講義資料(スライド)

1
岡山大学「ものづくり講座」
品質管理(1)
2015年5月27日
トヨタ自動車(株)古谷健夫
<目 次>
1.「品質」とは?
2.要因と評価尺度
3.「品質管理」とは?
4.「異常」への気づき
5.「問題解決」概論
6.まとめ
1.品質とは?
「品質」とは?
2.4 品質/質
製品・サービス,プロセス,システム,経営,
組織,風土など,関心の対象となるものが明示
された,暗黙の,又は潜在しているニーズを満
たす程度.
注記1 ニーズには,顧客と社会の両方のニーズ
が含まれる.(後略)
日本品質管理学会規格 「品質管理用語 JSQC-Std 00-001 2011 」 より
1.品質とは?
「品質」とは?
お客様の期待に応え、
誰にも満足感を与えるもの
「品質」とは「もののよしあし・ねうち」
「もののよしあし・ねうち」はお客様が決める
「品質」 とは
“ばらつく”もの、 “変化する”もの
2.要因と評価尺度
「要因」による影響
・今まで「正常」に機能していたものが・・・
特性値の分布
(提供側)
NG
4Mに「ばらつき」
「変化」が発生
お客様の要求・期待の範囲(受取側)
[4M]
Man(Member)
Machine
Method
Material
2.要因と評価尺度
「評価尺度」による影響
・今度はお客様の要求・期待が変化、 これも「ばらつき」!
特性値の分布
(提供側)
NG
お客様の要求・期待
「ばらつき」「変化」
が発生
お客様の要求・期待の範囲(受取側)
3.品質管理とは?
「品質管理」とは?
「要因」に“ばらつき”“変化”が発生
「評価尺度」にも“ばらつき”“変化”が発生
お客様のご満足が得られなくなる
(Customer Satisfaction)
「品質管理とは “ばらつき”“変化”との
終わりのない戦い!」
4.「異常」への気づき
「異常」と「不適合(不良)」の違いは?
異常あり
下側規格
不
適
合
あ
り
上側規格
異常なし
異常
下側規格
上側規格
上側管理限界
上側管理限界
不適合
不適合
下側管理限界
下側管理限界
下側規格
不
適
合
な
し
上側規格
異常
下側規格
上側管理限界
下側管理限界
上側規格
上側管理限界
下側管理限界
日本品質管理学会規格 「日常管理の指針 JSQC-Std 32-001 2013 」 より
4.「異常」への気づき
ハインリッヒの法則
アクシデント 1件
(Accident)
インシデント29件
(Incident)
ヒヤリハット300件
この中から重大事故の
兆候をいち早く感知
「異常」の共有:コミュニケーションがすべての基本
4.「異常」への気づき
正直にものが言える職場の雰囲気
異常が発見されたら放っておかず、
素早い対応・迅速な解決を!
コミュニケーションが取れるオープンな
職場風土づくりを!!
5.「問題解決」概論
問題とは?
問題とは、「目指す姿(お客様満足の状態)」
と
「現状の姿(いつもの状態)」
とのギャップである。
顧客要求:60dB
目指す姿
規格値:65dB
ギャップ
現状の姿
問題
25dB
騒音値:85dB
うる
さい
5.「問題解決」概論
問題解決とは?
