2010 年 北海道一周航海記 KING BEE 山崎 勲 1.始めに 昨年は暑い小笠原、沖縄方面へ 55 日間の航海だったので、今年は涼しい北海道へ出か けることにしました。その計画を志摩ヨットハーバーで話していたら、高名なベテラン女 性セーラーの丹羽徳子さんから「世界のあちらこちらへは行ったけれど、北海道へヨット で行ったことはないので乗りたい!」とお声がかかり、喜んで乗っていただくことにしま した。太平洋岸を北上して津軽海峡を西へ進み、時計回りに北海道を一周してまた太平洋 岸沿いに戻るコースを取りましたが、津軽海峡西航時の強い逆潮以外は概ね潮に押され正 解でした。6 月 20 日から 8 月 8 日まで 49 日間の全行程参加者は、丹羽徳子さん、高岡氏 (共同オーナー)、と僕の 3 人でしたが、途中 2−3 人づつ入れ替わり乗船者があり、計 5 −6 人と賑やかな時期もありました。 この一年間の主な整備としては、ソーラーパネル(85W2枚)、風力発電機(Air Breeze) の追加、自動操縦装置を 20ton まで使えるもの(Raymarine 社 Linear Drive Type2 Long、 リモコンあり)に交換(従来の ST5000 はバックアップに)、メインセール新調、チークデ ッキの黒い目地のやり直し(半年かかった大作業)など。メインセールのリーフポイント はワンポインを省略、通常のツーポイントをワンポイント、スリーポイントをツーポイン トに仕立ててもらいました。グリーク号の小杉さんから「霧が出るから黄色回転灯をつけ たほうがいい」との連絡を頂き、出港日の前日に取り付けました。 今年の夏の北海道は、偏西風の蛇行の影響 もあってか次から次へと弱い低気圧がやって きて、荒れはしないものの曇り勝ちで寒い日が 多く、室蘭あたりでやっと暖かくなってほっと したのが忘れられません。特に寒かったのは、 稚内から知床、根室半島を経て襟裳あたりまで の東半分でした。気象予報は馬場さんの会社 (気象海洋コンサルタント)に登録して毎日見 ましたが、大いに役立ちました。泊地について は“簡易港湾案内(水路協会)”の他、以前どなたかにパソコンに入れてもらった“泊まり 地”という全国のヨットが入れる港の情報を集めたファイルを使用しました。その付属リ ストのいくつかを紹介しますと、 クルーズネットジャパン:www.cruz-net.com, 泊地情報:www.geocities.jp/tiarashore/anchorage.htm 2.航程概要 6 月 20 日 五ヶ所湾―御前崎 82M、12h(M:海里=1.85km、h:時間) 21 日 御前崎―下田 38M、7h 22−23 日 下田―小名浜 210M、30h 24−25 日 小名浜―宮古 210M、29h 26 日 宮古―八戸 63M, 27 日 八戸―下風呂 64M、12h 28 日 下風呂―函館 30M、5.5h 30 日 函館―松前 40M, 10h 函館 2 泊 7.5h 7 月1 日 松前―江差 30M, 2日 江差―奥尻 33M、5h 3日 奥尻―岩内 66M、11.5h 4日 岩内―余市 49M、8.7h 5日 余市―小樽 15M、3h 6−7 日 小樽―天売 6h 80M、14.5h 7日 天売―焼尻 5M、1.5h 8日 焼尻―沓形(利尻) 50M、8.4h、利尻 2 泊 10 日 沓形―香深(礼文) 8M、1.5h 11 日 香深―稚内 30M、5.3h 13−14 日 稚内―網走 160M、24h、 15 日 網走―宇登呂 30M、4.5h 17 日 宇登呂―文吉湾 22M、4.7h 18 日 文吉湾―羅臼 27M、5h、羅臼 2 泊 20 日 羅臼―根室 44M、5.7h、 21 日 根室―霧多布 58M、8.7h 22 日 霧多布―釧路 45M、8.7h 24 日 釧路―庶野(襟裳) 75M、11h 25−26 日 庶野―室蘭 120M、19.7h、室蘭 2 泊 28 日 室蘭―森 24M, 30 日 森―大畑 65M、10h 31 日 大畑―八戸 70M, 8 月1 日 4h 宇登呂 2 泊 釧路 2 泊 森2 泊 13h 八戸―宮古 58M、11h 2日 宮古―気仙沼 70M, 3日 気仙沼―女川 33M、5h 4日 女川―相馬 58M, 2 稚内 2 泊 10.7h 9h 5−6日 相馬―鴨川 7−8 日 鴨川―五ヶ所湾 200M, 35.3h 186M、31h 以上合計航走距離 2448M(4534km)、合計航海時間 400 時間 3. 