静岡県立美術館友の会

黒田 清輝《富士之図》
No.86 2015. 春
静岡県立美術館友の会
友 の 会だより プロムナード No.86
友 の 会 のHPが 立 ち 上 がりまし た ! !
友の会待望のホームページがUPされました。
これからはリアルタイムに友の会、美術館の最新ニュースを発信していき
ますので、会報誌「プロムナード」
ともどもお読みください。
またHPは皆様で育て上げていくものです。皆様のご意見、
ご
要望をお待ちしております。
まずは
「静岡県立美術館・友の会」
で検索して下さい。
キーワードは
「つなひろ」
です。
www. ke nbi -tomonokai .j p
平 成27年 度 事 業 計 画
5月
10日
詳細はHP、チラシ等で改めてご案内いたします。
多数のご参加をお待ちしております。
篠山紀信展「友の会会員対象フロアーレクチャー」 11時より
※次回以降、企画展ごとにフロアレクチャーを開催します。
7月 16、17日
京都 一泊旅行
8月
2、
9日
実技講座「転写絵画講座」 講師:持塚三樹氏
11月
2、
3日
第2回「にがおえ広場」
2月20、
21日
げ ん じ ば た
さき
おり
実技講座「原始機で裂織」 講師:松谷和子さん
事 務 局からの お 知ら
せ
●会員証の図柄が「木村武山」
《羽衣》
(左蒦部分)
に
変わりました。
●会員特典!
!
(4月より)
企画展ごとに招待券を一枚進呈。
●親子会員ができました。
小学6年生以下の子供さんがいらっしゃるご父兄は
¥3,000で友の会へ入会できます。
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友 の会
実 技講座
パステルで人 物を描きましょう
平成27年2月21日・22日
受講者 21名
講師:小林順子氏
(現代パステル協会委員)
始めにパステルという絵具の特質が、画面に対し接着性は持たないが微細な粒子に光が乱反射して、独特な輝きが生ず
る魅力と芸術性の高さについて教わりました。今回は実際にモデルを前に人物画を描くという貴重な体験ができ、デッサン
の描き方を基本から教えてもらいました。下絵が出来たところで、いよいよパステルを使います。水彩や油絵などと違い、水
や定着液などで固定しない限り指や手を使いながら、色を重ね、混ぜ、払う、拭くなどをしながら描くことが出来ることを実感
しました。
2日目はモデルのポーズを変えて先生から
「思いきり、大胆に描いてください」
との言葉に後押しさ
れながら描きはじめました。
それぞれ手直しと指導を受けながら完成させ、最後に皆さんの作品を並
べ個々に先生の評を受けました。
「パステルは持っていたが今回の実技講座でやっと使うことができた」
「 画面上で色を混ぜること
は新鮮だった」
「パステル画の魅力にとりつかれました」
との感想が寄せられました。
友 の会
研 修旅行
名 古 屋 市 美 術 館と
名 古 屋ボストン美 術 館を訪ねる
平成27年3月4日
参加者 33名
1日で2か所の美術館を鑑賞できるのは友の会ならではの企画でしょう。名古屋市美術館では
「だまし絵Ⅱ」
を、名古屋ボスト
ン美術館では
「華麗なるジャポニスム展」
を鑑賞しました。
「だまし絵Ⅱ」
では名古屋市美術館の学芸員さんから、
だまし絵の歴史的な説明と、
だまされるポイントを教えて頂き作品を楽
しく観賞することが出来ました。
「華麗なるジャポニスム展」
は同行していただいた南美幸上席学芸員さんから、西洋の「ジャポニスム」
が生まれた歴史と、
日
本の浮世絵や工芸の手法をどのように取り入れていったか、作品を比較しての説明は大変理解しやすく参考になりました。展
覧会はクロード・モネの<ラ・ジャポネーズ>をはじめ名作揃いと日本の浮世絵、工芸が同時に鑑賞でき、見ごたえがありました。
「浮世絵が有名画家の基
になっていることを知った。
素晴らしいことだ」
「だまし絵
は今まで鑑賞したことはな
かったが、楽しく新しい発見
だった」等多くの感想をいた
だきました。
‒3‒
友 の 会だより プロムナード No.86
アトリエ訪問
日本 画 家
き む ら 木村 圭吾
け い ご
さん
作品「世紀への激情(ナイアガラ)」の前で
一歩展覧会場に足を踏み入れた途端、
まるで大自然の発散する透明な霊気をあびたように圧倒的なエネルギーにうたれる。2月から3
月上旬にかけて静岡伊勢丹デパートで開催された
『木村圭吾 日本画展』は、そのスケールとイマジネーションの豊かさが、今此処にある
自然からのメッセージを見る人に伝えてくれるようだった。
後日、長泉町にある
「木村圭吾アートホール」
で、作品に託す思い、
これからの事など作品に囲まれながらお話をうかがうことが出来た。
先生は、20歳から30歳代ごろまで、現実の家庭生活を維持しながらも無所属として自分の画業の確立を模索し、
たっ
たひとりの芸術運動に飛びこまれる。京都から東京のセントラル美術館で展覧会を開催した時は、
あまりにも大胆で革新
的な表現であったため美術界に強いインパクトを与えたといわれている。
それをきっかけに、画業一筋の世界がスタート
した。
「こういう時代もありました。」
と苦笑いされるが、
かえって創作にたいする意思の強さが感じられる瞬間でもあった。
もなおさず日本の風土を描く
ということ。爛漫と咲く花は美
絵になる四つの
モチーフとは?
