10号 99.12.21 2:46 PM ページ 2 ●第10号●1999年12月10日●編集・発行/日本サーボ株式会社 第10号 日本サーボの新しい波 10号 99.12.21 2:46 PM ページ 3 TOPICS 2 新製品紹介 産業用ロボットや搬送機器の曲げ又は回転動作部の電気的接続に スリップリングSシリーズ 小形モータの省エネ・低電力対策 アウターロータ型ブラシレスモータの高効率化対策 研究所 副技師長 虻川 俊美 4 ■ アウターロータ型ブラシレスモータとは? ■ 損失分離法 6 ■ 高効率化対策事例 エネルギー3.6%(原油換算) 、廃棄物20%を削減 ISO14001 桐生工場 環境センタ主任技師 坂庭 博 9 10 11 13 ■ 日本サーボの環境活動への取組 ■ 認証取得の経緯 ■ 認証取得における留意点 ■ 今後の課題 産 さ 疲 リ 種 空 ※ イ 10号 99.12.21 2:47 PM ページ 4 TOPICS 特長 ■接触抵抗が小さく微小電流でも使用 可能 ■ブラシは低接触圧構造により、 長寿命(数 千万回転) ■ブラシの接触圧が低いため回転トル クが小さい ■許容回転数が高く (1200r/min)、高 速でも使用可能 ■ブラシ形状が単純であるため、小形化 用途 ロボット・搬送機器・測定機器 省力機器・医療機器・防犯機器 産業用機器において、使用されるモータ及びセンサの数が複雑になってくると電線の数も増え、 また長 さも長くなることから配線も複雑になってきています。とくに曲げや回転動作部では電線の動きも激しく、 疲労による断線という問題が生じてきます。これらの問題を解決してくれるのがスリップリングです。ス リップリング(Sシリーズ)は多極構造なので複数の信号線の接続が最大で48極(S70)まで可能です。 種類も豊富で、 φ12mmの超小型からφ290mmの特大まで、 また小電流タイプから大電流タイプ、中 空軸タイプ、扁平タイプの各特殊型までラインナップは充実しており用途やスペースは問いません。 ※詳しくは、 スリップリングカタログをご請求願います。 インターネット http://www. japanservo. co. jp よりダウンロードもできます。 2 10号 99.12.21 2:47 PM ページ 5 「省エネ・低電力対策」 特集 アウターロータ型ブラシレスモータの高効率化対策 研究所 副技師長 虻川 俊美 地球環境保護の拡大によってOA・AV機器への省エネルギー化要求が急速に高ま っています。これらの機器に搭載される小型モータもこ の波をさけて通ることは出来ず, 要求に正対した開発努力をモータメーカ各社がしのぎを削っています。 OA・AV機器用モータとして使用されているアウターロータ型ブ ラシレスモータ を対象に省エネルギー化を達成するために, 電力測定 による制御回路とモータ部の 損失分離, モータ損失の分離法及び高効率化のためのモータ部の対策事例などを紹 介します。 第1図 アウターロータ型ブラシレスモータ 3 10号 99.12.21 2:47 PM ページ 6 巻回されるスロット数と回転子の磁石の極数は アウターロータ型 ブラシレスモータとは? 12 :10です。コイルは集中巻で,1スロットに n本巻回されています。 (1) モータ構成 軸中心側に固定子のスロットに巻回されたコイ 損失分離法 ルがあり,これを包み込むようにカップ状のケ ース内に磁石が設けられた回転子が軸に固定さ れて回転するアウターロータ構造です。また, (1) 制御回路とモータ損失分離 固定子が取付けられるカバーには,回転子の磁 電源入力(制御回路入力に等しい。なお,以下 極位置を検出するホール素子のセンサや,セン 制御回路入力は回路入力と呼称する)P1は,ア サからの出力信号に応じて回転磁界を構成する ナログ電流計と電圧計の読値の積です。 駆動回路,モータ定速制御を行うPLL( Phase 制御回路出力(以下,回路出力と呼称する。