I N T E RV I E W & R e p o r ta g e シリーズ こ ISO22000 審査登録証 運 輸・保 管 業 界 初の ISO22000取 得で より安 全・安 心な 梱 包 体 制 を確 立 ㈱宮岡 Miyaoka Co.,Ltd ●会社概要 所在地:埼玉県川口市領家 5-1-3 設立:1973 年 6 月(78 年 8 月社名変更) 主な事業:配送・梱包・保管・ 人材派遣・コンサルティング 売上高:17 億円(08 年) 従業員数:150 人 ん 高頭 英雄 氏 Hideo Takatou ●プロフィール 1962 年生まれ、東京都出身。輸出 入の物流会社で勤務したのち、03 年 4 月㈱宮岡入社。品質推進部・梱包 部などを経験し、09 年 4 月より現職。 う 管理部課長 ぽ 分野は保管、包装食品の詰め合わせ、登録範囲はPSC 事業部で行われる包装済み食品の箱詰めなどのセット 作業、本社第二倉庫 3 階に置かれている食品保管業務 専務取締役 宮岡 義宜 氏 Yoshinori Miyaoka ●プロフィール 1975 年生まれ、埼玉県出身。食品関 連の物流会社で修業したのち、00 年 4 月㈱宮岡入社。07 年1 月より現職。 1973 年に倉庫業として創業し、運輸・梱包・人材派遣と事業を拡大してきた㈱宮岡。 運輸・保管業界(フードチェーン・カテゴリーIおよび J)では初となるISO22000 の認証を今年 1 月に取得した。 全従業員のコミュニケーションで食品梱包のスペシャリストを目指す。 PSC( パッケージ・サービス・センター ) 事業部は流通加工業務を担う。A ∼D の 4 つの倉庫があり、ISO22000 の対象は C 棟の2 階、3 階とD 棟で、食品関連業務 はC 棟の 2 階、3 階で行われる ISOに関する文書類は本社 オフィスで保管されている C 棟の2 階。お客さまが作業 の様子を見られるようガラス 張りのつくりになっている ローラーは壁に紙が付かない ものを採用。ローラー掛けは 入室前に2 人一組で行う 22000 導入により設置した 自動ドア。逆からは開かな いようになっている 01 02 04 シリーズ ISO22000 入室前に靴裏の異物を取るため、クリーン マットを通ってから入る。 1 セット 30 枚で 1 枚ずつはがせ、残りの枚数もひと目で分かる ㈱宮岡 青いバンドエイドも22000 導入 により購入した。使用する場合 は記入してから使い、作業終了 後フロア担当の人に報告する の骨格をおおよそ作成していたのですが、食品 で起こるハザードがどういうリスクにつなが り、それをどのように回避したらよいのかとい 題を解決していきました。 コンサルタントで話し合うことによってその課 うところに苦労しました。そこで、私と新部、 ── ISO22000の認証取得を目指した理由 9001運用の 経験を生かし認証取得 からお話しください。 ──教育で苦労された点はありますか。 た。その時、お客さまとの取引の中でISO2 化したマネジメントの必要性を感じていまし 本人だけでなく、派遣先の会社にも22000 パート社員には朝礼を利用して、派遣社員には な混乱はありませんでした。具体的には社員や 業員教育ノウハウがあったので、現場での大き ●当社は事業の中の一つとして食品関連の 宮岡 年9月に9001を取得したときの従 高頭 2000があるということを知り、 「経営を継 導入の必要性を説明しました。 ● 梱包をしていましたが、作業する上でそれに特 続していく上でお客さまにより信頼されるため 高頭 か。 ●まず昨年5月の全社員会議で社長から説 からなかったので、外部の食品専門コンサルタ し2人だけではどこから手を付けたらいいか分 からのスタートではありませんでした。しか した。9001を導入していましたので、ゼロ C事業部長の新部智恵子と2人でスタートしま 高頭 会議で改善案を検討し、それを基にして教育の はみ出している従業員に対して、毎月のチーム めました。また具体的にキャップから髪の毛が めて説明し、22000導入に対する理解を求 部、取締役統括部長の半田武一の3人であらた 前にPSC事業部の社員とパート社員に私と新 備もその時に出来上がったので、運用を始める ●リーダーは私で、食品安全チームはPS ントに来ていただき月に2回勉強会を開きまし ──設備面で改善したことは何ですか。 徹底を図ることなどもしました。 ●お客さまにわれわれの作業を見てもらう ため、ガラス越しに汚染区域から清潔区域の状 況が見渡せるようなフロア構造にしました。