看護系大学生の食生活に関する実態について - 広島県大学共同

資
料
看護系大学生の食生活に関する実態について
― 学生生活実態調査 報告Ⅰ ―
広島文化学園大学看護学部
原 ひろみ,中井芙美子,八島美菜子,成 順月
岡平美佐子,香川 治子,林 君江,小林 浩美
キーワード:朝食摂取,食事形態,同居の有無,生活習慣
■ はじめに
「悩みの相談」の状況を探り,学年・性別・家族
文部省(現文部科学省)高等教育局1)は「大学
における学生生活の充実方策について-学生の立
場に立った大学づくりをめざして-
(報告)」にお
いて,
「
“学生中心の大学”への転換を図るという
観点から,大学で教育を受ける学生の希望や意見
を適切に大学の運営に反映させることが重要であ
る」と述べている。そして学生の意見や希望を反
映させる具体的な方法として,(a)大学として学
生へのアンケート調査により学生の実態把握を行
うことによって,その希望や意見を聴取する方法,
(b)学生の代表と大学の運営責任者等との懇談
会等を実施し,その希望や意見を聴取する方法,
(c)学生の代表を大学の諸機関に参加させる方法
などが考えられる,としている。
形態(同居・単身)との関連などから,効果的な
健康教育・学生支援(体制)を検討するための基
礎資料として,その実態から明らかになった学生
のニーズを分析し,学生支援の方策を考えるため
の資料提供を目的とした。
さらに,本調査は学生のニーズ調査である一方,
その調査内容は学生の健康度を測るものでもあ
る。学生が大学生活を充実して過ごすためには心
身共に健康でなければならない。思春期から青年
期にあたるこの時期によりよい生活習慣を確立さ
せることは来るべき成人期の健康的なライフスタ
イルにつながる。小・中・高の学校生活の中で培
われた健康習慣が自己管理の名のもとに,ともす
ると後退しがちになる大学生の実態に注目した。
生活習慣の形成は乳幼児期あるいは小児期に始ま
本学においてもこの達成のために,さまざまな
方策を講じている。現在看護学部では,学生参画
委員会と,教職員の担う委員会活動を連動させる
ことで,
「
(c)学生の代表を大学の諸機関に参加
り,学校生活を経て確立される。社会人となる手
前の大学生の時期は健康習慣獲得のための最後の
大切なターニングポイントであり,その時期に行
う健康意識の醸成や保健行動を促す健康教育の意
させる方法」を実践している。今回,看護学部の
学生に対して“日常生活の実態調査”を実施する
義は大きい。調査結果が健康支援につながるよう
分析を行った。
ことで,
「
(a)大学として学生へのアンケート調
査を行い,
“学生の実態把握”を行うことにより,
その希望や意見を聴取する方法」を取り入れ,学
生生活の実態把握の結果をもとに,今後の学生支
■ 研究方法
1.研究デザイン 横断研究
援の方策を探る試みを行った。本論を含む学生生
活実態調査に関する報告Ⅰ・Ⅱ・Ⅲは,看護系大
2.調査方法
1) 対象者:本学看護学部の1~4年生全員535
学生の生活実態調査から主に「食事」・「喫煙」・
人。そのうち回答が得られたのが436人で回収
はら ひろみ
〒737-0004 広島県呉市阿賀南2-10-3 広島文化学園大学看護学部
― 42 ―
看護系大学生の食生活に関する実態について
率は81.4%であった。
2)調査期間:2011年2月
3)データ収集方法:無記名による自記式質問紙
調査。各学年の授業終了後に本調査に関わる係
員が調査票を配布し回収した。
4)調査内容:調査票(資料)参照
①基本属性;学年,年齢,性別,同居か単身か
②食事状況;朝食の摂取状況,朝食・昼食の食事
図1は学年別における一人暮らしの割合を示し
た。学年が高くなるにつれ一人暮らしの割合は有
意に高くなる傾向があった(p=0.012)。一人暮ら
しの割合は4年次で49.4%と最も高く,1年次は
最も低く27.4%であった。
60%
形態,学食の利用状況と理由・注文メニュー,
学食への要望,売店の利用状況
③喫煙の状況;喫煙の有無,喫煙年数,喫煙量(本
50%
数)
,喫煙開始年齢,禁煙願望と理由,喫煙願
望と理由,
禁煙を試みたきっかけ(報告Ⅱを参照)
④悩みの相談状況;悩みの有無,悩みの相談相手
