GLOBAL ASIA INVESTMENT macau

2010
ジョホールバル投資の魅力
チャーリー・タカ
Global Asia Investment macau
2010/09/01
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マレーシアの基礎情報
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マレーシアの基礎情報
I.国土
マレーシアは、マレー半島と、カリマンタン島(旧ボルネオ島)の一部であるサバ州とサラ
ワク州から成り立つ国である。面積は日本の約90%に当たる約33 万km2 で、カリマンタ
ン島が3 分の2 を占める。
マレーシアの人口は2700万人、マレー系(65%)・中国系(25%)・インド系(8%)のほ
か、多数の部族に分けられる先住民族で構成される多民族国家である。
Ⅱ. 気候
マレーシアの気候は熱帯雨林気候で、国土の約60%が熱帯雨林で覆われている。季節は雨
季と乾季に分かれているが、どちらの季節でもスコールと呼ばれるにわか雨が降る。ただし、
雨季でも一日中雨が降り続くことはない。
最高気温は各地とも年間を通してほぼ30 度以上だが、年間降雨量は地域によって違いがあ
り、クアラルンプールやペナン島では2,200~2,500mm、マレー半島東海岸のコタバルやカ
リマンタン島のサバ州コタキナバルでは約2,700mm、サラワク州クチンでは4,000mm を超
える。ちなみに、東京の年間降水量(雪を含む)は1,600~1,900mm で、最も多い屋久島
では4,000mm 以上である。
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Ⅲ.教育制度
マレーシアの教育制度は、初等教育6 年、中等教育5 年である。義務教育制度はないが、
中等教育までは無料で、初等教育の就学率はほぼ100%といわれる。小学校は、マレー語に
よる国民学校(英語必修)と、国民型学校(中国語国民型とタミール語国民型があり、いず
れもマレー語が必修)の2 種類がある。中等教育は、前期3 年間(フォーム1~3、各1 年
間)と後期2 年間(フォーム4~5、各1 年間)に分かれる。また、ブミプトラの優秀な生
徒を集めた全寮制中学校(レジデンシャルスクール)がマレーシア全土に54 校ある。
高等教育機関としては、次のようなものがある。
・ポリテクニック(2~3 年間、総合技術専門学
校)
・師範学校(3 年間、初等・中等教育の教師養成)
・カレッジ(2~3年間)
・大学(3~6年間
)
国語はマレー語だが、初等教育では中国系住民が
使用している中国語や、インド系住民が使用して
いるタミール語も教育言語として認められてい
る。
大学では、国立大学20 校のうち15 校で日本語教
育が実施されていて、現地進出日系企業への人材
供給に貢献するものと期待されている。
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Ⅳ. 政治
マレーシアには現在13 州あるが、そのうち9 つの州にスルタンと呼ばれる世襲の君主が
存在する。マレーシアの国王は、その9 人のスルタンが持ち回りで就任する。任期は5 年
である。
スルタンが存在する州(9)
・ジョホール州
・クダ州
・クランタン州
・ヌグリ・スンビラン州
・パハン州
・ペラ州
・プルリス州
・セランゴール州
・トレンガヌ州
スルタンが存在しない州(4)
・ペナン州
・マラッカ州
・サバ州
・サラワク州
なお、シンガポールとの連携に否定的であったジョホール州スルタンのイスカンダル殿下は
2010年1月死去。現在はシンガポールとの関係はかなり改善してきている。
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Ⅴ. 外交政策
1960年代:独立直後のマレーシアは基本的な国造りが最重要課題。米国や英国などの西側
諸国寄りの外交姿勢を取る
1970年代:非同盟路線へ方針を転換。ASEANにも重点を置き始める
1980年代:米ソ冷戦が激しさを増したが、マレーシアは国際社会の全ての国家と良好な
関係を持つという原則のもとで外交を展開
→さらに、マハティール政権(1981~2003)下で、アジア地域をより重視する姿勢を鮮明
に打ち出すようになった。
→2000年代の外交方針も、二国間・多国間・ASEAN・イスラム諸国との関係を強化する点
