特別号 - ジュネーブ日本語補習学校

ジュネーブ日本語補習学校便り
2015.04.15
年度初めに、保護者の皆さんに「補習校とは?」を考えていただきたいと
思い、配布しています。是非ご一読ください。
1.補習授業校とは
補習授業校に通っている子どもたちの中には、もう十年以上通っている子もいれば、つい先日、外国に来たばかりで、不安
でいっぱいという子もいるでしょう。このような多様性が、まさに補習授業校の特色の一つなのです。地域によって日系企業
の業種や、いわゆる駐在者と永住者の割合も異なりますので、子どもたちの日本語能力や保護者のニーズも当然変わってきま
す。
補習授業校は、日本国政府の補助を受けてはいますが公立校ではなく、基本的には現地の日本人会や商工会議所、あるいは
運営団体等によって営まれている私立学校ですので、教育内容や運営形態も、こうした保護者や運営母体の意向を踏まえて決
定されることになります。だからこそ、5教科以上教えて午後まで授業をしている補習校もあれば、国語(日本語)のみで午
前中で終わる補習授業校、あるいは日曜日に開校している補習授業校、遠足や写生教室などまである補習授業校など、多様な
形態が存在することになるのです。
補習授業校の中には、「日本語学校」と名乗っていたり、英語名称も「Weekend School」であったり,「Saturday Sc
hool」,「Supplementary School」など様々ですが、補習授業校は「補習授業校である」という答えしかありません。
しかし、補習授業校は、日本が誇るすばらしい独自の教育機関であり、校長先生を始め、各担当の先生も、運営委員さんも、
保護者の方々も、補習授業校に関わる人たち全員が、そうした自覚と誇りをもって学校運営に当たっているのです。
補習授業校は、独自の使命を持ち、現地校や日本人学校、さらには日本国内では得られない多くの可能性を秘めた存在であ
る、ということを認識していただきたいと思います。
2.補習授業校で学ぶこと
補習授業校に通っている子どもたちの中には、もしかしたら、なんで現地校の友だちが遊んだり、スポーツを楽しんだりし
ているのに、自分だけ土曜日も補習授業校に通わなければならないんだろう、と毎週ぶつぶつ文句を言いながら、いやいや登
校している子もいるかもしれません。
補習授業校は日本の社会性を学ぶところです。それ以外の目的は様々で、日本への帰国を前提とした子どもであれば、現地
校では学ぶことのできない日本の各教科を学び、進学に備えようとするでしょうし、外国で生まれていたり、長期間滞在もし
くは永住の子どもであれば、日本語の保持や日本文化を身につけようとするでしょう。子ども自身にそういう目的意識が薄け
れば、当然、文句が出てくることになります。傾向としては、現地校に慣れてきた頃から、あるいは小学校高学年から、そう
いうことを言い出す傾向があるようです。逆に中学部以上になると、自我が目覚めてきますから、生徒のほとんどは文句を言
わずに自分の意思で通っているようです。
3.長期滞在・永住者にとっての補習授業校
長期滞在もしくは永住の保護者の方にしてみれば、補習授業校で教えるのは日本語だけでいい、もっと基礎基本に限定する
べきだ、との意見をお持ちかもしれません。実際、いわゆる永住者と駐在者の比率が半々、もしくは永住者のほうが多い補習
授業校では、日本語の授業だけに限定したり、いわゆる永住者向けコースを設けたりしているところもあります。しかし、そ
れは慎重でなければなりません。なぜなら、以前ある補習授業校でそうしたコースを設けたところ、当然の帰結として、それ
以外のクラスと比べて授業内容の水準が低下してしまい、かえって子どもたちのやる気や能力をスポイルしてしまったことが
あるからです。またある補習授業校では、さらにそれがエスカレートして、駐在者が永住者をばかにするというような差別意
識まで生じてしまったこともあります。本校も同様の経過があります。
補習授業校というのは、本来外国に暮らす義務教育段階の子どもたちが帰国後スムーズに日本の文化・言語・生活環境に適
応できるための土台を築くことにあり、そのために日本国政府から補助金が支給され、教員が派遣されているのです。設置主
体はあくまで現地の団体であるため、帰国を前提にしない子どもや、幼稚園、高校生を排除することはありませんが、残念な
がら政府支援の対象としては自ずから性格がかわってきます。しかし、だからといって、永住者をないがしろにしていいもの
ではありません。いわんや無用な差別意識が生じたり、国際結婚家庭のいわゆる二重国籍者が肩身の狭い思いをするというよ
うな事態は絶対に避けなければいけません。そのため、多くの補習授業校では、独自に幼稚部、高等部、そして国際学級を設
置しています。永住であっても、苦労して毎週土曜日に補習授業校に通っているからには、必ずそこに日本語、日本文化、日
本の社会性を学んでいこうという強い意思があるはずです。易きに流れようと思えばいくらでも流れることはできますが、そ
れでは補習授業校の使命が果たせなくなります。補習授業校は、単なる「日本語教室」ではないからです。もちろん、そのた
めのきめ細かいフォローや援助は先生方がしてくれます。そして、先生方は、将来子どもたちが、必ず「補習授業校で勉強し
