熱硬化性樹脂の流れ特性

プラスチ・ 材料瞬寄動特性の
誠験法と評価碕果
〈20〉∴’.
安田 武夫*
このようにプラスチック材料からある製品を得るた
3.成形特1生
めには,種々な方法が使用されているが,いずれの場
3−1.はじめに
合も,まず第一に樹脂の加熱加工による成形工程を経
プラスチックは,以前紹介したように加熱時の挙動
なけれぱならない2〕。このような樹脂の溶融に伴う流
により大きく熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂に分類され
動性を利用した成形方法(たとえば射出成形,押出成
る。この両者の成形性の相違と成形加工を行うときの
形等)では,成形過程の各段階をその展開する順序に
構成単位操作を表1に示すi〕。また,主な加工法の種類
並べてみると表1のと串りとなる。
と分類について表2に示す。さらに詳しく成形加エ法
第一段階:樹脂を加熱し,溶融(melting)流動とす
を成形品の形状・種類に分けて分類すると図1に示す
ようになる。これら成形加工法は成形材料から一次的
る。
第二段階:加圧により所望の形状とする(form−
に加工する一次加工,一次加工品をさらに加工するこ
ing)。
とを二次加工として分類すると,真空成形・熱成形・
第三段階:成形された形状に固化させてその形を保
冷問加工・表面処理・機械加工・溶接・溶着・印刷・
持する(Setting)。
塗装などは二次加工の部類に入る。他はすべて一次加
熱可塑性樹脂一冷却による物理的な固化(soldify−
工といえる。
ing)。無定形樹脂(非晶性樹脂)ではガラス転移に向か
}Takeo YASUDA,安田ポリマーリサーチ研究所所長
う。結晶性樹脂でほ結晶化が起こ乱
熱硬化性樹脂一加熱による化学反応(縮合重合また
〒168−0082東京都杉並区久我山4−24−7
表1熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の成形性の相違と成形加工時の構成単位操作
(a)熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の成形性の相違 (b〕成形加工の構成単位
金
型
内
の
材
料
挙
動
材料の
変化
成性
形質
に
必
要
な
96
熱硬化性樹脂および成形材料
熱可塑性樹脂およぴ成形材料
加熱,加圧による
溶融または粘度低下
加熱,加圧による
可塑化および溶融
↓
流動
変性操作
流動
↓
賦形
賦形
↓
↓
硬化
冷却固化
不可逆変化
可逆変化
(化学変化)
(物理的変化)
材料と成形の両方からの性質 材料固有の性質
1)レオロジー的性質
2)熱的性質
単位技術
備 考
混合,混練 ポリマー,添加剤,基材の混合
ボリマー変憧 材料ポリマーの化学変性
基材,ポリマーの表面処理
乾燥,粉砕 成形材料の前処理
表面処理
↓
↓
1)レオロジー的性質
2〕熱晦性質
3〕硬化反応
構成操作
加工操作 溶 融
(成形加工)
物性改良操作
2次加工操作
成形材料の加熱,制御
押出,射出等各種成形法
賦 形 同上,金型,ダイの設置
固 化 溶融賦形材料の冷却,制御
物理変化 発泡技術,架橋反応等
流動(移動)
化学変化
加工物性
応用物性
機械加工
表面加工
2次処理
加〕二時状態変化(結晶化,ひずみ等)
成形晶物性改良,複合化等
切削,切断,穿孔,研磨等
めっき,印刷,塗装等
接着,溶接等
プラスチックス
は付加重合反応)の進行による硬化
(Curing)。
このように熱可塑性樹脂と熱硬化性
樹脂とでは,その最終段階での固化(形
状保持)の仕方が異なるだけであって,
表2主なる加工法の種類と分類(◎印:三大加工法)
材料 加工
特性 特性
熱
硬
化
性
いずれも加熱による樹脂の流動性を利
溶
融
硬
化
成
形
では共通している。
溶
融
■
固
化
成
成形過程における流動の難易や固化の
遅速などに関する性質を表すもので,
熱
可
塑
性
形
(Cure)という化学反応をともなうので
成形特性が複雑なものとなる。ここで
は,熱可塑性樹脂,熱硬化性樹脂の成
形特性のうち,特に流動性(流れ特性)
固
相
