慢性関節 リウマチに対する岡大式Mark Ⅱ型人工 膝関節置換術の長期

岡 山医誌
(1993)
105,
823∼837
慢 性 関 節 リウマ チ に対 す る岡大 式Mark
膝 関 節 置 換 術 の長 期 成績 とそ のX線
岡 山 大 学 医 学 部 整 形 外 科 学 教 室(指
彌
益
導:井
清
words:
cementless
TKR,
long-term
緒
Okayama
follow-up,
femoral
慢 性 関 節 リ ウ マ チ(以
Ⅱ TKR,
Rheumatoid
knee,
component
対 す る膝 関
月(16年4ヵ
月 ∼10年3ヵ
月)で あ っ た.
導 入 さ れ,一
あ っ た(表1).
片 側 膝 関 節 の み の 置 換 は5例,両
以 来 岡大式 人工 膝関
節 置 換 術(以 下TKR)が
Mark
ま た 手 術 時 体 重 は48.4±7.8kgで
下RA)に
節 機 能 再 建 と し て,1968年
一 教 授)
受 稿)
年7ヵ
言
上
学的経過
文
(平 成5年6月15日
Key
Ⅱ型 人 工
側 置 換 は16
例 で あ っ た.両 側 例 で 一 側Mark
貫 して 骨
種 が 使 用 さ れ て い る例 が4例
Ⅱ型以外 の器
あ っ た が,本
研究
セ メ ン トを使 用 し な い 表 面 置 換 型 が 使 用 さ れ て
の 対 象 か ら は は ず し て お り,こ れ ら は そ れ ぞ れ
きた.1975年
岡 大 式C型
され,そ
か らは 岡 大 式Mark
の 臨 床 成 績 はRAば
形 性 膝 関 節 症(以
下OA)に
Ⅱ型 と して 統
か りで な く,変
で の 短 期 成 績 で,10年
研 究 で は,RA膝
対 す る 関 節 再 建 術 と し て のMark
ま
例 は2例2関
年 以 上 の 成 績 と そ のX線
してMark
に
Ⅱ型TKR
が1関
中 に ゆ るみ,疼
以 上 の長期 に わた って の
調 査 研 究 は し て い な い.本
節,京 セ ラKC-1型1関
岡 大 式PCL-R型
つ い て も検 討 さ れ
て き た.1-8)し か し,調 査 期 間 は 長 くて も5年
が2関
節 で あ っ た.33関
学的 経過 につ い て調査
肢 多関 節 置 換 術 は,3関
対
象
1975年 よ り1981年 末 ま で に,RA
に 対 し てMark
Ⅱ型TKRが
両 膝TKRを
58例88関 節
行 わ れ,1991年
に 直 接 追 跡 可 能 で あ っ た例 は21例33関
率36%)で,性
別 は 男 性3例,女
受 け た2例
研
1.
た.間 接 的 に 追 跡 可 能 で あ っ た の が20例(34.5
あ っ た.ま
な っ た の は5例7関
11例(19%)不
節(9%)で
あ っ た.死
究
方
節 置換 を
法
臨 床 評 価
直 接 検 診 し得 た21例33関
亡
節 を対 象 に 三 大 学 試
ま た 日常 活 動 動 作(以 下ADL)は
対象 か ら除外
藤林 の移 動動
作 の分 類10)に よ っ て 評 価 し た.
し た.
ま た 股 関 節 を 含 め た 多 関 節 手 術 群 を分 類 し臨 床
直 接 検 診 し得 た21例33関
病 期 間 は 平 均15年11ヵ
月)で
あ っ た.術
成 績 を分 析 した 。
節 の 手 術 時 のRA罹
月(4年10ヵ
ヵ 月)年 齢 は 平 均50歳4ヵ
歳2ヵ
の 片 側,4関
案 膝 評 価 表(以 下 三 大 学 評 価)9)を 用 い て行 っ た.
た現 在 ま で に 再 建 置 換 術 を行
明6例(10%)は
受 け た1例
の,片 側,両 側 に 行 わ れ て い た(表2).
跡
性18例 で あ っ
側TKRと
節 置 換(両 側TKRと
で あ る.人 工 肘 関 節 置 換 術 は
末
節(追
含め た下
節 置 換(両
片 側THR)が3例,4関
究
よ りの1
節 は 初 回 手 術 で あ る.
全 人 工 股 関 節 置 換 術(以 下THR)を
10
た経過
節 中再 置 換 術 と
Ⅱ 型 を 使 用 し た症 例 はB型
両 側THR)は7例
%)で
節 で あ っ た.ま
痛 の た め に再 置 換 術 を 要 し た症
関 節 の み,そ の 他20例32関
した.
研
節,
2. X線 学 的 計 測
月 ∼41年4
月(32歳8ヵ
後 追 跡期 間 は,平
十 川4)が 用 い た 大 腿 脛 骨 角(γ
月 ∼64
側 角(α 角),脛
均13
823
角),脛
骨板 内
骨 板 後 方 傾 斜 角(β 角)大
腿モ
824 彌
ル ド外 側 角(δ
のX線
角)を
用 い た .γ 角 は,術
上 計 測 し得 た15例22関
α 角,β
角,δ
前
節 につ いて 検 討 し,
角 に つ い て は,術
測 し得 た20例31関
益
後 のX線
清
文
るが こ れ が明 らか に 変 形 して い る もの を変 形 と
し た.
上計
節 に つ い て 検 討 し た(図1).
X線 学 的 な経 年的 変化 につ いては,従 来当教
室 で計 測 して きた十 川 らの上 記計 測値 の みで は
3)
膝
蓋
骨
膝 蓋骨 に つ いては膝 蓋 骨軸射 像 に て主 に外側 変
位 と,大 腿 骨 モ ー ル ドとの 接 触 面 の 変 化 に つ い
て 観 察 し た.
評価 困 難 と思 われ る大腿 骨側 の変 化 を術 前 よ り
結
追 跡時 まで以下 の3つ の コンパー トメン トに分
け経 時 的 にX線 観察 を行 った。
1)
1.
大 腿 骨 側
臨 床 評 価
1)
モ ー ル ドの 前 方 開 き の 経 過,大
腿骨 顆部 の骨
33膝 の 三 大 学 評 価 に よ る臨 床 成 績
術 前 総 合 点 数 は39.6±15.7点
吸 収,モ ー ル ドの 沈 下 現 象 を 経 時 的 に観 察 し た.
