長野県林総研究報告第 6号(19 9 2 ) 落葉広葉樹林帯における有用広葉樹の開花結実特性に関する調査 育林部奥村俊介 ※ 大 木 正 夫 要 ヒ忌 日 長野県内の落葉広葉樹 5種(シラカンノイ、コナラ、ケヤキ、ミズキ、ホオノキ)の開花時期、 種子の結実特性などについて明らかにした。 ①開花時期 シラカンパ、コナラ、ケヤキはほぼ 5月中旬に、ミズキ、ホオノキは 5月下旬か ら6月上旬に開花時期をもっていた。 ②種子落下時期 コナラ、ホオノキは 9月から 1 0月に、シラカンノペミズキは 9月から 1 1月 に、ケヤキは 1 0月から 1 1月に種子落下時期があり、これらの最盛期はほぼ 1 0月といえた。 ③種子落下範囲 シラカンパはほぼ樹高を半径とする範囲に、コナラ、ミズキは樹冠下に大部 分の種子が落下した。 ④種子の稔性 コナラ、ミズキの発芽力は落下種子量と正の相闘があり、落下最盛期に発芽力 も高かった。シラカンパ、ケヤキのそれは特別なピークはなく、ほぼ同じ水箪で推移した。 ⑤結実の豊凶 調査実施期間の豊凶はシラカンパは連年結実と判断されたが、コナラ、ケヤキ、 ミズキ、ホオノキの結実周期は明らかでなかった。 1 はじめに 近年建築構造及び生活様式の多様化に伴い建築用材、家具用材、工芸用材あるいはきのこ原木な ど多方面で広葉樹材の需要が高まっている。しかし広葉樹資源は質量ともに低下する一方であるの でこれまでのような天然広葉樹資源の採取だけでなく、積極的にこれら広葉樹類の造林技術を確立 していかなければならない。 ところが長野県内の広葉樹類の開花結実などに関する報告は少ない。 このため、ここでは長野県の県木で観光資源あるいはバイオマス資源として重要なシラカンノヘ シイタケ原木として利用されるコナラ、建築材、器具材として価値の高いケヤキ、およびミズキ、 ホオノキの 5樹 種 に つ い て 開 花 時 期 、 種 子 の 落 下 時 期 と 落 下 範 囲 お よ び 結 実 時 期 と そ の 量 な ど を 検 討し、これら広葉樹苗木の安定供給のための基礎資料を得ることを目的とした。 な お 、 本 研 究 課 題 は 「 林 業 普 及 情 報 活 動 シ ス テ ム 化J(林野庁)により、昭和 6 2年 平成元年の 3カ年で実施したものである。 2 調査の方法 ( 1 ) 調 査 地 は 表 一 1に 示 し た よ う に 林 業 総 合 セ ン タ ー ( 塩 尻 市 、 標 高 8 0 0 9 0 0m) と 楢 川 県 有 0 0 0 1 1 0 0m) に設けた。また、 林(楢川村、標高 1 2カ 所 の 気 象 条 件 は 表 -2に 示 し た よ う に 内 1 6 6 )。 な お 、 調 査 実 施 期 間 の 気 象 条 件 を み る と 1 9 8 7年 ( 以 陸型の寒冷気候である(温量指数 5 下8 7年とする)の夏期の少雨傾向、 8 8 8 9年は夏期の低温多雨の傾向が顕著であり、 じて気象変動は大きかった。 ※元林業総合センター専門研究員 3年 間 を 通 長 野 県 林 総 研 究 報 告 第 6号(1 9 9 2 ) 表 -1 調 査 地 の 概 況 地況 調査地 設定場所 塩尻 A 塩尻市片丘南内田 塩民 B 楢 ) 11 標高 (m) 11 木曽郡楢川村にえ川 傾斜地(つ l 月 2 -1.5 5 6 . 5 3 7 1 9 8 7 9. 6 湿 度 % 6 8. 4 6 6 6 . 2 日照時間 h 1 8 8 . 7 1 2 .3 平均気温 ℃ 1 降水量 m 1 3 . 7 2 2 1 9 8 8 5. 4 6 湿 度 % 6 8. 4 日照時間 h 1 8 3 1 6 6 . 2 平均気温 ℃ 0 . 1 -0 4 1 降水量 m 6 9. 5 1 1 9 8 9 9 . 6 8 2 湿 度 % 7 日照時間 h 1 5 3 . 3 1 4 1 平均気温 ℃ 降水量 m 考 830-900 0-5 W 林業総合センター構内 880-900 10-20 S 私有林 1030-1060 30-35 NW 表一 2-1 調 査 地 の 気 象 ( 塩 民 ) 年度 備 斜面方向 4 3 5 2 . 5 9 . 1 1 4. 3 9 2 1 5. 5 1 1 2. 5 7 1 5 5. 2 4 6 6. 1 7 3 . 6 2 4 0. 4 2 1 5. 8 0 . 7 9 . 3 1 2 . 7 1 7 1 8 8 1 3 8 6 8 61 .2 6 3 . 5 1 4 7 2 11 .2 0 3 . 3 2 2 8 . 7 1 2 . 5 9 3 9 3 0 8 . 5 2 7 6. 4 5 4 9. 6 7 0. 1 7 4 . 3 2 2 2 . 5 1 6 5 . 6 6 1 8 . 8 1 2 1 7 0. 2 2 0 9. 9 1 7 . 8 2 5 7 . 5 7 2. 2 1 6 2 . 9 1 6 . 7 2 1 9 7 3. 4 1 5 2 . 3 7 2 2. 4 8 2 7 4 . 7 1 8 3 . 3 2 0 1 5 5 1 7 8. 1 0 0 . 2 2 0. 2 2 0 5. 5 7 6 . 8 1 51 .9 8 2 2 . 6 6 5 7 5 . 2 1 9 9. 2 2 2 . 7 9 6 . 5 7 8. 9 1 5 3. 4 2 2 . 1 1 7 8 . 5 7 5 . 4 2 0 4 . 9 は一七- 3、 4、 5、 6 (塩尻 A . 塩尻 B調査地) 9 1 8 2 6. 5 7 8. 2 1 4 7 . 7 1 8 . 1 3 31 .5 8 3. 1 1 0 3. 7 1 9. 1 1 7 7. 5 7 8. 3 1 2 5. 