加
工
に重点をおいて述べる。
3−2.プラスチック材料の粘性流動
製晶形状
任意
〃
PF,UP,等
〃
ポット式を含む
〃
BMC,SMC,ZMC
PVC,PMMA
一般
押
延伸
出
吹込
成
形
特殊
焼成加工
粉末加工
真空加工
圧空加工
延伸
塑
鍛造
性
加
工
冷却の必要あり,試験成形
PE等
全般
板,パイプ,丸棒
長尺(断面形一定〕
ビン物
異形押出等
PVC,PE等
PTFE,UHMW−PE
PE等
ABS,PVC,PP
ABS,AS,PVC
PVC等
任意
大型容器
箱,容器,看板
厚物容器
シート,フイルム
任意
容器類
任意(棒状〕
板,丸棒
咀M0成形 _
圧蝦成形
抽届成形 化雅掘、棚届晶
L
低圧成形
注 型 劃入症型
気体または水のような流動体を基準として考えていく
ロール加エ カレノダ成形
ことが必要になる。このように原理的に取り扱うこと
射出発砲成形
一仁尭泡押出黎品
’イプ押出成形 パイプ。花莚
フーラメンーワインデ{ング ー一一’{イブ等
異形岬出 一一一一一一一一一一一→異形押出品
押出成形
坦韻袖珊 撞掴冗獺
ラ…ネート加エ ラ…ネートフィルム
多屑フ4ルム法 一一→一7イ’』ム
インワレーシヨン
一一一一一一’一一一“簡状フールム
ηルム成形
ー雌伸一一→噺;て、アイパ
Tダイ7イルム虚形
(単位時問に流れた体積)ρはつぎのような関係が得
ワラ・’トヲイルム
砥伸技術
港硅赫糸
戒 形
ρ!81η。α (1)
■「
1 二軸延伸 一一一→二軸延伸フィルム
モノ7イラメン}
πP 。
⊥ 雛,モノηラル干
シート顯
シート威形 一」
真空成形
1一
回唾成形 蛛成形 一」
粉末成形 港 射 「
成形品
犬型成形晶
袖把里晶
冷間加工 一」
ライニング ー一 被田顯品
メ・’キ処理 一一一一→一メ・’キ理品
この関係がプラスチックの流動性を示すときの基礎
ものである。
成形品
→中空顯品〔甑など〕
晃泡技術
=月一Bとすると管を通って流れる流動体の流動量
流動性を示す場合に,よく引用される関係式で重要な
シLト,フ{ルム
HIM成形 一一一一一一晃抱成形品
中空成形
いま図2に示すような長さ1,半径αの管の中を流
動体が流れたとする。流動体の加わっている圧力をP
となっている。この関係はプラスチック材料の成形性,
一一一工典部品
射出威形
この理想流体の流れ方,つまり,流動体の基準にな
T=η。万 (2)
成形品,根
一一一日用品雑貨
{ノ守一キ中スティ’グ
ができる流動体をニュートン流動体または理想流動体
肋 4Q
低圧晃抱成形 一一一一一晃抱成形品
キ午スト戒形
難しい。したがって,まず粘性流動体のなかでも,現
象が簡単で,理論的に取り扱える流動体,たとえば,
この式の形を少し変えてみると,つぎのようになる。
歯亀ローラ
F且P成形 SMC成形 =二=二;=成形品
状態はきわめて複雑で,直接この流れを説明するのは
られる。
スラツシュ法
トランスフ〒成形 1一 成形晶
流動性を帯びた高い粘度のプラスチック材料の流動
るような流れ方を調べてみた。
フローモールデイング
インフレーション
PP,PE,PET
PP,PE,PET
成形性を支配する基礎項目である粘性流動について述
と呼ぶ。
一般成形品
サイドイッチモールド
発泡成形等
ここでは,まずプラスチック材料の
べる。
プレンド,充損材混入割こも
任意
〃
PVC,PP等
POM,PP,PC等
絞 り
PVC,PC等
押出 PE,POM等
曲 げ
充損材ととも
シート類
ビン,ドラムカン
レンズなど厚物
ケーシングなど
発泡製品
ABS,
◎
BMC,SMC
板,丸棒,パイプ
圧縮成形 全般
〃
一般
◎
吹込 PP,PE,PET
射
出
特殊 PMMA,
成
形
備 考
遼心注型法も含む
PF,UF,MF,UP
射出成形 UP,PF等
積層成形 UP,PF,MF等
ロール成形
プラスチック材料の成形特性とは,
きる。熱硬化性樹脂の場合には硬化
主な材料
1 ◎圧縮成形
トランスファ
用することが成形操作の中心となる点
樹脂の熱的性質の一つとみることもで
加工法
注 型 法 PMMA,SI,EP
妻面処理
二次加工
悲詰処理 一一一→垂面処理品
