海外視察報告 - 国立九州医療センター

する倫理指針」と統合する形で「人を対象とする医学系研究
に関する倫理指針(以下「新指針」という。)」が新たに策定さ
れ、平成26年12月に公布されました。
新指針の主な内容として、
研究者等の教育・研修に関する規定
研究の概要及び結果の登録・公表に関する規定(介入研
究が対象)
重篤な有害事象の報告に関する規定(侵襲を伴う研究
が対象)
研究責任者及び共同研究者の利益相反の管理に関する
規定
研究に係る資料及び情報等の保管に関する規定(侵襲
を伴う介入研究では特に長期間の保管が求められる)
モニタリングと必要に応じた監査の実施に関する規定
(侵
襲を伴う介入研究が対象)
などが挙げられます。
新指針は、昨今の研究をめぐる不適正事案への対応とし
て、
『研究の信頼性確保』に重点をおいた内容となっており、
利益相反の管理、研究に係る資料及び情報等の保管、モニタ
平成26年度
院外表彰者の
お知らせ
e
r
Kyush
u Med
ica
l C
t
en
リング・監査の実施といった規定が新たに追加されるとと
もに、研究者等の教育・研修について継続研修(機構本部が
導入するCITI Japan(Eラーニング)の受講等)の規定が追加
され、研究を実施する先生方に対応が求められるようにな
りました。また、文部科学省及び厚生労働省の補助金の交付
を受けて実施する研究について、新指針を遵守せずに研究
事業を行った場合には、補助金の交付決定の取消し、返還等
の処分を行うことがあるなど引き続き厳格な運用を行う方
針が示されましたので、これらの補助金を受けて研究を実
施される先生方については特に注意が必要となります。
新指針は、平成27年4月1日以降(モニタリング・監査に関
する規定は、平成27年10月1日以降)に新たに実施が許可さ
れる研究から適応されることとなっていますので、臨床研
究支援センターでは新指針へ対応すべく各種規定及び手順
書等の改訂作業を進めているところです。
臨床研究の推進は当院の使命と考えますので、今後も先
生方の協力を得ながら研究を行いやすい体制整備を進めて
いきたいと思いますので、ご支援の程よろしくお願いいた
します。
第76回日本臨床外科学会総会
第117回日本循環器学会九州地方会
平成26年11月22日
平成26年12月7日
表彰者名 森岡 友佳 先生(乳腺センター)
表彰者名 田代 浩平 先生(循環器科)
演 題 粘液癌との鑑別が困難であった乳腺多形腺腫の1例
演 題 救急外来で心肺停止となった若年女性の急性冠症候
第308回日本内科学会九州地方会
第48回日本痛風・核酸代謝学会総会
平成27年1月10日
平成27年2月19日
表彰者名 諸岡 進太郎 先生(脳血管神経内科)
表彰者名 井上
(榊)美奈子 先生(高血圧内科)
演 題 椎骨動脈解離に起因する延髄外側症候群で末梢性核
下性顔面神経麻痺を呈した1例
演 題 降圧薬服用者における尿酸管理の現状
第308回日本内科学会九州地方会
第24回アジア太平洋肝臓学会
(APASL2015)
第48回日本痛風平成27年度日本消化器内視鏡学会附置研究会
・核酸代謝学会総会
平成27年3月15日
お知らせ
研修医 Award
研修医セッション最優秀賞
初期研修医奨励賞
群の一例
平成27年度優秀論文賞
表彰者名 和田 幸之 先生(肝胆膵外科)
Kyush
演 題 Strategy of surgical treatment using microwave coagulo-necrotic
therapy for unresectable multiple colorectal liver metastases
u Med
ica
l C
t
en
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2015年
会 長
会 場
お知らせ
研究会案内URL:
http://www.jges.net/index.php/member_submenu/archives/386
床研究センターでは平成27年度の部門目標に、従
来の実績目標に加えて研究倫理教育研修の充実、
臨床研究審査体制の強化と質の向上、そして真に良質な
臨床研究活動の推進を挙げました。本年4月から「人を対
象とする医学系研究に関する倫理指針」が施行され、国立
病院機構はその模範的な実践者であることが求められて
います。今年度は医師全員、研究に関わるメディカルスタ
ッフ全員が研究倫理教育プログラムCITI-JAPANを研修
してもらうことで、一人ひとりの意識を高めて良質な臨
床研究活動が実施できる環境や研究体制を推進したいと
考えています。また臨床研究の信頼性確保のためにも、プ
ロセス・有害事象・成果など研究に関する情報の公表を徹
底し、誠実で魅力ある研究活動を情報発信します。臨床試
験支援センターでは国際共同研究や先進医療支援、他施
海外視察報告
European Bifurcation Club
第10回記念大会に参加して
村里 嘉信
ことが決まりました。
ラグビーで良く使われる”
One for all,
all for one”と言う言葉が最初に出た文献はデュマの「三銃
士」
だそうです。
良い言葉です。
(原田)
発 行 責 任 者: 臨床研究センター長 岡 田 靖 (臨床研究企画運営部長併任)
医療管理企画運営部長
がん臨床研究部長
各研究室室長・副室長: 組織保存・移植
生化学・免疫
研究企画開発
化学療法
放射線治療開発
システム疾患生命科学推進
医療情報管理
臨床試験支援室
独立行政法人
国立病院機構
九州医療センター
才津秀樹
楠本哲也
岡村精一、江崎幸雄
山本政弘、冨永光裕
中牟田誠、久冨智朗
蓮尾泰之、内野慶太
松村泰成、坂本直孝
佐藤真司、小河 淳
原田直彦、占部和敬
岡田 靖、山脇一浩
臨床研究推進部長
トランスレーショナル研究部長
病態生理
動態画像
情報解析
臨床腫瘍病理
先端医療技術応用
医療システムイノベーション
教育研修
〒810-8563 福岡市中央区地行浜1丁目8番1号
矢 坂 正弘
富 田 幸裕
中 村 俊博 、 一 木 昌 郎 、 村 里 嘉 信
黒 岩 俊郎 、 桑 城 貴 弘
吉 住 秀之 、 中 村 守
桃 崎 征也 、 中 川 志 乃
小 野 原俊 博 、 高 見 裕 子
詠 田 眞治 、 甲 斐 哲 也 、 津 本 智 幸
末 松 栄一 、
TEL:092-852-0700(代)
FAX:092-846-8485
2
設モニタリング活動など業務が高度化しており、さらな
る体制整備とチームワークで研究を支援していきます。
臨床研究センターの目標 2015