3 1 0 1 2 . 7 4 3 7 7 . 3 1 5 6 . 5 1 0 5 8 7 8. 5 1 5 5 . 3 1 0 . 8 1 21 .5 7 8. 9 1 7 4. 6 1 1 6 . 8 1 3. 5 7 4 . 8 1 6 7 . 8 3 . 6 2 9 7 3. 1 1 6 4. 8 6 . 9 3 9 . 5 7 4 1 4 8 . 5 1 2 平均 0. 5 1 .5 1 1 9. 5 6 8 4 6 8 . 2 7 0 . 8 8 5. 2 1 7 3. 1 1 . 1 9 . 5 0 3 6 5. 7 5 . 51 6 9. 1 71 .6 2 1 5. 3 1 6 3. 8 0 . 4 9 . 9 2 21 5 9 5. 5 7 9 . 4 7 5. 4 1 6 9 . 7 1 6 5 . 3 注) 1 9 8 7 年 1月 -1988 年 3月までは旧林業指導所(塩尻市宗賀桔梗が原、標高 7 13m)1 9 8 8 年 4月 -1989 年1 2月までは林業総 合センター(塩尻市片丘狐久保、療高 8 70m) の観測資料による。 1 O m) の観測資料による。 なお、日照時間については松本測候所(松本市沢村、標高 6 注〉降水量は合計値である。 表 - 2 - 2 調 査 地 の 気 象 ( 楢) 11 ) 年度 平均気温 1 9 8 7 1 9 8 8 1 月 ℃ 降水量 m 2 一1.3 1 . 2 1 4 7 8 5 3 2 . 5 1 5 2 4 9 . 1 5 2 5 1 4. 1 2 0 8 6 1 8. 1 1 8 2 7 2 2 . 2 2 8 8 8 2 2. 8 1 3 1 (楢川調査地) 9 1 2 平均 1 0 1 1 2. 6 1 .7 1 0. 4 1 7. 8 1 6 . 3 8 2 8 0 1 6 1 5 0 8 8 5 湿 度 % 2 3. 4 1 7 2. 9 11 5 4 . 3 1 3 3 . 4 1 5 8. 5 1 日照時間 h 1 .3 1 3 8 . 1 1 6 6 . 3 2 1 4 . 9 1 4 0. 5 1 3 5. 8 2 11 .8 2 8 6 . 9 2 0 . 3 9 . 3 2 .9 8. 2. 1 0 3 . 3 1 8 2 0 . 5 2 平均気温 ℃ 0 . 4 4 1 4 1 . 1 7 . 4 1 3 2 2 1 5 9 0 7 4 6 4 3 7 1 9 0 降水量 m 4 6 3 9 1 1 0 1 7 0 3 3 9 1 8 0 1 1 9 2 湿 度 % 0 0 . 5 1 1 3. 2 1 5 5 . 2 5 6 . 9 1 8 7 . 7 1 2 9. 2 5. 4 1 5 2 . 3 1 5 2 . 8 2 1 7 . 8 1 6 6. 8 1 1 1 日照時間 h 1 0 0. 8 2 5 9 . 6 1 0. 5 6 . 2 0 . 2 9 . 7 8. 6 1 0 . 1 平均気温 ℃ -0. 1 2 . 3 2. 2 1 6. 5 1 9. 9 21 .5 1 8 . 5 1 0 6 4 9 2 4 8 3 4 3 1 3 6 1 5 4 4 降水量 m 1 9 4 2 8 0 1 6 2 1 2 2 2 2 7 2 7 6 3 3 4 1 1 9 8 9 湿 度 % 9 2 1 1 0 1 2 2. 4 4 4 . 3 1 4. 7 1 5 6 . 2 1 81 日照時間 h 1 1 0. 4 1 0 5 . 9 1 7 7. 9 1 3 0 . 6 2 0 . 2 1 2 4. 6 1 .6 1 注)楢川地域気象観測j 所(木曽郡構川村平沢 注〉降水量は合計値である。 標高 9 00m) の観測資料による。 -2- 長野県林総研究報告第 6号 ( 1 9 9 2 ) ( 2 )調査方法 ア.調査木 マーキングした立木(固定調査木)の開花結実状況、種子の落下状況などを連年調査する手法を とり、その立木本数は各樹種 1 0本ず‘ っ と し た ( 表 -3)。 イ.開花状況 8 8 9年の 開花状況については 8 2カ年にわたり 4月下旬から 6月上旬にかけて 3--4日おきに地 上から双眼鏡により開花時期を観察した。 ウ.種子の落下状況 種子の落下量および落下範囲については 8 7 8 9年の 3カ年にわたり 8月下旬から 1 1月下旬にか けて 7日1 0日間隔で表 -4、図 -1に示したような方形シードトラップ(メッシュの大きさは #6 00である。)内に落下した種子を採取し時期別に調査測定を行った。 なお、ホオノキについては調査地の地形条件等のためトラップ調査は行っていないが、地上から 双眼鏡により果穂の観察を行い成熟落下時期を判断した。 エ.結実状況 結実状況については地上から双眼鏡により観察し、結実量の判定は次の基準により行った。 多:着果可能とみられる樹冠面のほぼ全面に着果。 中 :点々と着果。 少 :極めて疎に着果。 無 :着果していない。 また、結実量はコナラ、ミズキについてはトラップに落下した種子量と樹冠投影面積から推定し f こ 。 ホオノキについては樹上の果穂数を数え、これに果穂当りの平均種子数(あらかじめ果穂のサン プル調査を行い、果穂当りの平均種子数を算出した。)を乗じて推定した。 オ.種子の稔性 1 0日間隔で種 種子採取時期と種子稔性との関係を明らかにするため、各樹種の結実期間内に 7子を採取し発芽試験を行った。 