の有無,過去の相談の有無と相談時期,悩み相
20%
談に関する要望(報告Ⅲを参照)
このうち,②の「学食の利用状況と理由・注文
メニュー,学食への要望,売店の利用状況」,③
④については本論の分析からは除いている。
5)解析方法:学年別・性別ごと,同居群,単身
群に分けχ2 検定を行った。統計解析ソフトは
SPSS.Ver.17.0を用いた。
■ 結 果
1.属 性
有効回答は436件で,男女比は男子が約18%(80
人)
,女子はで約82%(356人)であった。また,
62.3%の学生が家族と同居しており,37.7%の学
生が単身(一人暮らし)であった。年齢は19歳~
22歳が約77.6%を占めており,その他(18歳,≧
23歳)が4.3%いた(表1)。
49.4%
41.0%
35.9%
40%
27.4%
30%
10%
0%
1年次
2年次
3年次
4年次
図1 学年別における一人暮らしの割合(n=435)
2.食生活に関する状況
1)朝食の有無,食堂の利用状況
表2は,朝食の有無や食堂の利用状況を示し
た。朝食を取らないと答えた学生が22.1%であっ
た。食堂の利用有無については,63.6%が利用し
ていないと回答した。食堂を利用すると回答した
152人(36.4%)のうち(回答に欠損があった6
人を除く),週1回以下しか利用していない学生
が42.9%,週2~3回利用している学生が28.5%,
週4~5回利用している学生は3割未満(28.6%)
であった。
一方で,売店を利用する学生の割合は,88.6%
と高かった。売店の利用頻度を見ると,週4回以
上が34%で,週2~3回利用している学生が約半
分近く(46.6%)を占めていた。
表1 調査対象者の属性
学年
性別
同居
年齢
1年次
2年次
3年次
4年次
男子
女子
一人暮らし
家族と同居
18歳
19歳
20歳
21歳
22歳
≧23歳
n
113
129
105
89
80
356
164
271
12
111
121
104
78
7
%
25.9
29.6
24.1
20.4
18.3
81.7
37.7
62.3
2.8
25.6
27.9
24.0
18.0
1.5
表2 朝食の有無,食堂の利用状況
朝食
取らない
取る
食堂利用
利用しない
利用する
食堂利用頻度(回/週) 0~1
2~3
4~5
売店利用
利用しない
利用する
売店利用頻度(回/週) 0~1
2~3
≧4
― 43 ―
n
%
96
338
276
158
60
50
42
49
380
61
147
107
22.1
77.9
63.6
36.4
42.9
28.5
28.6
11.4
88.6
19.4
46.6
34.0
看護系大学生の食生活に関する実態について
100%
100%
100%
80%
100%
80%
とる
80%
とる
とる
とる
68.8%
60%
とる
とる
80.9%
81.7%
82.3%
80%
とる
とる
とる
とる
68.8%
100% とる
とる
60%
68.8%
60%
80.9%
81.7%
82.3%
とる
80.9%
81.7%
82.3%
40%
とる
とる
とる
68.8%
60%
80.9%
80%
81.7%
82.3%
40%
40%
とる
20%
とらない
40%
とる
とる
とる
とらない
68.8%
とらない
60% とらない
31.3%
20%
とらない
80.9%
81.7%
82.3%
20%
19.1%
とらない
18.3%
17.7%
とらない
とらない とらない
とらない
0% とらない
31.3% とらない
20%
とらない
31.3%
19.1%
40% 17.7%
18.3%
17.7%
とらない
とらない
とらない
19.1%
31.3%
18.3%
1年次
2年次
3年次
4年次
19.1%
0%0%
18.3%
17.7%
0%
1年次 2年次
2年次 3年次
3年次 4年次
4年次
20% 1年次
とらない
図2 学年別朝食摂取の有無の割合
1年次
2年次
3年次
4年次
とらない
17.7%
31.3%
とらない
18.3%
とらない
19.1%
2)食事形態
①朝食の食事形態
パンのみを朝食とする学生は36.8%と最も多
く,次にご飯のみ(29.9%)であった。ご飯・味