航海日記 6 月 20 日 家内と愛犬シェリーの見送りを受けて午前 7 時に志摩ヨットハーバーを、高 岡君、伊藤君(KING BEE メンバー)、丹羽徳子さん、杉原さん(志摩ヨットハーバー所 属のヨット ACY でスキッパーとしてレースで活躍)と私の 5 人で出港。夜間航海で一気に 千葉県鴨川へという当初計画は梅雨前線で天候不安定なためあきらめ、福田か御前崎に入 ることにして、曇り時々雨の中、弱い SW の風を受けてフルメインの機帆走で走る。追い 風と追い潮のお陰で 7kt(ノット)以上出たので 82M 離れた御前崎に入れると判断。GPS プロッター, 海図、水深計を注意深く見ながら、御前岩の西側を通過して、暗くなる直前 の 19 時に御前崎港最奥部に舫うことができました。うねりが高くてよくローリングしまし たが、徳子さんは美味しい昼食をギャレーで用意してくださり驚きました。以後、よほど静穏 な日は高岡さんや、たまには僕も昼食など作りましたが、たいていは徳子さんに作ってい ただき、寒い北海道の夜間航海中も暖かい食事が食べられ感激でした。 21 日 9:00 下田目指して御前崎を出港。雨こ そ降らないものの約 30kt の追い風とうねりの中を ワンポイントリーフメイン、ステースルを張って 機帆走し 16 時に下田に到着。下田ボートサービス さんに電話してペリー上陸地点近くの桟橋に舫い ました。平滑川沿いなどを簡単に散策して風呂に 入り、船内で夕食。 神子元島 22 日 10:40 下田出港。天気が安定してきたの で夜間航 海して小 名浜を 目指す。伊豆大島の北側を 通過して 野島崎沖 へ向か っている とき大き な本鰹 一匹とソ ーダ鰹一 匹がケ ンケンにかかりました。徳 子さんが 三枚にお ろして くださり、半身を刺身にしてその日の夕食でいた だきましたが、5 人でも十分な量。もう片方の半身は翌日、小名浜入港後たたきにして食べ ましたが大変美味でした。 23 日 午前中右舷クォーターからちょうどいい風が吹いてきたので、エンジンを切って 3 シャフトロックを入れてプロペラ空転を止め、約 2 時間帆走。KING BEE は MAX115 馬 力のエンジンが付いているのでこれに頼りがちで、今航海でもこの時が純帆走の最長記録 でした。15:40 分小名浜港に入港したものの、港が大きくてしばらくうろうろ。1 号岸壁に 工事中のところがあって空いていたので横付け(16:30)して電話する。工事関係者がやって きて、結局 OK してくれましたがいろいろ心配顔で話して帰り、翌朝も見にきました。小 名浜港は小型プレジャーボート入港に適さない港です。今航海で入港して苦労したのはこ こだけ。一箇所くらい用意して欲しいものです。 24 日 7:50 小名浜出港。天気予報が OK なのでまた夜間航海して宮古を目指すことに。 25 日 終始風弱く晴、1m以下の波で海面は油を流し たように滑らか。 午前 9 時頃イルカの群れに遭遇しま したが、うち 7−8 頭が 40 分間にわたって船首付近を 戯れながら伴走してくれる。僕は初めての経験だったの で感動して見とれ、写真を何枚も撮りました。13 時に リアスハーバー宮古に到着。町まで遠いが波が入ってこ ず静かでいいところです。夕方タクシーで浄土ヶ浜観光 をしてから、ハーバーお勧めの駅近くの居酒屋「半酔」 (0193−63−0525)で夕食。ほや、どんこの刺身など が美味でした。ハーバーでもんどりを入れておいたら、 どんこが数匹入る。 