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目
次
まえがき
第1部
ネットワークスペシャリスト試験の出題ポイント
■■
第1章
出題傾向分析 ···························································· 8
■■
第2章
学習方法 ································································· 17
■■
第3章
本書の使い方 ··························································· 20
第2部
午前Ⅱ(専門知識)試験の対策ポイント ······························· 23
第3部
午後問題の重点対策
■■
■■
■■
■■
第1章
午後試験に対する取組み方 ········································· 36
1.1
試験問題への対応方法 ·············································· 36
1.2
答案の作成方法························································ 39
1.3
答案作成の具体例 ···················································· 40
1.4
午後Ⅱ試験問題の解き方 ··········································· 57
第2章
LAN の方式 ····························································· 81
2.1
伝送媒体とアクセス制御方式 ····································· 81
2.2
無線 LAN(IEEE 802.11) ······································· 86
2.3
ADSL と FTTH ······················································· 94
2.4
PPP と PPPoE ························································ 98
第3章
IP ルーティング ····················································· 130
3.1
IP アドレスとルーティングテーブル ························· 130
3.2
アドレス変換························································· 140
3.3
IP マルチキャスト ················································· 144
3.4
DHCP ·································································· 147
3.5
VRRP ·································································· 149
3.6
IPv6 ···································································· 152
第4章
TCP と UDP ·························································· 184
第5章
アプリケーションプロトコル ···································· 205
5.1
HTTP とクッキー情報 ············································ 205
5.2
FTP ····································································· 212
5.3
SNMP·································································· 215
5.4
NTP ···································································· 218
■■
第6章
DNS の仕組み ························································ 235
■■
第7章
電子メールの仕組み ················································ 262
■■
第8章
VoIP····································································· 290
■■
第9章
ネットワーク機器 ··················································· 330
9.1
ブリッジとルータ ·················································· 330
9.2
ルーティングプロトコル ········································· 334
9.3
LAN スイッチ ······················································· 341
9.4
NAS と SAN ························································· 354
9.5
IP-VPN と広域イーサネット ···································· 357
