- 1 - 富山、昭63不2、平元.1.31 命 令 書 申 立 人 山信労働組合 被申立

富 山 、 昭 63不 2 、 平 元 .1.31
命
令
申 立 人
山信労働組合
被申立人
株式会社山信商会
主
書
文
被申立人は、申立人組合員の解雇に関する事項について、申立人と速やかに
誠意をもって団体交渉を行わなければならない。
理
第1
1
由
認定した事実
当
事
者
(1) 申 立 人 山 信 労 働 組 合( 以 下「 組 合 」と い う 。)は 、被 申 立 人 株 式 会 社 山
信 商 会 に 勤 務 す る 従 業 員 に よ り 昭 和 63年 6 月 17日 に 結 成 さ れ た も の で 、
申立時の組合員は8名である。
(2) 被 申 立 人 株 式 会 社 山 信 商 会( 以 下「 会 社 」と い う 。)は 、県 内 の パ チ ン
コ店と景品納入業者である有限会社昭和物産との間の景品の運送代行及
び 景 品 買 取 等 を 業 と す る 目 的 で 、 昭 和 59年 11月 27日 に 設 立 さ れ た 株 式 会
社 で 、 申 立 時 の 従 業 員 は 約 30名 で あ る 。
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団体交渉申入れまでの経緯と会社の対応
(1) 昭 和 63年 5 月 28日 、 会 社 は 、 従 来 、 日 給 7,000円 を 支 給 し て い た の を 、
1 日 120円 の 賃 上 げ を 行 っ た 。し か し 、そ の 賃 上 げ 額 が 少 な い こ と を 不 満
と し て 、 翌 29日 に 、 従 業 員 14名 が 富 山 市 内 の レ ス ト ラ ン に 集 合 し 待 遇 改
善に関する話合いを行った。
(2) 同 年 6 月 2 日 、「 待 遇 改 善 の お 願 い 」 書 ( 以 下 「 お 願 い 書 」 と い う 。)
が 、 従 業 員 18名 ( う ち ア ル バ イ ト 4 名 ) の 署 名 及 び 捺 印 の う え 作 成 さ れ
た。
な お 、「 お 願 い 書 」 の 内 容 は 、 次 の と お り で あ っ た 。
①
現 行 1 日 7,000円 の 給 料 を 、 1 日 9,000円 に す る こ と 。
②
1 か 月 の 勤 務 日 数 を 26日 間 と し 、 こ れ を 超 え る 日 数 に 対 し 休 日 手 当
を支給すること。
③
入社3か月以上の従業員は月給制にすること。
④
1 か 月 10,000円 の 皆 勤 手 当 を 支 給 す る こ と 。
⑤
現 行 3 年 で 30万 円 の 退 職 金 の 上 乗 せ と 、 完 全 な 退 職 金 制 度 を 導 入 す
ること。
⑥
現行1往復のみの通勤手当を5割増しとすること。
⑦
現行の諸手当は継続して支給すること。
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(3) 同 月 7 日 、従 業 員 を 代 表 し て C 1 、A 1 、A 2( 以 下 そ れ ぞ れ「 C 1 」、
「 A 1 」、
「 A 2 」と い う 。)、A 3 、A 4 の 5 名 が 、
「 お 願 い 書 」を 会 社 へ
提出した。
(4) 同 日 、会 社 の B 1 社 長 室 長( 以 下「 B 1 室 長 」と い う 。)及 び 業 務 課 職
員B2は、従業員が「お願い書」の提出に至った経緯を知るため、従業
員で署名者のA5を訪ね、A2とA1が当初6月3日に「お願い書」を
会社へ提出し、翌4日に回答させ、回答に不満があるときは、同月4日
にストライキを行う計画をしていたとの話を聞いた。
(5) 同 月 9 日 の 朝 、 C 1 、 昼 に A 1 が そ れ ぞ れ 社 長 室 へ 呼 ば れ 、 同 月 4 日
の ス ト ラ イ キ 計 画 に つ い て 、会 社 代 表 取 締 役 社 長 B 3( 以 下「 B 3 社 長 」
と い う 。)か ら「 こ の 責 任 を ど う と る の か 。」な ど と 詰 問 さ れ 、C 1 は「 私
