ひらがな一覧版ネームレターテストの作成/阿部宏徳 - 東京成徳大学

ひらがな一覧版ネームレターテストの作成
阿 部 宏 徳 *
The Creation of a Hiragana Table Name Letter Test
Hironori ABE
The Name Letter Test (NLT) is one of the representative measures for implicit self-esteem which utilizes the
preference for the letters of the alphabets which occur within the participant’s name (Name Letter Effect). Since
most Japanese people, however, encounter Hiragana more than the Roman alphabet in their daily lives, their
preference and/or feelings may be reflected more through Hiragana. Therefore, the Hiragana Table Name Letter
Test (HTNLT) was created.
Two research projects were administered to two groups of 205 and 50 university students respectively. The
students were administered the HTNLT, the conventional NLT, and surveyed about their preference for use of
their full name (which reflects both implicit and global self-esteem) and the (explicit) self-esteem questionnaire.
The results of the studies showed that the HTNLT score was clearly affected by the Name Letter Effect which
is also a condition for the NLT and that this phenomenon was more associated with the external criteria for
implicit and/or global self-esteem than for the NLT. Also, the test-retest reliability was at the same level (r =
.62) as for other representative implicit measures and the time required to complete the test was much shorter
than for the NLT (d = 1.83) among other results. These and other results suggest the usefulness of the HTNLT,
and the possibility that the independent measures of the HTNLT and the conventional NLT could be integrated,
and point to problems of the HTNLT which need to be solved.
*
Hironori Abe 臨床心理学科(Department of Clinical Psychology)
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東京成徳大学研究紀要 ―人文学部・応用心理学部― 第 19 号(2012)
問題と目的
れる。しかし、NLTとIATは潜在的測定法の
中では再検査相関がr = .6程度かそれ以上と比
自尊心あるいは自尊感情は人間の心理的
較的高いことが示されている(Bosson, Swan, &
健康において重要なものの一つとして重視
Pennebaker, 2000)。
され、長年にわたって多くの研究が積み重
NLTは一般に、アルファベット26文字が並
ねられている。その影響は学業成績、抑う
べられた紙面が対象者に提示され、対象者はそ
つ、対人関係への満足度、非行などと関係が
の好悪について尋ねられる。回答は対象者のイ
あるという(Baumeister, Campbell, Krueger,
ニシャルのアルファベットとそれ以外に分けら
&Vohs, 2003)。そして、その測定においては
