「高性能鋼の概要」(橋梁向け) - JISF 一般社団法人日本鉄鋼連盟

高性能鋼の概要
一 般 社 団 法 人 日 本 鉄 鋼 連 盟
橋梁用鋼材研究会
(橋梁向け)
ご注意とお願い : 本資料に記載された技術情報は、製品の
代表的な特性や性能を説明するためのものであり、
「規格」の
規定事項として明記したもの以外は、保証を意味するもので
はありません。本資料記載情報の誤った使用によって生じた
損害については責任を負いかねますのでご了承ください。
(2015.03)
写真:東京ゲートブリッジ
橋梁用鋼材研究会
高性能鋼とは
橋梁用の高性能鋼
名 称
鋼橋に汎用的に使用されている鋼種と比較して、強度、
じん性、溶接・曲げ加工性、耐腐食性において、より
橋梁用高性能鋼板
優れた性能を有する鋼種、鋼材を総称して、高性能鋼
といいます。
規 格
SBHS400
SBHS400W
SBHS500
SBHS500W
SBHS700
SBHS700W
(降伏点 400N/mm2 以上)
(降伏点 400N/mm2 以上、耐候性鋼)
(降伏点 500N/mm2 以上)
(降伏点 500N/mm2 以上、耐候性鋼)
(降伏点 700N/mm2 以上)
(降伏点 700N/mm2 以上、耐候性鋼)
HT690
HT780
HT950
SM400C
SM490C
SM520C *
SM570 **
SMA400CW
SMA490CW
SMA570W **
SN400
SN490
SA440
SN400
SN490
SA440
LY100
LY225
(引張強さ 690N/mm2 以上)
(引張強さ 780N/mm2 以上)
(引張強さ 950N/mm2 以上)
掲載頁
2∼7
高性能鋼の一部は平成8年12月に改定された道路橋
示方書から取り入れられていますが、これらに加え、
橋梁への適用を検討中のもの、あるいは橋梁以外の分
野で実用化されているものをご紹介します。
強度に関する高性能鋼
名 称
高強度鋼
降伏点一定鋼(板厚 40mm 超)
狭降伏点レンジ鋼
低降伏比鋼
低降伏点鋼
極厚鋼板
規 格
掲載頁
8∼9
(降伏点 215N/mm2 以上)
(降伏点 295N/mm2 以上)
(降伏点 335N/mm2 以上)
(降伏点 430N/mm2 以上)
(降伏点 215N/mm2 以上)
(降伏点 335N/mm2 以上)
(降伏点 430N/mm2 以上)
SM400C-H
SM490C-H
SM520C-H
SM570-H
SMA400CW-H
SMA490CW-H
SMA570W-H
(降伏点レンジ 120N/mm2)
(降伏点レンジ 120N/mm2)
(降伏点レンジ 100N/mm2)
(降伏点 235N/mm2 以上)
(降伏点 315N/mm2 以上)
(降伏点 355N/mm2 以上)
(降伏点 450N/mm2 以上)
(降伏点 235N/mm2 以上)
(降伏点 355N/mm2 以上)
(降伏点 450N/mm2 以上)
10 ∼ 11
12 ∼ 13
(降伏比=降伏点 / 引張強さ≦ 80%)
(降伏比=降伏点 / 引張強さ≦ 80%)
(降伏比=降伏点 / 引張強さ≦ 80%)
(降伏点 100N/mm2 級鋼)
(降伏点 225N/mm2 級鋼)
14 ∼ 15
16 ∼ 17
道路橋示方書の規格を超える板厚範囲において強度・じん性の優れた鋼板
75̶100mm:325N/mm2 以上
**
75̶100mm:420N/mm2 以上
*
じん性・溶接性に関する高性能鋼
名 称
高じん性鋼
予熱低減鋼
大入熱溶接対策鋼
耐ラメラテア鋼
規 格
掲載頁
❶冷間曲げ加工
シャルピー吸収エネルギー* 冷間曲げ加工半径(t:板厚)
7t 以上
vE ≧ 150J 5t 以上
vE ≧ 200J 18 ∼ 19
❷寒冷地における要求仕様を満足する鋼材
道路橋示方書の標準 PCM より低い値を規定した鋼材