◎年間研究活動実績4200P以上の達成、英文論文発表の推進
◎年間治験収入2.2億円以上、並びに実施率80%以上の達成
◎医療従事者への研究倫理の教育研修の充実、臨床研究審査体
制強化と質の向上
◎国際共同研究、主任研究、良質な臨床研究活動の推進
◎臨床研究のプロセス確認の徹底と研究に関する情報の公表、
魅力ある情報発信
平成27年4月
臨床研究センター長 岡田 靖
Kyushu Medical Center
循環器内科
2019ラグビーワールドカップは日本で開催予定であり、
アジア地域では初の開催となります。本年3月2日に開催会
場が発表され、
九州では福岡、
長崎、
大分、
熊本で開催される
九州医療センター臨床研究センター便り
Kyushu Medical Center
臨
5月31日(日)
原田 直彦(九州医療センター 光学診療部長)
名古屋国際会議場
独立行政法人
国立病院機構
平成27年度Vol.1(春)
「女性内視鏡医のキャリアサポートを目指した
学会の
平成27年度優秀論文賞
教育研修体制確立に関する研究会」
r
初期研修医奨励賞
poster
presentation award受賞
Kyushu Medical Center
014年10月17∼18日にかけて、
フランス、
ボルドー
で開催されたEuropean Bifurcation Clubに参加
した。本会は、当初、冠動脈分岐部病変に関するヨーロッ
パのmeetingが始まりであったのだが、毎年meetingが終
わると、consensus statementを発表するようになると、
その斬新さのため、瞬く間に、それがworld consensusと
認識されるようになり、今や、ヨーロッパの垣根を超え、
全世界から、この領域の専門家が集まるようになった。年
に1回のconsensusを議論する場であるとともに、新しい
概念、技術、道具、解析につき、臨床医だけでなく解剖学
者、生理学者、医工学者、エンジニアが集結し、最高の情報
が集まる会となっている。今回で第10回を数え、第1回の
会場であったボルドーでの、原点回帰の記念大会であり、
盛大に行われた。私は、幸運にも、10年前、国際学会での
発表をこの会の幹事の一人に興味を持って頂き、招待を
受けたのが縁で、第2回から、毎年欠かさず、参加してい
る。おかげで、ヨーロッパの重鎮の先生方からも、Yoshi
と呼ばれるようになり、佐賀大学の挽地先生と共に、日本
からの馴染みの顔の一人として、親交を深めている。
今回は、以下の3演題を発表した。
1.Further Optimization of Final Kissing Balloon
Inflation(FKB)
分岐部本幹と側枝を同時に拡張するFKBを最適化
するためには、楕円変形を最小とするため、バルーン
のoverlapping styleや拡張圧に工夫が必要であるこ
と、vascular branching lawに従った適正サイズで、
正円の均一な血管拡張が必要であること(図I)、3-D
OCTを使ったガイドワイヤーリクロスが有効であ
ること(図II)を発表。
2.Importance of Routine Use of OCT in Bifurcation
Treatment
分岐部治療でのOCTのroutine useは、このような
imaging deviceが保険償還されている日本でも、普
及しているとは言い難い。低用量、低流量で撮像でき
るコツ、dextranでの撮影を混ぜて、必要情報を得る
コツ、3-D画像の作り方につき発表。
3.Potential Benefit of Final Kissing Balloon
Inflation after Single Stent Approach -Insights
from OCT Sub-study in the J-REVERSE 私がprinciple investigatorの一人を務めた分岐部
ステント治療のprospective multi-center registry
trial (J-REVERSE)のOCTサブ解析の発表。FKBに
よる本幹内腔拡大が慢性期にも保たれており、ステ
ント内膜もより均一に張っていることがわかった。
また、糖尿病患者では、このようなFKBのメリット
は、得られないことが判明した。 今回のfinal consensusの一部には、私の発表のFKBの
概念が採用されており、この上なく、嬉しく思う。また、
10周年を記念して、EuroInterventionに分岐部治療の特
集号を作ることになり、私は、FKBの章のchief authorに
選ばれ、12月はその執筆に明け暮れたが、世界の仲間と
意見を交換でき、貴重な体験であった。このような機会に
理解を頂き、学会出張を快く送り出して下さった冷牟田
副院長をはじめ、
循環器内科の皆様に深く感謝いたします。
(図III 集合写真、図IV 懇親会にてスペインDr. Panと)
TOPICS
Kyushu Medical Center
ステントが脳卒中治療を変える
脳血管内治療科
津本 智幸
以上の4つのステントが脳血管内治療における最近
のトピックスであります。まさに今、直達手術しかなか
った時代から脳血管内治療の時代に移り変わろうとし
ています。
昨
年、数種類のステントが新たに保険収載され、これ
によってほぼすべての脳血管障害に対して血管内
治療が可能になってきました。現在、血管内治療に用いら
れているステントは以下の通りです。
1.頸動脈ステント:頸動脈ステント留置術(carotid
artery stenting: CAS)と呼ばれる手技に用いられる
ステントで、CASは2008年4月より日本で認可されて
います。欧米での臨床試験により、従来行われていた頸
動脈内膜剥離術(carotidendarterectomy: CEA)と同
等の治療成績であることが証明され、本邦でも頚部内
頸動脈狭窄症に対して、CASを選択する症例が増加し
ております(図1)。
2.動脈瘤塞栓術用ステント:脳動脈瘤コイル塞栓術
(aneurysmal coiling)と呼ばれる手技に用いられるス
テントです。従来、コイル塞栓術の良い適応となる動脈
瘤は、ネックと呼ばれる動脈瘤入口部が狭いものとさ
れていましたが、このステントによって、ネックをステ
ントでカバーできるようになったため、ネックが広い
動脈瘤でもコイル塞栓術が可能になりました(図2)。
3.頭蓋内動脈ステント:頭蓋内の動脈が狭窄している
場合に用いるステントです。頭蓋内血管の直径は2−
4mm程度と細く、従来は、バルーンで拡張させるのみ
か、保険適応外の冠動脈ステントを留置して治療に当
