2015年04月号 - 医療ソフト総合研究所

医療機関・介護事業所-運用管理マガジン <全国版>
4 月号
2015 年 4 月号
毎月 10 日発行
2015 年 4 月発行
発行元
(有)医療ソフト総合研究所
編集(有)医療ソフト総合研究所
このマガジンは、医療・介護サービスを提供している施設の自律化の支援を目
2015.4.10 太田善文)
的に発行しています。
(文責:医療ソフト総合研究所
月刊運用管理マガジン創刊の経緯
月刊運用管理マガジンの構成
13 年の病院薬剤師を経験し、医療現場で働く職員を支援し
ようと「医療ソフト総合研究所」を立ち上げ、20 年間、馬
車馬のように突っ走って来ました。一年ほど前から、「今
関係しているクライアントだけで良いのか。全国で同じよ
うに困っている医療・介護の職員や管理者に対して、見て
見ぬ振りをするのか」でした。「私の考えていることで、
改善できるのか」という不安はあるものの、改善の道筋や
具体的な改善案の提示までは「私の責務」と考えたのです。
情報の要約と取り組みポイント
医療・介護経営に関係する 1 ケ月分の情報に当社の
コメントを付記し、自律経営を支援しています。
BSC の切り口での解説
BSC の切り口は、健全経営、顧客満足、プロセス管
理、教育研修の 4 つです。医療経営、介護事業所経
営のそれぞれの具体的な取り組みに関して、現状に
則した内容で解説しています。
その結果「自分のできるところまでやり抜こう」と決めま
した。そして、10 年間発行してきたメールマガジンでは解
説しきれないものを、基礎講座 CD、実践講座 CD に展開し
て、月刊メールマガジンジンを通じて全国に発信すること
にしました。
医療・介護版
今までは病院・介護版として発行してきましたが、
医療・介護版として開業医の関係者も視野に入れ、
同時改定への適切な対応を目的として、当面は医療
関係者と介護関係者の両方に同じ内容で発行いたし
ます。
私の 13 年の臨床での経験、20 年間の急性期・慢性期医療
や介護現場での改善、健全経営への取り組み、医療 IT 化
の取り組み、人材育成の仕組みなど、私の持っているもの
全てを CD に展開するつもりです。
4 月号の目次
当社からのお知らせ
3 月の注目情報 ―――――――――― P.2
地域医療構想策定ガイドライン(案)
地域医療構想策定ガイドライン(案)
地域医療構想策定のガイドライン(案)が提示されまし
た。この内容は、この 4 月から 2025 年の医療提供体制の
医療介護関連情報 ――――――――― P.9
構築に向けた地域医療構想の策定が各都道府県でスター
 患者情報地域で共有 4 月より市町村に整備義務付け
トするものです。
 2016 年度診療報酬改定―入院(1)―
本日の「注目情報」で、ガイドラインの要点を私なりに
 高齢者が長期入院「療養病床」患者を削減の方針
把握して解説しました。内容が多岐に渡っていて、全てに
 介護職員の待遇改善、報告必要に 厚労省
対して解明したわけではありませんので、次回以降も地域
 介護の質で経営安定 県老健大会
医療構想の策定から展開、そして地域医療介護連携体制な
 病院に投資マネー
どについて、具体的に解説していくつもりです。
 医療保険制度改革法案:閣議決定…入院食など負担増
 介護大手 相次ぎ賃上げ 深刻な人手不足改善
TL メッセージより
 統合失調症、メタボに注意 心臓病などのリスク大
「和をもって貴し」なのですから、このように考える人は
極少数であることを腹に据えて、辛抱強く「地域のため、
TLメッセージ ―――――――――― P.18
医療介護従事者のため」に自分の出来ることに人事を尽く
聖徳太子の「和をもって貴しとなす」
すことです。その結果、育った君子が頑張ってくれるよう
になれば、それが最高の幸せだと思うのです。
*5 月号は、5 月 15 日発行の予定です。
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この運用管理マガジンは、愛知県は当社と同じ志を持つ岡崎信用金庫の協力を得て配信しています。その他の都道府県には(有)医療ソフト総合研究所が配信しています。ご質問な
どありましたら、当社にメールでお送りください。
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編集(有)医療ソフト総合研究所
2015.4.10
地域医療構想策定ガイドライン(案)
2025 年の医療提供体制に向けて本格的に稼働
3 月 18 日の第9回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会(下記)で、ガイドライン案が提示されました。ガ
イドライン案(下記)は 79 ページもありますがその内容から、国が地域包括ケアシステム構築に向けて本格的に動き出
したことが分かります。その中には以下の内容が掲載されています。この 4 月から、2025 年の医療提供体制の構築に向
けた地域医療構想の策定が各都道府県でスタートするのです。本日は、ガイドラインの要点を私なりに把握して解説し
ます。医療介護の経営管理者の方々は、自施設での今後の取り組みの参考にしてください。
● 地域医療構想の構想区域の設定
● 構想区域ごとの医療需要の考え方
● 高度急性期機能、急性期機能、回復期機能の医療需要の考え方
● 地域の実情に応じた慢性期機能と在宅医療等の需要推計の考え方
● 医療需要に対する医療提供体制の検討
● 医療需要に対する医療供給を踏まえた必要病床数の推計
● 医療需要の基礎となる全国の二次医療圏別の人口推移
<検討会>
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000078126.html
<ガイドライン>
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000078175.pdf
<医療需要と各医療機能の必要量の推計方法>
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000078122.pdf
ガイドライン把握のポイント
把握する際に、日本の総理大臣の立場、都道府県知事の立場、市町村長の立場、医療経営者の立場、介護事業主の立場、
そしてスタッフの立場での捉え方が重要となります。読者の自分の立場だけで把握しようとしても、このガイドライン
から具体的な取り組みに展開するのは難しいと思います。そこで、本日の解説の中では、それぞれの立場での説明を盛
り込んで、できるだけガイドラインの真意を解説したいと思います。
先ずは総理の立場――
2025 年以降を乗り切るために、2017 年度までに社会保障費の適切な抑制体制を整備しなくてはなりません。しかし、地
域により高齢化の進み方、医療・介護の体制が違うので「全国一律」ではなく、それぞれの地域別に取り組むこととし
た。医療は二次医療圏を原則として知事に委ね、慢性期医療と介護が混在する在宅医療は市町村長に委ねることとした。
具体的に取り組むために、それぞれの地域が目指すビジョンを「地域医療構想」という名前にして、それぞれの地域で
作成させ、ビジョン達成に向けての計画を管理することで実現させていくことした。出来ない知事には国が支援、出来
ない市町村長には知事が支援する体制とした。
重要なのは「地域医療構想」の作り方であり、そこで「需要と供給のバランス」という考え方ならば、それぞれ地域別
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に適正に社会保障費を抑制できると考えた。医療需要は、人口推移と疾病率などから算出し、供給体制は病床機能報告