れ、イニシャルの好悪評定値がそれ以外の評定
Rosenberg(1965)の質問紙法形式の尺度が最も
値よりも高いほど自己への好意や自尊心が高い
代表的なものとして用いられてきた。
と見なされる。このテストには自身の氏名に含
しかし、質問紙法は構造的に対象者の意図的
まれる文字はより好まれやすく、より選択され
な反応の歪曲に弱く、また対象者の意識的な側
やすいという「ネームレター効果」が利用され
面しか捉えられないという弱点を抱えており、
ている。
Rosenbergの尺度もその弱点からは逃れられな
このNLTは今後の自尊心研究にとって有望
い。
な方法の一つと思われるが、いくつかの改善の
それに対して、近年新しい自尊心の測定法と
余地は残されている。その一つとして使用され
して潜在的測定法と呼ばれる方法を用いた自
る言語の問題があげられる。NLTは英語圏で
尊心研究が増加している。潜在的測定法とは
開発されたものであり、その測定においてアル
“内省では同定することはできない、あるい
ファベットが用いられている。しかし、日本に
は正確には同定できない過去の経験の痕跡”
おいてはイニシャルよりもフリガナとしてひら
(Greenwald & Banaji, 1995)や態度を測定する
がなを記載することの方が多いのに加え、日本
ものと考えられており、測定概念の個人差を課
において初等教育を受けた場合、多くは最初に
題への反応速度などによって判断するなど、対
ひらがなを学ぶ。また、日常生活においてもア
象者に直接態度の強さなどを尋ねるのではな
ルファベットよりも日本語・ひらがなに触れる
い、間接的な方法によって調査が行われる。
機会の方が多いと思われる。よって、多くの日
ネームレターテスト(NLT; Nuttin, 1985)は、
本人にとってはアルファベットよりも人生にお
Implicit Association Test (IAT)による自
いて多く接するひらがなの方が自身の態度や感
尊心測定と共に、代表的な潜在的自尊心の測定
情が反映される可能性が考えられる。
法である。なお、潜在的自尊心とは“自己に
また、アルファベットを用いた場合、イニ
対する態度が自己と関連する、自己と関連し
シャルを文書などに書く経験や機会の少ない児
ない対象に対して及ぼす、内観によって特定
童などには施行できないことになる。ひらがな
できない(あるいは正確に特定されない)効
を用いたNLTがあればこのような問題は発生
果”(Greenwald & Banaji, 1995)と定義されて
せず、NLTを発達的・縦断的な研究にも利用
いる。潜在的測定法は多くの興味深い知見を
することができる。
提供している一方で、再検査信頼性が低いもの
以上の理由から、日本人を対象としたNLT
が多いことが問題点・課題の1つとして指摘さ
ではひらがなへの選好を調査するという手段が
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ひらがな一覧版ネームレターテストの作成
より望ましいように考えられる。しかし単純に
アルファベットをひらがなに変えるだけでは、
方法
質問対象がアルファベット26文字では済まなく
1.調査協力者
なり、より多い項目が必要となる。ひらがなの
関東・甲信越地方と四国地方にある大学の講
種類として「が」や「ぱ」のような濁点・半濁
義中の学生に対して調査目的を説明した後、調
点がついた文字を区別するならば、質問項目は
査への協力を依頼した。なお、本調査は潜在的
さらに増加する。ひらがなを用いることがより
測定法の調査であることから、調査目的を詳細
適切であろうとも、対象者の負担が2倍や3倍に
に伝えると意識的な選好が結果に混入してしま
なってしまうのでは意欲の低下や未回答の増加
う可能性が非常に高まるため、学生への調査目
を導く。よって、大きな変更ではあるが、ひら
的の説明は「文字への選好とパーソナリティの
がな一つ一つを評価するよりも、ひらがながす
関係を調査する」と大まかなものにとどめた。
べて記載された一覧から好きなものを選ぶとい
その結果、264名の大学生から協力が得られ
う形式がより望ましいと思われる。
た。
本調査の目的は、以上の考えから得られた
また、再検査信頼性について調査するため
ひらがな一覧型のNLT(以下、Hiragana Table
に、関東・甲信越地方の大学においては1週間
Name Letter TestからHTNLTと略記)の有効
後にHTNLTのみを再度施行した。
性について調査することである。
2.ひらがな一覧版ネームレターテスト
研究1
用紙の右から、あ行、か行、さ行という順
番で左側へ各行5文字と付属する解答欄を持っ
先述の通り、NLTには自身の氏名に含まれ
た列を左へと並べた(Appendix参照)。ただし、
る文字はより好まれやすく、より選択されやす
や行、わ行(「わ」「を」「ん」)は3文字
