放送産業の特徴(1) 日本の放送産業の構造的特徴

放送産業の特徴(1)
日本の放送産業の構造的特徴
1.2項並立構造の放送産業
2.公共放送と商業放送
3.全国放送と県域放送
4.放送局と番組制作会社
5.法規制と自主規制
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1.2項並立構造の放送産業
日本の放送産業の特徴=2項並立群
各項での競争と連動が日本の放送産業を担っている。
公共放送 vs 商業放送
全国放送 vs 地域(県域)放送
放送局 vs 番組制作会社
法規制 vs 自主規制
地上波放送 vs 衛星放送
放送事業者 vs 委託・受託放送事業者
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2.公共放送と商業放送
(1)二元体制の始まり
1950年4月 電波三法が成立(施行は6月1日)
NHKの民主的改組と民放開設を実現するための3つ
の法律(電波法、放送法、電波管理委員会設置法)
⇒NHKの単独時代の終焉。
公共放送(NHKラジオ)と商業放送(民放ラジオ)の二
元体制へ移行。
→この体制はテレビ放送(1953年~)にも引き継がれ
た。
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(2)二元体制のメリット
=「情報の多元化」の実現・促進
情報の多元化は、マスメディアの社会的使命の1つ。
⇒民主主義の実現・育成
・報道、娯楽、教養・教育、生活情報とさまざまな番組
ジャンルが提供できる。
・さまざまな価値観・主義主張を視聴者にもたらすことが
できる。
⇒多様な人々のニーズに応えることができる。
⇒公共放送と商業放送が補完し合える。
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3.全国放送と県域放送
(1)カバーする地域の分担
NHK(全国放送)
民放(地域・県域放送)
放送法(NHKの目的・経営・
運営、NHKと民放の番組
のあり方を規定)の第7条
「協会は、公共の福祉のた
めに、あまねく日本全国
において受信できるよう
に豊かで、かつ良い放送
番組による国内放送を行
う」
原則として県域を放送対象
地域にして放送免許が交付
される。
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(2)民放ネットワークの必要性と機能
民放が県域(場合によっては地域)放送だけを行うの
では、経営的に採算が取れない。
⇒民放ネットワーク(特にテレビ)の形成
①全国各地に取材網を持つNHKと新聞に対抗する
ため。
→ニュース(取材)・ネットワーク
②恵まれない番組制作条件(金銭面、人材面)をカ
バーするため。
→番組(制作)ネットワーク
③経営を安定させるため(潤沢な広告費を持つスポ
ンサーの常時確保)
→営業ネットワーク
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(2)民放のネットワークの種類(図1参照)
JNN(TBS系列、1959年に発足)
NNN(日本テレビ系列)
FNN(フジテレビ系列)
ANN(テレ日朝日系列)
TXN(テレビ東京系列)
今や地方局の全番組に占めるネットワーク番組は80
~90%。
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4.放送局と番組制作会社
(1)制作者の違いによる番組の種類
自社制作番組:自局の社員が中心となって制作する
番組や外部の番組制作会社に制作を発注
して調達する番組。
外注の割合は年々増加。
ネット番組:ネットワーク番組のこと。同じ日時に放送
される。
購入番組:自局が所属するネットワーク以外の局や
番組制作会社から買いつけた番組。
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(2)外注番組の変遷
・外注番組のそもそもの担い手は、1961年に登場した
国際放映のような映画会社であった。
・しかし、テレビ局の番組制作力向上に伴い、局制作
番組が質量ともに増加した。
・1970年代になると、局系番組制作会社が登場。
e.g. テレビマンユニオン、テレパック
ユニークなアイデア、ENGを駆使したビデオテープ
素材により、テレビ局の番組供給源としての地位を確
立した。
・今では、番組制作会社なしには、テレビ局は成り立
たない。
・近年では、独自に番組を企画・制作し、放送局に販
売することもある。
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5.法規制と自主規制
(1)法規制のもとにおかれる放送メディア
放送はこれのみを規定する法規制の下に置かれて
いる。=「制度的メディア」
①免許事業である(←電波法)
「法務大臣の免許を受けなければならない」(第4条)
・外国籍排除原則
・マス・メディア集中排除原則
→a.有限資源である電波の有効利用
b.社会的影響力に対する考慮
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②番組規制(←放送法)
「放送事業者は、国内放送の放送番組の編集に
当たっては、次の各号の定めるところによらなけ
ればならない」(第3条の2)
第1項[番組編集準則]
①公安・善良な風俗を乱さない
②政治的公平
③事実を曲げた報道をしない
④多角的に論点を明らかにする
第2項[番組種目間調和原則]
教養番組または教育番組並びに報道番組及び
娯楽番組を儲け、放送番組の相互の間の調和を
保つ。
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(2)放送事業者の自主規制
放送法は、そもそも放送事業者の自律によって放送
を国民の福祉に最大限貢献させることを目的に制定
された法律。
したがって、放送法で定められている“義務”は放送
事業者に対する自律的な業務遂行の期待と解釈でき
る。
⇒民放各局は、番組基準の制定、番組・CM考査、番
組審議会の設置・運営などの自律的な活動を実
践している。
NHKと民放の共同で「放送倫理・番組向上機構
(BPO)」も2003年7月に発足。
民主党政権下で、権力の番組介入監視の役割も?
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参考文献
日本民間放送連盟(編) (1997) 放送ハンドブック(新版) 東洋
経済新報社
伊豫田康弘 (2004) 放送産業の構造 松岡新兒・向後英紀
(編著) 新現場からみた放送学 学文社 Pp. 92-110.
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