で大きな変更はなし。
・ASEANでの位置付け
人口規模
ASEAN の人口は約5 億7400 万人で、その4 割をインドネシアが占めている。
マレーシアの人口は約2700 万人で、ASEAN の中では第6 位である。
経済規模
ASEAN 全体の名目 GDP は約 1 兆 2800 億ドルである(2007 年)。最も経済規模
が大きいのはインドネシア(約 4300 億ドル)で、地域全体の 3 分の 1 を占める。
第 2 位はタイ(約 2500 億ドル)で、マレーシア(約 1900 億ドル)はそれに続く
第 3 位である。
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在留邦人数
マレーシアの在留法人数は 1990 年代始め頃から増加傾向にあったが、1998 年の
11,726 人をピークに徐々に減尐し始め、2008 年は、9,330 人と、前年同時期から
1,005 人減尐した。この背景には、日系企業の海外拠点再編の動き加え、鳥インフル
エンザへの感染を回避するために、帯同家族を帰国させている状況がある。
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Ⅵ. マレーシアの経済動向
1960 年代末:輸入代替工業化から輸出指向工業化へ転換
1980 年代後半:日系企業による直接投資活発化(家電、半導体)
→これが牽引役となり高成長へ。1990~96 年までの年平均実質 GDP 成長率 9.5%
1990 年後半:アジア通貨危機が発生し、1998 年の経済成長-7.4%に落ち込む
→見事な V 字回復
2000 年代:IT 不況や同時多発テロ等にも関わらず安定した経済成長を続けたが、2008 年
以降の金融危機の影響を受け、2009 年の経済成長は-1.0%に落ち込んだ
消費者物価指数(CPI)は、比較的安定しています
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経常収支
アジア通貨危機前・・・経常赤字
アジア通貨危機後・・・通貨安で輸出競争力増加。経常収支黒字化
→ASEAN の中で、シンガポールに次ぐ国際収支が安定した国に。
Ⅶ.マレーシアの魅力 -現地進出日系企業による評価-
1.外資やビジネスに支援的な政府
2008 年の総選挙で与党連合が大幅に議席を減らし、野党が躍進した。この総選挙結果を
受けて、政治の不安定化を指摘する日本の報道もあったが、マレーシアの政治は、最近の
タイの混乱に比べると安定しているといえる。現地日系企業によると、選挙後もマレーシ
ア政府の外資に対する協力的な姿勢には変化はないとのことである。さらに、ルック・イ
ースト政策の歴史もあって、マレーシア政府は日本側の話をよく聞いてくれる。また、法
律は英国法が土台となっているため、しっかりしている点も魅力の一つである。
2.労働力の質が高く英語が通じる
ほとんどのマレーシア人は英語を話すことができるため、コミュニケーション上の苦労
が比較的尐ない。
また、労働者の質も高い。マレーシアの人口は 2,700 万人と、タイやベトナムの 2 分の 1
から 3 分の 1 である。そのため、労働力の確保に苦労している企業が多いと推察したが、
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多くの訪問先企業からそういた苦情は聞かれなかった。しかも、スキルを必要としない単
純工ではなく、高専や短期大学を卒業した技能労働者の確保も、今のところ問題ないとの
ことである。
3.インフラが整備されている
インフラについては、多くの日系駐在員が高く評価している。
道路: 2~4 車線の整備された高速道路がある。料金所には ETC 設置済み。
電力: 近年は瞬間停電もめったに発生しない。電圧降下の問題もそれほどない。
水 : 質が良い。半導体メーカーは超純水を使用するが、マレーシアの水は質が良い
ため、浄化のための費用が尐なくて済む。料金も安い。
通信: インターネットは、日本と比べると時間がかかり多尐ストレスがかかることも
あるが、相対的に問題はない。
4.生活環境が良い
クアラルンプールとペナン州には日本人学校があり、家族同伴での駐在が可能である。
また、クアラルンプールだけでなくペナン州やジョホール州にもジャスコがあり、価格は
