kaitosho - 葬送の自由をすすめる会

有志の会の要望書の冒頭に、「当会は、かつては新鮮な感動をもって生まれ」とありま
すが、たしかに当初の段階では、そうした状況にあったのかとも思います。
自然葬の提案は、25年前には大きな衝撃を社会に与え、それによって会も急速に発展
していくことになりました。振り返ってみると、前会長の新聞に掲載された記事、そして、会
員となった女優の沢村貞子さんが自然葬を選択されたということで、会に対する関心が
急激に高まり、会員も爆発的な勢いで増えていったものと思われます。
しかし、当会の活動も成果を上げ、自然葬ということが社会に定着していくと、その主張
も新鮮なものではなくなってきました。業者のなかには、「海洋葬」などといった形で、自然
葬と同じようなことを商売として行うところも出て来たことで、自然葬を希望する方が、必
ずしも当会に入会する必要がなくなったという事態も起こっています。25年の間に、自然
葬はたしかに浸透し、それによって当会のおかれた状況もまったく変わってきたわけで
す。
そうしたなかでは、会自体が変わっていかざるを得ません。私が、「0葬」という提案をし
たのも、葬送の自由という当会の理念をさらに発展させていくためには、新たな提言を行
うことで、社会の注目を集める必要があると考えたからにほかなりません。幸い、最近で
は、新たに入会してくる方のうち、およそ半数は0葬に関心があるということが、入会カー
ドからも判明しています。
0葬については、メディアも注目し、わずか1年のあいだに、そのことばが社会に広く行
き渡るようになってきました。今や、自然葬と0葬とは、当会の二大看板として、運動を推
進する上で、大きな役割を担うようになっています。もし、自然葬にこだわり続けたとした
ら、運動の発展は今後見込めないのではないでしょうか。
ここで、はっきりさせておかなければならないのは、もう-つ、今述べたこととも開通しま
すが、当会が前会長の時代に築き上げてきた、会を運営するための体制が、時代の変化
によって機能しなくなってきたということです。
それは実は、当会にとどまらず、現在では、公益財団、あるいは-般社団法人の形をと
る、昔でいえば、財団法人に共通して言えることです。一般のNPO法人では、官公庁の
仕事を請け負い、それによって資金を確保しているところが少なくありません。しかし、当
会では、そうしたことはいっさい行っていませんので、運営資金の確保は、会費や会員か
らの寄附、あるいは、自然葬を行ったときの事業収入に頼らなければなりません。つま
り、自分たちで運営資金を調達しなければならないのです。
そうした状況のなか、当会では、組織を拡大するということで、運用資金を確保する道を
選んできたものと考えられます。
そのためには、会員を会につなぎとめ、継続して会費を支払ってもらわなければなりま
せんでした。そこで考案されたのが、「生前契約」というやり方です。生前契約には、本人
契約と家族契約とがありましたが、契約を交わすことで、会員にとっては自然葬が可能に
なるというメリットがありました。なにしろ、20年前の時点では、自然葬を希望しても、それ
を実現してくれる業者などまだいなかったわけですから、会員の方たちはこの会に期待す
るしかなかったわけです。
しかし、その時代のことを調べてみますと、会員になった方々に対して、「本当の会員に
なるには、生前契約を交わす必要がある」と勧誘活動を行っていたようです。たしかに、
契約を交わせば、簡単に会員を辞められなくなるわけで、会員をつなぎとめるためには有
効なやり方だったかと思います。
その上で、集まった金を運用に回し、そこからあげる利益を確保することで、より多くの
運営資金を確保する道を選択してきました。これは、財団法人に代表される、今日でいう
「公益法人」全般が採用してきたやり方です。
そうした方法が可能だったのは、ある程度の額を運用に回せば、高い利率で資金を増
やすことができたからです。以前の金融商品には、数パーセントの利率が保証されてい
るものが少なくありませんでした。郵便局の定額預金でも、10〇万円を預けておけば、そ
れが、一年後には105万から106万円になる状態でした。1億円を預ければ、その100
倍ですから、5〇〇万円から600万円の利子を得ることができました。
実際、この会でも、会員から預かった「予納金」を運営することで、運営資金を相当に増
やしてきました。
さらにその時代には、他に自然葬を実施してくれる業者もいませんでしたから、独占事
業の状況にありましたから、自然葬を実施することでも、かなりの収益を上げることができ
ました。これは、記録も残っていますが、特別合同葬で、1組から1〇万円を徴収したりし
ていました。全体の費用は、2〇万円もかかりません。そのため、1回自然葬をすると、8〇
万円を超える収入が確保できました。
今考えると、理解に苦しむような運営の仕方でした。そこで、自然葬の費用を安くしたり
といったことも行われましたが、さまざまな場面で、会員に対して利益を還元するというこ
とも行われるようになりました。支部の役職者に対するボランティア手当もそうですが、手
伝ってくれた会員の交通費を負担した上、手当まで出すようになっていったのです。
