2013 年 2 月 25 日発行(毎月 1 回 25 日発行)A.C.E.J ニュース マンスリー VoL.3 No.3 A.C.E.J NEWS ADVANCED COGENERATION and 2013. 3 ENERGY UTILIZATION CENTER JAPAN NEWS ◆新着情報 ・ニュースヘッドライン ・・・・・・・・・・・・・・・ 2 ・トピックス ・・・・・・・・・・・・・・・ 4 2011.9 [政策動向][新技術・新製品][CGS等採用物件] ◆シンポジウム報告(速報) ・・・・・・・・・・・・・・ 7 ◆シリーズ新企画「特別会員 研究室訪問」(第8回) 慶應義塾大学 商学部 井手 秀樹 教授 ・・・・・・・・・・・・・・ 11 ◆お知らせ (1) 会員企業様他 (2) A.C.E.J ・・・・・・・・・・・・・・ 15 ・・・・・・・・・・・・・・ 16 ◆編集後記 ・・・・・・・・・・・・・・ 17 2013 年 2 月 25 日 一般財団法人 コージェネレーション・エネルギー高度利用センター A.C.E.J NEWS はコージェネレーション・エネルギー高度利用センターの会員専用ホームページからダ ウンロードできます。会員専用ホームページに入るためには ID ナンバーとパスワードが必要です。な お、会員以外への本資料、ID、パスワードの配布・転送は厳禁とさせて頂きます。 (http://www.ace.or.jp) また、本資料は情報提供を目的としており、ご利用に関してはご自身の判断と責任でお願いします。本 資料の情報を参考に取られた行動の結果生じた損害等であっても、当財団は一切の責任を負いません。 A.C.E.J NEWS Vol.3 No.3 Mar. 2013 1 新 着 情 報(1) ニュースヘッドライン ニュースヘッドラインでは、 「A.C.E.J NEWS ウィークリー」で掲載した政策、補助金、新 技術・新製品情報等を掲載しています。なお、当財団ホームページの「業界最新動向」では 過去(2011 年 11 月以降)のウィークリーを項目ごとにまとめたものをご覧頂けますので、 こちらもご利用願います。 A.C.E.J ホームページ 業界最新動向 http://www.ace.or.jp/web/release/release_0010.html ■政策関連 (発表日、タイトル、出典元の順) 1/22 再可エネ買い取り価格の見直し開始 (経済産業省) 1/23 周波数変換能力を90万kW増強、210万kWに (北海道電力他) 1/25 電力業界の今年の課題について要望 (電事連) 1/29 平成25年度予算政府案 (財務省) 1/31 12月の電力需要、3.1%増 (電事連) 1/31 85カ所の県施設でPPS(新電力)から電力を調達 2/1 第12回電力システム改革専門委員会 2/1 関西エリアで初の成約 分散型・グリーン売電市場 2/8 電力システム改革、発送電分離、小売りの完全自由化など決 (神奈川県) (経済産業省) (JEPX) (経済産業省) める 2/8 再生可能エネルギー振興戦略プラン(案)を発表 2/15 「電力システム改革専門委員会報告書」をとりまとめ 2/15 第2回規制改革会議、エネルギー・環境も議題 2/15 トップランナー機器にエコキュートを追加 ■補助金等 (滋賀県) (経済産業省) (内閣府) (経済産業省) (発表日、タイトル、出典元の順) 1/28 自家発電設備導入補助 2次募集を開始 2/1 戦略的省エネルギー技術革新プログラム 2月下旬に1次公 (経済産業省) (NEDO) 募 2/6 環境配慮型設備投資緊急支援事業の金融機関を公募 2/14 燃料電池関連補助の募集日程などを発表 2/14 平成25年度 CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証 (環境省) (NEDO) (環境省) 事業 2/15 平成24年度自家発電設備導入緊急対策費補助金 (経済産業省) A.C.E.J NEWS Vol.3 No.3 Mar. 2013 