体制の結果から算出することとした。
「医療需要と供給体制の調整」は難航することが予想されるので、
「地域医療構想
調整会議」を設定して、そこで調整を図ることを考えた。調整できない場合は知事の権限で強引に調整する仕組みを設
定した。
ガイドラインの全体像
前述した「総理立場」を踏まえるとガイドラインの全体像が見えてきます。地域医療構想策定については 6~32 ページ
に、そして策定後の取組み方が 33~46 ページに記載されています。47 ページ以降は、病床機能報告の公表の仕方が記載
されています。今回の国の方向の特徴は、
「国民を巻き込む戦略」が盛り込まれていることです。地域の住民に「需要と
供給のバランス」を理解・納得させることを、知事や市町村長に課しているのです。従って、各地域での取り組みで「住
民参加」は非常に重要な位置付けとなっていることに留意する必要があります。
全体を把握してもう一つ気になる点があります。それは「在宅医療」に対する取り組みが明確となっていない点です。
今回のガイドラインでは「在宅医療等とは、居宅、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人
ホーム、介護老人保健施設、その他医療を受ける者が療養生活を営むことができる場所であって、現在の病院・診療所
以外の場所において提供される医療を指す」とあります。
これはあくまでも私の感覚ですが、地域医療介護に関して今回は「暫定的な方向」であり、2016 年度の診療報酬改定か
2018 年度の診療報酬・介護報酬同時改訂に「具体的な方向」を提示してくるのではないか思います。今回の介護報酬改
定の内容からすると、
「介護の質の標準的な評価方法」に関して、国はまだ模索段階ではないかと思うのです。
地域医療構想の策定プロセス
前述した内容を前提に、ガイドライン 6 ページの地域医療構想の策定プロセス(下記)をご覧ください。要点を解説し
ますが、各自で本文の検証をお願いします。
まず、地域医療構想自体を策定する体制を構築す
ることになります。その方法は既に国は原案を策
定してありますので、それに基づいて体制が整備
されることになります。
「構想区域の設定」では、各地域の実状に合わせ
て「二次医療圏」の検証を行い、地域医療構想を
作成する「構想区域」をまず決定することになり
ます。
「医療需要」は構想区域ごとに推計することにな
ります。これによって二次医療圏での高度急性期、
急性期、回復期、慢性期のベッドの必要数(医療
提供体制)の根拠が設定されることになります。
医療需要が明確になった後に、医療供給体制の検
討に入るのです。過剰なベッドは削減、足りない
ベッドはどうするか――といった「医療機関の生
き残り」に直結する検討になるのです。
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地域医療構想策定後の取組みについて
右図は、ガイドライン 6 ページ
に掲載されている構想策定後の
取組みです。
ここで、昨年 10 月に提出した
「病床機能報告」の集計結果と、
医療需要から算出された必要病
床数とを比較して、地域別の取
り組み課題が明確になるのです。
この調整を行うのが、
「地域医療構想調整会議」なのです。気になるのが、同時並行する「構想区域内の医療機関の自主
的な取組」です。ガイドライン 8 ページに「各医療機関の自主的な取組及び医療機関相互の協議を促進するためには、
共通認識の形成に資する情報の整備が必要となる」とあります。要するに、地域医療構想が見えた段階で、それぞれの
医療機関で、
「地域の中での自施設の役割」を検証し、競合する近隣の医療機関があるならば協議しておきなさいという
ことなのです。
「地域医療介護総合確保基金の活用」に関しては、慢性期の医療と地域の介護の需要と供給を見据えて、必要ならば「基
金」を活用して対応していきなさいということなのです。しかし、10 月の病床機能報告の結果からは医療供給のデータ
しかありません。そこで国は「地域医療介護総合確保推進法」を制定して、その方向から地域医療介護の需要に対する
提供体制を整備しようとしているのです。
しかし、その取り組みは「道半ば」なので具体的に公表できないのです。その原因は「地域医療介護需要」を算出でき
る情報が無いからなのです。国は、この情報確保に向けてこれから数年は必死になってくると思います。病床機能報告
制度で、高度急性期から回復期までは今回の体制で整備できる目処は立ったのでしょうが、慢性期医療と介護の整備が
残された状況なのです。この部分は社会保障費抑制の「本丸」ですから、4 月の介護報酬改定から国は本気で取り組み始
めたのです。在宅医療や地域介護に関与する医療介護の経営管理者は、ガイドラインに振り回されずに「地域医療介護
総合確保」の動きから目を離さないことです。
医療需要及び各医療機能の必要量の推計
知事は、二次医療圏を原則として「地域医
療構想区域」を設定してしますが、その区
域における急性期等の医療機能は、国が示
す方法に基づいて推計することになりま
す。
この推計方法は、かなりの複雑な仕組みで
あると思われます。詳しくは、ガイドライ
ンの 12 ページから記載されています。
出された必要病床数の信憑性を問い質す
ことに労力を費やすのではなく、自施設の
役割をどのように地域で果たすのかに努
力すべきだと思います。
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医療需要の考え方――「医療資源投入」の捉え方
医療資源投入量によって、高度急性期機能、急性期機能、回復期機能の医療需要を分類しようとしています。それぞれ
の境界線は、3000 点、600 点、225 点、そして 175 点があります。この点数によって、自施設の医療機能を判定すること
になるのです。
ガイドラインの 13 ページから医療需要の捉え方に関して記載されていますので、必ずお読みください。気になるのが、
「医療資源投入量」の捉え方です。ガイドラインでは、
「患者に対して行われた診療行為を診療報酬の出来高点数で換算
した値」とありますので、境界線での点数はレセプトデータから推計されることが分かります。
しかし、
「推計における医療資源投入量に入院基本料相当分は含まないこととする。よって、推計における医療資源投入
量とは、患者の1日当たりの診療報酬の出来高点数の合計から入院基本料相当分・リハビリテーション料の一部を除い
たものとする」とあります。私の知識が不足しているのか、捉え方が偏っているのかは分かりませんが、
「これでは自施
設の病棟の点数を算出できず、比較できない」となってしまいます。要するに、
「自主的な取組」の糸口が見つからない
のです。
また、ガイドラインの 14 ページに、
「在宅等においても実施できる医療やリハビリテーションに相当する医療資源投入
量として見込まれる 225 点を境界点とした上で、さらに、在宅復帰に向けた調整を要する幅を見込み 175 点で区分して
推計するとともに、回復期リハビリテーション病棟入院料を算定した患者数(一般病床だけでなく療養病床の患者も含
む)を加えた数を、回復期の患者数の推計値とする。なお、175 点未満の患者数については、慢性期機能及び在宅医療
等※の患者数として一体的に推計することとする」とあります。
この 175 点が何を意味しているのかが気になります。これによって、慢性期機能及び在宅医療等の患者数が推計される
ことになるのです。要するに、回復期リハビリテーション病棟として「妥当か」を判断される基準となる可能性がある
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のです。私なりに解読していきますが、読者の皆さんの考えがあればメールで教えてください。
