浄化工事現場レポートⅠ:埼玉県クリーニング工場跡地 “化学酸化・バイオレメディエーションによる地下水汚染の浄化” <工事概要> ●規模:273m2 ●汚染原因: ドライクリーニング機付近で溶剤として使用していたテトラクロロエチレン の漏洩等により土壌が汚染され、さらに、汚染された土壌が地下水汚染を引き 起こしていると推察された。 ●汚染物質:テトラクロロエチレン及びその分解生成物(トリクロロエチレン、 シス-1,2-ジクロロエチレン、1,1-ジクロロエチレン)による土壌及び地下水汚染 土壌/地下水 項目 土壌汚染 テトラクロロエチレン 地下水汚染(低濃 度) テトラクロロエチレン テトラクロロエチレン トリクロロエチレン 地下水汚染(高濃 度) シス-1,2-ジクロロエチ レン 1,1-ジクロロエチレン 濃度 土壌溶出量 基準 0.2 mg/L 0.053 地下水濃度 mg/L 地下水濃度 4.9 mg/L 地下水濃度 0.98 mg/L 地下水濃度 1.8 mg/L 地下水濃度 0.006 mg/L 0.01 mg/L 0.01 mg/L 0.01 mg/L 0.03 mg/L 0.04 mg/L 0.1 mg/L ●工期:2014 年 6 月~2014 年 11 月 工期内訳 ・2014 年 6 月~7 月中旬(1.5 ヶ月間):浄化工事期間 ・2014 円 7 月中旬~11 月(4.5 ヶ月間):モニタリング期間 ●浄化工法: ・原位置化学酸化(土壌) http://is-solution.com/technology/oxidation.html ・バイオレメディエーション(地下水) http://is-solution.com/technology/bioremediation.html ・原位置化学酸化とバイオレメディエーションのハイブリッド工法 対策の流れ ①調査 VOCs による土壌汚染と地下水汚染を確認 ②浄化工法の検討・施工計画 土壌汚染→化学酸化剤による浄化 地下水汚染→バイオレメディエーションによる浄化 ③土壌汚染浄化 ④簡易地下水調査 化学酸化剤(フェントン 反応剤)による浄化 地下水汚染浄化の効率化を目的 ※地下水の高濃度汚染判明 浄化完了 浄化工法の 再検討 ⑥地下水汚染浄化 ⑤地下水汚染浄化 【高濃度汚染】 【低濃度汚染】 化学酸化とバイオレメディエーション のハイブリッド工法 バイオレメディエーションによる浄化 ⑦地下水モニタリング・浄化完了 土地の引き渡し 実施内容 ①調査 調査の結果、以下の表のとおり、テトラクロロエチレンによる土壌及び地下水 汚染が確認されました。 表層部分の土壌汚染が、下層部分の地下水に拡散し地下水汚染を引き起こし ていると推察されました。 表 土壌/地下水 項目 土壌汚染 テトラクロロエチレン 地下水汚染 テトラクロロエチレン 汚染状況 濃度 土壌溶出量 面積 0.2 mg/L 6m×6m= (基準:0.01 mg/L) 36m2 0.053 mg/L 地下水濃度 (基準:0.01 mg/L) 10m×10m= 100m2 深度 対策数量 地表面~-2m 72m3 2m~10m 800m3 調査に使用したボーリングマシン (ジオプローブ) 礫・砂層 汚染部分 土壌汚染と地下水汚染の両方 に対応する必要がある 滞水層 難透水(粘土)層 土壌及び地下水の汚染状況のイメージ図 ②浄化工法の検討・施工計画(土壌汚染) 調査結果により得られた汚染の範囲、深度、濃度から最適な浄化工 法を検討・選択しました。 バックホウによる化学酸化剤の 土壌汚染浄化 混合撹拌 バックホウによる混合撹拌を選択した理由 表層の土壌汚染が原因で地下水汚染が引き起こされ るため、土壌汚染を先行して浄化する必要がある。 ↓ 対象深度(2m)を撹拌可能なバックホウを施工機 械として選択した。 