しい。
しかし人間の一生と似
て、いずれ散ってその命は地
球に還っていく。桜も人も滅
びるが又生きかえる。土に還
「四つあります。」
とのこと。
ることと再び咲くことは常に
「まず中国の風土、
ヨーロッ
リンクしている―30歳代にこ
パの古代から中世へかけて
の大きなテーマを持って描い
の歴史の追及、
グランドキャ
ていこうと出発された。桜の
ニオン、ナイヤガラなどのア
なかでも千年桜よりヒントを
メリカ大陸。」
3大陸の接点は
得ることが多く、
いろいろなと
『天と地』
ころで目にした方も多いこと
そして、
もう一つは
『桜』
と思う。
日本は大陸ではないけれど、
画人として戦うにはテーマ
大昔から和歌に梅や桜が登
を見出すことが不可欠にちが
場してきたのだが、特に桜の
巨木を描くということは、
とり
「赤い月」2006年 162.0×130.0
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いないが、
テーマを決めるこ
友 の 会だより プロムナード No.86
とは、
またとてつもなく難しい命題で、
自分の思想をもつこと、
その思惑と現実の展開の狭間での戦いになるに違いない。
桜取材の折には、
まず、桜に一礼してから描くこと、終わると有難うとお礼をされるとのこと、
まさに自然の命をダイナ
ミックに描く先生ならではのエピソードです。
独 特 の 色について
先生の色彩は、
『 圭吾カラー』
といわれ誰にも真似出来ないといわれ
ている。
それは、絵の具がすべて手造りであることと無縁ではない。地球上の
あらゆる鉱物、宝石などを発掘して馴染みの絵の具屋さんに依頼して
あるとのことで、現在3000種余り。
これこそ、
自然の大地から贈られた凄い贈り物であり、
ありふれた色で
「夕映 モンサンミッシェル」2009年 53.0×72.7
はなく、個性を表現する勝負の色と云うことであった。
未来への責任としての
巨大なアートホール(美の空間)
「海外展は、
日本画を見直すとてもよい機会となりました。真の活動
の担い手とは、本物をかぎ分ける感覚をもった未来志向が重要となり
ます。」
地球を突き抜けて宇宙まで拡がる壮大なイメージが眼にうかんだ。
(会報委員 市川 都)
「天地悠遠」2002年 180.0×320.0
「月下の宴」2003年 240.0×140.0
プ ロ フィー ル
2003年 「木村圭吾さくら美術館」(静岡県長泉町)開館
2008年に閉館迄全国の多くのファンに愛される
1944年 京都府深草生まれ
1963年 京都市立日吉ヶ丘高等学校日本画科卒業
(旧京都市立美術工芸学校)
高校卒業後は文化賞受賞者山口華楊氏に師事
1974年 シェル美術賞展佳作賞受賞
1991年 富士を仰ぐ静岡県駿河平に画室を構える
1992年 箱根芦ノ湖・成川美術館にて
「ほとばしる生命のたぎり」展
1999年 増上寺天井絵出品
2001年 平安時代創建の大阪の名刹・法楽寺の障壁画完成
‒5‒
2006年 5月
「老桜その命」
(NHK総合)木村圭吾の作品と
「山高神代桜」
が放映
11月フランス・カンヌ市、静岡市姉妹都市15周年
記念特別展
「天と地 日本画家木村圭吾の世界展 千年桜と聖龍」
2009年 静岡県駿河平にアートホール完成
倉吉トリエンナーレ美術賞回顧展
「両洋の眼展20回展 ~龍の起源~」出展
友 の 会だより プロムナード No.86
思い出の接点
地方美術としての個性に期待
静岡市 栗田 正澄
静岡市 太田 ふじ子
7年前、新聞販売店広告紙に
美術鑑賞が趣味なので仕事
「友の会会員募集」の記事を見