慢性期機能および在宅医療等の需要の将来推計の考え方
前述した「社会保障費抑制の本丸」の部分が、下記の需要推計です。
ガイドライン 16 ページから記載されています。
(今月のマガジンの情報コメントでも解説しています)
慢性期機能の需要に関しては、
「慢性期機能の推計においては、医療資源投入量を用いず、慢性期の中に在宅医療等で対
応することが可能と考えられる患者数を一定数見込むという前提に立ち、更に療養病床の入院受療率の地域差を縮小す
るよう地域が一定の幅の中で目標を設定することで、これに相当する分の患者数を推計すること」とあります。
要するに、地域ごとに「療養病床の入院受療率を縮小する目標」を立てて、それの実現に向けて取り組みなさいと言っ
ているのです。その目標の立て方は下記の県の最小ラインなのか、平均ラインなのかの選択となります。国は、知事に
慢性期医療と在宅医療の目標を設定されることになります。
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尚、この目標を達成する計画を立て、それを実現するのは市町村長の責務となるのです。前述しましたが国は、この取
り組みを確実に実施させるために「地域医療介護総合確保推進法」を制定したのだと推測できます。この取り組みを地
域単位で本格的に取り組むのがこれからの 3 年間のです。要するに、
「在宅医療への移行」を地域単位で実践することに
なるのです。
病床の機能の分化及び連携の推進について
ガイドライン25ページから連携に関する記載があります。
下記の取り組みを複合的に実施していくと記載されています。
● 地域連携パスの整備・活用の推進
● 都道府県や市町村が中心となった連携を推進するための関係者が集まる会議の開催
● ICTを活用した地域医療ネットワークの構築等
医療機関の取り組みとして、26 ページに「各医療機関における地域との前方連携及び後方連携を行う看護職員や医療ソ
ーシャルワーカーの研修だけではなく、退院支援部門以外の医師、歯科医師、薬剤師、看護師等の職員に対して、入院
開始時から在宅復帰を目指した支援を行うための在宅医療や介護の理解を推進する研修、医療機関の医師、看護職員等
と地域の関係者による多職種協働研修等により必要な人材の確保・育成に取り組む必要がある。
」とあります。
国の方向は間違ってはいませんが、
「必要な人材の確保・育成に取り組む」では「絵に描いた餅に過ぎない」と言わざる
を得ません。これでは、在宅医療介護のスタッフは具体的な取組はできないのです。
在宅医療の充実
ガイドライン 28 ページから記載されています。下記はその一部です。
「在宅医療は主に「
(地域側の)退院支援」
「日常の療養生活の支援」
「急変時の対応」
「看取り」という機能が求められ
ており、緊急時や看取りに対応するための 24 時間体制の構築に向けた役割分担等の協議や、医療依存度の高い患者や小
児等患者に対応するための研修等により各機能を充実させることが必要である。このため、地域の関係者の連携のみな
らず、患者の急変時等に対応するために、病院が在宅医療を担う診療所等を後方支援することが重要である。さらに、
在宅医療を受けている患者に対する口腔機能の管理等の機能を担う歯科診療所及び後方支援を行う病院歯科等が医科医
療機関等と連携体制を構築することが重要である。
」
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具体的な事例として下記が記載されています。
上記の「体制構築」に記載された内容は、各地域で取り組んでいく課題なのです。取り組みの方向性ややり方の提示ま
では国や都道府県や自治体が設定しますが、実際の在宅医療や介護の具体的な日常業務内容は、現場のスタッフが中心
となり構築していかなくてはなりません。教育や研修を受けただけでは、上記の体制を機能させることはできなのです。
日常業務の構築は、
「この高齢者に何が必要なのか」という視点で、医療・介護が一つになって捉えることが大切なので
す。医療と介護のそれぞれで捉えていては、上記の体制は決して機能することはないと思います。具体的な取組方法に
関しては、このマガジンで解説していくつもりです。
とりあえず地域医療構想策定ガイドラインに関して、私なりに解説しました。この後、各自で提示され
た資料を必ず読んで、それぞれの地域や施設の取り組みに頑張ってください。私はこのマガジンの解説
を書くのに、ガイドラインの内容把握に 30 時間以上を費やしました。出来るのは「努力」だけですか
ら・・・
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2015.4.10
〔患者情報共有関連〕
患者情報地域で共有 厚労省 4 月より市町村に整備義務付け
<記事要約> 日経新聞 2015 年 3 月 26 日
厚生労働省は4月から、病状や服薬歴など病院が管理している患者の情報を、地域の看護師や介護士らが共有する仕組
みをつくる。全国の市町村にシステム整備を義務付ける。末期がんや寝たきりの患者が看護師や介護士らのケアを受け
ながら、自宅で安心して療養できるようにする狙い。医師や介護関係者らが参加する協議会で市町村ごとに具体的なシ
ステムや運用ルールをつくる。
介護保険法の関係省令を改正し、2015 年度から開始。18 年度までに全市町村での整備を終える考え。厚労省はシステム
整備を財政支援する。共有する情報の範囲は今後詰めるが、診察記録や服薬、検査の記録、入院中の様子などが対象に
なる見込み。患者の自宅を訪問して治療やケアにあたる診療所の医師や介護士、看護師、介護支援専門員(ケアマネジ
ャー)らが知っておいたほうがよい情報を伝える。
末期がん患者や寝たきりの高齢者などは最期を自宅で過ごしたいと希望する人が多いが、実際には病院で亡くなる人が
多い。在宅医療は緊急時の対応など患者や家族が安心できる体制が不十分なためだ。このため訪問看護師や訪問介護士、
地域の診療所の医師ら在宅療養を支える関係者が患者情報を共有することで連携を深める。投薬歴などを把握しておけ
ば容体の急変や病気にも気づきやすく、在宅でもきめ細かい対応が可能になる。患者や家族は今よりも安心して自宅で
療養できる。
今も病院から診療所に情報提供する取り組みはあるが、介護士らへの提供は患者のプライバシー保護などを理由に慎重
な病院が多い。介護士が患者の状況を把握できずに介護サービスを始めるのに時間がかかり、病状が悪化することもあ
った。今回の情報共有は本人の同意を得るなど個人情報の保護を前提とする。例えば患者にがんを告知していない場合
は介護士らにかん口令を敷く。患者情報が漏れないように関係者に誓約書を書いてもらうことも検討する。
<コメント>
地域での患者情報の共有化に向けた取組みがいよいよ開始されます。各市町村での医師や介護関係者が参加する協議会
で「2018 年度までに全市町村で整備を終える」とのことですから、これから数年の取り組みによって地域における医療
介護連携体制が決まることになります。
記事に「共有する情報の範囲は今後詰める」とありますが、最も重要となるのは「どのような情報を共有化するか」で
す。インターネットの利用方法などは「手段に過ぎない」ということです。そして、急性期病院での情報が表面に出て
きていますが、在宅での療養生活を継続するためには、慢性期医療と介護で必要な情報に焦点を当てることがポイント
となります。
要するに、この取り組みの主人公は、かかりつけ医、訪問看護師、ケアマネ、訪問介護士なのです。国はそこまでを視
野に入れているとは思いませんので、システムや個人情報保護などに惑わされることなく、患者・利用者、そして家族