施工機械:バックホウ 化学酸化剤を浄化薬剤として選択した理由 表層の土壌汚染が原因で地下水汚染が引き起こされるため、土壌汚染浄化を先行する。 ↓ VOCs を速やかに分解することができるため、化学酸化剤(フェントン反応剤)を選択した。 VOCs は、フェントン反応剤と接触後、水と二酸化炭素に分解される。 http://is-solution.com/technology/oxidation.html 【フェントン反応剤 】 + 過酸化水素 H2 O 2 + 鉄(触媒) Fe2+ + VOCs 水 H2 O フェントン反応剤による VOCs の分解 二酸化炭素 CO2 ②浄化工法の検討・施工計画(地下水汚染) ボーリングマシンを用いた 地下水汚染浄化 バイオレメディエーション促進剤の 注入 バイオレメディエーションによる浄化を選択した理由 1) テトラクロロエチレン濃度が基準の約5倍と比較的低濃度。 2) 化学酸化剤の注入よりも、薬剤量・注入期間を短縮することができ、施工費を抑 えることができる。 バイオレメディエーションによる浄化計画 1) 土壌・地下水中に存在する微生物の働きを活性化させる薬剤を注入。 2) 薬剤注入後、汚染濃度は緩やかに減少していくため、養生期間を設け定期的にモニタリ ングを実施する必要がある。 3) バイオレメディエーションによるテトラクロロエチレンの分解メカニズムのイメージ を以下の図に示します。 http://is-solution.com/technology/bioremediation.html 薬剤の微生物による分解 薬剤 分解生成物 薬剤の分解により、 水素生成 薬剤の分解生成物自体も 栄養となる バイオレメディエーションによる分解メカニズム ②浄化工法の検討・施工計画 (簡易地下水調査) 実際に汚染が広がっている範囲を把握し、 地下水調査 バイオレメディエーションを効率的に実施 ●既存の調査結果のみでは、地下水の汚染状況が不明確。 (既存の調査は、10m×10m の範囲で 1 地点のみ) 調査方法 ●土壌浄化後、地下水浄化のために使用するボーリングマシンを用いる。 ●採取した地下水の分析は、現地測定による簡易分析とした。 ●現地測定の利点は、 1) 地下水を現地で分析することができる。 2) 分析結果を速やかに得られるため、結果を直ちに工法にフィードバックすること ができる。 現地測定による簡易分析状況 ③土壌汚染の浄化 ポンプにより化学酸化剤を散布しつつ バックホウで撹拌し、汚染土壌と薬剤を接触させる 薬剤散布 フェントン反応剤 P 対策深度 施工イメージ図 施工中 施工中 施工後の土壌を採取・分析し、基準適合を確認 汚染土壌の浄化完了 ④簡易地下水調査 得られた結果 比較的低濃度に地下水汚染が広がっている範囲、深度の把握 低濃度汚染として、バイオレメディエーションによる浄化 高濃度で局所的に汚染されている範囲が新たに判明 高濃度地下水汚染 対策範囲 B-1 既存調査地点 ←現場図面 ・ 既存調査地点と新たに判明した 高濃度地下水汚染範囲。 ・ 既存調査地点は、10m×10m の 対策範囲に 1 地点のみ。 ・ 高濃度汚染は、既存調査地点と全 く異なる場所に存在 高濃度地下水汚染の状況 ● 基準(0.01mg/L)の約 500 倍の高濃度 ● 平面範囲は 2m×3m で、深 度 5m 程度の局所的な汚染 計画していた工法では浄化不可能と判断し、 工法を再検討 ④簡易地下水調査(工法再検討) 高濃度汚染のポイント ●高濃度で、化学酸化・バイオレ ●平面範囲は局所的だが、 メディエーションそれぞれの単 深さ 5m までの汚染があるため、 用では浄化できない。 バックホウでは施工できない。 化学酸化とバイオレメディ 深層部の土壌を撹拌す エーションを複合したハイ ることができる柱状改 ブリッド工法の採用 良機を施工機械として ※化学酸化により汚染濃度を減少さ せた後、バイオレメディエーション により基準適合させる。 