■■
第 10 章
ネットワークセキュリティ ····································· 438
10.1
暗号化技術 ·························································· 438
10.2
認証技術 ····························································· 440
10.3
ファイアウォールと IDS ······································· 448
10.4
IPsec·································································· 455
10.5
SSL ··································································· 462
10.6
その他のセキュリティプロトコル···························· 467
■■
第 11 章
ネットワークの設計構築 ········································ 531
■■
第 12 章
ネットワークの運用管理 ········································ 557
■■
索
引······················································································· 585
商標表示
各社の登録商標及び商標,製品名に対しては,特に注記のない場合でも,
これを十分に尊重いたします。
第1章 出題傾向分析
有線 LAN と
無線 LAN
IP と TCP/UDP
平成 24 年度
ネットワーク
機器
32%
32%
9%
6%
1.4%
4%
平成 26 年度
25.3%
40%
23.3%
24%
2%
1%
平成 25 年度
ネットワーク設計・運用
22.7%
9.3%
26%
37.3%
4.7%
分
野
技
術
内
容
有線 LAN と
無線 LAN
CSMA/CD,MAC フレーム,CSMA/CA,WEP,TKIP,CCMP,
WPA,SONET,リング構成,伝送媒体など
IP と TCP/UDP
IP アドレス,CIDR,ルーティングテーブル,アドレス変換,
ICMP(ping 試験の方法など),IP マルチキャスト,DHCP,
VRRP,TCP,UDP など
アプリケーション
プロトコル
HTTP,クッキー,プロキシサーバ,負荷分散方法,DNS の仕
組み(キャッシュ,DNS サーバの信頼性対策など),電子メー
ル配送の仕組み,電子メールのセキュリティ,迷惑メール対策,
VoIP(SIP,RTP,優先制御など),SNMP,NTP など
ネットワーク機器
LAN スイッチ(スイッチングハブ)の機能・動作,仮想スイッ
チ,仮想 NIC,スパニングツリー,VLAN,ルータの機能・動
作,ルーティングプロトコル(RIP,OSPF,BGP-4),TRILL,
NAS,FC-SAN,IP-SAN,FCoE,ネットワーク仮想化,SDN
(オーバレイ方式,ホップバイホップ方式,OpenFlow)など
ネットワーク
セキュリティ
暗号化技術,認証技術(ディジタル署名,ワンタイムパスワード,
時刻認証,メッセージ認証など)
,電子証明書の検証方法,ファ
イアウォールの設定,IPsec,SSL,VPN,IEEE 802.1X/EAP,
RADIUS など
ネットワーク設計
・運用
ネットワークにおけるボトルネックやバックアップの考え方,
ネットワーク構成法,必要帯域の検討,故障切分け,保守運用
のノウハウなど
計算問題,情報処理
技術一般
トラフィック計算,回線速度(必要帯域),データ転送量,デ
ータベースの整合性,システム構成など
注
出題比率は,設問ごとに配点を予想し,集計したものを総配点で割って求めたもの。
また,技術区分は上記の表に従って分類した。
図 1-1
午後Ⅰ問題の技術分野別出題比率
11
第1部
ネットワークセキュリティ
アプリケーションプロトコル
第1部 ネットワークスペシャリスト試験の出題ポイント
90%
80%
75.9
73.5
71.2 午前Ⅱ
68.7
70%
61.9
60%
58.1
53.4
50%
59.8
53.4
52.1
66.0 午前Ⅰ
55.7 午後Ⅰ
46.2
40%
43.0
44.1
13.8
14.3
24 年度
25 年度
42.5 午後Ⅱ
30%
20%
14.7
13.9 試験全体
10%
23 年度
図 1-2
26 年度
試験区分ごとの合格率の推移
の技術レベルが向上していると考えられます。その半面,午後Ⅱ試験の合格率は,
前回(53.4%)よりも,約 11 ポイント低下し 42.5%になりました。これは,過
去 4 回の試験でも,最も低いものです。午後Ⅱ試験の問 1 は,SPF のほか,プロ
キシサーバで復号機能をもたせた場合のセキュリティ対策,パケットフィルタリ
ングの設定など,標準レベルの問題が多いと思われましたが,ネットワークセキ
ュリティ問題に対する準備が十分に行われていなかった結果ではないでしょう
か。一方,問 2 は,平成 24 年度以降,全く出題のなかった SIP や RTP などの音
声パケットに関するものや,仮想スイッチの動作に関するものでした。このため,
合格基準点をクリアすることはかなり難しく,問 2 に限ればほぼ妥当な結果と考
えられます。
16
第2章 学習方法
第2章
第1部
Part 1
Chapter 2
学習方法
ネットワークスペシャリスト試験で合格基準点をクリアするには,TCP/IP や
その応用プロトコル,LAN スイッチやルータといったネットワーク構成機器など
に関する基本技術をしっかりと把握していくことが必要です。そして,できるだ
け多くの問題を解いて,問題文の読み方,記述式の答案作成に慣れておくことが
必要です。
(1) 基本技術を理解すること
