環境保全・創造に係る参画と協働の プラットフォーム

環境保全・創造に係る参画と協働の
プラットフォーム構築に関する調査研究
-環境パートナーシップ組織の新展開と
地域環境ファンドの設立に向けて-
エコファンド研究会
エコファンド研究会
代 表 者
石 井 孝 一
兵庫健康生活部環境政策局長
研 究 者
今 井 良 広
兵庫県健康生活部環境政策局環境政策課課長補佐兼
政策係長
有 本 方 子
兵庫県健康生活部環境政策局環境政策課エコライフ係長
藤 本
兵庫県健康生活部環境政策局環境政策課主任
博
佐々木勇次
兵庫県企画管理部企画調整局新行政課長課長補佐(組織担当)
沖 本 通 浩
兵庫県県民政策部地域協働局参画協働課課長補佐兼
参画協働システム係長
岩切玄太郎
兵庫県健康生活部環境管理局環境整備課事務吏員
谷 岡 慎 一
豊岡市行革推進室長
金 森
(特非)宝塚NPOセンター理事
康
溝 内 辰 夫
(株)NTTデータ経営研究所チーフコンサルタント
東 郷
大阪市立大学経営学研究科後期博士課程
寛
目
Ⅰ
はじめに
Ⅱ
環境パートナーシップ組織の状況
1
環境パートナーシップ組織とは
2
環境パートナーシップ組織の意義・役割
次
(1)環境パートナーシップ組織の意義
(2)環境パートナーシップ組織の類型
(3)環境パートナーシップ組織の役割
3
本県における環境パートナーシップ組織
(1)全般的状況
(2)県内環境パートナーシップ組織の事例
4
Ⅲ
考察
-今後の環境パートナーシップ組織の在り方-
地域環境ファンドの状況
1
地域環境ファンドとは
2
地域環境ファンドの意義・役割
3
地域環境ファンドをめぐる状況
(1)コ・ファイナンスの進展
(2)グリーン金融の拡大
4
地域環境ファンド、地域ファンドの事例
(1)県内の地域環境ファンド
-ひょうごグリーンエネルギー基金-
(2)県外の地域環境ファンド、地域ファンドの事例
(3)まとめ
5
地域環境ファンドの今後の在り方
(1)4つの評価軸による考察
(2)ファンドの構成とステークホルダーの役割
(3)考察
Ⅳ
-より良い制度設計のために-
おわりに
(参考資料)環境パートナーシップ組織に関する現況調査
調査票
研 究 成 果 の 要 約
1 研究の背景と目的
今日の環境問題においては、温室効果ガスの排出抑制、生活系ゴミの削減など、生活者
としての住民自身が主体的に取り組むべき課題が数多く存在する。他方、住民主役、地域
主導が地域づくりの基調となるなか、環境課題の解決にあたっても、住民の参画と協働が
不可欠となっている。
こうした状況を受けて、現在住民、NPO、事業者、行政など地域の多様な主体が連携・
協働しながら環境保全・創造に取り組む“環境パートナーシップ組織”が各地で設立され
ている。その数は現在全国で 70 以上にのぼっている。
一方、参画と協働のもと環境保全・創造の取組への資金支援を行おうと“地域環境ファ
ンド”の設立も各地で検討・整備されようとしている。本県でも、県民・事業者等からの
出資により「ひょうごグリーンエネルギー基金」を設け、太陽光発電所等の建設にあたっ
ている。
本研究では、環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォームとして、この“環境
パートナーシップ組織”と“地域環境ファンド”を取り上げ、その在り方や可能性につい
て考察する。
2 研究方法
環境パートナーシップ組織の現状について市町照会を実施するとともに、先導的な取組
を進める県外環境パートナーシップ組織について文献調査を実施した。地域環境ファンド
に関しては、ゲスト・スピーカーを交えた研究会での議論を中心に調査の展開を図った。
また、国内の先導事例の現地調査や有識者へのヒアリング調査を実施し、知見を深めた。
3 研究内容・結果
(1) 地域パートナーシップ組織について
環境パートナーシップ組織の意義・役割を示したうえで、設置根拠、資格、事務局機能、
財源等の視点から、本県における環境パートナーシップ組織(12 組織)の現状を明らか
にした。その結果をみると、いずれの県内環境パートナーシップ組織とも、設立後間もな
いこともあり、行政主導の運営が基本となっていたが、自治体からは組織の自立化、法人
化に向けて積極的な意見が聞かれた。
(2) 地域環境ファンドについて
地域環境ファンドの概念を提起し、その意義・役割を示すとともに、背景となるコ・フ
ァイナンスやグリーン金融の展開状況を明らかにした。次いで、県内外の地域環境ファン
ド等の萌芽事例を取り上げ、その事業内容、課題等を整理した。
この事例の考察を通じ、現在の地域環境ファンドの投資対象が、新エネルギー発電施設
の設置に特化している状況が明らかになった。また、大半のファンドが、公的助成・支援
を組み込んだスキームであることも判明した。
一方、ともに発電施設の設置を目的としていても、普及啓発系と売電事業(収益事業)
系では、ファンドの規模、運用方法がかなり異なっていることが明らかになった。また、
出資者、投融資対象に関し、完全に域内完結しているファンドもあれば、全国に出資元、
投資対象を求めるファンドもあり、
地域性の捉え方がファンドごとに違う点も確認できた。
本報告では、こうした現状を踏まえたうえで、エコビジネスへの投資や、市民事業とし
ての環境保全・創造活動への融資などを主たる投資対象とした新たな地域環境ファンド-
地元環境ベンチャー創出型、環境 NPO 短期融資型―の形態を提起し、それらの可能性を
様々な評価軸、視点から考察した。その結果、県民参画性や地域貢献性という側面では、
これら新たな形態のファンドには大きな可能性を見出し得るとの結論に達した。
4 今後の課題
これまで行政主導で展開されてきた県内の環境パートナーシップ組織において、自立的、
主体的な取組を促進するには、まず活動の多元化、深化、特にコミュニティへのアウトリ
ーチが重要になる。また、多様な環境パートナーシップの構築に向けて、組織とともに、
仕組み(協定等)の導入も検討すべきであろう。さらに今後は、組織のプレゼンスの拡大
とともに、環境パートナーシップ組織と審議会との役割分担や、環境パートナーシップ組
織と議会の協働関係の構築などが新たな課題として提起される可能性がある。
一方、地域環境ファンドについては、その拡大・発展とともに、域外での事業展開も視
野に入ることが想定される。それに伴い、ファンド自体の持続的、自立的発展と、地域へ
の貢献(環境改善、地域活性化)というファンドそもそものミッションの間で、少なから
ぬジレンマが生じることが予想され、それが今後のファンド運営の大きな課題となるであ
ろう。
本報告で提起した新たな地域環境ファンドの具体化に向けては、行政・県民・事業者が
手を結んで、ファンドの未来図を描いたうえで、ファンドマネージャーとしての NPO の
育成や、環境系 NPO の活動実態・潜在的資金需要等の詳細なマーケットリサーチを行っ
ていく必要がある。さらに、行政等の公的機関や地元金融機関によるファンドへの資金拠
出、ラベリングについても検討されるべきである。このため、行政は、リサーチ(さがし
てくる)
、ネゴシエーション(交渉する)
、ネットワーク(つなぎあわせる)というミッシ
ョンを積極的に果たしていくことが必要である。
今後の課題として、最後に取り上げたいのは、環境パートナーシップ組織と地域環境フ
ァンドの連携である。環境パートナーシップ組織は、地域環境ファンドへの出資、寄附等
の窓口や運営主体として機能し、ファンドへの県民参画性を高めるうえで、大きな貢献を
果たすと考えられる。他方、地域環境ファンドは、環境パートナーシップ組織への出資、
寄附や活動助成などを通じ、組織の持続的発展を支える役割を当然期待される。両者の設
立・運営にあたっては一体的な推進を図ることが望まれる。
Ⅰ はじめに
今日の環境問題においては、家計(民生)部門での CO2 の排出抑制、一般家庭から排
出される生活系ゴミの削減など、生活者としての住民自身が主体的に取り組むべき課題が
数多く存在する。他方、住民主役、地域主導が地域づくりの基調となるなか、環境課題の
解決にあたっても、住民の参画と協働が不可欠となっている。
こうした状況を受けて、現在住民、NPO、事業者、行政など地域の多様な主体が連携・
協働しながら環境保全・創造に取り組む「環境パートナーシップ組織」が各地で設立され
ている。現在その数は全国で 70 以上にのぼり、県内主要市町においても相次いで生まれ
ている(高橋 2004)
。
環境パートナーシップ組織は一般に「環境市民会議」などと称され、環境基本計画の策
定・推進等を機に設立されている。その活動は計画のフォローアップのほか、イベント開
催、事業実施、政策提言など多岐にわたる。また、一部は NPO 法人化するなど、組織面
でも多様な発展を遂げている。今後、環境パートナーシップ組織は環境保全・創造におけ
る参画と協働の推進主体、支援機関としてさらなる可能性を秘めている。
一方、参画と協働のもと環境保全・創造の取組への資金支援を行おうと“地域環境ファ
ンド”の設立も各地で検討・整備されようとしている。本県でも、平成 13 年 12 月に県
民・事業者等からの出資により「ひょうごグリーンエネルギー基金」を設け、太陽光発電
所の建設にあたってきたが、現在の潮流のなかではこのような取組をさらに広範に推進し
ていくことが求められている。
この地域環境ファンド設立の取組を後押しするような動きも相次いで起こっている。現
在、様々なコミュニティ・ファイナンス、地域共同金融の仕組みが開発されようとしてい
る。そのなかでは、
「コミュニティ・ボンド(住民参加型市場公募債)
」や「コミュニティ・
クレジット 」など、既に実践に移されているものも存在する。このような手法を活用する
ことで、地域環境ファンドの設立はさらに容易になるものと考えられる。
また、社会的責任投資(SRI:Socially Responsible Investment)の考え方が浸透す
るなか、金融機関では環境に配慮した企業や事業等への投融資を目的とした「エコファン
ド」
、
「エコ・ファイナンス」の導入を進めており、金融機関との連携のなかで新たな地域
環境ファンドの創出も期待される。
本研究では、環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォームとして、この“環境
パートナーシップ組織”と“地域環境ファンド”を取り上げ、その在り方や可能性につい
て考察する。
以下では、環境パートナーシップ組織の概念や意義と役割を明らかにしたのち、本県に
おける環境パートナーシップの全般的状況を俯瞰するとともに、神戸市、尼崎市、西宮市
の事例を検証する。そのうえで、今後の環境パートナーシップ組織の在り方について、他
府県の事例も交えながら若干の考察を行う。
次いで、地域環境ファンドの概念、意義・役割を示したのち、その背景としてコ・ファ
イナンスやグリーン金融の展開状況を明らかにする。また、内外の地域環境ファンド等の
萌芽事例を考察したうえで、地域環境ファンドの今後の在り方について考察する。そのな
かでは、新たなファンドの形態を提起し、環境保全性、県民参画性、地域貢献性等の評価
軸に基づき、その特徴づけを行うとともに、類型ごとにステークホルダーの役割を明らか
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
にしている。
そして最後に、環境パートナーシップ組織と地域環境ファンドの今後の展開に向けた課
題等について若干の考察を行っている。
Ⅱ 環境パートナーシップ組織の状況
1 環境パートナーシップ組織とは
環境パートナーシップという呼称は、近年国、自治体の施策上よく活用されるようにな
ったが、その概念に明確な規定が存在するわけではない。環境パートナーシップ組織とい
った場合も、多様な組織がその範疇に含まれると考えられる。
しかし、一般に環境パートナーシップ組織といえば、環境基本計画やローカル・アジェ
ンダ211の策定等を機に、その推進・実施機関として自治体等によって設置される「市民
会議」や「パートナーシップ会議」等を指すケースが多い。すなわち、通例、環境パート
ナーシップ組織は、市民と行政の協働、合意形成の場であり、環境政策の横断的、包括的
な推進主体となる組織として認識されている。
本研究でも、このような認識に立って、環境パートナーシップ組織を『市民、地域団体、
事業者、行政等の地域の多様な主体が連携しながら、様々な環境保全・創造の取組を総合
的に推進する組織』と規定することとする。
2 環境パートナーシップ組織の意義・役割
(1) 環境パートナーシップ組織の意義
環境パートナーシップ組織が出現した背景には、
環境問題の質的変化がある。
公害問題、
自然環境保全などのようなこれまでの環境問題では、規制対象となるのは専ら、排出者、
開発者となる事業者であった。行政は規制者としての立場に立ち、市民はあくまでも公害
や開発行為による被害者であった。
しかし、環境問題が複雑化、多様化しつつある今日、
‘問題の所在’はそれほど明確では
なくなりつつある。すなわち、地球温暖化問題や生活環境問題が深刻化するに伴い、従来
の「規制対象対規制主体」
、
「加害者対被害者」の図式は当てはまらなくなろうとしている
(高橋 2004)
。例えば、温室効果ガス、ゴミの排出をめぐっては、市民、事業者、行政
とも等しく発生源であると同時に、その負の影響を共に被っている。すなわち、全ての主
体が加害者であり、被害者であるのが今日の状況である。
このため、環境問題の解決にあたっては、行政による規制だけでなく、市民、事業者の
参画が重要となりつつある。市民、事業者、行政間の連携、協働のもと、各主体の主体的、
自主的取組を促すことが問題解決の鍵となろうとしている。
環境パートナーシップ組織は、
そのための仕組みみとして企図されたものといえる。
環境パートナーシップ組織出現の背景には、環境保全・創造に係る市民参画の総合的な
チャンネル確立を求める市民の側からの要請もある(高橋 2004)
。従来、市民による環
1
1992 年に国連環境開発会議(UNCED)で採択されたアジェンダ 21 が目指す持続可能な開発
(Sustainable Development)の実現に向けて、地方公共団体が策定した地域行動計画のこと。日本
で最初のローカル・アジェンダは、1993 年に神奈川県において策定された。環境省によれば、2003
年3月現在、ローカル・アジェンダ 21 策定済の地方公共団体は、47 都道府県、12 政令指定都市、318
市区町村(政令指定都市を除く)となっている。
2
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
境保全・創造活動が地域で進められていても、自然保護、環境美化、リサイクルなど、テ
ーマごとに活動が分断されていた。また、地球温暖化などの新しい分野では、活動自体が
存在しないケースも見受けられた。このため現在、地域において異なるテーマのもと活動
している団体・組織の連携を促し、環境問題の横断的解決にあたる仕組みとして、環境パ
ートナーシップ組織の設立が求められようとしている。
(2) 環境パートナーシップ組織の類型
環境パートナーシップ組織の存立形態は様々であるが、大別すると行政内部設置タイプ、
任意団体タイプ、NPO タイプに区分することができる。