20
21
大入熱溶接に適用可能な鋼材
22 ∼ 23
Z15, Z25, Z35(板厚方向の絞り値を保証した鋼材)
*
●鋼橋に汎用される、引張り強さ500N/mm , 600N/mm
2
2
級鋼に対して高性能化を可能にする製造技術の一つに熱
加工制御圧延
(TMCP)があります。 TMCPとはThermo-
Mechanical Control Processの略で、鋼板製造時におけ
る加熱・圧延および圧延後の冷却の各プロセスを適切にコン
トロールする製造技術のことです。この技術により、良好な
溶接性、高強度、高いじん性などを鋼板に付与することがで
きます。(掲載頁P.36∼37)
耐腐食性・その他に関する高性能鋼
名 称
耐候性鋼
亜鉛めっき用鋼
ステンレス鋼
クラッド鋼
LP 鋼板(テーパープレート)
橋梁用高強度ワイヤ
規 格
SMA400W
SMA490W
SMA570W
SBHS400W
SBHS500W
SBHS700W
亜鉛めっき焼け、亜鉛めっき割れを抑止する鋼材
(0.1%耐力 235N/mm2 以上、引張強さ 520N/mm2 以上)
SUS304
(0.1%耐力 235N/mm2 以上、引張強さ 520N/mm2 以上)
SUS316
SUS304N2 (325N/mm2 ≦ 0.1%耐力≦ 440N/mm2、引張強さ 690N/mm2 以上)
ステンレスクラッド鋼 (母材:普通鋼+合せ材:ステンレス)
(母材:普通鋼+合せ材:チタン)
チタンクラッド鋼
最大板厚差 25 – 30mm、最大勾配 4mm/m、全長 6 − 25m
ST1770(引張強さ 1770N/mm2 以上)、ST1960(引張強さ 1960N/mm2 以上)
JIS 規定試験温度での値
掲載頁
24 ∼ 27
28 ∼ 29
30
31
32 ∼ 33
34 ∼ 35
1
SBHS(橋梁用高性能鋼板)
概要
SBHS(Steels for Bridge High Performance Structure)は、鋼橋の建設コスト
縮減のために産学連携研究プロジェクトの成果に基づき開発された高性能鋼板です
。
(JIS G 3140)
SBHSは、従来の490N/mm2 、570N/mm2 級および780N/mm2 級高張力鋼と
比較して強度・じん性および溶接性において、より優れた性能を有しています。
SBHSの特長をご理解いただき、この新鋼材を有効に活用すれば、設計および製作
の面で合理化を達成できます。
特長
高強度と加工性・溶接性をTMCP技術の適用により両立させた橋梁用高性能鋼板
(TMCP技術については、P.36∼37をご覧ください。)
溶接割れ感受性組成PCM
(%)
■従来鋼よりも降伏強度を向上 650
・ 490N/mm2級
[SBHS400
(W)]
:降伏強度 10 ∼ 23%アップ(+35 ∼ 75N/mm2)
降伏強度
(N/mm2)
[SBHS700
(W)]
:ほぼ同等 2 ∼ 5%アップ(+15 ∼ 35N/mm2)
・ 780N/mm2級
■加工性・溶接性が従来鋼よりも優れ、予熱省略、予熱温度低減が可能
・ 490N/mm
TMCP
600
[SBHS500
(W)]
:降伏強度 9 ∼ 19%アップ(+40 ∼ 80N/mm2)
・ 570N/mm2級
SBHS500
550
500
溶接性良好
(予熱省略、低減)
450
2級
[
:予熱不要
SBHS400(W)]
[SBHS500
(W)]
:予熱不要
・ 570N/mm2級
400
0.15
[SBHS700
(W)]
:予熱温度低減
(100 ∼ 120℃ → 50℃)
・ 780N/mm2級
普通圧延
+
熱処理
0.20
従来鋼
SM570
0.25
0.30
溶接割れ感受性組成PCM
(%)
鋼重削減および施工コスト低減への寄与大
■東京ゲートブリッジでの効果(関東地方整備局 テクノアングル No.38、2005.10. 6)
