第2回 オープンファシリティシンポジウム 北海道大学の共同利用設備運営の方向性 Global Facility Center 〜 Development of Human Resources by Using Cutting-Edge Facilities 〜 北海道大学 共用機器管理センター長 網塚 浩 1 内容 1.北大オープンファシリティの現状 2.見えてきた課題と可能性 3.将来の方向性 2 本学における先端設備共用促進の歩み 国家政策 H18 第3期科学技術基本計画 H21~24 先端研究施設共用促進事業 (23施設) 科学技術振興のための基盤の強化 先端大型研究設備の整備と共用促進 H17.4 オープンファシリティ設立 3施設の大型設備の学内共用 H23~25 設備サポートセンター整備事業 (6法人) H23 第4期科学技術基本計画 国際水準の研究環境・基盤の形成 先端研究施設及び設備の整備と共用促進 H17.11 学外研究機関・民間企業 へ共用化 H25 国立大学改革プラン 同位体顕微鏡システム スピン偏極SEM 本学の取り組み H21.4 共用機器管理センター設置 H22~27 第2期中期計画・中期目標 社会との連携や社会貢献: 先端設備を地域産業界等に積極的に 開放する H25~ 先端研究基盤共用・ プラットフォーム形成事業 (34施設) H21 年間延べ利用者 ~ 1万人 H23.6 設備サポート推進室 設置 世界トップレベルの教育研究拠点 の形成・イノベーションの創出 H25 ~ 2 万人 グローバル化 イノベーション 持続発展 安定同位元素イメージング技術に よる産業イノベーション 先端NMRファシリティの共用促進 3 オープンファシリティ現行組織図 特任教員1名 職員16名 (常勤5名) データベース化 共用機器 委託分析機器 部局管理機器 108 台 17 台 200 台超 ユーザーは試料を渡し、技術者が 計測・分析したデータを受け取る ・従来型共同利用機器 ・研究室所有機器 共用・委託、両タイプ有り ユーザは講習を受け、自分で装 置を操作して計測・分析する (いわゆるオープンファシリティ) 4 共用機器部門の現状① 登録機器台数の推移 年間延べ利用人数の推移 H25 H25 ~2倍 ~5倍 H17 H17 ● 登録台数 108 台(H26.3月末) ● 講習・サポート体制の充実 ● 独自開発予約システムによる利便性の向上 ● 年間利用者数 21,000人超(H25, 延べ数) ● リユース・リサイクルフローの確立(H23 ~ ) 5 共用機器部門の現状② 学内+学外+自己利用による 利用時間の装置別内訳 学外利用による利用時間の装 置別内訳 学外利用者は最先端機器の利用が 上位を占める 6 共用機器部門の現状③ 学外利用者数は1,000人超(H25, 延べ数) 7 委託分析部門の現状① ・大型分析機器を用いた委託分析 ・化学分析技術の開発研究 ・主として生体成分を含む有機化合物の構造解析に関わる分 野の研究・教育を支援 ・2009年より学外からの受託分析開始 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 年間受託件数 装置台数 稼働率 分析担当者数 事務担当 分析料金収入 装置維持管理費 ~10,000件 17台 高! 7名 1名 2000万円超 2000万円超 竣工年度 昭和55年度 機器分析センター(当時) 8 委託分析部門の現状② 部局別分析料金(H18 ~ H25) 学内 学外 17部局等 / 435名 36機関 / 42名 部局別分析件数(H18 ~ H25) 北大の研究活動と学外連携を 支える重要な基盤組織 9 内容 1.北大オープンファシリティの現状 2.見えてきた課題と可能性 3.将来の方向性 10 北大の設備共用のポテンシャル オープンファシリティ登録機器 の学内分布 登録“候補”を含む先端機器の学内分布 108 台 (H26.3) ~ 330 台 全学に分布する多数の先端機器 共用化促進、有効活用の余地 全学規模の教員・技術職員による協働体制の構築が不可欠 11 オープンファシリティプラットフォームの立ち上げ 特任教員1名 職員16名 (常勤5名) データベース化 共用機器 委託分析機器 部局管理機器 108 台 17 台 200 台超 ユーザーは試料を渡し、技術者が 計測・分析したデータを受け取る ・従来型共同利用機器 ・研究室所有機器 共用・委託、両タイプ有り ユーザは講習を受け、自分で装 置を操作して計測・分析する (いわゆるオープンファシリティ) 12 オープンファシリティプラットフォームの立ち上げ 13 様々な課題(悲鳴!?) ・装置更新の目処が立たない ・突発的な故障や修理の費用を予算化できない ・装置の高度化・大型化に伴って修理・保守費用も高額に! ・RAや技術補助員の雇用経費が苦しい ・技術人材育成、技術開発の人的、経済的余裕がない ・利用者のモラルとスキルの低下が著しい ・研究者のニーズで出来たはずの施設なのに冷たい?