高橋(2004)は、環境パートナーシップ組織をさらに設置根拠(要綱設置 or 会則・
規約)
、メンバー資格(委員 or 会員)
、事務局機能(行政依存 or 市民、行政共同)
、財源
(行政依存 or 自主財源中心)を評価基準として、行政からの自立化の程度に応じて、6
つに類型化している(下表参照)
。
それによると、要綱等を根拠に設置される行政内部タイプは、メンバー資格によって二
分されている。すなわち、環境審議会等の付属機関と同様に、定数が設けられ、メンバー
には委員としての委嘱が行われる組織(委員会型)と、メンバー数に制限はなく、メンバ
ーが会員として参加する組織(行政主導型)に区分されている。
これに対し、会則・規約等で設置される任意団体タイプでは、事務局機能の分担の程度
に応じて、行政依存の組織(行政支援任意団体型)と、市民、行政共同の組織(共同事務
局型)に分けられている。
一方、事務局機能を市民が全面的に担い、人的側面において行政から自立した NPO タ
イプは、財源確保の方法によって二分されている。補助金や負担金、事業委託など、行政
からの財政支援を前提として運営されている組織(行政支援 NPO 型)と、会費、事業収
入等により行政からの財政的自立性をある程度達成した組織(自立的 NPO 型)に区分さ
れている。
表 環境パートナーシップ組織の類型
類
型
行政支援
共同
行政支援
自立的
任意団体型
事務局型
NPO 型
NPO 型
委員会型
行政主導型
設置根拠
要網等
要網等
メンバー資格
委 員
会 員
会 員
事務局機能
行政依存
行政依存
行政依存
財
行政依存
行政依存
行政依存
源
会則・規約等 会則・規約等 会則・規約等 会則・規約等
会 員
市民・行政
共同
行政依存
会 員
会 員
市民主体
市民主体
行政依存
会費・事業
収入中心
〔出典:高橋(2004)P.113.〕
(3) 環境パートナーシップ組織の役割
現在の環境パートナーシップ組織の重要な役割となっているのが、計画の策定・フォロ
ーアップである。一部の組織では、環境基本計画やローカル・アジェンダ 21 の推進にあ
たり、年次報告書の作成や指標の設定などにもあたっている。このほか、環境保全・創造
に係る政策提言、施策提案という側面でも、環境パートナーシップ組織は一定の役割を果
3
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
たしている。
環境パートナーシップ組織は、環境保全・創造に係る様々な事業・活動も実施している。
その中心は、買い物袋(マイバック)持参運動、環境美化活動(クリーンアップ・キャン
ペーン)
、アイドリング・ストップなどの普及・啓発運動である。しかし、それ以外にも、
環境学習・教育の実践や、デポジット・システム、菜の花プロジェクトなどの社会実験的
な仕組みの導入においても、重要な役割を果たしている。
このような事業・活動と並んで、メンバー相互の交流や情報交換も環境パートナーシッ
プ組織の重要な役割である。各組織では、交流会・学習会の定期的開催を通じて、メンバ
ー間の情報共有や事業立ち上げに向けた検討などを行っている。また、内外の交流機会の
拡大、情報発信機会の創出を目的として、環境フォーラム等の年次イベントを行政との共
催で実施しているケースも多い。
3.本県における環境パートナーシップ組織
本研究では、平成 17 年 6~7 月に県内 60 市町を対象として「環境パートナーシップ
組織に係る現況調査」を実施し、本県における環境パートナーシップ組織の概況や、同組
織に対する市町の意向の把握を行った(調査票は巻末に添付)
。
以下では、その結果概要を示すとともに、代表事例として神戸市、尼崎市、西宮市の環
境パートナーシップ組織を取り上げ、その活動状況を考察している。
(1) 全般的状況
調査によると、県内には 12 の
図 環境パートナシップ組織の設置状況
環境パートナーシップ組織が存在
38
40
することが明らかになった。その
35
30
大半は過去5年以内に設立された
25
比較的新しい組織である。
20
12
15
一般に、県内の環境パートナー
7
10
シップ組織は、条例・規則、要綱・
5
0
要領を設置根拠とし、メンバーを
設置済の市町
設置検討中の市町 未設置・未検討の市町
任期制(1~2 年)の委員として
処遇している。メンバー数は、10 名程度から 50 名を越えるものまで様々である。メン
バー構成をみると、地域団体、公募市町民、民間事業者等、行政以外の委員が過半数を占
めている。組織構成では、分野別組織や特別目的組織を設けている組織も存在する。事務
局機能に関しては、全て市町担当部局が専らその任にあたっている。財源面では、一部例
外を除き、行政からの補助・助成に頼っている。
組織の活動(複数回答)としては、
『計画・指針の策定・フォローアップ』
(回答数:8)
が最も多く、次いで『メンバー相互の情報交換・交流』
(7)
、
『事業の実施』
(6)の順とな
っている。事業内容(複数回答)では、
『イベント、フォーラム等の開催』
(6)
、
『研修・
講座の実施』
(5)などが、事業分野としては、
『環境家計簿、エコチェック・カンレンダ
ー普及運動』
(6)
、
『環境学習・教育、自然体験学習』
(5)
、
『リサイクル運動、ごみ減量化』
(4)などが比較的多い結果となっている。
一方、環境パートナーシップ組織を設置していない市町数は、46 にのぼる。このうち
7市町が設置を検討しているとの回答を行っている。これら設置していない市町にその理
4
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
表 兵庫県内の環境パートナーシップ組織(平成 17 年 7 月現在)
市町名
名
称
設立年
設置根拠
メンバー 任期 メンバー数
メンバー構成
神戸市
神戸市地球環境
市民会議
神戸市地球環境
1992 年 市民会議設置
要綱
委員
無し
41 人
学識者:4 人
地域団体:8 人
公募市民:2 人
行政:5 人
NPO:6 人
民間事業者:9 人
議員:6 人
その他:1 人
尼崎市
あまがさき市民環境
尼崎市環境基本
2003 年
会議
計画
委員
2年
20 人
定数
(20 人)
地域団体:7 人
公募市民:10 人
民間事業:3 人
委員
学識者:3 人
地域団体:6 人
19 人
行政:4 人
2年
定数
NPO:1 人
(30 人以内)
民間事業:4 人
その他:1 人
会員
無し
地域団体:16 人
21 団体 NPO:2 人
民間事業者:3 人
委員
2年
17 人
定数
(20 人)
学識者:1 人
地域団体:6 人
行政:3 人
民間事業:6 人
議員:1 人
会員
無し
10 人
その他:10 人
会員
1年
19 人
公募市民:19 人
西宮市環境計画推進
西宮市 パートナーシップ
2005 年 条例・規約
会議
宝塚市
三田市
環境都市宝塚推進
市民会議
1997 年 会則・規約
三田市グリーン推進
2001 年 要綱・要領
協議会グリーン部会
西脇市 市民エコ会議
2000 年 条例・規則
姫路市
姫路市環境づくり
市民会議
赤穂市
赤穂環境づくり推進
2001 年 要綱・要領
会議
委員
2年
51 人
洲本市
洲本市の環境を
考える懇談会
2002 年 要綱・要領
委員
2年
12 人
定数
(13 人)
猪名川町
猪名川町環境住民
会議
2001 年
委員
無し
22 人
2年
30 人
定数
(30 人)
2002 年
姫路市環境基本
計画
猪名川町
環境基本計画
稲美町環境基本計画
稲美町
2002 年 要綱・要領
推進委員会
委員
5
地域団体:4人
行政:3 人
他
地域団体:8 人
公募町民:12 人
民間事業者:1 人
他
学識者:1 人
地域団体:15 人
公募町民:10 人
行政:4 人
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
由(複数回答)を問うと、
『設置・運営のノウハウ不足』
(24)や、
『設置のタイミング、
機会の欠如』
(20)
、
『設置・運営に充てる予算、人員の不足』
(18)などが指摘されてい
る。
また、設置すると仮定した場合の期待する役割(複数回答)としては、
『市民・団体の
ネットワーク化』
(25)
、
『施策・事業の実施』
(24)などが上位にあがっている。他方、
実際の組織では活動の中心である『計画・指針の策定、フォローアップ』
(13)について
は、あまり期待されていないことが判明した。
(2) 県内環境パートナーシップ組織の事例
① 神戸市地球環境市民会議
「神戸市地球環境市民会議」
(以後「市民会議」という)は、
「地球環境サミット」を契
機として、平成 4 年 9 月に発足した環境パートナーシップ組織である。地球環境問題に対
する地域からの行動を推進する組織として発足したが、その後の活動においては他分野の
環境保全・創造活動にも幅広く関わっている。
市民会議は、市民・事業者・美化活動推進団体・学識経験者・行政等の 25 団体、41
名から構成されている。市民モニターから選ばれた公募委員 2 名もそのなかに加わってい
る。年 2 回程度開催され、市民活動の展開にあたっての関係者間の情報・意見交換の場と
して運営されている。
市民会議は、環境保全審議会などとともに、市の「環境基本計画」の推進機関の一翼を
担っている。環境保全審議会が計画の点検・見直しに対する諮問機関としての機能を果た
しているのに対し、市民会議は「市民行動計画」
、
「市民行動計画マニュアル」にもとづく、
市民、事業者の取組を推進する役割を担っている。また、市民会議では、部会として「ご
み円卓会議」を設置し、ごみの減量・資源化の取組を市民、事業者、行政の協働により推
進しようとしている。
神戸市では、このような全市を対象とした一元的な環境パートナーシップ組織を運営す
る一方で、近隣住区単位の組織として、
「エコタウンクラブ」を設置している。現在、同ク
ラブは神戸市内の 170 の全小学校区で、ふれいあいのまちづくり協議会等の手によって
運営され、エコタウンまちづくり(環境にやさしいまちづくり)の推進主体となっている。
同クラブでは、市の助成のもとニュースレターによる広報活動を行っているほか、まちの
マナーアップとクリーン作戦や、身近な省エネ対策、古新聞などのリサイクルに取り組ん
でいる。また、地域のニーズに応じて子どもたちを対象とした環境学習プログラムなども
展開している。
他方、神戸市では、市民とのネットワークとして、平成 15 年 8 月に「アースパル KOBE」
の結成にもあたっている。同組織では、さまざまな環境問題に取り組んでいる市民(エコ
市民アドバイザー、地球温暖化防止活動推進委員等)がネットワークを結び、市とともに
地球温暖化防止に向けた啓発活動を行おうとしている。結成以来、研修やイベントなどの
実施とともに、環境 NPO と市の新たなチャンネルとして機能しはじめている。
② あまがさき市民環境会議
「あまがさき市民環境会議」
(以後「環境会議」という)は、
「尼崎市環境基本計画」
(以
後「環境基本計画」という)に基づき、
「環境と共生するまち・あまがさき」の実現を目的
6
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
として、市民・事業者が主体となって行政と協働する組織として、平成 15 年 6 月に設置
された。構成メンバーは、公募による 10 人の市民メンバーと環境活動団体や産業界から
推薦された 10 名の計 20 名で構成されている。
環境会議は、環境基本計画の進捗状況の点検、環境行動指針の普及啓発、環境に関する
政策立案に向けた提言、自主的な環境保全活動に向けた取組等を所掌している。
「尼崎市ル
ーム・エコクラブ」
(市役所中館9階)や中央公民館等において、定例会をほぼ月 1 回開
催しているほか、自主的にあるいは行政との連携により、
「春休みこども環境学習」や「環
境フェスタ 2006」等の各種イベントを企画・実施している。
また、1期目のメンバーのもとでは、市民・事業者としての環境行動指針となる「あま
がさき市民・事業者環境行動指針(平成 16 年6月)
」を策定している。現在活動中の2期
目のメンバーは、
「尼崎市環境基本計画実施状況報告書(平成 18 年 2 月)
」を作成し、環
境基本計画の進捗状況の点検作業を行っている。点検作業については、今後も毎年度実施
していく予定である。
「尼崎市環境審議会」と環境会議では、構成、性格は大きく異にしている。審議会では、
委員の大半を学識者が占め、審議内容は諮問・答申を中心とするのに対し、環境会議では、
メンバーの多数が平素から実践活動に取り組んでいる人であり、活動内容は実践活動に重
点を置いている。
環境会議の財政面をみると、活動経費は全て市の予算であり、支出は報酬(メンバー1
名につき年 5,000 円の交通費を支給)とイベントの会場費が中心である。事務局機能は
基本的に市が担っているが、2 期目のメンバーからは事業に対する自主的企画の提案も生
まれはじめている。市では、環境会議に対し、事業の推進を図るとともに、活動団体間の連
携を促進する役割を期待している。
③ 西宮市環境計画推進パートナーシップ会議
「西宮市環境計画推進パートナーシップ会議」
(以後「パートナーシップ会議」という)
は、西宮市環境基本条例に基づき、
「西宮市新環境計画(平成 17 年 3 月)
」
(以後「環境
計画」という)の計画推進母体として、平成 17 年 8 月に設置された。メンバーは、市民・
地域団体関係者、産業界代表、学識経験者、行政関係者等の 20 名(規定では 30 名以内)
で構成されている。
活動をみると、基本的には環境計画の推進母体、協議体としての役割を果たしている。
平成 17 年度の実績は、設立後間もないこともあり、会議を開催し、報告・協議を行った
にとどまっている。
メンバーによる政策提言や事業企画・提案などはまだなされていない。
パートナーシップ会議の財政面をみると、活動経費は、メンバーに対する交通費程度の
報償費のみであり、単独では予算化されていない。
パートナーシップ会議と「西宮市環境審議会」は、メンバー、活動内容とも異なってい
る。審議会では、市議会議員が多数委員として参画し、市の環境施策を中心に審議してい
るのに対し、パートナーシップ会議は、環境計画の推進に向けた市民の主体的な取組の促
進をテーマに協議を行う場となっている。
パートナーシップ組織の下部組織は、地域に根ざしたエコ活動を行う地域単位の組織で
ある「エココミュニティ会議」
、環境テーマごとの行動計画を策定する「エコネットワーク
会議」
、環境計画の進捗状況のチェックを行う「環境計画評価会議」
、専門的なアドバイス
7
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
を行う「環境まちづくりアドバイザー会議」から構成されている。このうち、
「エココミュ
ニティ会議」
、
「環境計画評価会議」については既に設置されている。
「エココミュニティ会議」は、市内の中学校区を活動の基本単位として、地域が自主的
に設置するエコ活動の推進組織であり、それぞれの地域の環境特性に応じた優先課題を地
