一般社団法人 電子情報通信学会 THE INSTITUTE OF ELECTRONICS, INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS 信学技報 IEICE Technical Report 内視鏡手術支援のための 多視点シルエット画像を用いた柔軟体の変形推定 齋藤 陽† 中尾 恵† 浦西 友樹‡ 松田 哲也† †京都大学大学院 情報学研究科 システム科学専攻 医用工学分野 〒606-8501 京都市左京区吉田本町 ‡京都大学医学部附属病院 医療情報部 〒606-8397 京都府京都市左京区聖護院川原 54 E-mail: †[email protected], {megumi, tetsu}@ i.kyoto-u.ac.jp ‡[email protected] あらまし 近年, 術中の臓器変形に対応したナビへの期待が高まっている. 本研究では, 手術時における臓器の 局所変位の算出を目的として, 多視点内視鏡画像から得られるシルエットを用いた柔軟体の変形推定方法を提案 する. 術前の三次元 CT 画像から構築した臓器モデル形状とシルエット画像を制約として活用することより, 手術 時の照明変化に頑健な変位推定を目指す. シミュレーション実験の結果, 内視鏡手術において利用可能なカメラ 台数・配置に対し, 5mm〜1cm の誤差で変形推定が可能であったので報告する. キーワード 変形推定,形状モデル,内視鏡画像, コンピュータビジョン Deformation Estimation of Elastic Bodies Using Multiple Silhouette Images for Endoscopic Surgery Akira SAITO† Megumi NAKAO† Yuki URANISHI‡ and Tetsuya Matsuda† †Graduate School of Informatics, Kyoto University Dept. of Systems Science, Bioengineering Lab. Yoshida- honmachi, Kyoto, 606-8501, JAPAN ‡Dept. of Medical Informatics, Kyoto University Hospital E-mail: 54 Shogoin-kawaharamachi, Kyoto, 606-8397 Japan †[email protected], {megumi, tetsu}@ i.kyoto-u.ac.jp ‡[email protected] Abstract This study proposes a method to estimate elastic deformation using silhouettes obtained from multiple endoscopic images for endoscopic surgery. Our method allows to estimate local deformation of organs with internal structures using a volumetric mesh model reconstructed from preoperative CT data. A visual hull is computed from silhouettes and used as a constraint on the view volume. The model shape is updated to satisfy the constraint while preserving the shape as much as possible. The result of the experiments showed that the proposed methods could estimate the deformation with 5mm-1cm RMS errors. Keywords Deformation estimation, shape model, endoscopic image, computer vision 1. は じ め に 支援システムも広く研究・開発がなされてきた 近年, カメラの解像度の向上など手術環境の整備が [2][3][4]. 一 方 , 胸 腹 部 を 対 象 領 域 と す る 外 科 手 術 で 進み, 開腹の必要がない内視鏡下での外科手術が幅広 は, 臓器や血管のような柔軟物体を扱うため術中に変 い診療科において急速に普及している. しかし, 内視 形が生じるが, どの程度の変形が生じているのか計測 鏡手術では, 術中に視野の狭い二次元の内視鏡を観察 することが難しく, 術中変形への対応はまだ報告例が しなければならず, モニタの注視と術野の確認との間 少 な い の が 現 状 で あ る . 数 cm 程 度 の 誤 差 で も 医 療 事 で起こる視線方向の不一致が生じる. 