・・・ etc. 縦割り・個別の運営努力のみでは立ちゆかない状況に・・・ 全学連携体制の構築により改善を図る 重点目標 ① 機器共用の付加価値を最大化 ② 成果の集約と発信による費用対効果の検証 14 内容 1.北大オープンファシリティの現状 2.見えてきた課題と可能性 3.将来の方向性 15 北大オープンファシリティの将来像 グローバルファシリティセンターの設立 共用化した先端機器を活用したイノベーション創出・グローバル人材育成拠点 “Open-facility network to generate human interactions.” コーディネーター による能動的推進 北海道大学 Global Facility Center 共同研究 異分野交流 産学連携 異業種交流 北海道 技術研修・交流 ローテーション 先端機器実習 国際サマースクール アジア 全国 共同研究・イノベーション創出 若手研究者・技術者人材育成 (北大理・工学分野ミッションの再定義) 16 ミッションの再定義 北海道大学における理学・工学分野のミッションの再定義 研 究:理学・工学のあらゆる分野で世界トップを目指す研究を推 進する 教 育:教育の国際化を図り、グローバルに活躍できる人材を育成 社会貢献:北海道をはじめ国内外の産学諸機関との連携を図り、大型 装置の開放や技術支援を進め、産業技術の発展及びイノ ベーション創出に寄与する 北大近未来戦略150(※)の3つの柱 グローバル人材育成・世界トップの研究力・イノベーション創出 (※) 北大近未来戦略150:北大創基150年(2026年) を機に本学が強力に推進する成長戦略 17 組織改革によるガバナンスの強化 (※拡大図 参考資料7) 課題・必要性 ● ● ● ● 全学的連携の過渡期 → 組織・機能が複雑化 内部組織的ガバナンス → 戦略的マネジメント機能の不備 装置とユーザーの激増 → 技術スタッフの不足 研究支援主眼の人員構成 → 付加価値創造・強化に限界 取組 1.ガバナンス体制の強化 ● 総長直轄組織に改組、研究戦略室直結のセン ター会議を設置 2.4ユニット・2会議体の設置 ● 共用機器・先端分析2コアユニットの人員補強 技術支援体制を強化、ユーザー・装置増に対応 ● イノベーション推進ユニットの新設 コーディネーターによるイノベーション創出の 能動的な推進 ● グローバル推進ユニットの新設 外国人コーディネーターによる国際連携の推進 先端機器の国際的教育への還元を企画、実践 ● 共用機器連絡協議会の新設 学内部局との組織的連携の確立 ● 技術人材育成委員会の新設 技術者育成プログラムを設計、実施 ★ ★ ★ ★印は平成27年度交付金によって配置する人員 18 付加価値創出① 技術支援人材育成基盤の強化 課題 技術職員の分布状況 ● 学内技術職員数 329名(病院を除く) 現在 教員:技術職員 ~ 5.7 : 1 大学の研究力、イノベーション創出力を強 化する上で技術支援力の向上は極めて重要 ● しかし、多くの技術者は所属部局に固定化、 流動性はほぼゼロ ● スキルアップ、キャリアアップ制度の不備に より、意欲のある若手技術者の資質が十分に 引き出せていない 取組 将来 ● コーディネーター1名が各部局教員および技 術職員とともに共用機器連絡協議会を構築し、 共用機器に関わる技術職員のグルーピングと ローテーション体制を構築し、実施する ● コーディネーター1名が各部局教員および主 任技術職員とともに技術人材育成委員会を構 成し、技術職員のスキルアッププログラム (技術研修、学位取得コースなど)を企画、 運営する ● さらに技術職員のキャリアアップ人事制度を 創設し、運営する(上級技術職員の育成) 複数部署を経験 互いにカバーできる 19 付加価値創出② 先端機器の教育への還元〜グローバル人材育成機能の充実 課題 ● 学部の実験教育に最先端機器はほとんど使われていない ● 