噌汁,おかずを一緒に取る学生はわずか11.6%で
あった。健康補助食品,お菓子,またはカップ麺
を朝食にする学生は全部で約2%くらいであった
(図4)。
36.8%
パンのみ
ご飯のみ
パンのみ
パンのみ
パンのみ
ご飯・味噌汁・おかず
ご飯のみ
ご飯のみ
ご飯のみ
36.8%
11.6%
29.9%
36.8%
36.8%
29.9%
29.9%
29.9%
飲み物
7.6% 11.6%
ご飯・味噌汁・おかず
ご飯・味噌汁・おかず
0%
ご飯・味噌汁・おかず
11.6% 11.6%36.8%
パンのみ
パン・おかず
6.7%7.6%
飲み物
1年次
2年次
3年次
4年次
飲み物
飲み物
7.6% 7.6%
ご飯のみ
図2で示したように,朝食を取っていない割合
29.9%
健康補助食品
1.7%
パン・おかず 6.7% 6.7%
6.7%
パン・おかず
パン・おかず
ご飯・味噌汁・おかず
11.6%
は2年次で31.3%で,他の学年より有意(p=0.031)
お菓子のみ
0.7%1.7%
健康補助食品
健康補助食品
1.7% 1.7%
健康補助食品
飲み物
7.6%
に高かった。
カップめん
0.2%0.7%
お菓子のみ
お菓子のみ
0.7% 0.7%
お菓子のみ
パン・おかず
6.7%
2
表3 学年別における同居有無別朝食を摂る割合の比較
学年
同居の有無 n
n (%)
p
χ値
家族と同居 82
73 (89.0)
0.002
29.3
学年
n
n (%)
p
2
値
1年次 同居の有無
2χ 値
学年
同居の有無 31n 20
n (%) χ
一人暮らし
(64.5)
学年
同居の有無
(%)
p p
χ
家族と同居 n82
73n (89.0)
9.3値 0.002
1年次 家族と同居
家族と同居
82
73
(89.0)
9.3
0.002
81
62
(76.5)
6.7
0.016
73
9.3
0.002
一人暮らし 8231
20 (89.0)
(64.5)
1年次
2年次 家族と同居
1年次
一人暮らし
31
20
(64.5)
一人暮らし
46
25
(54.3)
2
家族と同居
62 (64.5)
(76.5)
6.7
一人暮らし
学年
同居の有無3181n 20
n (%)
χ 値 0.016p
2年次 家族と同居
6181 25
5662
(91.8)
0.002
家族と同居8146
(76.5) 106.7 0.016
0.016
一人暮らし
(54.3)
家族と同居
(76.5)
家族と同居 82 62
73
(89.0) 6.7
9.3
0.002
3年次
2年次
2年次1年次 一人暮らし
43
29
(67.4)
一人暮らし
46
25
(54.3)
家族と同居
6131 25
5620
(91.8)
10
0.002
一人暮らし
46
(54.3)
一人暮らし
(64.5)
3年次 家族と同居 45
4056
(88.9)
3.810 0.052
家族と同居
(91.8) 10
0.002
一人暮らし
29
(67.4)
家族と同居614361
81 56
62
(76.5)
6.7 0.002
0.016
家族と同居
(91.8)
4年次
3年次
2年次 一人暮らし
3年次
家族と同居
45
40
(88.9)
3.8
0.052
4443
3225
(72.7)
一人暮らし
29
(67.4)
一人暮らし
46
(54.3)
29 (67.4)
4年次 一人暮らし 43
一人暮らし
3256
(72.7)
家族と同居
40
(88.9) 3.8
3.8 0.052
0.052
家族と同居454445
61 40
(91.8)
10
0.002
家族と同居
(88.9)
4年次
3年次
4年次
一人暮らし
43
29
(67.4)
一人暮らし44 44 32 32
(72.7)
一人暮らし
(72.7)
家族と同居 45
40 (88.9)
3.8
0.052
4年次
表3で示したように朝食をとっている学生を学
一人暮らし 44
32 (72.7)
年別に見ると,家族と同居している学生において
1年次(p=0.002)
,
2年次(p=0.016)
,
3年次(p=0.002)
と有意に高く,4年次においては(p=0.052)と
有意ではないが高い傾向が見られた。
