518KB - 国際高等研究所

2015 年度(平成 27 年度)
事
-
業
計
画
書
2015 年 3 月 27 日 -
公益財団法人国際高等研究所
事業計画書
目次
Ⅰ.2014 年度(平成 26 年度)における事業活動の概要
・・・1
Ⅱ.2015 年度(平成 27 年度)の活動方針
・・・2
Ⅲ.事業計画
1.研究事業推進
・・・3
(1)継続研究プロジェクト
・・・3
(2)ISC 答申を踏まえた新規プロジェクトの立ち上げ
・・・6
(3)公募による新規研究プロジェクト
・・・7
(4)その他
・・・7
2.ソーシャル・コミュニケーション活動の企画実行
(1)基本理念の再定義と社会への訴求
・・・8
・・・8
(2)高等研カンファレンス・レクチャーの企画推進
・・・8
(3)インタラクティブなセッションの企画実行
・・・8
(4)アニュアルレポートの作成
・・・8
(5)
「けいはんなオープンイノベーションセンター」への協力と協働
・・・9
3.IIAS Strategic Committee(ISC)活動の実行
4.法人運営及び総務総括業務の推進
(1)総務総括及び法人運営企画
(2)財務会計及び経理業務の刷新
・・・9
・・・9
・・・10
Ⅳ.財務・収支計画
1.2015 年度財務・収支計画
・・・11
公益財団法人国際高等研究所
2015年度(平成27年度)事業計画
Ⅰ.2014 年度(平成 26 年度)における事業活動の概要
(1)経営改革プロジェクトの前進
創設時の基本理念に立ち戻り、国際高等研究所(以下「高等研」
)としての存在価値を
再び創出できる法人とすること、そして関西文化学術研究都市(以下「けいはんな学研都
市」)の知的ハブとしてけいはんな学研都市の進展に寄与するための施策を実行した。基
本理念の現在における落とし込みと、理念に沿った中長期的活動の方向性の策定、地域重
要機関の役員・要職者の外部理事ご就任、規程の充実と必要な改定の実施によるガバナン
スの強化、けいはんな地域における各種検討・推進活動への参画によるプレゼンスの回復、
交流事業の継続的実行と定着活動など、幅広いチャレンジを展開した。
(2)2013 年度予算規模踏襲の原則に基づいた事業運営
2014 年度予算規模は、基本的に 2013 年度を上限とすることとし、予算内での優先順位
付けにより、個別項目及びその内容を精査して事業計画に反映させることとした。従って、
2014 年度の国際高等研究所創設 30 周年記念事業である公開フォーラムの実施に際しては、
可能な限り募金等による外部資金の確保に努めた。
(3)事業活動の推進・活動実績
1)社会の変化を読み取った上で高等研の理念を再定義し、中長期戦略の策定を目指す「国
際高等研究所戦略会議:IIAS Strategic Committee(以下「ISC」
)」を理事長の諮問機
関として立ち上げ、長尾真議長及び 5 名の委員に精力的な活動を行って頂いた結果、そ
の最終答申がまとめられ、理事長に提出された。これを以って今後の高等研の活動の方
向性を指し示すものとすると同時に、その考え方を国内外に広く問いかけていくことで、
人類の未来と幸福に寄与していく。
2)学術的課題として重要度の高いテーマを選定した高等研カンファレンス及び高等研レ
クチャーを成功裡に開催した他、研究会の企画・運営を行い、議論の過程などから研究
結果をすくい上げて具体的な活用策への反映を図った。
3)2013 年度より着手した「ゲーテの会」の企画・運営を継続・充実させ、月一回の開催
を定着させた他、絞り込んだテーマで立地機関の参画を募った IIAS 塾の開催など、高
等研の知的ハブとしての機能を深化・拡大するための活動の充実と、新規要素のフィー
ジビリティー・スタディーを実行し検証を継続した。
4)高等研創設 30 周年記念フォーラムの開催に当たり、広報機能を最大限に活用した広
報媒体の開拓や高等研の事業内容を広く的確に伝える広報活動の展開を図った。
-1-