26 日 走。15:00 5:00 宮古出港。穏やかな天気の中を機帆 八戸港到着、橋をくぐって北西方向最奥 部の北日本造船所の奥側となりの岸壁に舫う。入港 前にドラゴン級のヨットで帆走している人を見かけ ましたが、その方は盛さんという地元ヨットマンで、 後ほど、われわれの係留場所を探して車で来られ、 「いやー探しましたよ。八戸には二人ヨットマンが 居ます、それは私と家内です。ヨットで来られる方 のお役に立てればと思いまして・・・」とおっしゃ って、係留可能場所、銭湯、スーパー、コインラン ドリーなどの位置を記入した地図のコピーを下さり、 ここだと近くの観光船シャーク号の前に舫うと良い (船長に挨拶してから)とか、そのほか近所の情報 をいろいろ教えていただきました。 27 日 ここで下船の杉原さんの見送りを受けて 5:00 八戸を出港。うす曇、風弱く今日も海面は油を流したよう。14 時頃尻屋岬を回って 17 時に下風呂港へ入港、入って右奥の“いさり火公園”の前の岸壁が広く空いていたので横 4 付け。古くから温泉が湧いており、ホテルが数件あったが、我々は 300 円の公衆温泉「大 湯」へ歩いて行く。アーチがいくつもある古い陸橋をくぐったが、これは鉄道を通すため に戦時中作られたものの名残とのこと(途中で終戦になって鉄道は来なかった)。温泉客は ホテル内に留まって外に出ないのか、通りに人影はまばらで店も少ない。一軒だけ開いて いた浅野食堂で夕食。イカ寿司(イカに野菜類をつめたもの)が珍しくて美味しかった。 28 日 6:00 ここで下船の伊藤君の見送りを受けて下風呂出港。晴れ、弱いSEの風の 中、機帆走で楽々と津軽海峡を渡る。ひょっと したらまぐろがかからないかとケンケンを流 したけど何もかからず。東北地方沿岸からこち らはぜんぜん掛からなったので、寒い海ではケ ンケンは駄目と判断し以後やめることに。函館 山が海からきれいに見えました。 訪問するヨ ットの面倒を見て下さる南北海道オーシャン レーシングクラブ(SHORG)の水野さん(0138 − 27 − 3663)に 電 話 で 了解 を 得 て、 昼 前 の 11:20 金森倉庫前の岸壁に横付け。ここは観光の中心地で大勢の観光客が散策していて、 KING BEE を見に近づいてきたり、前で写真を撮ったりする人が後を絶えません。まもな く SHORG の小松さんが、「八戸の盛さんから、丹羽徳子さん乗艇のヨットが函館に入る、 と連絡がありやってきました。」といいながら、徳子さんの著書を持参してお出でになりま した。しばし懇談のあと、本に徳子さんのサイ ンをもらわれ、翌日は自分の車で函館観光案内 をすると仰って帰られました。下田で発電機が 不調で、海水インペラーの破れが見つかりまし たが、下田に在庫がなかったので函館のサービ ス店に取り寄せ依頼していました。昼過ぎにス ペアを届けてくれたのですぐ交換作業を実施 し、15 時無事試運転に成功。それから幾つか 博物館、教会など見て函館山にケーブルカーで 登る。 夜景も見たいとレストランでコーヒ ー一杯でねばり、外へ出るとびっくり!明る いうちはがら空きだったのに、大勢の人で一 杯になっていて、写真を撮るのも困難なくら いに。この日の夕食は金森倉庫内のビアホー ルでジンギスカン。 北海道限定のサッポロ クラシックが美味しかった。 29 日 朝起きてみると函館山は霧の中で、 5 昨日行っておいてよかった。朝市へ早めに行って朝食。10 時に小松さんご夫妻が車で来て くださり観光へ。立待崎、外人墓地、トラピスト修道院、五稜郭などご案内いただいた後、 自由市場で買い物、さらに谷地頭温泉へお送りいただく。夕方、小松さんご夫妻をヨット にお招きして海鮮鍋で宴会。ご夫妻は愛艇「マイウェイ(ミラベル 37.5)」でアメリカ西海 岸、ハワイに行かれたことがあり、夜中の 1 時過ぎまで話が盛り上がりました。 30 日 8:00 函館出港。15:30 松前港入 港。 曇り時々雨、午後は薄日も射し始める。