加えて微細な術 故を招く恐れのある手術シーンにおいては, 腫瘍や血 具操作が要求されるため, 術者への負担が以前よりも 管構造の位置関係の把握は極めて重要であり, 高精度 増大している. そこで, 手術の安全性の向上を目的と かつ頑健な手術支援システムが求められる. よって, して, 三次元的な奥行き感の提示や三次元シーンの計 手術中に生じる臓器の変形に対応した正確で安全性の 測 が 試 み ら れ て い る [1]. ま た , 画 像 処 理 や バ ー チ ャ ル 高い術中ナビゲーションシステムへの期待が高まって リアリティ技術の医療応用として, 臨床現場において い る [5][6]. 取 得 さ れ た CT や MRI な ど の 三 次 元 画 像 を 用 い た 手 術 This article is a technical report without peer review, and its polished and/or extended version may be published elsewhere. Copyright ©2015 by IEICE 本研究では, 手術時における臓器の局所変位の算出 を目的として, 多視点内視鏡画像から得られるシルエ ット画像を用いた柔軟体の変形推定手法を提案する. 提 案 手 法 で は , 術 前 の 三 次 元 CT 画 像 よ り 構 築 し た 臓 器メッシュモデルを用いて, シルエット画像から得ら れる視体積とモデルの形状を制約として変形を算出す る. この変形推定手法により, 変形する臓器に対して 数 mm~ 1cm 程 度 の 精 度 に よ る 腫 瘍 位 置 の 推 定 を 目 指 している. また提案手法では, 形状修正にシルエット 情報を用いている. 従来のテクスチャベースの手法で は特徴点の検出精度に依存してしまうため, 臓器表面 のテクスチャに抽出できる特徴点が少ない場合や, 光 源による反射の影響で特徴点が変わるような場合には 正確に対処できないと考えられる. これに対して, 臓 器のシルエット画像では前景領域のみの検出でよいた 図 2. 提 案 アルゴリズムの概 念 図 め, 表面のテクスチャによらず手術時の照明の変化に 対しても頑健に作動することが期待される. 実際の手術では数台の内視鏡カメラを用いて術野 映像が取得されるが, 本研究では, 計算機上で臓器モ リズムの概念図を示す. 以上をまとめると, 提案アル ゴリズムでは以下の流れで処理が実行される. デルを変形させ, 内視鏡手術で利用可能なカメラ台数 と配置を考慮した視点毎のシルエットから全体の局所 変位を推定するようなシミュレーション実験によって Step1. Step2. 現 時 刻 の 臓 器 形 状 モ デ ル 提案手法の有効性を検証する. 枚 の 時 系 列 カ メ ラ 画 像 の 各 シ ル エ ッ ト か ら Visual hull 1, … , 1 を 生 成 から形状記述子 を算出 2. 多 視 点 画 像 を 用 い た 柔 軟 体 の 変 形 推 定 方 法 提案手法では, 内視鏡下手術の術中支援を目的とし て , 現 時 刻 に お け る 臓 器 メ ッ シ ュ モ デ ル 1 から次時刻の臓器メッシュモデル 得られる位置制約を満たすよう 1 から 1 を算出 と 次時刻における変形臓器の多視点シルエット画像 Step3. 形 状 記 述 子 を 出 来 る だ け 保 持 し 1 視体積制約 本研究では, 注目物体の前景を 1 , 背景を 0 として を推定する. 形状推定の際に, 臓器メッシュ全体の形 2 値化した画像をシルエットとする. 複数カメラから 状をできるだけ保持しつつ多視点シルエット画像に合 得 ら れ る シ ル エ ッ ト 画 像 か ら Visual Hull[7] を 得 る . わせて形状修正をすることで, 臓器の内部構造の変化 原 理 上 , Visual hull は 真 の 形 状 を 内 包 し , か つ 真 の 形 状 を反映した情報提示を時系列ごとに逐次達成すること が内接しているため, なめらかな形状であれば真の形 を目的としている. 図 1 に提案する臓器の変形推定ア 状 と Visual hull の 接 点 は 接 平 面 を 共 有 し て お り , 接 点 ルゴリズムにおける処理の流れを, 図 2 に提案アルゴ において法線ベクトルが一致していると考えることが できる. さらに, シルエット境界に沿った物体表面の 各 要 素 は , な め ら か な 形 状 で あ れ ば 視 線 (viewing ray) と直交する. 上記二つの性質から, 視点方向と直交す る よ う な 物 体 表 面 上 の 点 は 真 の 形 状 と Visual hull の 接 点, あるいはその近傍となる可能性が高い. この二つ の特徴より, の 各 シ ル エ ッ ト か ら 得 た 視 体 積 1 と そ れ ぞ れ に 交 差 で あ る Visual hull 対して接点候補を算出し対応づけることで視体積制約 と す る . 