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技術に優れる日本企業が
なぜビジネスで負けるのか
イノベーション・ケーススタディ(第2回)
2012年4月17日
A.T. カーニー株式会社
山本 直樹
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本講義のテーマ
経営とは何か
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経営とは
ビジネス
技術
研究開発
将来
?
R(リサーチ)
カンパニーB
カンパニーA
現在
事業領域
D(デベロップメント)
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先を読む
t
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FPD製造シェアの推移
100
Japan
90
80
70
60
50
Korea
40
Taiwan
30
20
10
USA
0
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
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携帯端末市場の変遷 → この原因は何か?
Others
Mitsubishi
Toshiba
NEC
Panasonic
23.7%
22.2%
4.1%
4.2%
4.8%
4.0%
2.4%
3.4%
5.6%
9.0%
Siemens
2.8%
Ericsson
10.5%
18.1%
Nokia
6.1%
4.2%
20.4%
Samsung
9.7%
1.0%
1.4%
2.0%
2.5%
7.8%
5.0%
11.4%
35.6%
26.5%
Motorola
22.0%
1996年
15.0%
14.6%
1999年
2002年
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6
6
端末市場における水平分業の進展
1G
2G
地域による棲み分け
3G
方式による棲み分け
KSF:
• キャリアとのコネクション
KSF:
• 同一方式上での商品の
によるスペックの先取り
• オペレータ密着型販売
差別化
(デザイン、価格、機能)
• メーカーによる
市場ドライブ
ユーザー
ユーザー
ユーザー
ユーザー
日本
キャリア
欧州
キャリア
北米
キャリア
PDC
キャリア
Panasonic
NEC
Mitsubishi
Hitachi
Nokia
Motorola
Siemens
Ericsson
Motorola
GSMユーザー
GSM
キャリア
Panasonic
NEC
Mitsubishi
Hitachi
Nokia
Motorola
Siemens
Ericsson
CDMA
ユーザー
CDMA
キャリア
Sumsumg
Motorola
Kyocera
事業レイヤーによる棲み分け
KSF:
• 各レイヤーにおけるリー
ディングポジションの確保
W-CDMAユーザー
WCDMA
キャリア
CDMA2000
ユーザー
CDMA
キャリア
商品企画/マーケティング
Nokia, Sony Ericsson, Samsung
EMS/ODM
プラットフォーム
BenQ, Flextrorics, ・・・
ベンダー
ソフトウェアベンダー
Nokia
Microsoft, Symbian, Nokia Motorola
Ericsson
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日本メーカーはどこでポジションを築くべきか?
事業モデル
KSF
必要な能力
ケース
商品企画・
マーケティング型
• ブランド
• 市場プレゼンス
• 商品レンジ
• SCM
• 商品企画力
• チャネルマネジメント
• 商品導入のスピード
• 広告宣伝の効率性
• Apple
• Sony Ericsson
• Nokia
• Samusung
商品設計・
製造型
• 規模の経済性
• 範囲の経済性
• スピード
• コスト
• ソフトウェア開発力
• 多種大量生産力
• キーデバイス調達力
• Compal
• Flextonics
• 優位なコアデバイス、
プラットフォーム技術
• デファクトの形成
• 開発力
• パートナリング力
• パテントマネジメント
• Ericsson Platform
• TI
• Qualcomm
• Motorola
• 優位な周辺デバイス
• コスト競争力
• パートナリング力
• 外販力
• ライセンシング
• Sharp
プラットフォーム
提要型
周辺デバイス
提供型
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議論
これから日本企業が直面する不連続な変化を
1つ選び、どの産業に、どのようなインパクトが
あるか議論しなさい
t
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3E
 EV
 Energy
 Environment
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自動車寡占時代の終焉
自動車業界に「新興勢力」が続々参入
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自動車産業の構造転換
EV(電気自動車)の世界では、大手自動車メーカーが築いた「垂直統合」的支配が崩れる可能性
ガソリン・
エンジン車
ハイブリッド車
(HV)
電気自動車
(EV)
プラグイン・ハイブリッド車
(PHEV)
エンジン
エンジン
モーター
エンジン
モーター
モーター
バッテリー
バッテリー
バッテリー
<三菱アイミーブなど>
<BYD F3DM>
<トヨタプリウスなど>
• 技術面での差別化余地大
– 日独が世界トップクラス
– モーターとバッテリー
追加
– バッテリー容量増加
– バッテリー容量さらに増加
– 外部電力を併用
– 外部電力のみ使用
• 部品点数はガソリン車の半分
• モーターは差別化難
• 「擦り合わせ」型生産システム
/垂直統合型
• バリューチェーン全体を完成車
メーカーが統合的に支配
企画
R&D
部品 完成車 販売・
生産 生産 アフター
• EV開発はハイブリッド・システムより容易との指摘
既存の大手自動車メーカはEV移行に慎重
• 新規参入の増加/バリュー
チェーンの分解
• 汎用化、低価格化
• 「Wintel」ポジションはバッテリ
ー?