○ 鋼材重量削減:約 3% ○ 材料製作費削減:約12%
板厚50mmの例
490N/mm2級鋼
強度区分
従来鋼
特性
強度
加工性
溶接性
耐食性
570N/mm2級鋼
従来鋼
SBHS400・SBHS400W (SM490Y・SMA490W) SBHS500・SBHS500W (SM570・SMA570W) SBHS700
従来鋼
SBHS700W (HT780*)
降伏点
(N/mm2)
≧400
≧335
≧500
≧430
≧700
≧700
≧685
降伏点一定
○
△
○
△
○
○
△
高じん性
○
△
○
△
○
○
△
予熱温度低減
○
△
○
△
○
○
△
耐候性
○
(SBHS400W)
○
(SMA490W)
○
(SBHS500W)
○
(SMA570W)
̶
○
̶
○ 通常仕様で対応 △ 通常仕様では未対応
2
780N/mm2級鋼
*
HBS G3102(HT780)
材料特性
化学成分
単位:%
C
Si
Mn
P
S
Cu
Ni
Cr
Mo
V
B
N
SBHS400
0.15以下
0.55以下
2.00以下
0.020以下
0.006以下
̶
̶
̶
̶
̶
̶
0.006以下
SBHS400W
0.15以下
0.15∼0.55
2.00以下
0.020以下
0.006以下 0.30∼0.50 0.05∼0.30 0.45∼0.75
̶
̶
̶
0.006以下
SBHS500
0.11以下
0.55以下
2.00以下
0.020以下
0.006以下
̶
̶
̶
0.006以下
SBHS500W
0.11以下
0.15∼0.55
2.00以下
0.020以下
0.006以下 0.30∼0.50 0.05∼0.30 0.45∼0.75
SBHS700
0.11以下
0.55以下
2.00以下
0.015以下
0.006以下
SBHS700W
0.11以下
0.15∼0.55
2.00以下
0.015以下
0.006以下 0.30∼1.50 0.05∼2.00 0.45∼1.20
種類の記号
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
0.006以下
0.60以下
0.05以下
0.005以下
0.006以下
0.60以下
0.05以下
0.005以下
0.006以下
降伏点又は耐力、引張強さ及び伸び、およびシャルピー吸収エネルギー
種類の記号
降伏点又は耐力
(N/mm2)
SBHS400
SBHS400W
SBHS500
SBHS500W
SBHS700
SBHS700W
400以上
490 ∼ 640
570 ∼ 720
500以上
700以上
伸び
引張強さ
(N/mm2)
780 ∼ 930
シャルピー吸収エネルギー
厚さ(mm)
試験片
%
6以上 16以下
1A号
15以上
16を超え50以下
1A号
19以上
40を超えるもの
4号
21以上
6以上 16以下
5号
19以上
16を超えるもの
5号
26以上
20を超えるもの
4号
20以上
6以上 16以下
5号
16以上
16を超えるもの
5号
24以上
20を超えるもの
4号
16以上
試験温度
(˚C)
シャルピー吸収エネルギー*
(J)
試験片及び
試験片採取方向
0
−5
Vノッチ
100以上
圧延直角方向
−40
*
三個の試験片の平均値
溶接材料
溶接材料の規格
溶接方法
溶接継手の所要性能
SBHS400、SBHS500、 SBHS400W、SBHS500W、
SBHS700
SBHS700W
被覆アーク溶接
JIS Z 3211
JIS Z 3214
ガスシールド ソリッドワイヤ
アーク溶接 フラックス入りワイヤ
JIS Z 3312
JIS Z 3315
サブマージアーク溶接
JIS Z 3313
JIS Z 3320
JIS Z 3351(ソリッドワイヤ)、JIS Z 3352(フラックス)、