肘シラカンパ 表 -4 樹種 シラカンノイ コ ナ フ 年 1 9 8 7 1 9 8 9 1 9 8 7 1 9 8 8 1 9 8 9 〆 ' 1 11 ケ ヤ キ 1 9 8 8 調査木 N . a 9 7 5 6 7 トラップの綾置状況 トラップの形状と数 備 考 1mx1mの 方 形 を 1 1基 (1)シラカンパの周囲はアカマツ林で 6 基 あるが N方向には他の立木がなかった 1mx1mの 方 形 を 1 1mx1mの 方 形 を 1 6 基 のでこの方向にトラ ップを設置した。 11 ( 2 )ケヤキの N . a1とN . a2は互いに接し て生立している。 1mx1mの 方 形 を 2基 11 2 3 ) ミズキの方形区調査では方形区内 3 1mx1mの 方 形 を 3基 ( 、 ズ キ に 4本のミズキ(樹齢 17-25 年、樹高 ?と近隣木 3本 ※10mxl Omの方形区 1 9 8 7 5. 5-17. 5m、胸高直径 1 5 . 5 2 5. 5 ω〉 4 基 1 1mxlmの 方 形 を 2 1 9 8 7 1 1 が生立している 。 1 9 8 8 1 9 8 9 1 m x 1 m の 方 形 を 1 0 基 7 11 〆 ' 1 を1 2 基 9 〆 〆 11 を1 2基 1 2 注 1)※印はミズキの樹冠下の地表面にlO mx10mの方形区を設け区内に落下した果柄を調査した。 注 2)風飛散型樹種でトラ ップを設置した立木は周囲に同樹種がない場所を選定した。 11 11 -3- 長野県林総研究報告第 6号(1 9 9 2 ) 表 -3 調査木の状況 樹種名 シラカン/~ (天然生) コナラ (天然生) ケヤキ (植栽) ミズキ (天然生) ミズキ 〈天然生) ホオノキ (天然生) 調査地 塩尻 A 塩尻 A 塩尻 B 楢 J lI 塩民 A 楢 J I I 調査木番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9T 1 0 1 2 3 4 5T 6T 7T 8 9 1 0 1T 2T 3T 4 5 6 7 8 9 1 0 2 3 4 5 6 7T 8 9T 1 0 11T 12T 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 0 樹高 (m) 15m 1 6 1 5 . 5 1 6 . 5 1 3 1 4. 5 1 4 1 6 1 6 1 7 1 3 1 9 . 5 1 6 1 6 1 4 1 3 . 5 1 6 1 9. 5 1 8 1 6 1 6 1 8 1 8 1 9 2 2 2 4 2 4 2 1 1 7 . 5 2 3 1 4 . 5 1 7. 5 1 2 . 5 1 3. 5 1 5 . 5 1 9 . 5 1 7 2 0 . 5 1 7 1 8 2 2. 5 1 6 . 5 1 8 . 7 1 8 1 6 . 6 1 8 1 8 1 8 1 7 . 5 2 0 1 9. 5 1 7. 7 胸高直径 枝下高 (咽) 1 4咽 1 5 1 4 1 5 1 6 1 2 1 6 2 2 1 8 1 7 1 8 2 0 2 2 2 2 2 2 2 2 2 3 2 9 3 1 2 1 4 1 4 6 5 3 4 2 3 4 3 4 5 4 4 6 3 8 5 7 2 7 3 4 2 0 2 6 2 8 2 8 2 5 . 5 2 2 . 5 2 3 2 8 5 0 2 4 . 5 2 3 2 5 2 6 2 5 2 7 2 2 2 6 1 8 2 4 1 8 (m) 7m 7 6 7 . 5 5 8 7 6 7 7 . 5 8 . 5 7 3 . 9 4 . 5 5 5 1 4. 4 4. 6 . 5 6 4 . 1 9 6 . 5 3 . 3 1 1 1 1 3 . 3 7 2. 3 9 4 7. 7 . 1 4 6. 7 . 2 6 . 1 9 9 . 5 1 3 1 2 . 5 1 1 1 1 9. 5 5 . 2 4 . 9 4. 7 5 . 8 5 5 . 7 6. 5 9. 1 7 . 7 9 . 6 樹冠半径 (m) 1 .9 2 . 2 1 .9 1 .7 2. 5 1 .2 2 2 . 8 3. 2 2 . 6 2 . 5 4. 2 3 . 2 3 . 6 3 . 7 3 . 8 4 4 . 6 4 4. 3 . 1 6 . 3 5. 8 7 . 1 5 . 6 3 . 7 4 . 3 4 5. 5 . 2 3 8 . 2 3. 7 5 . 9 4 . 2 4 . 8 5 4 . 9 3 . 3 4 4. 3 . 2 4 4. 5 . 6 3 . 8 3 . 5 3 . 8 4 4. 3 3. 2 3 . 3 3 . 6 3 . 3 2 . 8 2 . 5 推定樹齢 周囲の状況 (年) ホ3 0 年 (混交率) 3 0 3 0 * 3 1 3 0 2 5 3 0 本 3 6 3 5 3 0 場2 0 2 0 3 0 2 5 * 2 5 2 5 * 3 0 4 0 3 5 2 5 70-80 アカマツ回% コナラ他 1 7% H 11 11 11 11 ケヤキ 53% アカマツ他47% 11 11 11 , λ * 2 5 3 0 * 2 1 2 5 2 5 本2 6 2 5 本2 3 2 5 2 5 3 5 2 5 本4 0 4 0 4 0 4 0 本4 0 4 0 4 0 本4 0 4 0 4 0 注 1)表中の調査木番号で Tとあるのはトラップ調査を実施したものである。 注2 )樹齢は各樹種 3-4本については成長錘により算出し(・印)、残りはこれを基にした。 なおケヤキの樹齢は所有者から植栽年度を聞き取り推定した。 注3 ) ミズキの調査木の N . o l l、N . o 1 2はトラップ調査を行うために選定した。 -4ー アカマツ 83% シラカンパ他 17% ホオノキ 24% ミズキ 24% クリ他52% ホオノキ 2 4% ミズキ 24% クリ他5 2% 長野県林総研究報告第 6号(19 9 2 ) 時期別に枝ごと種子を 4 0 0粒ずつ採取し、 3"Cで 2 8日間貯蔵後に常法で発芽試験を行った。 (イ)コナラ 8 7年に採取時期別に、種子を育苗箱に取り蒔きした。 8 8 " " " 8 9年 は 採 取 時 期 別 に 種 子 を 1 0 0粒 ず つ切断し、匹の有無により種子の捻性を判断し充実率を求めた。 (ウ)ケヤキ、 ミズキ 0 0粒ずつ切断し、区、の有無により種子の捻性を判断し充実率を求めた。 採取時期別に種子を 1 3 結果と考察 ( 1 ) 開花状況 開花時期について 8 8 " " " 8 9年 の 2年間調査を実施した。その結果は図ー 2に 示 し た よ う に シ ラ カ ンパ、コナラ、ケヤキの 3樹 種 は 5月に開花期をもっていたのに対し、ミズキ、ホオノキはほぼ 6 一 一 一 一 月に開花期をもっていた。このように樹種間で開花期に差が発生した原因としては前者は風媒花で あるため乾燥季に開花期をもち、後者は虫媒花であるため昆虫類の活動が活発になる時期に開花期 をもつためと考えられた。この中にも 5月に開花期をもっシラカンノベコナラをくらべるとコナラ 4月 5月 6月 7月 ケヤキト-i 8 8 年 ミズキ ホオノキ 図 -2 調査木の開花時期 表 -5 開 花 時 期 樹 種 シラカンノイ コ ナ フ ケ ヤ キ 、 ズキ ホオノキ 調査年 1 9 8 8 1 9 8 9 1 9 8 8 1 9 8 9 1 9 8 8 1 9 8 9 1 9 8 8 1 9 8 9 1 9 8 8 1 9 8 9 開花開始期 最盛期 開花終期 5/2 5/2 5/10 5/9 5/16 5/10 5/9 5/20 5/15 5/1 8 5/16 5/15 5/27 5/25 5/20 5/26 5/2 5 5/2 6 5/24 6/9 6/3 6/9 6/8 6/16 6/15 6/1 6 6/14 注) 1 9 8 9 年はケヤキの開花はみられなかった。 -5- 備 考 楢川調査地 塩 尻 B調査地 長野県林総研究報告第 6号(19 9 2 ) N N 口 コナラ 調査木 N o .5 シラカンノ 吋 N . o6 N o .7 調査木 N o . 9 E W ロ トーー・4 1m ーーー~ ロ1 一 ー ー = = S 口 ↓ N 口o w E ドー. . . . . 1m N ケヤキ S 口調査木削 N ミズキ 2m 調査木 N . o9 W N o .1 2 wI 1 0 1 口。 1 日 IE S トー. . . . . ゴ S 1m 212m N a 2 日 S ミズキ N ミズキ 調査木 N O . 1 1 w 111111111 0 1 11111E ト一一一1 0m S 図 -1 調査木のトラップ配置図 -6ー 長野県林総研究報告第 6号(19 9 2 ) の方が耐寒性が小さい(1)、 ( 2 )ため開花期が遅くなっているものと推測された。 開花期間は表 -5のとおりシラカンパ、コナラが約 2週間、ミズキ、ホオノキが 3週間であった。 これに対しケヤキは 5日間と異常に短かったがこれが一般的といえるのかは判断できなかった。 0日後と判断された。 また、開花の最盛期はケヤキを除いて始期から約 1 なお、各樹種とも固定調査木聞における開花に特別な差は認められず、ほぼ同ーの開花パターン を示した。 ( 2 ) 種子の落下時期 落下状況の調査結果は表 -6に示した。 ア. シラカンノイ 7年は 9月中旬 1 1月中旬で飛散期間は約 2ヶ月間、 8 8年は 1 0 シラカンパの種子の飛散時期は 8 月上旬 1 0月下旬で飛散期間は約 1ヶ月間であった。シラカンパの種子はある程度の乾燥により 8年は飛散時期 種子を被っている果鱗が裂関して風により飛散する性質があることを考えると、 8 0 7 ) 大気湿度も平年比 1 0 5で高かっ にあたる 9月に台風などの影響で降水量が非常に多く(平年比 2 7年に比べて種子の飛散が約 3週間も遅れたものと考えられた。シラカンパの種子の飛 たため、 8 散時期は一般的には 9月下旬以降と考えられた。 イ.コナラ 0月中旬と判断された。 8 8 コナラは 9月中旬 -10月下旬に種子落下がみられ、落下の最盛期は 1 年の落下時期が 1 0月上旬と遅れたのは 8 8年の夏期 (7- 9月)の降水量が非常に多く (平年比 1 4 6 )、日照時間も短く(平年比 6 6 ) 天候不順で、その結果成熟落下が遅れたためと考えられた。 ウ.ケヤキ ケヤキは 8 8年のみしか結実が認められなかった。小沢 (3) はケヤキの結実周期を 2--3年と 0月上旬 1 1月中旬の1.5ヶ しているが今回の結果はこれと一致しているといえる。落下時期は 1 0月下旬であった。 月で最盛期は 1 エ. ミズキ 7 8 8年は 9月上旬 1 1月上旬であり、 8 9年は 9月いっぱいであっ ミズキの種子の落下時期は、 8 た。この差が生じた原因としては、 8 9年は凶作年にあたり結実量が少なくその結果落下終期も早 まったものと考えられた。 8 9年が凶作年であった原因として、一つには花芽分化の時期にあたる前年の 6月の気温は平年 "Cも低く、降水量は平年比 1 9 9で非常に多く天候不順で、花芽の分化には不利な気象条件 より1.6 -6月中旬)の気象が特に低温多雨(気温は平 であったこと、一つには当年の開花時期 (5月下旬 . 7 "Cも低く、降水量は平年比 1 2 9で多かった。)であったため訪花見虫類の活動が低下しそ 年より 2 の結果受粉量が少なくなったことなどが考えられた。 オ.ホオノキ ホオノキは果穂が赤紫色になり袋果の烈聞により中の種子がはじけて落下するが、この成熟落下 1 0月上旬と判断された。 