の視点で情報連携を捉えることだと思います。
この内容は、本日の注目記事の「地域医療構想策定ガイドライン(案)
」の 26 ページに記載されている「ICTを活用
した地域医療ネットワークの構築等」の取り組みと密接に関係しています。
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2015.4.10
〔診療報酬改定〕
2016 年度診療報酬改定―入院(1)―
<コメント>
2015 年 3 月 4 日に中央社会保険医療協議会総会で、
次期診療報酬改定に向け、
入院医療に関する議論が開始されました。
その時の資料は下記にあります。その中で、入院医療(1)で今後の 7 対 1 の急性期病棟、回復期リハビリ病棟、地域包括
ケア病床、療養病棟に関する 2016 年度の改定の取り組み課題が掲載されていますので、そのポイントを解説します。
*中央社会保険医療協議会 総会(第 292 回)平成 27 年 3 月 4 日
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000076225.html
*入院医療(1)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000076241.pdf
急性期医療についての課題と論点(P.36)
■ 7 対 1 入院基本料算定の病床数を益々
減少させる方向で進む可能性が高い
です。
■ 要件としては、高度な医療を必要とす
る患者の条件の厳格化、在宅復帰に関
する条件の見直しが想定されます。
■ 急性期病床から移行するなら「地域包
括ケア病床」か「回復期リハビリテー
ション病床」ですが、両方とも簡単に
はいきませんので、移行準備には十分
時間をかける必要があります。
地域包括ケア病棟・病床、回復期入院医療の課題(P.52)
■ 回復期リハビリテーション病棟は、次の
ステージに移行する様相を呈しています。
地域包括ケア体制を視野に入れた退院調
整機能が不可欠となります。15 年度の介
護報酬改定での維持期リハビリテーショ
ンの抜本的な見直しの内容も視野に入れ
たリハビリテーションの機能や役割に関
して再設定が必要になると思われます。
■ 地域包括ケア病床に関しては、それぞれ
試行錯誤で取り組んでいることと思いま
すが、16 年度の診療報酬改定ではもう少
し具体的な役割が出されてくると思いま
す。
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2015.4.10
慢性期入院医療についての課題と論点(P.81)
■ 慢性期入院医療に関しては、本日の注目
記事で解説した「地域医療構想策定ガイ
ドライン」の内容と密接に関係してきま
す。
■ ガイドラインでは、医療区分「1」に注目
されていますので、それ以外は在宅医療
に移行される可能性が高いです。
■ 慢性期入院医療に関しては、退院誘導に
関する点数化と同時に、厳しい基準が設
定されてくることが想定できます。
〔医療保険制度関連〕
医療保険制度改革法案:閣議決定…入院食など負担増
<記事要約> 毎日新聞 2015 年 03 月 03 日
政府は3日、国民健康保険の運営主体を市町村から都道府県へ移管することと、40兆円近くに達した医療費の抑制策
を柱とする医療保険制度改革関連法案を閣議決定した。1食260円の入院食の自己負担を3年で460円に増額する
案や、紹介状なく大病院を訪れた患者に5000円以上の負担を求める案、サラリーマンの保険料率の上限(現在は年
収の12%)を13%に引き上げる案などが盛り込まれた。政府はさらに、6月にまとめる財政再建計画で追加の抑制
策を打ち出す構えだが、厚生労働省内には「打つ手は限られている」という声が上がっている。
消費税率10%への引き上げを延期したため、政府は財政健全化への対応を迫られている。財務省はさらなる医療費抑
制策として、患者が新薬の処方を受ける際、同じ成分で作られた安価な後発医薬品との差額を全額自己負担とする案や、
風邪など軽い病気の医療費の一部を保険適用外とする「免責制」の導入、湿布などの全額自己負担化、高齢者の窓口負
担割合(70歳以上は原則1〜2割)のアップなどを提起している。
ただ、これらの案はいずれも過去に検討され、
「通院を我慢する人が増え、重症化して逆に医療費が増える」などの理由
で見送られた経緯がある。また、財政再建に要する財源は数兆円に上るにもかかわらず、財務省案が仮に実現したとし
ても、せいぜい数千億円の抑制効果にとどまる。今回閣議決定された医療保険制度改革関連法案の負担増には野党が強
く反発しており、厚労省幹部は「負担増の法案の審議と並行して新たな負担増を議論できるのか」と指摘する。
与党は1月、75 歳以上の後期高齢者医療制度の保険料を最大9割軽減している特例措置を段階的に廃止する時期につい
て、当初予定より1年遅い 2017 年 4 月からにすることを決めた。26 日から始まる統一地方選を前に、高齢者層に配慮し
た。来年夏には参院選が控えており、厚労省内では「及び腰の与党が本格的に医療費に切り込めるのか」との疑念もく
すぶっている。
<コメント>
国保の運営主体を市町村から都道府県に移管することで、これから都道府県は、全体の財政運営や医療を効率化する計
画が作りやすくなります。具体的には、医療費計画を立案し、市町村ごとの年齢、所得などによって保険料の総額や標
準的な保険料率も決めることが出来ます。都道府県の取り組みで全体の医療費が下がれば、市町村ごとの保険料総額も
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減るといった青写真です。この方法を国がマネジメントする体制を構築しているのです。地域医療構想も全く同じ仕組
みなのです。このように考えると今回の大改革を国がかなり本気で取り組んでいることが分かります。
〔医療経営関連〕
高齢者が長期入院「療養病床」患者を削減の方針
<記事要約> 2015 年 3 月 23 日読売新聞
団塊世代が全員75歳以上になる2025年に向け、在宅重視の医療体制づくりを進める厚生労働省は、寝たきりの高
齢者らが長期に療養している「療養病床」の入院患者を減らす方針を固めた。入院患者の割合が全国最多の県を全国標
準レベルに減らすなど、地域ごとに具体的な削減目標を設定する。
厚労省のまとめでは、人口10万人当たりの療養病床の入院患者数(11年)が最も多いのは、高知県の614人で、
山口、熊本、鹿児島県と続き、西日本で多い傾向がある。最も少ないのは長野県の122人で、高知県はその約5倍に
なる。入院患者の多い県は、療養病床の数自体が多い。病院が経営上の理由から、既存のベッドを入院患者で埋めよう
としているとの指摘もある。多い県は1人当たりの医療費も高額化する傾向があり、厚労省は是正に乗り出すことを決
めた。
具体的には、2025年をめどとし、全国最多の高知県は、全国中央値に当たる鳥取県(人口10万人当たり213人)
程度まで6割以上減らすことを目標とする。高知以外の都道府県も、全国最少の長野県との差を一定の割合で縮めるよ
う具体的な削減目標を割り当てられる。
<コメント>
これも地域医療構想の中で、各都道府県で策定
していくことになります。療養病床に入院して
いた患者さんをどこで対応するかは、それぞれ
の地域医療介護連携体制の中で対応することに
なるのです。
右は、2015 年 2 月 18 日に開催された第8回医
療・介護情報の分析・検討ワーキンググループ
の資料の抜粋です。これから察すると、病床機
能報告でのデータより療養病床の機能を回復期
と在宅医療に振り分け、残った患者さんと、そ
こに障害者・難病を組み入れたものが慢性期機