企画
R&D
部品 完成車 販売・
生産 生産 アフター
出所: Diamond online(09/9/13), 「日本経済の勝ち方 太陽エネルギー革命」(村沢義久)、「グリーン・ニューディールで始まるインフラ大転換」(井熊均)
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新興勢力の登場(1/3): 中国BYD
急成長を遂げる中国の電池メーカー。エコカー市場に参入し、PHEVを世界で初めて商用化
 95年創業の中国電池メーカー
 リチウムイオン電池で世界上位に躍進。03年にエコカー市場
に参入
BYD Auto
比亚迪汽车
“BYD F3DM”
世界初の商用化PHEV
• 設立時は、従業員20人、資本金250万元(約3千万円強)
• 90年代後半に、世界有数の電池メーカーに急成長
– ニッケルカドミウム電池→リチウムイオン電池→ニッケル水素電池へと領域拡
大
– コア設備のみ自社開発、それ以外は中国の安い労働力を駆使する人海戦術で
、圧倒的な価格競争力をつけ、リチウムイオン電池市場で日本勢を猛追
– リチウムイオン電池では、世界シェア3位、携帯電話用は1位(09/1-3月)
• 03年に自動車事業に参入
• 07年は、売上高:約2,817億円、純利益:約212億円、グループ従業員12万人規
模に
 自動車でも世界でのプレゼンスを高めつつある
•
•
•
•
PHEVを世界に先駆けて発売(08年)
EVを、09年のデトロイト、上海の各モーターショーに出展披露
08/9月、ウォーレン・バフェットが同社に投資(新株10%を取得)
10/4月、日本の金型大手オギハラの工場(群馬県太田市)を買収
⇒中国製造業による、先進国の技術・ブランドの取り込みは加速中
出所 : BYD website, velocidadlimite.com, Diamond online (09/3/10), 「週刊エコノミスト」(09/2/24), Searchina (08/10/3), 日本経済新聞(10/3/27)
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新興勢力の登場(2/3): 米テスラ・モーターズ
Googleほかシリコンバレー起業家が出資。電池パックを武器にファブレスでスーパーEVを商用化し
人気沸騰
 03年創業の米国EVベンチャー
 出資者にはシリコンバレー起業家が名を連ねる
• ペイパル創業者のイーロン・ムスク(=Tesla Motors:会長兼CEO)
• グーグル共同創業者のラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン
• イーベイ共同創業者のジェフ・スコール
“Tesla Roadster”
1台1,000万円超:EV仕様のスーパーカー
 フェラーリ、ポルシェに匹敵する動力性能
• 静止状態から4秒で時速96㎞に到達
 EVとしての性能も上々
• 家庭用電源でのフル充電(3.5時間)で航続距離は390km, 燃費は7.4km/kWh
• 三菱「i MiEV」はフル充電(7~14時間)注で航続距離は160km, 燃費は
10km/kWh
 08年に商用化。現在までに500台以上を納車(2012年納車分まで予約済)
 ファブレス。車体生産は英ロータス社に委託
• ロータス社の「エリーゼ」をベースにしたエンジンなしの車体を輸入し、独自開発
のモーター、電池パック等を自社(CA州)で手作業で組み付け
 技術的優位は独自開発の電池パック
• 汎用リチウムイオン電池を、99直列・69並列(計6831本)のパックにして搭載
• 電池の制御などパック関連技術で20件以上の特許を取得し、安全性を謳う
注: 100V電源での充電で14時間、200V電源では7時間。3相200Vの急速充電装置では80%充電までに30分
出所:Tesla Motors website, 日経エコロジー(09/9月号)、「日本経済の勝ち方 太陽エネルギー革命」(村沢義久)
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新興勢力の登場(3/3): 米フィスカー
無名の自動車ベンチャーが、北米のトヨタ・GMの合弁工場(NUMMI)を買収?