たっておりました。しかし、頭蓋内動脈は冠動脈よりも
屈曲していることもあり、冠動脈ステントの留置が難
しく、治療に難渋することがありました。2013年12月
より、頭蓋内動脈専用に設計されたステントが本邦に
も導入され、頭蓋内の細く曲がった血管であっても、ス
テント治療が可能となりました。
4.血栓回収用ステント:脳塞栓症の原因である血栓を
回収するためのステントです。このステントは、前述の
3つのステントと違って体内に留置してくるものでは
なく、ステントとそれにつながったシャフトから成り
立っています。ステントの部分で血栓を捕捉し、回収し
てくるものです。脳血栓回収術に関しては、つい先頃、
欧州からの臨床試験で脳血栓回収術の有効性が証明さ
れ、太い血管が閉塞している場合は、従来のtPA静注療
法に加えて脳血栓回収術を行うことが勧められており
ます(図3)。
図1 頸動脈ステント留置術
(左:術前、真ん中:ステント、右:術後)
図2 ステント併用コイル塞栓術
(左:術前、真ん中:ステント、右:術後)
図3 脳血栓回収術
(左:術前、真ん中:ステント、右:術後)
臨床研究報告 学術賞(平成25年度)
胃癌HER2陽性診断および陽性胃癌に対する
trastuzumab併用化学療法
消化器センター 外科・ がん臨床研究部
楠本 哲也・木村 和恵・堤 敬文・
太田 光彦・杉山 雅彦・楠元 英次・
坂口 善久・池尻 公二
【背 景】
従来、HER2遺伝子とそのコードする蛋白の発現増幅
は、乳癌治療の予後予測因子であり、いろいろな癌腫にお
いて細胞増殖や悪性化に関与していると考えられてい
る。これまで、胃癌に関しては発現と予後に一定の見解は
ないが、ToGA試験によって、トラスツズマブのHER2陽
性胃癌に対する生存期間延長効果が示された。現在では
HER2陽性胃癌に対する標準治療レジメンはカペシタビ
ン+シスプラチン(CDDP)併用(XP)療法+トラスツズマ
ブとされている。
胃癌におけるHER2発現に関しては、日本人における
陽性率、判定法による陽性率の違いなどまだ不明確な点
も多い。HER2蛋白過剰発現を示す切除不能進行・再発胃
癌に対するトラスツズマブの適用に際して、
正確なHER2
陽性判定とその結果に基づく治療戦略が重要である。
【目 的】
胃癌におけるHER2陽性判定の正確性の検討と実地臨
床におけるトラスツズマブ併用化学療法の有用性を検討
する。
【対象と方法】
1)基礎的検討:2003年∼2007年に当科で切除された
胃癌198症例を対象としてIHC(HER2蛋白発現)と
FISH(HER2遺伝子増幅)の相関を検討した。具体的
には、抗体の種類(HER2/neu, 4B5)と染色法(用手
染色、自動染色)の条件が異なるHER2蛋白発現スコ
アを求め、その結果陽性率が高かった用手法でスコ
ア2+以上かつFISH評価可能であった39例について
各条件下のIHCとFISHの結果の相関を検討した。
2)臨床例の後ろ向き検討:2011年9月∼2013年9月
に、HER2発現陽性との結果に基づいてトラスツズ
マブ併用化学療法が施行された進行・再発胃癌11例
を解析し、同時期に施行されたHER2陰性例21例に
対するS-1+CDDP (SP)療法の結果と比較した。
Kyushu Medical Center
の割合が高く、FISHの結果も併せた陽性率はどの条
件下でも198例中10-12例で5.1-6.1%と近似した。
その中でIHCスコア 2+はFISHとの相関が低く、一
方3+と0はFISHとよく相関していた。
2)トラスツズマブ併用化学療法が導入されたHER2過
剰発現を示す進行・再発胃癌11例中6例でCR/PRが
得られた(奏効割合(ORR) 54.5%;同時期のHER2
陰性例に対するSP療法のORR 38.1%)。併用する
レジメンがSP療法またはXP療法に限ってもORRは
50.1%であった。さらに一次治療の無増悪生存期間
(PFS)はトラスツズマブ +例232日/−例199日、全
生存期間(OS)は+例で未達/−例344日。統計学的
有意差はみられなかったが、トラスツズマブ併用療
法が良好な傾向であった。
【考 察】
基礎的検討から、HER2陽性率は、3つの異なる条件下
でも概ね同等の陽性率が得られた。しかしIHCとFISHを
すべて施行し得た39例の検討から、IHC3+とIHC-は
FISHの結果とよく相関していたが、IHC2+症例は相関が
なかった。IHC2+はより慎重なHER2判定が求められる
と考えられた。現状のガイドラインでは、IHC2+は必ず
FISH+を確認してHER2陽性と診断することになってお
り、本結果と合致する(図1)。
臨床例の検討から、HER2陽性胃癌におけるトラスツ
ズマブ併用化学療法はORR, PFS/OSともに標準治療で
あるSP療法と同様に比較的良好であった。
進行・再発胃癌
症例において、正確なHER2 陽性診断に基づく積極的な
トラスツズマブ併用化学療法の適応が重要と考えられる。
図
【結 果】
1)抗体の種類や手技によってIHCによるHER2スコア
は異なっていた。その中で用手染色のIHCスコア3+
CPC
食道癌治療後に悪性リンパ腫による多関節炎を
呈した腫瘍随伴症候群の1例
Kyushu Medical Center
膠原病内科
大神 靖也・樋口 茉希子・
宮村 知也
文献:⑴静脈経腸栄養ガイドライン第3版135-136 p, ⑵高齢社
会白書 平成26年度版.内閣府,2014 図1. NST回診患者数
1200
1000
800
再スクリーニング患者
600
褥瘡患者
スクリーニング患者
400
フォロー患者
200
新規患者
年
年
14
20
年
13
20
年
12
20
年
20
11
年
09
10
20
20
年
年
07
08
20
20
20
06
年
年
0
図2. 2014年診療科別NST介入患者数
35 33
30
25
21
20
17 16
15
15
11 11 11 11 11
10
7
5
7
6
4
4
3
3
2
2
1
1
1
1
1
血
神
原
病
血
管
外
腎
臓
内
泌
尿
器
脳
神
外
代
謝
内
婦
人
科
リ
ウ
マ
心
臓
外
歯
口
腔
放
射
線
形
成
外
呼
吸
外
高
血
圧
産
科
循
環
器
7
脳
膠
診
内
総
合
科
外
液
血
外
0
経
養療法はすべての医療行為の根幹です。NST活動を
活発にかつ適正に実施することで入院患者の栄養状
態の改善や術後合併症発生頻度の減少、経腸栄養や静脈栄
養の合併症の減少等により入院期間の短縮、医療費の節約
等の効果があることはすでに証明されています⑴。当院