JIS Z 3183(溶着金属)
溶接方法
継手引張強さ*
(N/mm2)
SBHS400(W)
490以上
SBHS500(W)
SBHS700(W)
*
溶接金属のシャルピー吸収エネルギー
シャルピー吸収エネルギー**
(J)
試験温度
(˚C)
0
47以上
570以上
−5
47以上
780以上
−15
47以上
**
破断位置を規定しない 三個の試験片の平均値
代表的溶接材料
(SBHS500の例)
GMAW
FCAW
SAW
仕 様
JIS 番号
溶接姿勢
SMAW
JIS Z 3211
全姿勢
E57J16-N1M1U
下向、横向
G57JA1UC3M1T
CO2ガス
Ar + 20%CO2ガス
CO2ガス
JIS Z 3312
JIS Z 3313
溶着金属
JIS Z 3183
ワイヤ
JIS Z 3351
フラックス
JIS Z 3352
種類および区分
全姿勢
G57JA1UMC1M1T
全姿勢
T57J1T1ー1CAーG-U
下向、横向
T57J1T15ー0CAーG-U
水平すみ肉
T57J1T1ー0CA-U
S58J2-H
下向
YS-M5
SFCS1
3
降伏強度
降伏強度と鋼重の関係
鈑桁橋では、降伏強度500N/mm2鋼材以下が経済設計に有効です。*
厚手材の板厚低減にも有効です。
疲労やたわみ制限がクリティカルとなり、
降伏強度アップによる鋼重低減効果が
少ない範囲
降伏強度アップによる
鋼重低減が顕著な範囲
1000
橋軸方向1mあたりの鋼重(kg/m)
鈑桁橋での例
900
C橋(支間69m)
800
500N/mm2
700
たわみ制限で決定
A橋(支間53m)
600
たわみ制限無視
500
疲労限界で決定
400
疲労限界無視
300
200
300
400
500
600
降伏強度(N/mm
700
800
900
2)
長大吊橋、斜張橋等では、降伏強度700N/mm2鋼材が経済設計に有効です。
*「小西拓洋、三木千壽他:高強度鋼の適用による鋼橋の合理化設計の可能性、土木学会論文集No.654/1-52, 2000.7」
SBHSの降伏強度
降伏強度400、500、700N/mm2の3種類で、板厚によらず降伏強度一定です。
耐候性鋼仕様も同様です。
降伏強度(N/mm2)
800
700
SBHS700
HT780(従来鋼)
600
500
400
300
SBHS500
SM570(従来鋼)
降伏点一定鋼
SBHS400
降伏点一定鋼
SM490Y(従来鋼)
200
6
20
40
60
板厚(mm)
4
80
100
じん性
SBHSの母材じん性(例)
SBHSは従来鋼に比べて高いじん性を有し、かつ圧延直角方向を保証しています。
シャルピー吸収エネルギー(J)
耐候性鋼仕様も同様です。
200
SBHS400
SBHS500
at 0˚C
at -5˚C
SBHS700
150
at -40˚C
100
0
300
HT780(従来鋼)
at -40˚C
SM570(従来鋼)
at -5˚C
50
SM490Y(従来鋼)
at 0˚C
400
500
600
700
800
900
降伏強度
(N/mm2)
予熱温度低減
被覆アーク溶接
(SMAW)
での予熱温度低減効果
強度区分
種類の記号
従来鋼
2
490N/mm 級
(
SM490Y
SMA490W
)
SBHS400(W)
570N/mm2級
780N/mm2級
板厚区分(mm)
区 分
従来鋼(SM570)
SBHS500(W)
従来鋼
(HT780)
SBHS700(W)
t≦25
25<t≦40
40<t≦50
50<t≦100
(SM490Y)
0.26(予熱なし)
0.27(80˚C)
標準PCM
(予熱温度)* (SMA490W) 0.26
(予熱なし)
(
)
0.27 80˚C
0.29(100˚C)
̶
予熱なしとなるPCM
0.24
0.22
≦0.22