2 ■新製品・新技術 (発表日、タイトル、出典元の順) 1/24 コンバインドサイクル発電のグローバル展開で提携 (東芝) 1/29 コージェネや太陽光など最新の環境エネ技術を採用 (ヤンマー) 1/29 メタンハイドレートの海洋産出試験を開始 2/8 ニッケルと鉄で新触媒 燃料電池のコストを低減も 2/6 米国産のLNG購入で基本合意 2017年から (東京電力) 2/6 米国メキシコ湾の原油・ガス洋上生産事業に参画 (丸紅) 2/8 北九州市で2万kW超のメガソーラー事業 一部で単独事業 (経済産業省他) (JST) (西部ガス) も 2/12 2/14 (新日鉄住金 4月メドにエネルギー事業を再編 エンジ) 新型ガスタービン試験で定格出力4万kWを達成 ■CGS 採用物件等 1/22 (日立製作所他) (発表日、タイトル、出典元の順) 高電圧直流給電システム実証に燃料電池 (さくらインタ ーネット他) ■イベント他 (開催日、タイトル、出典元の順) 1/22 「水素先端世界フォーラム2013」を開催 1/24 省エネ大賞の受賞者決まる 1/24 「燃料電池セミナーin大阪」を開催 1/31 エネルギー使用合理化シンポを開催 2/1 新エネルギー技術シンポジウムを開催 (省エネセンター) (大阪府) (四国経産局) COGEN Europe が年次会議を開催 2/4 (福岡県) (産総研) (COGEN Europe) 環境連続セミナー「エコシティ けいはんな を見に行こ (京都府) う!」 2/7 平成24年度「コージェネ大賞」選考結果 (A.C.E.J) 2/8 「あいち臨空新エネルギー実証研究エリア実証研究発表会」 (愛知県) を開催 第3回神戸芸術工科大学芸術工学研究所シンポジウムを開 (神戸芸工大) 催 2/14 燃料電池の電解質分野の米国特許ランキングを発表 (パテント レザルト) *ニュースヘッドラインは A.C.E.J NEWS ウィークリー1 月 30 日号(第 65 号)以降でお知らせした情報 の再掲です。 A.C.E.J NEWS Vol.3 No.3 Mar. 2013 3 新 着 情 報(2)トピックス ■ 政策関連 ■平成25年度予算政府案 財務省は、平成25年度予算の政府案を公表した。経済産業省関連では、エネルギーや電 力供給の安定化等を図るため、天然ガスコジェネレーションや自家発電設備等の分散型電源 等を導入する事業者を支援する『分散型電源導入促進事業費補助金』を新設するなど、分散 型発電分野の予算は昨年度の 42.8 億円から 279.7 億円(+554.1%)とする案が出された。 出典:財務省 ■「電力システム改革専門委員会報告書」をとりまとめ 「総合資源エネルギー調査会 総合部会 電力システム改革専門委員会」は、今後のあるべ き電力システムについて専門的な検討及び、詳細制度設計の議論を行い、委員会としての報 告書を取りまとめた。 出典:経済産業省 A.C.E.J NEWS Vol.3 No.3 Mar. 2013 4 ■ 新製品・新技術等 ■コージェネや太陽光など最新の環境エネ技術を採用 昨年3月、創業100周年を迎えたヤンマー株式会社は現在、次の 100 年に向けて、創業 の地である大阪市北区梅田に、新本社ビルの建設準備をすすめてきた。1月29日、関係者 出席のもと、 起工式を執り行い本体新築工事に着工いた。 ヤンマーグループ新本社ビルには、 環境性能に優れた、ガスヒートポンプエアコンやマイクロコージェネレーションシステムな どの自社製品の採用に加えて、太陽光・太陽熱発電システムなど最新の環境技術の数々を導 入し「ZEB」化を目指すとともに、建築物の環境性能総合評価指標である「CASBEE 大阪 みらい」においても最高ランク(S ランク)を実現する計画である。またビル外観は、これ からの100年の航海に漕ぎ出す「ヤンマーブランドの象徴」として、船の舳先をイメージ したものとし、創業の地に根ざす100年企業の新本社オフィスとしてふさわしい品格と機 能を創出していく。 