を辞めた年に友の会に入りまし
つけました。父や祖父の影響で
た。母の介護を在宅でしていま
青山、
白洲、北大路系の骨董和
したので、美術館や周囲の木々
食器や料理にのめり込み、絵と
の中を散策するのが私の唯一
いえばシーレの手本の浮世絵
の至福の時間でした。
ここ数年
系とルーツの琳派、岩佐、その
で印象に残った展覧会は、
フェ
先の鳥獣戯画に興味を持つ位
ルケール博物館で催された青
で、速水、梅原、横山、安田、藤
森美術館の作品展でした。
なん
田などでも、食指が動きませんでした。それゆえ風景とロダン
と会員の制服も展示され、あの有名なブランド、
ミナペルホネ
の県美は私にとってより遠い存在でしたが、
はるか昔、県立児
ンの服でした。繕いながら大事に着ているそうです。そのセン
童会館少年合唱隊に入り、県内や東京、
ウィーン少年合唱団
スに脱帽! 館内には小規模ながら北方の芸術が醸し出されて
と、様々な交流に県費を使って頂いたことを思い、
お礼を込め
いました。静岡県立美術館も地方美術館ならではの個性を出
て入会手続きに足を運びました。以来内覧会で、
自分再発見
してくれればいいと思います。東京の派手な展覧会は、人の頭
と関連グッズとの出会いを楽しんでおります。
を見るばかりでうんざりします。絵と静かに対話できる美術館
であって欲しいと思います。
友の会企画への参加
手に入れたお気に入りの場
静岡市 滝田 喜弘
静岡市 佐藤 裕子
最近、友の会の企画にふた
私にとって友の会の会員にな
つ参加しました。
ひとつは2月の
り常設展にフリーで入場できる
「パステル画講座」
です。パステ
事は、
いつでもロダンやカミーユ
ル画が、油絵や水彩画にも負け
やゴーギャンに会えるという事
ない表現力を持つことに驚き、
です。
自然に溶け込んだ静岡県
指を使って紙の上でパステルの
立美 術館は、その建物も十分
色が混ざっていく感覚がとても
魅力的で、絵を観るためだけの
新鮮でした。講師の小林先生ご
美術館とは全く違います。
指導の下、夢中になって描いた
先日友の会のツアーに参加
楽しい二日間でした。
もうひとつは、
3月の「名古屋市美術館と
しました。いつも一人で絵を観るのですが、偶には同じ趣味を
名古屋ボストン美術館を訪ねるバスツアー」です。
ゴッホ、
ダ
持つ方々と一緒に行くのもまた別の楽しみ方があるのではと
リ、モネ等、数多くの名画を堪能し、
だまし絵の巧妙なトリック
思ったからです。学芸員のレクチャーもあり、周りの人との感じ
に驚嘆の声をあげました。 また、思いがけず大好きだったデ
方の違いも発見できました。来年度は、
よりお得な特別会員に
ビット・ホックニーの作品に出会えて感激し充実した一日でし
なろうと思っています。
た。次回の企画が楽しみです。
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友 の 会だより プロムナード No.86
「キッズアートプロジェクトしずおか」紹介
思い出づくり
県内の小学生全員にパスポートが渡されています。パスポートがあれば、有料の提携施
設が小学生は総て無料になります。
またスタンプを集めればプレゼントももらえます。友の
会の皆様も身近な小学生と一緒に楽しんでみませんか。
私達友の会も協賛金の形で応援しています。
当館長がプロジェクトの会長です。
藤 枝 市 郷土 博物 館特 別展「大江戸物語トリックアート展 」
増田 雪乃
藤枝市立葉梨小学校
トリックアートって、最初は「何だろう? 」
と思って
いたけど、見てみるとしかけがいっぱいあって、す
ごくびっくりしたよ!