ネットワークスペシャリスト試験においてマスターすべき基本技術は,TCP/IP
通信の仕組みです。TCP/IP 通信では,TCP セグメント,IP パケット,MAC フ
レームなどに順次,カプセル化され,様々な情報が運ばれていきます。そして,
これらのプロトコルがもつヘッダ情報によってデータ転送におけるすべての制御
が行われます。つまり,TCP/IP ネットワークにおける制御は,すべてヘッダ情
報に基づいて行われ,ヘッダ情報にないことは制御することができません。これ
が TCP/IP 通信の基本原則です。また,ヘッダ情報は,アプリケーション層,
TCP/UDP 層,IP 層,MAC 層といった各層ごとに内容が決められています。ア
プリケーション層におけるヘッダ情報は,TCP/IP ネットワーク内の転送途中に
おいて参照されることはありません。例えば,電子メールの SMTP ヘッダにある
To や From フィールドの情報は,電子メールの転送に当たっては参照されること
はありません。つまり,To や From フィールドの情報は,封筒の中に書き込まれ
た情報ですから,電子メールの転送途中では参照されません。それらは,あて先
のメールボックスにメールが書き込まれた後に参照される情報です。
ヘッダ情報のもつ意味を理解していけば,インターネットへのアクセスはどの
ような仕組みによって実現されているのか,電子メールはどのようにして通信相
手に届けられるかなどについて,正しく把握できるようになります。また,IP ル
ーティングについては,IP パケットが LAN 内で転送される際には,MAC フレ
ームにカプセル化されるので,IP アドレスから MAC アドレスへの変換が必要に
なることや,TCP/IP のプロトコルスタックにおいて,上位と下位のプロトコル
間における情報の引渡し方などの関係を明確に考えることができます。このよう
17
第1部 ネットワークスペシャリスト試験の出題ポイント
Part 1
第3章
Chapter 3
本書の使い方
本書は,ネットワークスペシャリスト試験の午後問題を解いていくための技術
知識がどれだけ身に付いているかなど,午後対策に重点を置いた構成にしていま
す。
(1) 本書の構成
本書は,第 1 部から第 3 部までの 3 部構成になっています。第 1 部は,ネット
ワークスペシャリスト試験の出題傾向分析と学習方法などについて紹介していま
す。第 2 部では,午前Ⅱ(専門知識)試験の出題パターンを体系化し,それごと
の取組み方を簡単に述べています。そして,第 3 部が本書の中心です。第 3 部で
は,これまでの試験問題を基に出題された技術分野を,テーマ別に体系化し,分
類しました。つまり,試験で必要になる技術は,これらの技術テーマが中心であ
り,こうした技術内容の問題を十分に理解していくことによって,解答を作成で
きるようになると思います。
第 3 部の各章は〔要点チェック〕,
〔要点解説〕,
〔演習問題〕という構成にして
います。まず,要点チェックで,それぞれの技術に関し,その知識を保有してい
るかどうかを確認するようにしてください。よく知らない事項などについては,
要点解説で,その内容をしっかり把握しましょう。ポイントを絞った解説にして
いますから,十分に理解できないときなどは,「高度専門 ネットワーク技術」や
Web 検索などによって,自らの知識としてしっかり身に付けるようにしてくださ
い。基本的に各章の要点が理解できたら,演習問題を解いて,さらに実践的な技
術知識を身に付けるようにしましょう。
演習問題は,本試験の午後問題の関連する技術項目ごとに切り出すようにして
います。午後Ⅰや午後Ⅱの問題は,それ自体が長文ですから,問題を読むこと自
体も結構,大変です。そこで,本書の演習問題は,問題文の長さをできるだけ短
くし,手軽に問題に取り組めるように工夫しました。また,その方が技術単位に
まとめることができるので,知識の整理にも役立つはずです。
20
第2部 午前Ⅱ(専門知識)試験の対策ポイント
演習問題
Exercise
IPv6 が利用できるネットワークに接続した PC において,二つの IPv6 ア
問1
ドレスが割り当てられていた。
(H26 秋 NW 午前Ⅱ問 1)
(1)
2001:db8::b083:ba94:60c7:7c36
(2)
fe80::200:c0ff:fea8:2
このうち,(2)はリンクローカルユニキャストアドレスである。この説明と
して適切なものはどれか。
下位のビットにこの PC の IPv4 アドレスを埋め込み,IPv6 アドレスと
ア
IPv4 アドレスを関連付けて管理を容易にするアドレスである。
イ
グローバルユニキャストアドレスが取得できなかったときだけに有効な
アドレスである。
ウ
このアドレスを使った場合,パケットはネットワークには送信されず,
自分自身の PC 内で動作しているプログラムとだけ通信できる。
エ
このアドレスをもつネットワークインタフェースからルータを介さずに
直接接続できる相手との通信にだけ使用できるアドレスである。
【解説】
この問題は,適切な記述を選択する問題の例ですが,(1),(2)の二つの IPv6 ア
ドレスが記載されています。このため,この二つを同時に考えてしまいがちです
が,この問題では(2)のリンクローカルユニキャストアドレスの説明として適切な
ものが問われていますので,(2)に限定して考えていきましょう。
リンクローカルユニキャストアドレスは,同一リンク内の通信,つまり,ルー
タを介さずに直接接続できる相手との通信に限って使用できるものです。したが
って,正解は(エ)です。
なお,(1)の 2001:db8::b083:ba94:60c7:7c36 は,IPv6 グローバルユニキャ
ストアドレスを示しますが,これは 2001:db8::/32 というプレフィックスをも
つことから,文書記述用の IPv6 アドレス,つまり,設定のサンプル用として用
いられています(このアドレスを実際の通信に用いることはできません)。ちなみ
に,2001:db8::/32 というプレフィックスの使用方法は,RFC 3849(IPv6