出典:ヤンマーニュースリリース A.C.E.J NEWS Vol.3 No.3 Mar. 2013 5 ■第1回メタンハイドレート海洋産出試験を開始 資源エネルギー庁は、渥美半島から志摩半島の沖合(第二渥美海丘)において、メタンハ イドレートを分解し天然ガスを取り出す、世界初の海洋産出試験を実施する。海洋産出試験 を実施するため、地球深部探査船「ちきゅう」が清水港を出港し、1月28日、試験地点に て準備作業を開始した。準備作業終了後、メタンハイドレートを分解し天然ガスを取り出す 試験を実施する。 出典:資源エネルギー庁 A.C.E.J NEWS Vol.3 No.3 Mar. 2013 6 コージェネレーション・エネルギー高度利用シンポジウム 2012(速報) 当財団では、【コージェネレーション・エネルギー高度利用シンポジウム 2012】を 2013 年 2 月 7 日・8 日に東京国際フォーラム他で開催した。初日は、 「基幹エネルギーとしてのコ ージェネの未来と期待される役割」をテーマに、講演、パネルディスカッション等を行い、 翌日は東京ベイ舞浜ホテル クラブリゾート(千葉県浦安市)など先進的CGS導入施設を 見学させて頂いた。なお、詳細については ACEJ NEWS 4 月号及び 5 月号で紹介する。 ■開催概要 ○講演会 ・日時:2013 年 2 月 7 日(木)10:00 ~ 17:40 ・場所:東京国際フォーラム B 棟 5 階(東京都千代田区) ・参加人数:約 400 名 ○テクニカルツアー ・日時:2013 年 2 月 8 日(金) 9:30 ~ 16:30 ・見学場所:次頁参照 ・参加人数:約 40 名 ■講演会 <プログラム概要> ◆開会挨拶 柏木孝夫 ◆来賓挨拶 髙原一郎様 (経済産業省 資源エネルギー庁 長官) ◆基調講演 Dr. Fiona Riddoch(COGEN Europe Director) 演題 ((一財)コージェネレーション・エネルギー高度利用センター 理事長) 「Changing the way Europe provides heat and electricity for a sustainable future」 ◆一般講演 藤田広光様(新潟原動機㈱ 技術センター 製品開発グループ) 演題 ◆一般講演 佐藤栄作様 (㈱エネルギーアドバンス エンジニアリング部 演題 ◆基調講演 「2000kW クラス高効率ガスエンジンの開発と今後の展開」 業務グループマネージャー) 「電力需給逼迫に対応した各企業のコージェネ活用による電力セキュリティ向上の取組み」 村上周三様 ( (一財)建築環境・省エネルギー機構 理事長) 演題 ◆コージェネ大賞 「スマートコミュニティとエネルギー計画 ~コージェネ推進に向けた事業スキームの展開~」 優良表彰 A.C.E.J NEWS Vol.3 No.3 Mar. 2013 7 ◆一般講演 瀧口信一郎様(㈱日本総合研究所 創発戦略センター 上席主任研究員) 演題 ◆一般講演 「公共性を軸にした分散型エネルギーの展開 ~自治体が主導する次世代エネルギー~」 平岡雅哉様(鹿島建設㈱ 建築設計本部 設備設計統括グループ 統括グループリーダー) 演題 「”東京イースト 21”へのスマートエネルギーネットワーク導入と今後の課題 ~既存施設の省エネルギーと BCP 向上に向けて~ ◆一般講演 沼田 」 明様(三菱重工業㈱ 汎用機・特車事業本部 エンジン技術部 エンジン技術部 技監・主幹技師) 演題 「エネルギー総合ソリューション事業への取組み ~ガスコージェネレーションを中心としたエネルギー総合ソリューションの提案~ 」 ◆パネルディスカッション テーマ 「これからの日本のエネルギーとコージェネレーションに対する期待」 コーディネータ 柏木孝夫 パネリスト 都築直史様(経済産業省 資源エネルギー庁 コジェネ推進室長) ((一財)コージェネレーション・エネルギー高度利用センター 理事長) 野村治陽様(㈱日本製紙グループ本社 技術研究開発本部 エネルギー事業部長) 前川 篤様(三菱重工業㈱ 代表取締役常務執行役員 汎用機・特車事業本部長 兼 相模原製作所長) 村木 茂様(東京ガス㈱ 代表取締役副社長執行役員) <講演会の様子> 柏木理事長 開会挨拶 Dr. Fiona Riddoch 基調講演 髙原長官 来賓ご挨拶 村上周三様 基調講演 A.C.E.J NEWS Vol.3 No.3 Mar. 2013 8 パネルディスカッションの様子 ■テクニカルツアー □東京ベイ舞浜ホテル クラブリゾート(千葉県浦安市) 同ホテルは、1990年の開業当時か らガスコージェネレーションを導入 し、電力の一部を賄なってきた。