米自動車ベンチャー(フィスカー)が
NUMMI買収に向け折衝スタート
Fisker Automotive
New United Motor Manufacturing Inc.
 トヨタとGMの北米における合弁工場
• 84年にトヨタがGMとの技術提携拠点、自動車製造ラ
インとして設立
• 日系自動車メーカーによるアメリカ進出、日米合弁とい
う形態の新しさで、当時話題に
• 現在、従業員4,700人。持株比率は、トヨタ50%, モー
ターズ・リクイディション・カンパニー(旧GM)50%
 09/8月、トヨタがNUMMIにおける
生産停止を発表
• 10/3月生産分を最後に生産発注を打ち切り
• 09/6月のGM経営破綻を受けて、トヨタ側の動きに自
動車関係者の注目が集まっていた折
出所: Diamond online (09/9/9), worldpress.com
 07/9月設立の米ベンチャー
 フィスカーCEOは元自動車デザイナー
• BMWZ8, アストンマーチンDB9, 同V8に携わる
• テスラの次期EV「モデルS」にも参加(08年に同社と訴
訟)
 PHEV:「カーマ(Karma)」を
2010年から販売予定
• 本体価格8万7,900ドル
 業界では疑念の声も
• 「作動する?」「量産でき
る?」「実態のある会社?」
 09/8月フィスカーがNUMMI買収に動き出す
• “確かに我々はNUMMIと交渉している”(同社広報)
 量産経験のないベンチャー企業が、世界
トップ(トヨタ・GM)が25年築き上げた生産
拠点を買収する時代に
• 「謎の会社だが、業界の構造転換期に直面する現在、
買収が実現してももはや不思議ではない」との業界の
見方
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GMがイーベイと新車販売
中古車メインだった米ネット販売市場において、イーベイがGMの新車販売を開始
イーベイがGMの新車販売をスタート(09/9月)
 イーベイは安売りで名を馳せたサイト
• もともと中古車と自動車部品は取扱い
• イーベイ総売上高27%を占める最大分野
 これまで、ネット販売される車の大半は
中古車
 今般、新車販売を大々的に打ち出した点
、GMとの提携に新しさ
• カリフォルニア州で試験的にスタート
• 今後全米に展開予定
 イーベイ上での新車購入も可能に
• 州内225店、約2万台のGM新車を照会可能
• 販売店の提示価格で即購入(Buy It Now)、販売店と
ネット上で交渉(Best Offer)などの機能備える
 日本でも、楽天,、Yahoo! (、ヤマダ電
機)で自動車販売が始まる日がやって来
る?
