技能検定2級電子機器組立て 新課題への対応について:熊谷隆美

技能検定 2 級電子機器組立て 新課題への対応について
熊谷
1.
隆美 *
はじめに
技能検定電子機器組立ての課題は,平成 25 年度
に大幅に変更になった.その中で実装部品点数の増
加,特にチップ部品の大幅な増加と束線作成が 1 本
から 2 本に増えたことが主な変更点と考えられる.
このことは作業量が増加することを意味するが,標
準時間は 4 時間,打ち切り時間は 4 時間 30 分と不
変であるため,何らかの対策を講じる必要がある.
そこで,本内容ではチップ部品実装作業の迅速化,
束線作成の迅速化に取り組んだ概要について報告
する.
2.
写真 1
新旧課題の相違点
旧課題
新旧課題の相違点について,完成写真とプリント
基板への実装部品について比較してみる.
2.1
完成品の比較
写真 1 と写真 2 に新旧完成品の写真を示す.新課
題では,メイン基板が大きくなり部品点数も増えて
いることが分かる.また,旧課題では束線が 1 本で
あったが,新課題では電源トランスと背面パネルの
部品そしてメイン基板の接続に 1 本,メイン基板と
表示用基板そして前面パネルの LED の接続に 1 本
の計 2 本となっている.
次に,前面パネルについて比較してみる.写真 3
と写真 4 に新旧課題の前面パネルの写真を示す.
写真 2
旧課題では表示用基板のみであったが,新課題で
は表示用基板の他に,3 個の LED が追加になって
いることが分かる.
最後に,背面パネルについて比較してみる.写真
5 と写真 6 に新旧課題の前面パネルの写真を示す.
新課題では、旧課題にあったフューズホルダー1
本と AC100V のコンセントがなくなり,新たに 3
極の端子板が追加になっていることが分かる.
*
電子技術科
8
新課題
写真 3
写真 4
旧課題の前面パネル
新課題の前面パネル
トランジスタ
1
1
ダイオード
8
6
電解コンデンサ
9
9
コンデンサ
6
18
抵抗器
27
37
集合抵抗器
1
1
リレー
1
1
焦電素子
1
1
半固定抵抗器
2
3
チェックピン
2
4
ショートプラグ
2
2
ディップスイッチ
1
1
端子台
3
3
合計
78
101
次に,チップ部品のみについて比較してみる.
結果を表 2 に示す.チップ部品は 12 個から 41 個
と大幅に増加していることが分かる.
写真 5 旧課題の背面パネル
表2
チップ部品数の比較
旧課題
新課題
2
5
抵抗器
4
19
コンデンサ
6
15
トランジスタ
0
1
ダイオード
0
1
合計
12
41
部品名
IC
写真 6 新課題の背面パネル
2.2
3.
実装部品の比較
新課題への対応
実装部品点数の増加や,チップ部品の増加にもか
プリント基板への実装部品について比較してみ
かわらず,標準時間は 4 時間,打ち切り時間は 4 時
る.
間 30 分と不変である.これは,作業時間の短縮化,
表 1 に,部品の種類ごとの比較表を示した.部品
効率化が必要なことを意味する.
総数が 78 個から 101 個と増加し,作業量が増えて
新課題への対応について,チップ部品の実装と束
いることが分かる.
線作成の二つに分けて述べる.
表1
プリント基板への実装部品数の比較
3.1
チップ部品の実装
旧課題
新課題
IC
10
13
入すると自動的に位置が定まることと異なり,部品
LED
3
なし
の取り付け位置も製作者が決めないといけない.ま
7 セグメント LED
1
1
た,取りつけ位置がずれると減点の対象となる.し
部品名
チップ部品は,リード部品が基板の穴に部品を挿
かも IC はパッケージが SOP となり,ピンのピッチ
9
が 1.27mm しかない.つまり,作業の難易度が上が
2,
TB2-5
TB3-2(赤)
っているわけである.
3,
TB2-6
TB3-1(黒)
4,
LED1
TB2-7、TB2-9
これらの対策として,写真 7 にような教材を使用
LED2、LED3
TB2-11(黄)
し反復練習をおこなった.まず,実装の急所を指導
LED1
5,
してから,実装練習をさせる.その後,出来具合を
TB2-8、TB2-10
LED2、LED3
TB2-12(黒)
評価し,必要は指導をおこない,再び実習練習させ
4.
る.これを繰り返すことで,作業時間の短縮と出来
まとめ
今回は,新課題の部品点数の解析や新課題に対応
映えの向上がみられた.
した教材の使用,そして独自の指示書の作成などを
おこなうことで,新課題でも制限時間内で完成でき
るようになった.
参考文献
1) 中央職業能力開発協会編
2級
電子機器組立て 実技試験問題
2) 中央職業能力開発協会編
2級
写真 7
チップ部品実装練習教材
束線作成
3.2
束線作成は,マニュアルや回路図を見ながら作成
していては制限時間をオーバーしてしまう.そこで
下記に示すように,どの色の線材を使用し,マニュ
アルの束線図のどの点から始めし,どの点で折り返
し,どの点で終了するかを書いた指示書を作成し,
この内容を学生に暗記させ,反復練習をおこなった.
このようにして練習することにより,標準時間内で
も余裕をもって作業ができるようになった.
束線
その 1
1,
T1 の 100V
2,
T1 の 0V
S1、XF1
TB1-5、TB1-6
TB1-3
束線
1,
T1 の 8V
(白)
TB1-1、
TB1-2
TB4 の NO 、 TB4 の COM
3, TB1-4
4,
T1 の 100V
(白)
TB4 の NC(黄)
端の 1 本線へ(黒)
その 2
TB2-1
TB3-6、TB3-5
TB3-4、TB3-3
TB2-2、TB2-3
TB2-4(黄)
10
平成 24 年度技能検定
平成 26 年度技能検定
電子機器組立て 実技試験問題