いというネームレター効果が利用されている。
で構成される。わ行の列の左にはが行などの
よってHTNLTの妥当性の検証として、最初に
濁音、最後にぱ行の半濁音の列を並べた。な
ネームレター効果が現れているかを確かめる必
お、「ぁ」や「っ」など小文字が好きな場合は
要がある。
「あ」や「つ」など大文字を選ぶように設定し
また、基準関連的妥当性の検証には、協力者
た。その結果、HTNLTは協力者が計71個のひ
自身のフルネームへの好意の強さとの関連の
らがなから好みの文字を選ぶ形式となった。
強さを用いることとした。Gebauera, Rikettab,
協力者の氏名を構成する文字数はおおよそ7
Broemerc, & Maio(2008)は6つの研究から、協
程度と予想した。また、自身の氏名以外にもひ
力者自身のフルネームへの好意の強さが潜在的
らがなの形や音の好みによって文字が選ばれる
自尊心(IAT、NLT)を含む全体的自尊心と関連
可能性や家族や恋人の名前が選ばれる可能性が
があることを確かめた。よって、その関連は潜
あり、協力者が選ぶ個数には余裕が必要と考え
在的自尊心を測定していることの証左の一つと
られた。以上と数のキリの良さから、協力者が
なると考えられる。また、その関連の相対的な
選ぶ文字数は10程度と設定した。
強さは尺度の弁別的妥当性を示すとも考えられ
HTNLTによって測定される氏名への選好の
よう。
強さの指標(HTNLT score)には、選ばれた10文
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東京成徳大学研究紀要 ―人文学部・応用心理学部― 第 19 号(2012)
字程度に含まれる協力者自身の氏名の構成文字
種数を採用した。具体的には「たなか」という
結果
姓を持つ協力者が「か」と「た」というひらが
協力者名の氏名を構成する文字種数の平均
なを好きとして選んだ場合はHTNLT scoreは2
は6.22、標準偏差(SD)は1.06であった。よっ
となる。ただし、「おおや」や「ささき」など
て、文字71文字から10文字程度を無作為に選
同じ文字が複数含まれる場合は「お」や「さ」
んだ場合、選ばれる文字種数の期待値は6.22÷
が好きなひらがなとして選ばれても1と数え
71×10=0.88個程度と考えられる。それに対し
る。
て、HTNLT scoreの平均は2.25 (SD = 1.77)で
あった。両者の差についてt検定を行ったとこ
3.手続き
ろ、期待値より選ばれた文字種数の方が有意
最初にHTNLTを行った後、ランダムに並
に多いことが確かめられたことから(p<.001)、
べたアルファベット26文字それぞれの好悪を
HTNLTにおけるネームレター効果の影響が確
一つずつ尋ねる形式の一般的な従来型のNLT
かめられた。
を行った。2つのNLTに続いて、協力者の名字
続いてNLTについては、村田(2007)と同様
と名前をカタカナで、イニシャルの2文字をア
に、アルファベット26文字に対する評価をすべ
ルファベットで記入してもらった。続いて、
て標準化得点に変換し、姓および名のイニシャ
Gebauera et al.(2008)と同様に自身のフルネー
ルに対する合計評価得点から残り24文字に対す
ムへの好意の強さを9件法で尋ねた。さらに調
る評価得点の平均を引いたものを、氏名に対
査時の気分・感情も9件法(「1」:最悪の気分、
するネームレター効果の指標(NLT score)とし
「9」:最高の気分)で尋ねた後でRosenbergの
た。HTNLT scoreとNLT score間の相関係数
(顕在的)自尊感情尺度の日本語版(桜井, 2000)を
を算出したところr=.149 (p=.033)という値が得
行った。
られた。
回答に不備のある18名とアルファベットの方
HTNLT scoreとフルネームへの選好、NLT
がより身近と回答した41名を除いた。その結
scoreとフルネームへの選好間の相関係数をそ
果205名(男性98名、女性107名、平均年齢18.8
れぞれ男女込みと男女別に算出した。また、
歳、SD=1.7)の結果を分析することとなっ
HTNLT scoreにはフルネームに含まれる文字
た。
種数と気分が、NLT scoreには気分が結果に影
また、205名のうち、再検査を施行できたの
響を与える可能性が考えられることから、それ
は78名(男性36名、女性42名、平均年齢18.8
らを制御変数としてHTNLT scoreとフルネー
歳、SD=2.2)であった。
ムへの選好、NLT scoreとフルネームへの選好
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ひらがな一覧版ネームレターテストの作成
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間の偏相関係数もそれぞれ男女込み、男女別に