域の目標として、行動計画やまちのルールづくりを行うこととしている。市内の中学校区
20 地区のうち、平成 17 年度は 1 地区で設置されている。今後、各中学校区に順次設置
されていく予定である。
「環境計画評価会議」では、環境計画の目標達成に向けた、PDCA サイクルによる進行
管理手法を検討している。同会議での協議内容はパートナーシップ会議に報告され、その
場でさらなる検討が行われるとのことである。
環境計画の計画期間については 3 期に区切られている。第 1 期から第 2 期の 4 年間(平
成 17~20 年度)については組織づくり・推進体制の整備を行い、平成 21 年度からの第
4 期においては、市の第 4 次総合計画と連携した市民・事業者・行政の参画と協働による
事業推進を図る計画である。そのため、現時点では、下部組織の整備、充実に活動の重点
を置いている(下図参照)
。
市
民
連携・協働
事 業 者
参画・協働
市民・事業者・行政・専門家などによるパートナーシップ組織
エココミュニティ会議
エコネットワーク会議
意見・報告
意見・報告
環境計画推進パートナーシップ会議
監査・指導
報告
報告
監査・指導
連携・協働
連携・協働
環境計画評価会議
環境まちづくりアドバイザー会議
参画・協働
諮問
環境審議会
報告
行
答申
市 議 会
政
審議
図 西宮市の環境パートナーシップ組織
8
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
4 考察-今後の環境パートナーシップ組織の在り方-
本県の環境パートナーシップ組織は、行政が主導して設置されたものであり、先の類型
に当てはめると、
「委員会型」の運営を行っているものが大半である。行政依存からの脱却
の動きや自立化に向けた取組はまだみえていない。
他方、他府県に目を転じると、協議体から事業体への発展などに伴って、NPO として
法人格を取得し、独自のスタッフ、財源のもと自主事業を展開する環境パートナーシップ
組織が出現しつつある。
例えば、豊中市では 2002 年 6 月に「とよなか市民環境会議」のワーキンググループが
独立して「豊中アジェンダ 21 推進会」が結成され、2003 年 12 月には、それを母体と
して「NPO 法人とよなか市民環境会議アジェンダ 21」が発足している。これにより、従
来のワーキンググループは、下部組織の立場から脱し、市民環境会議と対等の関係を築く
に至っている。
同法人は、豊中アジェンダ 21 の推進主体として、生活、自然、交通、産業の4つの部
会を中心に、市民主体の環境保全・創造活動を展開している。主な取組としては、市民環
境展の開催、エコライフカレンダーの普及、自然観察活動の実施、事業所に対する普及啓
発活動の展開などを行っている。また、環境情報サロンの運営や自然林を守る活動、家庭
での生ゴミ堆肥化講習会などの事業を市から受託して実施している(金川 2005)
。
事務局運営に関しては、法人化に伴い、フルタイムの専従スタッフ 2 名を雇用し、事務
面での行政、
コンサルタントへの依存状態からの脱却を図っている
(事務所は市の所有で、
光熱費等の諸経費は市によって賄われている)
。
財政状況をみると、市からの負担金、補助金がかなりの割合を占めるが、会費制2の導入
や事業の受託によって自主財源の確保が図られようとしている。平成 17 年度の予算をみ
ると、会費収入は 95 万円、受託事業収入は 150 万円にのぼり、それぞれ総収入(約 2,000
万円)の約 5%、8%を占めている。
このような行政主導の環境パートナーシップ組織からの自立的発展パターン以外からも
NPO 型組織は出現している。環境団体の自主的なネットワーク組織や環境基本計画、ロ
ーカル・アジェンダ 21 の市民サイドのフォローアップ組織など、行政が参加しない純然
たる市民組織として設立されたものも現れている。
こうした自立化の方向は、
県内市町からも概ね肯定的に捉えられている。
今回の調査で、
自立化について『不可欠』
、あるいは『望ましい』と回答した市町は約 8 割にのぼった。
特に、環境パートナーシップ組織を設置済、あるいは設置を検討中の市町では、約 9 割に
まで達していた。また、
『不可欠』との回答は、設置済、設置を検討中の市町のみであった
のに対し、
『変化が生じない』との回答は、未設置で設置を検討していない市町に限られて
いた。すなわち、自立化は、環境パートナーシップ組織の運営を、あるいは設置の検討を
重ねるなかで、既に組織の今後の在り方の一つの答えとなっていることに間違いはない。
表 環境パートナーシップ組織の自立化に対する調査結果(平成 17 年 7 月実施)
2
正会員の個人には年間一口 1,000 円、団体には年間一口 5,000 円を募っている。2005 年度現在、会
員数は個人・正会員 193 口、団体・正会員 146 口にのぼる。
9
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
回
答
設置済
の市町
欄
環境パートナーシップ組織が行政依存から脱却し、第
三者機関化することは、市民と行政の対等な関係の構
築に向けて不可欠なプロセスである
環境パートナーシップ組織の自立化は、市民、地域の
主体的な環境保全・創造活動を発展させるうえで望ま
しい
環境パートナーシップ組織は、環境基本計画の策定等
行政目的達成のために設置されるものであり、自立化
するとその本来の性格を失ってしまう可能性がある
環境パートナーシップ組織が自立化をめざしても、予
算、人員面で行政に依存せざるを得ず、実質的な変化
は生じない
その他
総
計
設置検討中
の市町
未設置・
未検討市町
合 計
2
4
0
6
8
3
28
39
1
0
6
7
0
0
4
4
1
0
0
1
12
7
38
57
しかし、組織の自立化(=法人化)が必然ではないのもまた事実である。市民の自主性
に依拠せず、行政主導で自立化を推進したところで、市民の主体的な取組は期待できない
であろう。すなわち、
‘形式要件’としての法人化は無意味でしかない。あくまでも、組織
の法人化は、市民の自立意思の反映、主体性の発露の結果として捉えるべきであろう。そ
れ自体目的化する性格のものではない。
むしろ、実態をみると自立化に先立って、活動の多元化、深化を図ることが重要と考え
る。各界各層からなるアンブレラ組織としての環境パートナーシップ組織を設置しても、
それは単なる協議体にすぎず、行動計画、配慮指針の策定等にあたって地域の総意を形成
する以上の役割は期待できない。環境パートナーシップ組織の役割として期待される環境
基本計画のフォローアップ、政策評価には、専門家による協議が、環境保全・創造、環境
学習・教育に係る事業の具体的推進には、市民、実践家間での意見交換がやはり重要とな
る。すなわち、組織に求められている様々な役割を果たしていくには、部会、ワーキング
ループなど、組織内にテーマ、課題別に議論する場を別途設ける必要がある。そして、こ
の下部組織、実行組織の活動の広がりが環境パートナーシップ組織の価値を決めることに
なる。
事例で紹介した神戸市、西宮市とも、専門家部会、テーマ別部会等を設け、活動の拡大
を図ろうとしているが、特に注目したいのが、コミュニティ単位の部会、会議の設置・運
営である。持続可能な地域づくりの最終的な担い手がコミュニティに他ならない以上、小
中学校単位で身近な活動の実践を喚起するその活動への期待は今後ますます高まろう。そ
して、その取組が、社会面とともに環境面でも住民自治、コミュニティ・ガバナンスの確
立へと発展していくことが期待される。
一方、県外の事例に再び目を転じれば、
‘組織’ではなく、
‘仕組み’によって市民の参
画と協働を担保しようとする動きも起こりつつある。埼玉県の東松山市では、行政と環境
団体の間で「環境まちづくりパートナーシップ協定」の締結を行おうとしている。これに
よって、市は環境団体に対し、環境関連の施策・事業の情報提供や、参画の機会確保、団
体の活動の積極的な周知、団体、事業者、地域間のネットワーク化などに努めることをう
10
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
たっている。他方、環境団体は自らの活動の公開を約すとともに、施策・事業の企画立案
に対する積極的な提言・提案、実施運営に対する連携・協力などをうたっている。
このように、協定という形でのパートナーシップを促進することで、環境パートナーシ
ップ組織の‘枠外’にあった、既存の環境団体との間に新たな関係を構築することが可能
となろう。分野ごとに特化して活動を行うケースが多い環境団体のこと、協定によってア
ウトリーチする余地はまだ十分あると考えられる。
また今後、市民活動の成熟とともに、実践組織、中間支援組織として既存の環境パート
ナーシップ組織と同様の機能を担う組織が市民セクターのなかから出現することも予見さ
れる。そのように参画と協働のチャンネルが複線化、多元化していくに伴い、ゆるやかな
ネットワーク形成を試みるパートナーシップ協定の役割はより重要なものとなるであろう。
11
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
Ⅲ 地域環境ファンドの状況
1.地域環境ファンドとは
地域環境ファンドは、一般に規定されているわけではなく、本研究において提起してい
る概念である。ここでは、
『地域の環境保全・創造活動・事業や環境学習・教育への支援、
助成を目的に、住民、地域団体、NPO、事業所、行政等の地域のステークホルダーからの
資金提供等によって設立される基金』と地域環境ファンドを定義したい。
地域環境ファンドへの資金は、投資、融資、寄附、会費等、様々な形で提供されること
が考えられるが、本研究では、ファンドの継続性、持続的発展性等を勘案して、投資によ
るファンド形成の在り方を中心に考察する。
地域環境ファンドの支援・助成対象は、営利、非営利を問わず、コミュニティの環境美
化活動から、大規模風力発電施設整備事業に至るまで幅広く想定される。しかし、投資に
よるファンド形成を図るならば、
当然リターンの確保という観点から、
収益事業への投資、
融資を重視しなければならない。
他方、後述するように、地域環境ファンドの設立目的の一つには、域内での資金循環に
よる地域活性化もあげられる。支援・助成先としては、地域、コミュニティへの利益還元
をミッションとする NPO やソーシャル・エンタープライズもそのなかに含まれる。
2.地域環境ファンドの意義・役割
地球環境問題が深刻化するなか、持続可能な社会の形成に向け、
「環境」と「経済」の関
係の見直しがなされようとしている。従来のようにトレードオフの関係ではなく、環境負
荷の低減が経済の持続的発展に貢献し、産業の発展、経済の活性化が環境の改善に寄与す
るような好循環の仕組みの創造が期待されている。すなわち、環境配慮型の技術・製品の
開発、経営・生産手法の導入や、資源の効率的活用によって、経済的付加価値の向上と環
境負荷の低減が同時達成される社会経済システムの確立が希求されているといえよう。
他方では、
「環境」と「社会」の関係も不可分なものとして考えられようとしている。今
日、人口減少社会の到来を迎えるなか、集落機能、コミュニティ機能の低下により、里山
やため池など、人為的に維持されてきた環境が荒廃しつつある。このため、環境保全の観
点からも、コミュニティの維持が重要な課題となりつつある。その一方では、環境保全へ
の取組を通じた地域コミュニティの再活性化も期待されており、環境と社会との間におい
ても好循環が求められようとしている。
地域環境ファンドは、この「環境」
、
「経済」
、
「社会」のつなぎ手、結び目としての役割
を期待されている。すなわち、地域環境ファンドは、地域の環境保全活動への支援により、
地域環境の改善を図ると同時に、地域内の資金循環、物質循環を活性化し、内発的な経済
発展を推進する機能を担っている。さらには、その運営を通じて、域内の人的ネットワー
クの形成や、地域アイデンティティの源泉となる自然文化資本の維持を図り、コミュニテ
ィ機能の再生、再統合を実現する役割も期待されている。
地域環境ファンドは、持続可能な社会の形成だけでなく、分権社会の実現に向けたツー
ルとしても位置づけられる。現在、我が国では三位一体改革において中央から地方への税
源委譲が本格化しようとしているが、もう一つの地方分権、すなわち自治体から地域、コ
ミュニティへのエンパワーメントにあたっての財源確保は、今後の課題といえる。市民の
主体的な地域づくりを支援する資金の源泉の一つとして、地域環境ファンドは重要な役割
12
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
を担うと考えられる。
3.地域環境ファンドをめぐる状況
下記に記すように、地域づくりにおける参画と協働の進展とともに、地域環境ファンド
導入に向けた社会的環境は整いつつある。また、昨年来拡大しつつあるグリーン金融施策
における金融機関と自治体の連携の延長線上に、地域環境ファンド設立の動きが起きるこ
とも想定される。
(1) コ・ファイナンスの進展
近年、主体的な地域づくりの進展とともに、資金面でも広く市民に支援を求める動きが
広まっている。すなわち、今日、参画と協働はコラボレーションという理念を超え、コ・
ファイナンス(co-finance)の領域へと達しつつある。
例えば現在、
「住民参加型ミニ市場公募地方債(ミニ公募債)
」が全国の自治体で相次い
で発行されている。2004 年度末現在、その数は 350 にのぼる。これらミニ公募債は、
通常の地方債とは違い、発行目的や対象事業を限定しているため、自らの資金の使途を意
識した住民や個人投資家の関心を得やすく、いずれも高い人気を博している。
ミニ公募債は、環境分野にも活用されている。例えば、鳥取県大山町(旧三和町)では、
風力発電施設の建設にあたってミニ公募債を発行している。一口 10 万円、総額 5,000 万
円の募集を行ったところ、4 倍強の申込みがあり、抽選で出資者を決定するに至ったとい
う。この他にも、最終処分場の整備(茨城県ひたちなか市)や雑木林の保全(清瀬市)な
どにも、ミニ公募債が活用されている。
他方では、NPO 等も債権による資金調達に取り組んでいる。一般にコミュニティ・ボ
ンド、市民ファンドなどと呼ばれるこれら私募債においても、環境分野での活用が目立ち
はじめている。
例えば、東京の「自然エネルギー市民ファンド」では、市民からのべ約7億 6 千万円の
資金を集めて北海道、青森、秋田に風力発電所を稼働させている。また、長野県飯田市の
「南信州おひさまファンド」では、総額約 2 億円の募集を行い、それを原資として太陽光
発電や ESCO 事業を実施しようとしている。これらの環境分野における市民ファンドのス
キームは、本研究で概念提起している地域環境ファンドの原型をなすものといえる。その
具体的な運営方法は、3項に詳述している。
今後、このようなコ・ファイナンスの動きは、
「コミュニティ・クレジット3 」などの新
たなコミュニティ・ファイナンス(地域共同金融)の手法の開発によって、さらに加速さ
れる可能性がある。また、県内各地で設立が相次いでいる「エコ・マネー(地域通貨)
」も、