モ Locked Loop)部等を構成した市販の3相バイポ ータ入力と等しい)P2は3相デジタル電力計の ーラ通電用IC等が基板上に設置されていま 読値で求められます。モータ出力は定数とトル す。 (第1図,第2図参照 ) クTと回転数Nの積で求められます。従って, ブラシレスモータの主な仕様は,3相ブラシ 回路損失はP1−P2の差,モータ損失はP2−P3 レスモータで,電源電圧は24Vdcでモータの定 の差で算出されます。( 5頁・第3図参照 )なお, 格出力は約12Wです。また,固定子のコイルが この損失分離を行う時に,次のモータ損失の銅 第2図 モータ構造図 ケース コイル 62mm 磁石 軸 回転子 35. 6mm 基板 コイル 固定子 カバー スロット 固定子拡大図 4 10号 99.12.21 2:47 PM ページ 7 「省エネ・低電力対策」 損を算出するためのモータ電流(交流分で実効 率を高めることが重要です。 値)を測定しておくことが必要です。 (4) 永久磁石界磁鉄損と機械損 (2) モータ損失 モータ損失の永久磁石界磁鉄損と機械損の試験 モータの損失としては,( 6頁・第4図 )に示す について述べます。まず磁石を着磁した回転子 ように固定子のコイルに流れる電流による銅損 と,着磁をしていない磁石の2種類の回転子を と,固定子の電磁鋼板に発生する鉄損及びボー 準備し,それぞれモータに組み込みます。試験 ルベアリング損と風損の和である機械損に分離 装置は,ベース上に駆動モータとトルクを測定 されます。ここで,鉄損は,磁石の磁束により するトルク検出器を介し,2種類の回転子を組 電磁鋼板に発生するうず電流損とヒステリシス み込んだモータをカップリングを介して結合し 損の和の永久磁石界磁鉄損と,コイルに流れる ます。外部駆動モータにより,供試モータが回 電流によって固定子の電磁鋼板に発生する電機 転され,トルク検出器に接続したトルクメータ 子電流鉄損の2つに分離されます。 出力のトルクと回転数の積である電力W1とW2 が求められます。 (3) 各部の効率 着磁有の回転子を組み込んだ電力W1には, 回路とモータ効率及び回路とモータ効率を積し モータに電流を流していないので,永久磁石界 た総合効率ηは第1表のように表されます。省 磁鉄損と機械損の合計の電力,無着磁回転子の エネルギー化を達成するためには,この総合効 モータでは,機械損W2が求められます。この 第3図 制御回路とモータ損失分離回路 モータ電流 3相電力計 直 流 電 源 V 24V カップリング A 制御 回路 M 5V モータ 回転数 N ( r/min ) トルク T ( kgf-cm ) 電源入力(回路入力)P1=〔 i Adc〕×V〔Vdc〕〔W〕 回路出力(モータ入力)P2=3相電力計読値 〔W〕 モータ出力P3=1. 027×T×N 〔W〕 2 W) モータ損失 P2―P( 3 W) 回路損失 P1―P( 5 負 荷 装 置 10号 99.12.21 2:47 PM ページ 8 W1とW2の差を求めると永久磁石界磁鉄損が得 られます。一方,W2の機械損には,ボールベ アリング損と回転子の風損が含まれます。 (7頁・第5図参照) 0.35mm)で構成しました。 なお,対策前後とも,固定子のみを変えただ けで,基板の制御回路構成及びそのパワー素子, ホール素子位置も全く同じ条件です。また,電 源入力には第3図に示した制御回路の電源5V系 高効率化対策事例 (1) 対策前・後のモータ仕様 の電力は含まれていません。 (8頁・第2表参照) (2) 対策前後の損失と効率 モータの対策前の仕様は,1スロットに巻回さ 対策前後の供試品について,電源電圧24Vdcで れたコイル線径は,φD1でnターン巻回され, 回転数1795r/minの定速条件で試験した結果に 固定子の電磁鋼板材質は50A600材(旧JIS記号 ついて述べます。 S2 3,厚み0.5mm)の仕様です。