NSTは2004年4月に活動を開始して11年になります。現時
点でNSTメンバーはコアスタッフ28名、各病棟のリンクス
タッフ、各職種のサポートスタッフを加えると総勢56名が
活動しています。9名のスタッフがNST専門療法士の資格を
取得しています。2014年4月より歯科衛生士もNSTメンバ
ーに加わり口腔ケアのサポートもより充実して行うことが
可能になりました。活動内容は、NSTカンファランス1回/
週、NST回診2回/週、NSTランチタイムミーティング1回/2
週、NST勉強会(院内と連携施設も含めたメンバー)1回/月、
ももちNST講演会1回/年、NST専門療法士実地研修(2回/
年)など栄養管理に関する教育・研修も積極的に行っていま
す。また、褥瘡対策チーム、感染症コントロールチーム(ICT)
などの他のチームとも常に業務連携しています。2014年に
NSTが介入した新規症例は207名、のべ955名/年の回診を
行いました(図1)。診療科別の介入症例をみると呼吸器科、
救急、消化器科が多く(図2)、介入内容は嚥下機能評価44%、
経口摂取支援37%、経腸栄養管理17%、TPN管理1%、その
他1%でした。介入例の転帰:転院53%、自宅退院17%、改善
終了10%であった。転院時には、栄養管理診療情報提供を行
っています。
厚労省は2025年を目途に高齢者の尊厳の保持と自立生
活支援の目的のもとで、高齢者が可能な限り住み慣れた地
形
栄
神
腹 部 大 動 脈 周 囲 リ ン パ 節 腫 大:M a l i gn a n t l ym p h o m a ,
diffuse large cell type, non-GC B cell phenotype. (positive
for CD20, MUM1, MIB1/ negative for EBV-LMP1, CD3,
CD5, cyclin D1, CD10, EBV-ISH)(図)。両側肺上葉を主体に
含気の低下、黒色斑状変化が多発していた。組織学的には肺出
血、うっ血水腫、多発肺膿瘍を認めた。心臓ではリンパ球浸潤が
両室壁筋層内に認められた。一部で核異型も疑われ、悪性リンパ
腫の浸潤の可能性も考え免役染色にて精査したが陰性であっ
た。心外膜には線維素性心外膜炎を伴っていた。なお他院にて
10年前食道癌+肝臓転移にて放射線+化学療法後CRであった
が、剖検時にも再発は認めていなかった。以上の所見から、急激
に進行する肺水腫は心不全+肺感染症に起因すると考えられ
た。癌性リンパ管症は認めなかった。心不全の原因としては原因
の特定できない心筋炎+心外膜炎を疑った。直接死因は呼吸不
全と考えられる。
福泉 公仁隆
域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことが
できるようにするため、医療、介護、予防、住まい、生活支援
サービスが一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の
確立を目指す ⑵ことが示されています。その中で栄養管理
はすべての場面で重要であり、栄養管理における地域連携
を積極的に構築する必要があります。そのためにもNST活
動を通して栄養管理の啓蒙活動を継続します。
神
病理解剖所見
消化器科 N S T
精
<尿検査>glu (-)、prot (-)、ket (-)、O.B. (-)、WBC (-)
<便>便Hb:陰性
<血算>WBC 16500/μl (Neut 88.1%、Ly 4.6%、Mo
3.8%、Eo 0.9%、Ba 0.0%)
RBC 329×104μl、
Hb 9.5g/dl、
Ht 30.0%、
Plt 28.7×104/μl
<生化学>TP 6.4g/dl、Alb 2.0g/dl、T-Bil 1.4mg/dl、LDH
294IU/l、AST 52IU/l、ALT 22IU/l、ALP 244IU/l、BUN
52mg/dl、Cr 1.93mg/dl、Na 137mEq/l、K 4.1mEq/l、Cl
103mEq/l、Ca 8.4mg/dl、UA 13.0mg/dl、Fe 18μg/ml、UIBC
137μg/ml、TIBC 155μg/ml、フェリチン 786.26ng/ml
<凝固>PT 20.5秒、PT-INR 1.53、APTT 39.2秒、FIB
417mg/dl、FDP 46.5μg/ml、D-dimer 14.7μg/ml
<血清学>CRP 17.37mg/dl、
CH50 36.9U/ml、
C3 97mg/dl、
C4
27mg/dl、IgG 2142mg/dl、IgA 522mg/dl、IgM 189mg/dl、RF
12IU/l、MMP-3 189.8ng/ml、抗核抗体 陰性、抗dsDNA抗体 <
12.0IU/ml、抗RNP抗体 <5.0IU/ml、抗Sm抗体 <5.0IU/ml、抗
SS-A抗体 <5.0IU/ml、PR3-ANCA <1.0IU/ml、MPO-ANCA
<1.0IU/ml
<感染>HBs抗原 0.01IU/ml、HBs抗体 3IU/ml、HBc抗体
10.62 IU/ml、HCV抗体 12.65IU/ml、ATLA 陰性、HBV DNA
陰性、HCV RNA 1b型 5.2Log IU/ml、T-SPOT 陰性
<腫瘍マーカー>
CEA 2.1ng/ml、CA19-9 <2IU/ml、sIL-2R 2930U/ml
<胸部レントゲン>CTR 60%、Lung field 両肺野陰影増強、
C-P angle dull
<関節レントゲン>手関節:明らかな関節リウマチを疑うよう
な骨変化は認めない。膝関節:軽度の変形性関節症があるが骨変
化は認めない。
<UCG>EF 44%、FS 22%、AR Ⅱ°、IVC 呼吸性変動 poor、
IVC径 19/21mm、Wall motion diffuse mild hypokinesis、P.E
右心系側に少量貯留、両側胸水貯留
<胸部CT>両側胸水貯留あり。心嚢水貯留、心膜肥厚あり。縦隔
気管右側、両主気管支下部のリンパ節腫大を認める。
<腹部CT>胃小弯、retrocaval space、両腸骨域、左鼠径部に複
数腫大リンパ節あり。
急激に悪化する肺水腫、心不全の原因精査、癌性リンパ管症疑
い、腹部リンパ節腫脹の組織診断
当院NST(栄養サポートチーム)活動状況と課題
年
入院時検査所見
病理解剖の目的
Kyushu Medical Center
05
入院時現症
身長 158.0cm、体重 61.6kg、BP 96/47mmHg、BT 38.0
℃、PR 100/min、SpO2 93%
頭頸部:眼瞼結膜:貧血あり、眼球結膜:黄染なし、咽頭:発赤・腫