本 来 , 形 状 復 元 を 行 う 上 で 2~ 3 台 の カ メ ラ か ら 生 成 さ れ た Visual hull で は 復 元 の 手 が か り と し て 不 十分であるが, 本研究では少ないカメラ台数で生成し た Visual hull か ら も 変 形 推 定 に 有 用 な 情 報 を 取 り 出 す 図 1. 変 形 推 定 の 処 理 の 流 れ ことができる. ることによって次第に理想の接点近傍を発見すること 形状保持制約 内視鏡手術における臓器変形を対象としている本 研究では, 各時刻間で臓器が大きく変形しないことを 1 を可能とする. 反復試行については手順 5 で説明する. 手 順 2. の 探 索 を 次 に Visual hull の 性 質 か ら 得 た「 な め ら か な 形 状 で 推定する問題において, 概ね形状が保持される特徴を あ れ ば , 真 の 形 状 と Visual hull の 接 点 に お い て 法 線 ベ 前提としている. すなわち, から 制約として活用する. 形状記述子として平均曲率法線 ク ト ル が 一 致 し て い る 」と い う 事 実 を 用 い て , の考え方がたびたび利用されるが, 滑らかなメッシュ ごとに 形状の各頂点における平均曲率法線の近似的な算出法 上の接点を求め, その集合 上の各点に対して, の 算 出 条 件 と し て 各 点 を 算 出 す る . か ら と し て , 離 散 ラ プ ラ シ ア ン [8]が コ ン ピ ュ ー タ グ ラ フ ィ どれだけ近いか, ク ス の 分 野 で 広 く 用 い ら れ て い る . を メ ッ シ ュ の 頂 だけ小さいかの二つの指標に基づき以下の式で評価値 を 番 目 の 頂 点 の 座 標 , を 番 目 の 頂 | を 番 目 の 頂 点 に 隣 点に隣接する頂点の座標, | 接する頂点の個数とすると, 離散ラプラシアン ∈ は , を割り出し, 最も良い評価値のものを 点 番 号 , | ∈ | て用いている. 提案アルゴリズムでは, 形状更新の前 めており, 1 上の点 点である可能性の高い の 集 合 を算出する. 算出条件は, 各カメラ視線ベクトル を 持 ち , 少なくとも一つの点から距離 に の表面上の 以 内 と し て い る . こ れらを定式化するとそれぞれ, は に 対 応 す る 多 数 の の 中 か ら よ り 評 価 値 が 良 好 な 上 の 任 意 の 点 , と な る 1 点 を 対 応 す る 1 , (2) (3) は が ↦ の 対 応 関 係 に 1 に 接 す る よ う な 位 置 制 約 を 与える. 図 3 に内接条件の二次元模式図を, 図 4 に三 次元模式図を示す. 手順 1 でも述べたように, 1 , はともに頂点で構成されたメッシュモデル であり連続な曲面ではない. 従って, と いて, 上の曲面が接するような位置制約を与え に を の 方 向 に ∙ の大きさだけ変位 させる. 変位の大きさは図 3 で示しているように, 構成されたメッシュモデルであり, 連続な曲面ではな 以 上 離 れ て い るような点は, 接点またはその近傍である可能性が低 い点として探索しないようにするために用いる. 一方, この条件によって, 法線は概ね一致しているが距離が 離れているような真の接点近傍を発見できない可能性 が生じる. これを解消するために, 探索を反復試行す に お ることで内接条件が達成される. よって, 図 4 のよう 1 は と も に 頂 点 で のどの頂点からもしきい値 1 と と で 接 す る と は 限 ら な い . そ こ で , い た め で あ る . ま た 式 (3)で は , 法 線 は 概 ね 一 致 し て い るが の 関 係 を 求 め る . 手順 3 では, 手順 2 で求めた 対して, が 1, … , ↦ の 正 規 化 さ れ た 法 線 で あ る . 式 (2) で 概 ね 垂 直 で あ るとしたのは, と 手 順 3. 位 置 制 約 の 設 定 1 との接 ま ず , Visual hull の 性 質 を 用 い て , で表される. ここで, 1 を構成する頂点数を に 対 し て 最 良 な 評 価 値 の 探 索 | の 対 応 関 係 が 存 在 す る . の頂点数に比べ非常に多くしているため, と定め, 各点ごとに 以下, 形状更新方法について手順ごとに説明する. | を 定 の み を 再 探 索 し 位 置 制 約 に 用 い て い る . そ し て 各 制 約 に基 づく変 形 推 定 アルゴリズム ↦ の 数 だ け に 対 し て が 一 対 多 対 応 と な る こ と が し ば し ば あ る . 