「備えあれば 憂いなし」 VGターボのオーバーラ 回 は、 エ ア シ リ ン ダ ー 式 トラックメンテナンス講座 前 ン に つ い て 紹 介 し た。 V Gターボは、羽根を回す排気ガスの 流量を変化させることで、エンジン に適切な過給を行なうものだ。排気 ガス流量を調整するVGノズルとい 付けられた。ブローバイガスは、ピ ストンリングとシリンダーのすき間 からエンジン内部に漏れ出た有害ガ スが主成分で、4サイクルレシプロ エンジンの圧縮、燃焼工程において 排出される。これはきちんと点検さ ダウンタイム削減術 : Text & Photo ( ) Fullload : ル グ プ ー ( ) TTS Group 力 協 材 取 イのガスとオイルを分離(セパレー ト)するものである。 ブローバイ還元の一連の流れとし ては、①シリンダー内の高圧ガスが ピストンリングとシリンダーのすき 間からクランクケース内に漏れ出 る、 ② ブ リ ー ザ ー か ら オ イ ル セ パ 誌 本 レーターでガスとオイルに分離す る、③ガスのみをフレッシュエアと 混 合 し 再 燃 焼 へ、 と い う こ と に な これは本物のオイルセパレ ー タ ー。 フ ィ ル タ ー エ レ メ ントはメーカーにより定期 交換時期が指定されている 査を行なっているが、ブローバイガ たとして戻ってきたターボの原因調 ラーなどに出荷後、不具合が発生し だいたTTSグループでは、ディー ないと思う。ちなみに取材協力いた が﹁オシャカ﹂になったら元も子も わ か る。 し か し、 そ れ で エ ン ジ ン が、この経済情勢だから、気持ちも ていない措置がとられているわけだ る。結果として、何の対策にもなっ が行なわれている実情が見え隠れす あえず﹂の対策としてターボの交換 ニーズに対し、ディーラーの﹁とり ダウンタイムを短くしたいという らないだろう。ユーザーの少しでも て、付加的要素も解決しなければな 本来なら、ターボの吸気口がオイ ルで汚れている場合、原因を調査し ということだ。 レーターのエレメントはメーカーや 検 項 目 に な っ て く る。 オ イ ル セ パ ローバイ量のチェックも重要な点 ブローバイ量が増えてくるので、ブ えばピストンリングの摩耗など)と だ。エンジンの調子が悪くなる(例 まずオイルセパレーターのエレメ ントをしっかり交換することが第一 なくてはいけないだろう。 でも左右することを、もっと認識し 手間がエンジンの壊れる壊れないま いのが現状だという。たった1つの は﹃かなり低い﹄と言わざるを得な 起きてしまうということへの認知度 ただ、いずれにしても、このよう な原理でエンジンのオーバーランが るはずだ。 スにこそ情熱を注ぎたいと思ってい ラーで働くメカニックも交換屋では 応 が な さ れ て い る と い う。 デ ィ ー スの吸い込みが原因で吸気口が汚れ ディーラーが定期交換を勧めている こともあるようだが、多くは前述の ンタークーラーの清掃などを勧める メント交換、および必要に応じてイ ディーラーによっては、本当の原 因であるオイルセパレーターのエレ 絶たないという。 なってみるのが良さそうだ。 ントやインタークーラーの点検も行 なく、オイルセパレーターのエレメ 汚れていれば交換するしないに関係 というが、汚れのチェックと、もし 部品である。ディーラーでは基本的 にターボの整備は行なわれていない 理由もあってターボの交換という対 ない。心の底では本来のメンテナン いているだけの﹃誤認交換﹄は後を が、回り回ってターボまで来ている ら排出されたブローバイガス 考えられるのは、エンジンか ずありえない。このことから れを起こすことは、構造上ま ターボが吸気側からオイル漏 い る 可 能 性 は 高 い が、 通 常、 らのオイル漏れと勘違いして いるという。それをターボか と、異常にオイルが付着して て交換されたターボを見る TTS ブル発生のメカニズムと日常できる対処法について紹介していきたい。 も……。原因はガスとオイルを分離するオイルセパレーターにあるようだ。今回はそのトラ 短期規制以降の多くのトラックが対象で、最悪の場合、エンジンオーバーランに至る可能性 ディーゼルエンジンのブローバイガス還元装置がらみのトラブルが発生しているという。新 「オイルセパレーター」 の管理で 「エンジンオーバーラン」 を防ぐ れているエンジンでも、ピストンリ ングの極々僅かなクリアランスなど から漏れ出るものである。大気開放 が規制されたのは、ブローバイガス が有害成分を含み、人体や環境に悪 影響を与えるため。ただ、かといっ て エ ン ジ ン 内 部 に と ど め て お く と、 クランクケースの内圧上昇やエンジ ンのオイル漏れなどといった悪影響 をおよぼすため、クランクケースブ リーザーの一種であるオイルセパ く、オイルが漏れにくい構造となっ フィルターエレメント う機械式の可動部を持つため、制御 ている。シャフトが折れたりブロー オイルパンへ レーターを介して油分をできるだけ 限 り 防 ぎ た い。 未 然 に 防 ぐ カ ギ は、 バイ圧が高すぎるとシャフト部にに ターボ 用のデバイスが必要になる。エアシ オイルセパレーターのメンテナンス じみ出る可能性はあるが、吸気側が IN リンダーは、過給圧を変えるVGノ にありそうだ。オイルセパレーター オイルまみれになる可能性はゼロに OUT 分離し、再度、エアクリーナーで大 気中から取り込まれた吸気エアと混 合してシリンダー内に送られる(還 元される)。 