「防災分野での NGO と企業の連携」

第 4 回定例会 プログラム
2015 年 3 月 27 日(金) 14:00~17:00
場所:早稲田奉仕園 日本キリスト教会館 6ABC 号室
「防災分野での NGO と企業の連携」
~東日本大震災の経験から、今後の防災について考える~
司会:(特活)グッド・ネーバーズ・ジャパン 武鑓 史恵(コアメンバー)
Ⅰ.はじめに (10 分)
14:00~14:10
開会あいさつ
[進行]司会
新規参加メンバー自己紹介
[進行]司会
Ⅱ.基調講演(30 分)
14:10~14:40
■田島 誠氏
問題提起 東日本大震災の経験を生かし、
マルチステークホルダーで防災に取り組むには
Ⅲ.事例紹介(座談会)(40 分)
(特活)国際協力 NGO センター(JANIC)
防災アドバイザー
14:40~15:20
【ファシリテーター】
■田島 誠氏
(特活)国際協力 NGO センター(JANIC)
座談会
防災アドバイザー
【パネリスト】
「なぜマルチセクターで防災に取り組むのか?」
~民間防災および被災地支援ネットワーク(CVN)ができたわけ~
■山本 隆氏
ピースボート災害ボランティアセンター
代表理事
質疑応答
■本山 聡平氏
サノフィ株式会社
渉外本部 CSR 推進部 部長
休
憩 (15 分)
Ⅳ.ワークショップ(80 分)
15:35~16:55
CP(「不測事態対応計画(Contingency Plan)」)ワークショップ
■松尾 沢子
※将来起こりうる災害等の不測の事態に対し、人道支援の国際
基準も踏まえつつ、計画的かつマルチセクターで取り組み効果
(特活)国際協力 NGO センター(JANIC)
能力強化グループ マネージャー
的な支援につなげるワークショップ。
Ⅴ.おわりに(5 分)
16:55~17:00
・メンバーからの報告等
[進行]司会
・事務連絡
今回の定例会は、一部 Give2Asia の助成を受けて実施しています。
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開催レポート
Ⅱ.基調講演
「東日本大震災の経験を生かし、マルチステークホルダーで防災に取り組むには」
講師:田島誠氏
世界の潮流
(特活)国際協力 NGO センター(JANIC)防災アドバイザー
求められるマルチセクターの連携
仙台で開催された国連防災世界会議でも、マルチセクターで取り組むことは重要視された。企業の参
画は、防災のみならず開発セクターでも非常に注目されており、世界的潮流ともなっている。
東日本大震災は、大規模広域災害であった。こういった災害は、気候変動の関係もあり世界各地で増
えている。ここに「災害にあいやすい国」を色分けした地図がある。日本を含む環太平洋地域は非常に
災害が多い。しかしこれが「災害の被害が大きくなりやすい国」の地図になると、色分けが変わってく
る。日本をはじめとする先進国は、行政を中心とする地域防災計画や関連法があり、ガバナンスが整っ
ているため国内・地域内での解決能力が高く、ある程度被害を抑えることができる。しかし途上国はガ
バナンスが低く、制度や組織が整っていないため、被害が大きくなりやすい。つまり同程度の災害であ
っても、国や地域によって被害の大きさは変わってくる。
日本の防災計画の基本理念は“自助・共助(互助)
・公助”であり、コミュニティの中で防災に取り組
んでいる。しかし、東日本大震災のように地元のキャパシティを超えたとき、NGO/NPO や企業といっ
た外部からの支援が必要になってくる。ところが現行の制度では外部からの支援を想定していなかった
ため、多くの人や物が東日本に集まったが、うまく受け入れることが出来ず混乱が起きてしまった。
国連防災世界会議で定められた「仙台防災枠組」でも、各所でマルチセクターという記述がある。途
上国も先進国も、マルチセクターで防災に取り組むことが必要である。
東日本大震災の教訓 明らかになった課題
JANIC では東日本大震災で得た教訓を調査し、検証、評価、提言を行ってきた。その中で市民社会の
支援に関わる課題を 3 つ挙げる。
1.
ガバナンス(制度・仕組み、組織)
2.
リソース(人・物・金、組織や人の能力)
3.