樹柚加工 加工哩品
溶接睦描 一十加工里品
印刷堕装 加工聖品
図1 プラスチック加工法系統図
VoI.52,No.9
97
Pl
lo5
図2理想流体
昌
・回二1〕・ の流れ方説
6
_ 4
明図
.董 3
32
篭
‡10・
1毒 8
5
拙
■
○
堤
挫
璃
士
蕪
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唄 6 輪r㌦ク
4 メ づ
3 デb,
2
s
‘×
150 200 250 300
圧力(j〕蜆ノ2’〕
図3ニュートン流体およびプラスチッ
せん断速度(4Q/π直ヨ)
図4せん断速度と見掛け粘度
ク成形材料の流動特性曲線
温 度(℃〕
農験秀1粥;減跳仏繊益拠
図5各種プラスチックの見掛け粘度と温度との
関係1〕
Pα
■τは流体に与えられた圧力項(dyne/cm2),
うに化学反応(硬化反応)の進行の影響を受けず,物
49は流動体の流動速度(せん断速度,cm3/s),
理的な状態変化だけであるから比較的理解しやすい。
πα
しかし,たとえばポリスチレンのように,結晶性をと
Pは流体に加わる圧力項(dyne/cm2),
1は管の長さ(Cm),
αは管の半径(Cm)を示す。
Qは流動体が単位時問に流れた流動体積(流れた
体積)を示し,単位はcm宮/sで示される。
ηoは粘度で,この値は半径αの管壁における粘性
率(粘度)を示す。単位は,ポイズ(poise)。見掛け
の粘度,またはゼロひずみ速度(せん断速度)の粘
度(zero share viscocity)と呼ばれている。
実際のプラスチック材料の流動性は,理想流体とは
だいぶかけ離れた性質を示すものが多いが,その流れ
の状態は,いつもこの関係式が基準として考えられる。
それでは,プラスチック材料の流動性について調べ
てみた。
図3にはニュートン流体,およびプラスチック材料
の溶融流動性を示す。
ニュートン流体とは,(2)式によくあてはまる流体
のことで,曲線①に示すように圧力一せん断速度が比
例し直線で表されるもので,粘性率を定数として取り
扱ってよいものである。このような流体には空気,水
がある。’プラスチック成形材料は流れ方が複雑で,曲
線②に示すように,圧力の増加とともにせん断速度が
非直線的に急激に増加してく乱すなわち,せん断速
度が増加すると図4に示すように,粘度ηoが低下する
ことを示している茗〕。
3−3.流れ特性の一般的傾向
3−3−1.熱可塑性樹脂の流れ特性
熱可塑性樹脂の加熱時の流動性は熱硬化性樹脂のよ
98
もなわない無定形高分子(非晶性プラスチック)に属
するものと,ポリエチレンやポリアミド(ナイロン)
のような結晶性プラスチックではその流れ特性は異な
ってくる。これは結晶性プラスチックでは結晶融点が
あるのに対し,非晶性のものは溶融の境界が明確でな
いためである。また,最近注目されている液晶ポリマ
ー(LCP)も両者とは異なった流動特性を示す。
プラスチックの流動性を基本的に表すには,各温度
における粘度(ViSCOCity)変化(粘度一温度関係特性)
によるか,ある一定温度に長時間保ったときの粘度の
時問的変化(粘度一時問関係特性)等をもって行う。
熱可塑性樹脂の粘度は温度が高いほど低下して流れ
はよくなるが,加えられる圧力が高けれぱ粘度は同じ
でも流動しやすくなり,流れ特性は見掛け上は改良さ
れる。樹脂の種類により,その流動性が温度変化に敏
感に変化するもの(温度依存性が高いもの)と圧力変
化に敏感に変化するもの(圧力依存性が高いもの),あ
るいはその双方を兼ね備えるもの等がある。
図5は高化式フローテスタによって測定した汎用熱
可塑性樹脂を中心とした材料の見掛け粘度一温度関係
曲線である。図5より,セルロースアセテート(酢酸
繊維素),ポリスチレン,メタクリル樹脂,ポリカーボ
ネートなどは温度依存性が高く,わずかな温度変化に
対しても見掛け粘度の変化が大きいが,ポリエチレン
やポリアセタールは温度変化に鈍感である2〕。
流れ特性が温度変化に対して敏感な樹脂は射出成形
機においてシリンダ温度(場合により金型温度も)を
上げれぱ流動性が薯しくよくなる。しかし,温度変化
