分散型エネルギー社会に貢献する 小型メタン発酵プラントの開発 新成長戦略研究(H26~28) 【通称】メタン発酵プロジェクトチーム 研究調整課 ○工業技術研究所、畜産技術研究所、農林技術研究所、水産技術研究所 【共同研究】山梨罐詰株式会社 1 研究の入口(背景・目的)その1 日本全体 1997年 新エネ法制定 2011年3月 東日本大震災 原子力発電所稼動停止による電力不足 エネルギーを取り巻く環境が激変 2012年 固定価格買取制度(FIT)開始 新エネルギーの積極的導入 エネルギー源の分散化 が求められている! 静岡県 「ふじのくに新エネルギー等導入倍増プラン」 平成32年度の新エネルギー等の導入目標:平成21年度実績の2倍 進捗状況(H24年度):バイオマス発電:55% 、太陽光発電:100%以上 「静岡県バイオマス活用推進計画」 食品廃棄物のメタン発酵によるエネルギー利用の推進 2 研究の入口(背景・目的)その2 食品リサイクル法 ⇒食品廃棄物の利活用 県内企業からの食品廃棄物:24.6万トン/年 (内、11.2万トン/年が産廃処理) 県内の中規模食品製造企業790社 (食品廃棄物排出量:数トン/日) 年間で約1,000万円の処理費用(廃棄物量1トン/日,処理費3万円/トンで試算) 食品廃棄物を自社処理(メタン発酵)できれば・・ ・処理費用の削減 ・再生可能エネルギー導入 食品・飲料製造業 食品販売業 食品廃棄物 自社処理(メタン発酵) 小型・安価なメタン発酵プラントの開発 3 メタン発酵とは・・・ エネルギー化 バイオガスは、ガス発電機 やボイラー等で燃料利用 メタン発酵 バイオマス ◎家畜排せつ物 ○下水汚泥 ○食品加工残渣 大 型 施 設 バイオマスを嫌気状態で微 生物が有機物分解 メタン生成細菌により バイオガスが発生する。 (CH4 60%, CO2 40%) ・醸造残渣 (ビール、焼酎) ・生ゴミ など ・パン、うどん ・缶詰シロップ ・糖蜜 など 電気 温水 写真:ガスエンジン (山梨罐詰(株)様) 資源化 小 型 施 設 発酵残さ(消化液)は、 液肥などで肥料利用 写真;メタン菌 バイオマス技術入門(JARUS)より 写真;スラリースプレッダ 4 (福岡県大木町での施肥のようす) メタン発酵プラントの現状 現在あるプラントの多くは大規模 ・処理量:10トン~175トン/日 ・建設費:1.1億円~64.4億円 ・運転費:3100万円/年~6億円/年 導入可能な企業は限定的 県内に多い 中規模食品製造企業の食品廃棄物排出量は数トン/日以下 それを処理できる安価で小型のメタン発酵プラント が開発されていない! (現在稼動している小型プラントの建設費:約1億円程度) 5 研究コンセプト (資源循環と分散型エネルギー社会に向けて) 地域農家や契約農家へ 資 源 の 地 産 地 消 地域の特産品 工場の原材料 食品製造業等 農地還元 農業利用法 エネルギー利用 (電気・熱) 食品廃棄物 (油・繊維・多糖) 前処理法 メタン発酵 ペレット堆肥 海藻養殖 固液分離法 プラント低価格化 地域水産業者や 消化液 水産利用法 契約水産業者へ 液肥 エネルギーの自産自消 6 プロジェクトの達成目標 静岡版小型メタン発酵システムの開発 処理量1トン/日(~5トン/日) プラント建設費5000万円 消化液を肥料に活用 中規模食品製造企業を中心に普及を目指す! 平成26~28年度 ・基礎研究による技術確立 ・パイロットプラントの製作(0.05~0.1トン/日規模) 平成29年度~ 小型メタン発酵プラントの普及 7 メタン発酵プラントのコスト試算 申し訳ありません。 このスライドは映像のみです。 8 メタン発酵技術の課題 ①適切な前処理(メタン発酵を阻害する物質の分解など) ・原料の分別が必要・装置の大型化・複雑化 工技研 ⇒適切・安価な前処理装置の開発 水技研 ②メタン発酵で発生する発酵消化液の有効利用 ・肥料の需要が不安定で消化液を消費できない。 ・肥料成分濃度が低く、輸送コストがかかる。 ⇒固液分離法の開発・ペレット堆肥化技術の開発 ・アンモニア、塩素等、含有成分量によっては作物 に生育障害が生じる。 ⇒農業利用技術・水産養殖利用技術の開発 ③プラントの低価格化 農技研 畜技研 水技研 ・既存技術ではプラント設置に約1億円かかる。 ⇒プラントの簡易化・小型化 工技研 畜技研 9 食品廃棄物の前処理法の開発 メタン発酵槽に油分を投入すると・・・ 油相 油相 発酵液相 発酵液相 シロップのみ 700 600 500 400 300 200 油膜形成の様子 廃食用油を 20%混合投入 100(1.1g-TS/L/d) 0 メタン発酵槽 シロップ:油=4:1 800 ガス発生量 [ml/g-TS] ・発酵槽上部に油膜形成 → 油流出、ガス循環阻害 ・高級脂肪酸の生成 → メタン発酵菌への阻害 0 10 20 30 40 日数 [day] 油を原料に入れるとガスの発生量が低下する 10 酒井ら, 日本エネルギー学会第22回年次大会(2013.8) 50 食品廃棄物の前処理法の開発 油分の前処理① メタン発酵プラント 前処理 β酸化 加水分解 Ⓐ グリセロール 油 高級脂肪酸 × 流出 Ⓑ 低級 脂肪酸 × × 阻害 CO2 Ⓒ 酢酸 H2 CO2 メタン ガス 酸素の供給量制御 工場の 排水処理活性汚泥 を利用して、植物性油を 好気的に分解する プロセス 1週間程度の活性汚泥処理 化学的処理よりコストメリット大きい! 