そのネットワークを活かせば、コ・ファイナンスの足がかりになると思われる。
3
『地域社会において互いに信頼関係にある企業等が、相互協力を目的に資金を拠出し合い連携するこ
とで、全体として高い信用を創造し、金融機関からの資金調達を円滑化するとともに、地域の資金を地
域に環流させる金融手法であり、プロジェクト・ファイナンス等で用いられる新しい金融技術を組み込
んだものである(日本政策投資銀行 2002)
』
。日本では、2001 年日本政策投資銀行とみなと銀行が日
本で初めてのコミュニティ・クレジットを神戸で行っている。
13
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
他方、コ・ファイナンスへの市民意識、住
図 環境保全活動への寄附・投資の意向
民意識も大きく変わろうとしている。本県が
既に行って
わからない
いる
行ったアンケート調査でも、環境保全活動を
31.0%
6.8%
実施する団体への寄附や投資の意向を問うた
ところ、
『既に行っている』
、
『今後行いたいと
行いたいと
思う』との回答が、4 割に達する結果が出て
今後、行い
は思わない
いる。地域、コミュニティへの関心が高まる
たいと思う
29.0%
33.2%
なか、
ボランティアとしての参画だけでなく、
(出典:2005年度県民モニター「第4回アンケート調査」)
寄附、投資といった形での資金提供が、社会
貢献の選択肢として認識されつつあるのは間違いない。地域環境ファンド形成の社会的環
境は整いつつあるといってよい。
(2) グリーン金融4の拡大
近年、金融・資本市場においては、環境問題に対する消費者、投資家の関心の高まりや
企業の自主的積極的な環境配慮への取組の進展を受けて、社会的責任投資(SRI:Socially
Responsible Investment)の考え方が浸透しつつある。
それに伴い、金融機関の間では環境に配慮した企業や事業等への投資を目的としたエコ
ファンドの導入が相次いでいる。1999 年から証券会社等が販売を開始したエコファンド
の純資産額は、
2003 年12 月末時点で既に約850 億円に達していると報告されている。
2004 年には、環境格付に基づく融資制度の創設も行われている。日本政策投資銀行で
は環境スクリーニングを用いて企業の環境経営度を評点化し、これを融資条件に反映する
「環境配慮型経営促進事業」制度を我が国で初めて導入し、2004 年の 1 年間で製造業、
金融・保険業を中心に 32 件(約 400 億円)の融資等を実行している。同制度のもとでは、
私募債(限定された投資家に発行する債券のこと)の保証やシンジケート・ローン5の組成
なども行われつつある。
また、2005 年には、東京三菱銀行が総額 1000 億円(今後 3 年間)にのぼる環境融資
枠「環境ファンド」を自社で設け、新エネルギーや省エネ、リサイクルなどの国の補助事
業を対象とした融資を開始している。
こうした取組を支援する法整備も進みつつある。2005 年4月に施行された「環境配慮
促進法」では、投資や購買における環境情報の利用の促進を図るため、社会的責任投資や
4
グリーン金融、環境金融とは、金融メカニズムを媒介として、企業等の主体の環境配慮型行動を促進
しようとする一連の取組をさす。従来の環境経済学が、環境問題に対する「市場の失敗」に対する政府
の介入に焦点を当てていたのに対し、グリーン金融は市場自体の活用によって、効果的、合理的、かつ
円滑に問題解決にあたろうとするアプローチである。それは、公的な政策手段(法規制、税制・補助・
助成金等)に欠けがちな効率的、持続的な資源配分の実現や、地域や国の枠組を越えた広域的な対応な
どにおいて政府機能を補う役割を担うものとして考えられている。グリーン金融は、①金利機能の活用
した銀行融資中心の間接金融、②環境リスク低減・補償機能に基づく保険機能、③投資家が株・債券を
購入し、環境保全性の高い企業、事業へ直接投資する直接金融の3つに区分される(藤井 2005)
。地
域環境ファンド自体は直接金融の枠組みとして捉えられるが、本項(2)では主に間接金融としてのグリー
ン金融の展開に関する金融機関の取組と自治体の施策に言及している。
5
幹事である金融機関が融資団を組成して、同一の借入人に対し、同一の契約証書に基づき、同一の約
定条件により協調して融資を実施する仕組みみのこと。
14
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
表 金融機関の環境配慮に関する最近の動向
西暦
事
項
1998 ○滋賀銀行が日本初の環境融資制度「エコクリーン資金」を創設
1999 ○日本初のエコファンドを日興証券(当時)が発売
○日本初の SRI ファンドを安田火災海上(当時)が発売
2000 ○東京都職員互助会が、日本の機関投資家として初めてエコファンドを設定
2001 ○日本政策投資銀行が、日本の金融機関として初めて UNEP 金融
イニシアティブ「環境と持続可能な発展に関する金融機関声明」に署名
2002 ○国際協力銀行が「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」を策定。
2003 年から施行
2003 ○UNEP・金融イニシアティブ会議が東京で開催(30カ国、100以上の金融機関
が参加)
○みずほコーポレート銀行が日本で初めてエクエーター(赤道)原則に署名
○住友信託銀行が、日本で初めて企業年金向けの SRI ファンドを設定
○モーニングスターが「社会的責任投資株価指数(MS-SRI)」を開発
○土壌汚染対策法が施行
2004 ○環境省「金融業における環境面からのスクリーニング手法に関する調査研究報告書」
作成
○日本政策投資銀行が「環境配慮型経営促進事業」を創設、環境経営の進展度(127 項
目)により企業を格付け。格付けにより優遇融資等を実施
2005
4 月 ○国民に対し、環境情報を参考に投資するよう促した「環境配慮促進法」が施行
5 月 ○東京都が「環境ファイナンス東京会議」を開催し、環境配慮型金融商品の開発を要請。
以降 5 件の金融商品が誕生
9 月 ○商工中金が三重県と連携した環境金融商品の取扱を開始
10 月 ○東京三菱銀行が 1000 億円(3 年間)の環境融資枠「環境ファンド」を創設
11 月 ○商工中金が京都府と連携した環境金融商品の取扱を開始
12 月 ○宮城県が、県内金融機関に「環境金融」への取組を要請。商工中金が宮城県・仙台市
と連携した環境金融商品の取扱を開始
2006
2月 ○東京都「環境シンポジウム in 東京」を開催
環境ラベル制度等に関しても情報提供し、事業者や国民に対する普及啓発を行うことを国
の責務と定めている(第 13 条関係)
。
一方、地方自治体でも、グリーン金融を推進する動きが加速している。東京都では、企
業等の環境配慮行動を促進する、金融機関による自主的な取組の拡大をめざす「環境金融
プロジェクト」を開始し、2005 年 5 月に開催した「環境ファイナンス東京会議」におい
て金融機関等に対し、環境配慮型金融商品の開発を要請している。その結果、これまでに
5 件の金融商品が誕生している。
金融商品の開発にあたっては、都の環境施策との連携が図られている。例えば、商工中
金の「環境配慮型経営支援貸付」では、都の「地球温暖化対策計画書」制度(環境確保条
15
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
例)において都による評価が「A評価」以上の事業者は、地球温暖化対策に積極的な事業
者として、環境配慮に必要な設備資金の貸付にあたり、優遇金利が適用されている。また、
住友信託銀行の「環境配慮型マンション向け金利優遇住宅ローン」では、都の「マンショ
ン環境性能表示」制度(環境確保条例)における当該マンションの環境性能の程度に応じ
て優遇金利の適用が図られている。
このほか、三重県、京都府、宮城県でも、2005 年度に商工中金と連携してそれぞれの
環境マネジメントシステム6の認定事業者を同社の「環境配慮型経営支援貸付」の貸付対象
者に追加する措置を講じている。
こうしたグリーン金融施策の展開は、現在のところ地域環境ファンド設立の動きとは直
接関連していない。しかし、金融機関と自治体間の連携は、地域環境ファンド設立におい
ても重要なファクターであり、こうした取組の延長線上に新たなファンド創設の動きが起
こることも十分想定される。
4.地域環境ファンド、地域ファンドの事例
以下では、地域環境ファンドの事例のほか、環境分野への投資、融資を実施している地
域ファンドの事例を示している。
(1) 県内の地域環境ファンド-ひょうごグリーンエネルギー基金-
① 経緯等
兵庫県では、地球温暖化防止への地域の取組の一環として、太陽光発電等のグリーンエ
ネルギーの発電施設を県民参加のもと設置し、
グリーンエネルギーの導入促進を図ろうと、
平成 14 年度より「ひょうごグリーンエネルギー基金」を設置している。
② 事業内容
ひょうごグリーンエネルギー基金の総額は 1,500 万円(設
立当初)で、国(NEDO)
、県等からの補助金、寄附のほか、
会員からの拠出金でもって構成されている。会員は、1口月額
500 円、年額 6,000 円を会費として支払っている。会員総数
は、平成 17 年度末で約 350 名にのぼる。
これまで基金を活用して、地域住民の目にふれやすいシンボ
リックな地域の集客施設や公共施設などに太陽光発電施設が
10 基、小型風力発電(マイクロ型風力発電)施設を 3 基設置
している。会員には、これら県民発電施設での発電により削減
した CO2 の量が定期的に報告されることとなっている。
このファンドの運営には、地球温暖化防止活動推進センター
((財)ひょうご環境創造協会が運営)があたっている。
6
県民発電所の一つ
尼崎21世紀の森構想
「グリーンエネルギースタンド」
三重県の場合は、三重県が推進している環境マネジメントシステムの認証制度であるM-EMS(ミ
ームス)において、ステップ1またはステップ2の認証を取得した事業者、京都府の場合は、京都府が
推進している「エコ京都21」認定・登録制度において、エコ京都21、エコ京都21アドバンスまた
はエコ京都21マイスターの認定を取得した事業者、宮城県の場合は、
「みちのくEMS」の認証取得事
業者を対象に追加している。
16
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
③ 事業スキーム
設置による環境負荷低減
に関する情報を提供
会
収益
ひょうごグリーン
員
エネルギー基金
拠出
設置
補助金
国(NEDO)
寄附
県
県民・事業者
県民発電施設
地域のシンボリックな建物等
図 ひょうごグリーンエネルギー基金スキーム
④ 課題
今後も継続して国、県からの補助金を得ることは難しく、資金の持続的発展を図るには、
会員数の一層の拡大が求められる。しかし、現状をみると、会員拡大のペースは、設立当
初に比べ伸び悩み気味であり、今後、条例に基づく地球温暖化防止に係る届出の関連事業
所等への働きかけを一層強めていくことが必要である。
(2) 県外の地域環境ファンド、地域ファンドの事例
ここでは、ヒアリング調査の結果等を踏まえ、地域の環境保全・創造事業への支援を行
う地域環境ファンド(①~③)とともに、環境関連ビジネスへの支援や NPO 等による環
境保全活動への融資等を実施している地域ファンド(④、⑤)の事例を示している。
①
②
③
④
⑤
南信州おひさま
ファンド
エコロカルヤス
ドットコム
北海道グリーン
ファンド
札幌元気ファン
ド
北海道 NPO
バンク
地域
長野県
飯田市
滋賀県
野洲市
事業内容
太陽光発電施設の設
置、ESCO 事業
太陽光発電施設の設
置、ESCO 事業
資金調達方法
匿名組合契約に
よる市民出資
地域通貨と組合
わせた市民出資
北海道
札幌市
NPO 法人、
株式会社
札幌市外郭
団体
風力発電施設の設
置、省エネ啓発事業
ベンチャー企業支
援・育成
匿名組合契約に
よる市民出資
各種団体による
出資
北海道
NPO 法人
NPO 団体支援
寄附
北海道
事業主体
NPO 法人
NPO 法人
① 南信州おひさまファンド
ア 経緯等
長野県飯田市は、国内でも比較的日照条件に恵まれた地域のひとつで、平成9年から
市独自で、太陽光発電施設の建設に対する補助制度を創設し、経済的な援助を行ってき
た。また、平成 14 年に改訂された「21’いいだ環境プラン」では「2010 年までに、
17
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
市全体が排出する温室効果ガスの総排出量を、1990 年に対し 10%削減する」という
環境目標を掲げ、エネルギーや地球温暖化の対策を進めている。
平成 16 年に、太陽光発電やペレットボイラー・ストーブの導入、商店街ESCO7の実
施、エコハウスの建設・評価、自然エ
ネルギー大学校の運営を柱とする、行
政と民間とNPOのパートナーシップ
型環境公益事業が、環境省の補助事業
「環境と経済の好循環まちづくりモデ
ル事業」に認定された。このパートナ
ーシップ型事業を実施するため、飯田
市、e-地域協議会8、NPO、おひさ
ま進歩エネルギー(有)が連携し、事業
を推進している。
イ 事業内容
南信州おひさまファンドにより幼稚園の屋根に設置
・太陽光発電事業
された太陽光発電施設
民間事業者であるおひさま進歩エ
ネルギー(有)と飯田市が主体となり、飯田市内の保育園・幼稚園・公民館などの公共
施設に太陽光発電施設を設置している。
事業資金は、前述の環境省補助及び市民からの出資を主な財源としている。市民か
らの出資については、おひさま進歩エネルギー(有)と出資者の間で民法に基づく匿名
組合契約9を締結し、事業に対する初期投資、維持運営費を賄い、事業収益の一部を出
資者へ還元している。
・ESCO 事業
飯田市の商店街を中心に、100 箇所程度の商店で ESCO 事業を実施している。飯
田市のプログラムの特徴は、小規模である点、太陽光発電と同様、地域分散型で多く
の ESCO を集束させることにより、大きな省エネルギー効果を生む点にある。
・ペレットボイラー・ストーブ導入事業
飯田市内の保育園、小中学校など約 40 箇所にペレットストーブの設置を推進して
いる。ペレットは、主に林業から出た間伐材や、製材くずなどを固形化したもので、
未利用のバイオマスエネルギーである。
・自然エネルギー大学校
主に、次代の環境保全を担う人材育成のため、環境エネルギーセミナーを中心とし
た、普及啓発事業を行っている。
7
Energy Service Companyの略。工場、ビル、店舗等に対して照明や空調などエネルギー設備を省
エネ型へ改良、転換しエネルギーコストの削減を図る事業
8
「地球温暖化対策推進法」に基づいて地球温暖化対策を推進する組織
9
事業を行う営業者と資金を出資する出資者(匿名組合員)が、事業から生ずる損益の分配を約する商法
第 535 条から 542 条に基づき契約をする仕組みみ。出資金の使途は契約書に定めのある範囲に限定さ
れ、また出資者は出資金を超えた損失を負担することはない。
18
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