これに対し,対 ① 回路とモータの損失を加えた全損失は,対 策1はモータ電流と銅損の低減を目的に,電磁 策前の6Wに対し,対策1では4.5Wと1.5W低 鋼板材質を変えず,線径をφ1.08D 1と太く,し 減し,対策2では4Wと対策1に対して更に0.5W かもターン数を1.2nと増加したものです。ま 低減し,対策前に対しては全損失が2W低減さ た,対策2は,対策1のものと線径とターン数 れました。その結果,電源入力も該記割合で入 は変えず,電磁鋼板材質を鉄損の小さい高グレ 力が低減され,省エネルギー化されます。この ード材質の35A300(旧JIS記号ではS12厚み ように対策品で損失が低減した理由はモータ電 第4図 モータ損失の内訳 第1表 各部の効果 6 10号 99.12.21 2:47 PM ページ 9 「省エネ・低電力対策」 流が小さくなったことにより,モータ損失の銅 これに対し,モータ効率は対策前に対し,対策 損とさらに回路のパワー素子のドロップ電圧の 2では78.5%から87%と約9ポイント向上していま 低減効果によります。また,対策2では,固定 す。従って,総合効率も対策前の65.3%から対 子の電磁鋼板の高グレード化による鉄損の減少 策2では73.8%と8.5ポイント向上しました。 (8 により,モータの無負荷電流がさらに減少した 頁・第2表,第6図参照) ことによります。 小型モータに対する省エネルギー、省電力化 ② モータ損失の内訳は,銅損と永久磁石界磁 要求はますます強くなってきています。この要 鉄損の両者で80%以上を占めます。対策前のモ 求に対し、モータとしては、コストパフォーマ ータ損失3.1Wに対し,対策1では太線とコイル ンスを重視しつつ、コイルの整列巻によるコイ 巻回数を増やしたことにより,銅損が0.5W低減 ル専有率の向上を目ざした巻線技術と、電磁鋼 されています。また,対策2では電磁鋼板の高 板の高いグレード化適用とともに磁石材料、低 グレード化により永久磁石界磁鉄損が 0.6Wと 損失軸受および磁界解析による最適磁気回路、 対策前及び対策1に対し,約半減されています。 低消費電力制御回路等の幅広い技術の融合をは 一方,今回の供試品では,測定データのばらつ かり、省エネ、省電力化を目ざしていきます。 きがあるが電機子電流による鉄損はほとんど発 参考文献 生していません。 ③ モータ部のみで高効率化対策を実施したの で回路効率は対策前後で大きく変化しません。 ●谷腰:ブラシレスモータと制御回路;総合電子出版、昭61-3 ●新日本製鐵:電磁鋼板カタログ及びわかる電磁鋼板 出稿:「エレクトロニクス」オーム社刊 第5図 永久磁石界磁鉄損と機械損側定装置 トルク検出器 駆動モータ 供試モータ デジタルトルクメータ カップリング カップ リング ベース 着磁有磁石回転子電力 W1=1. 027×T1×N〔 1 W〕 027×T2×N〔 1 W〕 着磁無磁石回転子電力 W2=1. W1:永久磁石界磁鉄損+機械損 W2:機械損 W1 − W2:永久磁石界磁鉄損 7 10号 99.12.21 2:47 PM ページ 10 第2表 対策前後の主仕様と効率 項 目 対策前 コイル線径 仕 様 コイル巻回数 電磁銅板材質 対策1 対策2 D1 1. 08D1 1. 08D1 n 1. 2n 1. 2n 50A600 50A600 35A300 電源入力〔W〕 17. 3 15. 8 15. 3 回路出力〔W〕 14. 4 13. 6 13. 0 モータ出力〔W〕 11. 3 11. 3 11. 3 電源〔Adc〕 0. 72 0. 66 0. 64 モータ〔Arms〕 1. 03 0. 81 0. 78 回路〔%〕 83. 2 86. 1 85. 0 モータ〔%〕 78. 5 83. 1 87. 0 総合〔%〕 65. 3 71. 5 73. 8 電 流 効 率 第6図 全損失とモータ損失内訳 対策前 対策1 回 路 損 対 策 前 モ ー タ 損 6. 0 3. 1 2. 