星、無人航空機等 ⑭ そ の 他 …粉末状の金属燃料、電気制動シャッター等 ⑮ 機微品目 …電波の吸収材、水中探知装置等 30 15-5 補論:キャッチオール規制 リスト規制品に該当するもの以外(木材、食料品などを除く。)の輸出で あって、その用途や需要者に兵器の開発に関する懸念がある場合 リスト規制品に該当しない物の輸出に対して、その用途と需要者の内容に応じて規制が行われて いる。 ○リスト規制品に該当しない物は、以下についての確認を行い、これらに当てはまる場合 には、輸出前に許可を得ることが必要である。(ホワイト国向けは規制対象外) 【用途要件】日本から輸出された物が、最終的に大量破壊兵器や通常兵器の開発などに使用されるお それがあるか。 【需要者要件】日本から輸出された物を受け取る者や最終的に使用する者が、大量破壊兵器 の開発 などを行っている(又は行った)か。 (外国ユーザーリストに掲載された機関向けの場合は、特に注意が必要) 以上の要件に当たらない場合でも、経済産業省から許可を得るよう通知を受けた場合(インフォーム要件)は、輸出前に 許可を得ることが必要 31 15-5 補論:技術の提供について ○技術は「設計」・「製造」・「使用」に分類される。 ○リスト規制品に関連する技術を外国の者(非居住者)に提供する場合や、 提供する技術の用途や需要者 にキャッチオール規制における懸念が認められる場合は、その提供に際して事前の許可が必要。 ○また、居住者に対する技術提供であっても、リスト規制技術を外国において提供することを目的とする取引 や、提供の時点で外国において再提供することを目的とする 取引についても、事前に許可を得て行うことが 必要。 許可申請を要しない役務提供(貿易関係貿易外取引等に関する省令第9条第2項) 九 公知の技術を提供する取引又は技術を公知とするために当該技術を提供する取引であって、以下のいずれかに該当するもの 新聞、書籍、雑誌、カタログ、電気通信ネットワーク上のファイル等により、既に不特定多数の者に対して公開されている技術を提供 する取引 ロ 学会誌、公開特許情報、公開シンポジウムの議事録等不特定多数の者が入手可能な技術を提供する取引 ハ 工場の見学コース、講演会、展示会等において不特定多数の者が入手又は聴講可能な技術を提供する取引 ニ ソースコードが公開されているプログラムを提供する取引 ホ 学会発表用の原稿又は展示会等での配布資料の送付、雑誌への投稿等、当該技術を不特定多数の者が入手又は閲覧可能とすることを目的 とする取引 十 基礎科学分野の研究活動(※)において技術を提供する取引 十一 工業所有権の出願又は登録を行うために、当該出願又は登録に必要な最小限の技術を提供する取引 イ (※)自然科学の分野における現象に関する原理の究明を主目的とした研究活動であって、理論的又は実験的方法により行うものであり、特定の製品の設計 又は製造を目的としないもの。 物の輸出だけではなく技術提供も外為法の規制対象 32 15-5 補論:法令違反に対する罰則 外為法では、必要な許可を取得しないで貨物の輸出や技術の提供を行った場合に、 刑事罰と行政罰が課せられる場合がある。 また、これらの罰則は、貨物の輸出や技術の提供を行った個人及び当該個人が属す る法人共に対象となる。 (1)刑事罰・・・ 最大で10年以下の懲役(個人のみ)、1、000万円以下の罰金 (対象の貨物・技術の価格の5倍が1、000万円超の場合は、当該価格の5倍以下の罰金)(法第69 条の6及び7、第70条、第71条、第72条並びに第73条) (2)行政罰・・・ 最大で3年以内の貨物の輸出・技術の提供の禁止(法第25条の 2及び第53条) 核開発懸念国などへの流出は、懸念用 途で使用されるリスクが高まるばかりか、 実際に懸念用途に使用された場合、社 会的信用の失墜、国民全体の安全を脅 かすことにもつながりうる。 33
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