超音波検査で大事なこと • 患者さんにプローブを当ててからレポートを 書くまで • リアルタイム動画に慣れること • 解剖は CT・MR・X線画像などあらゆる知識を 駆使する • 死角が生じやすいことを意識する • 患者さんとの会話から得られる情報も多い 腹部超音波検査の基礎 熊本大学医学部病院 小味昌憲 1 2 プローブ(探触子) コンベックス リニア 超音波画像の見方 • 横断像・・・・・画面の右側が患者さんの左側 • 縦断像・・・・・画面の右側が患者さんの尾側 セクタ 3 4 エコーレベル 腫瘤性病変の評価 色 エコーレベル 構造 所見 真っ白 強エコー(strong echo) 密度が極端に異な るものの表面 結石・石灰化・ガス 白 高エコー (hyperechoic) 反射面 スポンジ状・脂肪沈着 周辺と同じ 等エコー (isoechoic) 周囲と類似してい る 充実性組織 黒 低エコー (hypoechoic) 周囲より反射が小 さく比較的均一な 組織 線維化 真っ黒 無エコー(echofree) 反射がなく、音波が 液体 ぬける 5 • • • • • • • 境界エコー・・・・・明瞭 or不明瞭 内部エコー・・・・・高 or等 or低、均一 or不均一 後方エコー・・・・・増強 or不変 or減弱 外側陰影・・・・・あり orなし 形状・・・・・円形 or多角形 or不整形 辺縁・・・・・腫瘤内部の境界側 周辺・・・・・腫瘤外部の境界側 6 1 肝酵素上昇(AST・ALT etc.) 境界 辺縁 • びまん性肝疾患 – 急性肝炎(薬剤性肝炎を含む) – 劇症肝炎 – 慢性肝炎 – 肝硬変 – 脂肪肝 – うっ血肝 周辺 外側陰影 後方エコー 7 8 びまん性肝疾患の超音波所見 肝辺縁の鈍化(左葉の場合) 正常 • 肝辺縁の鈍化 • 肝実質の粗雑 • 肝表面の凹凸 背面突出 先端鈍化 肝辺縁の鈍化>肝実質の粗雑化>肝表面の凹凸 全体鈍化 9 急性肝炎 • • • • 10 急激な肝酵素上昇から急性肝炎を疑う • • • • • 肝辺縁の背面突出 肝腫大 軽度脾腫 胆嚢壁肥厚・内腔虚脱 12歳・男性・入院 約3週間前に鹿生肉を食べた 全身倦怠感と急激な肝酵素上昇 急性肝炎が疑われる 依頼目的(小児科) – 肝臓の器質的変化のチェック 11 12 2 13 14 15 16 US所見 • 肝臓の辺縁鈍・表面平滑・実質エコー均質・ 肝腎コントラストなし。 • 肝臓は左右とも腫大しています。 • 実質エコーの低エコー化は認めません。 • 門脈域の肥厚は認めません。 • 明らかな腫瘤性病変は認めません。 17 18 3 慢性肝炎 • • • • HCCの治療後経過観察 • • • • • 肝辺縁の鈍化(先端鈍化) 左葉腫大 軽度脾腫 肝門部の腫大リンパ節 82歳・女性・外来 慢性C型肝炎経過観察中 過去にHCCの既往あり(TACE施行) 肝門部リンパ節の放射線治療後 依頼目的(画像診断科) – 肝細胞がんの再発有無 19 20 21 22 US所見 • 肝臓の辺縁鈍・表面平滑・実質エコー均質粗 雑・肝腎コントラストなし • 背景は慢性肝炎を疑います。 • 明らかな腫瘤性病変は指摘できません。 • 脾臓サイズは10×6cmで軽度脾腫を認めま す。 23 24 4 肝硬変 • • • • • • • • 慢性C型肝炎経過中に肝硬変へ移行 肝表面の凹凸 右葉の萎縮と左葉・尾状葉の腫大 肝実質の粗雑化 脾腫 肝内脈管の狭小化 側副血行路 壁肥厚 腹水(漏出性) • • • • • 81歳・女性・外来 慢性C型肝炎 経過観察中 腫瘤性病変などないか 依頼目的(皮膚科) – 肝細胞がんの有無 25 26 腹水 27 28 29 30 胆嚢壁二重構造 5 脂肪肝 US所見 • 肝臓の辺縁鈍・表面不整・実質エコー粗雑で、 肝硬変を疑います。 • 明らかな腫瘤性病変は認めません。 • 胆嚢に全周性壁肥厚を認め、壁内二重構造 も認めます。 • 脾腫(12×7cm)を認めます。 • • • • 肝実質の高密な高エコー化(bright liver) 肝腎コントラストあり 肝実質の深部減衰 肝脾コントラストあり • 肝周囲・モリソン窩・ダグラス窩に腹水を認め ます。 31 32 肝機能異常で脂肪肝 • 1ヶ月前より、右季肋部痛あり • 肝機能でAST・ALT上昇 • 依頼目的(総合診療科) – 腹部スクリーニング 深部減衰 33 34 US所見 • 肝臓の辺縁鋭・表面整・実質エコー均質 • 肝腎コントラストを認め、背景は脂肪肝です。 35 36 6 うっ血肝 呼吸苦・胸水を呈したうっ血肝 • 下大静脈・肝静脈の拡張 • 下大静脈・肝静脈の呼吸性変動の消失 • • • • • • • 心不全患者で肝機能異常が見られた場合に は、うっ血肝の可能性あり 84歳・男性・外来 4日前から呼吸苦あり 胸部X線で胸水あり 肝胆道系酵素上昇 心不全・うっ血肝疑い 依頼目的(泌尿器科) – うっ血肝の有無を知りたい 37 38 中肝静脈 右肝静脈 39 40 US所見 • 肝静脈は拡張しており、呼吸性変動を認めま せん。 • IVCは拡張しており、41×26mm径です。 下大静脈 41 42 7 急性胆嚢炎 胆道系酵素上昇(γ-GTP・ALP・T-Bil etc.) • 胆嚢炎 • 胆石 • • • • • 胆嚢腫大(緊満化) 胆嚢壁肥厚(4mm以上) 胆石(頚部嵌頓) debris echo(デブリ) プローブによる圧迫痛(右上腹部) 43 44 胆道系酵素上昇・炎症所見で急性胆嚢炎 • • • • • • 74歳・男性・入院 急性心筋梗塞で入院中 食欲不振 胆道系酵素上昇・炎症所見あり 単純CTで、胆嚢腫大を指摘 依頼目的(循環器内科) – CTレポートで急性胆嚢炎の除外を勧める 45 46 壁内低エコー層(sono lucent layer) debris echo 47 48 8 胆石 US所見 • 内腔のstrong echoと音響陰影 • 体位変換によって移動 • 胆嚢は腫大・緊満化しており、胆嚢壁は肥厚 し壁内に低エコー層を認めます。 • 内部には胆泥を認めますが、観察範囲内に 明らかな結石は指摘できません。 • 周囲に明らかな膿瘍形成などは見られませ ん。 • 総胆管の明らかな拡張は認めません。 49 50 51 52 CT検査で指摘された胆石 • • • • 80歳・女性・入院 肺炎後のフォローCTで胆石 or 胆泥を指摘 自覚症状なし 依頼目的(腎臓内科) – CTで指摘の病変の質的診断 US所見 胆石 • 胆嚢体部には28mm程度の高エコーを認めま す。 • 音響陰影を認め胆石を疑います。 • 明らかな壁肥厚は指摘できません。 音響陰影 53 54 9 悪性リンパ腫 CTやMRで脾腫瘤が指摘される • 悪性リンパ腫 • 白血病 • 脾膿瘍 • 類円形の低エコー腫瘤 • 脾腫を伴う • 辺縁不整腫瘤は膿瘍と鑑別要 • 多発する小さな低エコー腫瘤は白血病と鑑別 要 55 56 PET-CTで指摘された脾臓の多発腫瘤 腫瘤性病変 • • • • 67歳・男性・外来 頚部腫瘤性病変の精査でPET-CT施行 肝臓・脾臓に多発する腫瘤(異常集積あり) 依頼目的(血液内科) – 肝臓・脾臓に多発する腫瘤の質的診断 57 58 肝臓の多発腫瘤性病変 59 60 10 左側腹の痛み US所見 • 脾腫を認めます。 • 脾内には低エコー腫瘤(1cm~3cm)を複数認 めます。 • 極低エコーの腫瘤も認めます。 • 脾梗塞 61 62 脾梗塞 急激な左側腹痛で脾梗塞を疑う • 脾実質のくさび状低エコー域 • ドプラで明らかに血流信号を認めない • • • • • 56歳・女性・入院 溶血性貧血で入院 以前より著明な脾腫を指摘 急激な左側腹痛 依頼目的(血液内科) – 痛みの原因検索(病棟ベッドサイドで) 63 64 65 66 11 US所見 • 著明な脾腫(19.3x11.1cm)を認めます。 • 尾側に3cmほどの楔状低エコー域を2箇所認 めます。 • ドプラで明らかな内部血流信号は指摘できま せん。 • 脾門部において脾動脈血流は確認できます。 • 左側腹部の疼痛部分は腫大した脾臓下部(2 カ所の低エコー域)に一致します。 67 68 血尿 腎細胞がん • 腎腫瘍(腎細胞がん・腎盂腫瘍) • 腎結石 • ナットクラッカー現象 • 腎細胞がん – 類円形で境界明瞭 – 低~等エコー – 辺縁低エコー帯を認める – 3cm以下では高エコーの場合が認められる(血管 筋脂肪腫との鑑別要) • 腎静脈への浸潤をチェック(ドプラ) 69 70 高血圧治療中に見つかった腎細胞がん 腫瘤性病変 • • • • 40歳・男性・外来 高血圧治療中 慢性腎臓病 副腎腫瘍の有無を検索するための単純CTで 腎腫瘍を指摘 • 依頼目的(泌尿器科) 辺縁低エコー帯 – 腎腫瘍の質的診断 71 72 12 嚢胞変性 腫瘤性病変 73 74 腎結石 US所見 • 左腎に境界明瞭な3cmの高エコー腫瘤を認 めます。 • 内部エコー不均一で嚢胞変性を認めます。 • 辺縁低エコー帯を認めます。 • 腎結石は高エコーで音響陰影を伴うことが多 い • 5mm以下では音響陰影が見られないことが 多い • 5%は尿酸結石で形状が丸く、X線透過性であ る 75 76 尿潜血陽性で見つかった腎結石 • • • • 腎結石 45歳・男性・外来 無症候性尿潜血陽性 左尿管結石の既往 依頼目的(総合診療科) – 尿路系のスクリーニング 音響陰影 77 78 13 ナットクラッカー現象 US所見 • 右腎CEC内に9mmの高エコーを認めます。 • 音響陰影を伴っており腎結石を疑います。 • 左腎静脈が上腸間膜動脈で圧迫を受ける – 左腎静脈の拡張 – 左腎静脈狭窄部のモザイク血流パターン(カラー ドプラ) 79 80 ナットクラッカー現象による血尿 • • • • 25歳・男性・外来 1ヶ月前から血尿あり 自覚症状なし 依頼目的(膠原病内科) 上腸間膜動脈 左腎静脈 – 血尿の原因検索 下大静脈 大動脈 81 82 US所見 • 両側腎に明らかな結石や腫瘤性病変は指摘 できません。 • 両側とも水腎症や尿管結石は指摘できませ ん。 • 膀胱内に腫瘤性病変は指摘できません。 • 左腎静脈は上腸間膜動脈で圧迫され左側は 拡張しています。 • 狭窄部はカラードプラでモザイク血流パター ンを認めます。 左腎静脈 83 84 14 二次性高血圧の疑い 腎動脈狭窄の症例 • 腎動脈狭窄の有無 • カラードプラによるモザイク血流パターン • パルスドプラによる高速血流の計測 • • • • 73歳・男性・外来 高血圧症・糖尿病あり 動脈硬化疑い・慢性腎臓病疑い 依頼目的(循環器内科) – 腎動脈狭窄の有無を確認したい 85 86 US所見 カラーモザイクパターン • 左腎動脈起始部はカラードプラでモザイク血 流パターンを認めます。 • パルスドプラによる左腎動脈起始部の流速 は、PSV=258.7cm/s、大動脈の流速は 68.2cm/s • RAR=3.79(Renal Aorta Ratio) 87 88 膵腫瘤性病変 • • • • 偶発で見つかった膵癌 • • • • 背部痛や体重減少などの症状 偶発で見つかる場合も 境界不明瞭な低エコー腫瘤は膵癌を疑う 腫瘤の周囲脈管との関係を観察する 84歳・女性・外来 関節リウマチ HBV既感染 依頼目的(膠原病内科) – 腹部スクリーニング 89 90 15 腫瘤性病変 嚢胞 91 92 US所見 • 膵体部に33×18×27mmの境界不明瞭な低 エコー腫瘤を認めます。 • 内部エコー不均質で一部に無エコー部分を 認めます。 • ドプラで明らかな内部血流信号は指摘できま せん。 • 明らかな膵管の拡張は指摘できません。 93 94 最後に • 超音波検査の目的を明確にする • 他の画像検査を意識的に見る • より多くの症例を経験する 動脈相 平衡相 95 96 16
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