複数ホストへの疎通性監視の可視化と 監視における負荷軽減アルゴリズム

複数ホストへの疎通性監視の可視化と
監視における負荷軽減アルゴリズム
login name:nami / KG:haccar / advisor:kei さん
1. 背 景
昨今ではインターネット上での電子取引な
どが活発になり,ネットワークインフラの耐障
害性はますます重要となっている.そのため,ネ
ットワークオペレーターはネットワークの状態
を常時監視し,障害発生時には瞬時に対応する
ことを求められている.
2.問 題
ネットワークを監視する際には,多数のホス
トとの疎通性を監視し続けなければならない場
合がある. traceroute を行うことでどのルータ
で通信が止まっているのか,どこで遅延が発生
しているのかを知ることが出来る.しかし,ター
ミナル上で逐一読むのでは手間がかかる.多数
のホストとの接続を経路図によって可視化し,
遅延や異常が発生した際にはどのルータに問題
があるのか瞬時に分かる必要がある.
また,非常に多くのホストに対する疎通性を
監視する場合,途中までは同じ経路を通る確率
が高く,クライアントから近いルータには負荷
がかかってしまう.疎通性の確認だけであれば,
クライアント近くのルータに対してホスト数
と同じ数のパケットを送って確認する必要はな
いため,これをアルゴリズムによって解消する.
2.関 連 研 究
Whatsup Visual Traceroute
Windows 向けのソフトであり,複数の接続先
を指定し,接続経路を可視化することが出来る.
また,別画面で遅延の状態を折れ線グラフで表
示できる.
このソフトの問題点としては,接続している
様子を見ることを目的としているため, 継続的
な監視に必要な経路図の自動更新といった機能
がないことである.また,Linux への対応も必要
であると考える.これらの機能が全て整ったも
のを作成することで,アルゴリズムによる監視
をより効果的に使用できる.
3.提 案 手 法
本研究では負荷軽減アルゴリズムと通
信疎通性監視のための可視化ツールを提案する.
本手法により, パケット送信時の負荷の軽減と
異常発生の早期発見,効率的なネットワーク監
視が可能となる.
3.1 負 荷 軽 減 ア ル ゴ リ ズ ム の 手 法
本研究ではまず負荷軽減アルゴリズムによ
る監視方法の提案と実装を行う.クライアント
近くのルータから各ホストへ分岐する地点を推
定し,分岐点以降にパケットを送るように TTL
値を設定する.これにより同じルータに余分な
traceroute を行うことがなくなる.
従来の traceroute の仕組みでは,まずパケッ
トのヘッダの TTL 値を 1 に指定し,ホストへ向
けて送信する.TTL 値はルータを通る度に 1 減
少するため,このパケットの TTL 値は最初に通
るルータで 0 になる.ルータは TTL 値が 0 にな
ると「ICMP Time Exceeded」というメッセー
ジをクライアントに送信する.クライアントは
このメッセージを受け取ることで送信元ルータ
の名前と IP アドレスを取得する.次のパケット
では TTL 値を 2 に指定し,1 つ先のルータの名
前と IP アドレスを取得する.TTL 値を 1 ずつ増
やしていくことで,ホストまでの経路にある各
ルータが判明するようになっている.
この仕組みを元に,まず複数ホストの指定を
行うプログラムを実装する.次に,負荷軽減アル
ゴリズムを加える.幾つかのホストに同時に接
続する中で,共通する経路とホストごとに分か
れる経路を判別し,分岐点を割り出す.残り全て
の接続において 1 つ目のパケットの TTL 値を
分岐点に合わせて設定し,分岐点の IP アドレス
が返ってきた場合にはそのまま TTL 値を分岐
点の値から 1 ずつ増やしていく.分岐点とは違
う IP アドレスが返ってきた場合には違う経路
を通っているとし,TTL 値を 1 から順に設定し
てパケットを送り直す.
経路を特定した後は,継続監視のため各ホス
1
トの destination に向けて ping を打ち続ける.
分岐点を通る経路において全体的な遅延が発生
した場合,分岐点からクライアント側のルータ
に問題があると推測し,検証用の経路で
traceroute を行う.
分岐点を通らない経路で遅延が発生した場合
には,その経路について traceroute を行う.
3.2 監 視 ツ ー ル の 作 成
また,このアルゴリズムを効果的に使用する
ため,疎通性監視ツールを作成する.複数のホス
トを一括して指定出来,経路の可視化と自動更
新により迅速で正確な異常の検出を行える.
(図 1)のように,監視ツールでは入力した複数
の接続の経路を同時に表示し,選択した経路の
ルータ名と IP アドレスを表示する.遅延を発見
すると自動更新し,ルータのアイコンの色とア
ラートで通知する.これにより,自身が管理する
ネットワークのどこに問題があるのかを瞬時に
判別することが可能となる.
(図 1)可視化ツールの表示例
降は分岐点に向けた TTL 値を設定したパケッ
トを送信するアルゴリズムを提案した.これに
よってルータの負荷を軽減するだけでなく,行
き先が同じであれば従来より効率の良いネット
ワーク監視が可能となる.
4.評 価 方 法
本研究ではパケット送信時の負荷の軽減と
異常発生の早期発見,効率的なネットワーク監
視を実現するために,負荷軽減アルゴリズムと
監視ツールを提案した.
また,本研究が提案する手法を評価するため,
従来の traceroute との比較を行う.
アルゴリズムの評価は,従来の traceroute と
今回のアルゴリズムで多数のホストに接続し,
「クライアントから近いルータにかかる負荷」
と「分岐点を設定してからの traceroute にかか
る時間」を計測し,比較する.
監視ツールの評価は,可視化による遅延等の
異常発生地点の発見を「迅速性」
「正確性」とい
う観点から検証する.
本研究によりパケット送信時の負荷を軽減
すること,異常発生を早期に発見すること,効率
的なネットワーク監視を行うことが可能とな
る.
5.ま と め
複数のホストとの通信疎通性を監視するた
め,traceroute の複数の接続を一括して経路図
に表示し,自動更新を用いた継続監視の可視化
を行うツールを設計した.
また,多数のパケット送信時にクライアント
から近いルータの負荷を軽減するため,幾つか
のホストとの接続を元に分岐箇所を設定し,以
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