能の病床となると思われます。
上記会議の資料は、下記にありますので、確認してください。
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/gyoseiShiryou/iryou/iryouZenpan/iryouZenpan024/20150220
_05.html
また、この区分けに関しては 2015 年 1 月 28 日に開催された第7回医療・介護情報の分析・検討ワーキンググループ資
料(下記)にありますので、自施設の療養病棟がどのように分類されていくかが見えてきます。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shakaihoshoukaikaku/wg_dai7/gijiyousi.pdf
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〔老健経営関連〕
介護の質で経営安定 県老健大会
<記事要約>
第21回県介護老人保健施設大会(県老人保健施設協議会主催)が 3 月 27 日、那覇市のホテル日航那覇グランドキャッ
スルで開かれ、兵庫県立大大学院主任教授の小山秀夫さんが基調講演した。2015 年度介護報酬のマイナス改定の影響で
施設経営を危ぶむ現場の懸念に対し、小山さんは入所者の在宅復帰や在宅療養支援、
「口から食べる楽しみ」を支える取
り組みを強化することで「
(減額される報酬分は)取り戻せる」と制度の仕組みを説明。管理栄養士など人員の適切な配
置や介護の“質の向上”を訴えた。
旧厚生省病院管理研究所研究員で、老人保健施設(以下老健)の制度設計にも関わった小山さんは「老人保健施設の新
たな挑戦」と題して講演した。老健が本来自宅復帰を支援する施設であるにもかかわらず、他施設や家庭が受け入れで
きないなどの理由から長期入所になっている実態を指摘し、
「長期お預かり(の老健)施設はいらない。改革が求められ
ている」と断じた。
小山さんは老健の介護報酬改定率が全体で 2.27%引き下げになることに触れ、今後の施設運営は――
(1)在宅復帰・在宅療養支援
(2)リハビリテーション機能の強化
(3)みとりへの対応
(4)口腔(こうくう)
・栄養管理の充実-など
が必須になることを説明した。
在宅復帰については、入所時に退所に関する相談を積極的に行う施設は自宅復帰率が高い実態を挙げ、
「入所前後に退所
の相談を始めないと自宅には帰れない」と強調した。新介護報酬では「
(自宅に)50%帰せば報酬はプラス、30~50%で
とんとん、30%以下はつぶれる」と語った。
小山さんは新介護報酬で、管で栄養を摂取する胃ろうを外し「口から食べる楽しみ」を充実させる支援が評価され、加
算が大きくなる仕組みを説明した。食事中に誤嚥しないよう「食事観察」することが加算対象となることから、
「施設み
んなが理解して、多職種で取り組まないといけない」と強調。歯科衛生士による口腔衛生管理の重要性も指摘した。
<コメント>
老健として生き残るためには、小山さんが指摘している 4 つの項目を別々に取り組むのではなく、一人の利用者として
全人的に取り組む業務体制の構築が必要です。そして、入所前の待機利用者のラインと、退所支援を通じた退所後の療
養生活の継続に向けた取組みも重要となります。要するに入所前、入所中、退所後の 3 つに分けて業務構築することで
す。そして、医療面、介護面、リハビリ面、栄養管理面のそれぞれの切り口から入所前からの業務流れを組み込むこと
で、機能する多職種連携業務となります。
〔医療経営関連〕
病院に投資マネー
<記事要約> 日経新聞 2015 年 3 月 29 日
国土交通省は病院を投資先とする不動産投資信託(REIT)の普及を促すため、資産運用会社向けの指針案を固めた。
病院経営の経験者など専門家の意見を反映する体制を整えることを必須条件とする。病院経営にも投資マネーが流れ込
みやすくなり、施設の改修増床や先端医療機器の導入が進む効果をねらう。関係者の調整を経て7月からの適用をめざ
す。
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医療機関・介護事業所-運用管理マガジン <全国版> 2015 年 4 月号
編集(有)医療ソフト総合研究所
2015.4.10
病院や介護施設を投資先とするヘルスケアREIT(後述)は米国で先行。
REITが病院から土地や建物を買い取り、それを病院側に貸し出すことで
得られる賃料収入を投資家へ分配する。すでに国交省は介護施設に投資する
REIT向けの指針をまとめている。
国交省は運用会社に指針の順守を求め、運用会社が公表する投資方針が指針
に沿っているかどうかが投資家の判断の目安にもなる。高齢化で病院の需要
は中長期的に拡大が見込まれ、安定的な利回りが期待できるとされる。厚生労働省の調査によると、国内病院の耐震化
率は約 64%にとどまり、国交省はREITの活用で老朽施設の改修費用などを確保できるとみている。
ただ、投資資金が医療分野へ流れると「病院の収益性を上げるために診療科目を取捨選択するのではないか」と、医療
関係者からは経営への介入を懸念する声も根強い。そのため指針案では運用会社に対し、①運用に携わる人が病院への
投融資業務に携わった経験がある、②コンサルタントなど外部の専門家と助言契約を結ぶ、③資産の取得や売却を決め
る委員会に専門家を加える――のいずれかを求める方向だ。運用会社が一方的に賃借料などを変えないよう、病院関係
者と意思疎通を深める場の設置も求める。日本医師会と不動産証券化協会との間で調整が続いていたが、近く大筋合意
する見通しだ。
ヘルスケアREIT
病院や有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅などを投資先とする不動産投資信託(REIT)
・投資家から集めた資
金や銀行からの借入金を元手に病院の敷地や建物を購入し、その賃料収入や売却益を投資家に分配する。病院は不動産
をバランスシートから切り離すことで売却益を手にし、一定の賃料をREIT側に支払う。担保価値が下がると銀行は
追加融資に応じにくくなるが、REITなら不動産価格に左右されず診療に専念できるようになる。
現在でもREITが介護・医療施設に投資することはできるが、収益性の高さを求めるオフィスビルや商業施設とは事
業特性が異なるため、投資実績が限られていた。収益性を追い求めるあまり、採算のよくない診療科目が切り捨てられ
るといった懸念も指摘されていた。
そのため政府は昨年1月に閣議決定した「産業競争力の強化に関する実行計画」で、一定のルールを盛り込んだ指針を
2014年度中にまとめる方針を盛り込み、国土交通省が策定作業を進めてきた。民間資金を活用することで、医療サ
ービスの充実を図りながら増大する国民負担を抑えることをねらっている。
<コメント>
別の情報では、
「日本医師会との合意に関しては、検討中」とのことです。このヘルスケアリートとは、
「資金運用会社
が、病院から土地や建物を買い取り、それを病院側に貸し出すことで得られる賃料収入を投資家に対し、分配する仕組
み」です。医療機関にとっては、新たな資金調達の一つとなりますから、慎重に検討していくことになります。
今国会に提出予定となっている「地域医療連携推進法人(仮称)
」にしても、このヘルスケアリートにしても医療に営利
法人が近づいてくることには違いありませんから、医師会としても、医療法人の経営者も慎重にならざるを得ません。
どちらにしても、医療や介護を「食い物」にするような考え方の経営者の参入は阻止しなくてはなりません。経営が良
くなっても、職員の目が死んでしまったら本末転倒なのですから。