71.2±18.3点,術
モ ー ル ドの 前 方 開 きはMark
Ⅱ 型 で は,大 腿 骨
果
で,術
後10年63.8±19.0点
後5年
で
で,最
終
調 査 時 は62.2±17.9点
で あ っ た.術
モ ー ル ドの 前 面 に 大 腿 骨 前 面 と接 触 す る た め の
較 す る と術 後5年,最
終調 査 時の総 合 点が有 意
凹 凸 が 形 成 さ れ て い る が,こ
に術 後 の 成 績 が(P<0.001)上
い な い も の で,側
面X線
れ が 骨 と接 触 し て
に よ っ て確 認 し た .モ
ル ドの 沈 下 現 象 は 正 面X線
で,モ
側 に 大 腿 骨 両 顆 が 観 察 で き,そ
ー ル ドの 両
の 先 端 か らモ ー
ル ドが 移 動 し て い く像 と し て と ら え た.側
線 上 で は,大
面X
腿 骨 の 両 顆 部 が 後 方 に 隆 起 し始 め
る 点(C点)あ
る い はBlumensaat
lineを 参 考
に して 観 察 し た(図2).
2)
脛
骨
化 像,脛
骨 上 端 の 骨 吸 収 お よ び骨 硬
骨 板 の 沈 下 現 象 を観 察 した.脛
変 形 は 脛 骨 板 が 単 純X線
回 っ て い た.術
と比 較 して 術 後10年 と最 終 調 査 時 が 有 意
に 低 下 して い た(P<0.01,P<0.001).術
骨板 の
で透 亮像 として示 され
表1 対 象症 例21例33関 節(男 性3例,女
後5
年 で80点 以 上 の 関 節 は16関 節(48%)で,60点
未 満 は9関
節(27%)で
は80点 以 上 は7関
(42%)で
あ った ものが調査 時 に
節(21%),60点
未 満 は14関 節
あ っ た(図3)。
下 肢 置 換 関 節 数 の 分 析 で は,術
側
脛 骨 板 の 変 形,脛
後5年
前 点 数 と比
前 よ り片 側
TKRの
み の 総 合 点 が 有 意 に 高 い.両
TKRあ
る い は 片 側 の み のTKRの
後5年
で は3関
節,4関
側 のみ の
成 績 は,術
節 置 換 の 成 績 よ り高 い
傾 向 に あ っ た.調 査 時,片
側TKRが
有意 差 を
性18例)
表2 下 肢 関 節 置換 術
γ
α
大腿 脛 骨 角 δ
脛 骨 板 内側 角 β
大 腿 モー ル ド外 側 角
脛 骨板 後 方 傾 斜 角
図1 X線 学 的計 測 法(文 献4)よ
り引用)
岡大 式 人工 膝 関節 置換 術 の長期 成 績 も っ て4関
節,3関
節 置 換 よ り も成 績 は よか っ
た(P<0.05)(図4).
2)
は 関 節 強 直 に な っ て お り,ま た,90° 以
上 の 可 動 域 が 保 た れ た の は15関 節(55%)で
可 動域 の 変化
あ
っ た(図5).
術 前 の 可 動 域 の 平 均 は68.5° ±34.7°で,術 後5
年 で は74.7°±28.4°,最 終 調 査 時 は73.6°±33.3°
で あ っ た.可 動 域 は術 後5年
う ち1例
825
で 改 善 して い る が,
最 終 調 査 時 に は 平 均1° 悪 くな っ て い た.30°以 下
の 可 動 域 とな っ た 症 例 が6例(18%)に
み られ,
3)
屈 曲拘 縮 につ いて
術 前 の 平 均 屈 曲 拘 縮 は30°±23°,最終 調 査 時 の
平 均 は1° ±2° で,術 前 と比 較 し て 有 意 の 改 善 が
認 め ら れ た(P<0.001)(図5).
4)
疼 痛 につ いて
術 前 の 疼 痛 点 数 は 平 均9.4±5.3点
で,術
後5
年 で26.0±6.7点,術
後10年 で22.6±9.0点,調
査 時 に は22.4±8.9点
で あ っ た.疼 痛 点 数 か ら 見
る と,術 前 に 比 較 し て術 後5年,調
査 時 の点数
が 有 意 に 良 好 で あ っ た(P<0.001).調
査 時 は5
年 時 に 比 し て 有 意 に 低 下 して い た(P<0.001)
(図6).
5)
関節不安 定 性 につ いて
術 後 の 不 安 定 性 に 比較 して,調 査 時 に5° 以 上
の 側 方 不 安 定 性 が 増 加 した症 例 は6例7関
%)で
6)
歩行能 力 につ いて
21症 例 の 歩 行 能 力 は,三
大学 評価 歩行能 力 点
数 で 術 前 平 均 点 は6.7±4.4点,術
図2 大 腿 骨 側 のX線 学 的 観 察
節(21
あ っ た.
12.0±6.0点,術
図3 三 大 学 試案 に よ る総 合 点数 の経 過
後5年
後10年 で10.0±5.6点,調
で
査時
826 彌
益
清
文
*
4関 節 置 換_??_
P<0.05
両膝置換_??_
3関 節置 換_??_
片側膝置換_??_
片側 膝+片 側 股置 換_??_
図4 置換 関 節数 別 の 臨 床 成績(平 均 点)
屈曲拘縮
関節可 動域
5年
調査時
5年
図5 可 動 域,屈 曲拘縮 の経過
に は8.9±5.7点
と な っ て い た.調 査 時 は 術 前 と
比 較 し て 有 意 に 歩 行 能 力 の 改 善 を 認 め た(P<
0.05)(図6).
調査時
岡大 式人工 膝 関節 置 換術 の長期 成 績 疼痛
827
歩行能 力
*
***
P<0.05
P<0 .001
図6 疼 痛,歩 行 能 力点 数 の経 過
7)
移動 動 作に つ いて
2)
術 前 の 移 動 動 作 で は 実 用 歩 行 が18例(86%)
で,こ の な か で も3dの
屋 内 の み 可 能 が8症
α角
術 後 は88.0° ±3.0°,調 査 時 に は86.7°±3.7°で
例 と
あ っ た が,有
意 に 減 少 を 認 め た(P<0.05).85°
多 か っ たが,最 終 調 査 時 に は 実 用 歩 行 が19例(90
以 下 に 設 置 さ れ た の は1関
節(3.2%)で,95°
%)で,3b,3cが
上 に 設 置 さ れ た も の は1関
節 で あ っ た.5° 以 上
術 前3例
増 加 し て い た.Class
で あ っ た が,調
て い た.置
査 時 に は2例
4は
に減少 し
換 関 節 数 の 分 類 で は,片 側 の み の4
増 加 例 は1関
節,5° 以 上 減 少 し た の は4関
以
節で
あ っ た(図8).
