日本カレドニア学会 No.49 Japan Caledonia Society DECEMBER 2013 カレドニア(CAL E DONIA)はスコットランドの雅名 その国花は薊(あざみ) ミルトンとカレドニア ―ステュアート朝イングランドの内なる他者スコットランド― 圓月 「カレドニアのスコットランド人をイングランドの王 笏に結びつける」ということを 1603 年のジェイムズ 1 世即位によるステュアート朝体制が実現した、と 20 歳 をまだ迎えてもいないジョン・ミルトンは、ラテン詩 「11 月 5 日」の中で誇らしげに語っていた。11 月 5 日 と言えば、ガイ・フォークスの日として現在でもなお記 憶されているように、1605 年に火薬陰謀事件が事前に 発覚して、首謀者のガイ・フォークスが逮捕されたこと を祝うイングランドの国民的記念日である。カトリック 教徒の一味が議会を爆破して、ジェイムズ 1 世を議員と ともに殺害しようとしたテロ計画から、ステュアート朝 体制が無事に守られたことは、ジェイムズ 1 世の王冠の もとで同君連合となったイングランドとスコットランド が神に選ばれたプロテスタンティズムの盟主であること を広く世に示す事件であった。ステュアート朝イングラ ンドの申し子とも言うべき若きミルトンにとって、自分 に与えられた人生の使命は、スコットランド人と一心同 体となりながら、プロテスタンティズムの理念を貫徹す ることに他ならなかったのである。カレドニアのスコッ トランド人は、ステュアート朝イングランドの内なる他 者となったのである。 内なる他者に対する感情は、まず、その絶対的な理想 化から始まることが多い。プロテスタント連合の一員と してのミルトンの青春の自覚に確固たる現実性を与えた 人物は、スコットランド人家庭教師トマス・ヤングであっ た。ケンブリッジ大学に入学をした後も続くミルトンと ヤングの美しい師弟愛は、弟子が恩師に送ったラテン語 の書簡の中に鮮やかに記録されている。ヤングから贈ら れたヘブライ語の聖書を宝物として座右に置き、聖書の 中に神の言葉をひたむきに求めるプロテスタンティズム の王道を邁進しながら、古典語にも深い造詣を有する恩 師に自らの古典語修行の成果を認めてもらうために、恋 人に宛てるかのような情熱的な調子で、ミルトンが最大 級の敬意を込めて書き綴ったラテン語の書簡には、心か ら信頼できる師と出会い、その理想に少しでも近づこう とする優れた若者の幸福なひたむきさが横溢している。 1639 年、スコットランド宗教文化の根幹にある安息日 厳守主義の教義を見事なラテン語で論じ切った『主の日』 を出版し、イングランド内戦勃発後、ケンブリッジ大学 出身の俊英ピューリタンとともに、それぞれの名前の頭 文字を合成したスメクティムニュアスなる筆名のもとで、 勝博 イングランド教会の腐敗と堕落を鋭い舌鋒で批判するパ ンフレットを矢継ぎ早に世に問うヤングは、まだ無名の ミルトンにとって、彼の理想を体現する憧れの人物であっ た。卓越した恩師に導かれて、ミルトンがイングランド 教会の高位聖職者批判の論陣に参戦したことにいかなる 疑問の余地もない。ピューリタン叙事詩の比類なき傑作 『失楽園』のイングランド人作者ミルトンは、スコット ランド人ヤングの薫陶によって作られたのである。 理想化された内なる他者に対する感情は、その理想が 裏切られたと感じた瞬間、しばしば極めて激しい反発と 嫌悪に反転することになる。ミルトンの場合、理想が裏 切られたと感じた瞬間は、1643 年の『離婚の教義と規 律』を皮切りにして、彼が離婚の領域に筆を進めたとき に訪れた。ヤングを筆頭とするスメクティムニュアスが 唱導したイングランド教会批判に共鳴して、公的な文筆 活動を開始したミルトンは、教会制度の改革が結婚およ び家族制度の改革に展開すべきことを当然の論理的帰結 と確信していたのだが、ヤングが属するスコットランド の長老派教会は、ミルトンが主張した離婚の自由を不道 徳な逸脱として退け、嘲笑と黙殺で応じたのである。