5)ガバナンスの確立や持続的運営体制の構築に必要な諸規則・規程の制定については、
その根幹部分の整備を完了し、これからの運営に必要な整備の方向性を明確にした。ま
た、職員の採用・育成計画を進め、持続性のある組織づくりに継続して取り組んだ。研
究環境保全維持計画の見直しを行うことで投資対効果の改善を行うとともに、幅広い見
直しからの経費削減努力を継続して進めた。
6)経理処理の効率化を進め、保有債券等資産の短・中・長期の運用方針の明確化を実施
した。一方、経理担当者の新規採用を行い、持続的効率的な業務体制の確立を図った。
7)
「国際高等研究所創設 30 周年記念事業」の企画を具現化した。特に記念フォーラムは、
高等研のあり方や目指すべき方向性を一般社会に問う試みとして、今後の高等研の存在
意義明確化に資する事業の試金石とすべく実行した。
Ⅱ.2015 年度(平成 27 年度)の活動方針
(1)新研究体制のスタート
2015 年度には新たな研究体制がスタートする。研究事業については、第 6 代志村令郎
所長体制が築き上げた実績を基に、第 7 代長尾真所長新体制へと円滑に移行できるよう総
力を結集して取り組む。
(2)経営改革の着実な実行
新研究体制の下、2013 年度より着手した経営改革については、その考え方を 2015 年度
も引き継いで着実に実行する。具体的には、高等研のあるべき姿や中長期戦略を検討した
ISC の答申を拠りどころとし、理事会、評議員会における議論や検討を以って、具体的な
施策に落とし込むと同時に、日常業務として着実に実行していくこととする。また、ISC
活動においては、地球社会の未来、科学のあり方、高等研の将来像に関する新たな展開に
ついての検討を踏まえた答申を行う。
(3)知的ハブ機能の充実
2016 年度より4th ステージを迎える「けいはんな学研都市」の理念やビジョン等を含
む「あり方の検討」についても積極的に参画し、学研都市と高等研の一層の戦略整合を図
るとともに、
「けいはんな学研都市の知的ハブ」としての機能を充実させることで、求心
力を強化し、広くステークホルダーと相互の信頼関係を深化させる。具体的なプロジェク
トの推進にあたっても、
「産学公民」それぞれと協力連携し、具体的な成果の醸成に積極
的な寄与を果たす。
(4)2014 年度予算規模踏襲の原則
低金利環境の継続が予測されることから、基本的な経費支出の考え方は、現状維持とす
る。従って、2014 年度予算規模を上限として事業計画、予算の策定を行った。実際の計画
実行、予算執行にあたっては、なお一層の経費削減努力を継続するものとする。
-2-
(5)事業活動の総合的指針
1)高等研の理念を再定義する活動として、ISC の答申内容を具体化させる。ISC の知見
を取り込み、中長期戦略の策定を進める。
2 )法 人運 営に つい ては 、 ISC の最終 答申 を受 け、 研究 活動 を支 援す る Research
Administration、研究活動や成果を社会に発信する Social Communication、運営業務
を実行する General Affairs の 3 つの活動に注力する。
Research Administration では、研究活動の事務的外形的支援に留まらず、研究者を
多方面から支援し、研究成果の創出を促すとともに、高等研の理念に沿った形で研究活
動が展開されるよう、企画、運営、成果発信等の具体的な内容にまで踏み込み、研究者
と協働できるよう活動する。Social Communication では、高等研における活動やその
成果を、社会の様々なステークホルダーに適切な形で届ける活動を種々のチャネルや媒
体を通じて展開する。General Affairs では、高等研内部の運営業務のみならず、地域
社会やけいはんな学研都市の立地機関との連携など、地域のハブとしての役割を率先し
て果たすことも役割として、高等研を運営する。
3)ガバナンスの確立や持続的運営体制の構築に必要な諸規則・規程の整備について、運