西原 加純(かすみ)・那杏菜(なずな)
藤枝市立葉梨小学校
藤枝市郷土博物館・文学
人が本当にいるかと思ったら、絵だったからびっ
館では、藤枝市内の史跡
くりした。絵の中から動物をさがすのはむずかし
を学んでいただくため「ふ
かった。ぼうの絵はとても不思議だった。いどの絵
がおもしろかった。
ねこの絵もおもしろかった。
佐々木 彩巴(いろは)
藤枝市立青島北小学校
とてもおもしろくて、いろんな角度からみたらさか
さになったりおもしろいポーズになったりして、楽し
かった。
静岡市 水 見 色 小 学 校
出前講 座
じえだ道中手形」
と題した
お子様向けの取り組みで
スタンプラリーを開催しま
した。
その時参加した子供
たちの声です。
スタンプラ
リーは今年度も引き続き
行います。
中川 萌 花
実際にやってみると、すごく大変だったけど、完成するとうれしかったで
す。静岡の人が世界で活躍しているなんて、ほこらしいなと思いました。
杉山 侑弥
きれいに出来るか、
とても不安でした。みんなで水見色の字をデザイ
ンし、個性がでていておもしろかったです。
またやってみたいです。
渋川 眞子
切り絵初挑戦でした。
とても細かい作業で「私に出来るかな」
と思った
けど、福井先生の指導のおかげで満足できる作品が出来ました。楽しい
時間でした。
‒7‒
友 の 会だより プロムナード No.86
学 芸 室 より
篠山紀信 展 写 真 力
THE PEOPLE by KISHIN
皆さんも、
テレビや広告などで、一度は目にしたことのある有
名人。
お茶の間でおなじみの黒柳徹子、永遠のアイドル山口百
恵、文学界の巨匠三島由紀夫など、
この展覧会には、篠山紀
信が50年間にわたり撮影してきた写真が、ずらりと並びます。
そして展示室に入ると、写真のスケールに圧倒されます。篠山
は、
これまで美術館での個展を拒み続けてきました。
「美術館は
過去の作品が収められる場所」
であり、今もまだ現役の写真家
である自分には相応しくない場所だと考えていたからでした。
し
かし、今回初めて、篠山紀信の個展が美術館で実現することに
なりました。
この展覧会のために、篠山が考えた新たなストーリーは、
「写
山口百恵 1977年
真力」。では、
「 写真力」
とは何でしょうか?篠山は「写真の力が
来場者のいないディズニーランドを自ら
「シノラマン」
というキャ
漲った写真」
であり、撮られた者も、撮った者も、
それを見る人々
ラクターとなって撮ったシリーズ、
また撮っているうちに役者と
も、唖然とするような「尊い写真」だと言います。篠山の「写真
一心同体になるという歌舞伎のシリーズを中心に紹介します。
力」
が、美術館という空間と一つになった時、
力強いエネルギー
「BODY:裸の肉体、美とエロスと闘い」
では、
『Santa Fe』
(宮
を発することを期待しています。
沢りえ)、
『water fruit』
(樋口可南子)
など、
ヌードで社会現象
展覧会は、5章で構成されています。
「 GOD:鬼籍に入られ
を巻き起こしてきた作品を紹介します。最後は、東日本大震災
た人々」
は、
すでに亡くなった方の部屋。篠山自身の希望で真っ
被災者のありのままの姿を真摯に捉えた「ACCIDENTS:
黒な部屋にしました。
「 STAR:すべての人々に知られる有名
2011年3月11日、東日本大震災で被災された人々の肖像」。
人」は、篠山のライフワークとも言えるシリーズ。
スターの内面
この機会に、篠山紀信の「写真力」
を全身で感じていただき
に秘められた光と影に深い洞察力で迫ります。
たいと思います。
「SPECTACLE:私たちを異次元に連れ出す夢の世界」
では、
静岡県立美術館 上席学芸員 泰井 良
篠山紀信展 写真力 平成27年4月11日土~6月21日日
表紙の作品
黒田 清 輝 (1866~1924)
《富士之図》1898(明治31)年 板、油彩 25.0×33.0㎝
本作品は、六枚の連作で、逗子や鎌倉から四季折々の富士を遠望している。
空や海、朝夕の色調の変化を巧みに捉えていて、小品ではあるが、黒田清輝の
特徴をよく示す作品である。
この年、逗子に滞在した黒田は、当初、養神亭にいたが、その後、一軒の家を
買い求め、8月初旬まで滞在した。そして、本作を含む19点を同年10月に開催さ
れた白馬会第3回展に出品する。
黒田にとっての富士は、日本人の精神を象徴する主題であり、
ここには日本の
風景を西洋伝来の油彩でいかに描くかという探究心が込められている。
静岡県立美術館上席学芸員 泰井 良
静岡県立美術館友の会(静岡市駿河区谷田53-2 TEL.054-264-0897)2015年4月15日発行 印刷/松本印刷㈱
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