林間測位における準天頂衛星“みちびき“の効果に関する小考察

林間測位における準天頂衛星“みちびき“の効果に関する小考察
Short Studies on Positioning in a Forest by Using QZS “Michibiki”
浪江 宏宗
Hiromune NAMIE
安田 雄太
牧 野 恒太郎
石川 暁人
Yuta YASUDA Kotaro MAKINO and Akihito ISHIKAWA
防 衛 省
防衛大学校
電気電子工学科
The National Defense Academy, the Ministry of Defense, Japan
1. はじめに 日本初の衛星測位システムである準天頂衛
星システムは、2017 年から 2019 年までに衛星 3 基が追加
で打ち上げられ 4 基体制で運用されることが決定してお
り、さらに持続測位可能な 7 基体制へ向かっている。本
研究では、需要はあるが測位環境が悪い森林において、
みちびき経由の L1-SAIF 補強信号を受信し、測位状況の
把握を試みた
2. 実験概要 今回の実験では、コア社製の QZS+GPS 受信
評価機 CD311(図 1)3 台を使用した。まず、ポールを遮蔽
の無い木の上空まで伸ばし、その先端に GPS アンテナを
取付ける(図 1)。さらにポール最下部にもう一つ同一の
アンテナを設置(図 1)(上空 受信機 1 台、最下部 受信
機 2 台)、上空では QZS+GPS L1-SAIF 補強測位、最下部
の 2 台は、QZS+GPS L1-SAIF 補強測位、及び GPS 単独測位
で、約 30 分~2 時間程度同時に毎秒定点測位を実施した。
本実験では上空の測位結果を基準とした。
3. 結果及び考察 図 2 に水平方向測位分布を示す。上空
の QZS+GPS(基準)を赤、最下部の QZS+GPS を青、GPS 単独
測位を緑で表した。また、表 1 に統計的結果をまとめて
示し、さらに、より良好な結果を赤字で示した。同表よ
り、今回の林間部における実験では、QZS、L1-SAIF を利
用しても、必ずしも精度の向上が見られない場合もある
ことが分かった。しかし、衛星数は QZS の分 1 基増加し、
その結果として HDOP 値も 0.14 ではあるが改善していた。
また標高の測位結果では、林間部では QZS の使用の有無
にかかわらず、標高の精度が非常に悪く、10 m 以上も高
く算出されることが分かった。
次に、表 2 に林間部における衛星受信信号の減衰につ
いてまとめて示す。ポール先端で受信した全衛星の SN 比
の平均値と、最下部で受信した全衛星の平均値が 46.5、
33.7 dB であり 12.8 dB の減衰があった。また、QZS のみ
の SN 比は 50.2、40.8 dB で 9.5 dB の減衰があるので、
天頂方向に有る QZS は、GPS に比べ、平均の SN 比の減衰
量が低く、林間部における測位利用に好影響を与えてい
るものと考察する。
謝 辞 学術交流のための研究助成を頂いている公益財団
法人 防衛大学校学術・教育振興会に謝意を表します。
表 2 SN 比の比較
SN 比の比較
上空
最下部
減衰量
QZS+GPS
46.5 dB
33.7 dB
12.8 dB
QZS のみ
50.2 dB
40.8 dB
9.5 dB
図 1 実験状況
図 2 水平方向定点測位分布
表 1 実験結果
比較
平均
(m)
σ
(m)
衛星数
(基)
HDOP
標高
(m)
標高σh
(m)
経度
緯度
経度
緯度
QZS+GPS
(基準)
経度 緯度
-2.22
-6.54
-2.88
-6.12
0.00
0.00
4.02
3.01
3.90
3.88
1.18
1.49
QZS+GPS
GPS 単独
7.86
6.86
8.30
1.09
1.23
82.98
81.58
1.00
68.96
(推定高)
4.49
5.26
3.43