用実態に即した見直し等、よりよい運営に必要な調整を継続する。また、法人全体で最
適化した職員の採用・育成計画を進め、持続性のある組織づくりに継続して取り組む。
4)2015 年度に大量償還を迎える債券につき、運用方針に基づき、効率的かつ安全な運用
を行うこと。また、経理処理の効率化を引き続き進めるとともに、経理担当者の育成を
進め、持続的・効率的な経理業務執行体制を確立する。
-3-
Ⅲ.事業計画
2015 年度は高等研の第二創業の時期と位置付けて、高等研設立の原点に立ち返り、改めて
社会に開かれた高等研のあり方、存在意義及びその存立基盤の再構築を図る。
1.研究事業推進
2015 年度は、継続研究プロジョクト 6 件に加え、ISC 答申を踏まえた 3 件の研究プロジ
ェクト、および公募により選考された 2 件の研究プロジェクトを実行する。各研究プロジ
ェクトのプロセスや成果が社会的意義を伴いながら、広く問いかけられるものとするため
には、研究支援活動のあり方と充実が重要となる。2015 年度は研究支援活動を強化し、研
究者の研究への注力度向上を可能とする種々の支援を実行するとともに、研究の企画、運
営、成果発信など、それぞれのフェーズで、具体的かつ包括的に係わっていくこととする。
また、各研究プロジェクトにおいては、その概要、意義、目的、成果といったことを広
く知っていただくために、高等研アニュアルレポートに 2015 年度の取り組みについて、そ
の要約を記載して、広く知っていただくとともに、社会と認識を共有できるようにする。
(1)継続研究プロジェクト
1)ネットワークの科学
(郡
宏:お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科
准教授)
ネットワークとしてとらえることのできる対象・現象は多岐にわたっている。ネッ
トワーク上では人、物、情報、エネルギー等がたえまなく流れている。それらの動き、
すなわちネットワークのダイナミクスに関する研究が進展することで、ネットワークの
科学は社会のニーズにいっそう応える科学に成長すると期待されるが、理論と現実との
ギャップは未だに大きい。また、ネットワークのレジリエンス(回復力、打たれ強さ)
に関しては、とりわけ現代社会からその解明が強く求められている。本プロジェクトは、
理論研究者と個別分野の研究者が一堂に会してネットワークのより深い理解と新たな
問題の発掘を目指すものである。
2)精神発達障害から考察する decision making の分子的基礎
(辻
省次:東京大学大学院医学研究科 教授)
自閉症・精神発達遅滞をはじめとするヒトの発達障害の中核的な障害である、意思
決定、コミュニケーション能力の障害について、その神経科学的基盤を解明することに
より、発達障害の治療法、予防法の開発を実現することが重要な課題となっている。そ
の実現のために、ヒトの精神発達障害の分子病態機序を読み解くアプローチ、齧歯類な
どの実験動物を用いて分子、回路から脳の高次機能を読み解くボトムアップアプローチ、
霊長類を用いたトップダウンアプローチ、という3つのアプローチの交点となる領域を
主たる研究領域と決定して,意思決定機構・コミュニケーション機構をはじめとする脳
の高次機能、精神発達障害の分子機構を明らかにすることを目的としている。
-4-
3)生命活動を生体高分子への修飾から俯瞰する
(岩井 一宏:京都大学大学院医学研究科
教授)
タンパク質、DNA、脂質などの生体高分子はいつも一様な機能を発現しているのでは
なく、修飾(化学修飾)によって機能が調節されている。それぞれの修飾による生体高
分子の機能制御は関連する生命現象の研究者コミュニティー内のみで議論されている
ことがほとんどである。修飾する因子、様式には多様性があり、その違いによって機能
制御メカニズムが異なる。しかし、生化学的な視点から見れば、種々の修飾には相違点
だけではなく、多くの共通点も存在している。そこで本研究では、生体高分子の修飾に