従 っ て , よって形状保持を達成する. ∙ (4) は 式 (4) に 対 す る 法 線 ベ ク ト ル の 差 分 情 報 可能性が高まるよう 体形状を最小二乗法に基づいて算出し修正することに な法線 | し か し , Visual hull 側 で 理 想 の 接 点 近 傍 が 探 索 さ れ る における離散ラプラシアンの差を最小化するような全 90° ∙| 0.5と し た . こ の 手 順 2 で は 後 で Visual hull に よ る 視 体 積 制 約 を 満 た し つ つ , 各 点 概ね垂直 | | の重み付けであり, 本研究では数回の試行実験により (1) で表され, 提案アルゴリズムにおける形状記述子とし 手 順 1. と し て 採 用 する. ここで, 1 と の 法 線 ベ ク ト ル の 差 分 が ど れ 図 3. 内 接 条 件 の 模 式 図 ( 二 次 元 ) 大きい場合の過修正を防ぎ, より推定誤りの少ない推 定結果を得られやすい. 3. 評 価 実 験 提案手法の有効性を確認するため, 計算機上のシミ ュレーション実験によって検証を行う. 本実験では, 各時刻における推定が可能か否かを確認するため, 時 刻 =0 に お け る 初 期 形 状 を 既 知 と し て , 変 形 し た 直 後 =1 の 形 状 か ら 得 ら れ る 2~ 4 枚 の シ ル エ ッ ト の時刻 画像から局所変位を推定することで推定誤差を算出し, その誤差より推定精度を検証する. 検証では, 弾性変 形解析に用いられる有限要素法に基づいて, 臓器モデ ルのメッシュデータの一端に一定の外力を与えて変形 図 4. 内 接 条 件 の 模 式 図 ( 三 次 元 ) =0 で の 真 の 形 状 と す る . そ し て 外 力 が 加 わ っ て い な い 初 期 メ ッ シ ュ モ デ ル を 別 に 用 意 し , =0 ~ 1 間 に お け る 変 形 後 の Visual hull を 用 い て 提 案 ア ル を 法 線 と す る よ う な 面 へ ゴリズムにより初期メッシュの形状を修正することで, した形状を を通る か ら 下 ろ し た 垂 線の長さより求める. 真の形状との推定精度を定量的に評価する. 手 順 4. 形 状 保 持 制 約 の 適 用 3.1. 実 験 方 法 手順 4 では, 変形前後の離散ラプラシアンのずれを 最小化する形状を, 位置制約を満たすように最小二乗 法に基づいて更新する. 反復試行の中では, 常に反復 試行を行う前の離散ラプラシアンとのずれを用いて形 状を更新していく. 更新後の頂点座標 を 次 式 に よ っ て求める. 図 5 に対象の各データの形状を, 表 1 に対象のメッ シュデータの頂点数と四面体要素数をそれぞれ示す. 実験では, まず初期の四面体メッシュモデル を用意し, 有限要素法に基づいて 0 の 一 端 に -z 方 向に一定の外力を与えて変形状態を作成した. 次に, カメラの配置を定め変形後の形状を各視点からキャプ 1 か ら Visual hull 1 を 取 得 し た. そして提案アルゴリズムに基づいて 0 と 1 から推定形状 1 を算出した. 図 6 に評価実験で用い チャし, 得られた min ∈ た仮想カメラの台数と配置の設定を示す. 対象物体と ‖ ‖ (5) ∈ ただし, , , , 位を与えた頂点の集合, ン, は 式 (1)と 同 じ で あ り , を 変 を 試 行 前 の 離 散 ラ プ ラ シ ア を 更 新 前 の 元 の メ ッ シ ュ 頂 点 も し く は 位 置 制 約 で 変 位 さ せ た 後 の 頂 点 と す る .ま た , , は そ れ ぞ れ 形状保持, 位置の制約に対する重み付けであり, 本研 究では試行実験結果に基づいて =1.0, =1.0 と し ている. 図 5.対 象 デ ー タ 左 :肝 臓 , 右 :腎 臓 手 順 5. 反 復 試 行 手 順 5 で は , 前 試 行 か ら の 形 状 の 差 分 が , 変 位 が 5~ 30mm 程 度 を 想 定 し た 場 合 に 十 分 小 さ い と み な せ る 0.001mm 程 度 ま で 十 分 小 さ く な っ た ら 更 新 を 終 了 , そ の時点での形状を 0 1 と し て 出 力 し , そ う で な ければ再び手順 1 から試行を行う. この反復試行中 は , 反 復 ご と の 更 新 量 を 25% 程 度 に 制 限 し 更 新 量 が 表 1. 対 象 デ ー タ の 情 報 りのカメラ配置で行った形状推定の誤差を評価する. 次いで, 推定誤差がより小さかった 4 台十字の配置を 用 い て 肝 臓 ,腎 臓 二 つ の 形 状 に 対 し て 行 っ た 形 状 推 定 の誤差を評価する. 図 9 に (1), (2)の カ メ ラ 配 置 の 場 合 の 肝 臓 の 変 形 推 定 結 果 か ら 求 め た RMS を 示 す . 各 グ ラ フ の 横 軸 は 肝 臓 に 与 え た 変 位 量 (mm)を 示 し , 縦 軸 は RMS を 示 し て い る. 