ミ ルトンにとって、1643 年に始まったウェストミンスター 会議で権力争いに暗躍しつつ、伝統的な結婚制度に対す る批判的思考を拒否するスコットランド長老派教会は、 自らが提唱した改革の理想を裏切った憎むべき敵として 映った。スコットランド長老派教会に対するミルトンの 怒りは、たとえば、「ソネット 11 番」(ソネット番号 はファウラー版に拠る)においては、彼の離婚論パンフ レット『四弦琴』(1645 年)の批判者がスコットラン ド長老派に特定された上で、コルキットやマクドネルな どのスコットランド人の非イングランド的固有名詞に対 する不快感が露骨に表明されて、スコットランドの他者 性が強調されている。その一方、「長老という新たな単 語は、聖職者という古い単語を略さずに書いたものにす ぎない」という有名な一節で終わる有尾ソネットでは、 スコットランド教会の長老制度がイングランド教会の高 位聖職者制度と本質的に同一であることが糾弾されてい る。内なる他者としてのスコットランドは、ミルトンの 内乱勃発以降の著作の中で、時には自文化の中に侵入し てくる異文化として、また、時には他者として排除しな ければならない自文化として、ステュアート朝イングラ ンド詩人ミルトンの血肉の一部となっているのである。 (同志社大学教授) 1 日本カレドニア学会 New sletter 第 49 号(2013 年 12 月) スコットランドで考えた「ガラパゴス化?」 した日本の英語教師 ◆2013 年度全国大会報告 笹島 2013 年度の大会・総会は、日本スコットランド協会 の協賛のもと、2013 年 10 月 5 日(土)に同志社大学 今出川キャンパス寒梅館 6 階会議室で開催された。開会 式では、櫻井雅人代表幹事、会場校の圓月勝博同志社大 学文学部長、日本スコットランド協会の中尾正史副代表 理事にご挨拶いただいた。続いて、圓月勝博氏が「ミル トンとカレドニア―スチュアート朝イングランドの内な る他者スコットランド」と題してご講演くださった。深 遠ながらもユーモアを交えたご講演に一同が魅了され、 大変に有意義であった。2013 年度総会の後、休憩を挟 んで、午後からは研究発表が行われた。平野真理子氏 (「ハワイにおける日系移民と女性性」)、岩瀬ひさみ 氏(「昔話 Kate Crackenuts をめぐって」)、木村俊幸 氏(「バーンズの詩における honesty について」)の 3 名の発表があり、質疑応答では活発な議論と意見交換が 行われた。東中稜代氏より閉会挨拶をいただき、大会・ 総会は終了した。 夕刻、京都平安ホテルで懇親会が催された。入江和子 氏の司会により、和やかな雰囲気の中、親交を深める良 い機会となった。 今年度の大会開催にあたり、関係者各位には多大なる ご協力をいただきました。深く感謝申し上げます。 (金津和美記) 茂 Stirling 大学での博士課程を 2013 年に終えた。スコッ トランドから言語を教える日本の英語教師の認知 (teacher cognition)を考えた。スコットランドで現代語 (modern languages)を教える教師の調査をもとに日本の 英語教育を教師の認知という面から探求してみた。なぜ Stirling 大学だったかというと理由は明確である。そこ に は 当 時 ス コ ッ ト ラ ン ド 言 語 セ ン タ ー ( the Scottish Centre for Information on Language Teaching and Research; SCILT, 現在は the Scottish National Centre for Languages)があったからであり、その活動とその活動の 中心にいた当時のセンター長の Richard Johnstone 氏に 興 味 が あ っ た 。 現 在 は 、 SCILT と し て グ ラ ス ゴ ー の Strathclyde 大学にセンターがある。活動内容もだいぶ 変わってしまった。それはこの 10 年間の英国全体の言 語教育事情を象徴するかのようだ。 スコットランドの言語教育事情がイングランドと違う ことは、日本からは見えにくい。