地球規模課題
一つ目の課題のガバナンスだが、まず市民社会の支援が制度的に担保されておらず、官民連携、民民
連携の仕組みが弱かった。日本の「地域防災計画」は行政主導で行うが、海外の「緊急事態対応計画」
では市民社会を含む外部支援を前提としている。小規模な災害ならば地元の行政だけでも対応できるが、
大規模災害は別である。大きな災害が起こった直後に外部から機動力のある NGO が現地に入り支援活動
を行い、そこから復旧期、復興期にかけて地元団体・企業主導へと移行していくことが望ましい。
また、東日本大震災では避難所ごとに対応に差があることが問題であった。しかし人道支援の国際基
準には、避難所で必要とされる物資や気を付けるべきことなど、対応が明記されている。災害が起きた
後にみんなで議論するのではなく、事前に計画に入れておけば不要な混乱は起こらない。
二つ目の課題のリソースだが、NGO が東日本大震災の支援活動で最も苦労した点は、資金調達であっ
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た。もともと NGO の財務基盤は根本的に弱いのだが、特に国・県・自治体からの資金の使途や使用期間
などが制限されていたことも、充分な活動を行なうことが出来なかった原因である。また、限られた資
金の中で活動をしているため、人材も不足している。特に事業管理ができる人材、地元の事情に精通し
た人材、専門性の高い人材などが不足していた。
三つ目の地球規模課題だが、日本は原発リスクを国内問題として捉えており、グローバルに取り組む
視点が欠けていた。放射能は国境を越え、他国にも影響を及ぼしている。実際に福島原発の汚染水や放
射能は太平洋を越え、アメリカまで到達している。今後アジア、特に中国ではかなりの数の原発の建設
を予定している。中国で原発事故が起こった場合、果たして日本は安全だろうか。こうしたリスクにつ
いて、自国の問題としてだけでなく、グローバルな問題として捉えなければならない。
教訓を生かす 未来をつくる動き
東日本大震災の経験から、課題に取り組む縦(政府・行政→地域社会)と横(防災課題→開発・地域
課題)の仕組みと協働を平時から考えておこうという動きが始まっている。国際的な防災枠組みは決ま
ったが、現場で生かされなければ意味はない。そのためには、セクター間連携が非常に重要になってく
る。さらに災害に強い国を作ることは、持続可能な社会を作ることとつながっている。防災課題と開発
課題を別物とせず、一緒になって取り組んでいきたい。
そのような中で、新たなマルチセクターのネットワークが生まれてきている。本日の事例でも取り上
げられる「民間防災および被災地支援ネットワーク(CVN)
」や、JANIC が共同事務局を務めている「2015
防災世界会議 CSO ネットワーク(JCC2015)」
、
「JVOAD」や「日本防災プラットフォーム」という官
民連携のネットワークも作られた。様々な市民社会を強化するしくみも出来始めている。
平成 24 年に政府の被害想定が見直された。東日本大震災の経験を受けて、最悪の状態を念頭に被害想
定が変更された。南海トラフ巨大地震の被害想定(第一次報告)では、防災対策を実施することによっ
て建物被害は 6 割、人的被害は 9 割削減されるのではないかと言われている。日頃から備えておくこと
がいかに重要かがわかる。未来を良くするのは、地域を超え、国境を越え、地域の開発課題も解決しつ
つ、縦と横の連携と協働を強化して、マルチセクターで防災と災害対応に取り組むことである。
Ⅲ.事例紹介(座談会)
「なぜマルチセクターで防災に取り組むのか?」
~民間防災および被災地支援ネットワーク(CVN)ができたわけ~
ファシリテーター:田島
誠氏(特活)国際協力 NGO センター(JANIC)防災アドバイザー
パネリスト:山本
ピースボート災害ボランティアセンター
本山
隆氏
聡平氏 サノフィ株式会社 渉外本部 CSR 推進部
代表理事
部長
田島氏(JANIC)
「民間防災および被災地支援ネットワーク(CVN)」は、東日本大震災支援に関わった企業、NGO/NPO、
中間支援組織の三者が、東日本大震災の被災地への支援と今後の災害への備えで協働することを目的に
立ち上げられたネットワークである。本日は、CVN に中心的に関わってこられたお二方をお招きしてい
る。まずは NGO 側の代表としてピースボート災害ボランティアセンター(PBV)代表理事の山本隆氏
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に、PBV と災害支援との関わりについてお話を伺いたい。
山本氏(PBV)
2011 年の東日本大震災をきっかけに、世界一周の船旅を主催しているピースボートという団体から派
