M科 森重功一研究室 - 電気通信大学 学友会 群青編集委員会

森重研究室
M
知能機械工学科
プロフィール
経歴
取得学位
博士(工学) (
生産システム
専門分野
98
ボールエンドミル加工の高機能化
生産作業自動化のための産業用ロボットの知能化
工作機械の知能化
多軸・複合加工用CAMソフトウェアの開発
現在の研究課題
年 電気通信大学)
年 電気通信大学 電気通信学部 助手
年 電気通信大学 電気通信学部 講師
年 電気通信大学 電気通信学部 助教授
年 電気通信大学 電気通信学部 准教授
機械制御工学専攻 博士後期課程 修了
電気通信学研究科
機械制御工学専攻 博士前期課程 修了
電気通信学研究科
年 電気通信大学 電気通信学部 機械制御工学科 卒業
年 電気通信大学
年 電気通信大学
95 93
98
07 03 00 98
こ う い ち
森重 功一 先生
も り し げ
90
M 知能機械工学科
んですね。だから、私 は 昔 か ら も の づ
たんですが、機械加工 も す る 人 だ っ た
す。私の親は製造業で 生 計 を 立 て て い
私の実家は、横浜の 戸 塚 と い う 所 で
しやりたいな」と思って、修士に進み
勉強の目的が分かってきたからもう少
分かったんですね。その時に「やっと
で大学で勉強してきたことが使えると
の先生の研究室に入ったんです。そこ
ね。何となく雰囲気で、生産システム
次の転機は大学の研究室配属です
例えば工具と機材がぶつかったりする
ソ フ ト ウ ェ ア の 研 究 を し て い ま し た。
いうことで、工作機械に加工をさせる
た。やはりそういったものが必要だと
ウェアというのは全然ありませんでし
り ま し た が、 そ れ を 制 御 す る ソ フ ト
でした。当時から加工をする装置はあ
めた頃は、5軸加工はまだ珍しい加工
――先生のプロフィールを教えて
く り に 興 味 が あ り ま し た。 そ れ で 昔、
ました。
ください。
晴海で宇宙博というロ ケ ッ ト な ど を た
の大学に入って、将来 ど う し よ う か と
らなければと思いまし た 。 そ れ で 理 系
いました。その時に、 ま ず 科 学 者 に な
「こういうのを将来やりたいな」と思
よ。 親 が そ こ に 連 れ て 行 っ て く れ て 、
会があり、博士課程に行きたいなと思
こで研究のプロと一緒に仕事をする機
強する機会を与えてくれたんです。そ
理化学研究所にある加工の研究室で勉
の 研 究 所 に 行 か せ て く れ た こ と で す。
が、三つ目の転機は当時の先生が学外
その後も色々と転機があるんです
回転工具なので工具の向きは関係あり
5軸加工に使用するのはドリルなどの
三 次 元 で 合 計 六 次 元 必 要 に な り ま す。
を与えるのは、位置の三次元と姿勢の
普通の物体の空間において位置姿勢
のかということを研究していました。
うことをどのように決定して実行する
も決めなければいけないので、こうい
こともあるだろうし、工具の姿勢など
というのが主流になってきています
現在はCADデータを使って加工する
動 作 を 実 行 さ せ な い と 駄 目 で す よ ね。
くさん発表する展示会 が あ っ た ん で す
いうことになったんで す 。 そ れ が 最 初
い、進むことにしました。
そのまま大学の研究室の助手にな
の転機でした。
機 械 が 動 き や す い か ど う か を 考 え て、
が、人にとってよい姿勢というのが必
機械やロボットにとってよい動作をす
ません。そのため五次元でいいのです
るための制御としてもう1軸必要で合
るソフトウェアを作ろうということを
り、准教授になって、今に至るという
計6軸の制御が必要になります。研究
研究しています。
ずしも機械にとってよい姿勢とは言え
室の機械の中にはそれを制御可能な機
ません。この研究室は特にそういった
昔から取り組んでいるのは、工作機
――研究内容を教えてください。
械があり、そのような向きを持った工
が、刃に向きのある普通のカッターを
械というより、工作機械に関するソフ
具を制御して加工するという取り組み
制御しようとすると工具の姿勢を決め
トウェア技術みたいなものが中心です
もしていました。
感じです。
ね。当初から研究しているのが5軸加