関与する研究者を一堂に会し、修飾の特徴、役割の観点から多様な生命現象の制御機構
について議論して、生命科学に新たな視点を提供することを目指す。
4)設計哲学
~俯瞰的価値観に基づく、人口財の創出と活用による持続可能社会を目指して~
(梅田 靖:大阪大学大学院工学研究科 教授)
人間社会は歴史の中で、多種多様な人工的な財(モノ、コト、サービス、インフラ、
組織、仕組み、社会、法体系など)を創出し、構成してきた。広義の設計とその利用で
ある。近年、設計を取り巻く諸環境は刻々と変貌し、それに適応した社会の価値観に基
づく設計の進化が求められる。そこで、本研究では、社会の価値観と設計との相互の関
係性について俯瞰的視点から議論するとともに、今後の設計の在り方を含む、設計倫理
の在り方を検討するものである。特に、ケーススタディの対象として、日本社会と発展
途上国の社会という異なる二つの社会における人工財にまつわる環境問題を想定し、両
者を比較することで社会の価値観と設計との相互の関係性を明示化することを試みる。
5)総合コミュニケーション学
(時田 恵一郎:名古屋大学大学院情報科学研究科
教授)
従来社会科学的な研究対象であったコミュニケーションの問題を、生物学、情報科
学、経済学、経営学、環境科学、物理学、複雑系科学、科学哲学等の諸分野の研究者間
で共有し、幅広い分野の研究者が国際高等研究所における研究会・ワークショップに参
加し議論を行う。そのような文理融合の学際的・包括的な研究交流を通じて「総合コミ
ュニケーション学」の確立を目指し、コミュニケーションに関連する様々な社会問題の
解決を図る。
6)基幹研究「我が国の学術研究の現状の解析と将来のあり方に関する考察(仮題)
」
(長尾 真:国際高等研究所
所長)
わが国における学術研究の現状を検討し、学術の将来的なあり方を展望するととも
に、これらの作業を通じて得られた成果を節目ごとにアカデミアをはじめとする外部世
界に発信する。
-5-
(2)ISC 答申を踏まえた新規プロジェクトの立ち上げ
ISC の最終答申で示されたとおり、多様な課題に対しては多角的なアプローチを必要と
し、その相互関係に配慮しながら議論を進め、解決への道筋を明らかにしてゆく必要があ
るが、一度に多角的なアプローチをすべて取り扱うことは難しい。従って、まずは地球上
における有限性に着目する。発展、資源及び社会の有限性に着目して、以下の3つの課題
について研究会を立ち上げ、相互関連性に配慮しながら集中的に議論し、2~3年で一定
の結論を得る事を目標とする。
1)将来の地球社会を考えた時の科学技術の在り方:発展の有限性
(有本 建男:国際高等研究所 副所長)
現在、科学技術研究体制のグローバル化、ディジタル技術の革新的進歩、社会経済
が解決すべき課題の複雑化・グローバル化、社会経済的価値創造と科学技術研究の接近
といった状況の下で、数百年のスパンで築かれてきた近代科学の方法とその思想的枠組
みが大きな転換期を迎えている。
この問題については世界の各所で様々な議論が行われているが、これらを歴史的か
つ同時代的に俯瞰するとともに、学問とは何か、科学技術とは何か、大学とは何かとい
った根本的問題についても再検討する。その中で特に迫りくる有限資源の地球、深刻な
環境破壊・汚染といった地球社会が直面している問題を前にして科学技術活動をどのよ
うにすべきかを具体的に検討することが大切である。そして世の中に問いかける活動を
する。
2)循環型、定常経済社会の構築の必要性とその方策:資源の有限性
(植田 和弘:京都大学大学院経済学研究科 教授)
人類にとって差し迫った課題である有限資源の地球を考えた時、資本の飽くなき富
の追究という現代資本主義の形態のままで行けば、地球資源の枯渇を招き、貧富の差を
拡大し、人類に早期の破滅をもたらすことは明らかである。したがって進歩発展という
概念を越えて、定常的、循環的な経済、持続可能な社会を構築し、貧富の格差を出来る