大学院では専門分野以外の装置に触れる機会は稀少 ● グローバル人材育成は最重要の教育課題 受入外国人留学生 1,800 人/年 3,600 人/年 海外派遣日本人学生 500 人/年 1.300 人/年 受入外国人研究者 900 人/年 1,900 人/年 海外派遣研究者 3,800 人/年 7,300 人/年 大学間協定校 130 校 180 校 アジア大学間協定校 12ヵ国 67校 紫色●印:ハブ拠点 10校 取組 ● 外国人コーディネータ1名及び技術職員1名により、アジ ア拠点校間の共用機器連携を構築する ● 先端機器及び教育に精通したコーディネーター1名が、部局 教員と連携して、先端機器を活用した各レベルでの教育科 目を企画し、実施する 若手研究者・技術者対象:先端機器国際シンポジウム 大学院生対象:先端機器PBL入門・実習 (サマースクール、 ウィンタースクールを理工系共通科目2単位として開講) 学部生対象:様々な先端機器実習(理工系総合英語プログ ラムにも提供) 高校生対象:先端機器体験学習(オープンキャンパス、 SSH、サイエンス・リーダーズ・キャンプ、日本・アジア 青少年サイエンス交流事業等による高大連携) アジア地域の共用機器データベースを構築 (イメージ図) 20 設備共用促進に関する世界の動向 韓国 KAIST(韓国科学技術院) タイ チュラロンコン大学 Central research instrument facility Scientific and Technological Research Equipment Centre (STREC) 64 設備 33設備 韓国 ソウル国立大学 National Center for Inter-University Research Facility (NCIRF) 31設備 米国 National Nanotechnology Infrastructure Network (NNIN) 主要14大学 1,100のナノテク先端設備 学部教育、ワークショップ・技術研修等々活発な活動を展開 英国 UK University Facilities “equipment.data” 英国先端機器データベース 29 機関 4,803 設備 keyword入力で英国内の機器を検索できる 欧州 Quality Nano (Qnano) 欧州28機関のナノテク先端機器の共用システム 日本 大学連携研究設備ネットワーク (旧 化学系研究設備有効活用ネットワーク) ・登録機関数:131(平成26年2月現在) ・登録設備数:621 21 先端機器グローバル人材教育の実践例 先端機器はイノベーションの凝集体であり、格好のイ ノベーション教育用教材を提供する 例)学部実験授業への活用 「先端物質構造解析実習」 「先端バイオテクノロジー実習」 「先端ナノテクノロジー実習」etc. (各1単位を多数企画) 目的・内容: ・先端機器の原理と革新技術を学び、実際に触れて実験する 到達目標: ・先端機器に応用されているイノベーションを説明できる 例)大学院PBL教育への活用 「先端機器PBL入門」 「先端機器PBL演習」etc. (各2単位) 目的・内容: ・先端計測を可能にしているイノベーションについて学ぶ ・専門分野以外の装置も体験し、異分野への理解を深める ・異分野で構成される少人数のグループで討論を行い、先端機 器の技術の拡張や複合的な応用のアイデアを提案する 到達目標: ・様々な分野の研究に用いられる装置の原理と革新技術を理解 し、要点を分かり易く説明できる ・課題(エネルギー、環境問題など)を自ら設定し、先端機器 の機能拡張や応用による解決策を案出できる 学部においては、初修教育(フレッシュマンセミナー) や各学部の実験科目、さらには留学生対象の総合理系 コースに適宜組み込んで活用する 大学院では、通常授業に加え、サマースクールやウイン タースクールに適宜組み込んで国際科目として活用する 向学意欲、イノベーション志向の向上 社会や企業の求める人材育成への貢献 留学生増への貢献 途上国での科学技術振興への貢献(長期的視点) 先端機器を活用した教育の先進的な例 米国 NNIN (National Nanotechnology Infrastructure Network) が開催しているサマー スクールの様子 22 先端設備を活用したイノベーション教育の例 例)質量分析計 様々な学問分野の知の集合体であり、これだけでも 