あるいは、2〇年(当初は30年)会費を支払った会員には、無償で自然葬を実施すると
いうことが行われるようになったのも、そうした会の経済状態が深く関係していたと思いま
す。なにしろ、自然葬の費用は、納めた会費よりも多くなります(会員である期間が2〇年
ならば)。それも、資金さえ貯めこんでいれば、それが自然と増えていく経済状態があった
からです。
当会が、自然葬を独占的に実施しようとした証拠が-つ残されています。自然葬という
名称を商標登録しようとしたのですが、それは、商標としてはすぐわないということで、却
下されています。
経済をめぐる状況は大きく変わりました。今や、資金を運用しようにも、利率が低く、まっ
たくそれを期待できない状況になっています。その点は、現在、当会の理事をつとめてい
る経済学者の水野和夫氏が、さまざまな著作で指摘していることでもあります。
そのため、予納金を預かっておくことが、かえって負担になっています。自然葬の契約を
維持するには、事務的な手間もかかります。なかには、住所がわからなくなった方もあら
われています。前会長の時代に、会員の方から、予納金を返還すべきだという声も上が
っていましたが、具体的にどう対処するのか、何も対策が立てられないまま、放置された
状況にあります。
要望書では、支部に対して冷淡であるという見解が表明されていますが、それにもお答
えする必要があるでしょう。
私は、会長に就任して以来、各支部を周り、講演を行いましたが、その際にそれぞれの
支部の方から聞いたことは、世話人等が高齢化し、支部長などの変わり手がいない、あ
るいは、新しい人間が加わってこないといったことでした。世代交代の必要を感じながら
も、それができず、そのための方法を見出せない状況にあったと言えます。
実際、私が会長になったときには、59歳でしたが、会員の9割は私よりも年齢が上とい
う状況にありました。これは、当会だけではなく、多くの運動体に言えることですが、当初
の段階で加わってきた人たちがそのまま年齢を重ね、そのために新しい人たちが入って
きにくいということになりがちです。
そうした状況を踏まえ、支部の改革として、支部の独立、あるいは解散といったことを提
案させていただきました。これは、支部不要ということではなく、独立して自由に活動する
か、解散して、それぞれの地域で新しく人の集まりができることで、新しい人たちも運動に
加わりやすい環境ができるのではないかと考えてのことです。私には、世代交代も進ま
ず、また、支部の会員が集会などにあまり集まってこない状況のなかで、支部長などが困
っているのを目にしたからにほかなりません。
ただ、その際に、-つ私が支部に対する認識を誤っていたことは認めなければなりませ
ん。
それは、支部長をはじめとする支部の世話人の方々が、それぞれの地域の会員全体
の承認を得て、そうした役についていると認識したことです。
ところが、実際にはそうした手続きはとられず、前会長が講演会などで訪れたときに知り
合った方々に依頼し、世話人をお願いしたという経緯だったようです。その後も、そうした
世話人が中心になり、支部を運営してきたようですが、支部に所属する会員の人たちが、
支部の会員として自覚を必ずしももってはおらず、したがって、支部の集会に出席するこ
とが少ないのも、そうした経緯がかかわっていることが分かってきました。つまり、支部の
世話人の方々が必ずしも支部を代表しているわけではないわけです。
実際、もっとも多くの会員がいる関東地方には、関東支部という名前はつけられていま
すが、世話人も皆無で、支部としての実態がありません。にもかかわらず、関東で支部を
作ろうという動きが出てこないのも、会長なり、事務局の方が強く働きかけないと、会員の
なかに支部を作ろうという意識が生まれないことを示しています。
また、25年が経っても、関東に支部が生まれないのは、関東地方の会員の方々が、支
部の必要性を感じていないということでもあるでしょう。
いったい支部とは何なのでしょうか。その役割も大きく変わっているように思われます。
当初の段階では、それぞれの地域で講演会を行えば、そこに人も殺到し、相当数の参
加者が入会してくれるという状態だったようです。しかし、最近では、講演会が入会に結び
つかない状態になっています。その点については、別表を参考にしていただきたいと思い
ます。
もちろんそこには、講演を行った私などの責任もあるかと思いますが、参加者も、講演
などを通して情報を得ることが目的であるように見受けられます。すでに述べたように、
自然葬が一般化した状況では、必ずしも当会に入会しなければならない必然性もないわ
けですから、それも当然のことでしょう。
もう-つ、支部の役割としては自然葬の実施ということがありますが、それについても、
別表のような状況にあります。
そもそも、支部という範囲があまりに広すぎるのではないでしょうか。集会が開かれて
も、遠く離れたところに住む会員は簡単には参加できません。
したがって、現在では、支部という形ではなく、市くらいを単位として連絡会を組織する
方向に転換するよう各支部には提言をしているところです。市の単位で連絡会ができれ
ば、集まることも容易ですし、そこには支部長などは存在しませんから、世代交代の必要