採用 柱状改良機を用いたハイブリッド工法による浄化 柱状改良機による施工イメージ 柱状改良機施工イメージ図 先端についている撹拌翼 から薬剤を吐出するた め、深層部の土壌と薬剤 を撹拌することができる 柱状改良機 ⑤地下水汚染の浄化【低濃度汚染】 鉄製の注入管をボーリングマシンで打ち込み、 ポンプを用いて所定の深度に薬剤を注入、浸透させる 注入状況 注入状況 薬剤注入プラント(調整タンク、送液ポンプ) 注入後、地下水を 4.5 ヶ月間モニタリング 浄化完了 ⑥地下水汚染の浄化【高濃度汚染】 柱状改良機を用いたハイブリッド工法 第一段階:化学酸化剤(フェントン反応剤)の撹拌 (汚染濃度をバイオレメディエーション可能まで減少させる) 第二段階:バイオレメディエーション促進剤の撹拌 (バイオレメディエーションにより基準適合させる) 施工中 施工中 施工中 攪拌後、地下水を 4.5 ヶ月間モニタリング 浄化完了 ⑦地下水モニタリング【低濃度汚染】 バイオレメディエーションにより PCE が減少、分解生 成物の濃度が上昇するが※1、基準以下で推移 バイオレメディエーションによ り PCE の減少 PCE 減少に伴い、c-1,2-DCE が増 加するが、基準以下の濃度で推移 地下水VOCs濃度 (mg/L) 1.000 PCE TCE c‐1,2‐DCE 0.100 1,1‐DCE PCE 基準 TCE 基準 0.010 c‐1,2‐DCE 基準 1,1‐DCE 基準 0.001 0 20 40 60 80 施工後経過日数(日) 100 120 PCE:テトラクロロエチレン TCE:トリクロロエチレン c-1,2-DCE:シス-1,2-ジクロロエチレン 1,1-DCE:1,1-ジクロロエチレン ※1 バイオレメディエーションでは、PCE を以下の順番で分解していく PCE→TCE→DCE→塩化ビニルモノマー→エチレン そのため、PCE の濃度減少に伴い、DCE などの分解生成物の濃度が上昇する ⑦地下水モニタリング【高濃度汚染】 化学酸化により VOCs 濃度が急激に減少し、その後、バイオレメディエーシ ョンにより PCE 及び分解生成物を基準適合まで減少 地下水VOCs濃度 (mg/L) 10.000 PCE 1.000 TCE c‐1,2‐DCE 0.100 1,1‐DCE PCE 基準 0.010 TCE 基準 c‐1,2‐DCE 基準 0.001 1,1‐DCE 基準 0 20 40 60 80 100 施工後経過日数(日) 解説 10.000 地下水VOCs濃度 (mg/L) 化学酸化による 急激な濃度減少 バイオレメディエーションによる汚 染物質の分解 PCE 1.000 TCE c‐1,2‐DCE 0.100 1,1‐DCE PCE 基準 0.010 TCE 基準 c‐1,2‐DCE 基準 0.001 1,1‐DCE 基準 0 20 40 60 施工後経過日数(日) 80 100 ●現場担当者の声(小松さん・北原さん) クリーニング工場の跡地に多いテトラクロロエチレン汚染(VOCs の一種、パーク、 パークレンとも呼ばれる)は、地下水汚染を伴っていること、深層部まで汚染され ていることが多く、弊社が得意とする原位置浄化が向いています。浄化費用は掘削 除去等よりも非常に安価にでき、揚水対策のように、いつまでも浄化が終わらない、 ということがありません。ぜひ、パーク汚染は弊社にお任せください! 小松大祐 浄化工事では、既存の調査結果のみではすべての汚染状況を把握することが難しい 場面もあります。既存の調査結果のみに頼らず、現場でデータを取りながら詳細な 汚染状況を把握し、浄化を進めます。 北原 亘
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