東 の風数 kt と弱く、強い逆潮をエンジン頼み で乗り切ることに。小松さんから白神岬を回 るときは潮時も考慮して弱い時を狙って通 るべしと言っておられたが、やはり 4−5kt の逆潮でエンジン回転数を 2500rpm 以上に しても対地 2.5−3kt くらいしか出ず。入港 したらすぐ漁協の人が集金に来て、実重量 15 トンくらいと言ったら1泊 1450 円取られま した。ゴミ捨て場(切実)、水、電気など何も面倒見てくれないにしては高い。すぐ前の給 油所から軽油 140 リッター購入後、タクシーで松前城へ観光に出かける。 7 月1 日 7:10 松前出港。13:30 江差入港。風弱く曇り。途中で山口県から来ているヨ ット「悟空」を追い越しました。江差マリーナは南からの波が入って来そうなので北側の 漁港に入って横付け。昼食は我慢しておいて、到着するなりニシン御殿の横山家へ急ぎ、 名物ニシンそばを食べて満足。ついで江差追分会館で江差追分を聞き、中村屋(豪商の家)、 旧檜山支庁などを見物。現檜山支庁から「ヨットに掲示してある電話番号を見て掛けまし た。停泊料を払いに来て下さい。」とのことで、1泊 640 円を払いに行く。安いが書類書き 込みに 30 分もかかっていらいら。北海道ではこんぶ焼酎を作っていると聞いていたので酒 屋で探し、船で飲みましたが、ほんのりこんぶの香りがして、始めのうちは美味しかった。 僕はやっぱり芋焼酎のほうが合ってます。 2日 7:40 に江差出港。12:50 奥尻港入港。晴、向かい風 4kt。近いこともあり帆は揚げ ず機走のみレンタカーで奥尻島を一周。青苗の奥尻島津波館では津波の恐ろしさを再認識 6 し、お亡くなりになった方々の冥福を祈りました。 その後、西海岸にある神威脇温泉へ行って入浴。こ この港は広々と空いていてヨットの停泊に適してい るようでした。奥尻港へ戻って船を舫った岸壁の水 中を覗き込むと、うに、ほや、牡蠣、ムール貝、な まこなどびっしりくっ付いているのが見えたので、 モリ、ギャフなどで採って、買ったカニと一緒に、 豪華海鮮夕食を大いに楽しみました。 3 日 5:40 奥尻港出港。薄曇り、時々晴れ。茂津多岬近くなどで時々15−20kt の NE の風が吹いたり一時的に霧で視界 100m くらいになったりするも、概ね穏やかな中、機帆 走で 17:00 岩内港到着。 入港すると、KING BEE メンバーの乾君、藤原君の二人が飛行機とバスを乗り継いで、 すでに岩内港に到着して、頼んでおいたジンギスカンの材料をどっさり抱えて乗り込んで きました。その夜は 5 人で賑やかに、久しぶりの肉料理をどっさり食べて大満足。ビール も大いに飲みました。 4 日 5:20 曇り空、微風の中、岩内出港。小樽 直行を変更して余市に一泊することに。出てすぐ右 側に白い大きなドーム上の建物が三つ見えましたが、 泊原子力発電所で、沖には巡視船が一隻守りについ ていました。北上すると霧が出てきて、楽しみにし ていた積丹半島はずっと霧の中で全く見えず残念! 余市に近づく頃、細くて背の高い岩が海面から屹立 した蝋燭岩が見えたので、海図を見ながらま近くま で接近して見物。14:00 余市河口港に入り東岸壁内 側へ近づくと、元海上自衛隊員の余市フィッシャリ ーナ職員の方が待っていて、先端付近に係船金具が あると誘導してくれ、ロープを取って下さり、いろ いろ便利情報も教えていただきました。江戸時代に 松前藩とアイヌの交易を任された豪商の運上家が港 のすぐ横にあったので先ず訪問。立派な木の造りと、 遠山の金さんの父が奉行として訪問した場面の人形 が飾られていました。その後 15 分くらい歩いて、 お目当てのニッカウィスキー工場へ。藤原君、徳子 さん、僕の三人で一緒に 3 杯づつ試飲のウィスキー を楽しみました。徳子さんは、お酒も僕よりお強く、 7 さらに 70 台半ば近くと言うのに、観光中も坂道を僕より早くどんどん歩いていかれたのに は、本当に驚きました。