9 機械損 回 路 損 モ ー タ 損 4. 5 2. 3 2. 2 回 路 4. 0 損 2. 3 モ ー タ 損 1. 7 電機子電流鉄損 0. 2 0. 3 機械損 機械損 0. 3 モ ー タ 損 失 対策2 3. 1 永久 磁石 界磁鉄損 1. 3 銅 損 1. 3 0. 3 銅 損 4. 5 0. 8 2 永久 1. 磁石 界磁鉄損 銅 4. 0 損 永久 磁石 8 6 0. 界磁 0. 鉄損 8 10号 99.12.21 2:47 PM ページ 11 ISO 14001 日本サーボ(株)桐生・瓜連サイト エネルギー3.6%(原油換算), 廃棄物20%を削減 桐生工場 環境センタ主任技師 坂庭 博 小型モーター専業で初の取得 エネルギーなど29件の有意な環境側面 廃棄物処理業者なども登録・管理 日本サーボ㈱桐生サイトは、日本サーボ株式会社桐生工場と系列会社のサーボテ クノシステム株式会社・本社・群馬工場で構成され、 '98年2月に日本環境認証機構(略 称:JACO)からISO14001規格の認証を取得しました。小型モータ専業メーカで は初の認証取得と自負しています。さらに、99年3月には日本サーボ株式会社瓜 連工場も追加認定され、現在の認証書には桐生・瓜連サイトとなっています。 ISO14001は'94年に取得済みの ISO9001 と異なり環境側面や法規制の特定、 継続的改善等、新しい概念で戸惑いが多かったのですが、認証を取得でき、 これで 国際企業としての要件を満たせたと考えます。以下に当サイトの認証取得までの 経緯とシステムで留意した点を紹介します。 日本サーボの環境活動 への取組 が認識され、環境保全活動が企業の重要なテ ーマとなってきました。これにともない、環 境保全活動の公平性、透明性を確保するため、 当社の環境保全活動は本社環境センタ、各 工場の安全衛生委員会環境部会が中心とな り、自主管理活動として推進してきました。 制定されるに至りました。 当社は精密小型モータとその応用製品を開 具体的な例として、'90年度トリクロロエチレ 発、設計、製造しています。国内に2工場と ン全廃、'93年度フロン、トリクロロエタン等 系列会社の他、シンガポール、インドネシア オゾン層破壊物質全廃、'96年度特定臭素系難 バタム島、中国の3カ所に海外工場があり、 燃材使用廃止等が挙げられます。 国際規格取得は避けて通れない状況にありま 一方、国際的には、地球環境保全の重要性 9 客観的な基準として、ISO14000シリーズが した。また、 親会社の (株) 日立製作所環境本部 10号 99.12.21 2:47 PM ページ 12 の指導もあり、早期認証取得を決意し、取り '96年9月に両社でキックオフを行い、全従 業員に認証取得を宣言しました。翌日から具 組みました。 体的活動の第1歩として廃棄物の分別排出を 認証取得の経緯 実施し、意識の高揚を図りました。 環境マニュアル、規格類は他社の例を参考 認証取得の経緯と審査の主な指摘事項を次 に当社版を作成しました。環境側面特定に関 に示します。(図 -1)'96年1月に ISO 14001委員会 する規定(環境影響評価規定等)を優先して作 を設置し本格的取組を開始しました。 成し、実際に評価を行い、修正する作業を繰 ISO14001委員会の下に取得準備の実行部 り返しました。 隊として分科会を設け、活動環境整備[廃棄 '97年4月に当社版仮環境マニュアルを完成 物置場、危険物倉庫の新設・改修等]、情報 し、5月に予行審査を受査しました。予行審 収集[外部情報や他社規格入手等]、規格類 査は規格要求事項とシステムの整合性確認等 作成を分担して推進しました。 で効果的でした。予行審査では環境影響評価 当初は桐生工場単独で取得する予定でした が、JACOとの打ち合わせ過程で、サーボ の客観性、法規制特定内容、教育訓練の教育 内容に関する指摘がありました。 テクノシステム(株) (旧、日本サーボ群馬)を 指摘を基に最終的な修正を行い、6月に環 含む認証取得が可能との見解を得て、日本サ 境マニュアル第1版を発行しました。