そ 宮岡 ういう発想は当社を含め梱包関係の会社には今 ──取得までにどのような勉強を行いましたか。 品衛生法施行条例など22000にかかわる管 高頭 までありませんでしたので、この構造は食品メ ●厚生労働省のガイドライン、埼玉県の食 理運営基準を一通り勉強しました。また再度、 ●認証取得を目指すに当たって、倉庫を大 幅に新しく造り直しました。これと同時に、貯 高頭 づいたと思います。 ーカーにおける梱包・搬送業務の形態により近 講習会にも参加しました。 食品衛生の基礎を勉強するため、責任者向けの 参加しました。 た。また認証取得において内部監査員を置く必 明し、9月に途中経過を報告しました。また設 ── 食品安全チームはどのようなメンバー構成で ── 従業員教育はどのくらいの頻度で行いました の土壌づくり」として認証取得を決断し、 年 03 要がありましたので、監査員の候補生もそこに すか。 宣言しました。 4月に宮岡義秀代表取締役社長がキックオフを 08 ●埼玉県の条例を基に前提条件プログラム ──取得で苦労された点は何ですか。 高頭 APRIL 2010 47 03 05 Miyaoka Co.,Ltd 06 食 品を扱う場 合、入室後すぐ にアルコール消 毒 液で手の消 毒を行う 作業室。ステンレスの台で業務 を行う。効率よく行うため、作業 ごとにレイアウトを変更している そ族昆虫等日常点検表と施設設備等日 常管理点検表。食品関連業務個所はフ ロア担当責任者が毎日点検している ます。 らないので、今後は量の管理も徹底させていき れはフロア管理責任者がチェックしなければな 査で基準以下になっていることがあります。こ る基準も設けたのですが、実際には抜き打ち検 ました。併せて、アルコール消毒液の量に関す を聞き、分かりやすい内容にするように心掛け マニュアル作成に当たっては従業員からも意見 アルを作成し手洗いの徹底を図りました。この ──どのような対策を取っていますか。 と考えます。 になりました。今後も専門性の高い要求がある いうキーワードが社会全体の問題となり関心事 います。ギョーザ事件を発端に「衛生管理」と り高度な品質をお客さまから望まれていると思 ることながら、パッケージの外観に関してもよ います。セットの内容物(パッケージ内)もさ 宮岡 要望がありますか。 ら衛生・品質管理基準が満たされているか事前 48 APRIL 2010 ●明確化された衛生管理基準の運用だと思 ──経営面で苦労した点はありますか。 にチェックします。当社で自主採点してお客さ ●事前チェックです。作業前にチェックシ で必要になるインフラは何かという視点で決定 まに提出し、お客さまが確認に来て採点するし ートを使って、作業フロアと作業方法の両面か しました。ゾーニングなどはすぐに実行しまし くみになっています。そのほかに、プレミア食 宮岡 たが、エアシャワーなどの高額な設備は費用対 玩販促物(カード)の情報漏えいを防ぐためI ●施設設備への投資をどの範囲まで行うか 効果を考慮し、今回は導入しませんでした。今 で苦労しました。食品関連の梱包事業を行う上 後はお客さまから要望を伺い、当社に合った形 宮岡 水槽の水質検査も開始しました。 ── 食品関連製品の温度管理はどのようにしてい SO27001も同時に認証取得しました。 ●周囲の理解を得るのが大変でした。一部 第二倉庫の私物置き場と掃 除用具入れ専用ロッカー。 貴重品類は私物置き場にし まってから前室に入る。ま た掃除用具は洗った後、必 ず外で乾かしてからロッカー にしまうよう徹底されている 宮岡 品関連業務については全体で %ぐらいです。 ●保管では菓子飲料などの一時保管です。 に観客に渡されるお土産のお煎餅のセットも定 11 に「なぜお金を掛けて大幅に施設を直すのか」 ── 貴社の食品関連業務は全体でどれくらいにな ──具体的にどのようなことをしていますか。 元・お歳暮・バレンタインなどのシーズン商品 期的に行っています。 せんべい で飲料と菓子のセット作業です。大相撲観戦時 の管理が変わりました。特に手洗いは衛生上、 宮岡 食品などの保管として使わ れている本社第二倉庫 3 階 も 22000 の対象。PSC 事 業部の倉庫同様、手洗い場 などの前室を用意している という意見があったのですが、工事が進みフロ アがきれいになり、ゾーニングが出来上がって %、 ●当社は配送と梱包、人材派遣の3つの事 るのでしょうか。 宮岡 くるにつれて、従業員の対応にも変化が表れて きました。 業で動いています。