プラスチックス
105
m^
呂 一3
弐 べ
直 +
{ 嵩
{ 斗
4 d
3
・ク‘リオー帆川注〕
.望 2
γ田10㌔■3
搬串㍗㍊㌧セタール ・。・
艶 1簑11二三よ仁イ“ン〕
lO’
器器1簑11:㌶享二;多仁=l p^T
;:ll二:雛鰍;ll二 \
鋤㌧ 籔1奉器;;鰍
ヒ
幽103
蟄・1
ω 帖 就ロー1l1l−l
本 畠
l/ご簿 隷鵬.テスタ,
轟 6
唄
4
茗
皇
10≡
lOl
346日io^ 2H 〃クりル齢脂およ
ぴナイロン 盟0・C
4㏄
iO ヨO 舳 畠O 冊o その他すぺて
200.C
圧 カ{庄呂”皿皿ヨ〕
温 度(℃〕
図6各種ポリマーの溶融粘度(温度依存性)
寵1,l1O
健
500
各種プラスチックの見掛け粘度と加圧力との関係
POB(360’C〕
PAI
禽へ㌔
(350℃〕
凄 淋
1O’
竜㌔
う
戸
合
ム “
ア
合
σ
変僅PPE1変性ポリ7ニニレンエーテル
PPS :ボリ7エニレンサル7r・イド
PSU lボI」サルホン
PES 1ポ■」工一テルサルホン
PEEK lポー』工一テルエーテルケトン
PSu{P−1700)
(375℃〕
PEEK{37ぴC)
ハ
唱
銚
図7
10;
50,OOO
’冒5,000
俺 セルロースアセテー
ずれ応力一∼皿;ん皿,〕
1O0 200, 300
10.OOO
■ 鮒C
ト1脚.C
PA1 :ポリア…ドイ…ド
100,OO0
ノズル1皿皿≠x
lom皿長さ
ア
亭r一 加無温度1ポー』力一ポネート
産
PAR(鮒C)PC{20ぴ〕
〕ユOヨ
弐
戸
台
昏
PEI{360C) 一一・
挫
TPX〔270’C〕 一一
(PA−6,217℃〕 、、
PA−12.TR−55.
2畠o℃)
GL{220’C〕 、 PPS,R−4
堤
102
PES(200P〕(340.C〕
、、ミ\ 129rC〕
FEP(ネ7ロン〕,{340℃)
、、、、、 POM(MgO)
、、 、、〔190.C〕
PETP{30%OF〕,
/\l
(260℃)
120 160 200 別O 珊O ;20
温 度{℃〕
変性PPE(2呂2℃〕
101
図8ボリアミド(ナイロン)とポリエチ
レンとの温度による溶融粘度の変
化瑚
GL樹脂1オレフィン1ピニルアルコール共重合体
PBTP〔30%GF〕
(260℃〕
TPX :メチルペンテン樹脂
1O lO≡ 1O茗 10’
せん断遼度(s一〕
図9
各種ポリマーの溶融粘度(せん断速度依存性)
に鈍感な樹脂はシリンダ温度をむやみに上げても流動
ているため,あまり樹脂温度を高めることができない。
性はあまりよくならず,樹脂の熱分解の危険性を伴う
またナイロンは図5では低いようにみえるが,実際
だけである。図6には,スーパーエンプラを中心とし
には図8のようにある温度までは粘度はあまり低下し
た材料の粘度一温度特性を参考に示す4〕。
ないが,ある点に達すると急激に粘度が低下するので,
図7は図5と向じ方法で測定した見かけ粘度一圧カ
射出成形においてはシリンダ温度調節を微妙にかつ精
関係曲線である。この図より,セルロースアセテート,
度高く行うとともに射出速度を高める必要がある。
ポリスチレンは圧力依存性がとくに高いが,メタクリ
また,前述したように,各種ポリマーは同じ温度で
ル樹脂やポリアセタールは圧力依存性が低い。圧力依
もせん断速度が異なると溶融粘度が変化する。図9に
存性の高い樹脂は,射出成形においては射出圧力を少
各種ポリマーの溶融粘度のせん断速度依存性を示
し高めれば見かけの粘度は低下するが,圧力依存性の
す4〕。
低い樹脂は相当高い射出圧力が必要となる。セルロー
3ヰ2.熱硬化性樹脂の流れ特性
スアセテート,ボリスチレンの見掛けの粘度は温度依
熱硬化性樹脂は加熱によっていったん溶融して流動
存性,圧力依存性もともに高いから成形条件の調整が
性を示すが,さらに加熱をつづけると,これと並行的
容易な材料といえる。図5には示していないが硬質ポ
に,加熱に伴う化学反応により樹脂の分子量が増大す
リ塩化ビニルは圧力依存性が特に低く,高い射出圧力
るとともに分子構造の網状化(架橋ともよぱれる)が
を要するうえ,温度依存性もどちらかといえば低く,