「目指す姿」と「現状の姿」とのギャップを埋めること
(いずれも、時々刻々“ばらつき・変化”している)
基本となる手順に沿って、
効果的・効率的に問題を解決する
PDCAのサイクルを回すこと
問題解決はすべての基本
(仕事の基本は、PDCAを回すこと)
5.「問題解決」概論
仕事の基本
Plan(計画)
Do(実施)
Check(評価)
Act(処置)
PDCAのサイクル
Act
(処置)
Plan
(計画)
仕事の計画(Plan)を立て、
それに従って実施(Do)し、
その結果を評価(Check)し、
Check
(評価)
Do
(実施)
必要に応じて修正する処置(Act)を、
とるサイクル
5.「問題解決」概論
問題解決ステップ(QCストーリー)
P
①
問
題 →
の
明
確
化
②
現
状 →
把
握
③
目
標 →
設
定
④
要
因 →
解
析
⑤
対
策 →
立
案
現地現物で事実・データに基づいて
問題を絞り込み共有
A(S)
D
C
⑥
実
行 →
⑧
⑦
標
効
果 → 管準
理化
確
のと
認
定
着
問題の真因を
“5なぜ”で徹底追究
QC手法の活用
5.「問題解決」概論
計画段階(P)が大切
工数
不十分な
計画
工数大
P
十分な
計画
D
C
A
工数小
P(計画)をしっかり立てD(実施)をすれば、
C(評価)・A(処置)時間が短くなる。
効率的な業務遂行ができる
5.「問題解決」概論
「QC7つ道具」の活用
・品質管理(QC)とは、
「ばらつき」「変化」との戦い
⇒ 最も強力な武器(道具)が
QC7つ道具
・データのまとめ方に関する
ツールの集合
・職場の現状の姿、目指す姿、
「ばらつき」「変化」を誰でも
分かるように表すことができる道具
⇒ 「異常」の共有
[QC7つ道具]
チェックシート
グラフ/管理図
パレート図
特性要因図
ヒストグラム
散布図
層別
「私のこれまでの経験では、企業内の問題の九十五パーセントまでは、
この七つ道具の活用で解決できる。」
(石川馨著「日本的品質管理(1981日科技連出版社)」より)
5.「問題解決」概論
チェックシートの例
チェックシート
革新ライン不良チェックシート
0月0日
生産個数
2070
X直
△△工程 記録:城島太郎
不良項目 不良個数チェック 不良個数
A不良
B不良
C不良
D不良
E不良
F不良
G不良
計
9
3
2
2
1
0
0
17
チェックシートは、データを採取する時に
使います。
経験や勘に頼らず、事実はなにか3現主義(現
場・現物・現実)を重視し、管理・改善を進め
ます。
5.「問題解決」概論
グラフ(折れ線グラフ)の例
グラフ(折れ線グラフ)
200X年Y月度
革新ライン不良率管理表
1.5
不良率
(%)1.0
目標線
0.5
日付
0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 # # # # # # # # #
折れ線グラフは、時間的な数量の変化(傾向)
をつかむ時に使います。
問題点を共有化する時に使うと見える化により
データの特徴や意味が誰でも一目でわかるよう
になります。
5.「問題解決」概論
管理図の例
-
X ーR管理図
(Hv)
350
330
310
-
X 290
270
硬 250
度 230
210
190
170
40
150
30
R 20
10
0
異常
UCL=**
-
CL X
LCL=***
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 UCL=***
11 12
CL=R
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
5.「問題解決」概論
パレート図の例
パレート図は、状況と
問題点が一目でわかり、
一番の問題は何かとい
う重点指向する時に使
います。
5.「問題解決」概論
特性要因図
特性要因図
機械(Machine)
材料(Material)
要因
人(Member)
方法(Method)
特性要因図は、特性(結果)とその要因
(原因)の関係を4Mで分類し、問題を
引き起こしている原因を追求する時に使
います。
特
性
(
結
果
)
5.「問題解決」概論
特性要因図の例
(Machine)