は従業員の中で、年長でもありながら考えが浅かった。私が責任を取っ
て 辞 め ま す 。」と 退 職 の 意 思 を 表 し 、A 1 は そ の 場 の 成 り 行 き で「 そ こ ま
で 言 わ れ れ ば 、わ か り ま し た 。お 世 話 に な り ま し た 。」と 退 職 意 思 の 表 明
とも受け取れるような返事をした。また、同日午後2時頃、従業員のC
2( 以 下「 C 2 」と い う 。)は 、B 3 社 長 か ら 、2 人 が 退 職 し た 旨 の 説 明
を聞き、自分も退職することをB3社長に表明した。
(6) 同 月 10日 の 午 後 7 時 30分 頃 、従 業 員 の A 6( 以 下「 A 6 」と い う 。)は
B3社長と会い、退職扱いとなっているC1、A1、C2の3名が復職
さ せ て も ら え な い こ と を 確 認 し た 。 そ の 後 、 同 日 午 後 11時 30分 頃 、 従 業
員7名は富山市内のレストランに集合して今後の相談を行い、その中で
A6は、もう既に3名の犠牲者が出たので、こうなれば労働組合という
方法しかないんじゃないかとの考えを示した。
(7) 同 月 11日 の 午 後 2 時 頃 、 A 6 は 、 B 1 室 長 に 3 名 の 職 場 復 帰 を 願 い 出
た が 、 こ れ を 断 わ ら れ た 。 同 日 午 後 11時 30分 頃 、 従 業 員 12名 は C 2 の 家
に集合し、今後の行動について話し合い、3名の職場復帰が認められな
い と き は 、 翌 12日 の 午 前 中 の 作 業 を 放 棄 す る こ と に 決 め た 。
(8) 同 月 12日 の 午 前 8 時 頃 、 A 6 は 、 従 業 員 の 代 表 と し て 、 B 1 室 長 に 3
名の職場復帰を申し入れたが、これを拒否されたため、即刻、その日の
午 前 中 の 作 業 を 放 棄 す る こ と を 伝 え 、従 業 員 17名( う ち ア ル バ イ ト 5 名 )
が参加して、作業放棄に入った。同日午後、A6は、交渉の糸口を探る
ためB1室長に電話したが、連絡が取れず午後の作業も放棄された。
(9) 同 月 13日 の 午 前 8 時 頃 、 A 6 は 、 B 1 室 長 に 電 話 し 、 話 合 い を 求 め た
が、これを拒否されたので、同日も作業放棄が続いた。
(10) 同 月 13日 及 び 14日 、作 業 放 棄 に 参 加 し た 従 業 員 の う ち 8 名 に「 懲 戒 解
雇通知」が、4名に「退職確認の件」と題する通知が、それぞれ各自宅
へ内容証明郵便で送付されてきた。
(11) 同 月 17日 、 従 業 員 8 名 は 組 合 を 結 成 し 、 同 日 午 後 7 時 30分 頃 、「 組 合
結 成 通 知 書 」を B 1 室 長 に 手 渡 そ う と し た が 、こ れ を 拒 否 さ れ た 。な お 、
「 組 合 結 成 通 知 書 」に は 、不 当 解 雇 の 撤 回 、
「 お 願 い 書 」に 対 す る 誠 意 あ
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る回答及び早急に団体交渉に応じることを求める旨の記載があった。
これと併せて、A5を除く7名は、解雇通知無効と就労意思のあるこ
とを内容証明郵便で会社へ通知した。
(12) 同 月 18日 、組 合 執 行 委 員 長 A 6 他 4 名 に 統 一 戦 線 促 進 富 山 県 労 働 組 合
懇談会代表委員会議長A7、同教育部長A8が同行し、会社に団体交渉
を早急に開催することを申し入れたが、これも拒否された。
(13) 同 月 27日 、 申 立 人 組 合 員 A 6 他 6 名 は 富 山 地 方 裁 判 所 ( 以 下 「 地 裁 」
と い う 。) へ 雇 用 上 の 地 位 保 全 を 求 め て 地 位 保 全 等 仮 処 分 申 請 を 行 っ た 。
そ の 後 、4 名 が 同 申 請 を 取 り 下 げ 、同 年 12月 23日 に 地 裁 に お い て 、A 6 、