Address Prefix Reserved for Document)で規定されています。
28
第3部 午後問題の重点対策
Part 3
第1章
Chapter 1
午後試験に対する取組み方
1.1
試験問題への対応方法
ネットワークスペシャリスト試験で合格するには,午前Ⅰ,午前Ⅱ試験で合格
基準点をクリアした上で,さらに午後Ⅰ,午後Ⅱ試験とも 60 点以上の点数を確
保することが必要です。
午前Ⅰ,午前Ⅱの試験は,四肢択一の選択問題ですから,ある程度の技術知識
があれば比較的容易にクリアできます。しかし,午後の試験は,数十字で解答す
る記述式の問題が大半を占めるので,午後Ⅰ,午後Ⅱの試験で合格基準点をクリ
アすることは並大抵のことではありません。TCP/IP や仮想化技術,ネットワー
クセキュリティなどをはじめ,ネットワーク関連の詳細な技術知識を十分に身に
付けた上で,しかも,問題の記述内容を正しく把握して,設問で問われているこ
とに合致した答案を作成していくことなどが要求されます。こうした作業をうま
く行うには,幾つかのポイントがあります。
ここでは,午後試験の問題に取り組むときの注意点などを紹介することにします。
(1) 決してあせらない
ネットワークに関する基本的な技術知識をしっかりと身に付けて試験に臨め
ば,午後試験においても合格基準点に達することは,それほど難しいというわけ
ではありません。そこで,どのような問題が出題されても落ち着いて問題に取り
組んでいくようにしましょう。また,記述式の問題は,思うように得点できない
ので,少し気楽に考えることも必要です。
午後Ⅰ,午後Ⅱ試験は,午前試験と違って過去問題と同じ問題は出題されませ
ん。このため,問題にさっと目を通すと,どれも難しそうな問題ばかりに見えま
す。しかし,この時点であせってしまうと,冷静に問題に取り組むことができな
くなります。午後Ⅰ試験は 3 問の中から 2 問を,午後Ⅱ試験は 2 問の中から 1 問
を選択すればよいので,得意分野の問題を選択するようにしましょう。そして,
落ち着いて問題に取り組んでいけば,徐々に正解を思いついたり,正解を導いた
36
第3部 午後問題の重点対策
Part 3
第3章
Chapter 3
IP ルーティング
3.1
IP アドレスとルーティングテーブル
要点チェック
Check
□
IP アドレスの種類とその意味
□
CIDR による IP アドレスの表示方法とその特徴
□
IP アドレスとサブネットマスク,デフォルトゲートウェイの関係
□
ルーティングテーブルの検索方法
□
IP アドレスと MAC アドレスの関係
□
ARP の仕組み
□
モバイル IP
要点解説
Study
1. IP アドレスの種類とその意味
(1) IP アドレスについては,32 ビット長の IPv4 と,128 ビット長の IPv6 の二
つがあります。これまでのネットワーク試験の午後問題では,IPv4 に関する問
題しか出題されていませんでした。しかし,初めて平成 24 年度の午後Ⅱ問 2
の一部として出題されたので,IPv6 についても,理解を深めていくようにしま
しょう。
(2) IPv4 のアドレス空間は,図 3-1 のように定義されていて,クラス A~E とい
う分類がされています。クラス A ~ C については,クラスという概念を外した
CIDR(Classless Inter-Domain Routing)という割当て方式が主流になってい
ます。なお,クラス D はマルチキャスト用のアドレスです。
一方,IPv6 のアドレスは,ユニキャストアドレス(この中には,リンクロー
カルアドレス,グローバルアドレス,ユニークローカルアドレスがあります),
エニーキャストアドレス,マルチキャストアドレスという 3 種類が定義されて
130
第3章 IP ルーティング
予約済み(デフォルトルートの表示など)
0.0.0.0~0.255.255.255
0
クラス A
1.0.0.0~
126.255.255.255 の範囲 32
クラス A プライベートアドレス
10.0.0.0~10.255.255.255
第3部
64
96
第1章
第2章
ループバックアドレス
127.0.0.0~127.255.255.255
128
クラス B
128.1.0.0~
191.254.255.255 の範囲
160
第3章
予約済み
128.0.0.0~128.0.255.255
第4章
リンクローカル用アドレス
169.254.0.0~169.254.255.255
第5章
クラス B プライベートアドレス
172.16.0.0~172.31.255.255
192
クラス C
192.0.0.0~
223.255.255.255 の範囲
クラス D
第6章
予約済み
191.255.0.0~191.255.255.255
192.0.0.0~192.0.0.255
クラス C プライベートアドレス
192.168.0.0~192.168.255.255
第7章
第8章
予約済み
223.255.255.0~223.255.255.255
224
第9章
224.0.0.0~239.255.255.255
マルチキャストアドレスとして予約済み
クラス E
予約済み
第10 章
240
240.0.0.0~255.255.255.255
256
図 3-1
IP ローカルブロードキャスト
255.255.255.255
第11 章
第12 章
IPv4 のアドレス空間
います。
(3) IPv4 のアドレス空間における一部のアドレスには,組織内で自由に使用でき
131
第3章 IP ルーティング
演習問題
問1
Exercise
端末の管理強化に関する次の記述を読んで,設問 1 ~ 3 に答えよ。
(H25 秋-NW 午後Ⅰ問 2)
Z 社は,生活雑貨の企画,製造及び販売を行う企業である。本社は東京にあり,
商品の製造と配送を行う商品本部が山梨にある。ネットワーク管理は,本社の情
報管理課が行っている。Z 社の現在のネットワーク構成を,図 1 に示す。
商品本部
PC
…
L2SW2
SW3
SW4
PC
PC
IP-VPN
ルータ2
Web
サーバ
プリンタ
プリンタ
SW1
SW2
PC