やや高いが日本の食材や嗜好品は手に入る(例:冷凍食品、調味料、納豆、豆腐など)。医
療も充実しており、時には日本より高度なところもある。
そして、マレーシアでは安くゴルフを楽しむことができる(参考:ペナン州でのビジタ
ー料金は 1R、200~250 リンギ(5,300~6,600 円))。
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Ⅷ.マレーシア投資の留意点
1.インセンティブの審査はより厳格化
マレーシアは様々なインセンティブを設けているが、近年、当局による審査が厳しくなって
きたとのことである。
2.ユーティリティコストは上昇
電力料金は大幅に値上げされた。2009 年 3 月に数%引き下げられたが、かつての水準には
戻っていない。
ガスについても、以前はガス料金の安さがメリットの一つであった。しかし、電力と同様、
2008 年に 70~80%値上げされた。また、企業による使用量の増加、国内需要の増加に供
給が追いついていない。既存の供給契約は守られているが、新規契約分は順番待ちの状態で
ある。
3.中間管理職の賃金は高い
マネージャー以上は企業間で取り合いの状態。ダイレクター・クラスの給料は日本人と変わ
らないこともある。しかしながら、この点はタイやベトナムにも共通する課題である。
4.雇用法は労働者寄り
インドや韓国ほどではないが、労働法は労働者寄りでなかなか解雇しにくい。マレーシアの
労働者はすぐに労働局に駆け込み、裁判沙汰に発展することもある。
5.政治・人種に関する話は控える
表だった政府批判や、人種に関する話は避けるようにしたい。
なお、マレーシアには国内治安維持法(ISA)があり、外国人も取り締まりの対象である。
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ジョホールバルの魅力
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ジョホールバルの魅力
Ⅰ. 国土
ジョホールバルは、シンガポールからジョホール海峡を挟んだ対岸の街で、ジョホール州の
州都、首都のクアラルンプールに次ぐ第二の都市。人口は 1,370,738 人(2009 年)。
シンガポールのチャンギ空港から 40 分でアクセスにも優れている。
ジョホール(Johor)の語源はアラビア語で宝石を意味する「ジャウハル(Jauhar)」で、
その昔、ジョホール州でアラブ商人達が活躍していた歴史からきている。
ジョホール州の地図
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シンガポールからジョホールへの道、コーズウェイ
ジョホールバル駅
多民族国家のシンガポールに対し、ジョホールバルはイスラム圏。
しかし、経済的にはシンガポールの影響が強く、シンガポールに仕事を持ちながら物価の安
いジョホールバルへ移り住む人も増えている。
現在、ジョホールバルの不動産の値段は、クアラルンプールの3分の 1 で、シンガポールの
6 分の 1 から 8 分の 1。
「ジョホールバルの歓喜」・・・1997 年、日本が W 杯初出場を決めた試合。
Ⅱ. 地域開発(コリドー計画)
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現在マレーシアでは、5 つの大きな地域開発計画(コリドー計画)が進められている。
①
②
③
④
⑤
イスカンダル開発区プロジェクト(IDR)
北部回廊経済地域(NCER)
東海岸経済地域(ECER)
サバ開発回廊(SDC)
サラワク再生可能エネルギー回廊(SCORE)
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Ⅲ. イスカンダル開発区プロジェクト(IDR)
IDR は、ジョホール州南部を対象とした開発計画である。その対象地域はシンガポールの
面積の 2.5~3 倍で、電気・電子や石油化学など既存の産業を強化するだけでなく、金融や
教育といった、新規産業の形成も目的としている。また、それらに併せて居住地域・レジャ
ー地域の開発も含まれるなど、大規模な都市開発計画となっている。
・開発期間:2006~2026 年
・対象地域:ジョホール州南部、2,217km2(シンガポールの 2.5~3 倍)
・投資規模:第 9 次マレーシア計画(9MP、2006~2010 年)期間で 470 億リンギ