とは言え、医療経営への資金の流入という点から見れば、両者は共通しているのですが、ヘルスケアリートは医療法人
単独のことであり、地域医療連携推進法人は名前の通りに地域医療連携の推進が責務なのですから、全く違うのです。
これを混同して検討している情報が目につきます。どちらにしても真摯に取り組むことです。
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編集(有)医療ソフト総合研究所
2015.4.10
〔介護職員処遇改善加算関連〕
介護職員の待遇改善、厳格化 給料増の実績、報告必要に 厚労省
<記事要約> 2015 年 3 月 18 日朝日新聞
介護職員の待遇改善に使い道を絞った加算金について、厚生労働省は事業者が介護報酬を請求する際の要件を厳しくす
る。17日に都道府県などに通知した。加算を受ける前後の職員の賃金水準を報告させるのが柱で、確実に給料アップ
につなげる狙いだ。
介護保険サービスを提供した事業者が受け取る介護報酬は、新年度から全体として2・27%引き下げられる。一方、
低賃金で人手不足が深刻な介護職員の待遇を改善するため、月1万2千円ほど給料アップできる額を加算金で上積みす
る。2009年度以降、同じような狙いの加算制度などで月3万円相当分の報酬を上積みしてきたと政府は説明する。
しかし現場では「給料は上がらない」との声もあり、加算が確実に給料に回る方策を検討していた。
加算を受ける事業者は、給料の改善計画と実績を都道府県などに届け出る必要がある。基本給や賞与などから事業者が
改善する項目を選び、いまは必要な加算額だけ記載している。例えば基本給を増額した分、賞与を減らしても、事業者
は加算を受けられてしまう。この「抜け穴」をふさぐため、4月以降に求める報告では、賞与や手当を含めた総額の賃
金水準を、加算の前後で比較できるようにする。計画通りでない場合は事業者に説明を求め、悪質な場合は加算金の返
還を求める。
<コメント>
日本の景気が徐々に回復しつつありますから、介護職員の確保は益々難しくなります。また、今回の改定において増収
に向けては介護福祉士が不可欠となる傾向にあります。従って、介護事業所の経営陣は真摯に介護職員の人材育成と賃
金体系の改革に取り組まないと、介護職員は確保できなくなってしまう危険性が高くなります。
〔介護経営関連〕
介護大手 相次ぎ賃上げ 深刻な人手不足改善
<記事要約>日経新聞 2015 年 3 月 31 日
介護サービス事業者が4月以降の賃上げに動いている。深刻な人手不足の解消につなげる狙いで、ニチイ学館やベネッ
セスタイルケアなど主要 12 社だけで 10 万人弱が対象になる。4月の介護報酬改定で事業者に渡される原資を数千円上
回る賃上げに踏み切ったり、調理や送迎など周辺スタッフまで賃上げ対象にしたりする動きが出ている。介護では 2009
年以来の大幅な賃上げになりそうだ。
報酬改定分に上積みも
年間売上高 100 億円以上で介護サービスを手掛ける主要 12 社に聞き取ったところ、全社が 15 年度に賃金を引き上げる
と回答した。各社が賃上げに動く背景には人材難への危機感がある。介護職員の有効求人倍率は2月時点で 2.48 倍。求
職者の2倍を大きく超える求人がある状態で、産業界の中でも特に人手不足が深刻だ。介護職員は現在約 180 万人いる
が、政府は今後の高齢者の増加を踏まえると、25 年度に約 30 万人不足すると推計している。
厚生労働省の 14 年の調査では介護職員の平均賃金は月額約 22 万円。全産業平均を 11 万円も下回っている。売り手市場
が強まる中で給与水準を引き上げないと、必要な人材を確保できずに介護現場を支えられなくなるとの判断がある。厚
労省は4月から介護報酬を改定し、介護職員の月給を1人あたり1万2千円引き上げる原資になる「処遇改善加算」を
設けた。要件を満たした介護事業者は加算分の報酬をもらい、賃上げに充てられるようになる。多くの事業者はこうし
た加算を使って賃上げする見込みだが、大手では報酬分を上回る賃上げを実施する動きもある。
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医療機関・介護事業所-運用管理マガジン <全国版> 2015 年 4 月号
編集(有)医療ソフト総合研究所
2015.4.10
最大手のニチイ学館やセントケア・ホールディングなど 4 社は賃上げを 1 万 2 千円にととめず、独自に上積みする方向
だ。九州が地盤のシダーは定期昇給による 2 千~3 千円を加え月 1 万 5 千円程度の賃上げとする。賃上げ対象を介護福祉
士らに限らず、周辺スタッフに広げる動きもある。ワタミの介護など5社は介護計画を立てるケアマネジャーや食事の
調理、高齢者の送り迎えなどを担うスタッフも賃上げする方向だ。
介護報酬を使った賃上げは高齢者のケアに直接携わる介護福祉士やホームヘルパーらに対象を限っている。5社は独自
に財源を捻出して介護現場を支える幅広い人材の賃金水準を底上げする。西日本や首都圏で特別養護老人ホームを展開
する健祥会グループ(徳島市)など、社会福祉法人でも賃上げの動きは広がりつつある。
ただ経営基盤が弱い中小事業者には、安定収入が見込めないことを理由に賃上げを見送るケースがある。大手各社は規
模のメリットを生かして運営を効率化し生産性を高めている。一方、介護サービスの9割を占める中小・零細の事業者
では効率性が低い。介護報酬に頼らずに介護職員の処遇改善を続けるには、再編など中小事業者の経営効率を高める取
り組みが不可欠だ。
介護報酬
介護サービスを手掛ける社会福祉法人や企業が介護保険制度で受け去る報酬を指す。個々のサービスごとに国が報酬額
を決めており、例えば認知症グループホームを一日利用すると約 1 万円になる。介護事業者は受け取った介護報酬から
運営費や設備費を支払い、職員の給与をまかなう。
介護報酬は 3 年に一度、厚生労働省が審議会での議論を経て見直している。2015 年度から適用される新しい介護報酬で
は、総額を 2.27%引き下げる一方で、職員の月給を1人あたり1万 2000 円引き上げるための原資を加算する。介護職員
の給与は産業平均の7割程度にとどまる。待遇の低さが職員不足の要因になっているとみて改善を促す。
介護保険の財源のうち利用者本人の負担は1割。残りは国と地方が集めた税金と 40 歳以上の個人や企業が負担する保険
料でまかなっている。介護費用は介護保険制度が始まった 2000 年度は3.6兆円だったが、高齢者が増えて 14 年度は
約 10 兆円に膨らむ見込み。介護報酬が増えると事業者の取り分は増えるものの、本人負担や保険料、公費の負担が膨ら
む。
<コメント>
今回の介護職員の人材不足が中小事業所では深刻になることが予想されます。これは、何年か前に「7 対 1 看護」によっ
て、全国で看護師不足となり、中小病院は看護師確保に困窮しました。これと全く同じ動きが介護事業で発生すること
になります。
「地域のために自施設はどうあるべきか・・」という視点で経営者が創業の理念から見直す必要があります。
「経営がやっていけるか・・・」といった視点では、これからの社会保障費抑制政策は乗り越えられないと思います。
〔統合失調症関連〕
統合失調症、メタボに注意 薬の副作用で食欲増 心臓病などのリスク大
<記事要約> 2015 年 3 月 17 日朝日新聞
統合失調症で通院している患者は、メタボリック症候群になりやすい面がある。薬の副作用など様々な要因がかかわっ
ている。栄養指導でメタボの改善をめざす試みが始まっている。
愛知県に住む30代の女性は、約10年前に統合失調症と診断された。抗精神病薬を飲み始めて、1年間で体重が11
キロも増えた。スポーツジムに通うなど、やせる努力をしたものの、今も肥満状態にある。以前の姿を知る友人から「太