売上比率は配送が約 梱包・保管関係が %、人材派遣が %で、食 作業を見えるようにしたので、商品や備品など 宮岡 ●現場をガラス張りにして外から食品梱包 ──具体的に、どのような変化が表れたのですか。 を整然と置くようになりました。また、従業員 ──認証取得で何が変化しましたか。 りました。 は作業風景をお客さまに見られるため、今まで 宮岡 55 また梱包では食玩販促物のセット作業や、お中 30 ── 食品の梱包に関してお客さまからどのような ●防虫対策と作業前の手洗いなどフロア内 25 確実に実行しなければいけませんので、マニュ 10 幅広い食品関連業務 で順次導入を検討していきたいと考えています。 22000 導入後、部品 類がひと目で分かる ようになった ──ほかに設備面で苦労したことは何ですか。 08 以上に緊張感を持って仕事に取り組むようにな 15 07 09 12 ●お客さまの要請があればいつでも本社の るのでしょうか。 高頭 第二倉庫で温度管理をしながら保管および作業 をすることができます。要請の有無にかかわら ず毎日の温度記録を記載し、月1回空調機器の 試運転を行っております。 をルール化した点も高い評価を頂いています。 して、衛生区に入るための手洗い、ローラー掛け り組みは柔軟に導入していき、作業環境や生産 を実施しています。そこで得た有益な情報や取 性の向上、作業者の負担軽減に役立てていきた いと思います。 ●今回の認証は食品衛生の第一段階として ──今後の抱負をお話しください。 宮岡 順が明確になり、適切な衛生管理の強化ができ 高頭 く指導されていないのでどうしたらよいか分か 改善です。従業員から身だしなみに関して細か 高頭 ●身だしなみのルール周知徹底についての ── 今後の従業員教育についてお聞かせください。 商材を扱い作業する業者として、継続してより す。 「食品」という人の健康や生命に影響する 0は認証後の運用がとても重要だと感じていま からがスタートといわれますが、特に2200 つ必要があると考えます。ISOは取得して いるので、衛生管理に関してより高い関心を持 考えます。当社は食品以外の梱包作業も行って たことです。お客さまに当社の衛生管理をより らないという意見がありました。早急に取り掛 精度を高めていきたいと思います。 梱包業と 食品製造業をつなぐ 市場の開拓を目指す 具体的に分かりやすく説明できました。 かる必要があります。 ──具体的にはどのように取り組むのですか。 ──ハザード分析をしてよかった点はありますか。 ── 22000認証取得によるお客さまの反応は 宮岡 宮岡 ●受注から作業・出荷に至るまでの管理手 どう変化しましたか。 提供します。社内では課題設定をし、担当する 社内では定期的 に倉庫内に必要 な管理に関する 教育が行われて いる ●今まで以上に専門的な外部研修の機会を 宮岡 ●汚染区域からガラス越しに食品の箱詰め 社員が講師を行いワークショップ的な取り組み 16 部署が集まる経営管理者会議でマネジメントレ 頼を得ていきたいと思います。また月1回、全 積極的にやっていき、お客さまからより高い信 線を築いていくため、設備投資できるところは 高めてほかの梱包・保管業者にはない独自の路 食品だけに限らず二次、三次加工の衛生管理を ●管理基準と管理項目の継続的改善です。 セット作業を見ることができるので、お客さま 22000 導入後、啓蒙の一環として食品安全方針・ 目標を第二倉庫内に掲示している からとても喜ばれています。入室手順を明確に 補虫器。虫のモニタ リングもやっている 最大重量 2㌧対応の第二倉庫内専用エレベータ ー。パレットなどの整理整頓が行き届いている ビューを行い、社内の重要な問題について意見 交換していきます。 ●お客さまの要望には極力応えていきたい ──現場の代表としての今後の抱負を。 高頭 です。そのためにはもっとメンバー同士のコミ ュニケーションを取り、知識を増やして当社か らお客さまに提案していくことで、食品の梱包 に関するスペシャリストを目指していきたいと 思います。そのために今後も従業員全員に勉強 会などを通して同じような意識を持ってもらう 予定です。われわれはいろいろなものを梱包し てきましたので、その経験を生かしてもっと幅 広いものを目指していきたいと思います。 APRIL 2010 49 13 14 シリーズ ISO22000 Miyaoka Co.,Ltd ㈱宮岡 第二 倉 庫の広 さは約150 坪。 最低 8 ℃の温度 管理に対応でき る。入り口は非 常時以外一つに 限定 15
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