出所: gm.ebay.com, Wall Street Journal (09/8/11), internet.com (09/8/11)
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新GMのボードメンバー
新任7名のうち、会長含む3名がICT業界から
会長
new
社長 兼
CEO
■ 09/7月に
新経営陣発表
• 全13名うち
7名が新任
エドワード・ウィッテカー
前職
AT&T会長兼CEO
フリッツ・ヘンダーソン
(その後辞任。ウィッテカー氏がCEO兼務)
Edward E. Whitacre
取締役
new
パトリシア・ルッソ
アルカテル・ルーセントCEO
new
ロバート・クレブズ
米鉄道大手バーリントン・
ノーザン・サンタフェCEO
Patricia Russo
new
デーヴィッド・ボンダーマン
米ファンドTPG共同設立パートナー
new
ダニエル・エイカーソン
カーライル・グループ常務取
締役
new
キャロル・スティーヴンソン
new
スティーブン・ガースキー
ウェスタン・オンタリオ大経営大学院
学部長(以前ルーセント・カナダのCEO)
著名アナリスト
Carol Stephenson
米国が「次世代自動車にはICT必須」と考えている表れ
出所
: carview.co.jp (09/7/28), zimbio.com, Fortune, usfl.com(09/7/24), Richard Ivey School of Business website
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逆流する電気とマネー
「分散発電」時代には電力とマネーの流れが多様化する
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EVインフラ・ビジネスの立上り: クーロン・テクノロジーズ
充電スポットの設置・運営と登録ユーザへの電力・情報サービスの提供を担う
クーロンのEV充電インフラの仕組み
■ 07年設立のEV充電インフラ事
業ベンチャー
■ EV充電スポットの設置・運営・
サービス提供を手掛ける
• 09/7月時点で、米国6都市(サ
ンフランシスコ。シカゴ等)およ
び蘭アムステルダムで充電イ
ンフラ網を展開
充電スポット(Smartlet)
Webポータル(ChargePoint)
■ 格納されたコンセントか
らEVに給電
■ Google Maps活用のWebアプ
リ上で充電スポットの位置や利
用可能状況を検索可能
■ 無線通信モジュールを備
え、送受電力のメーター
機能、パーキングメータ
ー機能、認証・課金機能
を担う
Coulomb
NOS
(Network Operating System)
■ リチャードCEOはCisco出身
• 同社の4人の設立者全員が
Cisco, LucentといったIT業界
出身
ワイヤレス通信
登録ユーザが
専用ID(SmartCard)を
かざすと
利用可能に
充電
スポット
出所: Coulomb Technologies website
• 情報
• 認証
• 課金
電力需給
情報
充電
スポット
登録ユーザ
企業・自治体・大学が購入し設置
(利用料収入を按分)
充電
スポット
EVに充電
イ
ン
タ
ー
ネ
ッ
ト
充電
スポット
電力会社
電力供給
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太陽光発電
太陽光による発電システム。電力固定買取制度などで、家庭の投資回収は10年未満に縮まる
可能性も
太陽光発電システム
■ 家庭設置用パネルの発電能力は平均3.5kW
■ 標準導入費用は、新築185万円、既築225万円
■ 昼は「売電」
• 固定買取制度では、
買取単価48円/kWh
になる予定
• 図は「余剰」分売電
導入に伴う投資回収は10年程度
経産省による投資回収試算
– 新築住宅での標準的導入ケース
– 「余剰」電力を48円/kWhで買取
43
万円
20
万円
35
万円
185
万円
■ 夜は「買電」
• 家庭用蓄電池はまだ
実用レベルに至らず
家庭での1日の電力量の変化
電力量
大
装置導入 国の補助
費用
金・減税
太陽電池の発電量
電力会社への
売電量
朝
8
電力会社
からの
買電量
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 時
昼
自治体
補助等
電気代の
電力
節約分 売電収入
(10年分) (10年分)
13
万円
利益
■民主党方針では、投資回収はさらに短縮
小 家庭の消費電力
7
100
万円
夜
注 : 民主党地球温暖化対策本部事務総長:福山参院議員のコメント(09/7/27)
出所 : 京セラ Website, Newton (09/9月号)、経済産業省(09/7/24)
• 自民党は「余剰分」買取
• 民主党は「全量」買取(→回収期間は「5~7年」に)注
パネルメーカー、製造装置メーカー、ガラスなど部材メーカー、
住宅メーカー、設置を請け負う工務店にはさらなる追い風
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「分散発電」時代の幕開け
電力会社が家庭に電気を売るだけでなく、一般家庭も電気を売ったり、太陽光発電による電力をEV用