ウ 事業スキーム
電力会社
公共施設
設置
市民
建設会社
匿名組合契約によ
る出資・分配
自然エネルギー
市民ファンド
建設請負契約
余剰電力の販売
売電収入
売電量に応じた
料金収入
グリーン電力の販売
おひさま進歩エネルギー㈲
出資・
分配金
事業者
収入
補助金
ESCO 事業サービス
の提供と収入
地域の商店
環境省
図 南信州おひさまファンドスキーム
事業スキームは上の図のとおりであり、
太陽光発電施設で発電された電力については、
設置施設で消費し、余剰電力を中部電力へ売電している。また、発電した電力の全量に
ついて、第三者機関によるグリーン電力10の認証を受けたうえで、国内企業に販売を行
っている。
2005 年 2 月の出資募集時の出資要件は以下のとおりである。出資は、リスクとリタ
ーンを考慮したA号とB号の2種類が用意されており、分配ルールが異なっている。
表 南信州おひさまファンド出資要件
A号匿名組合契約
B号匿名組合契約
1 口金額
10 万円
50 万円
出資募集口数(総額)
最大1500口
(1億5,000万円) 103 口(5,150 万円)
目標年間分配利回り
2%
3.3%
契約期間
10 年間
15 年間
利益分配及び現金分配の優先順位 優先配分
劣後配分
商法第535 条から542 条に規定された匿名組合契約に基
出資の形態
づく出資
エ 課題
・初期投資が行政による補助等により賄われていることや、太陽光発電という性格上、
スケールメリットを出しにくいことが、今後の検討課題となっている。
② エコロカルヤスドットコム
ア 経緯等
地域住民、行政、地元企業が、足元から環境保全と地域づくりに取り組むことを目的
10
太陽光・風力等の自然エネルギー由来の電力は、地球温暖化防止や再生可能エネルギーであることか
ら、環境的な価値を有している。このような電力エネルギーを「グリーン電力」と呼び、第三者機関に
よる認証を得ることにより事業者等へ販売することが可能である。
19
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
に、
「エコロカルヤスドットコム」という NPO 法人を設立した。ちなみにエコロカルと
はエコ(環境)とローカル(地域)を組み合わせた造語である。
イ 事業内容
・地域通貨の発行による太陽光発電施設設置事業
1000 円/口の出資に対し 1100 円分の地域通貨「Smile」を NPO 団体が発行し、
地域の商店での買い物代金や公共施設の利用量の一部(概ね5%程度)を Smile で支
払い可能とするシステムを構築、運営している。地域住民は、1000 円の現金が 1100
円分の地域通貨として使用できるため、10%のプレミアムが付与されることになる。
この地域通貨で支払った額が、そのまま積み立てられ太陽光発電施設の設置費用とし
て使用される。
登録店舗では、それらの地域通貨を使用可能とすることで、集客効果が見込める。
加えて、環境保全活動への積極的な協力姿勢をうち出すことができ、店、事業のイメ
ージ向上なども期待できる。登録店舗は、食料品、生活雑貨、建築・土木、各種教室
など多岐にわたり、約 130 店舗が「すまいる市加盟店」として登録されている。
ただし、店舗で使用された Smile につい
ては、基本的に店舗が太陽光発電施設のた
めに寄附をした形となるため、地域企業、
店舗の理解と協力が不可欠なシステムであ
る。
公共施設等に設置された太陽光発電施設
は、設備が行政に寄附され、発電された電
力については、そのほとんどが売電されて
いる。これまでのところ、市内 3 箇所に設
置されている。
Smile により設置された太陽光発電施設(上・下)
・里山保全活動
森林保全のための人材不足と未利用の森
林資源の有効活用のため、NPO において、
森林保全を行う
「里山会員」
を広く募集し、
森林保全活動を行った会員に対し、山の恵
みを活動報酬として渡すシステムを構築し
ている。間伐材を利用した森林保全の拠点
を建設するなど、住民の手による森林保全
の取組が進められている。
ウ 課題
・地域通貨として域内で循環するためには、
地域通貨「Smile」の認知度の向上と協力店舗の拡充が必要である。
・地域、協力店舗に対するメリット付けとして、設置された発電施設、発電された電力
の地域への還元が必要である。
20
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
公共施設・エコロカル店(協力店舗)
買物金額・使用料の一部(5%
程度)に Smile を使用
市 民
太陽光発電
設備への寄附
1 口:1000 円
市民:1000 円の現金を 1100 円分の金
券(Smile)に換えることができ
る。
店舗:Smile で支払われた額は、店舗
の寄附という形で太陽光発電
設備に設置資金となる。
Smile 発行
1 口:1100 Smile(1100 円)
エコロカル ヤス
ドットコム
公共施設に太
陽光発電設備
を設置(寄附)
公共施設
余剰電力を
売電
電力会社
図 Smile による太陽光発電施設設置スキーム
③ 北海道グリーンファンド
ア 経緯等
1990 年代に、生活クラブ生活協同組合・北海道を中心として、脱原発をキーワード
に、エネルギー消費の抑制や自然エネルギーの拡大に係る市民活動を行っていた活動グ
ループが母体となって設立された。
イ 事業内容
・グリーン電気料金制度
毎月の電気料金とその5%分の寄附を加えた額を北海道グリーンファンドが会員か
ら集め、電気料金分を電力会社に支払い、5%分の寄附を市民協働発電所づくりの基
金として運用している。
・市民出資型風力発電の普及事業
「未来の環境」と「地域の経済」という 2 つの利益を地域に還元していく視点に立
った、市民出資による風力発電事業。2001 年 9 月北海道浜頓別町、2003 年 3 月秋
田県天王町、2005 年 2 月北海道石狩市に風車を建設した。現在は、2006 年 2 月に
3 箇所、8 月に2箇所の建設を予定している。
・省エネルギー普及啓発事業
北海道グリーンファンドオリジナルの環境家計簿「G-FILE」を作成し、家庭
での省エネの呼びかけや、省エネルギーをテーマにした講演会、学習会の開催、講師
の派遣等、啓発事業を行っている。
・自然エネルギー普及啓発事業
風力発電や太陽光発電など再生可能な自然エネルギーの普及を促進するため、その
利用の可能性や地球温暖化防止における効果などについて、専門家を招いて、市民を
対象とした講演会、シンポジウムを開催している。
・エネルギー政策提案
これまでの化石燃料などを用いた発電エネルギー政策からの代替案として、自然エ
ネルギー利用、省エネルギー化に係る北海道のエネルギー政策について、専門家とと
もに調査、議論しながら、様々な形で情報発信を行っている。
21
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
ウ 事業スキーム
・グリーン電気料金制度
グリーン電気料金制度は、電気料金の5%を寄附し、それを基金として自然エネル
ギーの市民発電所の建設に充てるというものである。現在会員数は通常の5%会員が
1100 名、年額 5000 円の定額会員が 200 名の計 1300 名が会員となっており、年
間 600 万円程度の資金が集まっている。
一度会員になると、会員をやめるまで毎月寄附が発生するシステムであるため、資
金確保の面で安定したシステムであると言える。
NPO法人
グリーンファンド分
北海道グリーンファンド
基金
電気料金分支払
電気料金+電気料金×
5%を口座振替で支払
電気料金のお知らせ
会
員
電力会社
市民共同発電
電力供給
図 グリーン電気料金制度スキーム
・市民出資型風力発電事業
資金の流れ、スキームは以下のとおりである。秋田の天風丸までは、全国枠と地域
枠を設け出資を募っていたが、それ以降の建設では、全国枠に統一して 1 口 50 万で
出資を募っている。
また、現在建設準備中の発電施設からは、リスク分散という観点から複数の風力発
電施設に出資するというスキームに変更されている。運用期間は 15 年で目標年間分
配利回りを 2.3%としている。
NPO法人
北海道グリーンファンド
出資・基金設立
出資会社
有限責任中間法人
自然エネルギー市民基金
全額出資
㈱北海道市民風力発電
融資
㈱自然エネルギー市民ファンド
コンサルタント・開発支援・
保守管理受託
風力発電事業者
返済
配当
出資
出資者
販売
支払
電力会社
図 北海道グリーンファンドによる風力発電
施設設置スキーム
22
このファンドによって石狩市に建設
された風力発電施設
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
表 風力発電施設の出資状況
全国枠
5820 万円
青森市民風車わんず
(285 名)
4180 万円
秋田市民風車天風丸
(213 名)
2億 3500 万円
石狩市民風車「かぜるちゃん」
(266 名)
2億 3500 万円
石狩市民風車「かりんぷう」
(330 名)
地元枠
合計
1 億 2000 万円 1 億 7820 万円
(488 名)
(773 名)
6760 万円 1 億 940 万円
(227 名)
(440 名)
2億 3500 万円
―
(266 名)
2億 3500 万円
―
(330 名)
エ 今後の事業計画
現在計画している事業は、青森、秋田(2)、茨城、千葉の合計 5 基の風力発電施設の建
設で、平成 17 年 11 月 25 日から募集し、12 月 19 日時点で 8 億 6000 万円のうち、
5 億 7000 万円が集まっていた。(募集期間の 2 月 14 日前を待たず 1 月 16 日で予定
口数に到達)
今後の風力発電施設の建設に向け、現在北海道、東北を中心に 20 箇所程度の風況調
査を行っている。
表 今後の事業計画(2006 年 2 月現在)
設地
青森県大間町
秋田県秋田市
秋田県秋田市
茨城県神栖市
千葉県旭市
工事着工
2005 年11 月 2005 年11 月 2005 年11 月 2005 年12 月 2005 年12 月
運転開始
2006 年 3 月
2006 年 3 月
2006 年 3 月
2006 年 9 月
2006 年 9 月
定格出力
1000kW
1500kW
1500kW
1500kW
1500kW
売電先
東北電力㈱
東北電力㈱
東北電力㈱
東京電力㈱
東京電力㈱
総事業費
2 億 4500 万円
3 億 2500 万
3 億 5000 万
3 億 4500 万
3 億 3300 万
円
円
円
円
補助金
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)より平成 17 年度地
域新エネルギー導入促進事業補助金交付決定済
オ 課題
・RPS法11では、電力会社は総発電量の1%程度を再生可能エネルギーにより賄うこと
とされているが、今後も、再生可能エネルギーによる発電事業が拡大していくために
は、RPS法による電力会社の購入枠の拡大や、ドイツで導入されている、電力会社が
購入する自然エネルギー由来の電力料金の購入価格の固定化など、さらなる制度の改
革が必要である。
・事業開始時は、出資者は風力発電施設の建設地域を中心に募っていたが、事業の拡大
11
RPS(Renewables Portfolio Standard)法とは「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特
別措置法」のことで、電気事業者に対して、毎年、その販売電力量に応じて一定割合以上の新エネルギ
ー等から発電される電気の利用を義務付け、新エネルギー等の更なる普及を図るもので、電気事業者は、
義務を履行するため、自ら風力、太陽光などの「新エネルギー等電気」を発電する、若しくは、他から
購入する、又は、相当量を取得することが必要となる。
23
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
に伴って、全国を対象とした出資募集の形態に変化している。今後は地域貢献性の向
上という観点からも、風力発電施設の建設地域・住民への還元や出資者と建設地域の
新たな関係構築等について検討していく必要がある。
④ 札幌元気テクノロジーファンド
ア 経緯等
札幌では、北海道大学等の教育・研究機関や近郊の試験研究機関を中心とする産学官
連携が原動力となって、数多くの先端技術を有するベンチャー企業が活発に活動を展開
している。これらベンチャー企業群の地域経済の活性化に果たす役割は、今後ますます
大きくなっていくことが予想されている。
そこで、
平成 17 年 5 月に、
このなかでも特に成長可能性が期待できる企業を対象に、
資金的、人的投資を行う「札幌元気テクノロジー投資事業有限責任組合」が設立された。
イ 事業スキーム
ファンドに対する資金拠出は、地域金融機関と北海道ベンチャーキャピタルが 2 億
5000 万円、札幌市が 8000 万円、中小企業基盤整備機構が 1 億 7000 万円の合計 5
億円である。
ファンドの運営管理を一括で行っているのが「北海道ベンチャーキャピタル」という
投資会社で、将来株式上場の見込のある札幌市内の設立 7 年以内の IT、バイオ系ベンチ
ャー企業等に対し出資する。また、ベンチャー企業に対して人の派遣など、今後の成長
支援のコンサルティングも行うハンズオン型のベンチャー支援制度である。
有限責任組合員
北洋銀行
北海道銀行
札幌銀行札幌信用金庫
(3 行で 2 億 5000 万円)
売却益
札幌元気
札幌市内
技術系ベンチャー企業
テクノロジーファンド
(5 億円)
さっぽろ産業振興財団
(札幌市)(8000 万円)
中小企業基盤整備機構
(1 億 7000 万円)
株式市場
出資
IPO
分配
投資
出
資
運用管理
分
報
配
酬
札幌市内
技術系ベンチャー企業
成長支援
無限責任組合員
北海道ベンチャーキャピタル
図 札幌元気テクノロジーファンド投資スキーム
基金 5 億円のうち、その 30%は管理運営費として見込んでおり、残りの 70%にあた
る 3.5 億円から 4 億円程度が実際の投資原資である。また、投資期間は 10 年と定めて
いる。
1 件当りの投資額はバイオ系では 5000 万円程度、IT 系では数百万を予定しており、
平成 17 年度は 5 件の投資を行っている。
24
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
ウ 投資活動の概要
投資対象
対象分野
投資の種類
投資先企業
の育成
投資先会社の
発掘方法
投資実行の
判断基準
札幌市内において事業を営む又は営む予定の設立 7 年以内の企業
地域の先端的な技術・研究成果を活用する分野
株式、有限会社及び企業組合・有限責任事業組合等の持分、新株
予約権、新株予約権付社債
無限責任組合員は、投資後における投資先企業の業況や事業の進
捗状況等を継続的に把握するとともに、経営、技術等に関する支
援を行う
①本組合の組合員からの情報、②さっぽろ産業振興財団が実施す
るベンチャー支援事業の支援対象者、③道内の公的支援機関、北
海道大学、小樽商科大学等の大学及び研究機関等のネットワークを通じ