例 は調 査 時 の 移 動 動 作 は 術 前 の そ れ と 同 様 か1
3)
段 階 改 善 し た.両 膝 ま た は 片 膝 と片 側THRを
術 後86.0° ±4.4°で あ っ た も の が,調 査 時 に は
行 っ た7例
は,1例
が 認 め ら れ た.3関
を 除 き 同 様 か1段
節 置 換 の3例
1段 階 改 善 し た の に 比 し,残
Class
階 の改善
の う ち1例
りの2例
は
は3dが
4の 非 実 用 性 歩 行 と寝 た き り とな っ た(図
7).
β 角
86.7°±4.7°で,平 均 で は 調 査 時 と差 は な か っ た
が,術 後 と比 し て調 査 時 に5° 以 上 増 加 した 例 は
3関 節,減
4)
少 した の は2関
節 で あ っ た(図9).
δ角
術 後84.7° ±3.7°が,調 査 時 に は84.2°±5.1°で,
2.
X線 学 的 計 測
1)
有 意 な 差 は 認 め られ な か っ た.ま
て5° 以 上 増 加 し た例 は3関
γ角
平均 γ
角 は 術 前 が177.0° ±10.0°,術
た 術 後 と比 し
節,減 少 し た の は3
後 が
関 節 で あ っ た.11° 減 少 した 症 例 は,大 腿 骨 側 の
175.4°±4.8°,調 査 時 に は176.8° ±5.2°で あ ま り
ゆ るみ お よび 疼 痛 が 主 因 で再 置 換 術 を受 け た(図
差 は み られ な か っ た.統
9).
計 学 的 に も術 後 と調 査
時 に は 有 意 差 は な か っ た.術 後180°以 上 の 症 例 は
5)
経 年 的X線
7関 節 あ り調 査 時 に5° 以 上 内 反 が 増 強 した もの
a)
大 腿 骨 側
は1関
節 で あ っ た.ま た,術 後170°以 下 の 症 例 は
2関 節 あ り,そ れ ぞ れ 調 査 時 に10°,8°増 加 した.
変 化(表3)
15関 節 に お い て 術 後X線
き を認 め た が,残
上 モ ー ル ド前 面 の 開
り16関 節 は モ ー ル ドの 開 きは
術 後 と比 して5° 以 上 増 加 した 関 節 は5関 節,5°
認 め られ ず,大
以 上 減 少 は1関
て い た.経 年 的 観 察 で は,16関 節 中4関 節 が モ
ー ル ドの 前 方 開 き を生 じ
,残 りの12関 節 に は 変
節 で あ っ た(図8).
腿 骨 前 面 と良 好 な 接 触 面 を保 っ
828 彌
益
清
文
症 例数
図7 移 動 動 作の 分 類 の経 過(文 献10)よ り引用)
脛 骨 板 内 側 角(α
大 腿 脛 骨 角(γ 角)
角)
*
P<0.05
図8 大腿 脛 骨角,脛 骨 内 側角 の 経過
化 が 認 め ら れ な か っ た.大 腿 骨 顆 部 の 骨 吸 収 は,
め られ た.平
前 方 が 開 い て い た15関 節 中10関 節(67%)に
で 骨 吸 収 が 認 め られ る よ うに な っ て い た.ま た,
認
均5.8年(最
短2年
よ り最 長13年)
岡大式 人工 膝関 節 置換術 の 長期 成績 脛 骨 板 後 方 傾 斜 角(β
角)
829
大 腿 モ ー ル ド角(δ
角)
図9 脛 骨 板 後 方傾 斜 角,大 腿 モー ル ド角 の経 過
表3 各 コン ポー ネ ン トのX線 上 の変 化
モ ー ル ドの 前 方 開 き の 認 め ら れ な か っ た16関 節
中2関
節(19%)に
骨 吸 収 を認 め そ れ ぞ れ3年
と8年 に 生 じて い た(図10).
b)
脛
骨
図10 大腿 骨 側 モー ル ドの術 後 設 置状 態 と調 査 時の
側
骨吸 収
脛 骨 側 で 明 らか な 骨 変 化(骨
で き た の は,1関
板 はX線
節(3%)の
確認
み で あ る.脛
骨
上 透 亮 像 と し確 認 さ れ るが 明 ら か に 変
形 を き た して い る像 が1関
た,術
硬 化 像)を
節 に 認 め られ た.ま
直 後 脛 骨 板 の 浮 き上 が り を2関 節 に 認 め
た が,こ
%)に
認 め た.こ
れ らの う ち2関 節 は,大
腿側
モ ー ル ドの 外 側 縁 と膝 蓋 骨 中央 が 接 触 し,膝 蓋
骨 の 骨 吸 収 が 認 め ら れ た.ま
た,1関
節 に膝 蓋
骨 内 に 骨 嚢 胞 を 認 め た.
れ らは調査 時 脛骨板 接 触面 に骨硬 化像
症
例
供
覧
を 認 め 新 た な ゆ る み に は 至 っ て い な か っ た.
c)
膝
蓋
骨
膝 蓋 骨 軸 射 像 で 明 らか な外 側 変 位 を4関 節(13
症 例1 45歳,女
性, Classical RA(図11)
16歳 時 発 症,1968年
に両膝 お よび両肘 の 滑膜
830 彌
益
術前
清
文
5年 後
調 査時
術 後11年5ヵ
図11 45歳 女 性 Classical
図12 症 例2 を受 け,ま
膝)
5年 後
術前
切 除,1972,1973年
RA(右
調査時
術後10年
50歳 女 性 Classical
それ ぞれ両 手関節 滑 膜切 除
た1974年 左 膝 は 岡 大C型TKRを
受
月
TKRを
RA(左
膝)
行 っ た.術 後5年
動 域 は0∼115° で,術
で の 総 合 点 は94点,可
後11年 の 調 査 時 総 合 点89
け て い る.術 前 右 膝 可 動 域 は30∼50° で 臨 床 総 合
点,可 動 域 は0∼115° で,杖 な しで 日常 生 活 が 可
点50点 で あ っ た.1979年6月13日
能 で あ る.X線
Ⅱ 型TKRを
成 術,左
関 節,股
行 な い,現
岡大 式Mark
在 までに右足 の関 節形
た が,大
肘 人 工 関 節 置 換 術 を 受 け て い るが,足
い.