すすみ,逆に次第に流動性を失い,最後には硬化して
まったく流動しなくなる(図10)。このときの加熱温度
また成形に適当な温度と材料の熱分解温度とが接近し
VoI.52,No,9
99
プランジ・ヤ
加1男
加熱筒
田国
堤
8
9
9
誼
握
○片電熱線
8
8
o
oO
8o
時 閻
時 問(皿i皿〕
図10一定の温度に保った場合のフェ
図11熱硬化性樹脂の種々の加熱温度における
ノール樹脂の粘度の時間的な変化
流動性と経過時間との関係
表3プラスチックの流れ特性の測定方法
(金型)
l1蝋
“
プラスチック
材料(試料〕
ノズル
(オリ7イス〕
押し出された〃材料
図12押出式流れ試験方法の原理
適用範囲
形式
測定方法
該当する規格
(JIS)
熱可 熱硬
塑性 化性
樹脂 樹脂
メルトフロー
(押出形プラストメ
細孔押出式流れ
試験
K7210一ユ976
一タ)によるもの
高化式フローテス K7210−1976
(参考試験〕
タによるもの
ロッシーピークス K6791一ユ976
流れ試験機による (簑燃さ)
○
■
○
○
出式流れ試験方法によるものであるが,この他に,ス
パイラルフロー試験など,実際の成形機を使用する実
用的な試験方法も補足的に使用される。またこのほか,
ブラベンダプラストグラフ(Brabenderp1astograph)
などは材料の流動性の粘弾性的な解析にも使用されて
いる2〕。
O
■
押出式流れ試験金
K6911−1979
型によるもの
■
○
円板式流れ試験金
K69ユ1−1979
型によるもの
■
○
もの
円板式流れ試験
テスタとして便用されているものは,原理的には,押
図12は,押出式流れ試験の原理を示すものであり,
周囲から加熱された円筒型金型に一定量の試料を入
れ,これにプランジャによって圧力を加えつつ溶融し
た材料を金型底部の細孔(ノズルまたはオリフィスと
呼ぶ)より押出し,その押出量(流出量)を測定する。
ブラベンダプラスト
回転機構を使う
試験機による方法 ブラフによるもの
一
○
O
簡単のため押出量(g)はプランジャの降下量(mm)を
スパイラルフロー
金型によるもの
一
○
○
問(min),流出量と加熱温度(。C)あるいは加圧力(kgf/
カップフローテスト
一
■
○
Cm2)などとの関係曲線を描いて,その材料の流れ特性
成形試験による
方法
もって代用するが,目的に応じて’流出量(g)と流出時
の判定資料とする。
が高いほど溶融するのは速いが,同時に網状化の進行
3−4−2.メルトフローレート試験機による方法
による硬化(㎝re)も速くなり,成形操作上必要な流
この試験方法は,押出式流れ試験方法の一つであり,
動性(粘度)を保っている時間も短くなる。図11はこ
JIS K7210一・・…〕(熱可塑性プラスチックの流れ試験
の関係を示すものであって,後述の押出式流れ試験装
方法)に規定されているもので,熱可塑性プラスチッ
置によって一定条件のもとにノズルから押出された材
クの流動性試験として広く一般に使用されている。
料の分量(9)と,各温度で加熱を継続した時間(min)
この試験にはメルトインデクサ(MeltIndexerまた
との関係曲線である。この図にみるように,10ぴCの加
はMe1tF1owRator)と呼ぱれている押出式流れ試験
熱温度においては,流出量(9)は少なくない(流動性
装置(押出式プラストメータ)が使周される。
が悪レ))が,150℃においては流出量が時問とともに急
図13にその装置の構造と要部(図右側)を示す。
激に増加し,流れはよくなるが,一方,流出の継続時
試験方法は,周囲にヒータを二重に装備した加熱筒
間はきわめて短くなり,短時間内に流動が停止してし
に一定量の試料を挿入し,樹脂の種類に応じてそれぞ
まう2〕。
れ定められている試験条件(表4)に基づき,これを加
3−4.流れ特性の主な測定法
圧加熱して底部の細孔(オリフィス)から押し出し,
3−4−1.流れ試験方法の種類
プラスチックの流れ特性の測定には,表3に示すよ
ユO分問あたりの樹脂の押出量を求めて・これをメルト
うに種々の方法が行われている。現在一般に,フロー