て有望な案件の紹介を受けながら、投資先の発掘を進めていく
投資を実行するか否かの判断は、投資対象企業が①優れた成長性
又は新規性を有するか、②株式公開を視野に入れているか、の点
を勘案しながら総合的に判断する
(参考)神戸ベンチャー育成投資事業有限責任組合(通称:神戸リレーションベンチャーファンド)
組合構成員
設立日
平成 17 年 8 月 4 日
ファンド総額
11 億 2000 万円
無限責任組合員 フューチャーベンチャーキャピタル株式会社
神戸信金、姫路信金、播州信金、兵庫信金、尼崎信金、日新信金、淡路
有限責任組合員 信金、中兵庫信金、信金中央金庫
(財)神戸市産業振興財団
運用期間
10 年
投資総額の 60%以上は神戸市所在の企業、残りは神戸市に所在する企
地域
業との提携、その他取引のある企業もしくは神戸経済との関連性を有す
る企業
業種は限定せず、またステージはアーリーステージからミドルステージ
業種
のベンチャー企業、第二創業に取組む中小企業を中心とする
1 社当りの投資額 原則 5000 万円を上限とする
・神戸市内に本支店を置くすべての信金と公的セクターが有限責任組合
ファンドの特徴
員となって組成された全国初の地域密着型のベンチャーファンド
・地域金融機関の資金、投資会社の資金・ノウハウ等を活用
・神戸市産業振興財団が出資する 3000 万円は、(財)阪神・淡路産業復
興推進機構解散に伴う残余財産を充当
その他
・市レベルでの地域密着型ベンチャーファンドに公的セクターが出資す
るのは、政令市では、札幌元気テクノロジーファンドに次いで全国で
2 例目、ファンド規模は国内最大級
投資対象
エ 課題
・当ファンドは、技術系ベンチャーをその投資対象としているが、そのような事業を投
資対象とする場合、ファンドの運用管理者に投資対象のスクリーニングに対するノウ
ハウを持った者を充てる必要がある。
・技術系ベンチャーはリスクが大きい分、リターンも大きくなる可能性があり、出資を
25
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
行う民間事業者から見れば投資することへの魅力は大きい。しかし、環境ビジネスや、
コミュニティビジネスは株式公開等の大きな成長が見込めないことから、株式公開を
前提としない投資や、融資制度も組み合わせたスキームを構築する必要がある。
⑤ 北海道 NPO バンク
ア 経緯等
現在、NPO にとって運転資金の確保も運営上の課題のひとつとなっている。金融機
関に融資を申請しても、NPO は信用保証の対象外として扱われ、融資を受けるのが困
難である。加えて、行政からの受託事業は事後(年度末)支払が通例であるなど、NPO
の資金繰りは決して楽ではない。
そこで、北海道NPOサポートセンターや北海道、札幌市などが中心となって、NPO
への融資を専門とする「北海道 NPO バンク」が設立された。
イ 事業内容
・全体スキーム
市民、NPO、企業、行政からの出資を受けるNPOバンク事業組合と、NPOや
ワーカーズコレクティブなどに融資するNPO法人北海道NPOバンクにより構成さ
れる。
行政からの財政的支援としては、北海道から 1500 万円(ふれあい財団経由でNP
Oバンク事業組合に出資)、札幌市から 500 万円の出資を受けている。
NPO・市民・企業等
ふれあい財団
補助
北海道
1500 万円
出資
補助
NPOバンク事業組合
出資金 3861 万円 補助金 500 万円
払戻
札幌市
500 万円
運営安定金
(永久劣後ローン)
融資
NPO法人
北海道NPOバンク
返済
融資
NPO・ワーカーズコレクティブ等
図 札幌NPOバンクスキーム
札幌市からの 500 万円については、劣後ローンとしてNPOバンクの運営安定資
金に充てられている。その他の出資金については、NPOバンク事業組合からNPO
バンクへの融資・返済という形態をとっている。融資の原資としては、北海道からの
補助金及び市民、事業者等からの出資金が充てられ、その総額は 4000 万円弱に達す
る。
26
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
・融資条件
①NPO バンク事業組合員であること
②NPO 団体またはワーカーズコレクティブであること(法人格は問わない)
融資対象者
③事業目的に社会性があること
のすべてを満たしている団体
期
間
金
利
融
資
額
資金使途
保
証
1 ヶ月単位で 1 年以内
ただし、事業状況を勘案の上 1 年間の延長が可能
2%固定
200 万円を限度とするが、2 期以上の事業実績がある団体の融資額は、
NPO バンク事業組合への出資額の 100 倍、それ以外の場合は出資額
の 20 倍を限度とする
運転資金を中心にするが、開業資金、設備資金も可
団体代表者を含めて連帯保証人2名が必要
ただし、資金使途が企業または行政からの委託事業に係る運転資金で
あることを示す書類を用意できる場合は団体代表者1名とする
返 済 方 法 元利一括返済又は元利金等毎月返済
・審査について
北海道 NPO バンクの融資審査の特徴は以下の3点である。
・外部有識者もメンバーとして加わる審査委員会を設置し、透明性のある審査を行
う。
・審査は融資判定表を中心として行い、点数化することにより出来る限り客観性を
確保する。
・融資判定表では事業目的の社会性などを評価することで、多くのNPO法人に融
資の道を開く。
審査委員会は、有識者4名、NPOバンクの理事兼任が3名の計7名で構成され、
書類審査と、面接審査により融資の可否を決定する。
・融資実績
2002 年 12 月から 2005 年 9 月までの融資実績は以下のとおり。
表 資金使途別融資実績
つなぎ資金
融資金額
5,877 万円
運転資金
設備資金
合計
2,780 万円
400 万円
9,057 万円
件数
割合(金額) 割合(件数)
34 件
65%
64%
17 件
2件
53 件
31%
4%
100%
表 地域別融資実績
札幌市
43 件
(81%)
その他
10 件
(19%)
27
合計
53 件
32%
4%
100%
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
表 活動分野別融資実績(件数)
福祉
環境保全 社会教育
38 件
7件
3件
(72%) (13%) (6%)
NPO まちづくり・
その他
支援
経済活性化
3件
2件
0件
(6%) (4%) (0%)
合計
53 件
ウ 課題
・現在、貸出原資としては約 4,000 万円弱あるが、これをいかに充実させていくかが
大きな課題の一つである。現在、北海道と札幌市がそれぞれ 1,500 万円、500 万円
の出資、補助という形で支援しているが、北海道内の他の自治体からも広く出資、補
助を募ることによりファンドの信頼性向上を図るとともに、より多くの人に支えられ
た仕組みみを作っていくことが必要である。
・貸出先のNPO団体等の的確なニーズを把握するためにも、貸出後のフォローアップ
調査を行い、融資制度の改善を図っていくことが必要である。
(3) まとめ
本報告でみた地域環境ファンドは、いずれも新エネルギー発電施設の設置を目的として
設立されたものであり、資金の大半は装置への初期投資に利用されている。事例外の地域
環境ファンドをみても、概ねその使途は同様かと思われる。
地域環境ファンドは普及啓発事業を目的とするもの(ひょうごグリーンエネルギー基金、
エコロカルヤスドットコム)と、売電事業(収益事業)を目的とするもの(南信州おひさ
まファンド、北海道グリーンファンド)に大別され、両者の規模、運用方法は異なってい
る。普及啓発系は会費、地域通貨購入など、寄附に近い性格のものとなっているが、売電
事業系については、金融商品としての扱いがなされている。
また、前者は域内からの出資がほぼ 100%なのに対し、後者では全国各地から出資を得
るため、域内出資比率はかなり低くなっている(南信州おひさまファンド:12%、北海道
グリーンファンド:25%)
。さらに、前者での投資対象は域内に限定されているが、後者
のそれは、売電枠の関係で域外での活動も展開しようとしている。
普及啓発系では、設備を設置すれば、それで事業としては基本的に完了である。発電さ
れた電力は一部売電されるものの、そもそも小規模施設を設置しているので、収益を期待
するのは難しい。従って、ファンドとしての自立は事業からは追求し得ない。持続的発展
を志向するのならば、資金フローの流れが絶えない仕組みを案出する必要があろう。
他方、売電事業系では、太陽光、風力とも安定したリターンが期待できるため、自立化
の目途はつけやすい。しかし、ファンド運用そのものは、専門的なノウハウが要求される。
その証左に、事例でみたいずれのファンドとも、ファンド運営主体と実際の事業主体が分
離している。いずれの事例とも、同じ NPO(自然エネルギー市民ファンド)がファンド
運用を受託している。
もっとも、普及啓発系にしろ、売電事業系にしろ、いずれも一部公的補助を得ている実
態に変わりはない。補助・助成の方法は違うものの、やはり費用のかさむ設備の初期投資
には、公的補助・助成は重要となっている。
本報告では、この地域環境ファンドとともに、地域への投資、融資を目的とした地域フ
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環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
ァンドの事例もあわせて考察している。そのスキームをみると、多様なステークホルダー
がファンド運用、事業展開に関与している状況が窺える。地域環境ファンドへの新しいプ
レーヤーの参画を考えるうえで、各地域ファンドは様々な示唆を与えている。
また、製品研究開発や事業運営への助成など、地域環境ファンドでは支援を行っていな
い分野への投融資を検討する際にも、そのスキームは参考となろう。次項では、ここでみ
た事例を踏まえ、新たな地域環境ファンドの形態を検討してみる。
表 地域環境ファンド、地域ファンドの出資状況等(まとめ)
区
分
名
称
資 金 規 模
利回り(目標)
出 期間
地域環境ファンド
ひょうごグリーンエ
南信州
エコロカル
北海道
ネルギー基金
おひさまファンド
ヤスドットコム
グリーンファンド
1500 万円
2 億 150 万円
500 万円
7 億 5760 万円
10%(1000円)を
地域通貨として提供
2.3%
-
15 年
○
(NEDO、県)
2%
3.3%
10 年
15 年
○
(環境省)
○
(野洲市:施設利用補助)
○
(一部 NEDO)
○
-
○
-
10000 円
50 万円
(全国枠)
A号
B号
A号
B号
-
-
公的補助
寄附
募集単位
(会費単位)
資 出資者(出資口)
会員数(会員口)
域内出資比率
投資範囲
区
分
名
称
A 号 10 万円
B 号 50 万円
6000 円
350 名
460 名
(1603 口)
概ね 100%
12%
概ね 100%
25%
域内
(県内)
域内
(市内)
域内
(市内)
域内外
(道内外)
1809 名
地域ファンド
札幌元気ファンド
北海道NPOバンク
資 金 規 模
5 億円
4,300 万円
利回り(目標)
10%
-
期間
10 年
1 年又は 2 年
○
(北海道、札幌市、
中小企業基盤整備機構)
○
(北海道、札幌市)
-
○
-
任意
資 出資者(出資口)
会員数(会員口)
-
任意
域内出資比率
概ね 100%
概ね 100%
域内
(道内)
域内
(道内)
出
公的補助
寄附
募集単位
(会費単位)
投資範囲
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環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
5.地域環境ファンドの今後の在り方
これまで地域環境ファンドは、主に太陽光や風力などの自然エネルギー発電施設の建設、
売電、出資者への還元というスキームで実施されてきた。しかし、地元環境ベンチャーの
創出や環境NPOへの支援融資も地域環境ファンドの設置目的として考えられ、ここでは
多様な地域環境ファンドの在り方について考察してみたい。
まず、先にみた事例等を参考に、今後検討されるべき地域環境ファンドを、①環境保全
のための設備投資、②ベンチャーの初期費用投資、③NPO 団体等に対する繋ぎ融資、と
いう資金使途により、大きく①新エネ発電設備設置型、②地元環境ベンチャー創出型、③
環境NPO融資型の3つに分類する。またそれぞれの類型について、4 つの評価軸を用い
て性格付けを行う。
表 検討されるべき地域環境ファンドの類型
類 型
内
容
風力発電や太陽光発電を事業メニューの中心に据え、その他事業として、
ESCO や地域の環境啓発事業を行うタイプで、投資の中心は発電施設等の設
備である。各ステークホルダーの役割をみると、事業者、市民、行政がファ
①新エネ発電設備
ンドの資金拠出者、地域団体や NPO 等の環境パートナーシップ組織がファ
設置型
ンドマネジメントを行うケースが多い。
〈参考となる事例〉北海道グリーンファンド、南信州おひさまファンド、エ
コロカルヤスドットコム など
地元の環境系のベンチャー企業に対する立ち上げ時の経済的支援として資
金を投資するタイプで、出資対象事業者の株式公開による上場益を出資者へ
還元するスキームである。資金拠出者は、地域金融機関、行政、地元企業な
②地元環境ベンチ
どが中心となるタイプ。
ャー創出型
資金拠出者、対象事業者ともに地域内に存在するケースが多く、域内の資
金循環の活発化と地元経済の活性化を図ることが可能となるタイプである。
〈参考となる事例〉札幌元気ファンド、島根県民ファンド12 など
NPO 団体への小口融資を中心に行うファンドで、
資金規模はそれほど大き
くなく、1 年~2 年程度と比較的短いサイクルで資金循環(融資-返済)が
③環境NPO
図られるタイプ。
短期融資型
運営主体は、互助組織的な NPO や信金などの地域に密着したリレーショ
ン・バンキング志向の金融機関が中心となっているケースがある。
〈参考となる事例〉北海道NPOバンク ap bank13 など
(1) 4つの評価軸による考察
3 タイプの地域環境ファンドについて、ファンドの特徴を表す以下の 4 つの評価軸(環
境保全性、県民参画性、資金持続性、地域貢献性)に基づき考察する。
12
新ビジネスの創出や地域の課題解決等に資する事業にチャレンジする島根県内のベンチャー企業 10
社程度に対し、資金提供を中心とする支援を行うことによって投資先企業の発展を推進することを目的
に平成 16 年 6 月に設立された投資事業組合によるファンド。組合員 77 の個人及びグループ、資金規
模は 1440 万円。
13
小林武史、櫻井和寿の 2 名に、
「Artists’ Power」の発起人でもある坂本龍一氏を加えた 3 名が拠出
した資金をもとに、自然エネルギー、省エネルギーなど環境に関するさまざまなプロジェクトに融資を
行う平成 15 年 6 月設立の非営利組織。資金規模は 1 億 3000 万円。