カップめん
0.2%
0%1.7%10%
カップめん
0.2% 20%
健康補助食品
カップめん
0.2%
0%
お菓子のみ
カップめん
30%
40%
10%
30%
0.7% 20%
10% 20%
20%40%
30% 40%
40%
0%0% 10%
30%
0.2%
図4 朝食の食事形態(n=421)
0%
10% 20% 30%
40%
図5で同居の有無別に見た朝食形態を示した。
同居の有無によって朝食形態の分布は有意に違っ
ていた。ご飯・味噌汁・おかずを取る学生の割合
は,家族と同居している学生のほうが1人暮らし
の学生より約10%多い結果であった。しかし,パ
ンのみ,ご飯のみを取ると回答した学生の割合は
両群で大きな差がなく,それぞれ30%前後であっ
た。飲み物で済ませる学生も家族と同居する群と
一人暮らしの群でそれぞれ7.2%と8.3%であった。
朝早く起き出来ない
59.8%
朝早く起き出来ない
59.8%
37.6% 37.6%
パンのみ
パンのみ
35.0%
面倒だから
28.9%
35.0%
面倒だから
28.9%
28.1% 28.1%
ご飯のみ
ご飯のみ
朝食は食欲がない
25.8%
朝食は食欲がない
33.1% 33.1%
25.8%
朝早く起き出来ない
59.8%
37.6%
朝早く起き出来ない
59.8%
2.3%2.3%
37.6%
パンのみ
通学に時間がかかる
その他
19.6%
通学に時間がかかる
その他
19.6%
パンのみ
35.0%
朝早く起き出来ない
8.9% 8.9%
面倒だから
59.8%
37.6%
28.9%
35.0%
家族と同居
面倒だから
家族と同居
パンのみ
28.1%
お金がない
7.2% 28.9%
お金がない
7.2%7.2%
7.2%
28.1%
35.0%
ご飯のみ
飲み物
飲み物
面倒だから
28.9%
朝食は食欲がない
33.1%
ご飯のみ
25.8%
8.3% 8.3%
28.1%
1人暮らし
朝食は食欲がない
1人暮らし
33.1%
25.8%
その他
その他
6.2
6.2
ご飯のみ
2.3%
7.2%
7.2%
朝食は食欲がない
33.1%
25.8%
2.3%
通学に時間がかかる
パン・おかず
その他
19.6%
パン・おかず
5.7%5.7% 8.9%
通学に時間がかかる
その他
太るから
2.3%
2.1
太るから
2.1 19.6%
8.9%
家族と同居
通学に時間がかかる
その他
家族と同居
8.9%
お金がない
15.6%15.6%
7.2%
7.2%19.6%
ご飯・味噌…
お金がない
ご飯・味噌…
飲み物
7.2%
家族と同居
7.2%
5.1%5.1%
8.3%
飲み物
お金がない00
7.2%
7.2%
20
40
60
80
1人暮らし
20
40
60
80
8.3%
飲み物 1.5%
その他 6.26.2
1人暮らし
7.2%
1.5% 8.3%
その他
健康補助食品
1人暮らし
健康補助食品
7.2%
その他
1.9%1.9% 7.2%
6.2
パン・おかず
5.7%
パン・おかず
太るから
2.1
パン・おかず 0.4%
5.7%
太るから
太るから 2.1 2.1
お菓子のみ
0.4% 5.7%
15.6%
1.3%
お菓子のみ
ご飯・味噌…
15.6%
1.3%
ご飯・味噌…
5.1% 15.6%
ご飯・味噌…
0.0%
40 606060 80
80
5.1%
カップめん
0.0% 5.1%
0 00 20 20
20 4040
80
図3 朝食を取らない理由(n=97)
図3で示したように,朝食をとらない理由とし
て,朝早起き出来ないが59.8%で,面倒だからが
28.9%,朝食は食欲がないが25.8%,通学に時間
1.5%
0.6% 1.5%
カップめん
健康補助食品
1.5% 1.9%
0.6%
健康補助食品
健康補助食品
1.9%
1.9%
0%
10%
20%
30%
40%
0.4%
0%0.4%
10%
20%
30%
40%
お菓子のみ
0.4%
お菓子のみ
1.3%
お菓子のみ
1.3%
1.3%
0.0%
0.0%
カップめん 0.0%0.6%
カップめん
カップめん
0.6%
0.6%
0% 0%
10% 10% 20% 20% 30% 30%40%
40%
0%