が、相関分析でも偏相関分析でも男性協力者で
算出した。
はNLT scoreとの相関係数がより高かったが、
その結果、HTNLT scoreはフルネームへの
それ以外ではHTNLT scoreとの相関係数の方
選好とr=.236〜.337、NLT scoreはr=.176〜.261
が高かった。
という相関係数・偏相関係数が得られた。どの
外的基準としたフルネームへの選好を従属変
比較においてもHTNLTの方がNLTよりも強い
数とした一般線型モデルを利用して、HTNLT
相関が示された(Table 2)。
scoreとNLT scoreを個々にそれぞれ独立変数
フルネームへの選好と同様に、Rosenbergの
として投入し、赤池情報量規準(AIC)を算出し
自尊感情尺度についても相関関係を比較した
た。その結果、HTNLT scoreを独立変数とし
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東京成徳大学研究紀要 ―人文学部・応用心理学部― 第 19 号(2012)
た場合は841.0 (修正R2 = 7.4)、NLT scoreを独
2
ネームへの選好に対する説明効率が向上した。
立変数とした場合は847.8 (修正R = 4.3)という
この結果はHTNLTとNLT、あるいは顕在的な
値が得られ、HTNLTのAICの方が6.8小さかっ
自尊心尺度は互いに競合するものではなく、併
た。
用されるべき存在である可能性を示唆している
続いてHTNLT scoreにNLT scoreおよび
のかもしれない。
Rosenbergの自尊心尺度を追加するとフルネー
また、再検査信頼性の調査においてもr = .62
ムへの選好に対する説明効率が増すかについて
という相関係数が得られた。この値は潜在的測
検討するために、HTNLT scoreを予め投入し
定法の中では高いとされるIATやNLTと同程
た後にNLT scoreとRosenbergの自尊心尺度得
度(Bosson et al., 2000)であると考えられる。こ
点を追加して一般線型モデルを用いて分析を
の結果もHTNLTが潜在的測定法として有効で
行った。その結果、AICは829.8まで低下した
あることを示唆すると考えられる。
2
(修正R = 13.2)。
一方、本研究ではひらがなよりもアルファ
続いて、HTNLTの再検査信頼性について調
ベットの方がより身近と答えた協力者を分析か
査するために、1回目と2回目のHTNLT score
ら除外したが、その数はすべての回答に答えた
の相関係数を算出するとr = .62 (p < .000)で
協力者の約17%も存在した。これは想定してい
あった。
たよりも明らかに多かった。好き嫌いやその度
合いについての質問が続いたために、ひらがな
考察
とアルファベットのどちらが好きかという質問
と誤解されてしまった可能性などが考えられ
調査の結果、HTNLT scoreにはネームレ
る。調査者らの意図は生活歴や日常生活におい
ター効果がはっきりと現れた。このことから
てひらがなに多く接している群を抽出するとい
HTNLTはネームレター・テストとしての最低
うものであり、質問の提示方法が適切でなかっ
条件を満たしていると考えられる。
たのかもしれない。
さらに、HTNLT scoreは従来型のNLT
scoreとの間に小さな相関しか認められず、
外的基準であるフルネームへの選好との関連
研究2
ではHTNLT scoreの方がNLT scoreよりも
先述の通り、多くの日本人にとってはアル
AICが6.8低かった。2者間でAICが4から7の
ファベットよりもひらがなの方が頻繁に接する
差があるとその関係が逆転する可能性は少な
ことからNLTにひらがなを用いるのがより適
い(Burnham & Anderson, 2002)ことから、
切だとしても、ひらがなは文字数がより多いた
HTNLTとNLTでは前者の方がフルネームとの
めに個々に好悪を尋ねると回答時間や回答忘れ
選好との関連が強く、潜在的自尊心の測定法と
が増加してしまう問題が考えられる。研究1の
して有効である可能性が示唆される。
回答に不備があった18名の多くがNLTの回答
とはいうものの、HTNLT scoreだけでな
忘れである。
く、NLT scoreやRosenbergの(顕在的な)自
それに対してHTNLTは、協力者にとっては
尊心尺度を含めて分析を行うと、それら変数群
じめから関心のない要素一つ一つに回答させる
のAICはHTNLT score単独よりも低く、フル
のではなく、一覧から関心のあるものを選ぶ形
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ひらがな一覧版ネームレターテストの作成
式であるために回答時間がより短く済む可能性
ところd = 1.83 (Cohen, 1988) という大きな効
が考えられる。それは協力者の負担の軽減に
