Vascular Access News Web Vol.11

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透析看護認定看護師教育課程について
東京女子医科大学看護学部 認定看護師教育センター透析看護分野
主任教員
山 内 英 樹
先生
認定看護師教育課程
(透析看護)
について
認定看護師制度とは
透析療法を必要とする患者の生活を支えるためには、個別的ケアの実践に加え、安全で安楽な透析療法を医療チームと協働して実践する
必要があり、
そのためには専門的知識と技術が求められます。
日本看護協会は、高度化・専門化が進む医療ニーズに応えるべく1994年に資格認定制度を発足させました。認定看護師制度は、特定の
看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いて水準の高い看護実践のできる認定看護師を社会に送り出すことにより、看護現場に
おける看護ケアの広がりと質の向上をはかることを目的として、現在21分野が認定されています
(2014年)
。
認定看護師は特定の看護分野において、①個人、家族及び集団に対して、熟練した看護技術を用いて水準の高い看護を実践する
(実践)
、
②看護実践を通して看護職に対し指導を行う
(指導)
、③看護職に対しコンサルテーションを行う
(相談)
の3つの役割を果たします。
なお、認定看護師を除いた透析分野には、透析療法指導看護師
(DLN)
や透析技術認定士などの学会や委員会認定の資格制度があります。
透析看護分野のカリキュラム概要
東京女子医科大学看護学部認定看護師教育センターは、2004年より
「透析看護・手術看護」の2つの看護分野について認定看護師教育を
開始しました。特に透析看護分野は、我が国唯一の教育機関です
(定員20名)。本センターでは、
日本看護協会の教育基準カリキュラムに
基づいて6か月間の教育課程を開講しています。
「教育課程のスケジュールおよびカリキュラム」
を表1に示します。半年間にわたるカリキュラム
は、共通科目、専門基礎科目
(105時間)、専門科目
(165時間)
および学内演習(60時間)、臨地実習(180時間)
と進みます。受講生は、
この
教育課程を通して、
日本看護協会が定める
「透析看護認定看護師に期待される能力」
(表2)
を習得していくとともに、
自己の思考を言語化する
能力、
ならびに他者とディスカッションする能力などもあわせて磨いていきます。
10 月
入学式
共通科目
12 月
11 月
専門科目
学内演習
専門基礎科目
専門科目
学内演習
1月
臨地実習
3月
2月
ケースレポート
作成・発表
統合学習期間
修了式
透析看護分野におけるカリキュラム
専門基礎科目 105 時間
透析看護概論
病態生理と治療法概論
透析療法の理解
15
30
30
患者および家族の理解のための理論
30
専門科目 165 時間
血液透析技術
腹膜透析技術
透析部門における安全管理
透析療法を必要とする患者及び
家族の生活支援
透析看護におけるチームアプローチ
透析看護におけるコーディネート
表1:教育課程スケジュール
演習 60 時間 実習 180 時間
45 学内実習 60 臨地実習 180
30
15
1
透析療法を必要とする患者に対して、総合的な臨床判断に
基づく個別的なケアを実践できる。
2
透析療法に関する専門的知識と技術を用いて、最適な透
析効率を保証し、安全で安楽な透析療法を透析医療チーム
と協働して実践できる。
3
長期にわたる療養生活を支援するため、
セルフマネジメント
に関わる患者教育が実践できる。
4
透析看護を必要とする患者・家族の権利を擁護し、
自己決
定を支援する看護を実践できる。
5
より質の高い医療を推進するため、他職種と協働し、
チーム
の一員として役割を果たすことができる。
6
透析看護の役割モデルを示し、看護職者への指導・相談を
行うことができる。
45
15
15
共通科目 合同授業風景
表2:透析看護認定看護師に期待される能力
Vascular Access News
透析部門における看護の専門性
慢性腎臓病(CKD)
は2002年に提唱された疾病概念ですが、
わが国の患者数は、約1,300万人以上と推計され、末期腎不全の予備軍と
されています。その病態が進行すると末期腎不全に至り透析療法が必要となります。診療報酬の点からは、透析看護認定看護師が算定要件
になっているものとして、
「 糖尿病透析予防加算」
があります。これは、CKDの早い段階から介入して、CKDの進展を防ぐことにより透析導入を
遅らせるというものです。
透析看護認定看護師は、
さまざまな制約の中で生活している患者やその家族に対して、
「 真に必要とする看護は何か?」
を常に問いながら
看護実践する必要があり、
そのためには、透析室に限定せずに、必要に応じて医療チームの一員として幅広い活動をしていくことが期待されます。
看護師が実践するバスキュラーアクセス
(以下;VA)
管理
日本透析医学会の「慢性血液透析用VAの作製および修復に関するガイドライン」
では、VAに関する合併症には、①血流量不足、②狭窄
(動脈/静脈の内腔狭小化)
、
③血栓形成
(VAの閉塞)
、
④穿刺部感染症、
⑤瘤形成、
⑤静脈高血圧
(sore thumb or sore hand syndrome)
、
⑦スチール症候群
(虚血障害)
、
⑧血流量過剰high output failure、
⑨血液再循環、
⑩穿刺困難・穿刺部限局、
⑪その他が明記されています。
血液透析患者にとってVA管理は患者の命を守るといっても過言ではありません。患者のVAをいかに長持ちさせるか、合併症の発生を未然に
防ぐことができるかという観点から、看護師が実践できるVA管理を本教育課程の授業に位置づけました。
授業
(バスキュラーアクセス管理)
に組み込んだポータブルエコー
個々のシャントの形状を把握し、穿刺や日常生活指導などを行うことは透析患者の療養生活を支えるために重要です。そのような観点から、
ポータブルエコーを授業に位置づけました。具体的には、
前半にポータブルエコーに関する講義、
後半は演習
(写真1,
2)
という形式で実施しました。
授業後のアンケートでは、
「 正しい知識、使用方法が理解できた」
と95%の受講生が回答していました。
また、
『もっと知りたい内容』
として、
「穿刺時の注意点」、
「エコーについて」、
「シャントの観察」の順に多く、透析患者へのVA管理に高い関心があることが分かりました。
今回の授業を通して、受講生自らが体験することにより実践的な感覚を持ち、
自施設にどうのように活用するかなど発展的に考えられる授業
になったように思います。今後、透析看護認定看護師として、
ポータブルエコーがない施設でも、新たなVA管理の方法として、提案していく力も
必要になるでしょう。
さらに、透析療法を必要とする患者の生活の質
(QOL)
を維持していくために、透析看護の質向上とケアの広がりにつながる
活動ができることを期待しています。
55%
60
45%
50
40
35%
30%
30
20
10
0 シャントの 穿刺時の
観察
注意点
抜針
事故対策
針刺し
事故対策
エコーに
ついて
その他
図3:もっと知りたい内容
(複数回答)
写真1
写真2
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TMを付記した商標はCovidien companyの商標です。
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