10%
20%
30%
40%
がかかるが19.6%と高い割合が見られた。
― 44 ―
図5 同居有無別における朝食形態の比較
看護系大学生の食生活に関する実態について
②昼食の食事形態
昼食の内容はご飯のみが42.8%,パンのみが
食をとる割合が有意に高いことも分かった。
朝食摂取状況において,朝食をとらない割合を
35.8%であった。一方で,飲み物とカップ麺だけ
ですませる学生が46%もいた。朝食と昼食の形態
はともに,学年間で差がなかった(図6)。
学年別で見たとき2年次生が31.3%と最も多い結
果であった。これは平成21年に内閣府が行った「大
2)
の結
学生の食に関する実態・意識調査報告書」
果と同様の結果となっている。報告によれば,朝
42.8%
ご飯のみ
35.8%
パンのみ
飲み物
15.8%
カップめん
15.8%
ている。本学2年生は,空きコマ(授業)がほと
んど無いほど時間割が過密で,時間的余裕がない
状況にあることが推測される。さらに,内閣府の
3.3%
その他
報告は男女で比較していることから男女差をみる
ことも必要であった。さらに,家族と同居をして
いる学生よりも,一人暮らしの学生の方が朝食の
2.1%
パン・おかず
0%
10%
20%
30%
40%
50%
図6 昼食の食事形態(n=430)
同居有無別の昼食内容について図7で示した。同
居の有無によって,昼食の内容の分布は有意に異
なっていた(p<0.0001)
。カップ麺で済ませる学
生の割合は1人暮らしする学生で25.9%と,家族
と同居している学生(9.7%)より約15%多かっ
た。しかし,ご飯のみ,パンのみの学生は両群と
もそれぞれ3割を超えていた。
ご飯のみ
パンのみ
9.7%
カップめん
1.1%
3.7%
3.4%
3.1%
パン・おかず
その他
飲み物
46.8%
36.4%
38.6%
30.9%
25.9%
家族と同居
一人暮らし
10%
20%
30%
40%
欠食頻度が高くなるという報告は,本学の結果と
重なり,一人暮らしの学生の方が朝食を摂取する
割合が低かった。内閣府の報告では,栄養バラン
スへの意識や「食育」への関心との関係を見てい
るが,栄養バランスへの意識が高い者,「食育」
に関心が高い者ほど朝食の摂取頻度が高くなって
いる2)ことから,朝食の摂取は学生の栄養バラン
スへの意識や好ましい食行動との関連性が強く,
朝食摂取行動への意識変容を導く「食育」の重要
性が伺われる。
また,石川らは,「看護学生の睡眠・健康と食
3)
の中で,食習慣では一般大
習慣に関する研究」
学生と同様に各食事に欠食が見られ,睡眠習慣と
の関連が示唆されたとしている。本学においても,
同居の有無にかかわらず,いかに学習時間と睡眠
時間を確保するかが朝食の摂取に影響を及ぼして
いることが推測される。朝食をとらない理由とし
て, 朝 早 起 き 出 来 な い(59.8%), 面 倒 だ か ら
(28.9%),朝食は食欲がない(25.8%)などは睡
0.4%
0.0%
0%
食摂取状況では学年別,性別,住居形態別でみる
と上級学年ほど,女性より男性のほうが,また自
宅生より下宿生の方が朝食の欠食頻度が高くなっ
50%
図7 同居有無別における昼食形態(n=429)
眠習慣や睡眠時間の確保が影響していると考えら
れ,通学に時間がかかる(19.6%)についても睡
眠習慣との関連や,また朝早く家を出るために朝
食を取ることが困難なことが予想される。一方で,
■ 考 察
大学近隣の単身学生は,朝食準備の手間がかかる,
起床時間が遅い等の理由から朝食を十分取ってい
1.朝食の摂取状況について
朝食を取らない学生が全体の約2割を占めてい
ないことが分かる。本研究では,睡眠に関する調
査は行っていないが,内閣府の報告に,夕食時間
の開始が遅い者ほど朝食の欠食頻度が高くなり,
身体面の自己評価で健康であると回答している者
ほど朝食の摂取頻度が高い結果となっている2)と
あり,不規則な夜型の生活習慣が朝食の摂取状況
る。中でも,1人暮らしをしている学生では約
35%が朝食を取らずに大学に来ていることが分
かった。また,全学年において家族と同居してい
る学生のほうが1人暮らしをしている学生より朝
― 45 ―
看護系大学生の食生活に関する実態について