運用開 ーボ㈱桐生サイトとして認証を取得することに 始に合わせ組織を取得組織から運用組織に切 方針を変更しました。 り替えました。ISO14001委員会は環境委員 図−1 取得経過 平成8年('96年) H10('98) 平成9年('97年) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 1. 審 査 契約 書類 実査 環境整備 キックオフ 2. 事業所活動 桐生 STS 環境整備 ISO14001委員会(取得組織) 3.委 員 会 活 動 レビュー・修正 原案作成(他社読替) 4. 規定類 マニュアル 業 務 手 順 (SES) 作業指示 4. 教 育 部 課 長 全 員 有意な業 4. 法規制 特 定 届出見直 環境測定 7. 環 境 影 響 評 価 8. 環 境 方 針 9. 目 的 及 び 目 標 10. 環 境 管 理 計 画 11. 環 境 委 員 会 12. 内 部 監 査 予行 初動 本審査 環境委員会(運用組織) 運用開始 見 直 し 見 直 し 10 10号 99.12.21 2:47 PM ページ 13 事例別「省エネ・低電力」実践テクニック 会に、各分科会のメンバーは環境管理センタ しているペール缶脱油機を増設し、ショップ 等の新組織に組み込み、それまでの経緯が継 毎、切削油毎に設置しました。その結果、搬 承されるよう配慮しました。 送による汚染を防止するとともに、脱油後の 9月に内部監査を実施し、10月に初動審査 を受査しました。初動審査では環境影響評価 及び有意な環境側面の登録、是正処置システ 油の再使用も可能となりました。 2.当社の環境マネジメントシステム の概容 ム、環境内部監査チェックリスト、環境に有 ①組織体制 意な業務の手順書に関する指摘がありまし 当社の環境管理組織体制を(12頁・図 -3)に示 た。 します。桐生工場長を経営層とし、部又は課 初動審査の指摘を是正し、環境内部監査と を管理単位(部門)としました。サーボテク 経営層による見直し(環境委員会)を行い、 ノシステム(株)本社・群馬工場は1部門と 1月に本審査に臨みました。本審査では有意 いう位置付けにしました。 な環境側面と環境方針・目的及び目標の関 運用管理は、サイト全体と各部門の2階層 係、有意な環境側面の判定基準、記録の記載 で行います。サイト全体の運用管理は、環境 不足が指摘されました。是正を報告し、'98 管理センタがシステム文書、直接環境影響評 年2月23日の判定委員会で認証を取得するこ 価と登録、目的・目標の設定を、環境設計分 とができました。 科会が製品の環境影響評価と登録を、環境管 理分科会が製品を除く間接影響評価及び登録 認証取得における留意点 をそれぞれ担当します。また、各分科会は環 境管理プログラムとパフォーマンスの管理を 1.環境整備 ①廃棄物置き場の集約 担当します。 部門は環境側面が同等で管理の責任が明ら 廃棄物置場を新設又は改修し、従来、建屋 かな最小単位で、自部門に関連する運用管理 毎に分散していたゴミ箱を一カ所に集約しま を行います。但し、電気、都市ガス等のエネ した。(図- 2)廃棄物置場はゴミとリサイクル ルギーは部門毎のデータ収集が難しく、管理 品の置き場を分け、分類毎に容器を準備しま 可能な部門の集合(ブロック)を設け運用管 した。排出時に計量・記録するため秤を設置 し、排出時間を限定して、管理者を置きまし た。各職場に同じ分類の一時置場を設け、排 出時点からの分類を徹底しました。 ②切削屑処理の改善 当社では機械加工部門があり、切削屑が発 生します。リサイクルするため廃棄物の面で は問題ないが、切削屑に付着する切削油は環 境汚染に繋がります。そこで、従来から使用 11 図−2 10号 99.12.21 2:47 PM ページ 14 ISO 14001 理しました。 