11 食品廃棄物の前処理法の開発 油分の前処理② 1 7 2 6 3 1. ポンプ 2. フローメーター 3. CO2 トラップ 4. 反応容器 (200mL) 5. ウォーターバス 6. ウォータートラップ 7. ガスバック 4 5 実験条件 配合比;排水汚泥 45mL 油分(大豆油) 5mL 反応温度; 30℃ 通気量; 5.5ml/min(110ml/L/min) 分析項目 水‐ジエチルエーテル抽出 ・CO2分析(ガスクロマトグラフ) ・TOC(可溶性炭素) ・炭素分析(固形物中の炭素) 12 食品廃棄物の前処理法の開発 油分の前処理③ 不 明 CO2 固 形 物 前処理後の油分 可 溶 性 炭 素 源 前処理後の炭素収支 ・生成物の内、水溶性の炭素、CO2、固形物は全体の50%程度であった。 未分解の油分が50%程度残っている ・油分と汚泥溶液の境界面が消え、処理液が白濁した。 未分解の油分が乳化した 油分の一部が分解され、 難水溶性が解消された 13 食品廃棄物の前処理法の開発 油前処理液のメタン発酵処理① メタン発酵実験装置 1. ガスバック 2. 熱電対 3. 反応槽 4. 撹拌装置 5. ウォーターバス 6. 調整原料 7. 消化液 実験条件 原料 : シロップ廃液 油分(前処理を施した油分) (一定の有機物負荷が保たれるように混合) 有機物負荷: 1.0 g-TS/L/d 内容積 :1L 滞留日数 :10日間 分析項目 発生ガス量、発生ガス組成(CH₄,CO₂)、原 料・消化液のTS・TOC 14 油前処理液のメタン発酵処理② 80%投入 100 30%投入 ガス発生量(mL/g-TS/d) 1400 1260 90 1120 80 980 70 840 60 700 50 560 40 420 30 280 20 140 10 0 油前処理物 投入比率(%) 投入開始 0 0 100 200 処理日数 油前処理物投入比率(TS基準) 300 400 ガス発生量 油前処理物投入比率とガス発生量の経時変化 15 油前処理液のメタン発酵処理③ 消化液TOC(ppm) 7000 100 6300 90 5600 80 4900 70 4200 60 3500 50 2800 40 2100 30 1400 20 700 10 0 油前処理物 投入比率(%) 80%投入 0 220 270 320 処理日数 油前処理物投入比率(TS基準) 370 消化液TOC 油前処理物投入比率とTOCの経時変化 16 食品廃棄物の前処理法の開発 まとめ ・油分を好気性処理することで、可溶化することを確認 ・油分を好気処理することにより、有機物負荷にして52%投入 しても、安定してメタン発酵処理を行うことができた 課題 ・前処理条件のさらなる最適化 ・油分の分解・乳化に係る微生物の同定 ・他種の油分を使った実験 ・実生ごみを使用した実証試験 17 農作物への液肥利用技術 露地栽培作物への利用方法の検討 幼植物試験・ほ場栽培による検討 ・チンゲンサイ以外の作物でNaによる生育抑制確認 ・消化液施用装置を試作、キャベツほ場栽培で稼動中 ⇒メタン発酵工程へのフィードバック 異なる発酵原料を用いた消化液での検証 写真 消化液施用装置 養液栽培への応用 サラダナ栽培について検討 ・養液栽培へ適用可能(無機養液には劣る) pH 8 pH 7 ・培養液pHの調整必要(pH6以下) ⇒微量要素の添加方法 他の作物への適用検討 対照(無機養液) 18 写真 養液栽培試験結果 pH 6 海藻養殖への液肥利用技術の開発 海藻養殖培養条件の解明 消化液添加の有無によるスジアオノリの生長を比較 ・消化液の添加により生長が1.4~1.9倍に増加 ⇒消化液利用の有効性を確認 ・消化液の濁りにより生長量変化 ⇒適用可能な消化液に制限有り 2 無 添 加 区 に 対 1 す る 重 量 比 SS濃度(mg/L) 8.7 10.7 21.0 0 B C A 消化液 写真 培養試験 写真 培養結果 左:消化液添加、右:無添加 図 無添加区に対する 各消化液添加区の重量比 (培養7日後) 19 今後の課題(展望) ①導入企業の選定 → 選定した対象業種を中心に企業訪問 (飲料、惣菜、調味料、菓子など) ②事業に係る法規制 → 行政所管部局への確認 ★廃棄物の処理及び清掃に関する法律 ★肥料取締法 ・ペレット堆肥 、液肥の種別 ・海藻養殖への適用可否 ③農業・水産業利用における消化液需要の確保 →地域全体で消化液を利活用する体制整備 20
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