に影響していると考えられる。これらの学生の生
活実態から,適切な対処法を考え支援することが
5)
関する調査」
によると,「夜型に変化している最
求められる。
本的な健康習慣を乱すだけでなく,夕食の食事時
間の遅い者は緑黄色野菜の摂取量が少ないなど,
生活スタイルと生活習慣が互いに絡み合って様々
2.食事形態と食堂・売店の利用状況について
朝食をとる学生は全体の8割を占めていたが,
同居の有無にかかわらず朝食を取っている学生の
7割近くがパンのみやご飯のみで,ご飯と味噌汁
とおかずを食べている学生はわずか1割ほどで
あった。また,飲み物のみや,お菓子・健康食品
で朝食をすます学生が1割を占めていた。朝食を
十分取っていない学生は昼食で,しっかり取らな
ければならない。しかし,本調査結果から,昼食
もご飯のみ,パンのみで済ませる学生が8割近く
を占め,さらに飲み物またはカップ麺で済ませる
学生が約3割を占めていることが分かった。これ
は,食堂の利用率が低い結果である。
本調査からは全体の63.6%の学生が食堂を利用
しておらず,利用していると回答した学生の中で
も約4割は週1回程度しか利用していないことが
分かった。
一方で学生の88.6%が売店を利用しており,週
4回以上売店を利用している学生が3割を超えて
いた。主な購入品として挙げられたのは,お菓子
が80%と最も多く,次にお結びが56.3%,カップ
ラーメンが53.7%,飲み物が51.3%の順であった。
朝食・昼食の食事形態の結果からは,バランスの
とれた内容とは言えない。
以上の結果から,学生の健康支援のためには食
堂や売店の在り方や提供内容について考えていく
必要があると考える。そのためには学生のニーズを
十分に把握した上での対応が不可欠だと思われる。
しかし,内閣府の報告によれば,大学生の栄養
バランスへの意識はそう低くなく,栄養バランス
について約6割の者が「意識している」と回答し
ている2)。さらに,五島の「大学生の食生活満足
4)
では,大学生の食生活に関す
度に関する調査」
る意識について回答の多かったものは,
“料理の
レパートリーを増やしたい”
“食品や栄養につい
て学びたい”などの知識を深めたいとする項目,
“食品の安全性が気になる”
,
“食品を購入すると
き消費期限等の表示を確認する”など,安全性に
ついての項目が挙がる一方,
“後片付けが面倒で
ある”
“食費にお金をかけたくない”などの生活
上・経済上の項目も挙がっている。永井らによる
近の若者の行動は朝食摂取,睡眠,喫煙などの基
な健康への悪影響を及ぼしている」と述べてい
る。また,平田らの「看護大学生の食習慣と知識,
6)
では,「健康への関
および健康への関心の関係」
心が高いほど,摂りすぎが指摘されている食品を
控える傾向があった。また,食習慣に有意な要因
(個人特性)として“規則的な食事時間”“家族と
の同居”であった。こうした健康的な食習慣は,
保健医療の知識の程度には関係しておらず,家庭
での食事の準備経験や家族と食生活について話題
にした経験,居住形態といった個人特性が,健康
への関心に影響を与えていることが考えられる」
と述べている。さらに,本田らの,「義務教育に
おける学習と大学生の食生活,生活習慣予防態度
7)
では「義務教育期に食物や生活習慣
との関連」
に関し興味を持って学習した内容を家庭で実践し
ていたものは知識や調理技術もあり,健康行動が
とりやすい傾向が見られた」と述べている。
これらのことから,本研究の調査を基盤に学生
の食行動への意識・認識を探り,学生の実態に即
した対応が不可欠であると考える。
■ 結 論
看護系大学生の食生活に関する実態調査と結果
から考えられることについて述べた。
1)朝食をとらないと答えた学生(全体の22.1%)
の中で,1人暮らしをしている学生がそのうち
の約35%がいることがわかった。
2)1人暮らしをしている学生に比べ,家族と同
居している学生の朝食をとる割合は有意に高
かった。
3)朝食の食事形態として,ご飯・味噌汁・おか
ずを一緒に摂る学生はわずか11.6%であった。
4)昼食の食事形態はご飯のみが42.8%,パンの
みが35.8%と高く,飲み物とカップ麺だけで済ま