関 節 は 比 較 的 良 好 で あ る.調 査 時 杖 な
症 例3 し歩 行500m以
上 可 能 で あ り,右 膝 の 総 合 点 は89
学 的に は脛骨 板 の 内反が 増強 し
腿 骨 側 モ ー ル ドに は 変 化 は 認 め られ な
54歳,女
性,Classical
1971年 多 関 節 痛 に て発 症 し,5年
RA(図13)
後 のTKR術
点,関 節 可 動 域 は0∼110° で あ る.現 在 も金 療 法,
前 は 歩 行 不 能 で 臨 床 総 合 点 は10点,両
ス テ ロ イ ド使 用 中 で あ る が,X線
動 域90∼110° と高 度 の 屈 曲 拘 縮 を認 め た.1976年
学 的 に術後 よ
りほ と ん ど変 化 を 認 め な い 症 例 で あ る.
5月 右 膝,1976年6月
症 例2 型TKRを
50歳,女
性,Classical
RA(図12)
1965年 発 症 し,術 前 左 膝 臨 床 総 合 点 は64点 で
1kmは
歩 行 可 能 で あ った.ま た 可 動 域 は10∼105°
で あ っ た.1980年6月4日
岡 大 式Mark
Ⅱ型
に 左 膝 に 対 し てMark
施 行 し た.臨
は 右 膝57点,左
膝 と も可
床 総 合 点 は 術 後5年
Ⅱ
で
膝62点 で 調 査 時 術 後12年 で 両 膝
と も63点 で あ っ た.可 動 域 は0∼95° で,屋 内 生
活 は松 葉 杖 で 行 な っ て い る.X線
学 的 に は,術
岡大 式 人工膝 関 節置 換術 の長期 成 績 術前
5年 後
図13 症 例3 831
調査 時
術 後12年10ヵ
54歳 女 性 Classical
RA(両
月
膝)
左膝 再置換前
5年 後
調 査 時 京 セ ラKC-1
術 後13年3ヵ
図14 症 例4 前 の 高 度 屈 曲 拘 縮 の た め か 術 後X線
58歳 で 大 腿 骨,
男 性 Classical
RA(両
月 再 置換後
膝)
の 内側 前 方 へ の 沈 下 が 認 め ら れ た.左 膝 は 脛 骨
脛 骨 と も骨 切 りが 大 き く大 腿 骨 側 モ ー ル ドの 前
板 の 計 測 上 の 変 化 は 認 め られ ず,δ
面 が 開 き ま た 大 腿 骨 顆 部 の 残 り も少 な い,大
認 め た.
腿
骨 側 の 骨 吸 収 が 徐 々 に 進 ん で い る 症 例 で あ る.
右 膝 の α 角 の 減 少,β
角 の 増 加 が み られ 脛 骨 板
症 例4 1953年
58歳,男
性,Classical
発 症 し,術
角 の減 少 を
RA(図14)
前 屋 内 の み 歩 行 可 能,可
動
832 彌
益
域 は 右10∼90°(約30° の 外 反 変 形)左30∼90° で23
清
文
(調査 期 間 はOAも
含 め て 平 均5年4ヵ
月)は
年 後 の 術 前 総 合 点 は 右 膝38点 左 膝43点 で あ った.
術 前41.8点
で 調 査 時 に48.9点
と,並 木 ら8)は23例
1977年6月
34関 節(調
査 期 間 平 均6年4ヵ
月)で 調 査 時 に
い,続
右 膝 に 対 し てMark
Ⅱ 型TKRを
い て 左 側 も1978年2月3日
い てTKRを
行 っ た.X線
後1年6ヵ
行
に 同 器 種 を用
学 的 に は,右
側 は術
月 で既 に 大 腿 骨 側 の 骨 吸 収 が 明 ら か
で あ る.左 側 は術 後5年
収 を 認 め,7年
時 に大腿 骨顆 部 の骨 吸
後 よ りは 外 反 変 形 も進 み,術
199例312関
最 長7年
と報 告 して い る.ま た,山 本 ら3)は
節(RAは148例238関
節 で最 短2年,
の 調 査 期 間)のMark
成 績 評 価 を行 い,83%に
Ⅱ TKRの
臨床
成 績 優 で あ っ た と報 告
し て い る.本 研 究 に お け るRAの
みの調 査時 成
11年 で 大 腿 骨 側 の ゆ る み と外 反 変 形 及 び 疼 痛 の
績 は優 の 症 例 は5関
か な り低 下 し
た め 京 セ ラKC-1型
て い る.し
脛 骨 側 はhigh
HDP)の
後
55.0±14.4点
に よ る再 置 換 術 を受 け た.
density
polyethylene(以
磨 耗 は 認 め ら れ た が,脛
下
骨 板-骨
ゆ るみ は 認 め られ な か っ た.計 測 上,左
角 の 増 加 が 認 め ら れ た.再
点 は 右 膝59点,左
間の
側の α
置換術 前 の臨床 総合
膝51点 で あ る.右 側 に 対 し て
も再 置 換 術 が 考 慮 され て い る.
か し,直 接 検 診 し得 た21例 中 現 在 も
ス テ ロ イ ド長 期 投 与 を9例(43%),抗RA剤
投 与 も7例(33%)継
1.
換 術 の み で す ん で い る症 例 は わ ず か4例
こ とか ら考 え る と,こ
察
だ い に 低 下 す るが,10年
症
が 多関 節 が 侵 され る疾 患 で あ り,三 大 学 評 価 に
よ る臨 床 成 績 で は,RA自
体 の病 勢や 多関節特
に股関 節や 足 関節 な どの 多関節 障害 が その評価
に 影 響 しや す い.従 っ て,TKRの
を 調 査 す る 場 合 は,多
術 後長期 成績
関節 の罹 患 につ いての検
本 研 究 の よ う にRAに
限 っ て の も の は な い.RA
とOAを
混 合 した 成 績 で あ る が,岡
Ⅱ 型TKRの
そ れ と比 較 し て み る と,Insall
関 節 置 換 術 の 臨 床 成 績 分 析 で は,片
型 の35関 節(87.5%)は
最 も良 好 で,次
た と して い る.RAの
従 っ て,多
関 節 障 害 に 伴 う 臨 床 成 績 がTKR後
の 評 価 に 大 き く影 響 して い る と思 わ れ た.し
し,Mark
Ⅱ型TKRに
お い て は,10年
以上 の
い る.同 じTotal
bergら12)は
平 均9年
お り,表 面 置 換 型TKRの
優 は37関 節(34%),成
岡 大 式TKRの5年
10関 節(そ
型15症 例19関 節(調
以 上 の 成 績 は,Mark
査 期 間 平 均6年1ヵ
は 術 前 総 合 点 は34.9点 が 調 査 時67.2点
60点 未 満 の 成 績 不 良 例 は6関
Ⅱ
月)で
と な り,
節 のみ
を使 用 し たGold
の 調 査 期 間 で82症 例109関
節)に
つ い て 調 査 し,成 績
績 良 は34関 節(30%)で,
の うちRAは4関
節)が
再 置換術 を
受 け て い る.可 動 域 は 調 査 時 平 均95°で,89%の
症 例 が90°以 上 の 可 動 域 を得 て い る.Laskinら13)
は 唯 一10年 以 上 の 成 績 をRAに
い るが,61例
節(30%)で,可
満 足 な臨 床 成 績 で あ っ
適 応 で は なか っ た と述 べ て
節(RAは30例43関
る と思 わ れ る.