に充電できるようになる
「分散発電時代」の「電気」の流れ
<凡例>
従来からの電気の流れ
今後の電気の流れ
【発電源】
太陽光
発電パネル
太陽光
電気
風力
一般家庭
電気
電力会社
原子力
水力
電気
・・・
EV(電気自動車)
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「分散発電」時代には、電力とマネーの流れが多様化する
特に、「家庭⇒電力会社」へと電力が逆流することに伴い、「C2B」という従来稀なマネーの流れが登場
「分散発電時代」の「お金」の流れ
【新しいお金の流れ 2】
他の家庭や事業所に売電する場合
の送金・決済方法が必要となる
【新しいお金の流れ 1】
一般家庭が電気料金を請求されるだけで
なく、電力会社に電気を売ることができる
太陽光
発電パネル
他の家庭や
事業所
C2B
電気
円
【発電源】
円
太陽光
電気
風力
電気
一般家庭
スマートメーター
電力会社
円
蓄電池
原子力
水力
電気
・・・
給電スタンド
電気
円
EV(電気自動車)
電気
円
【新しいお金の流れ 3】
EVへの給電に際して、給電スタンド側で課金する方法、モバイル端
末やETCで課金する方法など、さまざまな決済方法が登場する
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<参考>有力IT企業は、既に積極的にエコ関連投資(1)を行っている
有力CVC(事業会社系VC)によるエコ関連投資の例
電気自動車・ITS
Google
.org
Intel
Capital
GE Energy
Financial
services(2)
Siemens
Venture
Capital
IBM
• Brookings研究所他7研究機
関(電気自動車)
• テスラモーター(電気自動車、
創業者の個人投資)
新エネルギー
Smart Grid
• Makani Power(風力)
• e-solar他2社(太陽光)
• Alta Rock他2社(地熱)
• GE(提携のみ)
(スマートメーター)
• SSN(スマートメーター)
• Trony Solar (太陽光発電)
• Spectra Wat, Sulfurcell,
Voltaix (風力発電)
• Grid Net, Cpower,
Powervation, 他2社
• A123systems
(自動車用リチウムイオン
電池)
• Noble Environmental
Power(風力発電技術)
• TPI(風力発電関連技術)
• Grid Net(情報処理ソフト)
• Google(提携のみ)
(スマートメーター)
• Beijing Newcom (中国交通
情報マネジメント)
• ISE Corporation(輸送機械
hybrid駆動system)
• Sensor Dynamics
(自動車センサー)
• Maxxtec(バイオマスエネル
ギー・廃熱の利用)
• Trans Parent
(コジェレーションシステム)
-
• カリフォルニア大学研究所
(自動車用リチウムイオン
電池)
Motorola
Ventures
• A123systems(自動車用リチ
ウムイオン電池)
• MobilEye
(ITSモニタリングシステム)
Qualcomm
Ventures
• A123systems(自動車用リチ
ウムイオン電池)
• Mampy India(インド向け
地図・ナビシステム)
-
-
-
マイクロペイメント
その他
-
• Wood Hole Research
Center他2研究機関(エコシ
ステム・気象変動)
• Clea2Pay(電子決済技術)
• First gate HD(ネット決済
技術)
• Telecom net(同上)
-
-
-
• BPLglobal(情報処理)
• Smart Synch(スマートメー
ター)
• Powerit Solutions(インテリ
ジェントエネルギーマネジ
メント)
-
• inge watertechnologies
(水の濾過技術)
• Zolo Technologies(有毒ガス
減尐のセンサー・モニタリン
グシステム)
• 南欧電力会社(提携のみ)
(スマートメーター)
• 投資枠(5,000億/5年)
-
-
-
• Inside (非接触決済技術、
NFC用半導体)
• Vivotec(NFC電子決済)
• Mfoundry(モバイル金融サー
ビスプラットフォーム)
-
• Inside (非接触決済技術、
NFC用半導体)
• Obopay(携帯電話による電
子決済技術)
• Agion (銀イオンを活用した
エコ殺菌剤)
-
(1) 投資目的が、外形的に電気自動車・ITS、新エネルギー、Smart Grid、マイクロペイメントに入るものをエコ投資として記載している。また一部研究機関への基金や提携についても含む
(2) GE本体によるマイノリティ出資も加えてある
出所: 各社HP, Factiva
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エネルギー業界の将来像 ~通信業界のアナロジーから
の推察
現在、「分散発電」時代の幕開け。エネルギーの双方向移動が始まるに伴い、エネルギー業界はICT
との融合をさらに深めていく可能性
集中
分散
再集中
(統合的分散?)
