2014年度全国社会福祉教育セミナー 第6分科会報告 首都大学東京 和

JASSW NEWS LETTER
2014 年度全国社会福祉教育セミナー
2014 年度全国社会福祉教育セミナー
第 6 分科会報告
ソーシャルワーク新定義の意義と日本の社会福祉教育における課題
首都大学東京 和気 純子
本分科会は、2014 年 7 月にメルボルンで開催された国際社会福祉会議における IFSW および IASSW の各
総会でそれぞれ採択されたソーシャルワーク専門職の新定義をめぐって、日本社会福祉教育学校連盟・国際
関係委員会委員長の大和三重氏をコーディネーターに、改訂の経緯、意義、内容、日本の社会福祉教育にお
ける課題について、以下の 4 発題をもとに議論が行われた。
<第 1 発題>「新定義改訂の経過と地域レベルの定義の策定にむけて―APASWE Immediate
Past President の観察と証言―」 秋元樹(淑徳大学)
秋元氏は、APASWE(アジア太平洋地域国際社会福祉教育学校連盟)の前会長として新定義の策定経過を
身近で「観察」した当事者として、定義を所与としてのものでなく、自ら生み出しゆく合意形成のプロセス
としてみる視点を提供し、併せてその過程がもつ国際関係の複雑なダイナミズムと問題点を提起している。
改訂の経過については、非欧米諸国からの定義改訂に対する積極的な取り組みに対して欧米諸国の関心が
低かった点をはじめとして、アジア太平洋地域におけるワークショップ等において、旧定義が「西洋のもの」
「先進国のもの」であるとして、各国から様々な概念や用語の「挿入」が提案されたこと、しかし最終案は「ソー
シャルワーク専門職のグローバル定義」となり、第 1 センテンスが公に議論されてきたものとは異なるもの
となったことなどが示された。総括として、理論的討議、組織的議論が不十分であり、
「西洋専門職ソーシャ
ルワーク」の色彩がいまだに濃厚であるとして、国際団体の果たすべき役割が改めて問われる点を指摘して
いる。また、日本に対しては、「与えられる」定義を無批判に受け入れる姿勢に警鐘をならしつつ、日本と
世界にとってふさわしい定義を考える「インプット/貢献」を果たす必要性を提起している。また、今後に
ついて、地域定義や国レベルの定義策定に関する動きを紹介し、今後の論点を提起している。
<第 2 発題>「ソーシャルワーク新定義の意義と日本の社会福祉教育における課題:IFSW の立
場から」 木村真理子(日本女子大学)
木村氏は、国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)の役員として新定義策定に携わった立場から、新定義
採択までの経緯について、議論の内容を含め詳細に報告されたほか、日本社会福祉専門職協議会の IFSW 新
定義採択過程への関与や会員への周知活動についても言及している。新定義の特色として、IASSW と IFSW
の定義改訂作業代表者は、主要な実践要件として、1) 社会変革を促す、2) 社会開発、3) 社会的結束と社会
的安定、4) 人々のエンパワーメントと解放、5)SW のラジカルな政治活動-グローバルアジェンダと軌を一
にする-を挙げている。最後に、
「この定義は、各国および世界の各地域で展開してもよい」の一文を根拠に、
アジア太平洋地域では APASWE と IFAP が共同作業による地域定義策定の試みに着手していることが紹介さ
れた。
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学校連盟通信 / No.68
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<第 3 発題> 「新旧定義の対比と翻訳の問題」 片岡信之(四国学院大学)
新定義の日本語訳を担当した日本社会福祉専門職協議会および学校連盟との合同作業委員会委員である片
岡氏からは、新旧定義の対照表によって詳細な対比が示されるとともに、新定義の翻訳をめぐる論点が提示
された。新旧定義の主な変更点は、1) 国際(international)からグローバル(global)へ、2) 単一の定義か
ら重層定義(グローバル/リージョナル/ナショナル)へ、3) ソーシャルワークの定義からソーシャルワー
ク専門職の定義へ、の 3 点である。また、
「社会的結束」
(social cohesion)、
「地域・民族固有の知」
(indigenous)、
「集団的責任」(collective responsibility)、
「知」(knowledge) 等の翻訳における議論の内容と根拠が示された。
また、メルボルンにおける IFSW 総会において、いわゆる「スイス条件」と呼ばれる動議が出され、新定義
の国や地域レベルの『展開』が本定義と矛盾、逸脱しないよう歯止めがかけられたことが補足説明された。
<第 4 発題> 「ソーシャルワーク新定義の意義と日本の社会福祉教育における課題」 和気純子
(首都大学東京)
最後に、同じく新定義の日本語訳作業委員会の委員である和気からは、社会福祉教育における新定義がも
つ意味や課題について発題が行われた。過去の国際的あるいは国内の学会や各種団体等によるソーシャル
ワーク定義を列記した当日配布資料をもとに、定義の変遷と異同に着目し、その多様性がもつ意味(相対性)
を理解する必要性が提起された。さらに、定義の構成要素である 1) 根拠、2) 歴史性と地域性、3)SW と SW
専門職、4) 対象、5) 実践と研究、6) 方法、7) 地域の範囲とレベル、8) 定義と注釈の見極めが不可欠である点や、
ソーシャルワーク新定義と日本における「社会福祉学」「ソーシャルワーク」「相談援助」といった類似概念
との異同や関係性の議論を踏まえる必要性が指摘された。最後に、日本における社会福祉実践・教育への示
唆として、「グローカル」な視点、アジア・アフリカ諸国など多様な地域における SW の台頭、定義の重層
的展開、西欧近代主義の相対化、
「結束」や「集団」の再認識、地域の自立と連帯、貧困や格差に対抗するソー
シャルワーク、社会的正義から環境的正義への視野の拡大といった論点が示された。
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