・基本方針: (a)地理的な利点を生かした開発(セナイ空港やタンジュン・ペレパス港な
ど、運輸施設を生かして、同地域のロジスティクス・ハブ化を目指した
開発)
(b)教育を通じた人的資源の育成(ヌサジャヤ地区に国際レベルの高等教育
機関を設置する等により、人材育成を図る)
(c)周辺地域に配慮したバランスの取れた開発(ジョホール州のみならず、
周辺地域に波及効果が及ぶ開発)
(d)公共交通機関やリクレーション施設の整備、開発による生活レベルの向
上(住宅開発、高速道路の建設等により、住民の生活レベルの向上)
(e)計画の円滑な実行(イスカンダル開発庁、南部ジョホール投資会社等の
設立)
・経済効果: (a)2025 年までの経済成長が 2%増の 8%
(b)2025 年の州内総生産が 292 億ドル増の 933 億米ドル
(c)2025 年までの新規雇用が 82 万件
(d)2025 年の州平均年収が、現在の RM54,700 から RM115,000 に倍増
[ Iskandar Malaysia ― イスカンダル開発プロジェクト]
http://www.iskandarmalaysia.com.my/
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イスカンダルマレーシア
現在、医療、教育、観光、物流等を柱に開発が進んでおり、2011~2012 年に続々と目玉プ
ロジェクトが完成予定。
2011 年 9 月:ニューカッスル大学医学部完成予定
2012 年 4 月:レゴランド開業予定
2012 年 9 月:マールバラ・カレッジの寄宿学校開校予定
2012 年末:大型ショッピングモール「ライフスタイルモール」完成予定
その他インフラ整備も進んでおり、2008 年から州政府庁舎が運用開始、鉄道網や高速道路
網も急ピッチで整備が進んでいる。
建築中の Education City (この中にニューカッスル大学がオープン予定)
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・イスカンダル開発計画では、次の 6 業種のサービス産業について、優遇措置を享受する
ことができる
①クリエイティブ産業
②教育サービス
③金融アドバイス・コンサルティング←当社はこれに当たります
④ヘルスケア関連サービス
⑤物流サービス
⑥観光
優遇措置
(i) 所得税の 10 年間の控除
(ii) FIC 規制の免除(サービス産業へのブミプトラ資本規制免除)
(iii) 国内外での資本調達の許可
(iv) 外国人労働者雇用の規制の免除
ヌサジャヤ(アリーナ地区)
ヌサジャヤ開発模型
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Ⅳ. ジョホールバルの魅力
① シンガポールに近いことで、様々なメリットがある。
・シンガポールの裾野産業を活用することができる。
・シンガポールのチャンギ空港から輸出することができる。
・シンガポールに住んで、ジョホール州へ通勤することができる。
② サバ州、パハン州と並んでパーム原油(果実から搾油)の主要生産地である。また、ス
ランゴール州とともにパーム核油(種子から搾油)の主要生産地である。
③ マレーシアには 3 つの大きな石油化学プラントの集積地があるが、ジョホール州のパシ
ル・グダン~タンジュン・ランサットにかけての地域はその一つで、29 のプラントが
ある。ちなみに他の 2 カ所はトレンガヌ州ケルティ(Kertih)とパハン州のゲベン
(Gebeng)。
④ マレーシアを代表する港湾がある。ジョホール港(パシル・グダン港)のほか、クラン
港に次ぐ規模のタンジュン・ペレパス港がある。
⑤資金流入が続いており、国家レベルでの開発が進んでいる
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Ⅴ. ジョホールバル投資の留意点
① 労働力集約型事業の場合、今後は労働力の確保が難しくなる可能性がある。
② 州自体の経済規模は小さいので、シンガポール経済に頼る部分が尐なくない。そのため、
シンガポール経済の影響を直接的に受けることがある。
③大規模開発のため、資金流入が止まる恐れがある。
ダンガーベイ開発モデル
シンガポールからジョホールバルを望む
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