(予熱なし)
PCM(予熱温度)
*
標準PCM(予熱温度)
0.26(予熱なし)
0.27(80˚C)
0.29(100˚C)
̶
予熱なしとなるPCM
0.24
0.22
≦0.20
(予熱なし)
PCM(予熱温度)
標準最小予熱温度
(˚C)**
100
120
最小予熱温度(˚C)
50(t≦75)
* 標準PCM、予熱温度の標準(「日本道路協会:道路橋示方書・同解説Ⅱ.鋼橋編 平成24年版」より)
** 標準最小予熱温度(「本州四国連絡橋公団:鋼橋等製作基準 1993年5月」より)
y形溶接割れ試験結果(JIS Z 3158)
60
50
40
30
▲ SBHS500, 50mm, GMAW 16˚C-40%
20
▲ 38mm, SMAW 20˚C-60%
SBHS700
ルート割れ率(%)
ルート割れ率(%)
● 34mm, SMAW 20˚C-60%
60
SBHS500, SBHS500W
● SBHS500W, 25mm, SMAW 30˚C-30%
10
◆ 50mm, SMAW 20˚C-60%
◆ 60mm, SMAW 20˚C-60%
50
40
30
20
10
0
0
0
10
20
30
40
50
60
予熱温度
(˚C)
70
80
10
20
30
40
50
60
70
80
予熱温度(˚C)
5
製作性
SBHS500の製作性
Ⅰ桁製作性試験諸元
Ⅰ桁製作図(側面図)
寸 法(mm)
使用鋼材
使用部位
板厚
幅×長さ
上フランジ
30
500×6900
ウェブ
20
2920×6900
下フランジ
50
700×6900
補剛材
12
SBHS500
SM490Y
単位(mm)
製作状況
製作性試験結果まとめ
評価項目
使用部位
切断性能
孔明け精度
○
予熱なし・最大入熱6.1kJ/mm・T-SAW
○
予熱なし・最大入熱9.9kJ/mm・T-SAW
○[2]
予熱なし・最大入熱10kJ/mm・T-SAW
ウェブ-フランジ
○
予熱なし
補剛材
○
予熱なし
プレス矯正
○
ローラー矯正
○
上フランジ
ウェブ
現場溶接
評価項目/製作状況
切断面粗さ
組み立て溶接長さ20mm可能
下フランジ
歪み矯正
○
◎[1]
ウェブ
隅肉溶接
SM490Yとの比較
○
孔明け性能
組み立て溶接
突き合わせ溶接
t=50mm
t=50mm
t=20, 50mm
t=20mm
t=30mm
t=50mm
上フランジ
下フランジ
t=20mm
t=30mm
t=50mm
○[3]
予熱なし・最大入熱9.7kJ/mm・EGW
○[2]
予熱なし・最大入熱4.1kJ/mm・CO2
○[2]
予熱なし・最大入熱4.1kJ/mm・CO2
◎ 優れる ○ 同等
570N/mm2級の高強度鋼であるにもかかわらず、SM490Yと同等の製作性を有しています。
6
SBHS500の製作性評価例
[1]組立溶接性評価試験結果
SBHS500 t=50mm
20
FCAW
50
(20)
PCM
(90) (90)
45 50 45
40
50
350(7t)
溶接条件:予熱なし、入熱0.57kJ/mm
従来鋼
≦ 0.20
評価結果
≦ 0.22
20mm
50mm
割れなし
割れなし
溶接長
50
(20)
140
SBHS500
鋼材
40
SBHS500 t=20mm
単位(mm)
一般
*
50mm以上
80mm以上
道路橋示方書規定
*:厚い方の板厚が 12mm 以下の場合
組み立て溶接時の溶接長20mmで割れなしを確認 (従来鋼は80mm以上)
[2]
パス間温度の影響評価結果
(1)X開先形状の例
(2)溶接条件の例
60˚
溶接方法
溶接面
30
50
1st side
SAW
6
および
90˚
電極
入熱 kJ/mm
パス間温度 ˚C
1
−
≦5
3 水準
① 200 以下
② 250 以下
③ 300 以下
L
2 ∼最終層
2nd side
14
層 No.