PC
PC
PC
…
DHCP
サーバ
L2SW1
ルータ1
…
第1章
SW5
…
第2章
PC
L2SW:レイヤ 2 スイッチ
SW:アクセス用レイヤ 2 スイッチ
注記 SW5 は,増設予定の SW である。
図1
第3部
本社
第3章
第4章
Z 社の現在のネットワーク構成(抜粋)
第5章
〔IP アドレス割当ての仕組みと経緯〕
Z 社では,全ての機器の IP アドレスを固定で割り当てていた。しかし,近年は
第6章
PC の増設,入替えが頻繁になり,IP アドレス管理業務が煩雑になってきた。ま
た,①情報管理課の許可を得ずに PC の IP アドレスを割り当て,他の PC の通信
に障害が発生したことがあった。そこで,DHCP を用いた IP アドレス自動割当
てに切り替えた。現在,全社の PC の IP アドレスは,本社にある DHCP サーバ
で一元管理し,ルータ 2 で DHCP
ア
第7章
第8章
を動作させて商品本部での割当て
第9章
IP アドレス自動割当ては,PC 使用者の利便性が高まる反面,ネットワーク障
第10 章
に対応させている。
害の調査では支障を来すことがあった。例えば,ウイルスに感染し,不正なパケ
ットを送信している PC を特定するには,ルータ又は Web サーバの
テーブルから IP アドレスと MAC アドレスの対応を調べ,MAC アドレスから SW
のポートを特定し,更に配線図面を見てケーブルをたどる必要があった。また,
商品本部で行った,
a
第11 章
イ
GHz 帯の電波を使用する IEEE 802.11a 規格の
商品管理端末の導入試験では,不正な DHCP サーバの接続によって,PC に不正
155
第12 章
第3部 午後問題の重点対策
とが分かった。作業 3 で起きた障害は,SW5 の増設によって SW の不具合が表面
化したものであった。
U 君は,L2SW1 の設定の誤りを修正して,DHCP スヌーピング機能の動作を検
証した。L2SW1 は,DHCP サーバの接続ポート以外から受信した DHCPOFFER
及び DHCPACK を破棄するので,SW5 を接続しても障害が発生しないことが分
かった。
U 君から検証結果の報告を受けた O 主任は,SW の不具合があっても運用に影
響しないと判断し,端末の管理強化策を導入することにした。
翌営業日,本社では,PC 使用者からの苦情もなく 1 日の業務は無事終了した。
ただし,O 主任は,U 君が休日の作業を行ったときに発生した障害から,現在の
ネットワーク構成の弱点を特定し,③本社及び商品本部の L2SW の代わりにレイ
ヤ 3 スイッチを使用する構成を検討するよう,U 君に指示した。
情報管理課は,端末の管理強化策の暫定運用中に各部門の協力を得て準備を完
了し,本社での本運用を開始した。続いて,商品本部にも導入・運用を拡大し,
PC 使用者に大きな負担を掛けることもなく,端末の管理強化を達成することが
できた。
設問 1
本文中の
ア
~
オ
に入れる適切な字句を答えよ。
ア
イ
ウ
エ
オ
設問 2
〔IP アドレス割当ての仕組みと経緯〕について,(1)~(3)に答えよ。
(1) 本文中の
a
に入れる適切な数値を答えよ。
a
(2) 本文中の下線①では,何が起きたことで通信に障害が発生したのか。
15 字以内で答えよ。
(3) 本文中の下線②では,BB ルータのポートのうち,SW に接続したポー
トは何を接続すべきポートであったのか。15 字以内で答えよ。
158
第3部 午後問題の重点対策
構成は,L2SW の配下に複数の SW を接続する構成であることから,SW の増
設が,ほかの SW に影響を及ぼしたことが分かります。SW 間でこのような影
響が発生しないようにするには,SW 単位で異なるネットワーク,つまり,SW
単位に VLAN を設定し,ブロードキャストフレームがそれぞれの VLAN 単位
に閉じ込められるようにします。なお,従来の L2SW を用いたネットワーク構
成では,本社内,商品本部内とも同一のネットワークセグメントとして接続で
きる構成だったので,レイヤ 3 スイッチで SW 単位に VLAN を設定すると,
基本的に SW 間の通信ができなくなります。そこで,レイヤ 3 スイッチで VLAN
間の接続ができるように経路制御を行うことが必要です。さらに,SW に接続
された PC がレイヤ 3 スイッチの各ポートに接続されるので,それぞれの VLAN
に応じた IP アドレスを割り当てることが必要となります。従来,本社では PC
と DHCP サーバが同じブロードキャストドメイン内に存在していたので,
DHCP リレーをさせる必要はなかったが,レイヤ 3 スイッチを用いると,レイ
ヤ 3 スイッチに DHCP リレーを行わせるようにする必要があります。また,
商品本部では,従来,ルータ 2 が DHCP リレーを行っていたが,レイヤ 3 スイ
ッチを使用する構成にすると,レイヤ 3 スイッチが DHCP リレーを行う必要
があります。以上のことを取りまとめ,O 主任が下線③で実現しようとしてい
るネットワーク構成としては,「SW 単位に VLAN を設定し,VLAN 間経路制
御と DHCP リレーを行う構成」などのように答えるとよいでしょう。
解答例
[設問1] ア:リレーエージェント
イ:ARP
エ:ミラー
オ:DHCPDISCOVER
[設問2] (1) a:5
ウ:製造者
(2) IP アドレスの重複割当て
(3) PC を接続すべきポート
[設問3] (1) b:24
c:6
(2) 固定 IP アドレスの割当て:MAC アドレスに対応付けた IP ア
ドレスを割り当てる。
暫定運用中の対処:MAC アドレスが未登録でも IP アドレス
を割り当てる。
(3) SW1 と SW2 の間でのブロードキャストフレームの折り返し
(4) SW 単位に VLAN を設定し,VLAN 間経路制御と DHCP リレ
ーを行う構成
166
索 引
索
引
C
数字
CA ············································ 444