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環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
表 4つの評価軸
項
目
環境保全性
県民参画性
資金持続性
地域貢献性
内
容
・再生可能エネルギー、地球温暖化対策、資源の有効利用促進に関する事業等が実
施され、環境負荷低減効果として温室効果ガスの削減などを定量的に捉えること
が可能かどうか。
・ファンドへの出資や管理者の選定など、ファンド運営に多くの主体が参画できる
スキームとなっているか。
・ファンドの出資者の意思が投融資対象へ反映されているか。
・出資者への配当性、マネジメント費用の妥当性はどうか。
・投融資対象のスクリーニングは客観性、透明性の高い手法となっているか。
・投融資対象が地域への環境、経済、社会へプラス効果をもたらしているか。
・域内の資金循環が活発化されているか。
①新エネ発電設備設置型
ア 環境保全性
新エネ発電装置の設置によって、使用エネルギー量の低減、温室効果ガスの削減など、
環境負荷の低減に対し高い効果を示すタイプで、その定量的効果についても分かりやす
い。
イ 県民参画性
地域通貨の導入や、出資募集に際しての地域枠の設置など、住民とファンドの距離を
近づける仕組みみをファンドのスキームの中に取り入れ、県民参画性の向上を図ること
が可能である。ただし、風力発電等の場合には発電した電力を特定の電力会社にすべて
売電することができないため、施設の設置場所や出資対象者を全国に広げなければなら
ず、建設地と出資者の関連性が希薄となる傾向も見られる。
しかし、①対象事業が発電施設等、形に残ることや、②対象事業による定量的な評価
がしやすいことなどから、出資者は自分が拠出した資金の使途、事業リスク、環境負荷
低減効果などを容易に把握でき、出資者の投資対象事業に対するオーナーシップを醸成
しやすい。
ウ 資金持続性
売電やグリーン電力証書の販売により、出資者に対して年率数%程度の配当を行うこ
とが可能である。そのため、金融商品の一つとして認知されるなど、出資者は今後とも
増加することが見込まれる。
太陽光発電施設は発電効率や設置面積の制約、天候等のリスクにより、資金持続性と
いう点では、やや課題が残るが、各家庭への設置が可能となるなど、設置場所を多方面
に渡らせることができ、地域分散型のエネルギー源として今後とも需要は増えていくも
のと思われる。また風力発電については、詳細な風況調査の実施により、発電量や天候
リスクなどについて精度の高い予測を行うことが可能である。
エ 地域貢献性
新エネ発電設備の設置では、地域の雇用の増加や企業収益の向上など、地域経済への
波及効果は、さほど期待できないと思われる。
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環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
②地元環境ベンチャー創出型
ア 環境保全性
環境ビジネスを中心とした地元のベンチャー企業が主な投資対象となるが、ビジネス
分野により環境負荷低減への寄与度が異なるため、一概に環境保全性を評価することは
難しい。
しかし、環境ビジネスは未開拓の分野も多く、環境負荷低減のためのブレークスルー
となる技術を持ったベンチャー企業が数多く出現することも予想される。このため、地
域環境ファンドによる投資により、環境負荷低減に有効な技術の萌芽を育てていくこと
が重要である。
イ 県民参画性
このタイプのファンドは、地元の環境関連ベンチャー企業の創出を主目的としている
ことから、いわゆるサポーター的な立場で地域住民、地元の金融機関、自治体、企業な
どが出資するケースが多い。したがって、出資者、投資先ともに、ある一定の地域内に
存在することとなり、ファンドへの県民参画性も高いものとなる。
ウ 資金持続性
ファンドのマネジメントについては、投資対象となるベンチャー企業の将来性を見極
める必要があり、一定レベル以上のスキルを持った専門の組織、集団が行うことが望ま
しい。ただしそのためのマネジメント費用についても高額となることが予想される。
また、投資に対する配当は投資企業が株式上場した場合の上場益を充てることから、
投資リスクは非常に高いが、投資対象のスクリーニングを適切に行うことで、ある程度
の収益性を確保することは可能である。
エ 地域貢献性
投資対象企業の技術が優れ、上場等、一定の成果を上げた場合には、雇用の増加や地
域経済の活性化が進むなど、地域への貢献度は大きいものとなる。
③環境NPO短期融資型
ア 環境保全性
NPO団体の活動は、ソフト的な事業(環境教育や普及啓発等)のウエイトが高く、
それらの事業によって環境負荷低減効果を定量的に評価することは難しい。ただし、長
期的な視点では、住民への地道な啓発が環境負荷低減には不可欠である。
イ 県民参画性
このタイプの特徴は、地域の住民が出資者にも融資対象者にもなることができるとい
う点であり、結果として県民参画性は非常に高いものとなる。また、環境NPOは、地
域住民を対象とした取組を中心に活動しているケースが大半であり、出資者からみると、
自分が拠出した資金がどのような団体に使われたか、実感しやすいことも特徴のひとつ
である。
ウ 資金持続性
主な対象となるのは、環境保全・創造事業や環境学習を行うNPO団体である。その
資金使途としては、補助金等が交付されるまでのつなぎ融資が中心となる。そのため、
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環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
融資額は数百万程度で融資期間は 1 年か 2 年程度と想定される。このようなことから、
あまり高い収益性は望めず、出資者への配当や融資の拡大を継続的に行うことは容易で
はないと考えられる。
エ 地域貢献性
NPO団体の活動は地域に根ざした活動が中心で、市民と密着した形で事業展開がな
されているケースが多い。このようなことから、地域住民の環境意識の啓発等、地域へ
の貢献度はある程度高くなると考えられる。
以下では、これら3類型のリスクとリターンの関係を以下に示す。
リスク
地元環境
ベンチャー創出型
太陽光
発電事業
ESCO
事業
新エネ発電
設備設置型
風力
発電事業
環境 NPO
短期融資型
リターン
図 投融資対象とリスク・リターンの関係
以上の考察に基づきそれぞれの類型について 4 つの評価軸で特徴づけを行ったのが、以
下の表である。
表 類型別評価
新エネ発電設備
設置型
地元環境ベンチャー
創出型
環境NPO
短期融資型
環境保全性
県民参画性
資金持続性
◎
○
◎
◎
◎
地域貢献性
◎
○
◎
これまでの地域環境ファンドは、主に新エネ発電設備設置型が主流を占めていたが、こ
こに示すように、県民参画性や地域貢献性という観点に立てば、地元環境ベンチャー創出
型や環境NPO短期融資型についても、今後ファンドのスキームを検討していくべきであ
る。また、これらを組み合わせて展開していくことで、より多くの主体の参画を得た、地
域に根ざした持続的なファンドの実現が可能となる。
33
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
(2) ファンドの構成とステークホルダーの役割
ファンドの組成に当たっては、各ステークホルダーの果たすべき役割を明確化する必要
があることから、ここでは、これまでの事例や類型化に関する考察をもとに、ファンドの
特徴と各ステークホルダーのミッションを明らかにしたい。
これまでの考察から、地域環境ファンドに登場する主なステークホルダーは、住民、行
政、企業、金融機関、環境パートナーシップ組織等の中間組織、投資専門機関などである。
そして、それらステークホルダーが就くポジションは、大きく、資金拠出者、ファンド監
視者、ファンド管理者に分けられる。資金拠出者、ファンド監視者については、多くの主
体がその役割を担うことが可能であるが、ファンド管理者については、それがどのような
主体かによって、そのファンドの特徴づけに大きな影響を与える可能性が高い。
資金拠出者
ファンド監視者
住
民
行
政
企
業
ファンド管理
者の選定
ファンドの管理・運営、
投融資対象のチェック
投融資対象
投融資
ファンド管理者
ファンドの
管理・運営
金融機関
環境パートナーシップ組織
管理費
地域環境ファンド
投資専門組織
出資
配当
図 ファンドの構成と各ステークホルダーの役割
風力発電・太陽光発電等の施設建設を主な投資対象とする新エネ発電設備設置型につい
ては、建設費と電力の売電価格が決まれば資金計画が比較的容易に立つことから NPO 等
による運営も可能であるが、市民からの出資と配当という一つの金融商品を設計する上で
は、ノウハウを持った NPO 団体が運営に当たることや、行政や金融機関等の協力等があ
る程度必要である。
一方、地元環境ベンチャー創出型では、事業者への投資、融資について、高い与信機能
が必要となるため、金融機関や資産運用会社など、専門組織がファンド管理者となること
が望ましい。ただし、専門組織がファンドを管理する場合、その管理費は総資金量の 2 割
~3 割程度にも上ることから、管理費の低減方策を検討する必要がある。
環境 NPO 短期融資型については、互助組織的な NPO や、地域に密着した情報を有す
るリレーション・バンキング志向の金融機関などが主体となって運営することが望ましい。
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環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
表 類型と中心となるべきステークホルダー
行政
新エネ発電設備設置型
○
地元環境
ベンチャー創出型
○
環境NPO短期融資型
○
中心となるべきステークホルダー
NPO
金融機関
投資専門組織
◎
○
○
◎
◎
○
(3) 考察-より良い制度設計のために-
これまで地域環境ファンドを3つのタイプ、4つの評価軸で考察してきたが、最後に、
ITを活用した参画者の拡大方策やファンドの資金循環のスピードが地域活性化に果たす
役割等について付言したい。
①多くのプレイヤーが参画可能なシステム設計
ファンドの持続的な運営のためには、より多くの主体が継続的、安定的にファンドの運
営に携わることが重要であり、そのためには、ファンドの信頼性の確保や、参画のアクセ
シビリティの向上が必要である。
各主体は、資金拠出者、ファンド管理者、ファンド監視者として参画することもあれば、
投融資対象となることもあろうが、特に資金拠出による参画については、IT技術を用い
た投資スキームの確立や、ファンドへの寄附促進など、多くの参画者の誘導を促進するた
めの土壌、枠組みの形成が必要である。
例えば、IT技術を用いた投資スキームの構築では、消費者が家電量販店やスーパーな
どで、購入金額などに応じたポイントサービスで貯めたポイントを地域環境ファンドへ拠
出可能とするシステムや、鉄道などの公共交通機関で使用されるICカード(ICOCA、
PITAPA など)や、携帯電話等との連携によるによる資金拠出スキームの構築についても
検討していくことが必要である。
また、より多くの県民からの出資を仰ぐという観点から、自分の出資がどれほど社会貢
献や環境負荷低減に役立っているかということを実感できるようにすべきである。出資者
と投融資対象の地域をほぼ同一に限定したり、ファンド運営状況をリアルタイムで確認で
きるシステムにしたりするなど、出資者とファンド管理者・投融資対象等とのインタラク
ティブな関係構築が重要である。
②地域ダイナミズムの創出に向けたシステム設計
地域活性化のためには、地域の事業者、住民、行政、パートナーシップ組織等の協働に
よる資金循環の流れを作り出すことが大切である。これまで地域環境ファンドとして運営
されてきたものは主に新エネ設備設置型がほとんどで、それらの事業は1タームが 10 年
~20 年と、非常に長く、資金循環のスピードは決して速くない。地域における資金循環
は、小さく細い流れであっても、その流れの強さ(速度)を保つことにより、地域を活性
化させるドライビングフォースとなりえる。そういった意味において、資金循環のスピー
35
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
ドが相対的に高い環境ベンチャー投資型や環境NPO短期融資型の導入は重要といえる。
一方、地域環境ファンドは、地域の社会経済システムに組み込まれたツールの一つとし
て、人、資金、物、情報をつなぐネットワーク的役割も期待されている。これは日本古来
の無尽や講といった地域金融が持つ特徴にも通じるところである。すなわち、多くの人に
支えられ、資金とともにさまざまな情報、資源が交換されることにより、循環が循環を呼
び地域経済が活性化されていく。そういった地域経済・社会が持続的発展をしていくため
のプラットフォームとしての機能が、地域環境ファンドにはビルトインされている必要が
ある。
Ⅳ おわりに
本報告では、まず本県における環境パートナーシップ組織の現状を考察し、その取組内
容等を明らかにするとともに、組織の自立化、法人化に向けての自治体の意向を探った。
そのなかでは、自立化に対し積極的な意見が聞かれた反面、現実には、設立後間もないこ
ともあり、いずれの県内環境パートナーシップ組織とも行政主導の運営が基本となってい
た。
他府県の先導事例をみる限り、自立化が実現するには、市民サイドからの自発的な行動
が前提である。まず各組織とも活動の多元化、深化、特にコミュニティへのアウトリーチ
により、市民の参画機会の拡大、取組へのオーナーシップの醸成に努め、市民セクターの
成熟を促すことが必要と考えられる。
なお、本報告書では十分な考察に至れなかったが、環境パートナーシップ組織と行政付
属機関としての審議会との役割分担についても、今後議論が必要かと思われる。現行は、
審議会が環境基本計画のフォローアップ組織となっているが、環境パートナーシップ組織
の発展とともに、同組織がその役割を担うことも十分考えられる。計画―事業、戦略-運
営等の区分によって、審議会と環境パートナーシップ組織の役割分担を明確化していくの
か、それとも両者協働化、一体化の方向へと進むのか、各地域で現状を踏まえ検討してい
かねばならないであろう。あわせて、環境パーナーシップ組織のプレゼンスの拡大ととも
に、直接民主主義と間接民主主義の融和の観点から、議会と環境パーナーシップ組織の関
係も見直す必要があろう。
次いで、
本報告書では地域環境ファンドという概念を提起し、
その萌芽事例を考察した。
事例をみる限り、現在の地域環境ファンドは公的助成をある程度前提として成立している
ものが一般的であり、
完全に自立的な運営を行っているケースはみられなかった。
これは、
現行の地域環境ファンドが、初期投資の大きい太陽光発電、風力発電等の装置型プロジェ
クトへの投資に特化しているからである。投資対象、市場条件(売電価格の変化等)が変
わらない限り、この傾向は今後も強く続くと考えられる。
また、本報告では、地域環境ファンドにおける地域性の捉え方が、ファンドごとに異な