品などを作るようになったので、この
導でやっているんですが、日本でも部
ボットの動作をしっかりと考えてその
生 産 の 現 場 で 使 っ て い ま す。 こ の ロ
また、世の中の産業ではロボットを
ようということも始まっています。例
がしていた作業をロボットにさせてみ
でのロボットではできなかった、人間
できるようになったわけだから、今ま
また、ロボットは人間に近い動作が
工というものです。航空宇宙産業が主
加工法が広まりました。私が研究を始
91
研究室取材
で 実 行 し た こ と を 経 験 と し て 蓄 積 し、
――標準化するにはどうしたらよ
次 の 加 工 か ら は そ の 経 験 を 生 か し て、
かっていて、そうしようという動きも
えば研磨ですね。磨く と い う 動 作 に は
もっとよい加工が簡単にできるように
あります。しかし、実際にそれをやる
企業は標準化が必要であることが分
センスが必要です。そ う い う セ ン ス を
なる自動生産システムみたいなものを
いのでしょう。
ロボットに持たせてあ げ て 、 研 磨 を や
研究しています。
もう一つの研究内容 は 、 加 工 に 関 す
らせようといった研究 を し て い ま す 。
バーチャルリアリティにはこちらの教
取れなくて、標準化がなかなか進まな
ならないからです。そのために了承が
ない部分も全部オープンにしなければ
な人は自発的に行動する人が多いから
ことは企業にとっては嬉しいことば
えたいことを簡単に表現できるという
いのが現状です。だから、標準化を進
で す。 お と な し い 人 は、 あ ん ま り 行
か り で は な い ん で す。 何 故 か と い う
て標準化しておけば、 そ う い う 情 報 を
利点があります。例えばペンデバイス
めるにはメリットを先に示し、ユーザ
動しないという傾向がありますから
また、研究室のポリシーとして、便
使って色々なソフトウ ェ ア 制 作 や 作 業
というものがあって、ペンが工具だと
がもっと強く主張して、なかなか動こ
利なものだったら何を使ってもいいと
をすることが楽になる と い う こ と が あ
思ってくれればいいんですが、ここを
うとしない企業にも動いてもらえるよ
く、元気な人だと楽です。でも一番大
(笑)
。コミュニケーションも取りやす
る情報フォーマットの 標 準 化 と 、 そ れ
ります。情報フォーマ ッ ト の 標 準 化 が
こう削りたいということがペンデバイ
うな流れを作らないといけません。少
事なのは素直なことです。素直な人は
を利用した作業設計支 援 シ ス テ ム と い
実現できたら、今度は そ れ に 準 拠 し て
スを使えば簡単に教えられます。
後は、
し大きな話をしましたが、例えば「こ
伸びやすいと思います。すぐに吸収す
と、結局それぞれの情報を出し合わな
動くシステムを作れます。そうすると、
ペンデバイスで教えた動作を使い、計
こまで標準化すればこんなに便利です
ければいけないので、あまり出したく
人がある程度手を加え る だ け で 、 細 か
算機できちんと数値化すればよいだけ
よ」ということを示さないといけない
い う の が あ り ま す。 例 え ば バ ー チ ャ
い情報の読み込みや、 計 算 を 自 動 的 に
の話になります。今まで産業界では使
ル リ ア リ テ ィ 技 術 を 使 っ て い ま す が、
させることができるよ う に な る の で か
われていなかったものを使えば、難し
うものです。世の中に 広 が っ て い る 工
なりの省力化になると 思 い ま す 。 そ う
るというか、本当に教えた通りに考え
具や機械の情報を皆が 使 う こ と を 考 え
いう自動生産システム を 構 築 し よ う と
度までいくとかなりよいペースで伸び
てくれますから。そういう人はある程
いう標準化がよいのではないか、とい
るので教えやすいです。素直なことは
と思っているので私の研究室では一応
今まできなかったことをできるように
うことも提案しようとしています。
の標準化をしています。さらに、こう
だからまず情報の標 準 化 に 向 け て 頑
していきましょう、ということを研究
いことがもっと簡単にできるようにな
張りましょうという提 案 と 、 そ う い う