脹なし、
甲状腺:軟、
可動性良好、
頚部リンパ節腫脹なし
胸部:呼吸音:清、左右差(‐)、心音:SI→ SⅡ→ SⅢ/SⅣ(‐)
腹部:平坦・軟、腸蠕動音:正常、反跳痛(‐)、筋性防御(‐)
四肢:運動障害(‐)、病的反射(‐)、腫脹関節:18、圧痛関節:18
委員会報告
整
特記事項なし
04
家族歴
20
喫煙10本×30年(10年前まで)、
飲酒 焼酎2合(10年前まで)
器
生活歴
化
特記事項なし
20
既往歴
【参考文献】
1.Firestein G.S. et al, Kelly’s textbook of Rheumatology. 2009;
1841-1862
2.Racanelli V.et al, Autoimunity Reviews, 2008; 7 : 352-358
3.Larson E. et al, Rheumatol Int, 2011; 31 : 1635-1638
4.Marengo M.F. et al, Rheumatol Dis Clin North Am, 2011; 37 :
551-572
5.Naschitz J.E. et al, Curr Opin Rheumatol, 2008; 20 : 100
6.Brooks R.C. et al, Arch Intern Med, 1997; 157 : 162
7.Sidhom O.A. et al, Arch Intern Med, 1993; 153 : 2043
器
現病歴
10年前、食道癌および肝転移に対し前医にて放射線・抗癌剤
治療を受けた。抗癌剤治療は7年前まで施行され、以降は同院に
て経過観察されていた。死亡約1か月前より顎関節痛、両膝関節
痛を自覚。その後関節痛症状は多関節に拡大し増悪。近医受診
し、CRP14mg/dlと炎症反応高値を指摘された。死亡10日前、前
医受診し、関節リウマチが疑われ精査加療目的に同日当科紹介
入院となった。
部
多関節痛
消
主 訴
当科入院時、多関節炎症状、38℃台の発熱、低酸素血症を認め
た。多関節炎症状の原因として、入院当初は関節リウマチを疑っ
たが、血液検査にてRF軽度上昇あるも、抗CCP抗体陰性、レント
ゲン上骨変化なく、発症形式を含め否定的と考えられた。入院時
施行したCT検査にて多発リンパ節腫脹を認め、食道癌またはそ
の他の悪性腫瘍のリンパ節転移、あるいは悪性リンパ腫が疑わ
れた。上部消化管内視鏡検査より肉眼的に食道癌の再発なく、
CT上その他明らかな悪性腫瘍を疑う所見も認めず、リンパ節転
移は否定的であった。腫瘍マーカーではCEA、CA19-9上昇は認
めないが、sIL-2R上昇を認め悪性リンパ腫が最も疑われた。以
上所見より、多関節炎症状は悪性リンパ腫を含めた多発リンパ
節腫脹を呈する腫瘍性病変による腫瘍随伴症候群と診断した。
腫瘍随伴症候群としての多関節炎は原疾患の治療が原則となる
ため、疼痛緩和目的に少量ステロイド投与を開始し、関節炎症状
は速やかに軽快した。
一方、入院時より両側胸水貯留、心嚢液貯留、心機能低下を認
めたことよりうっ血性心不全を呈していた。原因としては心嚢
液貯留、著明な心膜肥厚より心膜炎が疑われた。
悪性リンパ腫治療目的に前医に転院予定であったが、入院後
10病日急速に呼吸不全を呈し、呼吸管理、循環管理を行うも全
身状態は悪化し、転院予定日に死亡退院となった。
本症例は悪性リンパ腫による腫瘍随伴症候群として関節炎症
状を呈した一例であった。腫瘍随伴症候群とは原発癌の直接浸
潤や転移による障害ではなく、遠隔癌の影響で生じる障害であ
り、発症機序は明確ではないが液性因子や腫瘍に伴う自己免疫
反応による機序と考えられている。腫瘍随伴症候群の一つに関
節リウマチと類似した多関節炎を来す癌性多発性関節炎
(Carcinomatous polyarthritis; CP)がある。しばしば潜在性悪
性腫瘍に先行して発症し、さらに悪性腫瘍の治療により軽快す
る。CPは多くの悪性腫瘍に関連付けられているが、特に血液腫
瘍(悪性リンパ腫や白血病)、肺癌、胃癌、乳癌などに認められる
と の 報 告 が あ る 。本 症 例 で は 病 理 組 織 学 的 に 悪 性 リ ン パ 腫
(diffuse large cell type、non-GC cell phenotype)の診断であ
った。CPの特徴としては高齢発症、対称性関節炎、急性発症、RF
陰 性 で あ り 、レ ン ト ゲ ン で 骨 び ら ん や 関 節 変 形 は 認 め ず 、
NSAIDsや抗リウマチ薬治療抵抗性などの特徴が挙げられる。
本症例では軽度RF陽性であったが、その他の特徴は有しており
臨床症状よりCPの診断で矛盾しないと判断した。
吸
70歳代 男性
入院時経過
一方、本症例の死因は非特異的心筋炎・線維素性心外膜炎によ
るうっ血性心不全であった。心筋炎や心膜炎の原因として感染
症、薬剤、膠原病などの全身性疾患、悪性腫瘍の直接浸潤が挙げ
られる。病理所見では悪性腫瘍の直接浸潤は認めず、またこれま
でに腫瘍随伴症候群による心膜心筋炎の報告はないことから悪
性腫瘍との関連は乏しいと考えられた。
悪性腫瘍の初期症状としての多関節炎症状は常に念頭に置く
必要があり、
悪性腫瘍の早期診断と治療につながる可能性がある。
急
桃崎 征也
考 察
呼
<上部消化管内視鏡検査>食道癌の食道内局所再発は認めない。
救
病理
病理解剖診断
1. 悪性リンパ腫、diffuse large cell type, non-GC B cell
phenotype(腹部大動脈周囲)
2. 食道癌、放射線・抗がん剤治療後10年の状態、再発転移なし
3. 非特異的心筋炎(両室、原因不明)、線維素性心外膜炎
4. 多発肺膿瘍、肺出血、気管支肺炎、うっ血水腫
5. 心臓弁膜症(大動脈弁、僧帽弁)
6. 膀胱炎
7. 前立腺過形成
臨床試験支援センター
新たな倫理指針の公布について
Kyushu Medical Center
臨
臨床試験支援センター
山脇 一浩
床研究については、被験者の人権を保護しつつ臨床
研究の適正な推進を図るために、研究者等が遵守す
べき規範の策定が求められ、平成15年に初めて「臨床研究に
関する倫理指針」が策定されました。これまで平成16年、20
年と2度の改正が行われてきましたが、今回「疫学研究に関
文献:⑴静脈経腸栄養ガイドライン第3版135-136 p, ⑵高齢社
会白書 平成26年度版.内閣府,2014 図1. NST回診患者数
1200
1000
800
再スクリーニング患者
600
褥瘡患者
スクリーニング患者
400
フォロー患者
200
新規患者
年
年
14
20
年
13