教員養成や研修や教員 評価などのシステムが異なるし、Scottish Gaelic という 言語教育も推進している点が大きく違う。しかし、私が 最も興味を持ったのは、スコットランドの言語教師の考 え方である。フランス語やドイツ語の先生の授業を見て、 観点を決めてインタビューしたり、研修会にも参加した りした。一番興味深かったのが、アバディーンで見た Gaelic の イ マ ー ジ ョ ン 授 業 だ っ た 。 目 的 は Scottish Gaelic の保存である。10 人くらいの子供が生き生きと 先生とコミュニケーションしていたのには驚いた。ただ それは決してパフォーマンスではなく、ふつうのコミュ ニケーション活動である。教師の教え方は総じてシンプ ルというのが率直な印象だ。「英国は外国語教育に熱心 ではない」ということがよく言われるが、CEFR(ヨー ロ ッ パ 言 語 共 通 参 照 枠 ; the Common European Framework of Reference for Languages) に 忠 実 に努 力 し ている。 CILT は、イングランド(CILTUK)、ウェールズ(CILT Cymru)、北アイルランド(NICILT)にもあり、それぞれ が独立して活動しながら、ゆるやかに連携している。 CILTUK は特に予算が削られ悲劇的なことになっている ようだ。言語教育政策が下火となっていることが背景に あるのだろう。 SCILT を 9 月に久しぶりに訪問した。Stirling 大学を 去るには様々な理由があったようだが、結局は、スコッ トランドの言語教育政策の転換が大きい。一時は SCILT も風前の灯火となったが、訪問して驚いた。中国の孔子 学院と提携していたのである。スタッフはがらりと代わ り、馴染みは事務局長の Mandy さんだけだったが、活 気を取り戻していた。Mandy さんは私と昔話をして涙 ぐんでいた。わずか 2 時間程度の訪問だったので、正確 には活動を把握できなかったが、中国のパワーを感じた。 やはりしたたかに実利を追求するのだ。理想ばかり言っ ても現実は見なければいけない。スコットランドらしさ を 感 じ た 。 言 語 教 育 も そ う で あ る 。 Communicative Language Teaching に異議を唱える人はあまりいないが、 現実は様々である。スコットランドの言語教師もそれが 分かっているようだ。 本題に戻ろう。スコットランドの言語教師を鏡として 日本の英語教師を見てみると、日本にいるだけでは見え ないことが多く見えた。一言で言うと、ガラパゴス携帯 電話の発達と似ている。日本の中高の英語教師はおそら く世界で一番機能的に複雑な背景の中で教えているとい うのが、現時点での私の結論である。(埼玉医科大学) 圓月氏の講演内容については 1 面に抄録を掲載しました。 ◇総会報告 総会は、鵜野裕介氏の議長の下で、提案された議事は 質疑応答の後すべて承認された。人事案件に関しては、 佐藤猛郎氏、中村匡克氏、三原穂氏、川畑彰氏の幹事辞 任、および宮原牧子氏の幹事新任が認められた。中村、 三原、川畑、宮原の各氏から挨拶があった。これまで長 らく幹事を務められた方々にお礼とご慰労を申し上げた い。会計報告については学術奨励賞関係を別に報告した が、会計年度と事業年度のずれから会計報告の記載がわ かりにくくなっているので、今後検討する。なお、今年 度の学術奨励賞は受賞該当者がおられなかった。 開催校の同志社大学および準備にたずさわった方々、 出席者各位のおかげで無事に終了することができた。あ りがとうございました。(櫻井雅人記) 会費納入のお知らせ 学会費(5.000 円、学生会員は 3.000 円)を未納の方は、 郵便振替にて下記までお振り込み下さい。 郵便振替口座 00230-5-8328 日本カレドニア学会 (8328 は右詰めでご記入下さい) 事務局よりお送りした振替用紙をお使いになれば、振 り込み料を支払う必要はございません。 