夜は遠くの海岸で花火があり堤防の上から楽しむ。 5日 7:00 余市出港。11:00 小樽マリーナ入港。 東の風2−3m、曇り。 小樽マリーナも大きくて立派だけど、その前のホ テル、モールが大きくて賑やかでびっくり。余市で もんどりにソイが 4 匹入っていたのを焼き魚にして 昼食。午後、石原裕次郎記念館を皮切りに観光に出 掛け、町のコースを一渡り回る。小樽運河あたりは 風情がありなかなか結構。写真は沢山撮ったが帰っ たら油絵が描けるかな?夕食は運河近くの寿司屋へ。 やはり寿司屋が多いのに驚きました。 6 日 朝、乾君、藤原君が下船して帰路へ。残っ た 3 人は洗濯をしたり、モールでショッピングした り、水の補給をしたりしてから、夕食後 18 時 30 分 小樽マリーナを出港、夜間航海で天売島を目指す。 7 日 寒いとはいっても後日航海するオホーツク海側に比 べればましで穏やかな海を一晩走って、朝 7 時頃には天売島、 焼尻島の両方がよく見える位置に到達。海鳥が沢山棲息し、 糞で所々白くなった岸壁が切り立つ天売島西側を見物しなが ら北側へ抜け、右に転進して北東側にある天売港へ 9 時に入 港。幸いいい天気なのでレンタカーを借りて約 2 時間かけて 島を一周することに。北の断崖の上には鳥の巣穴が無数にあ り下の岩には多数の鳥が居るのが見えました。後でオロロン 鳥は今は 20 匹くらいしかいないと聞いたので、見ていたのは うみねこ、カラス、鵜、ウトウ? 港の食堂で昼食後、13 時に天売港をあとにして すぐ東にある焼尻島に 14:30 入港。岸壁に横付け すると一人の女性がやって来て物珍しそうにヨッ トを眺めだしたので、船内もご案内しました。す ると「私はボランティアで観光案内をしてるから、 よかったら近くを案内しますよ」とのこと。昔の 豪商の家(小納屋敷)を見学のあと、この方の案 内で木や草花の詳しい説明を聴きながら「オンコ の森」のハイキングコースを散策しました。オンコとは焼尻に多く自生する、一位の木が 地面を低く這うように生育した木のことです。案内いただいた方は根津峰子さんとおっし 8 ゃり、ねずみ猫、トムとジェリーでも郵便が届くのだそうです(笑)。焼尻島は天売と異な り、低くてなだらかな島で人も少なくのんびりした感じ。これが気に入って横浜から移り 住み、喫茶店を営んでいるユニークなイラストレーターの女性にも出会いました。 8日 港の出口でフェンダーが一個足らないのに気づいて引き返すと、隅に浮いていたの で、これを回収して 7:10 焼尻港出し、利尻島沓形港を目指して北進。曇り時々晴れ。始 め微風、後強まり入港前には強い北風。15:30 沓形入港、広く空いていて楽に横付け。鴛泊 は島の北東にあり、混んでるらしいのと北東が吹くとの予報だったので西の沓形にしまし た。しばらくして利尻町役場の若い職員が2人現れたので、2泊すると告げると1800 円徴収されました。ゴミ捨て場を尋ねると、知らないとのこと。「ヨットで長距離クルージ ングしていると、一番困るのは港にゴミ捨て場がないこと。お金を多少取るのはいいから、 ゴミ捨て場の面倒は見てほしい」といいましたが反応なし。あとで漁師さんが少し離れた ところのゴミ捨て場を教えてくれました。その後立派な町営温泉「ふれあいの湯」へ。 9日 高岡君は朝7時に一人でタクシーに乗って見返台まで行き、そこから単独で利尻 富士登山に挑戦。残る2人は午後1時にレンタカ ーを借りて、1時 20 分に到着する中西さんと僕 の家内を迎えに空港へ向かう。2人を乗せて計 4 人で島一周ドライブを開始。 運よく晴れてきて 各所でいい景色を堪能しました。中でもオタトマ リ沼では利尻富士が頂上まできれいに見え、それ が沼にも写ってしばらく見とれました。 16:45 見返台で無事下山してきた高岡君と合流。 後で案内書を見たら、西からの登山道は上級者向 きと書いてあり、東の鴛泊から大勢の人が上ってくる登山道と合流する所までは一人きり で、道は相当険しかったそうです。無事で良かった。