果量が認められた。
直結する。そこで、本研究では従来のNLTと
HTNLTの回答時間について調査を行い、両者
を比較することを目的とする。
考察
従来型のNLTとHTNLTの回答時間を比較し
方法
たところ、HTNLTはNLTの6割程度の時間で
回答できることが示唆された。差の効果量から
1.調査協力者
かなり大きな差が認められた。26文字のアル
関東・甲信越地方にある大学において、講義
ファベットを利用した従来型でもこれだけの差
中の学生に対して調査目的を説明した後、調査
が出ることから、ひらがな一つ一つの好悪すべ
への協力を依頼した。その結果、50名(男性17
てを尋ねるとかなりの時間を費やしてしまうこ
名、女性33名、平均年齢19.6歳、SD = 1.5)の
とが容易に想像できる。
大学生から協力が得られた。
以上より、HTNLTはより短い時間で施行す
ることが可能であると考えられ、施行の容易さ
2.ひらがな一覧版ネームレターテスト
という観点からもHTNLTが有用であることが
研究1と同じものを使用した。
示唆された。
3.手続き
50名を2人1組になるという方法で2群に
総合考察
分け、2人のうちの一方は先にNLTまたは
以上2つの研究から、HTNLTにおいてネー
HTNLTに回答する先行群、もう一方は回答時
ムレター効果がはっきりと認められること、従
間を測定する群とした。以上の方法で先行群す
来から用いられているNLTよりもHTNLTの方
べてが回答した後、役割を変更して先行群が回
が様々な自尊心と関連のあるフルネームへの選
答時間を測定する役割を負うこととした。観察
好と強い関連が認められたこと、HTNLTは他
学習が起きないように、後から回答する群は先
の潜在的測定法と遜色ない再検査信頼性を持っ
行群が施行したものとは異なるものに回答する
ていること、HTNLTはNLTの約6割程度の時
ようにした(例えば、先にNLTが行われた組
間で課題を完了できることが示された。よっ
ではその後に行われたのはHTNLTとなる)
。
て、HTNLTはNLTと同等かそれ以上の有用性
を有している可能性があると考えられよう。
結果
ただし、研究1での一般線形モデルの結果か
ら示唆されるように、HTNLTとNLTは本来比
NLTとHTNLTの回答時間の平均はそれぞれ
較されるべきものではなく、両者はそれぞれ独
147.8秒(SD = 36.6)、83.0秒(SD = 34.3)で
立した、協力者の異なる特徴や側面を捉えてい
あった。両者をt検定によって比較したとこ
る可能性が十分にあり得る。NLTやHTNLTの
ろ、0.1パーセント水準で有意な差が認められ
他にも、協力者の誕生日と好きな数字を用いて
た(t = 6.45, p < .001)。差の効果量を算出した
潜在的自尊心を測定する方法も考えられ、これ
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東京成徳大学研究紀要 ―人文学部・応用心理学部― 第 19 号(2012)
らを組み合わせることによってこそ妥当性の高
い尺度となる可能性もあり得る。
また、言うまでもなく、本研究で示された
妥当性は限られたものであり、広く利用され
るためにはより多くのHTNLTが持つ構成概念
妥当性を示す研究が必要となる。特に研究1は
「アルファベットの方が身近」と答えた全協
力者の20%近くを除いて得られた結果であり、
HTNLTはひらがなにより親近感を感じている
群にのみ適用できる課題である可能性を否定で
きない。加えて、男女間で結果にいくらか相違
が見られる点についても十分なことは分かって
いない(もっとも、この点については興味深い
と見なす方が適切かもしれない)。
他にも方法論上の問題が存在する。本研究で
は「好きなひらがな」のみを選ぶという形式で
HTNLTを施行したが、NLTでは「各アルファ
ベットがどれくらい嫌いか」を答えることがで
きる。よって、HTNLTをNLTの上位互換性を
持つものとしたいならば「嫌いなひらがな」に
ついても答えられるようにしておくべきであっ
た。また、選択する文字数は10個程度で適切な
のかについても本研究は答えることはできな
い。
これらの結果から、本研究ではHTNLTの興
味深い可能性が示唆されたものの、多くの明ら
かにすべき点や改善すべき点も同時に明らかと
なったと考えられる。
文献
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本研究は科学研究費補助金・若手研究(B)
21730570の助成を受けたものの一部である。
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ひらがな一覧版ネームレターテストの作成
Appendix
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