保管(倉庫、保管庫、保管場所)も評価が必要 ②文書体系 との指摘があり、環境側面に追加しました。 当社の文書体系を ( 14頁・図 -4)に示します。 直接影響評価の評価方法は、JACO推奨 各文書の関連はISO9001と同じです。業務手 方式を採用しました。まず、a.環境側面の環 順書(SES)は下位も含め30規定としま 境に与える影響の大きさによる重み付け点、 した。 b.使用・発生量による重大性評点、c.影響が 私自身ISO9001の経験が無く、システム文 書を作成するのは初めてでした。今にして思 発生する可能性点を評価基準表から算出し、 次に3評点を演算して評価点とする方式です。 うと、分科会にISO9001の関係者を加えた事 当社はa×b×cを採用しました。 が大いに役立ちました。当社の特殊事情かも 有意な環境側面の登録結果は全体で29件、 知れないが、システム作りには品質保証関係 内訳はエネルギー関係5件、廃棄物関係5件、 者の参加が重要と考えます。 保管11件、その他が化学物質となりました。 これらは環境方針に反映し、エネルギーと廃 3.システム構築上の留意点 棄物を目的及び目標に取り上げました。 ①環境影響評価と有意な環境側面の登録 間接影響評価では、製品、取引先業者、運 直接影響評価は環境側面として投入、排出、 搬業者、廃棄物処理業者を評価しました。指 過去の評価(土壌汚染)、特別管理物質(P 摘で従業員のマイカーを評価に追加しました。 CB、空調用フロン)、その他(景観、緑地) 間接影響評価の評価方式は、製品では、対 を対象として評価しました。審査で浄化槽と 象となる製品を群毎に、生産数、製品重量・ 図−3 組織体制 桐生工場長 設 計 部 門 D A 推 進 セ ン タ 第 1 設 計 部 標準化推進センタ 第 2 設 計 部 シ ス テ ム 設 計 部 第 3 設 計 部 原 料 部 原 料 課 機 械 課 製 造 部 シ ス テ ム 製 造 課 P T 製 造 課 汎 用 製 造 課 直 流 製 造 課 S T M 製 造 課 試 作 課 環境内部監査チーム 環 境 委 員 会 エネルギー・設備管理分科会 環境管理分科会 環境設計分科会 環境管理責任 環境管理センタ 設備認定審査委員会 化学物質審査委員会 PT設計係 生 産 技 術 部 品 質 保 証 部 生 産 管 理 部 生産管理課(含生産行革推進センタ) 資 材 部 資材課(含VEC推進センタ・IP推進センタ) 直接影響評価部門 総 務 部 製品影響評価部門 経 理 部 海外事業推進部 研究所(含特許部) サーボテクノシステム(株) 本 社 工 場 相 生 工 場 設計課 12 10号 99.12.21 2:47 PM ページ 15 事例別「省エネ・低電力」実践テクニック 容積、使用樹脂等の環境側面の総合計点を求 規格の要求事項は a.環境方針および手順 め、評価しました。環境側面は各側面毎に合 ならびに環境マネジメントシステムの要求事 計点で評価しました。取引先業者は直接影響 項に適合することの重要性 b.作業活動によ 評価と同様に、主な投入と排出を調査し、社 る顕在または潜在の著しい環境影響、および 内と同じ評価基準で評価しました。最終的な 各人の作業改善による環境上の利点 c.環境 評価点は当社との取引の占有率を掛け、管理 方針および手順との適合、ならびに緊急事態 の可能性を含めて評価しました。マイカーは への準備および対応の要求事項を含む環境マ 公共交通機関の整備状況や自宅から駅までの ネジメントシステムの要求事項との適合を達 位置関係を要素として評価しました。 成するための役割および責任 d.規定された 間接影響評価の登録で、棄物処理業者では 運用手順から逸脱した際に予想される結果の 全て登録すべきとの指摘があり、有意とする 4項目です。当社はこれに能力確認の要求事 評価基準を見直しました。この場合、登録し 項をe.項として加え、能力確認が必要なもの た廃棄物処理業者の管理は業務手順書に基づ を明示しました。