だけ縮小し、文化的な生活を保障する社会にしてゆくべきであろう。その姿とそこに軟
着陸してゆくための方策を検討する。
そのためには循環ということの定義とその具体的内容を明確にすることが必要であ
る。そして循環の度合い、すなわち循環率を計算できるようにし、これを各国、各社会、
あるいは各分野に適用し、循環率の低い社会あるいは分野はどこに原因があるかを明ら
かにし、制度的、科学技術的に改善できるよう検討する。そのためには、種々の社会的、
政治的な枠組みや規制、あるいは解決のための科学技術等を国際的に作ってゆく必要が
あり、これを政策的立場から検討する。
3)多様な価値観を持つ社会や国家の平和的共存のための方策:社会の有限性
(位田 隆一:国際高等研究所 副所長)
種々の考え方、多様な価値観、倫理観、宗教等を持つ人々や社会、国家が平和的に
共存できない原因は何か。その原因を取り除くための方策、そこから平和的共存に到る
-6-
道をどうすれば描けるかについて検討する。そのためにも現在広く使われている経済活
動の指標であるGDPに代わる人間中心の価値観に基づく指標を検討し、これを世界的
に議論するネットワークを構築する。そこでは有限の地球資源を大切にした循環型、定
常経済社会と、価値観、倫理観、宗教等の違いを克服して人々が平和共存できるための
方策という視点を重視する。
この課題は極めて困難なもののように思われるだろうが、人類はこれまで倫理、道
徳、あるいは宗教などによって克服する努力をしてきた。類似の課題は既に世界の各所
で取り上げられ議論されているので、まず、これらを集積し俯瞰的に検討する。寛容と
協調、互恵の精神を基盤に持つ日本において検討することによって、他にない観点から
の提案ができ、世界におけるこの種の議論をリードすることができるだろう。
(3)公募による新規研究プロジェクト
1)領域横断型の生命倫理プラットフォームの形成に向けて
(児玉 聡:京都大学大学院文学研究科 准教授)
近年、社会的に注目されている課題として、出生前診断や代理母を含む生殖補助医
療、終末期医療、再生医療研究、医学研究者の不正行為など、いわゆる生命倫理
(bioethics)の諸課題がある。今日こうした問題は国際的にも日本においても重要な課
題であるものの、とりわけ日本においてはこれらのテーマに関する領域横断型の研究・
教育体制作りが遅れてきた。そこで本プロジェクトでは、国際的な生命倫理学の研究・
教育拠点を日本に作るべく、その基盤となる生命倫理プラットフォームの形成を図る。
2)自然資本の持続的に維持・増進する経営・政策のあり方の研究
(植田 和弘:京都大学大学院経済学研究科 教授)
再生可能および再生不可能な資源や生態系のような自然資本は、人間の生活、社会
活動を支える基盤である。企業経営、地方や中央の政府の行動、国際的コミュニティの
活動は、その経営(政策推進を含む)において、自然資本を費消し、しばしば回復不可
能な状態に摩耗させている。本研究は、自然資本の持続可能な維持や増進をビルトイン
した経営(自然資本経営)の実例を調査して蓄積し、自然資本経営のあり方を社会に提
示することにより、持続可能な環境と人間社会をつくることを目的としている。
本研究は、自然科学と社会科学にまたがる学際的研究領域であり、また、地域にお
ける取組から世界規模の活動まで、実践のスケールにも様々なレベルがある。専門分野
が異なる研究者による協働研究を進めていく。
(4)その他
下記2件の研究プロジェクトについては、2015 年度は成果の取りまとめを行う。
1)分子基盤に基づく生体機能への揺らぎとダイナミックネットワークの解明
2)クロマチン・デコーディング
-7-
2.ソーシャル・コミュニケーション活動の企画実行
高等研の研究活動や成果と社会とをつなぐソーシャル・コミュニケーション活動の必要
性については ISC 最終答申において提言された通りである。2014 年度実施した高等研創設
30 周年記念公開フォーラムは、ソーシャル・コミュニケーション活動の一つの形と捉える