現在
集中
通信
・
コンピュータ
システム
■ メインフレーム
• 全ての処理をメインフレー
ム上で集約的に行なう
■ クライアント・サーバ
• 安価なPCの登場
• クライアント側に画面表示と
処理機能を実装
■ Webコンピューティング ~ク
ラウド・コンピューティング
• Webブラウザの利用により、
処理は再びサーバ側へ
• ブラウザさえあれば多様な
端末からアクセス可能
• サーバの統合、データセンタ
ーの統合が進む
分散
現在
集中
エネルギー
■ 電力会社が発電
• 従前の世界
• 電力会社が発電した電力を
需要家が買う
• 電気の流れは一方向
■ 家庭も発電
• 「分散発電」時代の幕開け
• 家庭から電力会社に売電
• 発電・消費・売電・買電を、
家庭で選択的に行なう
• 電気の流れは双方向に
将来
■ 分散発電・消費を全体視点か
ら統合的に制御?
• 電力会社などが、社会全体
での発電(=電力会社・需
要家)と消費を、全体最適
の観点からコントロール?
• ET(エネルギー技術)とICT
のさらなる融合的進化
分散
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融合
覇者
通信 + IT
=
Cisco, Apple
車 + 電気
=
?
電力 + IT
=
?
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本講義のテーマ
経営とは何か
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経営とは
ビジネス
技術
研究開発
将来
?
R(リサーチ)
カンパニーB
カンパニーA
現在
事業領域
D(デベロップメント)
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宿題
下記企業の「クラウド」に対する取り組みを議
論しなさい
Google, IBM, SAP, Salesforce,
Microsoft, Amazon,
・どんな企業か概要を説明し(事実)
・クラウドに対しどのように取り組んでいるか纏め(事実)
・なぜその様な取り組みをしているのか、その理由を考察せよ(推論)
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クラウド時代の省エネ策の全体像
電力使用の最適化レベルは5段階に分けられる。下に行くほど、全体最適化が必要
最適化レベル
概要
導入例
• 省電力半導体の採用で省エネ化
ARM
• 組み込みからITへの転用で
省エネARMサーバを開発中
ハード
• 省電力ICT機器の採用で省エネ化
Nokia-Siemens
• 夜間の省エネ基地局制御により
不要な電波を最適化
DC
• DCの熱効率(空調、排熱構造)の
改善で省エネ化
Google, Amazon, MS, Yahoo
• コンテナ型DCの導入により
エアコンを使わない
複数DC
• DC間で処理を並列化することで業
務をスリム化し、省エネ化
Google
• 夜間電力を購入できる
グローバルDCのみでサービス運営
顧客も含めた
全体系
• 顧客サービスと使用電力を比較、
最適化することで省エネを実現
(これからの省エネ分野)
デバイス
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省エネアプローチ:①デバイスレベル
組み込み用途で省エネ実績のあるARMアーキテクチャをサーバに転用する動きが活発化
ARMプロセッサ搭載サーバが稼働実験
Amaz
on
• Amazonクラウドの上級エンジニア
James Hamilton氏は昨年12月にARM
サーバを支持
• “高価で高性能なサーバを仮想化する
より、安価で低性能なサーバをスケー
ルアウトしたほうが、価格性能比でも熱
性能比でも優れている”
Googl
e
• ARMサーバの開発のために、Appleの
「Apple A4」プロセッサ開発企業
「Agnilux」を買収
MS
• マイクロソフトがARMサーバの開発者
を採用
自社用WebサイトにARMのWebサーバを稼働中。