Condylar
成 績 不 良 例 は1関
Condylar型
長 期 に わ た り比 較 的 安 定 し た 成 績 が 獲 得 され て
目的 は 十 分 達 して い
節)はTotal
で あ り,こ の 症 例 は 術 前 に 膝 蓋 骨 摘 出術 を受 け
て お り元 来TKRの
か
大 式Mark
長 期 成 績 を 骨 セ メ ン トを 用 い た 表
面 置 換 型TKRの
側TKRが
節 置 換 の 順 に 低 下 傾 向 が 見 ら れ た.
以上 に お いて もか な り
長 期 成 績 の 報 告 を見 る と,
討 し た.多
4関 節,3関
か し5年 以 降 は し
これ まで のTKRの
ら11)(40例 でRAは5関
例,
査期 間 で
の 成 績 を 維 持 して い る.
討 も必 須 で あ り,本 研 究 は そ れ らに つ い て も検
に 両 側TKR症
である
時 の 成 績 は安 定 して お り他 報 告 に
比 して 劣 る も の で は な い.し
お け る下 肢 機 能 を 評 価 す る場 合,本
た下
の成績 低下 は本疾 患の 自
然 経 過 と して と ら え ざ る を え な い.調
臨 床 成績 につ いて
RAに
続 中 で あ る こ と,ま
肢 の 関 節 置 換 術 が こ こ10年 に わ た っ て 片 側 膝 置
み れ ば,5年
考
節(15%)と
つ いて報 告 して
に つ い て 優 と良 を合 わ せ て76%で
動 域 は 術 前66.1°が 調 査 時76.1° と報 告 さ れ て い
あ っ た と して い る.ま た 平 均 可 動 域 は96°で,再
る2).平 野 ら6)は同 器 種 に お け る31例48関
置 換 術 を要 し た症 例 は17例19関
査 期 間 平 均5年4ヵ
月)の
最 終 調 査 時 は70.2点
と,山
節(調
口 ら7)は6例8関
節 と して い る.
Wrightら14)はKinematic型TKRの147例192
術 前 総 合 点33.3点,
節
関 節(RAは96関
節)の5年
か ら9年
の調査 期
岡大式 人工 膝 関節 置換術 の長期 成績 間 で,RAの
み の 成 績 優 は50%良
は33%で
あ り,
可 動 域 は 術 前 平 均106°が109°と な った と報 告 して
い る.
Condylar型,Kinematic型
査 時 成 績 は優 良 を加 え る と60∼80%と
え る.ま
た,可
題 点 は,術
腿骨 顆間 窩 の ライ
面 と モ ー ル ドの 間 に 間 隙 が 生 じ モ ー ル ドの 沈 下
良好 とい
を 生 ず る もの と,正 面X線 像 で 大 腿 骨 顆 部 で モ
ー ル ドよ りは み 出 して い る 部 分 と モ ー ル ドの 間
Ⅱ 型TKRの
問
後 の 除 痛 に つ い て は 十 分 長 期 に維 持
さ れ て い る が,可
動 域 お よび 歩行能 力 の改善 は
こ れ ら の 報 告 に 比 べ る と低 い .
に 骨 吸 収 が 経 年 的 に 観 察 で き る もの の2つ
る.ま
ず,大
腿 骨 顆 部(後
方)が
があ
骨 吸 収 を起 こ
し,そ れ に つ れ て 大 腿 骨 下 端 が 骨 吸 収 を起 こ し,
モ ー ル ドが 前 方 近 位 に 向 か っ て転 位 す る 形 を と
X線 学 的 変 化
(1)
大 腿 骨 側 側 面X線 像 で,大
ともに調
動 域 も 本 研 究 の 長 期 成 績 を上 回
っ て い る.臨 床 成 績 上 のMark
1)
(3) 大 腿 骨 顆 部 の 骨 吸 収 と モー ル ドの 沈 下
ン を参 考 に 観 察 す る と,大 腿 骨 前 面 あ る い は 後
Total
2.
833
る もの が 多 い(36%).こ
れ は1つ
に は大 腿骨 モ
大腿 骨側 に つ いて
ー ル ドの 固 定 性 が 悪 い た め
大 腿 骨 側 モ ー ル ドの 設 置 に つ い て
が ゆ る み,骨 吸 収 が お こ っ た もの と考 え ら れ る.
術 後 の δ角 は84.7°±3.7°であ り,岡 大 式Mark
Ⅱ 型TKRは
Total Condylar型
大 腿 骨 側 の ア ラ イ メ ン トガ イ ドに
,膝 屈 曲 で モー ル ド
で,Kingら15)は
現在 の可動
域 で は 大 腿 骨 側 の ゆ る み は 少 な い が,可
動域 の
通 常5° 外 反 の プ レー トを挿 入 して 骨 切 りを行 な
増 加 に つ れ て そ の ス ト レ ス に よ り大 腿 骨 側 の ゆ
うが,ほ
るみ は 増 加 す るの で は な い か との 報 告 を して い
ぼ 術 式 ど お りに 設 定 さ れ て い た.こ
れ
は 調 査 時 に 有 意 に 減 少 は きた さ ず 設 置 角 度 は安
る.Mark
定 し て い た.5° 以 上 δ角 が 増 減 し た6例(18%)
ほ ど大 き く な い た め,モ
に つ い て は,矢
で か つ 大 腿 骨 顆 部 が 十 分 に 残 っ て い る例 で は,
状 面 で の 変 化 の 方 が 大 き い と考
え た.