今 回、設備更新に伴い最新型高効率機 へ更新し、エネルギー効率を向上さ せ、ホテル全体のエネルギー消費量 低減に大きく寄与している。排熱は 温水として回収し、吸収式冷温水機 に投入して空調に使用するほか、温 水を客室の浴室や厨房等に使用して いる。また、ホテルが年間に使用す る電力の約15%を賄う。 ・原動機:ガスエンジン 370kW×1 台 ・排熱利用:給湯、冷暖房 ・燃料:都市ガス A.C.E.J NEWS Vol.3 No.3 Mar. 2013 9 □医療法人財団厚生協会 東京足立病院(東京都足立区) 本病院は地域医療と福祉の中核と しての「救急福祉」を経営理念とし ており、万が一大規模な災害が発生 した場合でも、介護・福祉が十分行 える体制整備を図っている。その中 でガスコージェネレーションシステ ムは、エネルギー面から「救急福祉」 の拠点としての働きを力強く支えて いる。1994年に導入された既設の2台 に加え、今回新たに1台を増設したこ とで、停電時でも病院内における大部分の電力を確保できるようになっている。 ・原動機:ガスエンジン 200kW×2 台(常用防災兼用機)、350kW×1 台(停電対応機) ・排熱利用:給湯、冷暖房 ・燃料:都市ガス □東京ガス本社ビル(芝浦地域冷暖房センター) 東京ガス本社ビルでは従来から ガスタービンコージェネレーショ ンを導入し、排熱を隣接する芝浦地 域冷暖房センターで有効利用をし てきた。この度、設備更新に伴い最 新鋭高効率型ガスエンジンコージ ェネレーションに更新し、省エネル ギー、省CO2に貢献するとともに、 BOS(ブラックアウトスタート)機 能を新たに追加することで、災害時 にガス供給システムの機能維持に重要な役割を果たす同ビルの保安電力へ供給し、同ビルの BCP向上に大きく貢献している。 ・原動機:ガスエンジン 930kW×2 台 ・排熱利用:給湯、冷暖房 ・燃料:都市ガス A.C.E.J NEWS Vol.3 No.3 Mar. 2013 10 特別会員に聞く ~慶応大学 井手秀樹 教授〜 天然ガスにシフトする時代を迎え、 高まるコージェネレーションシステムへの期待 このコーナーでは、新しく ACEJ の特別会員になられた方々 に、最新の研究内容やご意見を伺います。今回は、産業組 織論がご専門で、電気やガス、水道をはじめとする公益事 業の料金や規制緩和に詳しい井手秀樹先生のご登場です。 プロフィール●いで・ひでき 福岡県出身。慶應義塾大学商学部教授、ハーバード大学エネルギー 政策シニアフェロー。内閣府消費者委員会の委員も務める。著書に 『規制と競争のネットワーク産業』(編著、勁草書房)など。2013 年 3 月、単著『隠れたるエコカー「NGV」─ポスト・フクシマの選 択』 (エネルギーフォーラム新書)を出版予定。 ■エネルギー、運輸、通信などの分野で、どのような競争政策が望ましいかを研究 私は、大学と大学院で産業組織論を研究しています。産業組織論は、企業や産業の市場が どのような仕組みで成り立っているのかを研究する学問です。なかでも最近、重要な研究分 野になってきているのが、電気やガスなどのエネルギー、通信、通信、運輸、郵政事業など のネットワーク産業に関する「ネットワーク・エコノミー」という分野です。規制緩和に伴 って競争が導入される際、どのような規制があるべき姿かを検討しています。 産業組織論は、製造業を中心に扱い、どのような競争政策が望ましいかを研究する学問で したが、規制緩和に伴い、ネットワーク産業に重点が移ってきました。日本では、あまり研 究している学者がいないので、学生も興味をもって取り組んでいます。 ■行政訴訟にも用いられる産業組織論 産業組織論は、1960 年代に日本に入ってきたので、それほど古い学問ではありません。 「産 業」の「組織」ですから、どのくらいの規模の企業が、どのような状態で競争しているかを 考えていきます。企業が大きくなると、市場での競争が行われなくなるので、分割させるこ とで競争を促進する。それにより、最終的に消費者が利益を得る。つまり、消費者利益の確 保が、産業組織論の大きなテーマなのです。 そのために、競争を浸透させるための政策を考えます。近年では、裁判においても、産業 組織論が多く使われるようになっています。最近では、タクシー会社のロイヤルリムジン株 式会社(*1)や、MK タクシー(*2)が起こした行政訴訟の例があります。 ロイヤルリムジンは、英語や中国語、韓国語など外国語に堪能なドライバーを養成し、来 A.C.E.J NEWS Vol.3 No.3 Mar. 2013 11 日する外国人向けにタクシーを手配することで、差別化を図っています。 タクシーの台数を、 50 台から 80 台に増やしたいと申請したところ、国土交通省は、台数の規制を理由に、認め ませんでした。それで、行政訴訟を起こしたのです。この裁判で、産業組織論の観点から意 見を求められ、私は「増車を認めるべきだ」との意見書を書きました。MK タクシーも、札幌 で訴訟を起こしています。 「何がなんでも増車を認めない」という行政のスタンスは、私はお かしいと思います。 ■自由化が、規制当局の“焼け太り”につながってはならない 産業組織論は、最終的にどのような政策をとるべきかを考えていきます。エネルギーに話 を戻すと、私はこれまでに、ガスや電気の自由化において、どのような規制が望ましいかを 研究してきました。 電気・通信の自由化は、すでに 30 年近く議論されています。そこでは、既存の電話会社の 力をいかに弱めるかという政策がずっととられてきました。私は、 「電気も同じようにならな ければいいがなあ」と思うのです。電気も自由化したけれど、結局、30 年経っても電力会社 が強いままで、いかに電力会社を弱めるかという政策がとられてしまい、その結果、規制当 局の“焼け太り”のようになってはならないと思うのです。 1980 年代に規制緩和が始まったイギリスでは、株を売却して財政赤字を埋めるという理由 のもとに、サッチャー政権が国有企業を民営化しました。規制当局は、一時的に規制をつく り、競争が進展した段階で解消すると言っていましたが、30 年後の現在、スタッフも予算も 増え、規制当局が“焼け太り”をしているように思います。 規制緩和をすると、かつての姉歯事件のように、倫理の欠如が起こりやすいという意識を 持つことも必要です。さらに、 「既存の大企業は悪いことをする。新規参入者は効率的で良い 企業だ」と想定して政策を考えてしまうことにも注意が必要です。これは、われわれ研究者 の責任でもあります。こうした産業組織論が、市場に適正な競争を生み、消費者の利益につ ながるように、研究に取り組んでいます。 ■病院への導入が有望な、コージェネレーションシステム 公共料金のあり方を検討するのも産業組織論の分野で、私は、内閣府の消費者委員会「公 共料金等専門調査会」 「家庭用電気料金の値上げ認可申請に関する調査会」 (*3)の委員として、 都市ガス事業の自由化、電力の改革、電気料金の査定にも携わっています。 都市ガス事業においては、補助金事業により、ガスコージェネレーション普及を推進して います。その一つに、建物間熱融通といって、建物と建物の間を熱の導管で結び、コージェ ネレーションの熱の効率的な利用を進めるものがあります(*4)。なかなか導入事例には結び つきませんでしたが、その中で私が気づいたのは、コージェネレーションシステムの建物間 融通は、病院などで非常にやりやすいということです。新しく病院をつくるとき、古い建物 と建物間融通をするなどです。コージェネは、一度設置したら長く使ってもらわなければな A.C.E.J NEWS Vol.3 No.3 Mar. 2013 12 りませんから、熱需要がないところに入れると、熱を捨てるために動力が必要になるなど、 効率が悪くなります。