生して出来たのが、ピースボート災害ボランティアセンターである。もともとピースボートとして阪神
淡路大震災から災害支援活動をはじめ、今まで世界各地で行ってきた。東日本大震災では、より効果的
に、継続的に支援活動をするために、災害支援に特化した一般社団法人を立ち上げることとなった。東
日本大震災では延べ 8 万 7 千人のボランティアを派遣し、現在も宮城県石巻市の事務所を置いて復興支
援活動を行なっている。その後も日本国内はもちろん、海外での災害支援活動も行っている。
田島氏(JANIC)
企業として、サノフィ株式会社の渉外本部 CSR 推進部部長の本山聡平氏に、なぜ災害支援に乗り出し、
どのようなことをしてきたのかをお聞きしたい。
本山氏(サノフィ)
サノフィは、フランスに本社を置く製薬会社である。外資系企業ではあるが日本で半世紀以上の歴史
を持つ会社でもあり、
「Work for Japan」というメッセージのもと日本社会に貢献する活動として、本業
の医療用医薬品の製造販売だけでなく社員によるボランティア活動にも力を入れている。東日本大震災
発災時にも、トップからの指示もあり社をあげて災害支援ボランティアをやろうということになった。
当時ボランティアの受け入れをしていた社会福祉協議会が石巻市にしかなかったため、そこで PVB と出
会い、今に至るまで様々な形で連携して活動を行ってきた。最初は泥かき、がれき撤去などを行ってい
たが、だんだんと本業を生かした支援へと移行していった。仮設住宅での生活のなかでの疾病リスクへ
の対応や、心のケアの活動などを行なってきた。製薬会社として、今後起こりうる災害時に事業を継続
して医薬品を供給し続けることが第一と考えており、それを前提にその先どれだけ地域社会に私たちの
思いをボランティアなどの形で届けることが出来るのかというところが、今後の課題である。
田島氏(JANIC)
「民間防災および被害地支援ネットワーク(CVN)
」とはどういった組織なのか。そもそも CVN とい
う災害支援に関するネットワークをマルチセクターで作った動機や必要性、作るまでにどのような苦労
があったのか。
本山氏(PBV)
企業が東日本大震災において支援を行おうとした時に、何をしたらいいのかわからなかったという意
見が多くあった。PBV のミッションとしては、今後災害が起こった際に、企業が NGO/NPO や中間支援
団体とスムーズに連携して支援を行っていくことのできるネットワークを作りたいという事である。ま
た災害にそなえ防災の側面での民間連携も今後取り組んで行きたい。
田島氏(JANIC)
CVN で「災害支援の手引き」を作られたが、これはどのようなものか。また作る際にどのような苦労
があったのか。
山本氏(PBV)
「これがあれば災害が起きた時にまず何をすればいいのかわかる」というものを作りたかったことが、
最大の理由である。企業は人事異動があるため、人が変わった時点でそれまでの関係性も変わってしま
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うことがある。その時に、例え担当者が変わったとしても「これを読んでおけよ」という一冊があれば、
いざという時にも関係性に関わらず動くことができるのではないかと思っている。「災害支援の手引き」
には、東日本大震災で実際に取り組んだ支援が具体的に書かれている。苦労した点としては、CVN のメ
ンバーが執筆者となったのだが、事例が多く原稿がまとまらなかったこと。
本山氏(サノフィ)
いざ社員をボランティアで派遣しようとした時に、どうしたらいいのかわからなかった。CVN で話し
ていると、各社同じような悩みを持っていた。その苦労を災害が起こるたびに繰り返すのではなく、ス
ムーズな支援活動につなげたいと思っている。例えば手引きの P24 には、具体的にどのような書類を作
って会社を説得するのかが書かれていたり、P25 には持ち物、P28 には実際に社員を派遣する際のオペ
レーションが書かれていたりする。悩みの解決策を具体的に示すことが必要だと感じている。
田島氏(JANIC)
企業にとって BCP(Business Continuity Plan: 事業継続計画)は自社でやるものだと思うが、その
ような中で CVN に参加する意味は何か。
本山氏(サノフィ)
同じ悩みを持つものが、一緒になって同じ課題に取り組むことが大切だと感じている。企業は企業の
言葉は理解できるが、NGO と企業が出会う機会は少なく、NGO がどのような考えを持って、どのよう
な活動をしているのかは知らない。ネットワークの中で、異なるセクターの方々と情報を共有し、議論
することで、いざという時によりスムーズに支援活動を行なえるところに意味があると感じている。
田島氏(JANIC)
NGO 側として「災害支援の手引き」が出来てよかったことは何か。
山本氏(PBV)
