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外務大臣
岸田文雄殿
拝啓
外務大臣におかれましては、益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。
私たち「日本フェアトレード・フォーラム」は、発展途上国の零細な生産者や労働者が人間らし
い生活ができるよう、「公正な貿易(フェアトレード)」の普及を図る一般社団法人です。
本年 6 月にドイツで開催される G7 首脳会議に先立って、今月 14 日~15 日に同国リューベッ
ク市で G7外相会議が開催されるにあたり、私たち日本フェアトレード・フォーラムは、他の主要 6
カ国のフェアトレード連合体とともに、議題となっている「持続可能なサプライチェーン」及び「ディ
ーセント・ワーク (働きがいのある人間らしい仕事)」に関して、以下の点にご理解とご支持をいただき
たく、ここにお願い申し上げます。
まず、世界貿易において最も不利な立場に立たされている人々がサプライチェーンから恩恵を
受けられるよう数十年にわたって活動してきた私たちフェアトレード関係者として、本年の G7 で
サプライチェーンや労働のあり方が取り上げられることを心から歓迎し、この二点に関して大きな
進展が見られることを期待しております。
つきましては、G7 外相会議でこの二点についての議論が行われるにあたって、是非以下の諸
点に格段のご配慮をいただけますよう、お願い申し上げます。
1)グローバルなサプライチェーンにおける力の不均衡の是正
私たちは、持続可能でないサプライチェーンが引き起こす結果だけではなく、それを生
み出す原因を直視する必要があると考えています。グローバルなサプライチェーン、特に
農産物におけるサプライチェーンは、不公正な貿易慣行を引き起こし、零細な生産者や
労働者にマイナスの影響を与えています。
ついては、G7 諸国の政府が市場や競争をコントロールする力を活かして、サプライチェ
ーンにおける力の不均衡を正すとともに、不公正な貿易慣行をなくすためのしっかりしたメ
カニズムを設けるべきと考えます。
2)生産国における能力の強化
有数の援助国でもある G7 諸国は、途上国の生産者組織が自国における政策の立案
や実施に影響力を行使できるよう、生産者組織に対して実務能力や提言力を強化するた
めの資金提供を行うべきと考えます。さらに、零細な生産者が自国内の市場はもとより、
G7 諸国や他の OECD 諸国の市場にアクセスしたり、持続可能性を保証する認証スキー
ムに参加したりする機会を増やすべきと考えます。
一般社団法人 日本フェアトレード・フォーラム
〒169-8611 東京都新宿区西早稲田 2-3-1 早稲田奉仕園内
特定非営利活動法人シャプラニール=市民による海外協力の会内
Email:[email protected]
HP: www.fairtrade-forum-japan.com
G7 諸国の政府はまた、企業の協力を得て、サプライチェーンにおける零細農家特有の
状況やニーズ、優先事項により良く応えられるよう、的を絞った事業を創出すべきと考えま
す。それは、小規模生産者組織との間に長期的な関係を築き、生産者がバリューチェー
ンに参画できるメカニズムを設けることによって、よりスムーズに行くと考えます。
3)正確な情報に基づいた選択をする消費者の育成
消費者が、市場に混在する様々な認証スキームについて、より明確な情報を必要として
いることは議論の余地がありません。消費者は、自らが購入しようとする製品の生産過程
についての情報だけでなく、生産に係る真のコストに関する情報も必要としています。例
えば、消費者は農家の平均的な出荷価格や労働者の平均賃金などを知っておくべきで
す。また、気候変動に適応するための妥当なコストも生産物の最終価格に反映されるべき
ものです。
自分の消費行動が社会や環境にどのような影響を与えるかについて消費者の意識を
高めるだけでは不十分で、資源の使用量が少ない消費行動を取るよう消費者を教育する
ことが必要と考えます。
4)グローバルなサプライチェーンの透明化
生産物が社会・環境基準に沿って生産されたことを保証するラベルは、持続可能性を
消費者に示す一つの方法ではあるものの、さらなる方策が必要とされています。製品がど
うやって、どのような条件下で作られたかを消費者が知ることができるよう、工場のリストの
公表や販売者の監査、その他の情報の提供が行われるべきと考えます。
G7 諸国は、法的義務より高いレベルでサプライチェーンに関する情報を開示する企業
が市場で優位に立てるような仕組みを提供し、さらにはそうした開示を不可欠なものとす
べきと考えます。
5)企業の責任と透明性の促進
現在企業が自主的に採用している持続可能性に関する基準を、さらに促進するととも
に公的な政策によって補完すべきと考えます。それらの基準は、既に国内レベル及び国
際レベルで存在する諸規則の施行及び執行を促進するものであるべきです。このイニシ
アチブは、人権に関する法令を完全に順守して取引するフェアトレードを行う企業が、市
場で公平に競争できるレベルを目指すべきと考えます。
また、すべての経済主体が、他国内で自社が関わるサプライチェーンで起こる直接的
及び間接的な事故、惨事、紛争について責任を負うべきと考えます。この点に関して、私
たちはドイツ政府が提案したファンド、すなわち労働者の職業上の健康と安全を増進する
ために企業が自発的に資金を拠出する「ビジョン・ゼロ・ファンド」を歓迎します。
6)企業のグッド・プラクティスを拡大するためのインセンティブ等
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自発的な基準をより効果的に広げていくには追加的なインセンティブが必要で、G7 諸
国の政府は、企業が持続可能な製品の供給を増やすよう正しいシグナルを発する必要が
あります。例えば、公的機関による物品調達において持続可能な製品の購入を促すよう、
具体的な措置によって後押しすべきと考えます。
さらに、経済主体が既存の認証スキームを遵守するにとどまらず、より責任ある調達戦
略を採用するよう奨励するといった指導が行われるべきと考えます。それにあたっては、中
小企業の特性やニーズに特段の注意を払い、中小企業も野心的に持続可能性の向上に
取り組めるようにすべきと考えます。
私たちは、国連を初めとする国際機関において持続可能性が中心的な考え方となるよう期待し
ており、あらゆるイニシアチブを歓迎していますが、それらのイニシアチブが効果を上げるには、
何よりもまず十分なリソースや技術的な支援が提供されるべきと考えます。
持続可能な開発目標(SDGs)は、グローバルなパートナーシップを築く上で適切な枠組みを提
供するものになると思われます。グローバルなサプライチェーンに関するイニシアチブは、どのよう
なものであれ、SDG に即したものであるべきと考えます。
以上の提案につきまして、何らかのご返答を頂ければ幸い甚に存じます。また、サプライチェ
ーンをより持続可能なものとすることに私たちがご協力できることを心より願っております。
敬具
2015 年 4 月 10 日
一般社団法人日本フェアトレード・フォーラム
代表理事 胤森なお子
■一般社団法人日本フェアトレード・フォーラムとは:
日本国内の主だったフェアトレード団体、推進組織、学識経験者によって 2011 年に設立された市民団体です。
フェアトレードの理念と実践を日本および国際社会に普及することによって、南北を問わず経済的、社会的に弱
い立場に置かれた人々が人間らしい自立した生活を送れるようにするとともに、経済および社会そのものを公
正で持続的なものへと変革していくことを目指しています。
地域ぐるみでフェアトレードを応援する「フェアトレードタウン」の普及促進や、フェアトレードの国内・国際的なネ
ットワークを通じた啓発活動により、フェアトレードの普及を行っています。
一般社団法人 日本フェアトレード・フォーラム
〒169-8611 東京都新宿区西早稲田 2-3-1 早稲田奉仕園内
特定非営利活動法人シャプラニール=市民による海外協力の会内
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