色々なレベルのイノベーション教育が展開できる 対象 科目・単位 1年次 一般教育演習 フレッシュマンセ ミナー (1単位) 学部 1学科の実験科 目の1テーマ (1単位) 内容・目的 原理の理解(座学)3回+実習4回 科学技術への興味を育てる 原理の理解(ゼミ)2回+実習4回+ 報告会1回 実習装置における先端科学技術とイノ ベーションについて説明できる • • 大学院 PBL形式科目 (1単位) 異なる専攻の学生4~5人でグループを構成 原理の理解(ゼミ)1回+イノベーションの相関の 理解(ゼミ)1回+実習2回+問題を設定し技術改 良とその応用を提案(ブレスト)3回 コミュニケーション力、チームワーク 力、創造性を育てる 質量分析技術にみられる異分野 融合の様子 (島津製作所の資料をアレンジ) 質量分析計は北 大オープンファ シリティで利用 率が最も高い 23 付加価値創出③ 研究者のためのイノベーション環境の構築 課題 異分野・異業種間交流(これまでの取組の例) ● 先端的でかつ汎用性の高い装置は異分野・異業種の学 外ユーザーの利用率が高い(例:同位体顕微鏡) 利用者の分野・業種の分布(H20-H25 延べ数) 交流の活性化からイノベーション創出が見込めるが、 現体制では継続的かつ効果的な機会の提供に限界あり ● 研究室ベースの先端機器の情報集約と共用化が進展 装置を供出する研究者の気づかない新たな用途や改 良点、また共同研究の創出の可能性が増えるが、これ までは情報を公開して提案を待つ受動的な体制が主 ● 異分野・異業種の研究者や技術者の効果的なグルーピ ングを行い、様々な交流会を立ち上げ、活発化させる ・先端研究融合シンポジウム(基礎×基礎) ・産業イノベーションシンポジウム(基礎×応用) ・革新的技術創出シンポジウム(応用×応用) 環境 エネルギー ナノ 材料 その他 産 18 8 17 3 学 12 8 7 5 安定同位元素イメージング技術による産業イノベーションシン ポジウムの開催(隔年開催、H26に第5回) 取組 ● 広い分野の研究内容や研究機器に精通したコーディ ネーター1名とURA1名が、研究室ベースの共用機 器促進を進め、データベースを分析して、新たなイノ ベーションを導く共同研究を能動的に提案していく 生命 科学 URA コーディネーター グルーピング 共同研究・イノベー ションリサーチ プロジェク ト・交流会 アレンジ 24 様々な課題(悲鳴!?) ・装置更新の目処が立たない ・突発的な故障や修理の費用を予算化できない ・装置の高度化・大型化に伴って修理・保守費用も高額に! ・RAや技術補助員の雇用経費が苦しい ・技術人材育成、技術開発の人的、経済的余裕がない ・利用者のモラルとスキルの低下が著しい・・・ etc. 縦割り・個別の運営努力のみでは立ちゆかない状況に・・・ 全学連携体制の構築により改善を図る 重点目標 ① 機器共用の付加価値を最大化 ② 成果の集約と発信による費用対効果の検証 25 成果の集約と発信による費用対効果の検証 現状 ・成果が出た際に謝辞の掲載を依頼するのみ We would like to thank OPEN FACILITY (Hokkaido University Sousei Hall) for allowing us to use [装 置名] measurement on [分析対象], especially [担当者名] for his/her great technical assistant and helpful suggestions. 将来 ・成果報告を義務化、集約して報告書を作成(施設によっては既に実施) ・機器共用の効果を分析(研究・教育・人材育成・産学連携) 試行例)2007-2013年度の学内利用責任者343名に対する論文調査分析結果 (NISTEP SciSIP室 伊東裕子室長及び北大URA 江端新吾による共同研究) 利用責任者が著者の論文は8.3千件、同時期の北大所属著者の論文 (約2.5万件)の約3割強を占める 謝辞を記した論文10件の内、4件は北大の平均被引用数の2倍以上 26 まとめ 人 持続発展性 グローバル 人材 これから 最先端機器の 活用による 人材育成力の強化 研究者・技術者 ネットワーク 国際的社会貢献 イノベーション創出 イノベーション 人材 これまで 共用機器 ネットワーク 最先端機器の 共用と導入の促進 による研究力の強化 装置・設備
© Copyright 2024 ExpyDoc