CA 証明書 ·································· 444
3 ウェイハンドシェイク ················ 184
CBC ·········································· 465
4B/5B 変換 ··································· 82
CCK ············································ 86
6to4 ··········································· 154
CCMP·········································· 92
8B/10B 変換 ·································· 82
CE ルータ ·································· 358
A
CHAP ·········································· 99
CIDR ········································· 130
A レコード ·································· 237
CIFS ········································· 354
AAAA レコード ··························· 237
Cookie ······································· 209
ABR ·········································· 335
CoS ··········································· 298
ACE ·········································· 241
CRL ·········································· 445
ACK ビット ································ 448
CSMA/CA ···································· 87
ADSL ·········································· 94
CSMA/CD ···································· 83
AH ············································ 456
anonymous FTP ·························· 212
D
ARP··········································· 136
DATA ········································ 264
ARP キャッシュ ·························· 135
DHCP ········································ 147
ARP テーブル ····························· 135
DHCP スヌーピング····················· 343
AS ············································· 332
DHCP リレーエージェント ···· 148, 332
ASBR ········································ 335
Diffie-Hellman ···························· 455
AS_PATH 属性 ···························· 337
dig············································· 558
AS 境界ルータ ····························· 335
DKIM ········································ 270
AS パスプリペンド ······················· 337
DMT ············································ 95
Auto MDI/MDI-X ·························· 85
DNS ·········································· 235
B
DNS amplification 攻撃················ 243
DNS reflection 攻撃 ····················· 243
BGP-4 ········································ 336
DNSSEC ···································· 244
BGP スピーカ ····························· 336
DNS キャッシュポイズニング攻撃 · 243
BPDU ········································ 348
DNS サーバ ································ 236
BSS ············································· 89
DNS ラウンドロビン ············· 241, 533
BSS-ID ········································ 89
DoS 攻撃 ···································· 185
DS ············································· 297
DSL············································· 95
585