T
≦ 10
単位(mm)
溶接継手性能評価
(3)
550
500
200
300
650
600
550
500
350
300
250
200
150
100
50
0
200
300
パス間温度
(˚C)
300
650
600
550
500
パス間温度
(˚C)
吸収エネルギー(J)
吸収エネルギー(J)
継手衝撃
パス間温度
(˚C)
200
350
300
250
200
150
100
50
0
200
300
継手引張り強さ(N/mm2)
600
700
200
300
700
650
600
550
500
パス間温度
(˚C)
350
300
250
200
150
100
50
0
パス間温度
(˚C)
200
200
300
パス間温度
(˚C)
吸収エネルギー(J)
650
700
吸収エネルギー(J)
700
継手引張り強さ(N/mm2)
継手引張り強さ(N/mm2)
継手引張り強さ(N/mm2)
継手引張
例1:
(板厚40mm) 例2:
(板厚50mm) 例3:
(板厚45mm) 例4:
(板厚50mm)
300
パス間温度
(˚C)
350
300
250
200
150
100
50
0
溶接金属
ボンド
HAZ1mm
200
300
パス間温度
(˚C)
パス間温度300˚C以下で、
継手性能確保を確認
(従来鋼は230˚C以下*)
* HBS(本州四国連絡橋公団規格)に
記載の溶接継ぎ手の所要性能より
シャルピー吸収エネルギー(J at -5˚C)
[3]
溶接継手じん性の評価結果
350
SBHS500 50mm
SBHS500 40mm
SBHS500 50mm
SBHS500 100mm
300
250
SAW
GMAW
GMAW
GMAW
9.1 kJ/mm
3.6 kJ/mm
3.7 kJ/mm
3.4 kJ/mm
200
150
100
47J at -5˚C
50
0
WM
Bond
HAZ1mm HAZ3mm HAZ5mm
SM490Yと同等の大入熱溶接
(10kJ/mm以下)に対応可能
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
(平成24年1月)
19
標準PCM,予熱温度の標準:
(
「日本道路協会;道路橋示方書・同解説Ⅱ. 鋼橋編 平成24年3月版」
より)
20
21
22
23
24
(「日本道路協会;道路橋示方書・同解説Ⅱ. 鋼橋編 平成24年3月版」
より)
25
耐候性鋼適用のメリット
● ライフサイクルコスト削減:塗り替え塗装が省略できます。
● 環境負荷低減:塗装無しで使用できます。
● 環境との調和:生成する保護性さびは、年月の経過と共に自然と調和する重厚な
外観を形成します。
ライフサイクルコストのイメージ
防食維持費
塗装被覆(C5)
耐候性鋼(さび安定化補助処理)
耐候性鋼(裸使用)
経過年数
26
(経年変化事例)
建設当初の時点ではさびムラが見られますが、年月の経過とともに均一な暗褐色
へと変化します。
(裸使用の例)
竣 工
約2ヵ月
⇒
約1年
⇒
約28年
遠 景
近 景
27
28
29
また、オーステナイトとフェライトの二相組織とし、SUS304やSUS316と同等ある
いは同等以上の耐食性を有し、強度が2倍の二相系ステンレス鋼(ASTM S82122、
SUS329J3Lなど)もあります。
建築分野では、優れた耐食性と意匠性が注目されており、
構造部材にも使用されています。建築分野のほか、欧米や
アジアでは橋梁にも採用されています。
30
31
JIS G 3101 SS400, JIS G 3106