20
年
12
20
年
20
11
年
09
10
20
20
年
年
07
08
20
20
20
06
年
年
0
図2. 2014年診療科別NST介入患者数
35 33
30
25
21
20
17 16
15
15
11 11 11 11 11
10
7
5
7
6
4
4
3
3
2
2
1
1
1
1
1
血
神
原
病
血
管
外
腎
臓
内
泌
尿
器
脳
神
外
代
謝
内
婦
人
科
リ
ウ
マ
心
臓
外
歯
口
腔
放
射
線
形
成
外
呼
吸
外
高
血
圧
産
科
循
環
器
7
脳
膠
診
内
総
合
科
外
液
血
外
0
経
養療法はすべての医療行為の根幹です。NST活動を
活発にかつ適正に実施することで入院患者の栄養状
態の改善や術後合併症発生頻度の減少、経腸栄養や静脈栄
養の合併症の減少等により入院期間の短縮、医療費の節約
等の効果があることはすでに証明されています⑴。当院
NSTは2004年4月に活動を開始して11年になります。現時
点でNSTメンバーはコアスタッフ28名、各病棟のリンクス
タッフ、各職種のサポートスタッフを加えると総勢56名が
活動しています。9名のスタッフがNST専門療法士の資格を
取得しています。2014年4月より歯科衛生士もNSTメンバ
ーに加わり口腔ケアのサポートもより充実して行うことが
可能になりました。活動内容は、NSTカンファランス1回/
週、NST回診2回/週、NSTランチタイムミーティング1回/2
週、NST勉強会(院内と連携施設も含めたメンバー)1回/月、
ももちNST講演会1回/年、NST専門療法士実地研修(2回/
年)など栄養管理に関する教育・研修も積極的に行っていま
す。また、褥瘡対策チーム、感染症コントロールチーム(ICT)
などの他のチームとも常に業務連携しています。2014年に
NSTが介入した新規症例は207名、のべ955名/年の回診を
行いました(図1)。診療科別の介入症例をみると呼吸器科、
救急、消化器科が多く(図2)、介入内容は嚥下機能評価44%、
経口摂取支援37%、経腸栄養管理17%、TPN管理1%、その
他1%でした。介入例の転帰:転院53%、自宅退院17%、改善
終了10%であった。転院時には、栄養管理診療情報提供を行
っています。
厚労省は2025年を目途に高齢者の尊厳の保持と自立生
活支援の目的のもとで、高齢者が可能な限り住み慣れた地
形
栄
神
腹 部 大 動 脈 周 囲 リ ン パ 節 腫 大:M a l i gn a n t l ym p h o m a ,
diffuse large cell type, non-GC B cell phenotype. (positive
for CD20, MUM1, MIB1/ negative for EBV-LMP1, CD3,
CD5, cyclin D1, CD10, EBV-ISH)(図)。両側肺上葉を主体に
含気の低下、黒色斑状変化が多発していた。組織学的には肺出
血、うっ血水腫、多発肺膿瘍を認めた。心臓ではリンパ球浸潤が
両室壁筋層内に認められた。一部で核異型も疑われ、悪性リンパ
腫の浸潤の可能性も考え免役染色にて精査したが陰性であっ
た。心外膜には線維素性心外膜炎を伴っていた。なお他院にて
10年前食道癌+肝臓転移にて放射線+化学療法後CRであった
が、剖検時にも再発は認めていなかった。以上の所見から、急激
に進行する肺水腫は心不全+肺感染症に起因すると考えられ
た。癌性リンパ管症は認めなかった。心不全の原因としては原因
の特定できない心筋炎+心外膜炎を疑った。直接死因は呼吸不
全と考えられる。
福泉 公仁隆
域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことが
できるようにするため、医療、介護、予防、住まい、生活支援
サービスが一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の
確立を目指す ⑵ことが示されています。その中で栄養管理
はすべての場面で重要であり、栄養管理における地域連携
を積極的に構築する必要があります。そのためにもNST活
動を通して栄養管理の啓蒙活動を継続します。
神
病理解剖所見
消化器科 N S T
精
<尿検査>glu (-)、prot (-)、ket (-)、O.B. (-)、WBC (-)
<便>便Hb:陰性
<血算>WBC 16500/μl (Neut 88.1%、Ly 4.6%、Mo
3.8%、Eo 0.9%、Ba 0.0%)
RBC 329×104μl、
Hb 9.5g/dl、
Ht 30.0%、
Plt 28.7×104/μl
<生化学>TP 6.4g/dl、Alb 2.0g/dl、T-Bil 1.4mg/dl、LDH
294IU/l、AST 52IU/l、ALT 22IU/l、ALP 244IU/l、BUN
52mg/dl、Cr 1.93mg/dl、Na 137mEq/l、K 4.1mEq/l、Cl
103mEq/l、Ca 8.4mg/dl、UA 13.0mg/dl、Fe 18μg/ml、UIBC
137μg/ml、TIBC 155μg/ml、フェリチン 786.26ng/ml
<凝固>PT 20.5秒、PT-INR 1.53、APTT 39.2秒、FIB
417mg/dl、FDP 46.5μg/ml、D-dimer 14.7μg/ml
<血清学>CRP 17.37mg/dl、
CH50 36.9U/ml、
C3 97mg/dl、
C4
27mg/dl、IgG 2142mg/dl、IgA 522mg/dl、IgM 189mg/dl、RF
12IU/l、MMP-3 189.8ng/ml、抗核抗体 陰性、抗dsDNA抗体 <
12.0IU/ml、抗RNP抗体 <5.0IU/ml、抗Sm抗体 <5.0IU/ml、抗
SS-A抗体 <5.0IU/ml、PR3-ANCA <1.0IU/ml、MPO-ANCA
<1.0IU/ml
<感染>HBs抗原 0.01IU/ml、HBs抗体 3IU/ml、HBc抗体
10.62 IU/ml、HCV抗体 12.65IU/ml、ATLA 陰性、HBV DNA
陰性、HCV RNA 1b型 5.2Log IU/ml、T-SPOT 陰性
<腫瘍マーカー>
CEA 2.1ng/ml、CA19-9 <2IU/ml、sIL-2R 2930U/ml
<胸部レントゲン>CTR 60%、Lung field 両肺野陰影増強、
C-P angle dull
<関節レントゲン>手関節:明らかな関節リウマチを疑うよう
な骨変化は認めない。膝関節:軽度の変形性関節症があるが骨変
化は認めない。