可塑性プラスチックの流動性のものさしとするもので
100
フローレート(Melt F1owRate,MFR)と定義して熱
プラスチックス
表4メルトフローレートの試験条件(JISK
平面図
7210一]帥。)
試料挿入孔
φ9,550土O.O07
条件
絢14.畠
ダィ部分の拡犬図
温度調節およぴ
温度測定孔φ2.O−7.O
碑.叩
土o o呈5
一ヨ.伽
土o血岬
ビストン
ヘツド
豊瀞
分 中
試料
1
2
3
4
5
6
7
8
9
シリンダ
ケース…
1哨
^
φg.50±〇一0茗
^
(単位1mm)
ヒータサポータ
ダィ保持板
190
5−00 (49.03〕
190
10.00 (98.07)
190
21.60 (2ユユ.82)
200
5.00 (49.03)
10.00 (98.07〕
10.00 (98.07)
12
13
230
1,200 (11.77)
14
230
2.16 (21.18)
3.80 (37.26〕
5.00 (49.03)
16
230
230
17
230
18
275
19
275
20
280
300
ユ5
e
㌧
0,325 (3.ユO)
2−16 (21.ユ8)
220
230
φ2.O05土O.O05
剣
190
ユ90
210
ユ1
圭
0,325 (3.19)
2.16 (21.18)
150
10.00 (98.07)
ダイ
下部標線{環状基準線〕
試験荷重(㎏f)(N)
125
200
10
上部標馴環状基準線)
試験温度(。C)
21
試料 ヒータサポータ
O,325 (3.19)
10.OO (98.07)
O.325 (3.19)
2.16 (21.18)
2.16 (21.ユ8〕
1,20 (11.77)
断熱 ダイ
図13
メルトフローレート試験装置(JIS K7210一蝸〕
表5一般に用いられている樹脂ごとの試験条件(JIS K
州
温度計
7210−w苫)
樹脂
ポリエチレン
エチレンー酢酸ビニル樹脂
ポリプロピレン
ポリアセタール
条件
○写 o o o
,
1,3,4,5,5,7
ユ,2,3,4
oo
’元皿屈モ仙且岬1
4,6,14,ユ6,17
セールロースアセテート
4
4
ポリスチレン
6,8,13,15
ABS樹脂
8,1ユ,15
アクリル樹脂
ポリアミド
ポリカーボネート
9,10,13,14,ユ5,17
4,ユ2,14,18,19
20,21
おもリ
断熱盤
受台
(臣j流れ試験器 ω試験装置の要部
図14流れ試験機(JIS K72ユ0−1明・(参考試験))
ある。表5は,いろいろなプラスチックに対する試験
この名がある。図14にその構造を示す。
条件の選択方法を示すもので,たとえば,ポリアセタ
この試験方法は,わが国では研究用,品質管理用,
ールについては条件4に指定されており,表4にした
成形試験用などに熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂の
がって,試験温度190℃,試験荷重21.18N(2.16kgf)
両分野で広く使用されている。前述のMFR法に比べ
の試験条件が設定されることとなる。
て本質的に高荷重下の試験が可能で,通常の加工の場
なお,この試験方法には,A法とB法とがあり,A
法はMFR:0.1∼259/10minの材料に適用される手
動切取り方法,B法はMFR:o.50∼3009/10minの
合に近いせん断条件(sharerate)での流れ特性を知る
材料に適用される自動時間測定法である2〕。両方法の
可塑性プラスチックの流れ試験方法)の末尾に単に参
詳細について原典5〕を参照願いたい。
考試験として記載されている・つぎにこの試験の概要
ことができる。しかし,標準的な試験手順が確立され
ていないため,現在では,前記のJIS K7210一。。。(熱
3−4−3.高化式フローテスタによる方法
について説明する。
高化式フローテスタは,高分子化学協会(現高分子
表6に定められた量の試料をテスタの加熱シリンダ
に入れてピストンを載せ,シリンダ内で試料を5分間
学会)の委嘱により㈱島津製作所が製品化したため,
Vol,52,No.9
ユ01
押し型
11
一」_50二=ll.