車を返しに行くとレンタカー屋(兼 ハイヤー会社)のおばさんが大きなソイ 2 匹とアブラコ(あいなめ)2 匹を袋に入れて持っ ていたので「美味しそうな魚ですねー。そんなのどこで釣れるのですか」と訊くと、「あげ るよ」と。そして船に戻ると、背広姿の紳士が大き なタコ持参で訪問。聞けば利尻町長とのこと。最近 利尻に住み始め、ブログを作っているという人も写 真を撮りに訪問。夕食は5人で久しぶりに賑やかに 豊かな海鮮料理を楽しむことができました。 10 日 8:00 沓形出港。曇り、NE の風 20kt 超で しぶきを浴びながら礼文島香深港を目指す。幸い近 いので 9:30 に香深港に入港。緩めのハッチ、窓から 海水が入りソファーが濡れてました。用心用心! 郷土資料館を見た後、レンタカーを借 りてドライブ。南の桃岩展望台あたりの花畑がきれいということなので、先ずここへ。遊 9 歩道脇のお花畑は色とりどりの花が咲いていてそれなりに楽しめましたが、霧が深くて遠 景が見えず残念。次いで北端へ移動してスコトン岬へ。曇天で風が強く灯台が立つトド島 が荒涼として沖に見えました。 11 日 7:20 香深港出港。幸い風が落ち、薄曇の下で約 5 時間機帆走し 12:30 稚内入港。 西の内側堤防の中へ入って右折し北端の稚内ポート サービスセンター前の岸壁に舫う。沖縄からのシング ルハンドのヨット「海洋」の前に舫いました。ここは 漁船など居なくて空いています。ポートサービスセン ターは漁船員、港湾関係者、(一般観光者も OK)が休 憩するための施設ですが、ヨットで来た人にも親切で、 シャワー、トイレ、コインランドリーなど使え、ポリ タンに水も補給させて貰えました。係りのおばさんに尋ねると、ゴミ捨て場は無いとのこ と。小さくまとめてくれればと、ゴミ袋をひとつ引き取ってもらえました。公の場所から ゴミ捨て場を無くして、いったい日本はどうなってるのでしょうか。仕方がないので、生 ゴミを数マイル以上沖で時々レッコしました。以前瀬戸内海の或るマリーナで、高額を払 っているのにゴミは各自持ち帰って下さい、と言われびっくりしたことがあります。 14 時半に駅近くでレンタカーを借りて 5 人で、海岸に沿って信号なしでまっすぐに伸び る「日本海オロロンライン」を気持ちよくドライブしてサロベツ原野(原生花園自然教室、 幌延ビジターセンター)を観光。帰りは内陸側の国道を通り、途中、宮の台展望台に立寄 って、遠くに利尻富士が見える美しい牧場の眺めを楽しみました。午後は薄曇、時々晴れ でラッキー。戻ってから南へ 15 分ばかり歩いて副港市場の「港の湯」で入浴。朝もんどり に入っていたガヤ(メバルの一種)や多数のツブ貝(身はサザエに似てるが苦味が無く美味)、 前日もらっていたソイ、タコなどで、またもや買ったものは野菜と米と焼酎の夕食。 12 日 稚内連泊。朝、ポートサービスセンターでの洗濯とポリタンを使っての水補給、 空になったプロパンの充填などしてから、6 人が乗れ るレンタカーを借りて、空港へ二ノ宮さんを迎えに。 無事会えて一緒に最北端の地の宗谷岬とその西のノ シャップ岬へ観光に行きましたが、あいにくの霧雨 と強風で大変。 帰り道に稚内 温泉「童夢」と いう立派な建物の温泉で暖まってホットしました。二 ノ宮さんは多忙で一泊のみとのこと。明日、中西さん、 僕の家内と 3 人で帰られるそうで残念。では盛大に、 ということでカニを買い込んで豪華鍋料理の夕食。ま さかと思いつつ昼間入れておいたもんどりになんと 30cm超のカレイが一匹入っていた。 10 沢山買い物したのでこれは翌日に回すことに。 13 日 8:00 二宮さん、中西さん、家内の 3 人の見送りを受けて稚内出港。下船した 3 人は稚内公園を観光した後、買い物を楽しみ、飛行機で名古屋へ帰りました。また徳子さ ん、高岡君、僕の 3 人になり航海続行。出港時は曇っていたが、好転して穏やかになると の馬場さん予報だったのと、紋別はあまり好意的でなくヨットはひどいところへ留めさせ られると聞いていたので、夜も走って一気に網走まで行くことにする。 