(Member)
機械
人
金型温度が高い
作業の習熟
度が低い
号機で不良数がばらつく
型が
冷えない
適正値が
解らない
人によって
不良数が変わる
吹き付け時間が短い
ワークから熱
が伝わる
潤滑液量が
少ない
金型
エアブロー
作業方法が違う
吹き付け位置が
ずれている
圧力が低い
材料成分が
変化した
標準作業
炭素量が
増えた
製品が硬い
加熱温度が
CO2濃度が
変化した
変化した 熱処理条件が
変化した
材料
(Material)
手順が変わったが
メンテしていない
作業が要領書通り
出来ない
標準作業と違う
やり方をしている
方法
(Method)
表
面
欠
陥
不
良
が
増
え
た
5.「問題解決」概論
ヒストグラムの例
ヒストグラム
下限
規格
上限
規格
平均値
10
度
数
09/2/1~28
n=**
作成者:標準太郎
-
X =288
s=***:*
5
0
240
280
320 (Hv)
硬さのヒストグラム
ヒストグラムは、分布の姿・中心の傾向・ばらつきの
大きさ・規格との対比を把握するときに使います。
5.「問題解決」概論
ヒストグラムの見方と対応処置
山の形
富士山型
山
の
離れ小島
形
ふた山型
規格幅
見方
対応処置
ほぼ左右対称。
度数が中心付近
で最も多く、中
心から離れるに
したがい少なく
なっていく。
工程が安定している場合は、
通常はこのような形で現れる。
規格との対比で問題なければ、
この状態を維持する。
大きな山から外
れて小島が出来
ている。
(左側にできる
事も有る)
異なるデータが混じっていた
り、ヒストグラム作成段階で
区間の数や、範囲の取り方に
問題が有ると考えられる。
原因を調べ、再度作成し直す。
分布が異なる2種類のデータ
分布の中心付近
が含まれている。
に度数が少なく、
層別がされていない場合に現
山が2つ並んで
れる。
いる。
しっかりと層別し、層別した
データで作成し直す。
5.「問題解決」概論
散布図の例
もありました。
散布図
必要な管理幅
(℃)
25
金
型
温
度
負の相関
高
い
20
良品の領域
15
低
い
10
30
60
少ない
90
1 20
多い 1 50(cc)
冷却液吐出良
散布図は、2つの項目の間に関係(相関)
があるかどうか把握する時に使います。
5.「問題解決」概論
散布図の状態と見方
散布図の
状態
Y
●
●
●
●
●
●●
●
●●
●●
●
X
Y
●
●●
●
●●
●
●
●●
●
●
散布図の
状態
見方
強い正の相関
Xが増えれば
Yも増える。
強い負の相関
Xが増えれば
Yは減る。
Y
● ●
●
● ●
● ● ●
●
● ●
●●
X
Y
● ●
● ● ●
●●
●
●
●
● ●
●
X
X
Y
●
●
● ●●
● ●
● ● ●●
●
X
無相関
XとYの間には
関係がない。
Y
●●
●
●
●
●
●
●●
●
●●
●
X
見方
弱い正の相関
Xが増えれば
Yも増える。
Xに対するYの
ばらつきが大きい。
弱い負の相関
Xが増えれば
Yは減る。
Xに対するYの
ばらつきが大きい。
直線的でない
関係がある。
層別が必要。
5.「問題解決」概論
真因(真の原因)の追究
「5なぜ」の例
問題
:
(大野耐一著「トヨタ生産方式」より)
機械が動かなくなった
なぜ1:
オーバーロードがかかって、ヒューズが切れたからだ
なぜ2:
軸受部の潤滑が十分でないからだ
なぜ3:
潤滑ポンプが十分くみあげていないからだ
なぜ4:
ポンプの軸が磨耗してガタガタになっているからだ
なぜ5:
ストレーナー(濾過器)が付いていないので、
切粉が入ったからだ
対策
ストレーナーを取り付ける ⇒
:
これで切粉による再発は
防げた
6.まとめ
まとめ
1.品質とは「もののよしあし・ねうち」、お客様が決める
2.品質とは「ばらつく」もの、「変化」するもの
3.品質管理とは、「要因」「評価尺度」に生じる
「ばらつき」「変化」との終わりのない戦い!
4.「異常」への気づきが、問題の発見につながる
5.「問題解決」がすべての基本、
・PDCAサイクルを回すことは仕事そのもの
・問題解決のための道具がQC手法
・特にQC7つ道具は、「ばらつき」「変化」を誰でも分かるように
表すことができる、極めて重要な道具