粋型
8 =一{押し型の外径〕
1ポ■一’一一
常温比重 充填量(g)
;1 6
11 .き
一■1、一...べ
1.O未満 1.2
1.0以上 1,5
1一 (底型の内径〕
表6充填量茗〕
2.5
寧
黒1←ll・蹄
50+語・榊
時 間(冒)
(粋型の内径)
(a〕熱可塑性樹脂の等速昇温法に (出)熱硬化性樹脂成形材料の定温
1dO
よる流れ曲線図 定庄法による流れ曲線図
樹脂の
図15高化式フローテスタによる流れ曲線図引
枠型 流出□
表7押出式流れ試験の挿入質量,金型温度および圧力(JISK
691ユーw。〕
条 件 装入質量 金型温度
種類
(9)
(℃)
フェノール樹脂
40
160土3
ユリア樹脂
35
140±3
メラミン樹脂
35
150±3
40
ジアリルフタレート樹脂
圧カ串
MPa(㎏f/cmヨ〕
160±3.
A19.8(100〕
押し型 。」
図16 熱硬化樹脂
成形材料の押
出式流れ試験
用金型(JIS
K69ユユー1雪舶)
’■1■一・■
一 I
温度計
挿入孔
(単イ立:mm)
B:29,4(300)
19.6(200)
!9.6(200)
化流動温度を知ることができ乱また,図15(b)は熱
A19.8(100)
硬化性樹脂を一定温度,圧力のもとに押出したときの
B:19.6(200)
押出量一加熱時問の関係曲線の例で,これにより樹脂
・A:流れのよいもの B:流れの小さいもの
流れのよいもの 流れの小さいもの
の流動性や硬化の遅速がわかる2〕。
4−4.押出式流れ金型による方法
。r
ノ
レ
唱
宙
垢
魂
掴
蝿
里
据
成形材料の
可塑化 硬化
温度上昇
s
l1成形可能な糊
k
この試験方法はJIS K69ユ1−1。。。6〕(熱硬化性プラス
斗
、
レ’’’’’’性をもつ籟囲
加軌加圧時間〔皿io〕
加熱加圧時間{皿i■〕
ω流出丑一加撫時間
帖〕流曲遮度一加軌時間
≡
竜
挫
掴
里
提
半
蛍
:加蝋加圧のは1二ま1〕
:ノズ」』よη‡オ料オ哨甲出されはヒめる。
チックー般試験方法)に規定されており,熱硬化性樹
脂成形材料の流れ特性試験に広く使用されている。
図16に示すような構造の金型に所定量の試料を表
7に示す要領で入れ,圧縮成形機熱板の問に挿入して,
所定の条件で加熱加圧し・金属側壁の細孔(ノズル)
から材料を押し出す。押し出された材料の質量(g)を
:ノズルから出る材科の分世が最犬となる.卓{もっとも流れのよい点〕
:材料の流れの止まった点{硬化が進んだ点〕
もって流れ特性を表すが,材料の流出が続いている時
図17熱硬化性樹脂材料の押出式流れ試験方法による流れ曲線
間(流出時間)を併せて測定して,硬化の速さを判定
予熱した後,試験荷重を加え,ピストンの降下量を各
孔から材料を押出すのでモノホール(mono−hole)テ
時間ごとに記録して流動曲線(降下量一時問曲線)を
ストの別名がある。図17(a)は,この方法による押出
えがく。試験荷重によって試料の流れが始まってから,
量(流出量,g)一加熱加圧時問(min)関係曲線であり,
する参考資料とする。なおこの試験方法では単一の細
ピストンが3mmから7mmまで降下するまでの時問
図17(b)は(a)のデータより導いた流出速さ(g/
の平均値ま(s)を測定し,流れ量ρ=o.4/まで表す。
min)一加熱加圧時間(min)関係曲線である2〕。
なお・この試験機のシリンダ底部に設置する押出ダ
3−4−5.スパイラルフロー金型による方法
イの穴径は1mmで,穴長は10mmおよび2mmの2
スパイラルフロー試験(spira1How teSt)は,うず
種類のものが便用される。荷重条件はピストンに加え
巻き(スパイラル)状の溝をもった金型を実際の成形
る圧力0.98∼49.03MPa(10∼500kgf/cm2),シリン
機に取り付けて行う流れ試験方法である。
ダ温度80∼320℃の範囲を目的に応じて適当に選択す
スパイラルフロー試験用金型は,その中心部が材料
る。
の注入口(スプルー)部になっており,これを起点と
図15(a)は熱可塑性樹脂を等速昇温法(℃/s)で加