もさほど出て来ません。
また、支部費や支部ボランティア費などは、かえってそれが支払われている会員の方た
ちに対して重荷になっているところもあるようです。そうしたものを貰っているから活動をし
なければならないというのでは、本末転倒です。また、対象者が一部の世話人だけという
のも、会全体の公平性ということでは問題ではないでしょうか。この点についても、支部費
や支部ボランティア費の廃止を提言しているところです。
そうした点で、支部のあり方にはいろいろと問題があり、それを改善する必要があるか
らこそ、さまざまな提言をしてきたわけです。その点が理解されないことについては遺憾
ですが、少なくとも支部の方から新しい改革案が出てきていないことは事実です。
北海道の土地ですが、これは、市が自然葬を禁止する条例を作ったため、自然葬がで
きなくなったところです。一度自然葬を行った土地が売れるはずもなく、職員は市の方に
挨拶には行っていますが、売却の話などまったくしておらず誤解です。
東北支部の件については、関係する方に問題があったと認識しており、決して善意を誤
解したものではありません。
広島支部での講演については、当方に責任があることは認めておりますし、その代償と
して事務局主宰で講演会をすでに開いております。
会員の減少というのは、自然葬を実施された方が自然に退会していく形になるのはや
むを得ないことで、それを上回る新入会員がいないということではないでしょうか。それほ
ど大きく減少しているわけではありませんし、そこには、すでに述べましたように、当会の
運動が当初に比べて新鮮味を失ったことが〇番影響していると思われます。
予算にかんしては、会員管理のシステムなどに経費がかかるなど、それで赤字になっ
た部分がありますが、現在、見直しを進め、会報の発行形態を変え、また職員も一人減り
ましたので、次年度からは大幅な赤字ということはまったくなくなるはずです。
理事にかんしては、NPO法人の規定では3人以上となっています。本来、当会でもその
程度の理事で十分なはずで、そのための定款の改定の準備を進めています。
安田前会長が退任された際に、すべてを私が任されたわけで、そのための人事刷新は
不可欠なことでした。安田体制を引き継ぐということであれば、会のなかから次の会長を
出す努力をすべきだったはずですが、それを怠った結果、安田前会長は私にすべてを託
されたのではないでしょうか。
以上、有志の会の提起された疑問の多くは、当会の現状に対する認識が不足し、また
誤解にもとづくところが少なくないと見受けられます。時代は変わり、当会のおかれた状
況も大きく変わりました。それを踏まえ、これからの運動をどう進めていくかを考えるべき
でしょう。
NPO法人葬送の自由をすすめる会会長“島田裕巳
入会人数にカウントする条件は「集会から3か月以内に入会した支部
地域の人」。入会動機が明らかに集会と関係ない場合を除く(ニュース
を見た、テレビで見たなどを省く)
ロ
2013/10/「3
2013/6/8
:大釜∴
東海支部
北海道支
「奥山理事講演会3〇人(うち非会員「4人)
20「3/9/29
秋田交流会
20「3/「0/「9
東海支部
九州支部
20「4/9/27
2014/10/5
部
総会
勉強会
4
2
関西支部
5
不明③会員の紹介①
講演会①既存の葬式に違和惑①
「
2
墓への疑問①
以前から知っていた②
2
集会
集会「5人参加(うち非会員5人)
東海支部
0
「福岡地域交流会」26人参加
八戸の会
静岡支部
2014/「0/4
島田会長講演会
中国支部
2014/9/20
0
「仙台交流会」92名参加
北海道支
2014/8/10
0
「座談会風交流会」23人参加(うち4人非会員)
八戸の会
20「4/7/26
会員からの紹介②
福島交流会
東北支部
2014/6/「4
0
2
青森交流会
20「3/10/27
20「4/3/30
6 講演会を聞いた②過去の山折さんの講 演会に参加①趣旨に賛同②宗教や戒名 に矛盾①
岩手県交流会
20「3/「0/6
2014/6/28
不明①自然葬詩聖①
島田会長を招いた懇談会120人参加(非会員多
13 懇談会の記事を新聞で見た②会員か らの紹介①趣旨に賛同⑤墓による自
部
かった)
然破壊反対①形式的葬儀への疑問① 散骨希望(②不明①
20「3/6/22 東北支部 「自然葬を考える市民の集い」「26人参加(う ち非会員77人)
2014/3/「5
2
家族が会員①不明①
「
家族が会員①
会員の紹介(D墓の管理心配(D散骨① 趣旨に賛同①不明①
会員交流会「9人参加
2
会長講演会 54人参加(うち非会員22人)
20「4/10/26
九州支部
「自然葬を語る市民の会」7〇人参加(うち非会員37人)
20「4/「「/8
本部主催
「死んだらどうなる?」講演会48人参加(う ち非会員33人)
家族が会員①0葬をしたい①
0
0
「
講演会①
【参考】S」S全体での入会者数
20「3年 6月52人、7月25人、8月29人、9月22人、「0月28人
20「4年1月28人、2月10人、3月2〇人、4月24人、5月22人、6月2「人、7月25人、8月24人、9月24人、
10月「7人、「「月〇〇人、12月「0人
20