また、要求事項ごとに使用 く法的管理としました。 する教育資料を明示しました。 登録結果は製品では6製品群、3環境側面 (14頁・図 -5) (容積、重量、樹脂使用)、取引先業者では2 社、廃棄物処理業者では4社の登録となりま 今後の課題 した。有意な間接影響の内、製品の3環境側 面改善を目的及び目標に取り上げました。 ②法規制の特定 は原油換算値で3.6%、廃棄物は20%削減で 国の法律の特定は、法律文書を読解しなけれ きました。中期計画の目的値も、当初より高 ばならない点を別にすれば、従来の特定に特に い値で見直しできました。しかし、継続的改 問題はありませんでした。一方、県条例は上乗 善という意味では、投資効果の良いエネルギ せ、横出し規制があり、特に、届出設備に該当 ー削減法、廃棄物0への挑戦等多くの検討事 するかどうかの特定に手間取りました。群馬県 項があり、まだまだ緒に着いた段階といえま の場合、市町村条例は県条例と同一でした。 す。環境管理システムを環境改善と企業体質 ③教育訓練の内容 強化のツールとして使いこなすため、最新情 当社は教育訓練の対象を 1.環境マネジ メントシステム 2.有意な環境影響を与え る業務に携わる者 3.資格認定を要する業 務に携わる者 4.緊急事態への準備および 対応 5.環境内部監査員の5つに分けて実 施することにしましたが、規格で要求される 教育・訓練の内容が具体的でないとの指摘が あり、これを整理しました。 13 運用を開始してから1年では、エネルギー 報を常に注視し、当社流に創意工夫を加えて 行くことが益々重要と考えます。 当社が、地球環境改善に寄与する企業とな るよう、今後とも努力する所存です。 出稿: 「地球環境」日本工業新聞社刊 10号 99.12.21 2:47 PM ページ 16 ISO 14001 図−4 文書体系 環境 マニュアル 業務手順書 [SES(規定、基準)] 作業指示書 [作業基準書、チックリスト] 記 録 [データ、報告書、記録書類] No 業 務 手 順 書 名 分類番号 1 (1)環境方針・目的及び目標管理規定 SES K01 2 (2)環境管理計画策定規定 SES K02 3 (3)環境影響評価規定 SES K03 4 (01)製品環境影響評価規定 SES K03-01 5 (02)取引先業者等環境影響評価規定 SES K03-02 6 (4)環境法規制設備等届出規定 SES K04 7 (01)環境設備認定管理規定 SES K04-01 8 (02)環境法令登録規定 SES K04-02 9 (5)環境運用・検証管理規定 SES K05 10 (01)エネルギー管理規定 SES K05-01 11 (02)化学物質管理規定 SES K05-02 12 (03)大気管理規定 SES K05-03 13 (04)排水管理規定 SES K05-04 14 (05)騒音・振動管理規定 SES K05-05 15 (06)土壌管理規定 SES K05-06 16 (07)悪臭管理規定 SES K05-07 17 (08)廃棄物管理規定 SES K05-08 18 (09)環境特定設備管理規定 SES K05-09 19 (10)取引先環境管理規定 SES K05-10 20 (11)工場立地管理規定 SES K05-11 21 (12)製品事前評価規定 SES K05-12 22 (6)環境管理組織規定 SES K06 23 (7)環境教育・訓練規定 SES K07 24 (01)特定業務要員管理規定 SES K07-01 25 (8)環境情報管理規定 SES K08 26 (9)環境文書管理規定 SES K09 27 (10)環境緊急事態対応規定 SES K10 28 (11)環境監視・測定機器管理規定 SES K11 29 (12)環境不適合是正及び予防処置規定 SES K12 30 (13)環境内部監査規定 SES K13 14
© Copyright 2024 ExpyDoc