せる学生が46%と約半数弱いることがわかった。
5)同居の有無によって,昼食の形態の分布は有
意に異なっていた。カップ麺で済ませる学生の
割合は1人暮らしの学生が25.9%と,家族と同
「大学生の生活習慣およびセルフエスティームに
― 46 ―
居している学生(9.7%)に比べ15%と顕著に
多かった。
看護系大学生の食生活に関する実態について
以上の結果から約2割の学生が朝食を摂ってお
らず,朝食を摂っている学生に関してもバランス
く関係していることが分かった。
以上の結論から学生の食に関する行動変容を促
の良い食事形態の学生はわずか1割程度であるこ
とが分かった。また,昼食に関しても,朝食と同
様に,ご飯のみ,パンのみの学生が多く心身の活
す健康教育と,学生を取り巻く環境の改善の必要
性が示唆された。今後は“学生自身による生活習
慣の是正”と“環境改善に向けての大学の取り組
動維持に必要な食事内容ではない実態が明らかと
なった。また,同居の有無が学生の食行動に大き
み(学生支援)”を行い,双方が両輪となって改
善へと推進するよう取り組みを行っていきたい。
引用文献
1)http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/012/toushin/000601.htm 2011.9アクセス
文部科学省;大学における学生生活の充実方策について(報告)-学生の立場に立った大学づくり
を目指して-,平成12年6月.
2)内閣府 食育推進室;大学生の食に関する実態・意識調査報告書,平成21年9月.
3)石川りみ子,奥間裕美,上江洲榮子,伊芸美代子,島田みつ子,金城絹子,饒辺聖子;看護学生の
睡眠健康と食習慣に関する研究,沖縄県立看護大学紀要 4号,pp15-26,2003.
4)五島淑子;大学生の食生活満足度に関する調査,山口大学教育学部研究論叢 54巻,pp31-43,
2004.
5)永井純子,山本和代,梶原京子;大学生の生活習慣およびセルフエスティームに関する調査,教育
保健研究16号,pp45-51,2010.
6)平田真紀,内田雅子;看護大学生の食習慣と知識,および健康への関心の関係,大阪大学看護学雑
誌 13巻 1号,pp9-17,2007.
7)本田藍,中村修,片渕結子;義務教育における学習と大学生の食生活,生活習慣予防態度との関連,
日本食育学会誌 4巻 2号,pp91-101,2010.
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看護系大学生の食生活に関する実態について
資
料
生 活 実 態 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 へ の 協 力 の お 願 い
広島文化学園大学看護学部学生部 保健係
寒かった冬ももうじき終わりをつげようとしていますね。看護学部阿賀キャンパスでの学生生活は如
何ですか?この度、保健係では学生の生活状況を把握し、大学としてのサポート体制や対策のあり方に
ついて検討をしていきたいと考えています。そこで、今回は特に、食事・喫煙・メンタルヘルスに関す
る調査への協力をお願いします。みなさんの有意義な学生生活につなげていくためのアンケートです。
是非ご協力をお願いします
次の質問にお答えください。なお、該当するものには○を、記入箇所へのご記入をお願いします。
学年:
年
世帯: 家族と同居
年齢:
単身(一人暮らし)
歳
その他(
性別:
男
)
女
Ⅰ.食事について
Q1. あなたの朝食と昼食の食事形態で一番近いものはどれですか。
下記の食事形態項目から選び、番号で答えてください。 その他の場合はその内容を書いてください。
朝食(
)
その他①~⑧以外のもの(食事内容:
)
昼食(
)
その他①~⑧以外のもの(食事内容:
)
<食事形態項目>
①ご飯のみか(+1 品)
⑥健康補助食品のみ
②パンのみ
③ご飯+味噌汁+おかず
⑦飲み物のみ
④パン+おかず
⑤カップ麺
⑧お菓子のみ
Q2. 朝食は食べますか。
①食べる
②食べない
*②食べないと答えた方はその理由に当てはまるものに○をつけてください(複数回答可)。
理由:a. 朝早く起きることが出来ない
b. 通学に時間がかかる
c. 朝は食欲がない