<UCG>EF 44%、FS 22%、AR Ⅱ°、IVC 呼吸性変動 poor、
IVC径 19/21mm、Wall motion diffuse mild hypokinesis、P.E
右心系側に少量貯留、両側胸水貯留
<胸部CT>両側胸水貯留あり。心嚢水貯留、心膜肥厚あり。縦隔
気管右側、両主気管支下部のリンパ節腫大を認める。
<腹部CT>胃小弯、retrocaval space、両腸骨域、左鼠径部に複
数腫大リンパ節あり。
急激に悪化する肺水腫、心不全の原因精査、癌性リンパ管症疑
い、腹部リンパ節腫脹の組織診断
当院NST(栄養サポートチーム)活動状況と課題
年
入院時検査所見
病理解剖の目的
Kyushu Medical Center
05
入院時現症
身長 158.0cm、体重 61.6kg、BP 96/47mmHg、BT 38.0
℃、PR 100/min、SpO2 93%
頭頸部:眼瞼結膜:貧血あり、眼球結膜:黄染なし、咽頭:発赤・腫
脹なし、
甲状腺:軟、
可動性良好、
頚部リンパ節腫脹なし
胸部:呼吸音:清、左右差(‐)、心音:SI→ SⅡ→ SⅢ/SⅣ(‐)
腹部:平坦・軟、腸蠕動音:正常、反跳痛(‐)、筋性防御(‐)
四肢:運動障害(‐)、病的反射(‐)、腫脹関節:18、圧痛関節:18
委員会報告
整
特記事項なし
04
家族歴
20
喫煙10本×30年(10年前まで)、
飲酒 焼酎2合(10年前まで)
器
生活歴
化
特記事項なし
20
既往歴
【参考文献】
1.Firestein G.S. et al, Kelly’s textbook of Rheumatology. 2009;
1841-1862
2.Racanelli V.et al, Autoimunity Reviews, 2008; 7 : 352-358
3.Larson E. et al, Rheumatol Int, 2011; 31 : 1635-1638
4.Marengo M.F. et al, Rheumatol Dis Clin North Am, 2011; 37 :
551-572
5.Naschitz J.E. et al, Curr Opin Rheumatol, 2008; 20 : 100
6.Brooks R.C. et al, Arch Intern Med, 1997; 157 : 162
7.Sidhom O.A. et al, Arch Intern Med, 1993; 153 : 2043
器
現病歴
10年前、食道癌および肝転移に対し前医にて放射線・抗癌剤
治療を受けた。抗癌剤治療は7年前まで施行され、以降は同院に
て経過観察されていた。死亡約1か月前より顎関節痛、両膝関節
痛を自覚。その後関節痛症状は多関節に拡大し増悪。近医受診
し、CRP14mg/dlと炎症反応高値を指摘された。死亡10日前、前
医受診し、関節リウマチが疑われ精査加療目的に同日当科紹介
入院となった。
部
多関節痛
消
主 訴
当科入院時、多関節炎症状、38℃台の発熱、低酸素血症を認め
た。多関節炎症状の原因として、入院当初は関節リウマチを疑っ
たが、血液検査にてRF軽度上昇あるも、抗CCP抗体陰性、レント
ゲン上骨変化なく、発症形式を含め否定的と考えられた。入院時
施行したCT検査にて多発リンパ節腫脹を認め、食道癌またはそ
の他の悪性腫瘍のリンパ節転移、あるいは悪性リンパ腫が疑わ
れた。上部消化管内視鏡検査より肉眼的に食道癌の再発なく、
CT上その他明らかな悪性腫瘍を疑う所見も認めず、リンパ節転
移は否定的であった。腫瘍マーカーではCEA、CA19-9上昇は認
めないが、sIL-2R上昇を認め悪性リンパ腫が最も疑われた。以
上所見より、多関節炎症状は悪性リンパ腫を含めた多発リンパ
節腫脹を呈する腫瘍性病変による腫瘍随伴症候群と診断した。
腫瘍随伴症候群としての多関節炎は原疾患の治療が原則となる
ため、疼痛緩和目的に少量ステロイド投与を開始し、関節炎症状
は速やかに軽快した。
一方、入院時より両側胸水貯留、心嚢液貯留、心機能低下を認
めたことよりうっ血性心不全を呈していた。原因としては心嚢
液貯留、著明な心膜肥厚より心膜炎が疑われた。
悪性リンパ腫治療目的に前医に転院予定であったが、入院後
10病日急速に呼吸不全を呈し、呼吸管理、循環管理を行うも全
身状態は悪化し、転院予定日に死亡退院となった。
本症例は悪性リンパ腫による腫瘍随伴症候群として関節炎症
状を呈した一例であった。腫瘍随伴症候群とは原発癌の直接浸
潤や転移による障害ではなく、遠隔癌の影響で生じる障害であ
り、発症機序は明確ではないが液性因子や腫瘍に伴う自己免疫
反応による機序と考えられている。腫瘍随伴症候群の一つに関
節リウマチと類似した多関節炎を来す癌性多発性関節炎
(Carcinomatous polyarthritis; CP)がある。しばしば潜在性悪
性腫瘍に先行して発症し、さらに悪性腫瘍の治療により軽快す
る。CPは多くの悪性腫瘍に関連付けられているが、特に血液腫
瘍(悪性リンパ腫や白血病)、肺癌、胃癌、乳癌などに認められる
と の 報 告 が あ る 。本 症 例 で は 病 理 組 織 学 的 に 悪 性 リ ン パ 腫
(diffuse large cell type、non-GC cell phenotype)の診断であ
った。CPの特徴としては高齢発症、対称性関節炎、急性発症、RF
陰 性 で あ り 、レ ン ト ゲ ン で 骨 び ら ん や 関 節 変 形 は 認 め ず 、
NSAIDsや抗リウマチ薬治療抵抗性などの特徴が挙げられる。
本症例では軽度RF陽性であったが、その他の特徴は有しており
臨床症状よりCPの診断で矛盾しないと判断した。
吸
70歳代 男性
入院時経過
一方、本症例の死因は非特異的心筋炎・線維素性心外膜炎によ
るうっ血性心不全であった。心筋炎や心膜炎の原因として感染
症、薬剤、膠原病などの全身性疾患、悪性腫瘍の直接浸潤が挙げ
られる。病理所見では悪性腫瘍の直接浸潤は認めず、またこれま
でに腫瘍随伴症候群による心膜心筋炎の報告はないことから悪
性腫瘍との関連は乏しいと考えられた。
悪性腫瘍の初期症状としての多関節炎症状は常に念頭に置く
必要があり、
悪性腫瘍の早期診断と治療につながる可能性がある。
急
桃崎 征也
考 察
呼
<上部消化管内視鏡検査>食道癌の食道内局所再発は認めない。
救
病理
病理解剖診断
1. 悪性リンパ腫、diffuse large cell type, non-GC B cell
phenotype(腹部大動脈周囲)
2. 食道癌、放射線・抗がん剤治療後10年の状態、再発転移なし