午前中曇り、見かけの風 NW10−15kt で回転数 1800rpm に落として概ね追い風で機帆 走、6kt 強で走る。午後になると晴れてきて見かけの風 W15kt になり好都合のリーチング (斜め後方)の風になったので 13:30−15:00 の間、エンジンを切って帆走(初日以来 2 回 目)。15 時に急に無風になりエンジン始動。今度は前から 15kt(真の風は 8kt)が吹いてき た。稚内で捕れたカレイで夕食。 14 日 夜半になると風はさらに弱まり、満点の星空。新月なので天の川もよく見え、夜 光虫もちらほら。寒流にも居るのだ! しかしさす が寒流、夜に入ると一段と寒くなり、パッチをはき、 トレーナの上からセーター、さらに厚手のオイルス キンを着ても寒かった。2:20 に東の空の一部がなん となく白くなってきたのに気がつき、3 時には魚網の 旗が見える状 態に。3:20 には きれいな朝明け、そして 3:55 に日の出!高緯度だと 実感する。網走港に近づくと数マイル沖深さ 80m く らいでも多数の旗を目にしました。多数のイルカの出 迎えを受けながら 8 時に網走港入港。網走ヨット協会 の菊池さんに電話して了解をもらいクラブのヨット が舫ってある岸壁に着けさせていただきました。まも なく菊池さんが来られいろいろ教えて下さる。北へ行って西へ曲がり、網走川を少し上っ たところの左側に道の駅があり、その岸壁にも係留できるとのことでした。後で行ったら 十分なスペースがあり、街中に近くてよさそう。幸い晴れて陸上は暖かかったので、JR 網 走駅までタクシーで行き、レンタカーを借りて観光開始。先ず東に走って小清水原生花園 を見物、戻って網走川ほとりの現役の網走刑務所へ。長い レンガ塀が印象的です。赤レンガの正門前に、道を隔てて、 囚人が作った製品の直売店がありました。家具などの木工 製品、革製品、陶器など、比較的安価で質も良さそう。僕 は三眺焼という青地の表面に白い粉が吹いたような焼き 物の二合徳利とぐい飲みのセットを購入。KING BEE の 備品にします。天都山西側に博物館網走監獄という観光名 11 所になっている所があり、広い敷地に、明治から昭和 59 年まで使われていた監獄の諸施設 が人形も交えて当時の状況が分かるようにリアルにて展示されていて、ついつい長い時間 をかけて見学しました。天都山からの眺めを楽しんだ後、網走湖畔へ降りて網走湖荘で入 浴。夜間航海の疲れを癒しました。夕方、網走ヨット協会の佐藤理事長がお出でになり、 知床半島付近の網の様子と付近航行の要領、文吉湾の状況など教えていただきました。後 で大変参考になり感謝。 15 日 網走見物は十分できたので連泊はやめて 8:30 網走港出港。晴れて穏やかな海を 機走して(フルメインを揚げてはいるが走行には 寄与せず)、12:45 宇登呂港到着。南側の新港に 入り、道の駅の裏の方の岸壁に横付け。近くのオ ロンコ岩(67m)へ急坂を登って登頂。上には遊 歩道があって、羅臼岳をバックに港を見下ろす雄 大な景色にしばし見とれる。下にはゴジラ岩と呼 ばれる奇岩も。北港は知床観光船、漁船が沢山停 泊していてヨットなどは無理な状況。 16 日 宇登呂連泊。朝バスセンターまで歩いて、 8:30 発のシャトルバスに乗って先ず一番奥のカ ムイワッカの滝へ。温泉が混じって 30 度くらい の水が岩肌を覆って流れるところを、靴下だけ がいいと言われて上ると小さな滝が二つありま した。次に戻り方向のシャトルバスに乗って知 床五湖で降車。熊が出ているからということで 湖は一つしか行けませんでしたが、広々とした 湖畔の草原に数 m の高さの木製遊歩道が長い距離にわたって通され、熊よけの電線が下方 に張ってありました。野生の鹿がそこここにたむろする広い草原と湖、背景には知床の山々 が連なり、晴天で見応えがありました。またシャトルバスに乗ってフレペの滝を見物して から宇登呂に戻る。