時期は 9月中旬 ( 3 ) 種子の落下範囲および落下量とその季節変動 ア. シラカンノイ 0m以上の飛散距離をもつことが明かになった。 種子の落下範囲は図ー 3に示したように、最長 5 5mの距離内に落 これはシラカンパの種子が極小で翼をもっ風散布型で‘あるためである。また、 1 0mの距離内に落下した種子量に対する割合は 8 7年は 83.8%、8 8年は 9 3. 4 % 、 8 9 下した種子量の 5 -7- 長野県林総研究報告第 6号(19 9 2 ) 表 -6 種子の落下状況 項目 樹種 ( 月 最 日 盛〉期 落 ( 下 月 終 日 〉期 調査年 落下(開月始日〉時期 落下 落下範囲 備 考 シラカンノイ 1 9 8 7 1 9 8 8 1 9 8 9 9/1 4 1 0/ 3 1 0 /2 3 1 0/2 1 1 1/2 0 立木から 50m以上 章 子l i 風により 5 0 m 此飛散する。 11 8 9 年はトラ ップ内の種子全部を 1 回 で 1 0 /3 1 11 採取したので落下時期 l i明かでない。 コ 1 9 8 7 1 9 邸 1 9 8 9 9/1 8 1 0/3 9/16 10/16 1 0/1 3 1 0 /3 0 1 0/2 1 1 0/2 10/3 1 0 /3 1 ケ ナ ヤ フ キ 、 、 ズキ 1 9 8 7 1 9 8 8 1 9 8 9 1 9 8 7 1 9 朗 1 9 8 9 概ね樹冠範囲 11 f 〆 弘8 9 年l i 結実はみられなかった。 8 7 1 1/1 1 11/5 1 1/1 1 9/25 9/ 8 9/ 2 9/7 ト ラ 7プ調査は樹冠下でのみ行ったの で落下範囲は明かでない。 概ね樹冠範囲 落下開始時期に落下量が多い傾向があっ。 た 11 H 11 H 注)ホオノキについてはトラップ調査を行っていないので落下時期は明確に把握できなかったが枝上の果穂の着果状態の観察 により落下期は 9月中旬 -10 月上旬と判断された。 ー -8878 一 2 0 0 0 0 年 年 ・ ・・ 調査木 N o .9 落下種子数 ー 089年 1 0 0 0 0~ ……… . ... . . .\.,. . 制/d O O 1 0 2 0 3 0 4 0 5 0 樹幹からの距離 (m ) 図 -3 シラカパ種子の樹幹からの飛散距離 年は 8 4. 4 %(3カ年平均で 87.2%) であり大部分の種子がほぼ樹高(16m) を半径とする範囲に 落下することが明らかになった。 中野ら (4) はダケカンパの種子は母樹から 120m程度まで飛散するが、樹高を半径とする範囲 に全種子の 63.5-70.6%が落下したと報告しているが、種子の形状と大きさがほぼ等しいシラカン ノても同様の落下様式をもつものと考えられた。 8年の場合、風向 SSE (トラップの方 なお、種子の飛散に対する風の影響をみると、例えば 8 0月中旬の飛散状況をみると 1 0月上・下旬 向は N方向である。)、風速 2m/s以上の風が吹いた 1 に比べて 30m以上の距離により多く飛散していることがうかがえた。これは種子の飛散に対する 風の影響を示唆しているものと思われた。 3 0 0 0 3 5 0 0 0粒/本(調査木 N n9)となった。 落下種子量をトラップ捕獲量から概算すると、 3 0月下旬であっ また、落下量の季節変動をみると図 -4に示したように最盛期をもちその時期は 1 ・ 司F 引』。 イ. コナラ -8ー 長野県林総研究報告第 6 号( 9 9 2 ) 種子の落下範囲は図 -5に示したようにほぼ樹冠下であり、コナラの種子が重力散布型である特 徴が示された。種子落下量が特に S方向で多かった(結実量が多い)のは南向きは陽光量が多く従っ て結実可能な樹冠面積が多いためと思われた。 落下種子量は 5 4 3 7粒/本(単木、 8 7年 ) 、 3 2 6粒 ( 7 7 7 9 0 ) /本 ( 8 8年 ) 、 7 3 2粒 (0-2192) /本 ( 8 9年)で、 8 7年は全県的にも豊作年であると判断された。 0月中旬に最盛期をもっていた。 落下量の季節変動をみると図 -4に示したように 1 ウ. ケヤキ 8 7年と 8 9年は結実がなかったが 8 8年について落下種子量をトラップ捕獲量から概算すると 2 2 0 0 00-55000粒/本となった。落下量の季節変動は図 -4に示したように最盛期をもちその時期は 1 月下旬であった。 エ. ミズキ 種子の落下範囲は図 -6に示したようにほぼ樹冠下であり、ミズキの種子は重力散布型の特徴を 8 もっているものと判断された。落下種子量をトラップ捕獲量から概算すると豊作年と思われる 8 年で 3 0000-39000粒/本となった。落下量の季節変動は図 -4に示したように、落下始期に多く その後減少する傾向があった。これは成熟した種子がまず一斉に落下を始め、そのご成熟の遅れた 一部の種子が落下するためこのような落下様式をとるのではないかと恩われた。 4 0 0 1 下 種 子 数 制 /d 落 ._ W N . o7 調査木 . . . .E ( 樹冠半径 4m) 3 0 0・. . . .. 2 0 0十.. . .・・...…・ 円r.--......:..:γ H 一 二~且 ー … ・ 1 0 0j …… …・ ー -N --s . . 二で … … …… H ・ H ・. ~とに…… ……… ・ ・ ….X ここと見込プ 斗… ・ ..…・ 2 3 4 樹幹からの距離 (m) 図 -5 コナラ種子の方位、距離別の落下量 調査木 N o . l1 落下種子数 1 6 0 0・… ー 一 一 … 一・ …/ … λ ・・…・・ … ・・ … … …-… -一一 ・ ・ー 附 l . . ./ ベ入¥ 附/d J … .. ……一・ ….