病院は、お湯をたくさん使うので、熱需要が高いのです。 ■期待される「天然ガスシフト」 これからは、天然ガスの時代です。 「天然ガスシフト」とい い、 日本も、 天然ガスへのシフトを図らなければなりません。 その一つが、エネルギー供給としてのコージェネであり、運 輸部門における天然ガス自動車です。 エネルギーの地産地消を考えると、コージェネは、今後、 かなり注目される分野だといえるでしょう。シェールガスの ように天然ガスが安価かつ安定的に調達できるという前提で、 コージェネは、効率的なエネルギー供給方法として期待でき ます。普及させるうえでの重要な課題は、いかに熱を捨てず に、下水にあたるものを整備するかです。動脈と静脈に例え ると、静脈にあたる部分です。 天然ガス自動車については、 今年3月に出版予定の拙著 『隠 れたるエコカー「NGV」』の中で、電気自動車に代わる選択肢 として詳しく紹介しています。続いて、鉄道料金と水道料金 2013 年 3 月に出版予 定の著書(エネルギー フォーラム新書) についても、著書を出版する予定です。その次に、電気料金 とガス料金について書く予定です。 ■地域によって 10 倍もの格差がある、日本の水道料金 一般には、ほとんど知られていませんが、右の表のとおり、日本の水道料金は、最も高い ところと安いところで 10 倍もの格差があり ます。 富士山のふもとにあ る山梨県の富士河口湖 町では、一般家庭 10 ㎥あたり、1か月 335 円。源水にほとんど手 を加えなくても、おい しい水が利用できます。 一方、北海道などで は、工場を誘致する想 定でダムをつくったけ A.C.E.J NEWS Vol.3 No.3 Mar. 2013 13 れど、結局、誘致できず、工場団地に空きがたくさん出てしまったなどの事情から、水道料 金が高くなっています。こうした料金格差は、通常の場合、転居でもしない限り、なかなか 他の地域の料金を知る機会がありません。 家庭用のエネルギー料金の料金格差は、1.2 倍から 2 倍程度となっています。これらの公 共料金がどのように決まっているかを調べて検討するのが、私の行っている研究の一つであ るわけです。 こうした産業組織論の観点からいえば、 コージェネを普及させていくためには、 ガス料金をいかに安くするかも課題の一つですね。 【参考情報】 慶應義塾大学商学部 井手秀樹研究会ウェブサイト http://ideseminar.jimdo.com (*1)ロイヤルリムジン株式会社ブログ http://royal-limo.seesaa.net (*2)札幌 MK タクシーの行政訴訟(MK グループのウェブサイトより) http://www.mk-group.co.jp/fuga/110623.html (*3) 内閣府消費者委員会「公共料金等専門調査会」「家庭用電気料金の値上げ認可申請 に関する調査会」 http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/kokyoryokin/index.html (*4) 一般社団法人都市ガス振興センター「天然ガス型エネルギー面的利用導入モデル事 業費補助金」 http://www.gasproc.or.jp/tennengas/index.html ◎ 取材を終えて 「産業組織論」という、日本では数少ない研究分野の専門家でいらっしゃる井手先生。効率的なエネ ルギー供給方法としてのコージェネレーションへの期待を、熱く語ってくださいました。近々、刊行 されるというご著書も楽しみです。興味深いお話をありがとうございました。 A.C.E.J NEWS Vol.3 No.3 Mar. 2013 14 お知らせ(1)会員企業様他 ■第4回理事長懇談会を3月19日(火)に開催 第4回理事長懇談会を 3 月 19 日(火) 14:00~、川崎重工業株式会社様 明石工場 において開催いたします。 ■平成24年度 「コージェネ大賞」優良表彰 財団では、優れたコージェネレーションシステム(以下 CGS)を表彰する制度として「コー ジェネ大賞」を平成 24 年度に創設いたしました。本表彰制度は新規・先導性、新規技術、省 エネルギー性に優れた CGS の事例を広く募集し、表彰することによって、CGS の有効性の社 会への認知を図り、優良な CGS の普及促進を目的としています。 応募対象は民生部門・産業用部門・技術開発部門に分かれており、合計 26 件の応募の中か ら、学識経験者 5 名によって構成された選考会議にて厳正なる審査の結果、理事長賞および 優秀賞の受賞者が決定いたしました。 理事長賞は民生用部門 2 件、産業用部門 1 件、技術開発部門 2 件の計 5 件、優秀賞は民生 用部門 3 件、産業用部門 3 件、技術開発部門 1 件の計 7 件の受賞となりました。 受賞にあたって、笠木伸英選考会議委員長から受賞案件ごとの応募内容及び受賞に至った 経緯の説明がありました。最後の総評では“応募案件それぞれが優れた内容であり、全ての 案件が受賞に値する内容であったが、その中でも特に優れた案件を選んだ。 ”とのお話があり ました。 各賞の受賞者は、 柏木理事長より賞状と記念品を授与され、 全員で記念撮影を行いました。 受賞された皆様、おめでとうございます。 A.C.E.J NEWS Vol.3 No.3 Mar. 2013 15 お知らせ(2) A.C.E.J ■2012年度 第6回業務委員会 <2月13日(水)> 2012 年度第6回業務委員会を2月13日(水)、15:00 より開催いたしました。 ■2012年度 第6回広報委員会 <3月1日(金)> 2012 年度第6回広報委員会を3月1日(金)、15:00 より開催いたしました。 ■2012年度 第7回業務委員会 <3月13日(水)> 2012 年度第7回業務委員会を3月13日(水)、15:00 より開催いたします。 A.C.E.J NEWS Vol.3 No.3 Mar. 2013 16 編 集 後 記 平素より、ACEJ NEWS マンスリーをご愛読頂きありがとうございます。 三月に入り、ようやく寒さが和らいできました。春の訪れはすぐそこです。私はこの冬ス ノーボードにのめりこみ、毎週のように新潟や長野のスキー場に通いました。雪山シーズン もあと少しかと思うと、少し寂しさを感じております。 さて、今月号はコージェネレーション・エネルギー高度利用シンポジウムの速報、テクニ カルツアーと充実した内容となっております。コージェネレーション・エネルギー高度利用 シンポジウムでは、今年度からコージェネ大賞の優良表彰が行われております。受賞した案 件のそれぞれが優れた内容であり、私もお客様がコージェネ大賞を取れるよういい提案が出 来るよう頑張らんといかんと、刺激を受けました。 今後も、コージェネの普及につながるよう、みなさまの興味を引く情報を提供できるよう に、編集委員一丸となって頑張ってまいります。 (Y.M) 委員長 委 員 田中 雅人 城谷 義隆 小田島範幸 村杉 玲子 秋山 真吾 馬場 美行 雑賀 慎一 主 査 *西尾 新一 副主査 喜多 茂雄 委 員 *怡土 英毅 *本園 康郎 *八文字成実 *吉川 隆之 *雑賀 慎一 事務局 山下 隆志 広 報 委 員 会 大阪ガス㈱ 関西電力㈱ 本園 康郎 JFE エンジニアリング㈱ 清水建設㈱ 八文字成実 新日本空調㈱ 東京ガス㈱ 吉川 隆之 東京電力㈱ 戸田建設㈱ 西尾 新一 三井住友建設㈱ 西芝電機㈱ 怡土 英毅 川崎重工業㈱ 新潟原動機㈱ NEWS 編集ワーキング 三井住友建設㈱ 大阪ガス㈱ *馬場 美行 西芝電機㈱ 川崎重工業㈱ *城谷 義隆 関西電力㈱ JFE エンジニアリング㈱ *小田島範幸 清水建設㈱ 新日本空調㈱ *村杉 玲子 東京ガス㈱ 東京電力㈱ *秋山 真吾 戸田建設㈱ 新潟原動機㈱ (*:広報委員と兼務) コージェネレーション・エネルギー高度利用センター A.C.E.J NEWS Vol.3 No.3 Mar. 2013 17
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