Ⅱ型TKRで
は 術 後 の 屈 曲角 度 は さ
ー ル ドの 設 置 が 理 想 的
比 較 的 ゆ る み が ゆ っ く りお こ る も の と考 え られ
(2) モ ー ル ドの 前 方 開 き
る.モ ー ル ドが 大 腿 骨 前 面 に 食 い 込 む 例 は1関
X線 上 大 腿 骨 側 モ ー ル ド裏 面 が 大 腿 骨 前 面 に
節 に 認 め られ た が,そ
接 触 して い な い の は,モ
ー ル ドが 術 中 後 方 回転
位 で 設 置 さ れ て い る場 合 も あ る が,大
の 後 調 査 時 ま で変 化 は な
か っ た.
腿 骨の 前
2)
後 比 に 比 して モ ー ル ドが 大 き く後 方 に 回 転 移 動
(1)
す る も の も あ る.他
脛 骨 上 端 の 骨 切 り角 度 に つ い て は 議 論 の 多 い
方,屈
曲拘縮 の解 離 が十分
脛 骨 側 につ い て
脛骨板 の 設置 につ いて
で な か っ た り大 腿 骨 顆 部 を切 りす ぎ た 場 合(大
と こ ろ で あ るが,本 研 究 の 症 例 で は α 角 は 術 後
腿 骨 顆 部 の 骨 欠 損 を 十 分 補 填 で きず),モ ー ル ド
88.0°±3.0。で,Dorrら16)の
はmicromovementを
角 度 は 脛 骨 骨 軸 に 直 角 に そ っ た もの に な って い
き た し骨 吸 収 と と もに モ
勧 め る前 額 面 骨 切 り
ー ル ドの 移 動 を生 ず る もの と考 え ら れ る.X線
る.次
学 的 に モ ー ル ドが 後 方 に 回転 して,モ
方 傾 斜 角 に設 定 さ れ て い る が,Total
ー ル ドの
開 きは 大 き く な り,成 績 悪 化 と な る と考 え られ
る.逆
に モ ー ル ド裏 面 が 大 腿 骨 と接 触 し て い る
もの で は 比 較 的 安 定 し て い る.こ
モ ー ル ドの ゆ るみ に つ れ て,大
骨 下 端 の 骨 吸 収 が 進 み,大
沈 下 し た も の もあ る.し
動 き に つ い て は,術
う した 例 で も
腿 骨 顆 部 と大 腿
腿骨 軸 に ほぼ平行 に
か し,こ の モ ー ル ドの
後 の全体 としての膝 関節 内
に β 角 は術 後86.0° ±4.4°と平 均4° の 後
Condylar
型 に 推 奨 され て い る5° ∼10°の 後 方 傾 斜 角 と比 べ
る と少 な い.Mark
単 に2本
Ⅱ型TKRで
は,脛
骨板 を
の ス テ イ プ ル の み で 脛 骨 上 端 骨 切 り面
に 設 置 し,ま たHDP関
節面 も大 きな屈 曲角度
を 想 定 した もの で な い17).
(2) 脛 骨 板 の 沈 下
脛 骨 板 の 沈 下 は,術
前 に 骨 び らん が 高 度 に 認
外 反 ア ラ イ メ ン トに 直 接 的 な 影 響 は 少 な い.む
め られ る 場 合 や,骨
吸 収 に ス トレ ス骨 折 を合 併
し ろ,大 腿 骨 あ る い は脛 骨 側 の 骨 吸 収 の 結 果 と
し た 場 合,術
し て の 関 節 の ゆ る み に よ る と こ ろ が 大 きい.
あ っ た り,ま た は 術 中 の 軟 部 組 織 解 離 が 不 十 分
前 に 亜 脱 臼,高
度 屈 曲 拘 縮 な どが
に よ る脛 骨 板 内 反 位 設 置 や,過
大 な脛 骨 の 骨 切
834 彌
益
り等 の 手 術 手 技 上 の 問 題 が あ り,α,β 角 の 経 時
的 なX線
(3)
計 測 よ り検 討 し得 た.
Ⅱ 型TKRで
て い る が,そ
RAに
文
3.
Mark
Mark
骨硬 化像 等 の骨 変化
Mark
清
Ⅱ 型TKRの
Ⅱ 型TKRで
ゆ るみ につ いて
は,横
山4)や 山 本 ら3)の報
告 に よ る と大 腿 骨 側 の 沈 下 あ る い は ゆ る み が 多
は 脛 骨 板 はHDPで
でき
の 直 下 の 骨 硬 化 像 は 少 な く,特 に
お い て は 認 め に くい.骨
変 化 に つ い て,
い との 意 見 が 述 べ られ て い る が,詳
さ れ て い な い.セ
し い分 析 は
メ ン トレ ス 型 のTKRの
み の 定 義 と し て は,大
ゆる
腿 骨 側 モー ル ドあ る い は
十 川4)は 骨 硬 化 像 の あ る な し で分 析 し て い るが,
脛 骨 板 が 関 節 運 動 に 際 し安 定 し て お らず,人
本 研 究 で は 骨 硬 化 像 は1関
関 節 は 多 少 の 動 きが 起 こ る と思 わ れ る13,20).大腿
節 のみ に認 め られ て
い る に す ぎ ず,RAのMark
Ⅱ 型TKR術
後で
は 少 な い と い え る.
ト を使 用 す るHDP脛
年 のX線
側 面 像 で最 大 伸 展 位,最
大 屈 曲位 で
明 らか に モ ー ル ド と骨 との 接 触 面 が 変 化 す る.
骨 透 亮 像 に つ い て は,Vinceら18)は
す るTotal
骨 側 はX線
工
骨 板 に1本
骨 セ メン
の ポ ス トを有
て 示 さ れ る.横 山2)は大 腿 骨 側 にX線
Ⅰ)の10∼12
ゆ るみ を認 め た の は1関
Condylar型(Mark
経 過 と して130関 節 中 わず か1関
腿 骨 側 の ゆ る み を認 め,3関
脛 骨 側 で は ス ト レ ス撮 影 で の 脛 骨 板 の 動 き と し
節 に大
節(15%)で
われ
脛 骨側 は なか った と
腿骨
報 告 して い る.本 研 究 の 症 例 で も,再 置 換 術 を
側 の 内 反 位 挿 入 に よ りゆ る み を き た し再 置 換 を
受 け た 症 例 は2関 節 あ り,2関
節 と も大 腿 骨 モ
ー ル ドの 異 常 可 動 性 がX線 的 に 証 明 され て い た
.