¥…χ ¥¥ h z ? ¥ 、ιがよ; 、 三 : 1 E( 枝張 り 5m ) s( 1 1 1 1 " 、ー.晶 』 o j. . ; ..….. . . . . . . .. . . . .…ぐ川町 ・ … 0 0~ .. ... . :: ,: . . ... … … ・ ・・ ・ ・ー 了-N W (H ( 、 γ ー グ ト 2 樹幹か らの距離 (m) 図 -6 ミズキ種子の方位、距離別の落下量 -9- 3. 2 m ) 831) 1 0r 長野県林総研究報告第 6号(19 9 2 ) シラカンノイ 1 2 0 0 0 洛 /'・¥落下量 / ¥ 1 0 0 0 0 下 ノ ¥ 8 0 0 0 a a τ 落下時期 u 内ノ / 口 F ・ 、 J/ 2 0 0 0 つunun口 ( 胡 1 0月 1 1月 採取時期 9月 1 2月 8 0 0 6 0 0 1 0 0 8 0 6 0 4 0 2 0 4 0 0 2 0 0 9月 1 0月 発芽率制問 落下種子数制 コナラ 1 0 0 0 1 1月 採取時期 ぺ 下 量 9月 1 0月 発芽率制問 AUnununU 川 UAUnunu n u u ハ UU ハ川 U 内u 川 nunUAU 凡 W AqqtunL'i 落下種子数制 ケヤキ 1 0 0 8 0 6 0 4 0 2 0 1 1月 採取時期 落下種子量附 ミズキ 4 0 0 0 、、、落下量 ¥ 3 0 0 0 ¥ 2 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0四 8 0 6 0芽 4 0申 2 0 ' 尽実率¥ /U 落下時前¥三〉こ 9月 1 0月 (幼} 1 1月 採取時期 図 -4 種子落下量と充実率の季節変動 -10- 発芽率附 / / 発芽率¥ 0 0 0 子 6 量 4 0 0 0 11 種 長野県林総研究報告第 6 号(19 9 2 ) ( 4 ) 結実状況 固定調査木の結実状況を表ー 7に示した。 ア シラカンノイ 固定調査木の結実状況をみるとどの個体も年により結実の多少はみられるものの全体的には 8 0 %の立木で 3年間結実がみられ、ほぼ連年結実の傾向があると判断された。 5 )とされているが、これは今回の調査結果と一致していると考 なお、シラカンパは毎年結実する ( えられた。 イ コナラ 8に示したように 5 4 3 7粒/本 ( 8 7年)、 3 2 6粒 (77-790)/本、 ( 8 8 年 ) 、 7 3 2粒 (0-2192)/本 ( 8 9年)であった。また、固定調査木の結実状況をみると 8 7年は個 0%の立木で結実が多かったのに対し、 8 8年、 8 9年は 体間で結実のばらつきがみられるものの、 3 7年は全県的にも豊作年にあたっていた。 調査木のすべてにおいて結実は少なかった。なお、 8 6 )は鳥取県下のコナラの結実量は、平均で l本当り 1 9 9 2 0 6 7粒であったと報告している。 有吉( コナラの推定結実量は表ー nf当りの健全種子落 また、橋詰(7)はコナラの豊凶の基準として鳥取県下のコナラ林においては 1 下数が 4 0 6 0粒のとき豊作、 2 0 4 0粒のとき並作、 2 0粒以下のとき凶作とみることができるとし 7年 6 0粒、 ている。本調査における充実種子を健全種子と考えて健全種子落下数を算出すると、 8 8 8年 O粒、 8 9年 0 1 4粒となり、この基準をあてはめれば 8 7年は豊作、 88-89年は凶作と判断 される。 なお、橋詰(7)はコナラの結実は ウ 1--4年の間で豊凶を示し、一定の周期を持たないとしている。 ケヤキ . 8 7 8 9年は結実がなかったが、 8 8年は固定調査木のすべてにおいてほぼ樹冠の全面に結実がみ 7と 8 9年は凶作、 8 8年は豊作と判断された。小沢 ( 3 )はケヤキの結実周期を 2られた。従って 8 3年としているので今回の結果はそれと一致していると考えられた。 エ ミズキ 7に示したように 8 7 8 8年は 8 0 1 0 0 %の立木で結実が多くみられ、 9年は全体に結実が少なく 40%の立木は結実が認められなかった。 個体間変動も小さかったが、 8 7年は 8 0 0 0 5 1 0 0 0粒/本、 8 8年は 3 0 0 0 0 3 9 0 0 0粒/本 また、結実量も表 -8に示したように 8 であったのに対し、 8 9年は 2 0 0 3 0 0 0粒/本で明らかに結実は少なかった。従ってこれらのこと 7-88年は豊作年、 8 9年は凶作年と判断された。 から 8 9年が凶作年であった原因と 一般的にミズキはシラカンパと問機毎年結実するとされている。 8 2 ) 種子の落下時期でも述べたように前年の花芽分化時期の低温多雨、当年の開花時期の低温 して、 ( ミズキの結実状況は表ー 多雨などが考えられた。 オ ホオノキ ホオノキの結実は個体によるバラツキが大きく、また同じ個体でも年変動が大きかった。また、 推定結実量は 8 7年 1 0 7粒/本、 8 8年 6 2粒/本、 8 9年 6 2粒/本であった。ホオノキはほぼ隔年結 5 )とされているが今回の結果はこれと一致しているとはいえず、豊凶周期は判然としなかった。 果( ( 5 ) 種子の発芽率(充実率)と採取適期 種子の発芽率あるいは充実率から採取時期を考えてみた。 ア シラカンノイ 図 -4、表 -8に示したように 3カ月間を通して発芽率は約 8%で時期別の変動は小さかった。 -11- 長野県林総研究報告第 6号 ( 1 9 9 2 ) 衰 -7 固定調査木の結実状況 種 樹 シラカンノイ 云 々 そ コ ナ フ ケ キ 1 9 8 7 1 9 回 1 9 8 9 、 、 ズキ ホオノキ N . a2 N . a3 . a4 N N . a5 N . a6 . a7 N N . a8 O O ム ム O ム ム ム ム ム × ム ム ム O ム ム ム × 。 ム ム ム O × × × × 。。 ム ム ム ム ム ム ム ム ム ム ム ム × × × × × × 1 9 8 7 1 9 8 8 1 9 8 9 1 9 8 7 1 9 8 8 1 9 8 9 ヤ N . a1 1 9 8 7 1 9 8 8 1 9 8 9 1 9 8 7 1 9 腿 1 9 8 9 ム . a9 N N . a 1 0 O 。。 。 。。 ム ム ム ム ム ム ム ム ム ム × × × × × × × ム × ム × O 。。。。。。 。。。 。。。。。。。。 。。。。。。 。。。 。 。 @ × × × × × × × @ ム ム × × × ム ム ム ム ム ム ム × O O ム × × ム × × ム O ム ム ム ム ム × × ム × O ム × × 注1)結実状況は多:(③、注 :0 、少:ム、無 xのように表示した。 注2 ) ホオノキの結実については樹上の果種数が 7個以上が多、 4-6個が中、 1-3個が少、 O個が無とし て判定した。 表 -8 結 実 量 樹種 調査年 調査木N . a コナラ 1 9 8 7 1 9 8 8 1 9 随 1 9 8 8 1 9 8 9 1 9 8 9 1 9 8 9 7 5 6 7 5 6 7 1 9 8 7 7+近隣木 3本 1 1 7 9 1 2 7 9 1 2 ミズキ 1 9 8 7 1 9 8 8 1 9 8 8 1 9 8 8 1 9 8 9 1 9 8 9 1 9 8 9 樹高 (m) 1 6 1 4 1 3 . 5 1 6 1 4 1 3 . 5 1 6 1 5 . 51 7 . 5 2 2. 5 1 7 1 7 1 6. 5 1 7 1 7 1 6 . 5 胸高直径 推定結実量 (咽) (個) 2 3 2 2 2 2 2 3 2 2 2 2 2 3 1 5 . 5 2 5 . 5 5 0 2 2 . 5 2 3 2 4. 5 2 2 . 5 2 3 2 4 . 5 5 4 3 7 1 1 2 7 7 7 9 0 O 4. 5 2 1 9 2 8 4 6 5 5 1 1 2 9 3 部4 4 3 8 7 4 5 3 0 3 9 7 3 0 5 9 1 7 0 3 9 7 注1)結実量はトラップ面積当り種子落下量に樹冠投影面積を乗じて 求めた。 -12- 長野県林総研究報告第 6 号( 1 9 9 2 ) 一般的な発芽率は約 5%とされている ( 8 )ので、本調査結果では高い発芽率を示したといえる。 4 )はシラカンパ種子の発芽率は採取時期によりかなり差があり 9月下旬 1 0月上 なお、中野ら ( 2 1 8 %と高く、この時期は落下量の最盛期とも一致しておりこれを種子の 旬に採取したものが 1 採取適期としている。しかし今回の調査結果では、本県におけるシラカンパ種子の採取適期は明ら かでなかった。 イ コナラ 発芽率(充実率)の採取時期別変動をみると、図 -4、表 -9に示したように 8 7年の発芽率が 52%と高く、特に落下種子量が多かった 1 0月中旬には 7 6 . 8 %を示した。コナラの一般的な発芽率 0%とされている ( 8 )ので、この時期は高い発芽率を示している。また発芽率の年変動をみると、 は6 7年は 5 2 . 0 %と高く、結実量の少ない 8 8年、 8 9年はそれぞ 表ー 9に示したように結実量の多い 8 2.4%、 0 3 2 . 2 %と低い傾向がうかがえた。 れ0 なお、橋詰ら ( 9 )は発芽能力からみたコナラの成熟期は 1 0月中旬であり、この時期は自然落下の 最盛期でもあると述べているが、これは今回の調査結果とほぼ一致していた。これらのことから本 県中部におけるコナラ種子の採取適期は ウ 1 0月中旬であると考えられた。 ケヤキ 採取時期別の充実率は図 -4に示したように 60%前後で推移しその変動も小さかった。単純に 比較はできないものの、今回の結果はケヤキの一般的な発芽率 4 5 % ( 8 )とくらべて高い数値を示し f こ 。 なお、石井ら1 ( 日はケヤキの種子は 1 0月下旬以降に採取したものは 50%前後の高い発芽率を示し、 1 0月下旬から 1 1月上旬が種子の採取適期であると述べているが、今回の調査結果では本県中部に おけるケヤキ種子の採取適期についてはまだ即断できない。 エ ミズキ 採取時期別の充実率は図 -4に示したように種子落下量の多い 9月上旬から下旬までは 4 4 6 8 %と高く、それ以降は落下量の減少にともない低下する傾向にあった。ミズキの一般的な発芽率は 50%とされている ( 8 )ので 9月は高い充実率を示したといえよう。 8年は 4 7 . 7 %と高く、結実 また、充実率の年変動をみると表 -9に示したように結実量の多い 8 9年は 5 . 3 1 0 . 5%と低かった。 量の少ない 8 これらのことから本県中部におけるミズキ種子の採取適期は充実率の高い 9月上旬であると考え られた。 4 まとめ シラカンパ、コナラ、ケヤキ、ミズキ、ホオノキについて開花時期、種子の落下時期、落下量と 発芽率あるいは充実率の季節変化、結実量などを把握した。結実と発芽率については樹種特有の年 周期性の影響を受けることが多いので今回の 2--3年の継続調査では普遍的な結果が得られたとは いえない。