2 日本カレドニア学会 New sletter 第 49 号(2013 年 12 月) ◇研究発表要旨 部に関係があるものとして、ベルギーの「白いカロリー ヌ黒いカロリーヌ」、ATU720「ねずの木」、ATU711 「美しい娘と醜い娘の双子」を、後半部に関係があるも のとして ATU306「踊り破れた靴」、アイルランドと スコットランドの男の死体を寝ずの番をする娘の話を挙 げた。nuts は日本では「クルミ」と訳されているが、 スコットランドに広く自生し、神話・フォークロアでも 特殊な意味付けがある「ハシバミ(hazel)」であろうと考 察した。 (日本ケルト学会) ハワイにおける日系移民と女性性 平野 真理子 1987 年に発表された Jessica Kawasuna Saiki の処女 短編集、Once, A L otus Garden と 1991 年に発表され た第二短編集、From the L anai and Other Haw aii Stories の中の短編を取り上げながら、これまで論じられること がほとんどなかった第二次世界大戦前後の日系アメリカ 人二世女性とハワイの女性性について考察した。1941 年の真珠湾攻撃を境に、ハワイの日系人の立場は大きく 変わることになるが、日系二世男子はアメリカに忠誠を 誓うアメリカ兵として出兵し、自らのアイデンティティ を見出してゆく。一方この時代は、本土のアメリカ女性 やヨーロッパ女性と比較すると、日系二世女子にとって 自らのアイデンティティを確立するすべを持つことがで きなかった時代であった。しかし、静かに銃後の生活を 耐え抜いた彼女たちの存在こそが今日の豊かなハワイの 基盤を作ったのであり、ハワイの女性性の源となってい る。 (神戸海星女子学院大学) バ ー ン ズ の 詩 に お け るhonesty について 木村 本発表では、まず、バーンズの詩に顕著な「正直」 (honesty)という美徳の特質について、この美徳がバー ンズ自身の信条であるばかりでなく、彼は「正直」を 「自然」の縮図というべき人間の社会を結びつける絆と 考えていたこと、またバーンズが「正直」を称揚する背 景には、ゴールドスミスやマッケンジーの作品における のと同様、フランス文化にかぶれた上流階級の堕落に対 する痛烈な批判が見られること、などを明らかにした。 次にバーンズのいう「正直」は、同時期に進展しつつあっ た産業革命の論理と決して相容れるものではなく、「正 直」な心の持ち主が辿るべき運命が、バーンズ以降の、 ワーズワスなどの詩人たちの辿る運命と共通性をもって いることを述べ、締めくくりとして、この「正直」とい う古典的美徳はロマン派以降 19 世紀末にかけて詩の価 値を推し量る基準となった「誠実」(sincerity)と深い関 連性をもっていることなどを、自然観の変遷とからめて 論じた。(帝京大学) 昔話 Kate Crackernuts をめぐって 岩瀬 ひさみ スコットランドの昔話 Kate Crackernuts は、Andrew Lang が 、 ア ン ガ ス 地 方 の 読 者 か ら の 手 紙 に 基 づ き 1889 年 に L ongman’ s Magazine 誌 XIII の 連 載 ‘ At the Sign of the Ship’ に発表したものが初出である。Joseph Jacobs による再話がストーリーテリングのテキストと して広く流布していて、日本では「クルミわりのケイト」 というタイトルで知られている。この昔話の前半部は、 継母に魔法をかけられて羊の頭にされる王の娘の話で、 後半部は、その継母の実の娘が、義理の姉の魔法と、旅 に出て出会った王子の魔法を解く話となっている。前半 研究ファイル れる。摂取した人体内では、水に溶け、他の成分の消 化吸収を緩やかにするため、血糖値抑制やコレステロー ル値低減の効果が知られている。オートミールは、オー ツ麦の籾殻を脱穀した全粒を挽き割りにしたもので、 精白前の玄米同様、種子全体の栄養分が生かされてい る。