この手引きを読めば、災害支援の現場ではどのようなことが行われているのかを具体的に想像できる
ような作りにすることが出来たことがよかった。またこの手引きを作る過程で、NGO も企業もそれぞれ
の期待と現実のギャップを知ることができたことも、よかったと感じている。
田島氏(JANIC)
JANIC が東日本大震災後に実施した調査がある。NGO は 68%、企業の CSR は 81%が今後もともに
協力したいと回答した。しかし、双方の期待の内容に大きな違いがあった。
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NGO が企業に求める期待としては、「物・金・役務」が 73%を占めていた。一方、企業が NGO に求
める期待としては、「本業 CSR・社員ボランティア派遣」が 48%であった。このギャップについて、本
山氏はどう考えるか。
本山氏(サノフィ)
企業としては、震災をきっかけに被災地支援を学んだだけでなく、社員の会社に対するロイヤリティ
が高まるというメリットがあった。また、NGO や行政を含めて連携をしていかなければならないことを
学んだ。このギャップを埋めるべく、CVN などのネットワークを活用していきたい。
田島氏(JANIC)
復興段階に入った際に、企業にもっと頑張って欲しいという気持ちがあるが、そこは難しいだろうか。
本山氏(サノフィ)
企業としては、復興段階においては本業での力を生かして被災地の課題を解決していきたい。
「ビジ
ネスやビジネスでのスキルを生かした支援活動を通していかに地域・社会に貢献していくことができる
か」が今後の企業にとって重要となってくる。
田島氏(JANIC)
NGO は外部支援団体として、徐々に被災地からは引いていき、地元企業・団体にゆだねていくことが
重要になってくるが、その際の企業と NGO の連携の課題とは何か。
山本氏(PBV)
課題は、NGO が企業に対してビジネスになる場を作れないことではないか。貢献や復興、絆というも
のも大切だが、ビジネスとして提案できないことが NGO の最大の課題。NGO が、企業は何が出来るの
かを知らなさすぎることが課題。お互いどう win-win の関係を作れるかが重要である。
田島氏(JANIC)
最後に一言ずつ。「2011 年は企業ボランティア元年である」という記述があるが、今後どういう形に
発展していくのが望ましいか。
山本氏(PBV)
マルチセクターでお互いを理解して、win-win の関係を作り、自主的で実行力のあるネットワークを
作っていきたい。
本山氏(サノフィ)
一言でいうと、BCP から災害支援までの一連の流れを企業の常識にしていく必要がある。下表 1~4
までは社内の問題。5 以降は一社だけでなく、複数社、さらにはマルチセクターで取り組んだ方が有効で
あるため、NGO の知見をいれる。
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【質疑応答】
Q.(to 本山氏)ボランティアなどの活動の他に、現地支援を継続しているか。そこから何か本業につな
がるネタが見つかっているか。今後の防災に向けてマルチセクターで準備をしていくのは企業一社では
難しいと思うが、どのような動きをしているか。
A.
(本山氏)前半の質問に対しては、そこがまさに苦労している点である。医療用医薬品ということで、
お医者さんの処方を通すため一つバリアがある。疾病啓発はできるが、自社の製品とうまくつなげられ
てはいないことが今後の課題である。後者は、個々の企業の中の努力の積み重ねでしかないのではない
か。個々の企業がいかに行政や NGO と連携する事のメリットを社内に訴えかけていけるかがカギである。
A.
(山本氏)他社がどのようなことに取り組んでいるか情報交換が出来ることが、ネットワークの最大
の強みであると考えている。そこで得た情報を基に、トップや社員に訴えていくのも一つではないか。
Q.CVN の運営にかかる資金はどのように調達をしているのか。
A.
(山本氏)資金のかかる活動はほとんど各社の持ち出しである。CVN として外部から資金は得ていな
い。ボランティアを受け入れるコストは、PBV が「ボランティアを受け入れて、ボランティアをしても
らう」という内容で助成金をもらっているため、それをベースに運営した。企業の中でボランティアを
派遣するための安全の意識やアカウンタビリティなどを認識しているリーダーを育成する研修も行って
いるが、それも PBV が助成金を受けて実施している。
Q.CVN の会計はないということか。
A.災害が起こった際に、有志の社員をバスで送れるような資金をどう用意するかなど、現在まさに検討
している最中である。
Q.海外でも災害はあるが、CVN として海外の災害支援に取り組むという考えはあるか。
A.
