2015/4/6 はじめになぜ、今、応用行動分析学か・・・応用行動分析学に基づく実践強度行動障害への支援行動を読み解くために自閉症だからしょうがない・・・問題行動にも、理由がある  自閉症を治す方法は依然として存在していない・・・  休憩時間になった途端に、激しいロッキング(体を前後にゆする)をする自閉症のA さん。自閉症は治らないのであれば、Aさんのロッキングもなくならない? Aさんのロッキング行動について考える  ロッキングは、スペースのあるところを見つけてしています。人が集まっている中ではしません。  しばらくして、人の移動が収まったところで、手を洗いに行くことを促すと、水道へすぐに向かいます。  手を洗い終わると、まっすぐに、昼食を食べにテーブルへ向かい、そして座ります。 Discussion! 自閉症だから、ロッキングをしているのでしょうか? 1 2015/4/6 応用行動分析学と介入行動分析学で扱う「行動」とは  行動とは・・ Skinner(1938)は「行動とは生体の持つ機能の中で外界に働きかけ、外界と交渉をもつもの」と定義応用行動分析学にもとづく介入は、頻繁に使用される治療法の一つとされている (Green,Pituch,Itchon,Choi,O’Reilly,&Sigafoos,2006; Stahmer,Collings,&Palinkas,2005) 少し変わった定義に「死人には出来ない活動」・・・さすがに死人は・・・・なのでお地蔵さんにします。お地蔵さんにできることは、行動とは言わない。主な研究領域身辺自立・コミュニケーション指導・アカデミックスキル指導・余暇指導・社会的スキル訓練・問題行動の改善・親訓練etc 7 8 「行動」として明確にできないもの・しにくいもの「行動」として定義できますか？以下の事は「行動」として定義できるか答えよ  ケーキを食べない  蜂に刺される  今日の昼食のことを考える  車にひかれる  鉛筆を持つ  二階から落ちる  教室内を歩く  会議中、発言しない  倒れている人を見るが、何もしない１）「～される」と言う「受け身」のもの例:「車にひかれる」「蜂に刺される」２）「～ない」「～しない」と言う「否定」や「非行動」と呼ばれるもの例:「ケーキを食べない」「会議中発言しない 9 行動を分析する人の行動の原理を知る 10 応用行動分析の基本的考え方とは  ３項随伴性で行動が説明される。直前の事象テレビがついていない行動スイッチを押す直後の事象テレビがつくなぜ、リモコンのボタンを押すのですか? 12 2 2015/4/6 人の「行動の原理」その1 もし「本人にとって望ましい事象」が起こらなければ・・・  「行動」が生起した後に、「本人にとって望ましい事象」が起こると、その行動は増加、維持していきます。  どのような行動も、実は、行動の後に、「本人にとって、望ましい事象」が起こっています。  「望ましい事象」には、「モノや活動、好ましい感覚、人の関わりが得られれる」、あるいは「嫌なモノや活動、嫌な感覚、人が、自分から遠ざけられる」のいずれかである。「本人にとって望ましい事象」によって増えていた、もしくは維持していた行動も、その「本人にとって望ましい事象」が除去されれば、当該の行動は減少していきます。この様な手続きを「消去手続き」と呼びます。ただし、「消去手続き」には注意が必要です・・・なぜなら 14 ボタンを押したのに、自動販売機からジュースが出てこなかったら・・・ボタンを押す行動は? 消去手続き(extinction) のリスク  消去抵抗  消去バースト・攻撃性の生起  自発的回復  限定的な効果  模倣の出現こうした行動が生起している時に、本人にとって望ましい事象」を提示すると・・・直前ジュースが出てこない行動自動販売機を強く叩く直後ジュースが出てくる 16 事例(内容は一部変更していますが、実際の事例です)  お気に入りの三人掛け用ソファーに腰を掛けている、Aさん。他の利用者さんが、そのソファーへ腰かけようと接近します。  すると、Aさんは、その利用者さんを大声で威嚇します。  他の利用者さんは、諦めて立ち去って行きます。直前ソファーへ腰かけているところに他の利用者が接近する行動直後大声で威嚇する他の利用者さんは立ち去る人の「行動の原理」その2  生起している行動は、その前の事象により「誘発」され、そしてその後の事象により「強化」されています。  