ったね」と言われるのがつらい。しかし、精神症状の改善には薬が欠かせない。
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2015.4.10
統合失調症は成人の約100人に1人がなると言われている。10代後半から20代に発症することが多い。幻覚や妄
想といった症状のほか、整理整頓や手順通りの調理ができないなど行動の障害があり生活に支障が出ることがある。1
990年代から新型の抗精神病薬が普及したが、食欲が増して太りやすくなる副作用も報告されている。太ると内臓脂
肪がたまり、動脈硬化が進んで心臓病や脳卒中を起こしやすいメタボリック症候群につながる心配がある。
■外来患者の2割
日本精神科病院協会と日本臨床精神神経薬理学会は、全国500以上の施設を対象に統合失調症患者についての大規模
調査を2012年から実施し、外来の7655人、入院の1万5461人のデータを解析。担当した新潟大の染矢俊幸
教授(精神医学)によると、メタボリック症候群に当てはまるのは外来で22・9%、入院で8・3%だった。12年
の国民健康・栄養調査では、一般の平均が15・6%のため、統合失調症の外来患者はメタボが多いとみられる。
染矢さんは「医師の指導が不十分だった。糖尿病などを防ぐために、治療の際には血糖値、体重などを定期的に測るこ
とが必要だ」と話す。欧米の研究では、統合失調症患者は、それ以外の人と比べて平均寿命が15~20年短いとされ
る。デンマークでの研究によると、1980年代以降、全体的には平均寿命が年々伸びていたのに、統合失調症患者は
逆に短くなっていたという。
■医師の連携不足
その原因として、山梨県立北病院の藤井康男院長(精神科)は、メタボリック症候群や喫煙、栄養バランスの悪い食事
のほか、体の痛みを感じにくいためにほかの病気の治療が遅れるリスクを挙げる。さらに、精神科とそれ以外の診療科
の連携不足で、十分な治療を受けられない場合もあるという。
「統合失調症患者は心臓病などのリスクが高いことが、精
神科以外の医師に知られていないことも問題」と指摘する。藤田保健衛生大学の岩田仲生教授(精神科)は「英国では
精神科医と総合内科医との連携を積極的に進めている。日本でも内科医とつながる仕組みが必要だ」と語る。
■食生活変えて改善も
大阪府高槻市にある新阿武山病院は2002年から、デイケアに通う統合失調症の外来患者に栄養指導をしている。医
師や管理栄養士、看護師らによる栄養サポートチームがあたる。ずっと通い続けている患者41人でみると、肥満者の
割合が01年は73%だったが、11年には51%になり、メタボリック症候群の割合も05年の15%から11年は
10%以下に下がったという。
管理栄養士の井戸由美子さんによると、指導開始時に食生活習慣を調べたところ、糖分を含む飲料や、カップ麺、菓子
パン、ファストフードなどの食品をおなかいっぱい食べている人が多いことがわかった。看護師や管理栄養士が個別に
アドバイスをしたり、自宅へ栄養指導に出向いたりした。食生活への意識が高まってくると、患者同士で「お菓子はや
めとき」などと注意し合えるようになったという。
統合失調症のために、手際よく料理をつくるのが苦手な人もいる。井戸さんは、コンビニなどで売られている袋入りの
カット野菜を使った簡単調理を提案している。たとえば、皿に盛った野菜の上に薄切りの豚肉を載せて、電子レンジで
加熱すると、短時間で野菜料理が食べられる。井戸さんは「病気の治療で食欲が増しますが、薬を飲みながら、食生活
の改善で乗り越えられます。そのためには、様々なスタッフのサポートと栄養への理解が欠かせません」と話す。
<コメント>
これからは統合失調症患者さんが在宅で増えていきます。統合失調症と心臓病の関係、メタボリック症候群との関係な
ど結局は、
「食生活の管理」が重要となります。このような患者さんとの信頼関係が確立できるかが根底に潜んでいます。
適切な指導であっても、患者さんが医療従事者を信頼していなかったら素直に従うことはありませんので・・・
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TLメッセージとは
Tough Love とは「厳しい愛」の意味です。「頑張れ管理職」は、医療・介護の管理者に対する応援メッセージです。
このTLメッセージは、「自分らしく生きること」の大切さを読者に伝える目的で書いています。人間は誰でも心臓が
停止した後に、脳に身体中の血液が集まって、自分の人生の走馬灯を見ることになるそうです。その時に、「自分な
りによく頑張ったな」と、自分自身を褒めてあげられたら、それが最高の人生だと私は思います。
はじめに
本日の注目記事で解説した「医療介護の連携」ですが、これからの日本の高齢化社会を乗り切るためには、医療介
護の経営管理者やスタッフが「一つの気持ち」になることが不可欠なのです。本日は「和」について少し書きたいと
思います。読者の方々の「納得できる人生の謳歌」にお役に立てば幸いです。
「貴し」の意味
今回のメッセージを書いて気付いたのですが、以前は「和をもって尊しとなす」と書いていました。しかし、今回「尊
し」ではなく、同じ読みですが、「貴し」であることに、今更ながら気付いたのです。和を大切にしているのは「貴重」
だという意味だったのです。要するに、そのように考えている人は「立派」ではなく、「数は少ない」ということではない
かと思いました。
このことに気づき、何となく「ホッ」としました。私の人生を振り返ると、常に「和」に拘って生きてきたのです。しかし、
私の生き方を「立派」だとは思ったことは一度もなかったのです。それどころか、半端者の生き方であり「同じ生き
方」の人には滅多に逢わなかったのですから、「自分は他人とはずいぶん違うな」と感じていました。でも、この生き
方を変えることはできませんでした。それだけ頑固な生き方をしてきたのかもしれませんが、もう 60 歳を過ぎました
ので、この生き方を貫くしかないのです。
「大和」とは「大いなる和」の精神
先日テレビを観ていて、「大和」の意味が「大いなる和」という意味であることが分かりました。そこで、色々調べてみ
ると、「和」の精神とは日本独特の考え方であり、仏教や儒教などにもない考え方であることが分かりました。また、
「和」は日本神話につながるものであることも分かりました。
下記は、調べている中で見つけたものですが、非常に興味深いので、記載します。出展は下記です。
日本の心 ● 「和」の精神 (細川一彦) http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/j-mind01.htm#_top
日本人の精神は、しばしば「和」の精神といわれます。
「和」というと、妥協やなれあいをイメージす
る人もいるでしょう。しかし、真の「和」の精神には、生命と宇宙の法則が現われているのです。聖
徳太子は、十七条憲法の第1条で「和を以て貴しとなす」という趣旨を説きました。太子のいう「和」
とは、単に仲間うちで仲良くやっていく事ではありません。
(中略)
「和」の心をもって、お互いに話し合えば、そこに自から物事の「理」が通うのだ、できないことな
どあろうか、というのです。
「人の和」は「宇宙の理法」に通じるという信念を、太子は持っていたと
思われます。
「和」ということを、スポーツで考えてみると、グループで行うスポーツでは、チームワークが重要
です。つまり、チームの調和です。チームがまとまっていると、メンバー個人個人の能力以上の力が
出せます。メンバー各自が優秀でも、チームがばらばらでは、力は出せません。チームの呼吸が合っ
ていると、1+1=2ではなく、3にも5にもなります。呼吸が合っていないと、2どころか、0.