ことが出来る。この成果や実績を踏まえて、公益目的事業の柱を成す研究事業の成果を最
大限活かし、高等研の公益法人としての社会的使命を果たすため、新たな視点から国内外
におけるソーシャル・コミュニケーション活動を企画し、着実に実行する。
(1)基本理念の再定義と社会への訴求
ISC 最終報告で示された方針に沿って、基本理念の再定義や長期戦略の策定を行ってき
た「新たな高等研」を社会に訴求するために、
「ISC 最終報告書の正式リリース」をメイン
コンテンツとしながら、
「高等研の紹介」
、「30 周年記念フォーラムの成果報告」を盛り込
んだリーフレット(モノグラフ)を作成する。
当該作成過程で、新たな高等研を社会に訴求していくにあたってのビジュアルアイデン
ティティの確立や表現手法の集約を図り、その成果はウェブベースの訴求にも適用してい
く。
(2)高等研カンファレンス・レクチャーの企画実行
高等研における研究プロジェクトでの検討を深め、新たな知の創造と知の交流を促すた
めのカンファレンス、高等研の研究成果や研究活動(研究過程を含む)を社会に対して問
いかける公開事業としてレクチャー(フォーラム)を企画し、年度内に実行する。
(3)インタラクティブなセッションの企画実行
2013 年度から始めた「けいはんな哲学カフェ『ゲーテの会』」は、通算 20 回の開催を
重ねてその運営が定着し、けいはんな学研都市内外の関係者からも一定の評価を得られる
ようになった。これまでの実績を踏まえ、2015 年度においても引き続き毎月 1 回の開催を
計画する。また、2015 年度はこのような取り組みを更に発展させ、研究活動による知のス
トックや研究者とのネットワークなど高等研の保有する資産をベースに、産学公民など
様々なステークホルダーを対象としたインタラクティブなセッションを企画、実行する。
(4)アニュアルレポートの作成
2015 年度から、一年間の事業活動を社会に訴求するためのアニュアルレポートを作成
する。アニュアルレポートには、2015 年度の研究活動をはじめ、けいはんな学研都市にお
ける知的ハブ活動など、幅広いソーシャル・コミュニケーション活動の成果をわかりやす
く掲載する。その編纂に際しては、様々なステークホルダーに読んでいただき、理解を深
めていただけるように、表現やアートディレクション上の工夫を行う。このアニュアルレ
ポートを毎年度発行することを通して、高等研の基本理念や活動成果を一貫したコンセプ
トの下で、継続的に社会の様々なステークホルダーに訴求することも意図して実行する。
-8-
(5)「けいはんなオープンイノベーションセンター」への協力と協働
京都府が推進する「けいはんなオープンイノベーションセンター」(KICK:旧「私のし
ごと館」
)の拠点整備に協力し、関連事業「オープンサイエンスの基盤となる多様なネッ
トワークを活用した「未来の学び」の場の形成を核とする科学実践・普及推進モデル事業
(略称:科学実践・普及推進モデル事業)」の実行を支援するとともに、具体的活動にも
参画、協働する。
以上のソーシャル・コミュニケーション活動を展開するため、フォーラム等の開催によ
るリアルな展開、ウェブ媒体や紙媒体の企画・製作、国内外の財団やシンクタンクとのア
ライアンス、バーチャルな媒体からリアルな場へとステークホルダーを巻き込む活動など、
様々なツールや手段を駆使して実行していく。
3.IIAS Strategic Committee(ISC)活動の実行
2015 年度においては、ISC の最終答申を基本に置きながら、ここまでの活動で検討に至ら
なかった新たな課題を取り上げ検討していくとともに、ビジョンや中長期基本戦略の策定に
係る理事長からの新たな諮問に呼応した活動を継続して展開していく。
なお、長尾ISC議長の所長就任、有本委員の副所長就任に伴う委員構成の見直しを行う。
4.法人運営及び総務総括業務の推進
(1)総務総括及び法人運営企画