(本山氏)CVN の中には海外の支援を積極的に行っている NGO や企業もいる。サノフィ・ジャパン
としては、フランス企業の日本子会社という立場でありまずは日本にフォーカスしようということにな
る。海外の災害支援はフランス本社が主導で行うことが多い。
A.(山本氏)海外から注目されている取組みではあるので、この枠組みは広めていきたい。
Ⅳ.ワークショップ
マルチセクターで備えよう!Contingency Planning ワークショップ
ファシリテーター:松尾
沢子
(特活)国際協力 NGO センター(JANIC)
能力強化グループ
マネージャー
はじめに
将来起こりうる災害に対応していくためには、人道支援の国際基準も踏まえつつ、マルチステークホ
ルダーの計画策定と支援を実現するために、Contingency Planning(不測事態対応計画)について学ぶ
ワークショップである。
CVN が提唱している防災真剣企業 8 つの約束には、
「7.被災地、被災者を支援します」
「8.継続で
きる仕組みをします」とある中、本日はどのような災害状況に対し、どのような方法で誰を支援するの
か、そのために何を準備すればいいのか、についてお話しする。
国連機関が想定している様々な緊急事態への対応準備活動の一つの考え方・手法として不測事態対応
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計画(CP)の立案がある。CP は、災害支援を実施する際に起こりうる状態や発生する問題を想定し、
解決するためのツールである。
国際基準としてスフィア・ハンドブックや HAP 原則がある。これら基準では支援の到達目標はひとり
一人を大切にすること。尊厳のある生活の実現とは、人道的に達成すべき最低限の状態を目指すこと。
【ワーク:横浜市大規模地震災害シナリオ
ケーススタディ(20 分)】
ファシリテーターが準備した「横浜市の大規模地震の災害シナリオ」を参考に、以下のワークをグル
ープごとに行う。
問 1:状況調査メモを参考に、地震発生から 1 か月後の避難所 A でどのような支援が必要とされている
のかについて話し合ってください。支援分野は自由に追加してください。優先する支援分野を二
つ決定してください。(10 分)
問 2:グループ内で、分担しうる支援分野・内容を議論してください。分担できると考える団体が他にも
ある場合は、グループ外のアクターでもいいので考えてください。なお、連携ネットでは、国際
的な支援基準を満たした支援を行う方針を打ち出しています。基準例を参考に分担を検討してく
ださい。
(10 分)
【配布資料】
① ワーク開始前に配布
・横浜市大規模地震災害シナリオ
ケーススタディ:避難所 A の状況(特に食糧とトイレ)
・国際基準に基づくニーズ把握:食糧、水、トイレ
・支援の質とアカウンタビリティ(Quality and Accountability) パンフレット
②
ワーク実施後に配布
・横浜市 被害シナリオ
(横浜市作成「2013 年防災計画」資料)
・CP Learning Module テキスト
86 ページ「対応ギャップ確認表の作成」
【グループからの発表後のファシリテーターによる解説】
グループワークでは、ニーズが必要な人たちは誰かに注目して議論がされていた。また、アクターを
自由に追加する際に、行政、地域住民、ボランティア、自衛隊などの災害対応時に不可欠なアクターが
出てきた。中には、日ごろから地元の団体とつながりがある参加者の関連組織がコーディネーションで
きるというアイデアも出された。NGO が海外で行っている住民参加の視点などを入れたグループもあっ
た。このような議論を通じ、自分たちでできないことを放っておくのではなく、他のアクターを巻き込
んで、ニーズに応えていく計画づくりが CP の考え方であり、重視している点である。
他方、このワークを通じ、複数企業から、照明器具の提供申し出があった結果、供給過多になってし
まうことも判明した。例えば東日本大震災では、同じ賞味期限の食糧が大量に届いてしまうなどの経験
もあった。供給過多になる可能性がある物資は事前の調整をして分担を決める、あるいは設置や利用に
際して専門性(例:照明器具の設置、配線等の技術工事)が求められるような場合は誰がその役割を担
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うのか、といった点についても分担を決める必要があるという気づきもあった。
今後、CVN などのネットワークを活用し、ぜひ今後の大災害に備えて関係者全体で事前に起こりうる
災害とニーズを協議し、支援内容を調整していくことを意識してほしい。
以上
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