要 し た と して い る.こ
は 脛 骨 板-骨
節 に 脛 骨,大
た もの は3関
上 明 らか に
節(5%)で,疑
の 症 例 中35関 節(54.7%)
接 触 面 に 骨 透 亮 像 を 認 め た が,3
関 節(4.3%)の
み に 骨 透 亮 像 の 長 さ と範 囲 が 増
しか し,両 症 例 と も脛 骨 側 は 良 く固 定 され て い
た.31関
節 のX線
経 過 で は や は り大 腿 骨 側 モ ー
加 し た に と ど ま り,骨 透 亮 像 の み で は ゆ る み の
ル ド と骨 間 の 変 化 が 多 く観 察 され,こ
れ は他 の
出 現 を 示 唆 しな い と述 べ て い る.Leeら19)も,
報 告 に 比 してMark
脛 骨 側 がHDPの
み のPosterior
らが 直 接 ゆ るみ に つ な が っ て い る わ け で は な い
dylar型TKRの
術 後7年
ト-骨 接 触 面 にOA症
Cruciate
の 追 跡 で,骨
例 よ りRA症
Con
セ メン
例により
高 率 に 透 亮 像 を 認 め て い る.こ れ はRA症
例 の
が,大
Ⅱ型 に 特 徴 的 で あ る.こ れ
腿 骨 顆 部 の 骨 が 温 存 さ れ モ ー ル ドが 十 分
にpress
fitし 固 定 さ れ て い な い と,Mark
海 綿 骨 の 質 が 悪 い か ら だ と結 論 して い る.本 研
る もの と思 わ れ る.つ
究 の 症 例 の うち 脛 骨 は2関
は 大 腿 骨 骨 切 りに 関 し て は,か
節 に術 後初 期 に脛骨
骨 切 り面 よ り浮 い て い た が,重
大 な障 害 に は 至
Ⅱ
型 で は 比 較 的 早 期 に モ ー ル ドの 沈 み 込 み が お こ
ま り,Mark
Ⅱ 型TKR
な り許 容 範 囲 は
狭 い と考 え た 方 が よ い とい え る.本 研 究 のX線
っ て い な い.周
辺 に骨 の新生 をみて数 年 で落 ち
観 察 で は 脛 骨 側 の 骨 変 化 は あ ま り認 め られ な か
着 い て お り,ゆ
る み に 至 っ た 症 例 は な い.
っ たが,大
に 脛 骨 板 内側 角 の 減 少 が 有 意 に 認 め ら れ,X線
(4) 脛 骨 板 の 変 形
1例 にX線
上 か ら も脛 骨 板HDPの
わ せ る も の が あ っ た が,直
変 形 を思
下 の骨 の変 化 は認め
られ な か っ た.
3)
膝蓋 骨 の変化
外 反 変 形 が 高 度 と な っ た4症 例 の 中 に,外 側
亜 脱 臼,脱
腿 骨 側 に骨 吸 収 が 認 め られ な い症 例
臼位 とな っ て い る もの もあ り,モ ー
上 で は は っ き り し な い 脛 骨 側 の 沈 下 を示 し た も
の が あ る.す
な わ ち,RAに
お い て はX線
上は
微 小 な 骨 吸 収 が 進 ん で お り,Mark
Ⅱ型 では大
腿 骨 側 の 骨 吸 収 が 明 瞭 で あ る が,脛
骨側 も内側
コ ンパ ー トメ ン トが 吸 収 され て,脛
骨板 が 内側
傾 斜 して い くも の もあ る と思 わ れ た.脛
骨板 に
ル ドの 外 側 縁 と膝 蓋 骨 が 直 接 接 触 して 膝 蓋 骨 の
つ い て は,HDPの
み で もか な り長 期 に わ た っ て
骨 吸 収(削
安 定 して い る.今
回 の 調 査 で は,脛
れ)が
お こ っ て い た.こ
れ らは 可 動
骨板 その も
域 も悪 い.ア ラ イ メ ン トが 比 較 的 良 好 な もの は,
の の 変 形,磨 耗 に つ い て は と ら え られ て い な い.
大 腿 骨 側 モ ー ル ドに そ っ て 膝 蓋 骨 関 節 面 に 骨 硬
Reillyら21)に よ る と脛 骨 板 へ の ス トレ ス は 実 験
化 像 を 来 た し,臨 床 上 は 問 題 は な か っ た.
的 にHDP単
独 の もの よ り,HDPに
金属 トレ
イ をっ け た も の が よ り 曲 げ 応 力 に 強 く,脛 骨 に
岡大 式 人工膝 関 節置 換術 の長期 成績 835
か か る 応 力 も均 一 に な る と い っ た 報 告 が 多 い.
最 近 で はApelら22)の
結
報 告 の よ うに 実 験 上 は 金 属
トレ イ と骨 間 に は シー ソ ー 現 象 に 伴 っ て 片 側 に
1.
岡 大 式Mark
は 引 張 り応 力 が 加 わ っ て くる こ と もい わ れ て い
期 経 過 例21例33関
る.中 心 に1本
X線 学 的 計 測,X線
み で も,厚
の ポ ス ト付 きのHDP脛
さ が13mmあ
骨板 の
れ ば 金 属 トレ イの もの と
2.
査 時62.2点
Collierら23)は 骨 セ メ ン トを使 用 し な い脛 骨 板 で
み のTKRの
磨 耗 の 程 度 はHDPと
4関 節 置 換,3関
HDPの
厚 さ に 依 存 して お り,大 腿 骨 側 モ ー ル ド
の 曲 率 と異 な る場 合 はHDPの
Ⅱ型TKR
の よ う にHDP脛
つ い て も,
骨 板 の み のTKRに
脛 骨 板 の 質 と形 状 が 改 善 さ れ れ ば,よ
X線 上,あ
3.
骨 吸 収 を認 め た.そ
骨 セ メ ン トを 用 い な い で
Ⅱの 大 腿 骨,脛
み,
節 置換 の順 に成 績は低 下 して
X線 の 経 年 的 変 化 で は,大
症 例 は19%に
(3%)に
腿 骨 側 モー ル
れ に 対 して 開 きの な か っ た
骨 吸 収 を認 め た,脛
骨 吸 収 を 認 め た.膝
明 ら か な外 側 偏 位 を4関
例 に つ い て よ り成 績 を安 定 な も の に す る
た め に は,Mark
成 績 が 最 も良 く,両 側TKRの
ドが 術 前 に 前 方 開 きの 認 め ら れ た症 例 の67%に
長 期 的 に 一 応 満 足 で き る 成 績 をお さめ て い るが,
RA症
で あ り,置 換 関 節 数 で 調 査 時 片 側 の
X線 の 計 測 値 で は α 角 が 調 査 時 に有 意 に
4.
