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環境中に存在するDNAの網羅的な解析による生態系の理解
慶応義塾大学 環境情報学部3年 村上 慎之介
古
細菌(アーキア)をご存知ですか?
古細菌は広く言えば“微生物”に含まれますが、
一般に言う「細菌」とか「ばい菌」とかいう微生物とは少し
違ったグループです。最初の古細菌は塩田から発見さ
れ、その後は高温の温泉や深海底など、常識ではとても
生物が生息できないような極限環境から多種多様な古細
菌が発見されてきました。とはいえ近年の研究から古細菌
は必ずしも極限環境を好むわけではないことも明らかに
なってきました。身近な例として、オナラ(腸内のメタンガ
ス)は
メタノブレビバクターという古細菌が作っていると言われて
います。ヒトのお腹の中にも古細菌が住んでいるのです。
進
化を考える上で古細菌の研究は欠かせません。
最初の生命が誕生したころの地球はまだ温度が
高く、高温環境であったと考えられています。高温環境に適
用できる「古細菌」は、原始生命の様相を今なお残している
と考えられているため、古細菌を調べることは原始生物の
特徴を明らかにすることにつながります。古細菌は系統分
類学的にも進化の初期段階で他の生物と分岐したグルー
プだとされており、様々な環境に生息する様々な古細菌
(環境微生物)を理解する研究は、単にその環境の生態系
を理解するだけでなく、生命の進化にも迫ることができる
のです。
以下の円形の図は古細菌の「進化系統樹」というもので、DNA配列が
似ている種が近くに表示します。我々は沖縄トラフ南部の深海底の土と、
山形県鶴岡市の湯野浜温泉源泉に生息している古細菌を調べました。
ゲノムがわかっている古細菌
沖縄トラフ深海底土の古細菌
湯野浜温泉源泉水の古細菌
様々な環境から発見された古細菌
湯野浜温泉にて源泉採取
ハロバクテリウム
(好塩菌)
サーモコッカス
(好熱菌)
ナノアーキア
細胞が三角形の古細菌
バクテリア
(古細菌以外の微生物)
ユリアーキア
タウムアーキ
ア
クレンアーキア
SAGMA-8
(南アフリカで発見された古細菌)
↓
湯野浜で発見された古細菌と
DNAが似ている!!
サーモプロテウス(好熱菌)
スルフォロバス(好酸菌)
深海や温泉などの環境には多様な古細菌が生息しており、中には南アフリカの金山で発見された古細菌と似ているものも
発見された。古細菌の生態系は複雑多様でありながら、地球全体に広く同じような古細菌が分布している可能性も示唆され
た。