てよかった。」と言ってくれると期待しています。それは子どもたちに秘められた能力の伸長を信じているからです。
4.補習授業校で学ぶことの動機付け
どこの補習授業校でもそうですが、学年が上がるにつれて児童生徒の数は減っていきます。特に、高等部を設置している補
習授業校はどこも少人数ですが、高等部は例外なく真面目で優秀な生徒たちばかりです。それだけ自分の意思で補習授業校に
通っている、ということの現われなのでしょう。現地校での生活を考えれば仏語や英語の方が大事です。したがって、高学年
になればなるほど、「なんで土曜日にまで学校に通って日本語を勉強しなければならないのか」、「現地校の友だちが楽しん
でいる金曜日の夜に、どうして自分は補習授業校の宿題で苦しまなければならないのか」という疑問や葛藤が当然浮かんでき
ます。そこで、やはり保護者の方々から、その意義を示してあげていただきたいのです。それも、ただ単に「日本人なんだか
ら当たり前」、「帰国したとき困るから頑張れ」という抽象的な言い方ではなく、これまで述べてきたような補習授業校の意
義や将来の可能性を含めて具体的に説明してあげることが必要です。日本語の読書や漢字を覚えることは、滞在期間が長くな
ればなるほど、子どもにとっては苦痛になってきます。そんなとき、子どもに日本語を学ぶ意欲や動機づけを与えてあげるこ
とが、極めて重要なことになるのです。以下は卒業生の声です。
・「補習校生活を通して学んだことは、大きく分けて三つあります。一つ目は、友人の大切さです。様々な目的や理由で皆
集まって来ていますが、共通していることは一つ。それは日本語の勉強です。そんな環境の中で面白いクラスメートが集まっ
ていて、意見や自己主張がぶつかり合い、友達も増え、自分の感受性もさらに豊かになれたような気がします。二つ目は、日
本人としての誇りと自己認識が高まったことです。日本を様々な面から勉強することによって、日本人であることが誇りに思
えるようになりました。日本の文化や文学作品へのあこがれを抱くようにもなりました。三つ目は、柔軟性の高い思考ができ
るようになったことです。たえず二つ以上の文化にさらされることにより、日本と実際住んでいる国のそれぞれの長所を取り
入れ、学び、より幅広い人間となれたことが大きな収穫です。」
・「補習校は学問以外に、世間に対する視野を広げて、人生をどう生きていけばいいのかを考えさせてくれた。ただバイリ
ンガルになるだけでなく、『世界人』として、グローバライゼーションをし始めた世の中で、様々な文化をつなぐ架け橋とし
て、異なった民族や他文化の個性を尊重して受け入れる大切さを補習校は教えてくれた。」
と書かれていました。(元ニューヨーク国際交流ディレクター栗原氏 ロンドン補習校で2005年に講演された内容を抜粋、一
部修正した文章を掲載させていただきました。)
続いて、文部科学省のH.Pより「補習授業校の性格」を掲載いたします。
補習授業校の設置目的・・・補習授業校は、現地校に通学する児童生徒が、【対象】
再び日本国内の学校に編入した際にスムーズに適応できるよう、【目標】
基幹教科の基礎的基本的知識・技能および日本の学校文化を、【内容】
日本語によって学習する【方法】・・・教育施設である。
補習授業校の意義
補習授業校 + 現地校・インターナショナルスクールという就学形態を経て帰国した児童生徒を対象とした追跡調査によ
ると、帰国後スムーズに適応する条件として以下の3点が挙げられる。
Ⅰ補習授業校の勉強をしっかりやること。・Ⅱ家庭内では日本語を使うこと。・Ⅲ日本語の本を読むこと。
補習授業校の特徴
年度初め等の節目には、補習授業校についてあらためて説明し、次のことを発達段階に即して説明する。
目的:再び日本の学校で勉強するための学習と生活の基礎基本を身につけること。
方法:全員の積極的な参加で授業が成り立つこと。②家庭学習と教室学習とが総合されて学習目標が達成されること。
教室学習と家庭学習との関係
①補習授業校では、教室学習と家庭学習とが五分五分の重要さをもっている。学習の進行に係わる。このことを理解して臨む
のが補習授業校の学習集団の一員としての前提条件である。
②復習の励行・家庭学習の習慣化・宿題や提出物の期限厳守は、補習授業校の一員としての務めである。
③運営委員会・校長・担任は、保護者と児童生徒に対し、それぞれ担当する機会にこのことを周知する必要がある。
家庭学習
①小学部の宿題には、次の2点を盛り込むこと。
ア.毎日行うこと。-視写・漢字練習・音読/朗読
イ.教材文を声に出して読むこと。-音読/朗読、さらには暗唱
②中学部については、現地校と補習校との兼ね合いを自分で判断し、計画的に学習するよう促すこと。
私(校長)は本校に在籍している全ての児童生徒には、本校の先生方の授業で達成感を味わって欲しいと考えています。授業での
達成感は、その授業を楽しく感じます。そして、先生方を好きになります。その結果が学校を好きになるということです!
一昨年から実施の「習熟度別授業」は、その可能性を最大限に生かす方法だと考えています。大いに活用してください。
保護者の皆様のご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
竹内