実用化試験として既に9カ月運用
注: ARMアーキテクチャは消費電力を抑える特徴を持ち、組み込み型32ビットRISC CPUのおよそ75%を占める。PDA・携帯電話・メディアプレーヤー・携帯型ゲーム・電卓などの携帯機器
から、ハードディスク・ルータなどのPC周辺機器まで、あらゆる電子機器に使用される。携帯向け半導体で首位のTIのOMAPシリーズ、NVIDIAのTegra、QualcommのSnapdragon、
Freescaleのi.MXシリーズなど携帯ではほぼデファクトのアーキテクチャ
出所:各社IR資料
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省エネアプローチ:②ハードレベル
Googleはサーバ内製化により非効率な大型UPSの省エネ化を図る
Googleの内製化サーバ
DCから大規模な集中型UPSを廃止し、
サーバに小型電池を分散して組み込む
省エネ
の
理由
• UPSコストがサーバの数に
直接比例するため、容量の無駄がない
• 従来型の大規模な集中型UPS:
→92~95%の効率
実際の
効率性
• Googleのサーバ内蔵型UPS:
→99.9%以上の効率
• ベルギーにあるグーグルの最新データ
センタは、PUE1.1を達成しつつあり、ほ
ぼ限界に到達
12Vの電源を備える
出所:各社IR資料
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(参考)サーバ内製化の動き
Google/Facebookはサーバ内製で差別化を図っている。今後サーバ内製化で差別化を図るDC事業
者が増える可能性がありそう
HP/Dell
Google

概念設計
(例)冷却の必要性
そのものを0から見直し
仕様設計


実装設計


Facebook
Google/Facebook
は概念レベルで
DC、サーバ設計
の考え方を変える
ことで差別化を
図っている

(例)Open Compute
Projectを立ち上げ
(HP/Dell)
Facebookの要件に
基づいてベンダが設計
調達

(ODM)
製造
(ODM)
Source: A.T. Kearney; Press releases; company websites
(ODM)
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省エネアプローチ:②ハードレベル
Nokia-Siemensは夜間の省エネ基地局制御により不要な電波を最適化
基地局の省エネ
 基地局の消費電力
• グローバル30億人の
携帯利用者のために、
基地局の消費電力は
年間11兆円
• 二酸化炭素排出量で
年間9,000万トン
 Nokia Siemens Networks
• 携帯電話網の省エネ
ソリューションで基地
局の消費電力を最大
70%削減することを
提案
出所:各社IR資料
NSNの省エネアプローチ
駆動電圧
の低減
高効率アンプの採用により、駆動電圧を低減
• GSM方式:800W→650W
• WCDMA方式:500W→300W
動作温度
の改善
• 室温を25℃→40℃で作動可能な装置を開発
• →基地局の冷却に必要なエネルギーを最大
30%減らせる
動作
モードの
最適化
無線アクセス環境を最適化
• 昼間よりも通信量の尐ない夜間に一部の基地
局を停止させたり,省電力モードに移行させる
ソフトウェアを開発
→環境負荷の軽減だけでなく、通信事業者にとっ
て運用コストの大幅な節約が可能
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省エネアプローチ:③DCレベル
コンテナ型DCを採用することでエアコンを廃止。空調の電力を大幅に削減
コンテナDC概要
建物
コンテナ
 建築を
モジュール化
• 大型トレーラー
で運搬可能
• 拡張性が高い
出典:各社HP, IR資料
コストメリット
構造
 サーバ・ストレージ  外気でサーバを冷
却
機器・冷却機器を
高密度に集積
• サーバを横から
• コンテナにサー
冷やし、温度上
バ、ストレージ、
昇とともにサー
通信機器、空調
バラックを吹き抜
設備が組み込ま