対応のツボは、行動それ自体をなんとか変えようとするのではなく、「前・後の事象を変更する」ところにある。前・後の事象が変わると、行動は自ずと変化します。 3 2015/4/6 対応のポイントとして  強度な問題行動の場合、「行動の前の事象」に手を加え、行動が誘発されないようにコントロールすることが優先されます。  予め、問題行動が起こりにくくなるような環境を、日頃から設定する(構造化など) ことも、一つである。  また完全に行動が消失するまでには、時間がかかる。起こってしまった時の対応なども、事前に決めておくとよい。実際に分析するには・・・演習「事例を通じて応用行動分析学の手法を学ぶ」行動観察シートに整理をしてみよう Practice ! A太さんとB子さんは、相性が悪いのでしょうか? なぜかA太さんは、B子さんが自分の前を通ると、必ずと言っていいほどB子さんの背中を強く叩きます。B子さんは、叩かれると、いつもその場で大きな声を出し泣きだすので、大抵は、職員が駆けつけ B子さんを別室へと連れ出します。今日は、9時10分と作業開始間もなくに起こりました。なお、私の知る限り、 A太さんは他の利用者さんにはこれまでに、一度もこのようなことをすることは、ありませんでした。作業が終わり、片づけの時間になるとなぜか、大きな声をあげます。この大きな声を出しても、他の利用者さんへ対応しなければならないことも多く、なかなか対応できません。しばらく放っておくと、段々声が大きくなります。そして、自分の頭を叩き出します。大抵は頭を叩く自傷には、すぐに対応するようにしています。ところで、A太さんは、職員のP子さんが褒めると、大喜びします。 A太さんは、P子さんに褒められた行動は、何度も繰り返す傾向があるようです。さて、あなたはA太さんの行動を代えたいと考えました。どうしますか? 12 5 A太さんアリカワ http://arichannel.jp/research-program/からダウンロードできます行動の関係を把握する  行動観察シートを使って、行動の前と後の関係から、行動の法則を整理する。  ただし、連日連夜、朝から晩まで行動観察シートに記入し続けることは、負担が大きい。  予め、当該の行動が生起しやすい時間帯や活動を把握し、そのタイミングで集中的に記録すると言う方法がある。それでは、当該の行動が生起しやすい時間帯や活動をどのように把握すればよいか。それには記録による実態把握が必要です。スキャッタープロットによる実態把握  「ある行動」が生起している実態を視覚的に把握するための記録法。  行動の生起しやすい時間帯を、分かりやすく把握できる。  日課表にトレースすることで、どのような活動時に、行動が生起しやすいかがわかる。 ①行動が生起した時間をチェックする ②「行動の強さ」を記録する。 ③「いくつかの行動」が連続的に生起するものは、合わせて記録する。 4 2015/4/6 日課と合わせてみてみると? ①自分の頭を叩く ②大声を出す怒鳴る行動への実践成果 ③Bさんの背中を叩く月曜日火曜日水曜日木曜日金曜日 ( 9:00～11:00 作業作業外出作業作業 ) 「 Base Line 怒 2 1.75 1.75 鳴る」1.5 回数の1 平均0.5 数回 11:00～11:30 片付け片付け外出片付け片付け 11:30～12:00 食事まで自由食事まで自由食事まで自由食事まで自由食事まで自由 12:00～13:00 食事食事食事食事食事気になる「行動」を整理する「行動観察シート」や、「スキャッタープロット」などをもとに、対応を検討しようと考える「行動」を整理します。 Intervention この間は繋がない 1.25 1.25 0.96 0.94 0.75 0.74 0.75 0.5 0.5 0.25 0.25 0 Fig.4 「怒鳴る」行動の変化データは4日間の平均をプロットしたもの戦略をたてる http://arichannel.jp/research-program/からダウンロードできますおわりに QOLを巡って有川研究室 E-Mail : [email protected] Twitter: https://twitter.com/aripiyon Facebook :https://www.facebook.com/arikawa.hiroyuki HP: http://aric han nel .jp/ 5