A 1 、A 9( 以 下「 A 9 」と い う 。)に つ い て 、こ れ を 認 容 す る 旨 の 決 定
が出され、現在、これを不服として会社は異議申立てを行っている。
第2
1
判
断
当事者の主張
(1) 申 立 人 の 主 張
被申立人は、申立人組合員との間には雇用関係が存在しないことを理
由に、団体交渉応諾義務がないと主張するが、申立人組合員は地裁にお
いて地位保全等仮処分事件で退職及び解雇処分の有効性を争っていると
ころであり、労働組合法第7条第2号の「雇用する労働者」といえるの
で、被申立人は団体交渉に応ずる義務がある。
(2) 被 申 立 人 の 主 張
申立人組合員のうち、A1は自主退職したものであり、他の7名は昭
和 63年 6 月 12日 及 び 翌 13日 に 、 突 発 的 に 作 業 放 棄 を な し 、 被 申 立 人 の 業
務に多大な支障を与えたので懲戒解雇したものである。仮にA1の退職
が認められず、A6及びA9に対する懲戒解雇が無効であるとしても、
A1は採用時に経歴を秘匿し、採用時には暴行事件等を起こしており、
また、A6は採用時に経歴を秘匿し、採用後には現金紛失事件に関係し
て い る 。さ ら に 、A 9 は 飲 酒 運 転 に よ り 運 転 免 許 停 止 処 分 を 受 け て い る 。
これらは、前 記 作 業 放 棄 とも合 わせ通 常 解 雇 事 由 に該 当 するものであり、
同 月 24日 に 解 雇 手 当 を 支 給 し 、解 雇 し た も の で あ る 。よ っ て 、申 立 人 は 、
すべて被申立人との間の雇用関係が終了した者によって構成されている
ものであり、このように雇用関係のない者で結成した労働組合が、被申
立人に対し団体交渉を求めることは許されない。
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当委員会の判断
申立人は、申立人組合員が地裁において解雇処分の有効性を争っており
労働組合法第7条第2号の「雇用する労働者」に当たり、被申立人は団体
交渉に応ずべきであると主張し、被申立人は、申立人組合員に対する解雇
処分は有効であり、雇用関係の終了した者によって結成された申立人が被
申立人に対し団体交渉を求めることは許されないと主張するので、以下こ
れについて判断する。
労働組合法第7条第2号の「雇用する労働者」とは、現に当該使用者が
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雇用する労働者をいい、過去において雇用されていた者を含まないのが原
則である。しかしながら、被解雇者が解雇の効力を争っている場合には、
解雇の効力が確定するまでは、被解雇者と使用者との労働関係はいまだ消
滅していないものと解すべきであり、同条の「雇用する労働者」に該当す
るものである。
そ こ で 、 本 件 に つ い て み る と 、 前 記 第 1 の 2 (13)で 認 定 し た と お り 、 A
6 、A 1 、A 9 の 3 名 が 解 雇 処 分 等 の 有 効 性 に つ い て 現 に 争 っ て い る 以 上 、
同人らと被申立人との間の雇用関係が消滅したものとは言えず、同人らの
結成した労働組合が、同人らの解雇処分等の問題について団体交渉を申し
入れているのであるから、被申立人はこれに応じなければならないのであ
り、被申立人の主張は失当である。
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結
論
以上のとおり、被申立人は本件団体交渉に応ずべき義務があるにもかか
わらず正当な理由もなく、これを拒否しているのであって、被申立人のか
かる行為は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
よ っ て 、 当 委 員 会 は 、 労 働 組 合 法 第 27条 及 び 労 働 委 員 会 規 則 第 43条 を 適
用して主文のとおり命令する。
平 成 元 年 1 月 31日
富山県地方労働委員会
会長
吉原節夫
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