ることも認識できた。地域通貨とのリンケージのなかで、域内完結型を志向するものもあ
れば、投資先は域内に限定されているものの、全国から出資を募るものもある。なかには、
特定の地域に立脚しているものの、投資先も出資元も、地域性に拘らず全国に求めようと
するファンドもある。地域の広がり、まとまりは、ファンドの規模や指向性によって変わ
りうるといえる。
一般に、ファンドの持続的発展をめざし、投資規模の拡大、収益性の向上を図ろうとす
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環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
れば、地域を越えた事業展開も視野に入ることになろう。しかし、投資対象を域外に求め
るのは、投資効率が高くとも、地域にとって環境、経済、社会面での直接的効果が期待で
きない以上、二次的な選択肢とならざるを得ない。ファンドの発展過程では、この持続的
発展性と地域貢献性の間のジレンマが少なからず生じることが予想され、それがファンド
運営の大きな課題となると考えられる。
他方、出資者としての地域のステークホルダーは、必ずしも地域住民等に限定する必要
もない。人口減少社会を迎える今日、域外居住者に対し出資を通して地域への参画を促す
ことは、地域活性化の面からして極めて大きな効果を期待できる。地域に関心を持ち、愛
着を感じるものの、域外に住んでいるため地域に直接参画できない人々にとって、地域環
境ファンドは地域貢献の新たなチャンネルとして歓迎される筈である。各地域では、地域
環境ファンドを交流人口拡大のためのツールとして積極的に活用していく姿勢が求められ
る。
一方、既述したように、現在の地域環境ファンドの投資対象は、新エネルギー発電の施
設設備に特化している。エコプロダクツの製品化等のエコビジネスへの投資や、市民事業
としての環境保全・創造活動への融資などを主たる投資対象とした地域環境ファンドは、
まだ出現していない。もちろん、そうした事業・活動への投融資は、一般のファンド・融
資を通して行うことも可能であるが、環境スクリーニング手法を確立した地域環境ファン
ドの運営主体を通して投融資するほうが、
より高い環境保全性を担保できると考えられる。
そこで、本報告では、地元環境ベンチャー創出型、環境 NPO 短期融資型という地域環
境ファンドの新たな形態を提起し、既存の地域環境ファンドとの比較のもと、その可能性
を様々な評価軸、視点から考察した。その結果、県民参画性や地域貢献性という側面では、
これら新たな形態のファンドには大きな可能性を見出し得るとの結論に達した。
しかし、そのしくみの具体化に向けては、行政・県民・事業者が手を結んで、ファンド
の未来図を描き、多くの県民に提示し、共感してもらうことが必要である。そのうえで、
行政・金融機関等の協働によりファンドマネージャーとしての責を果たしうる NPO を育
成し、
(特に管理費面における)
コスト低減化の検討を行っていくことが必要である。
また、
環境 NPO 短期融資型を取り入れていくうえでは、環境系 NPO の活動実態・潜在的資金
需要等の詳細なマーケットリサーチを実施する必要がある。さらに、ファンドの付加価値
を高めるための方策として、行政等の公的機関や地元金融機関によるファンドへの資金拠
出、ラベリングについても検討されるべきである。そして以上の取り組みを進めるにあた
って、行政はリサーチ(さがしてくる)
、ネゴシエーション(交渉する)
、ネットワーク(つ
なぎあわせる)というミッションを積極的に果たしていくことが必要である。
最後に、環境パートナーシップ組織と地域環境ファンドの連携について付言しておきた
い。環境パートナーシップ組織は、地域環境ファンドへの出資、寄付等の窓口として機能
し、場合によってはその運営主体(ファンド監督者、管理者)にもなり得る。特に、ファ
ンドへの県民参画性を高めるうえで、大きな貢献を果たすと考えられる。他方、地域環境
ファンドは、環境パートナーシップ組織への出資、寄付や活動助成などを通じ、組織の持
続的発展を支える役割を当然期待される。従って、両者の設立・運営にあたっては一体的
な推進を図ることが望まれる。
37
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
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黒川和美他(2006)
「地域金融と地域づくり」ぎょうせい
後藤和子(2004)
「自立した地域に埋め込まれた金融の創造」
『自立した地域経済のデザイン-生産と
生活の公共空間』神野直彦編 有斐閣 PP103-130
佐藤徹(2004)
「豊中市の環境マネジメントと環境パートナーシップ」
『環境マネジメントとまちづく
り』川崎健次編著 学芸出版社 PP.178-204
佐藤由美(2003)
「自然エネルギーが地域を変える:まちづくりの新しい風」学芸出版社
総合研究開発機構(NIRA)
(2004)
「NPO の資金循環システムの構築」NIRA 研究報告書
高橋秀行(2004)
「環境パートナーシップ活動の進展と課題」
『環境マネジメントとまちづくり』川崎
健次編著 学芸出版社 PP.105-134
中島恵理(2005)
「英国の持続可能な地域づくり-パートナーシップとローカリゼーション」学芸出版
社
西村清彦・山下明男(2004)
「社会投資ファンド」有斐閣
日本政策投資銀行(2002)
「Policy Planning Note 13:地域通貨-コミュニティ・ファイナンスとの
連携を探る」2002 年 11 月 28 日
藤井 良広(2006)
「金融で解く地球環境」岩波書店
三浦 功、藤田 敏行(2003)
「グローバリゼーションと地域経済・公共政策」九州大学出版会
山谷 成夫(2005)
「ミニ公募債発行の現状と展望」
『地域開発』2005.7. Vol.490(特集 まちづく
りと新たな財源)(財)日本地域開発センター PP.46-50.
山脇 正俊(2004)
「近自然学 自然と我々の豊かさと共存・持続のために」山海堂
〔参考HP〕
神戸市産業振興財団 http://www.kobe-ipc.or.jp/n_shikin/toushi/index.html
特定非営利活動法人とよなか市民環境会議アジェンダ21 http://www5b.biglobe.ne.jp/~toyonaka/
千葉県産業振興課 http://www.pref.chiba.jp/syozoku/f_sanshin/community/index-c.html
日本政策投資銀行 http://www.dbj.go.jp
38
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
(参考資料) 環境パートナーシップ組織に関する現況調査 調査票
☆環境パートナーシップ組織とは
本調査では、環境パートナーシップ組織を「市民、地域団体、事業者、行政等の地域の多様な
主体が連携・協働しながら、様々な環境保全・創造の取組を推進する組織」と規定しています。
環境基本計画やローカル・アジェンダ21の策定等を機に、自治体等によって設置される『環
境市民会議』
、
『環境パートナーシップ会議』などの組織がこれに該当します。
問1.貴市町における環境パートナーシップ組織の有無について右下の欄にご回答ください。
(1) 設置している 〔→「問2」へお進みください〕
(2) 設置していないが、検討している〔→P3「問9」へお進みください〕
(3) 設置していないし、検討もしていない〔→P3「問9」へお進みください〕
回答欄
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
〔↓問1で(1)と回答された市町にお伺いします〕
問2.貴市町の環境パートナーシップ組織の名称、設立年を下欄にご記入ください。
名
称
設立年(西暦)
年
問3.貴市町の環境パートナーシップ組織の設置根拠について以下から該当項目を選び、右下の欄
にご記入ください。
(1) 条例・規則
(3) 会則・規約
(2) 要綱・要領
(4) その他(具体的に記載ください:
)
回答欄
問4.貴市町の環境パートナーシップ組織のメンバーについてお伺いします。
4-1 メンバーの資格について以下から該当項目を選び、右下の欄にご記入ください。
(1) 委員
(2) 会員
回答欄
4-2 メンバーの任期を右下の欄にご記入ください(定めていない場合は「なし」と記載ください)
。
任
期
年
4-3 現在のメンバーの数を下欄にご記入ください。定数を設けている場合は、その数も()
内にあわせてお記しください。
メンバー数
39
人(定数
人)
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
4-4 メンバーの構成を下欄にご記入ください。
学識者(大学教員等)
人
NPO関係者
人
地域団体関係者
人
民間事業者関係者
人
公募市町民
人
議 員
人
行政関係者
人
その他
人
問5.貴市町の環境パートナーシップ組織内の部会設置状況について以下から該当項目を選び、下
欄にご記入ください(複数回答可)
。
(1)
(2)
(3)
(4)
部会を設けていない
分野別に部会を設けている(例:地球温暖化部会、廃棄物部会、自然保護部会)
市町内の地区別に部会を設けている
特定目的のための部会を設けている(例:企画運営委員会、広報委員会)
回答欄
問6.貴市町の環境パートナーシップ組織の事務局体制について以下から該当項目を選び、下欄に
ご記入ください(複数回答可)
。
(1) 市町担当部局が全部あるいは一部担当
(2) 市町外郭団体に全部あるいは一部委託
(3) NPO、地域団体に全部あるいは一部委託 (4) NPO、地域団体が自主的に運営
(5) その他(具体的に記載ください:
)
回答欄
問7.貴市町の環境パートナーシップ組織の財源について以下から該当項目を選び、下欄にご記入
ください(複数回答可)
。
(1) 行政からの補助・助成金
(3) 自主事業による収入
(5) その他(具体的に記載ください:
(2) 受託事業による収入
(4) 会費収入
)
回答欄
問8.貴市町の環境パートナーシップ組織の活動についてお伺いします。
8-1 活動内容について以下から該当項目を選び、下の欄にご記入ください(複数回答可)
。
(1)
(3)
(5)
(7)
計画・指針の策定・フォローアップ
事業の企画立案
調査研究、政策提言
その他(具体的に記載ください:
(2) 行政施策、事業のモニタリング・評価
(4) 事業の実施
(6) メンバー相互の情報交換・交流
)
回答欄
40
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
8-2 〔8-1 で(3)、(4)を選んだ市町にお伺いします〕
事業の具体的内容について以下から該当項目を選び、下欄にご記入ください(複数回答可)
。
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
ニュースレターの編集・発行、ホームページの作成、メーリングリストの運営
イベント、フォーラムの開催
研修、講座の実施
プログラム、カリキュラム、マニュアル、ガイダンスの作成
リサイクル等の制度・仕組みの運営
その他(具体的に記載ください:
)
回答欄
8-3 〔8-1 で(3)、(4)を選んだ市町にお伺いします〕
事業の関係分野について以下から該当項目を選び、下欄にご記入ください(複数回答可)
。
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
(8)
(9)
環境家計簿、エコチェック・カレンダー普及運動
買い物袋(マイバック)持参運動
エコ・ドライブ(アイドリング・ストップ)運動
地域の一斉清掃活動(クリーンアップ・キャンペーン)
リサイクル運動、ごみ減量化
緑化、ビオトープづくり
環境教育・学習、自然体験学習
里山・里地の保全活動、森・川・海再生の取組
その他(具体的に記載ください:
)
回答欄
〔↓続いて、問11へお進みください〕
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
〔↓問1で(2)、(3)と回答された市町にお伺いします〕
問9.貴市町で環境パートナーシップ組織をこれまで設置してこなかった理由について以下から該
当項目を選び、下欄にご記入ください(複数回答可)
。
(1) 環境パートナーシップ組織の意義・役割について懐疑的であったから
(2) 環境審議会や各種委員会等を通じ、市民、地域団体、NPO等と十分コミュニケーションを
とることができていたから
(3) 環境パートナーシップ組織の役割を果たす組織(まちづくり協議会、中間支援組織等)が他
に存在していたから
(4) 環境基本計画の策定等、設置の機会、タイミングがなかったから
(5) 環境パートナーシップ組織の設置・運営のノウハウがなかったから
(6) 環境パートナーシップ組織の設置・運営に充てる予算、人員が不足していたから
(7) その他(具体的に記載ください:
)
回答欄
41
環境保全・創造に係る参画と協働のプラットフォーム構築に関する調査研究
問10.貴市町内に環境パートナーシップ組織を設置するとすれば、どのような役割を期待します
か。以下から該当項目を選び、下欄にご記入ください(複数回答可)
。
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
計画・指針(環境基本計画等)の策定・フォローアップ
環境保全・創造に係る施策・事業のモニタリング、評価
環境保全・創造に係る施策・事業の企画立案
環境保全・創造に係る施策・事業の実施
環境保全・創造に係る調査研究、政策提言
環境保全・創造に関心を有する市民・団体のネットワーク化
その他(具体的に記載ください:
)
回答欄
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
〔↓すべての市町にお伺いします〕
問11.近年、環境パートナーシップ組織が法人格を取得し、自立化をめざす動きがみられますが、
このことについて貴市町ではどのようにお考えですか。以下から最もお考えに近い項目を
お一つ選び、下欄にご記入ください。
(1) 環境パートナーシップ組織が行政依存から脱却し、第三者機関化することは、市民と行政の
対等な関係の構築に向けて不可欠なプロセスである
(2) 環境パートナーシップ組織の自立化は、市民、地域の主体的な環境保全・創造活動を発展さ
せるうえで望ましい
(3) 環境パートナーシップ組織は、環境基本計画の策定等行政目的達成のために設置されるもの
であり、自立化するとその本来の性格を失ってしまう可能性がある
(4) 環境パートナーシップ組織が自立化をめざしても、予算、人員面で行政に依存せざるを得ず、
実質的な変化は生じない
(5) その他(具体的に記載ください:
)
回答欄
☆このほか、環境パートナーシップ組織に関連して、特にご意見がございましたら、下欄にご記入
ください。
〔↓ご協力有難うございました。連絡先をご記入ください〕
市町名
部 署
担当者
TEL
E-mail
FAX
42