しかし、本県中部における傾向として評価できると考えた。 (1)開花 シラカンノイ、コナラ、ケヤキは 5月に開花期をもち、ミズキ、ホオノキは 6月に開花期をもって いた。前者は受粉を風媒に依存しているため大気湿度の高い梅雨期を避けているものと考えられた。 これに対しミズキ、ホオノキは受粉を虫媒に依存しているため訪花昆虫類の活動種数および生息密 度が急激に高まる 6月に開花期をもつものと考えられた。 -13- 長野県林総研究報告第 6号 ( 9 9 2 ) 表 -9 種子の稔性 調査年 調査木N . o 樹種 シラカンノぜ 2(6. 3 1 1 . 5 ) 8/4-10/30 8. 発芽率を匪充実率を考えた。(一般発芽率 5 9 6 ) 1 9 8 7 1 9 8 8 7 5 6 7 5 6 7 2. 0(0 7 6 . 8 ) 9/18-10/30 5 10/3-10/21 2 . 4 (0 - 5. 9 ) (一般発芽率6 0%) 3 9 7 9 1 2 9. 2( 4 4. 0-67. 0 ) 10/3-11/11 5 9/2-11/11 4 7 . 70 8 . 0 6 8 . 0 ) 5 . 3 ( 5 . 0 -5 . 8 ) 9/7-9/25 I f 7. 8(6. 9-9 .1 ) 11 1 0 . 5(0 3 3 . 3 ) 11 フ I f 11 ヤ キ 、 、 ズキ 考 9 1 9 8 9 ケ 備 1 9 8 9 If コ ナ 匪充実率(%) 採取時期 1 9 8 8 1 9 8 8 1 9 8 9 11 11 11 2. 4 (0 - 4. 4 ) 11 9/16-10/2 I f I f 。 。 。 3 2 . 20 5 . 8 3 6 . 7 ) (一般発芽率4 5%) (一般発芽率5 0%) 注)一般発芽率は「樹木のふやしかた(里見薫他、関西林試連協育病部会) J による。 ( 2 )種子の落下時期と落下範囲 0月に始まり、概ね 1 1月 種子の落下時期はシラカンノイ、コナラ、ミズキ、は 9月に、ケヤキは 1 上旬まで継続していた。またその落下の最盛期はシラカンノイ、コナラ、ケヤキは 1 0月中下旬であっ 1 0月と判断された。 たのに対し、ミズキは 9月上旬であった。ホオノキの成熟落下時期は 9月 種子の落下範囲は、シラカンパでは大部分の種子が樹高を半径とする範囲に落下した。またその 種子は風飛散型で極小かっ翼があるため最長 50m以上飛散することもわかった。 コナラ、ミズキは概ね樹冠下に落下し、重力散布型の特徴を示していた。 ( 3 ) 種子の発芽力と落下量 結実種子の発芽力(発芽率あるいは充実率)の季節変化をみると、コナラ、ミズキの発芽力(充実 率)は落下種子量と正の相関を示し、コナラは落下最盛期の 1 0月中旬に 77%と高い発芽率を示し、 ミズキは落下始期の 9月上旬に 68%と高い充実率を示した。 0月中旬、ミズキのそれは 9月上旬と考えられ 従って、コナラ種子の採取適期は落下最盛期の 1 f こ。 これに対しシラカンノヘケヤキのそれは特別なピークをもたずそれぞれ 8 % 、60%程度で推移し た 。 また豊作年の発芽力はコナラ、ミズキは一般にいわれるように高い数値を示した。 ( 4 )結実状況 シラカンパは 3年間の調査木の結実状況からみて連年結実の傾向があると考えられた。 7年は豊作、 8 8 8 9年は凶作と判断された。また豊作年の 8 7年の結実量は約 5 4 0 0粒 コナラは 8 8 8 9年のそれは約 3 0 0 7 0 0粒/本と推定された。 /本、 8 7年と 8 9年は凶作、 8 8年は豊作と判断された。 ケヤキは 8 7 8 8年は豊作、 8 9年は凶作と判断された。また、豊作年の 8 8年の結実量は約 3 0 0 0 0 ミズキは 8 3 9 0 0 0粒/本、 8 9年のそれは約 2 0 0 3 0 0 0粒/本と推定された。 2 1 0 7粒/本と推定された。なお豊 ホオノキの結実は個体間および年変動が大きく、結実量は 6 凶周期は明らかでなかった。 -14ー 長野県林総研究報告第 6 号(19 9 2 ) 引用文献 3 7 9 . . . . . . . . 3 8 2、 1 9 7 2、日本林学会誌 1)酒井 昭:樹幹の耐凍性 2) 酒井 昭他:日本における常緑及び落葉広葉樹の耐凍度とそれらの分布との関係 1 0 1 1 1 1、 1 9 7 5、日本生態学会誌 3)小沢準二郎:林木のタネとその取扱い 1 3 . . . . . . . . 1 7 、1 9 5 8 日本林業技術協会 4) 中野実他:カンパ類の下種更新 3 7 . . . . . . . . 4 7、 1 9 6 8、函館営林局 5)公立林業試験研究機関共同研究グループ:有用広葉樹の増殖技術 8 3 6、 1 9 8 3 6)有吉邦夫:特用広葉樹の開花結実の実態調査 1 4 . . . . . . . . 2 2、 1 9 8 4 、鳥取林試研報 7 )橋詰隼人:コナラ二次林における種子生産 1 9 . . . . . . . . 2 7 、1 9 8 7 鳥取大学農学部広葉樹開発実験室 8)里見薫他:樹木のふやしかた 5 2、6 0 、6 6 、7 8 、2 0 3、 1 9 8 0 関西林試連協育苗部会 9) 橋詰隼人・尾崎栄一:クヌギおよびコナラの果実の発達と成熟 1 8 9 . . . . . . . . 1 9 5、 1 9 7 9、鳥取大農研報 1 0 )石井幸夫・井上 雄:ケヤキ種子採取の時期と方法 1 9 5 . . . . . . . . 1 9 61 9 7 68 7回日林論 phJU
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