5にもなりません。つまり、
「和」が大切なのです。チームが「和」をもって団結していると、想像で
-18-
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2015.4.10
きないほどの潜在能力が発揮されます。奇跡的なほど、絶妙なプレーが出てきます。
(中略)
職場においても、
「和」が大事です。一つの目的に向かって、職場のみんなが心を合わせて考えると、
一人では思いもつかないような発想が、次々に湧き出てくるものです。何かの計画を実行するとき、
互いを信じて取り組んでいると、初めは不可能かと思えたような課題でも、信じられないほどうまく
解決できてしまうのです。調和は、集団を一体化し、単なる要素の総和を越えた、創造力を生み出す
のです。
(中略)
この性格は、人間だけではなく、日本の動物にも見られる特徴です。例えば、日本蜜蜂の群れの中に
西欧蜜蜂の一群を放すと、日本蜜蜂は平気で西欧蜜蜂と一緒に同じ蜜を集めて、共存共栄します。し
かし、西欧蜜蜂の一群の中に日本蜜蜂の一群を入れると、西欧蜜蜂は襲いかかって日本蜜蜂を全滅さ
せてしまいます。日本の風土は温暖・湿潤で花が多く、蜜を集める対象が豊かです。したがって、蜜
蜂は新来者とも共存共栄ができます。ヨーロッパの場合は花が少ないので、共存していたら、蜜が足
りなくなって冬が越せなくなってしまいます。日本では天敵が少なく、受容的です。こうした風土の
違いが、日本の蜜蜂の性格を温和にしているのでしょう。
このように、日本の自然は人間の性格に影響を与え、独自の民族性を育んできました。日本精神の特
徴は、
「和」の精神と言われるように、共存共栄・大調和の精神です。この精神は、今日の地球で求め
られているものです。地球は、人類にとってかけがえのない星であり、地球という限られた環境で様々
な人種・民族・国民が、一緒に暮らしていくためには、戦争や対立ではなく、共存共栄していかなけ
ればなりません。私たち日本人は、世界にもユニークな精神的特徴を発揮し、世界の平和と発展に貢
献したいものです。
(中略)
日本の歴史にはこのように「人を許し、人を生かす」例が多数見られます。それは日本人が、本来、
深い思いやりと優しさを持った国民であることを示すものと言えましょう。こうした国民性は、文化
や歴史の中に、様々な形で表われてきたものです。
例えば、節分の際に「鬼は外」と豆をまきますが、これは鬼やらいという行事です。たとえば、京都
の吉田神社の場合、鬼やらいの行事は、鬼をやっつけるのではなく、鬼を説得して本来の住み家に帰
ってもらうためのお祭りだといいます。そこには、シナの道教の「追儺(ついな)
」という悪魔を追い
払う儀式とも、西洋の悪魔祓いや魔女狩りとも根本的に異なる考え方が見られます。
(中略)
わが国では、極悪非道の人間までも、死ねばすべて救われるという寛容と慈悲の思想も生まれました。
死者はみな善人も悪人も仏と称して許されるのです。これは仏教というより、日本独自のもので、イ
ンド・シナ等の仏教には見られない考え方です。
人間の社会には争いはまだまだ無くなりそうもありません。自尊自衛のためには、戦わねばならない
時もあります。しかし、世界平和を実現するためには、裁きと殺し合いではなく、寛容と共存が必要
です。私たちは、
「人を許し、人を生かす」日本の国民性に目を向け、良い伝統を世界のために生かし
ましょう。
これは驚きでした。20 歳の頃から「自分探しの旅」に出て、40 年して初めて自分の本質に巡り合えた気さえしました。
私は、「険しさは苦手」です。物事は「穏やかに・・・」が私の信条なのです。色々な問題を解決する際に常に心にあ
ることは「穏やかに改善するには・・・」なのです。穏やかに解決するためには、時には厳しい姿勢で臨むことがありま
すが、その根底にあるのは常に「穏やかな解決」なのです。誤解を招くことが多いのですが・・・
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この運用管理マガジンは、愛知県は当社と同じ志を持つ岡崎信用金庫の協力を得て配信しています。その他の都道府県には(有)医療ソフト総合研究所が配信しています。ご質問な
どありましたら、当社にメールでお送りください。
医療機関・介護事業所-運用管理マガジン <全国版> 2015 年 4 月号
編集(有)医療ソフト総合研究所
2015.4.10
「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」
これは孔子の言葉です。「同じる」とは引用文の「単に仲間うちで仲良くやっていく事」です。そして「和す」とは、
「「和」の心をもって、お互いに話し合えば、そこに自から物事の「理」が通った状態」となります。「貴し」という考え方
をこれに加味すれば、君子とは、「数少ない頑固者」であり、小人は「世の中一般の多くの人」となります。
地域医療介護の連携体制を構築するには、「和」の精神で取り組むことが不可欠だと思うのです。関係者が自分た
ちだけが上手にやれる方法を模索するのではなく、「理」として「地域の高齢者とその家族、そして関係するスタッ
フ」を大切にすることと、それぞれの施設が適切なサービスを継続的に提供できる「安定経営の実現」に向けて、君
子として取り組むことだと思います。
「和をもって貴し」なのですから、このように考える人は極少数であることを腹に据えて、辛抱強く「地域のた
め、医療介護従事者のため」に自分の出来ることに人事を尽くすことです。その結果、育った君子が頑張ってく
れるようになれば、それが最高の幸せだと思うのです。
もしそうなったとしたら、
「日本が少子高齢化であったから、本当の君子を育てることが出来た」となるのです。
そして、職場は働きやすくなり、働き甲斐も実感することが出来ますし、その時の日本は高齢者が安心して暮ら
していける魅力ある社会になっていると思うのですが・・・・。
「これを実現するための基盤の構築」が私の責務だと勝手に思い込んで、コンサルタントをしたり、このマガジ
ンを書いたりしているのです。
どこまで実現できるかは分かりませんが、
人事を尽くし切る覚悟は出来ています。
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