3. 非特異的心筋炎(両室、原因不明)、線維素性心外膜炎
4. 多発肺膿瘍、肺出血、気管支肺炎、うっ血水腫
5. 心臓弁膜症(大動脈弁、僧帽弁)
6. 膀胱炎
7. 前立腺過形成
臨床試験支援センター
新たな倫理指針の公布について
Kyushu Medical Center
臨
臨床試験支援センター
山脇 一浩
床研究については、被験者の人権を保護しつつ臨床
研究の適正な推進を図るために、研究者等が遵守す
べき規範の策定が求められ、平成15年に初めて「臨床研究に
関する倫理指針」が策定されました。これまで平成16年、20
年と2度の改正が行われてきましたが、今回「疫学研究に関
する倫理指針」と統合する形で「人を対象とする医学系研究
に関する倫理指針(以下「新指針」という。)」が新たに策定さ
れ、平成26年12月に公布されました。
新指針の主な内容として、
研究者等の教育・研修に関する規定
研究の概要及び結果の登録・公表に関する規定(介入研
究が対象)
重篤な有害事象の報告に関する規定(侵襲を伴う研究
が対象)
研究責任者及び共同研究者の利益相反の管理に関する
規定
研究に係る資料及び情報等の保管に関する規定(侵襲
を伴う介入研究では特に長期間の保管が求められる)
モニタリングと必要に応じた監査の実施に関する規定
(侵
襲を伴う介入研究が対象)
などが挙げられます。
新指針は、昨今の研究をめぐる不適正事案への対応とし
て、
『研究の信頼性確保』に重点をおいた内容となっており、
利益相反の管理、研究に係る資料及び情報等の保管、モニタ
平成26年度
院外表彰者の
お知らせ
e
r
Kyush
u Med
ica
l C
t
en
リング・監査の実施といった規定が新たに追加されるとと
もに、研究者等の教育・研修について継続研修(機構本部が
導入するCITI Japan(Eラーニング)の受講等)の規定が追加
され、研究を実施する先生方に対応が求められるようにな
りました。また、文部科学省及び厚生労働省の補助金の交付
を受けて実施する研究について、新指針を遵守せずに研究
事業を行った場合には、補助金の交付決定の取消し、返還等
の処分を行うことがあるなど引き続き厳格な運用を行う方
針が示されましたので、これらの補助金を受けて研究を実
施される先生方については特に注意が必要となります。
新指針は、平成27年4月1日以降(モニタリング・監査に関
する規定は、平成27年10月1日以降)に新たに実施が許可さ
れる研究から適応されることとなっていますので、臨床研
究支援センターでは新指針へ対応すべく各種規定及び手順
書等の改訂作業を進めているところです。
臨床研究の推進は当院の使命と考えますので、今後も先
生方の協力を得ながら研究を行いやすい体制整備を進めて
いきたいと思いますので、ご支援の程よろしくお願いいた
します。
第76回日本臨床外科学会総会
第117回日本循環器学会九州地方会
平成26年11月22日
平成26年12月7日
表彰者名 森岡 友佳 先生(乳腺センター)
表彰者名 田代 浩平 先生(循環器科)
演 題 粘液癌との鑑別が困難であった乳腺多形腺腫の1例
演 題 救急外来で心肺停止となった若年女性の急性冠症候
第308回日本内科学会九州地方会
第48回日本痛風・核酸代謝学会総会
平成27年1月10日
平成27年2月19日
表彰者名 諸岡 進太郎 先生(脳血管神経内科)
表彰者名 井上
(榊)美奈子 先生(高血圧内科)
演 題 椎骨動脈解離に起因する延髄外側症候群で末梢性核
下性顔面神経麻痺を呈した1例
演 題 降圧薬服用者における尿酸管理の現状
第308回日本内科学会九州地方会
第24回アジア太平洋肝臓学会
(APASL2015)
第48回日本痛風平成27年度日本消化器内視鏡学会附置研究会
・核酸代謝学会総会
平成27年3月15日
お知らせ
研修医 Award
研修医セッション最優秀賞
初期研修医奨励賞
群の一例
平成27年度優秀論文賞
「女性内視鏡医のキャリアサポートを目指した
学会の
平成27年度優秀論文賞
教育研修体制確立に関する研究会」
e
r
初期研修医奨励賞
poster
presentation award受賞
表彰者名 和田 幸之 先生(肝胆膵外科)
Kyush
演 題 Strategy of surgical treatment using microwave coagulo-necrotic
therapy for unresectable multiple colorectal liver metastases
2019ラグビーワールドカップは日本で開催予定であり、
アジア地域では初の開催となります。本年3月2日に開催会
場が発表され、
九州では福岡、
長崎、
大分、
熊本で開催される
u Med
ica
e
l C
nt
2015年
会 長
会 場
5月31日(日)
原田 直彦(九州医療センター 光学診療部長)
名古屋国際会議場
研究会案内URL:
http://www.jges.net/index.php/member_submenu/archives/386
ことが決まりました。
ラグビーで良く使われる”
One for all,
all for one”と言う言葉が最初に出た文献はデュマの「三銃
士」
だそうです。
良い言葉です。
(原田)
発 行 責 任 者: 臨床研究センター長 岡 田 靖 (臨床研究企画運営部長併任)
医療管理企画運営部長
がん臨床研究部長
各研究室室長・副室長: 組織保存・移植
生化学・免疫
研究企画開発
化学療法
放射線治療開発
システム疾患生命科学推進
医療情報管理
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九州医療センター
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岡村精一、江崎幸雄
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中牟田誠、久冨智朗
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松村泰成、坂本直孝
佐藤真司、小河 淳
原田直彦、占部和敬
岡田 靖、山脇一浩
臨床研究推進部長
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矢 坂 正弘
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中 村 俊博 、 一 木 昌 郎 、 村 里 嘉 信
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