d. 太るから
e. 面倒だから
f. お金がない
g. その他(
)
Q3. 大学の食堂を利用しますか。またその理由に当てはまるものに○をつけてください(複数回答可)。
回/週) ①‐2 注文内容は? a.定食
b.単品
c.その他(
)
①‐1 利用する(
理由:a 料金が安い
b. 栄養バランスを考えて
c.便利なので
d. 注文せず場所を利用
e.その他(
)
②利用しない
理由:a. 金額が高い
b. メニューが少ない
c. 量が多い
d. 量が少ない
e. 座席がない
e.その他(
)
。
Q4. 大学の食堂への要望がありますか。当てはまるものに○をつけてください(複数回答可)
a. 今のままでよい
b. 金額を安くしてほしい
c. 定食の種類を多くして欲しい
d. メニューを増やして欲しい
e. お弁当をおいて欲しい
f. 量を多くして欲しい
g. 量を少なくして欲しい
h. カロリーを表示して欲しい i. 野菜を多くして欲しい
)
j. 朝食サービスが欲しい
k. 座席を増やして欲しい
l.その他(
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看護系大学生の食生活に関する実態について
Q5. 売店を利用しますか。
①利用する(
回/週)
②利用しない
*①利用すると答えた方はその購入品に当てはまるものに○をつけてください(複数回答可)。
a. お弁当
b. カップラーメン
c. おむすび
d. パン
e. 菓子
f. 飲み物
g. 文具
h.その他
Q.6.売店への要望があれば記入してください。(
)
Ⅱ.喫煙について
Q1. 喫煙したことがありますか。
① したことがない
② 以前していたが、やめた(喫煙期間:
才~
才)
③ 現在、している(1日の本数:
本) 喫煙期間(
才から)
Q2. 喫煙をやめたいと思いますか。またその理由に当てはまるものに○をつけてください(複数回答可)。
① 思っている
理由:a. 体に悪い
b. お金がかる
c. 友達がやめたから
d. 先生に言われるから
e. その他(
)
② 思っていない
理由:a. 落ち着くから b. かっこいいから c. 友達が吸っているから d. 個人の自由だから
e. その他(
)
喫煙している人への質問項目
Q3. これまで禁煙を試みたことはありますか。
①ある
②なし
*あると答えた方は Q4.へ
*なしと答えた方は Q5~7 へ
Q4. 禁煙をするきっかけは何でしたか。当てはまるものに○をつけてください(複数回答可)
。
a. 自己決断
b. 勧められて c. タバコの値段があがったから d. その他(
)
Q5. 禁煙の方法について情報を知りたいと思いますか。
①思う
②思わない
Q6. 禁煙相談や治療を受けてみたいと思いますか。
①思う
②思わない
Q7. 喫煙場所があるといいと思いますか。
①思う
②思わない
Ⅲ.メンタルヘルス
Q1. あなたは現在何か悩みがありますか。
①ある
②ない
Q2. 悩みがあるときに誰か相談する人がいますか。
①いる
②いない
*①いると答えた方は当てはまるものに○をつけてください(複数回答可)。
a. 親
b. 友人
c. 恋人
d. 養護教諭
e. チューター
f. チューター以外の教員
g. 専門のカウンセラー
h. その他(
)
Q3. これまでに学校内の相談室や専門医院で相談をしたことがありますか。
①ある
②ない
)
*①ある人はいつ頃どこを利用しましたか。 a.中学生 b.高校生 c.大学生 相談場所(
Q4. 相談の内容によっては、チューターなどの教員には相談しづらいこともある。
①そう思う ②そうは思わない
Q5. 秘密厳守で相談にのってくれるところがあるとよい。
①そう思う ②そうは思わない
Q6. 専門のカウンセラーがいたら安心して相談できる。
①そう思う ②そうは思わない
Q7. 気軽に心理テストなどを受けられる場所があれば利用してみたい。①そう思う ②そうは思わない
Q8. このキャンパスにも学生相談室があるとよい。
①そう思う ②そうは思わない
質問は以上です。ご協力ありがとうございました。
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