各変位量について = 5.0, 7.5, 10.0, 12.5mm を 用いて推定した場合の推定誤差を 4 本の棒グラフで示 図 6. カ メ ラ 配 置 (1) 2 台 配 置 , (2) 4 台 十 字 配 置 し て お り , 折 れ 線 グ ラ フ は 推 定 前 の 真 の 形 状 と M(0)の 誤差を示している. 次に, 肝臓において最も精度よく カメラの座標は空間の中心を原点とした. 評価実験では, まず肝臓データに対し図 6 のカメラ 配置二つを設定し実験を行った. しきい値 を 5.0, 推定できた 4 台十字のカメラ配置に対して, 腎臓につ い て も 実 験 を 行 っ た . 同 じ く 図 9 に カ メ ラ 配 置 (2)の 場 7.5, 10.0, 12.5mm の 4 段 階 , 外 力 に よ る 変 位 量 を 5mm 合 の 腎 臓 形 状 に 対 す る 推 定 誤 差 (RMS)を グ ラ フ で 示 す . ~ 30mm 程 度 の 間 で 6 段 階 , 合 計 24 通 り の 設 定 に 対 し , 3.3. 考 察 カ メ ラ を (1), (2)の 2 通 り で 配 置 し 推 定 を 行 っ て い る . 図 7 か ら , カ メ ラ 台 数 を 増 や す ほ ど Visual hull が 真 次 に , 推 定 誤 差 が よ り 少 な く な る と 想 定 さ れ る 設 定 (2) に 対 し て , 腎 臓 モ デ ル に 肝 臓 と 同 様 の 24 通 り の 設 定 の形状に近くなり, が ま ば ら に 配 置 さ れ る 結 果 と なった. これはカメラ台数の増加によってカメラの視 で推定を行い, 本手法の汎用性を検証した. 今回の実 線ベクトルの情報が増えたためと考えられる. 験 で は 推 定 誤 差 と し て RMS(Root Mean Square)を 採 用 図 8 において赤い丸で示した部位に注目して比較す し, 誤差は真の形状と推定形状の対応する各頂点にお ると, カメラ 2 台配置のときにはワイヤフレームが真 いて頂点間距離を求め, 全ての頂点について平均して の形状に埋もれていたり逆に離れているようなずれが 算出した. 検証では, 推定前の誤差・推定後の誤差そ 観察され, カメラ 4 台十字配置のときには真の形状表 れぞれを記録し, 推定前後の誤差の減少分をもって評 面に沿うように更新されている様子が確認できる. 価する. 図 9,10 よ り , 5mm~ 30mm 程 度 の 変 位 量 に 対 し て 3.2. 推 定 結 果 に 7.5mm や 10.0mm を 用 い る こ と に よ っ て , ど の カ メ 1 が算出された時 ラ 配 置・形 状 に お い て も 推 定 誤 差 を 5mm~ 1cm 程 度 ま 点での を 視 覚 的 に 確 認 す る . 図 7 に , カ メ ラ 2 台 の ときとカメラ 4 台十字配置のときの上面から見た にも妥当であると考えられる. 一方, カメラ配置や形 最初に, 算出された 1 と, 1 をそれぞれ示した. 図 7 の 1 のうちマゼンダ で示した点が 1 を算出した時点での である. こ のときの は 10.0mm に 設 定 し て い る . こ の は反 復試行ごとに探索されるため, 形状更新ごとに 状 に よ ら ず 推 定 誤 差 が 2.0mm 以 下 に な る こ と は な か っ た . こ れ は Visual hull 上 で 接 点 あ る い は そ の 近 傍 で ある可能性の低い点が と し て 選 ば れ , 誤 っ た 制 約 に基づいて形状が更新されたためである. このような は 提 案 ア ル ゴ リ 変位量が小さい場合における推定誤差を改善すること か ら の 再 探 索 を 行 う 前 の も によって, さらに高精度な形状推定が行えると考えら 更新される. ただし図 7 に示した ズムの手順 2 における のである. も でに抑えることができた. この結果は図 8 から視覚的 れる. 次に, 形状推定結果のレンダリング像を示す. 図 8 に 変 位 量 11.3mm の と き の 形 状 推 定 結 果 を 示 す . 推 定 前の肝臓の 0 と変形後の真の形状を上部に, カメ ラ 配 置 2 台 と 4 台 十 字 の 二 通 り で 視 線 +y, -x 方 向 か ら 見た真の形状と推定形状をそれぞれ下部に示した. い ずれの図においても, 白色のサーフェスデータを真の 形状, ワイヤフレームを推定形状, マゼンダの点を , ワ イ ヤ フ レ ー ム の 水 色 の 点 を と し , = 10.0 mm と し て い る . ま た , 推 定 終 了 ま で に 要 す る 時 間 は カ メ ラ , 変 位 量 に か か わ ら ず 30 秒 程 度 で あ っ た . 最 後 に , 形 状 推 定 結 果 に つ い て , 式 (6)を 用 い て RMS を算出した結果を示す. まず, 肝臓形状に対して 2 通 図 7. 