しています。この分野の研究としては
るはずです。
このような技術を用いて、
標準化したデータを利 用 し て 自 動 的 に
がいいですね。何故かというと、元気
まずはベタですが、明るく元気な人
ももちろん教えます。
かっているので、どのような人が来て
ばかりではないということはよく分
重要な資質だと思いますね。そんな人
計算を行うシステムの 作 成 を し て い ま
やってくれる、という シ ス テ ム を 想 定
て教えてください。
――研究室が求める人物像につい
結構異端なものです。
しています。その研究 に 加 え て 、 現 場
作機械と繋がっていて 加 工 ま で 勝 手 に
す。このシステムはさ ら に 言 う と 、 工
いうのが目的です。
卓上NC加工機
92
M 知能機械工学科
中型と言えるのでしょ う か 。 こ れ だ け
けませんよ、といった 感 じ の 、 一 点 集
すよね。僕はパソコン だ っ た ら 絶 対 負
昔の電通大生はとん が っ て い た ん で
バランスがよいというのはよく言った
気がします。
今の人はそういう点では、
ているものを持っている人が多かった
んですよ。だから、何かしらとんがっ
たから留年したという人ばかりだった
一生懸命やって他のことをやらなかっ
留年してるのではなく、一つのことを
昔の留年生というのは、意味もなく
思います。
のは年を取ってからでも遅くはないと
要はないでしょう。バランスよくなる
います。あえて今から色々手を出す必
強するだけでもかなり幅は広がると思
命にやって、それに関係することを勉
も一つの方法ですが、一つだけ一生懸
から、意識して色々手を出すというの
――昔の電通大生と今の電通大生
は絶対負けない、とい う の は 持 っ て い
方ですが、特色があまりないような気
の間で、何か違いはありますか?
たと思います。もちろ ん 今 で も そ の よ
一角の人間になる方法でしょう。研究
ひとかど
くて、それぞれが目立つ人間というか
これは研究者だけに限った話ではな
うな人はいると思いま す が 、 最 近 そ う
がしますね。
に限らず、仕事でも大切なことだと思
――新入生に一言お願いします。
早く見切りをつけないで粘り強くがん
います。
そうですね。普通の人はやはり研究
り昔の方がいいのでしょうか?
――研究者のタイプとしてはやは
いう類の人はあまり見 ま せ ん ね 。 広 く
浅くと言うと少し失礼 か も し れ ま せ ん
が、特技というのがあ ま り 見 え な い 学
者には向きません。一ヶ所だけでも何
生さんが多いのかな、 と い う 気 は し ま
す。今の方がバランス は よ い の か も し
ばってください。
http://www.ims.mce.uec.ac.jp/
森重研究室URL
――ありがとうございました。
う瞬間が必ず来ます。ですのであまり
れませんが。多分、今 の 電 通 大 生 が い
大学の教員として最近よく聞くの
に使うかが分からないということで
は、勉強したことをいつ使うか、どこ
す。だからなかなかモチベーションが
か普通を超えないと研究ができません
よ。
私も何か持っていたのでしょうね。
上 が ら な い と い う 話 を よ く 聞 き ま す。
か ら。 そ れ は 一 つ で い い と 思 い ま す
研 究 室 に 入 っ て 受 け 持 っ た テ ー マ で、
必ず将来に使うことを教えていますか
ずっとそればかりを研究してドクター
ら、そう信じて一生懸命勉強してほし
自分自身もそうでしたからよく分かり
少し説教じみてしまうかもしれませ
いと思いますね。必ず勉強したことを
ますけど、最初は仕方がないと思いま
んが、何でもやりたいというのはよく
使う時が来るので、そのことを忘れず
まで行きましたから、そういう点では
分かります。若いから色々チャレンジ
に我慢してくれれば「ここがあの時教
そのテーマでとんがっていたのでしょ
したいというのはそれはそれでよいと
す。私が4年生の時に分かったように
思 い ま す。 で も 一 つ だ け 一 生 懸 命 に
わったことで、ここで使うんだ」とい
う。
やっても結構色々勉強できますよ。だ
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わゆる普通の人なんでしょう(笑)。
加工の様子