その分、オートミール粥(ポリッジ)を作るには、 一晩浸水させ、長時間煮る必要があるが、クエーカー オーツ(蒸して押し延ばし乾燥させたロールドオーツ) の登場によって、調理時間が短縮され、アメリカでも 手軽で健康的な朝食メニューとして需要が伸びている。 スコットランドでは、古くから"they"の代名詞で呼 ばれるお馴染みの主食穀物で、ちょうど日本の朝粥と 煎餅のように、朝食のポリッジに始まり、軽食のオー トケーク、重湯のグルーエル、魚料理の衣(ヘリング スインオートミール)、スープやお菓子はもちろん、 名物料理ハギスにもつなぎの役目として欠かせない存 在である。前述のジョンソン博士の定義に対して、お 陰でイングランドには丈夫な馬が、スコットランドに は、屈強な人間が育まれたという反撃は、冷静に判断 し て も 的 を 射 た 指 摘 で あ ろ う 。 "Save your breath to cool your porridge." おしゃべりはこのあたりにして、 日ごとに寒さがつのる朝には、身も心も温まる一杯の ポリッジをどうぞお試しあれ。 (日本 CI 協会 リマ・クッキングスクール講師/料理 研究家) スコットランドとオーツ麦 野口 俊幸 結加 オーツ麦は、 「イングランドでは、一般に馬の餌とし て与えられ、スコットランドでは、人間を養う穀物」 として、サミュエル・ジョンソン博士の『英語辞典』 に定義されていることで名高い。実際、栽培作物とし てのオーツ麦は、世界の穀物生産中、食用より飼料や 緑肥としての需要が高い。日本にも、明治初期、北海 道開拓のために移入され、主に家畜の餌とされてきた。 中央アジア原産とされるイネ科カラスムギ属の一年草 で、約五千年前から作物として栽培されている。もと もと麦畑に生える雑草と認識されていた生命力の強さ から土壌への適応性が幅広く、次第に世界各地に伝播 し、スコットランドでも、紀元前鉄器時代から栽培さ れ始めた。冷涼湿潤な気候に適し、高緯度地方では、 ゆっくり成長して、実入りも多い。 成分は、米や小麦と比べ、蛋白質や油分が多く、ビ タミン・ミネラル類も豊富で、食物繊維は穀物中で最 も多く含まれている。特に水溶性食物繊維の大半を占 めるβグルカンは、種子内奥の胚乳部分に含まれ、植 物として厳しい環境下で生存するための栄養分といわ 3 日本カレドニア学会 New sletter 第 49 号(2013 年 12 月) ◆2014 年第 1 回研究会 における「十四日主義」―ステファヌス『ウィルフリッ ド伝』を中心に」、井川恵理氏(桜花学園大学)「ス コットランド、独立? ―2014 年 9 月国民投票前夜の UK」 問い合わせ:吉賀憲夫氏 日時:2014 年 1 月 25 日(土)15:00 ~ 16:30 会場:拓殖大学茗荷谷校舎(東京メトロ・丸の内線 茗荷谷駅下車 徒歩 5 分) 発表者:木原 翠氏(東京大学大学院人文社会系研究科 博士課程) 論題:「ジョージ・マクドナルドの The Portent におけ る伝承とロマンス」 要旨:ジョージ・マクドナルドの幻想文学作品の中でも 論じられることの少ない作品に、特にスコットランド を意識して書いた中編小説 The Portent(『前触れ』) がある。この作品では、"second sight"というハイラ ンド的モチーフが、聴覚的な要素を強調する"second hearing"に変換され、不吉なものを予兆する幻聴とし て取り入れられている。本発表では、伏線として重要 な"second hearing"が「ロマンス」という文学形式を 用いて描かれていることも踏まえ、この作品が作家活 動の初期における創作上のためらいと模索を示唆する 貴重なテクストであるという点について、論じてみた い。分析にあたっては前後の作品とも関連づけながら、 どのようにマクドナルドが The Portent において先祖 から代々伝わる物語を中心としたスコットランドの伝 承的な領域と、Duncan の生活という現実的な領域と を組み合わせ、小説を創ろうとしているのかについて、 考察したい。 ◆イギリス・ロマン派学会 ◇ 「四季談話会」(関東地区例会) 日時:2013 年 12 月 21 日(土)16:00 ~ 17:30 会場:大妻女子大学千代田キャンパス本館 10 階 英文大会議室 講師:田代尚路氏(大妻女子大学) 演題:「変転する風景―テニスン「イノーニー」を読む」 司会:及川和夫氏(早稲田大学) ◆エリザベス・ボウエン研究会 ジェイン・オースティン、ブロンテ姉妹、ヴァージニア・ ウルフに連なる作家と目されている女流作家エリザベス・ ボウエンの研究と紹介を主な目的として、「エリザベス・ ボウエン研究会」が発足しました。ボウエンの作品を原 文で精読することから始め、その鑑賞の成果をもとにし て、作家・作品の研究へ理解を深めていくことを主眼と しています。ボウエンの邦訳書は、中期の代表作『パリ の家』と『日ざかり』の入手が非常に困難となっている 現状もあり、これらの新訳を刊行するなど、未訳のまま、 わが国ではまだ知られていない長編小説のすべてを翻訳 し紹介することを目指しています。去る 11 月 17 日の 第 1 回研究会では、会長の太田良子氏(東洋英和女学院 大学名誉教授)が「エリザベス・ボウエンの小説―作品 紹介とボウエン評価の現状―」と題して講演を行いまし た。 *研究会終了後、会場近くで懇親会を開催する予定です。 ◆NPO 日本スコットランド協会(JSS) 日本スコットランド協会では、スコットランドの国民詩 人ロバート・バーンズの誕生日を祝い、毎年「スコティッ シュ・ナイト」を企画してきました。「ハギスに献ず」 の朗誦でハギス・セレモニー、バグパイプの演奏やスコッ トランドの歌をお楽しみ頂き、最後には簡単なダンスを 踊ります。 入会希望・問い合わせ: エリザベス・ボウエン研究会事務局 〒 171-0051 東京都豊島区長崎 6-17-10 太田良子気付 TEL 03-3958-4581 FAX 03-3958-4341 Email: ◇ スコティッシュデイ 東京 日時:2014 年 1 月 11 日(火)12:00 ~ 15:00 会場:日本外国特派員協会 東京都千代田区有楽町 1-7-1 電気ビル北館 20 階 TEL 03-3211-3161 会費:会員 6,000 円、 一般 8,000 円、 学生 3,000 円 申し込み期限:2014 年 1 月末 ◇第 1 回ボウエン読書会 日時:2014 年 1 月 25 日(土)13:30 ~ 17:00 会場:国際文化会館セミナールーム C 東京都港区六本木 5-11-16 TEL 03-3470-4611 発表者:松井かや氏(ノートルダム清心女子大学) 読む作品:The House in Paris(1935) ◇ スコティッシュデイ 関西 日時: 2014 年 2 月 22 日 (土) 12:00 ~ 15:00 会場:神戸外国倶楽部 神戸市中央区北野町 4-15-1 TEL 078-241-2588 会費:会員 4,000 円、 一般 6,000 円、 学生 2,000 円 申し込み期限:2014 年 2 月 10 日 日本カレドニア学会 News letter 第 49 号 「スコティッシュデイ東京」「スコティッシュデイ関西」 の申し込み・問い合わせは JSS 事務局まで。 TEL/ FAX 03-6380-5256 Email: 2013 年 12 月 10 日発行 編集発行人 日本カレドニア学会代表幹事 櫻井雅人 http://www.ne.jp/asahi/caledonia/jcs/ 事務局 拓殖大学八王子キャンパス先川暢郎研究室 〒 193-0985 東京都八王子市館町 815-1 (A517) Newsletter 編集担当 櫻井雅人、野口英嗣、米山優子 (連絡先・櫻井)〒 195-0071 東京都町田市金井町 2012-5 TEL/FAX 042-734-5451 E-mail: ◆日本ケルト学会 ◇ 西日本研究会 日時:2014 年 3 月 8 日 14:00 〜 17:00 会場:愛知工業大学 本山キャンパス 報告:大橋真砂子氏(南山大学)「中世初期復活祭論争 2
© Copyright 2024 ExpyDoc