養殖の餌問題と解決への選択肢

CoFRaME報告会 2015年5月22日
養殖の餌問題と
解決への選択肢
日本水産(株) 中央研究所
永野 一郎
養殖餌の課題:水産資源
生産量:100万mt, 割合:%
70
無給餌の割合
60
50
40
給餌
30
養殖生産量
養殖餌料
食用
その他
天然水産物
用途
(藻類を除く)
20
無給餌
10
養殖生産量
0
1950
1970
1990
2010
Naylor et al (2009), Tacon & Metian (2009),
Frid & Paramon (2012), FAO (2012) 等から推定
FAO FishStat Jより作成
1
養殖餌の方向性
(1)水産資源への依存率を低下
(2)持続可能な水産資源を利用
2
餌について考えるチャンス
養殖の認証制度ASC
輸出量(千mt)
8
http://www.wwf.or.jp/activities/nature/cat1136/asc/
ブリ養殖の基準完成
まもなく最終段階
日本の業者も意欲的
4
0
USA
2011
2012
2013
左下図:Jetro Agrotrade handbook 2014より作成
3
今日の内容
ブリのASCで求められる餌の条件
ー 水産資源への依存率
ー 持続可能な水産資源を利用
国産の餌を利用していくために
ー 資源データベースからの考察
4
日本の養殖の資源依存率
万mt
150
120
■クロマグロ
■ギンザケ
■マダイ
■ブリ類
90
給餌量
60
30
養殖
生産量
餌魚量
(原魚換算)
養殖生産1㎏に必要な量(㎏)
餌量
FCR*
餌魚量
FFDR*
16.0
17.0
ギンザケ
1.4
4.7
マダイ
ブリ類
2.7
2.8
5.5
5.2
クロマグロ
* FCR:Feed
0
Conversion Ratio
FFDR:Feed Fish Dependency Ratio
水産油脂統計年鑑(2013)等から計算
5
ASCの考え方:依存率の削減
水産資源への依存率FFDRの段階的な削減
クロマグロ
ギンザケ
マダイ
ブリ類
餌量
FCR
16.0
1.4
2.7
2.8
餌魚量
FFDR
17.0
4.7
5.5
5.2
各段階で、
具体的な数値目標が必要
2年後
5年後
最終
<1.35
2年後
5年後
最終
<3.0 (?)
ASC Salmon Standard (2012)
Seriola and Cobia Draft Standards (2013)
6
ブリASCの条件ー1
具体的な数値目標と達成期限の設定
2年後の目標
5年後の目標
FFDR <3.0
FCR 魚粉%, 魚油%
魚粉%, 魚油%
魚粉%, 魚油%
1.5
67, 23
59, 22
44, 10
2.0
50, 18
44, 16
33, 8
2.5
40, 14
36, 13
27, 6
3.0
33, 12
30, 11
22, 5
Seriola and Cobia Draft Standards (2013)等から推定
7
ASCの考え方:餌の持続可能性
国際団体SFPの評価
-南米と大西洋の餌魚28種
-持続可能性で4分類
(A>B1>B2>C)
-AとB1はMSC水準
C
ASC暫定条件
将来的には、
使用餌の
A
90%はMSC
種数
ベース
B1
B2
SFP Fisheries Sustainability Overview (2014)から作成
8
輸入魚粉の持続可能性
-南米産がメイン
その他
ペルー
輸入量
の比率
(‘12)
-持続可能性は高め
-SFP評価
ペルー産:B1
チリ産:B1, B2, C
チリ
水産油脂統計年鑑(2013)から作成
9
国産餌の持続可能性
万mt
500
イワシ類
万mt
250
400
200
300
150
200
100
100
50
0
0
1970
1990
2010
その他餌魚類
漁獲組成
(サバ類, イカナゴ,
アジ, サンマなど)
(マイワシ, サバ類,
アジの合算)
成魚
未成魚
1970
1990
農水省 海面漁業魚種別漁獲量累年統計より作成
2010
重量ベース
(’00以降の平均)
水総研セ H26資源評価より作成
10
今日の内容
ブリのASCで求められる餌の条件
ー 水産資源への依存率
⇒ 具体的な目標、FFDR<3.0を目指す公約
ー 持続可能な水産資源を利用
⇒ 南米産の魚粉中心
初回審査はクリア可能(餌に関しては)
これでいいのか?
11
日本の魚粉状況
億$ 万mt
5 100
4
80
3
60
2
40
1
20
0
0
1980
自国調達を見直すべき
⇒ 資源回復
魚粉輸入金額
魚粉輸入量
国内魚粉生産量
1990
2000
2010
FAO FishStat J, 水産油脂統計年鑑(2013)から作成
12
今日の内容
国産の餌を利用していくために
ー 資源データベースからの考察
13
漁業再建の条件
>2
相対的な漁獲率
枯渇
漁獲率
の削減
1
約160の資源の現状評価
約1/3:枯渇へ
約1/3:再建へ
再建
0
0
約1/3:未開発・回復後
1
相対的な資源量
Worm et al. (2009)
>2
14
資源評価のデータベース:RAML DataBase
日本の24資源を含んでデータ更新
相対的な漁獲率
>2
低迷資源が多い
↓
回復させれば
増産のチャンス
1
0
0
1
相対的な資源量
>2
RAM Legacy Stock Assessment Databaseより作成(2015年4月)
15
水産資源のポテンシャル
いずれも同じマサバ資源
日本(1970 ⇒ 2009)
アメリカ(1950 ⇒ 2008)
RAM Legacy Stock Assessment Databaseより作成(2015年4月)
16
マサバ太平洋系群(’13まで)
相対的な漁獲率
>3
資源量:約4倍の580万トン
漁獲量:約6倍の75万トン
これだけで、
食用+養殖の多くをまかなえる
2
‘10
1
‘13
‘12
‘11
いまが我慢のしどころ!
↑
18年ぶりに漁獲率が1以下に
0
0
1
1.2
相対的な資源量
RAM Legacy Stock Assessment Database, H26資源評価 マサバ太平洋系群のデータより作成
17
国産の餌を利用していくための道筋
相対的な資源量
漁獲率を削減
↓
資源回復
↓
漁獲量も回復
↓
養殖餌を
持続可能に自給自足
RAM Legacy Stock Assessment Databaseより作成(2015年4月)
18