した半円形または台形断面のうず巻き曲線状の溝が設
熱したときの押出量(=プランジャ降下量,mm)と加
けられている(図18)。うず巻き曲線には,普通アルキ
熱時問の関係曲線の一例であり,これにより材料の軟
メデスのスパイラルが使用される。この金型を射出成
102
プラスチックス
形機またはトランスファ成形機に取
4.5φ
十
り付けて,一定温度,圧力条件のも
丁
とに材料を溝内に射出(注入)させ,
8φ 岬
蚊取線香のような形状の成形品をつ
ユ,OOO
1O
3
冒
くり,そのうず巻きの長さ,すなわ
哨
ち樹脂の流れた距離をもって樹脂の
流動性を判定す乱図19はその試験
結果の一例である。当然のことなが
■ \
㌻
/
ミ
/
1
が高いほど流動距離が長くなるの
、
て樹脂の流動性を比較する。この方
、ミ1・・
/ \
/ \
/
ら,樹脂温度,金型温度,射出圧力
で,これらの条件を一定にしておい
薬
スバイラル全長1,500
、
、
、
180 200 220 240 260 280
射出成形機のシリンダ温度(℃〕
法は熱可塑性樹脂並びに熱硬化性樹
脂の双方に応用することができ
断面は直径6,7および
8mmの半円 (単位:mm〕
る2〕。
3−4−6.その他の測定方法
図18スパイラルフロー試験用
金型のキャビティ
射出圧力:1,32g㎏f/o㎜呈,金型温度:4ぴC,
スパイラル断面。6mm半円形
図19各種プラスチック材料のスパイラルフロー
流動性特性副
JIS K7ユ99−1。。、7〕(熱可塑性プラ
スチックのキャピラリレオメータによる流れ特性試験
方法)には,キャピラリレオメータを用いて熱可塑性
一
わじ
プラスチックの溶融粘度の温度依存性,せん断速度依
ロードセル
存性,ダイスウェルなどの流れ特性を求める方法が規
ビスレ
一
定されている。この規格では図20に示すような概念図
パレル
をもった試験装置を用いる。測定する際の樹脂の種類
一
“
ヒータ
別の標準的な試験温度も規定されている。
感熱材
詳細については原典を参照願いたい。
3
る粘度試験方法)には,回転粘度計を用いて液状,溶
D
○リング
■
液状,乳濁状,懸濁状樹脂の粘度を測定することが規
試料1溶融ポー」マー〕
2
キャビラリ
定されている。詳細については原典を参照願いたい。
ねヒ込みナ・バ 、
3−5. まとめ
る成形工程を支配するもので非常に重要な性質であ
る。ここでは,各種材料の各種プラスチックの代表的
なものに関する流動性について触れたが,実際に各種
グレードによりかなり異なる。したがって,実際に各
流入角付=また一±フラ’ト〕
流入角付ほた1±フラ・バ1
一
また,JIS K7117一、蜥8〕(液状樹脂の回転粘度計によ
成形性は,プラスチックを実際に賦型する過程であ
断無材
d
図20 キャピ
ラリレオ
、
]、
レーザ光線
メータの
タ.イスウェ」}黄出…圭田
ダイスウェル横出駐竈
保温チャンハ
俣温チャンパ
概念図
(一例)
lJISK刊雪ヨー岬I〕
種グレテドを成形する際はグレードごとに各材料メー
3〕桜内雄二郎「新版プラスチック材料読本」p.80,工業調査会
カーが提示するデータにしたがって行う必要がある。
1999年4月ユ日新版4刷発行
<参考文献〉
ラスチックス」編集部共著,工業調査会1999年12月1日初
版第ユ刷発行
4)「プラろチック・データブック」p.43,旭化成アミダス㈱,「プ
1〕「プラスチック成形加エデータブック」p.55(社)日本塑性加
5)JIS K7210一岨舶(熱可塑性プラスチックの流れ試験方法)
工学会編,日刊工業新聞社昭和63年3月25日発行
6)JIS K6911−1・舶(熱硬化性プラスチックー般試験方法)
2)廣恵章利,本吉正信「成形加工技術者のためプラスチック物
7〕JIS K7ユ99一]明1(熱可塑性プラスチックのキャピタリレオメ
性入門」p.263,日刊工業新聞杜1998年1月31日第3版1刷
ータによる流れ特性試験方法)
発行
8)JIS K7117一・珊・(液状樹脂の回転粘度計による粘度試験方法〕
Vo1,52,No.9
103