前年度に引き続き、経営改革プロジェクトの着実な前進を念頭に置き、持続的な法人運
営を図るための実効性ある諸施策を策定し、その実行に努める。
公益財団法人移行に伴い制定した定款及び主要な規則・規程類については、2013 年度
において集中した検討及び審議を経て新規制定及び旧規程の改訂を図り、2014 年度におい
ては、法人運営の実態に即した個別改訂を進めたところではあるが、さらに運営実態を踏
まえた課題に対応し、必要に応じて改訂、充実を図るものとする。
また、2015 年度は公益財団法人移行後 3 年目を迎えることから、内閣府による法人監
査に対応した、被監査性の向上や監査対応能力の充実を図っていく。
更に、高等研内部の運営業務のみならず、地域社会やけいはんな学研都市立地機関との
連携など、社会に開かれた地域活動運営のあり方を模索する。
なお、2015 年度は特に下記の事項について重点的に取り組むこととする。
1)事務運営体制の整備と人事制度の見直し
新たな研究体制の発足を見据えて、充実した研究活動を支える事務運営体制の整備
を進め、業務効率の更なる改善を図りつつ、将来の人員構成や職員のキャリアパスにも
配慮した適正な配置を行うとともに、併せて人事制度を適宜見直す。
-9-
2)地域社会・立地機関に開かれたファシリティや運営ノウハウの展開
けいはんな学研都市の知的ハブとして、地域社会、立地機関、地元自治体、学校な
どに開かれた法人運営を実行する。例えば、KICK との共同プロジェクトを展開するに
あたり、実験活動は KICK、検討や議論は高等研といった棲み分けによる連携など、地
域の施設をトータルに捉えた中での高等研施設の最適活用や、共同プロジェクトの運営
支援など、けいはんな学研都市におけるコラボレーション、オープンイノベーションに
も協力していく。
3)物品調達の適正化と運営経費の削減
各費用項目について、その必要性と妥当性を十分吟味することに加え、備品や消耗
品等物品の調達にあたっても発注単位や発注のタイミング等を十分考慮して適正化を
図り無駄の排除に注力する。
4)環境負荷軽減への取り組み
環境マネージメントの観点から持続可能な研究所運営のモデルを構築する。具体的
には、3R(Reduce:無駄な資源の削減、Reuse:資源の再利用、Recycle:有用物の再
資源化)を徹底するため、ペーパーレスやレスペーパーの考え方を尊重する指針や基準
の策定、資源使用量の把握、それらに基づく行動規範の策定等、総合的な環境負荷の軽
減に努める。
5)研究環境の維持管理と改善
研究環境の維持管理については、投入コストの最適化、最小化を念頭に置きつつも、
研究参加者や施設利用者の利便性、快適性の向上を図るため、施設および環境の維持管
理を継続的かつ良好に行うとともに、必要な改善に取り組む。
6)中長期財政計画の策定
けいはんな学研都市の新ステージへの移行(2016 年度)
、KICK の活動開始や新たな
企業や研究機関の進出など、高等研を取り巻く地域における環境の変化や、高等研に対
する社会的要請の変化を鑑み、高等研が持続的に事業活動を継続するための財政基盤の
構築と具体的な施策について検討し、その方向性を確定する。
(2)財務会計及び経理業務の刷新
前年度に引き続き、財務会計及び経理事務を見直し、IT 化の推進によって少人数でも
円滑に業務が遂行できるように、更なる経理処理の効率化を進める。また、債券等資産に
ついて、低金利下においても適切な運用に努めるなどして収入の確保を図り、支出の抑制
と相俟って収支改善を推進するとともに、中長期的な運営資金の状況改善に係る検討を行
う。さらに内部統制体制に沿って不正や事故の防止に万全を期し、公益財団法人として適
切な経理の運営を図る。
- 10 -
Ⅳ.財務・収支計画
1.2015年度財務・収支計画
(1)経常収益
基本財産受取利息ついては、2015 年度に於いて 10 億円を上回る債券の満期償還を迎え
るにあたり、超低金利の環境の中で、従来からの長期国債・地方債を中心とした運用に加