上 面 か ら 見 た Visual hull 1 図 9. 推 定 誤 差 結 果 左 :肝 臓 (カ メ ラ 2 台 ), 中 :肝 臓 (カ メ ラ 4 台 ), 右 :腎 臓 謝 辞 本 研 究 は 京 都 大 学 COI STREAM「 活 力 あ る 生 涯 の た め の Last5X イ ノ ベ ー シ ョ ン 拠 点 」及 び 日 本 学 術 振 興 会 科 学 研 究 費 補 助 金 基 盤 研 究 B「 臓 器 変 形・力 学 特 性 の スパースモデリング及び術中推定に関する研究」 (課題 番 号 : 15H03032) の 助 成 に よ る . 文 図 8.変 位 量 11.3mm , 10.0mm の と き の 推 定 結 果 4. お わ り に 本研究では, 手術時における臓器の局所変位の算出 を目的とし, 多視点内視鏡画像から得られるシルエッ ト画像を用いた柔軟体の変形推定手法を用いて肝臓, 腎 臓 モ デ ル に 対 し て 平 均 で 数 mm~ 1cm 程 度 の 誤 差 で 変形を推定することができた. 今後はこれら問題点を 解決すべく, 推定誤差をより小さくするアルゴリズム の考案や, リアルタイムでの処理ができるよう提案手 法の計算コストの削減が必要である. また, 実際の内 視鏡カメラを用い, さらに動物の摘出臓器を用いて表 面反射特性への頑健性を検証することで, より手術に 即した高精度で頑健な形状推定をリアルタイムで処理 可能になると考えられる. 献 [1] 大 内 田 研 宙 , “内 視 鏡 外 科 手 術 に お け る 3D シ ス テ ム の 現 況 と 展 望 ”, 頭 頸 部 外 科 . Vol. 24, No. 1, pp. 15-18, 2014. [2] M. Nakao, M. Hosokawa, Y. Imai, N. Ueda, T. Hatanaka, T. Kirita and T. Matsuda, "Volumetric Fibular Transfer Planning with Shape-Based Indicators in Mandibular Reconstruction", IEEE Journal of Biomedical and Health Informatics, Vol. 19, No.2, pp.581-589, 2015. [3] M. Nakao and K. Minato, "Physics-based Interactive Volume Manipulation for Sharing Surgical Process", IEEE Trans. on Information Technology in Biomedicine, Vol.14, No. 3, pp. 809-816, 2010. [4] M. Nakao, Y. Oda, K. Taura, and K. Minato, "Direct Volume Manipulation for Visualizing Intraoperative Liver Resection Process", Computer Methods and Programs in Biomedicine, Vol. 113, No. 3, pp. 725735, 2014. [5] 金 子 健 志 , 古 田 康 , 石 井 伸 明 , 他 , “3 次 元 画 像 に よ る手術シミュレーションとナビゲーションシス テ ム ”, 日 本 医 用 画 像 工 学 会 . Vol. 18, No. 2, pp. 121-126, 2000. [6] N. Haouchine, J. Dequidt, I. Peterlik, E. Kerrien, M. O. Berger, and S. Cotin, “Image-guided simulation of heterogeneous tissue deformation for augmented reality during hepatic surgery”, International Symposium on Mixed and Augmented Reality (ISMAR), pp. 199-208, 2013. [7] A. Laurentini, “The visual hull concept for silhouettebased image understanding”, IEEE Trans. on Pattern Analysis and Machine Intelligence, Vol. 16, No. 2, pp. 150-162, 1995. [8] O. Sorkine, D. Cohen, Y. Lipman, and M. Alexa, "Laplacian surface editing", the Eurographics Symposium on Geometry Processing, pp. 175-184, 2004.
© Copyright 2024 ExpyDoc