オイルセパレーターはメーカーに よって、PCVバルブ(三菱ふそう)、 オ イ ル セ パ レ ー タ( い す ゞ)、 C S Vバルブ(UD)、ベンチレータ(日 野)といった呼称になっているよう だが、名前が違うだけで、クランク を使ったブローバイガスの還元方式 ターボへ ズルを動かすためのデバイスといっ ていい。エンジンのシステムエアで 動くのだが、エア管理がしっかりと されていないと、ノズルが動かなく なるなどのトラブルの原因にもな る。VGターボは普通のターボに比 べ、可動部分が多いため摩耗や経年 劣化を起こしやすい。こういった制 御用のデバイスは、トラックのシス ケ ー ス か ら 出 た ブ ロ ー バ イ ガ ス を、 フィルターエレメントでガスと油分 に分離するデバイスであることに変 わりはない。ガソリンエンジンのP C V バ ル ブ と も 混 同 さ れ や す い が、 オイルセパレーターとPCVバルブ とは技術的にまったく別物で、位置 付けは近いものの、役割は変わって くる。オイルセパレーターは、ター ボ手前側に取り付けられ、ターボの 負圧で強制的に取り出したブローバ ボに交換するケースが増え ているのだという。 これは、エンジントラブ ルを主とするさまざまなト ラブルでディーラーや修理 工場などで点検を受けた 際、タービンハウジングの 吸気側(エキゾーストマニ ホールド側)の吸気口付近 に 大 量 の﹁ オ イ ル ら し き もの﹂が付着していたか ら。しかし、大型トラック のターボの吸気側のスラス トベアリング部のオイル通 はクローズタイプといわれ、エレメ 等 し い。﹁ オ イ ル ら し き も の ﹂ の 正 路径は数 程度と非常に細 ント交換時期がメーカーによって定 体は、ブローバイから吸い込まれた 、中型トラックは1年 オイルだ。 または 万 となっている。なお日 まま、あるいは、インタークーラー または3万 野は中型トラックに関しては6カ月 は消えない。実際に﹁故障品﹂とし かぎり、トラブルが再発する可能性 に油分が溜まったままの状態である 何度ターボを交換しても、オイル セパレーターエレメントが詰まった められている。各社の交換時期はほ 吸 気 口 に 大 量 の オ イ ル が 付 着 し て い る。 見 た 目 で 判 断 は で き な い が、このレベルだとインタークーラーにオイルがたまっている可能 性がなくもない。エンジンの調子なども含めてチェックしてみては 排気 とんど同じで、大型トラックは1年 ブローバイガスの流れ あるいは3万 と謳っている。 エンジンがオーバーランすると排 気 ガ ス 流 量 が 増 え る の で、 そ れ に よってターボがオーバーランする ケースも少なくない。ターボのオー バーランについては前号が詳しい が、排ガス流量をコントロールでき るVGターボといえど、その流量が 過剰だと制御しきれない部分がある ようだ。それで、ここからが最大の 重要点なのだが、実は最近、ブリー ザーからのオイル吸い込みをターボ の故障と勘違いして、リビルドター オイルセパレーターの役割 ピストンリングとシリンダーのすき間からクランクケー スに漏れ出したブローバイガスは、シリンダーヘッド付 近のブリーザーからオイルセパレーターに取り出され、 オイルセパレーターのフィルターエレメントでガスとオ イルに分離される。ガスは吸気と混ざってターボで圧縮 され、インタークーラーを通ってシリンダーに送られ再 燃焼されるが、オイルはオイルセパレーターの底部ドレ ンからオイルパンに戻される テムと密接に連動しているため、ト ラック本体の基本的なメンテナンス あ り き と い う 側 面 も あ る。 今 回 は、 なトラックの基本的なメンテナンス に関して追求し、ブローバイガスが 原因でエンジンオーバーランに至る ケースについて取り上げる。 平成 年に施行された新短期排出 ガス規制では、エンジンから排出さ れるブローバイガスについて、それ までの大気開放から循環型に変わ り、ブローバイガス還元装置が取り る。油分は③の段階でエレメントに よりガスと分離されオイルパンに戻 される。これがエレメント交換メン テナンス不良で機能せず、つまり油 分が分離されていない状態のままの トラックが少なくないらしい。 吸い込んだブローバイガスについ て は、 オ イ ル セ パ レ ー タ ー の フ ィ ルターエレメントで分離している が、フィルターが目詰まりしてしま うと、バイパスバルブが開きそのま まオイルがフレッシュエアと混合さ れ、ターボを通過してインタークー ラ ー に 送 ら れ る こ と に。 イ ン タ ー クーラーに溜まったオイルが何か の 拍 子 で シ リ ン ダ ー に 送 ら れ る と、 ディーゼルエンジンの場合シリン ダー内で着火し、キースイッチをオ フにして燃料をカットしてもエンジ ンが止まらず、最悪の場合エンジン 回転が異常上昇を起こし、オーバー ランを起こす。負荷がかかった状態 では異常燃焼(デトネーション)を 起こし、ピストンの損傷に至ること もある。 吸気 ECU mm DPF インジェクタ 矢印の場所がターボの吸気側スラストベアリング部 のオイル経路である。わずか数mmと細く、構造的 にもオイルが漏れにくい エンジンの回転数が異常上昇する のは、一概にブローバイガスが原因 km km km 84 Vol.14 2014 Autumn 85 オイルセパレータ EGR システム ➡ とはいえないが、トラブルは可能な エンジンのオーバーランによって排気ガスの流量が増え、その 結果、ターボまでもオーバーランする可能性も。ターボがオー バーランすると高サイクル疲労でバーストする危険がある 10 16 第 回 2
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