えて適切なリスクの範囲内で社債等を購入し、債券の年限のバランスを考慮した再運用を
図ることとして、受取利息を 47,944 千円とした。
また、保有株式の予想配当額 7,100 千円のほか、科学研究費補助金収入を前年同額の
15,000 千円とした。
さらに雑収入 5,524 千円は、科学研究費補助金からの間接経費資金に加えて交流事業の
参加費等を見込んでいる。
結果、経常収益は 2014 年度予算比 13,701 千円減の 155,453 千円を予算とした。
(2)経常費用
事業費については、事業活動の核となる研究プロジェクトは減額することなく、昨年同
等の支出とする。強化するものとしては、研究活動とその成果と社会とをつなぐソーシャ
ル・コミュニケーション活動として、「カンファレンス・レクチャー」等の開催やアニュ
アルレポートの発行、シンクタンクや財団との連携による新たな社会訴求の実行を推進す
るための費用を見込む。一方、会議費等通常経費のさらなる縮減を図るとともに、
「創設
30 周年記念フォーラム」費用がなくなることから、2014 年度予算比 11,033 千円減の
183,156 千円とした。
また、管理費については、什器備品等が増加するものの、旅費交通費等を減額すること
とし、2014 年度予算比 2,686 千円減の 16,840 千円とした。
以上から、事業費と管理費を合わせた経常費用は、2014 年度予算と比較して 13,719 千
円減の 199,996 千円を予算とした。
(3)最終収支
以上の結果、研究事業推進基金から経常収益へ補填する振替額は、2014 年度予算に比べ
282 千円減の 78,185 千円となる見込みである。なお、当期計上増減額の 44,543 千円は、
減価償却費 43,203 千円に、以前に積み立てた修繕積立金の取崩し額等を合わせた額に相
当する。
(4)基金の取扱いについて
年度収支の補填に相当する研究事業推進基金の残高は 189,034 千円となる見込みで、う
ち 87,163 千円を高利回りの円建て米国債の一部で運用しており、2015 年度の資金繰り上、
年度中に同米国債を売却、換金化する必要が予想される。
そこで高利回りの米国債を温存するため、基本財産のうち満期償還を迎える国債等と利
回りの良い研究事業推進基金の米国債とを入れ替えて、同米国債を基本財産として運用を
続けたいと考えており、詳細確定次第、改めてお諮りしたいと考えている。
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なお、研究事業推進基金は 2016 年度にも枯渇する恐れがあり、事業資金確保のための
基本財産の取崩しを検討せざるを得ない状況にある。この対応策については、中長期財政
計画として取りまとめるとともに、社会に認められ、必要とされる事業展開を充実強化し
ていくことで、収支相償に向けた抜本的な取り組みを行うこととする。
以上
(参考資料)研究事業推進基金期末残高の推移と今後の予想
800,000千円
研究事業推進基金取崩額
700,000千円
600,000千円
研究事業推進基金期末残高(注1)
500,000千円
400,000千円
300,000千円
200,000千円
100,000千円
0千円
△100,000千円
2
0
0
6
年
度
2
0
0
7
年
度
2
0
0
8
年
度
2
0
0
9
年
度
2
0
1
0
年
度
2
0
1
1
年
度
2
0
1
2
年
度
2
0
1
3
年
度
2
0
1
4
年
度
予
算
2
0
1
5
年
度
予
算
2
0
1
6
年
度
予
想
(
注
2
)
2
0
1
7
年
度
予
想
(
注
2
)
(注 1)期末残高は債券・株式の時価評価後の金額である
(注 2)2016 年度・2017 年度の基金取崩予想額は 2015 年度予算同額としている
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