り長 期 に
性 を残 し て い る.
Ⅱ型TKRは
的 変 化 に つ い て 分 析 した.
減 少 して い た.
る い は 臨 床 上 の 成 績 が 安 定 す る可 能
Mark
以上 の長
床成 績 お よび
い た.
厚 さが薄 い方 が
よ り磨 耗 し た と報 告 し て い る.Mark
Ⅱ 型TKRの10年
節 に つ い て,臨
臨 床 成 績 で は 総 合 点 術 前 平 均39.6点,調
比 して ゆ る み は変 わ ら な い と述 べ て い る.ま た,
大 腿 骨 側 モー ル ドの 曲率,
語
5.
骨 の各 部 品の
は,大
形 状 と初 期 固 定 の 方 法 の 改 善 が 必 要 で あ り,そ
RAに
骨 側 は1関
節
蓋骨 につ い ては
節(13%)に
対 す る 岡 大 式Mark
認 め た.
Ⅱ型TKRで
腿 骨 側 の モ ー ル ドの 動 き と骨 吸 収 が 特 徴
的 で あ っ た.
れ に よ り大 腿 骨 側 の 骨 吸 収 と モ ー ル ドの 沈 下,
脛 骨 板 の 内側 沈 下,そ
の結 果 としてア ライ メ ン
稿 を終 え るに あ た り,御 指 導,御 校 閲 を た まわ っ
トが くず れ て お こ る膝 蓋 大 腿 関 節 障 害 が 改 善 さ
た恩 師井 上
れ る もの と期 待 さ れ る.
に,御 協 力 い ただ い た岡 大 整形 外 科 リウマ チ グルー
一教 授 に 深 甚 の謝 意 を捧 げ ます とと も
プの 諸先 生 方 に 衷心 よ りお礼 申 し上 げ ます.
文
1)
井上
一,横
(1986)
2)
5,
山 良 樹,岩
田 芳 之,森
都 義 明,田
献
辺 剛 造:人
工 膝 関 節 置 換 術10年 以 上 経 過 例 か ら.日
関外誌
63-70.
横 山 良 樹:岡
大 式 人 工 膝 関 節 置 換 術5年
以 上 経 過 の 臨 床 成 績 に 関 す る 研 究.中
部 日本 整 災 誌
(1984)
27,
1133-1144.
3)
山 本 純 己,仲
節312関
節 の 成 績,日
4)
十 川 秀 夫:岡
5)
住 吉 正 行:岡
(1984)
27,
6)
平野
田 三 平,近
96,
関外誌
大 式Mark
(1988)
セ メ ン ト を使 用 し な い 人 工 膝 関 節 の 長 期 成 績-児
7,
玉 ・山 本 式 人 工 膝 関
47-53.
Ⅱ 人 工 膝 関 節 のX線
学 的 研 究-特
に 臨 床 成 績 と の 関 連 に つ い て-.岡
山 医誌
901-919.
大 式Mark
Ⅱ 人 工 膝 関 節 置 換 術 後 に お け る 膝 蓋 大 腿 関 節 痛 に つ い て.中 部 日 本 整 災 誌 (1984)
1120-1132.
明,丹
成 績 の 検 討,中
7)
藤 泰 紘:骨
山 口 寿 一,田
羽 忠 正,東
猛,村
澤
章,中
部 リ ウ マ チ (1990)
21,
97-99.
村 哲 男,森
条
人 工 膝 関 節 の 成 績 検 討.中
竹 財 三,千
束 福 司,小
部 日本整 災誌
(1986)
園
清:RA膝
谷 博 信,原
29,
800-801.
に 対 す るMark
聖,山
縣 茂 樹,服
Ⅱ型 人工 膝 関節 置 換 の術 後
部
奨:岡
大 式Mark
Ⅱ
836 8)
彌
並木
脩,藤
関外誌
9)
10)
(1986)
丹 羽 滋 郎,寺
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20)
守都
明,井
-5年
以 上 追 跡 例 の 検 討-
上
一,横
山 良 樹,金
.日
高 年 昌,山
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崎 広 一,田
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Clin Orthop Relat Res (1991) 273,
岡大 式 人工 膝 関節 置換 術 の長期 成績 Clinical
and
of
radiographic
cementless
follow-up
total
(Mark ‡U,
knee
Okayama
for
Over
ten
of
Orthopaedic
University
and
the
21 patients
implantation
10 years
chart
(33
of
and
4 months.
and
decreased
tion)
angles
to
sink
the
in
Okayama
62.2•}17.9
points
of
the
plate)
tibial
degrees
in
Mark ‡U
Mark ‡U
(at
36%
final
of
our
prosthesis
of
than
the
with
other
were
The
Clinical
the
axes
at
final
of
tibia
to
from
the
lack
component
of
on
were
of
few
total
age
the
or
femur
X-ray,
degrees
X-ray,
problems
a metal-backed
occurred
knee
ten
at
assessed
and
On
88.0•}3.0
Also
There
for
University
13 years
71.2•}18.3
examination.
examination).
types
the
was
were
angle
Okayama
followed
average
results
points
decreased
cases.
at the
period
4 months).
despite
femoral
arthritis
39.8•}15.7
Inoue)
introduced
Femorotibial
to
from
to
sinking
and
H.
follow-up
patients.
relation
improved
86.7•}3.7
The
16 years
was
School,
Japan
Prof.
average
universities.
proximally
Okayama
nent.
rheumatoid
The
3 male
three
assessment
setting
with
to
were
components
Clinical
prosthesis
device.
3 months
by
Mark ‡U
knees)
the
There
designed
femoral
to
Okayama
Surgery,
Medical
700,
(Director:
1975,
study
YAMASU
Okayama
In
Type)
follow-up
Kiyofumi
Okayama
replacement
Arthritis:
years
Department
study
University
Rheumatoid
837
relatively
replacement.
years
and
or
was
using
a knee
angle
were
the
(at
alpha
50 years
tibial
with
angle
tray
more
on
X-rays.
(one
of the
examina
components
tibial
and
follow-up),
postoperative
femoral
and
assessment
on
(five-year
after
(range,
of the
examined
points
more
7 months
surgery
setting
Hospital
appeared
components
the
frequently
tibial
of
compo
with
the