けて、上部設置
れている
のファンに吸い
上げる
• サーバは数百~
数千台格納
*PUE:DC全体の消費電力÷IT機器の消費電力
電力
コスト
 冷却効率に優れているため
電力コストダウン
• 冷水・外気による冷却が
可能
⇒PUE1.12*未満(従来は
2.3~2.5)
設備
コスト
 設置方法が簡便
• 積み上げ式の設置方法な
ので、従来よりも効率的に
敷地を使用可能
⇒15m2で280台(従来は
120m2が必要)
設備
スピー
ド
 建設時間の短縮が可能
• コンテナのインフラを
そのまま使用可能
⇒1~2ヶ月で建設可能(従
来は1~3年)
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省エネアプローチ:③DCレベル
Yahooは養鶏場の建築構造に学んだDCを構築
コンセプトの転換
 Yahooは養鶏場に学ぶ
– 外気を対流させ、屋上の換気塔から放出する
フリークーリング設計。冷却設備を持たない
– “Yahoo! Chicken Coop デザインにより、電力に消
費されていたコストに関して、1 セントも使わずに済
む。 電力使用を大幅に減らすことは、環境に優しい
だけではなく、私たちにとって重要な Yahoo! の競争
力を高めることになる”
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省エネアプローチ:④複数DCレベル
複数のDCを並列に管理することで、省エネの運営業務ポリシー(1)~(3)を採用可能としている
Googleのクラウド技術
 並列型データセンタ管理技術
• クラスタ運用のフレームワーク
MapReduceでグローバルの
分散したデータセンタ間で大規
模並列処理を実現
• MapReduceを採用することに
よってGoogleのDCで発生する
エラーの大半はソフトウェアに
よるもの
• 耐障害性対策はハードウェア
ではなく、ソフトウェアに重点を
置く
省エネ仕様での
クラウド運営/業務ポリシー
 グローバルの分散したデータセンタ間で適
用している運営/業務ポリシー
• (1)エアコンをやめ、高温になったサーバ
は電源を切る
• (2)グローバル夜間電力購入
グローバルのデータセンタのうち、夜間
電力を購入できる時間帯のデータセンタ
でサービスを運営
• (3)都度メンテナンスの廃止
ハードウェアが故障しても定期メンテナン
スまで放置する。都度メンテナンスは効
率が悪く、環境負荷が大きい
→まるで故障時にサーバを切り替えるよう
にデータセンタを切り替える運営/業務ポ
リシー
出所:各社IR資料
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省エネアプローチ:⑤顧客も含めた全体系
省エネに向けて、営業と技術部門、顧客と自社といった、組織を股がる課題が山積み。
全体系を最適化するのは経営の仕事
全体系最適化に向けた課題
顧客も含めた省エネの全体系
顧客
省エネICT
仕様提案
 技術の適用範囲の精査
サービス要件
営業と
技術の間
営業
• 変更に伴う省エネ効果の定量化
• 顧客の棚卸しにより、適用可能業
務を同定
• 提案先のスコーピング
業務/運営ポリシー
省エネ技術
• 省エネ技術の適用に伴う業務、
運営ポリシーの変更範囲
技術
 サービス要件と提案の見直し
自社
省エネのためには営業と技術部門、顧客と
自社といった組織を股がるプロセスを再定
義すること必要
自社と
顧客の間
• サービス要件の根拠の再理解
• 業務、運営ポリシーの変更による
顧客への影響を分析
• 省エネ効果との比較提案
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次回への宿題
これからコミュニケーション産業は
何を研究すべきなのか?
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次回への宿題
あなたが社長だったら何を研究せよと言いますか?
ビジネス
技術
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