32
33
長大吊橋では、スパン長の増加に伴って自重が増加し、同じ強度のケーブルを用い
た場合、必要なケーブル断面は大きくなっていきます。
長大吊橋のメインケーブルに高強度のワイヤを用いれば、ケーブル断面が減少し、
架設工事の効率化、主塔高さの低減や補剛構造の簡素化が実現できます。
センタースパン1991mの明石海峡大橋では、従来の橋梁ケーブル用亜鉛めっき
ワ イ ヤ(1570MPa)より も 引 張 強 さ が200MPa(20kgf/mm2)高 い1770MPa
(180kgf/mm2)
ワイヤが開発され、実用に供されています。近年では更なる高強度
ワイヤが開発され、1960MPa級の高い強度を実現しています。
引張強さ
(MPa)
ケーブルワイヤの強度の変遷
1960
蔚山
李瞬臣
ボスポラス2
ジョージワシントン
ハンバー
1770
明石
ニューポート
ベアマウンテン
1570
マンハッタン
1370
ウイリアムズバーグ
1170
関門
ヴェラザノナロウズ、
フォースロード
本四架橋
ボスポラス1
ブルックリン
1800
1900
1920
1940
1960
完成年
1980
2000
2020
高強度ワイヤは、1570MPa級ワイヤに比べてC、Siを適
正に増量した低合金鋼とすることにより、引張強さを200∼
400MPa上昇させています。
高強度ワイヤは強度が高いだけでなく、じん性や疲労、
架設時の取扱性についても、1570MPa級ワイヤと同等あ
るいはそれ以上の品質を有しています。
線材
C(%)
Si(%)
Mn(%)
主成分
引張強さ
(MPa)
耐力(MPa)
機械的性質
亜鉛めっきワイヤ
伸び
(%)
巻き付け
(3d)
ねじり
(回)
Zn付着量(g/m2)
Zn付着性(5d 巻き付け)
フリーコイル径
(m)
注:線径5mmの場合
34
1570MPa級
1960MPa級
1770MPa級
0.75 ∼ 0.80
0.80 ∼ 0.85
0.90 ∼ 0.95
0.12 ∼ 0.32
0.80 ∼ 1.00
1.00 ∼ 1.20
0.60 ∼ 0.90
0.60 ∼ 0.90
0.30 ∼ 0.60
1570 ∼ 1770
1770 ∼ 1960
1960 ∼ 2150
≧ 1160(0.7%全伸び) ≧ 1370(0.8%全伸び) ≧ 1470(0.2%オフセット)
≧4
≧4
≧4
折損なし
折損なし
折損なし
≧ 14
≧ 14
≧ 14
≧ 300
≧ 300
≧ 300
剝離なし
剝離なし
剝離なし
≧4
≧4
≧4
高強度化
(1570MPa 1770MPa)
による構造変更の例
1570MPa級ワイヤ
1770MPa級ワイヤ
1570MPa級鋼線
安全率:2.5
1570MPa級鋼線
安全率:2.2
1770MPa級鋼線
安全率:2.2
1960MPa級鋼線
安全率:2.2
明石海峡大橋では、1770MPa(180kgf/mm2)級ワイヤのほか、キャットウォーク
用ロープとして1960MPa
(200kgf/mm2)
級ワイヤも使用されています。
35
T M C P とは 制 御 圧 延と制 御 冷 却 の 組 合 せ を 基 本とした 厚 板 の 製 造プロセス
( Thermo–Mechanical Control Process )です。この方法により溶接性の指標
となる炭素等量(Ceq)や溶接割れ感受性組成( PCM)の大幅な低減が可能となるとと
もに、高強度鋼や高じん性鋼等の高性能鋼の製造が可能となります。
36
CeqとHAZ 最高硬さ
Ceq=C + Si/24 + Mn/6(%)
37