今日は、小林君と池原君が空路やってきて網走で乗船の筈でしたが、 12 予定より 3 日も早く宇登呂へ入港したので、苦労してバスを乗り継いでこちらまで来る羽 目に。20 分歩いて「つくだ荘」へ温泉につかりに行き、船へ戻ると、ご両人はすでに船に 到着していました。5 人で近くの居酒屋で夕食。 17 日 朝起きるともんどりに小ぶりのガヤ(メバル)が 12 匹も入 っていて驚く。7:15 宇 登呂出港。晴れ後薄曇、 無風で海面は鏡のよう。 佐藤さんの話では、さけ網は沖合い数マイルに もなるが、岸側は通れる。ます網は短いがロー プを岸から取ってある。これらが大体交互にあ るので、岸近くを S 字を描くように通ればよい。 観光船の動きを見て学びなさい、とのことだっ たが、朝早いので観光船は見当たらず。 時々、通れないよう網があって沖出しもしたが、幾つもの滝が海へ流れ落ち、鳥の糞で 白くなった岩も散在する、絶壁連なる知床半島に沿って自由に航行。こんな贅沢ができる 幸せを噛み締めながら、惜しみつつ 12:00 に半島先端すぐ手前の文吉湾に到着。しっかり した高い堤防に守られた結構な広さの港があり、数隻の漁船、2−3 隻のモーターボートが 入っているくらいで、悠々と横付け。 しばらくすると番屋の長老風のおじさんがやって 来たので、一泊してもいいかどうか尋ねると、快く OK してくれました。それから津軽訛りの聞き取りに くい言葉で長々と、「このあたりは熊が多いので岸壁 がある辺りから外へ出ては駄目。一ヶ月ほど前も釣り 人が襲われた。中に女の人も居て、リュックサックを 放り投げたら、熊はその中の食べ物を探し始めて助か ったが、怪我をした。羅臼から、向こう側の海岸を歩いてやってきた無謀な青年がいたの で、熊が出るから早く帰れと注意した。わしらは慣れっこで、網の手入れをしていたら横 13 を熊が通ることがあるがお互いに知らん顔で何も起こらんが・・・。」 ヨットのすぐ横の岸壁に大きなタコが居るのを高岡君が発見しギャフで見事に捕獲。動 き回るので引っ掛けたまま吊るしておいたら、羅臼から来たという観光船の船長がやって 来て、「足の真ん中にある口に手を近づけると噛まれるが、それだけ注意すれば吸い付かれ ても大丈夫」と言いながら上手に胴の皮を裏返して中の臓物をちぎって捨てる。するとタ コは静かになった。この人が「船中に人が居ると熊がデッキに乗ってくることがあるから、 岸から船を少し離して寝ると安全」と言ったので、そうすることに。釣りをして港で一休 みしていたモーターボートの人に小林君が話しかけ、大きなソイ、ホッケ、タラをもらっ て来ました。また豪華海鮮料理で夕食。 18 日 8:00 文吉湾出港。13:00 羅臼入港。出港 して 2 時間くらいは豪雨で南の風 20kt を前方から受 け、エンジン回転数を 2500rpm にしても 5−5.5kt くらいまでしか艇速上がらず。後で雨が上がり、風 も 10kt くらいに落ちたが、強風時に波をまともに前 から食らわないようジグザグ走行もしたので、思っ たより時間がかかった。羅臼に入港すると、昨年宜 野湾でお会いした石川さんの「ジェニファー」が停泊していて、舫いロープを取って下さ いました。 15 時頃海上保安庁へ挨拶に行って、ロシア占有地域付近、 特に納沙布岬―貝殻島間、の通過方法、注意事項など親切に 教えていただく。書類の他、タオル、携帯電話防水バッグな ど数個もいただきました。巡視船から緊急連絡ができるよう VHF16ch をオンにして通るようにとのご指示あり。石川さ んご夫妻をお招きして KING BEE 船内で夕食。 19 日 羅臼連泊。雨と霧のため知床峠行きは取りやめて 森繁久弥展示館を見てから、洗濯、軽油補給。港を見下ろす 丘の上に映画「地の涯に生きるもの」で老漁師役を演じた森 繁久弥の銅像が建っていました。「知床旅情」は撮影を終え た時、ここで作られ、別れの日にみんなで歌ったそう。 20 日 7:20 羅臼出港。曇り。出て 1 時間足らずで、 「こじんまりした所が好きなので根 室の先の温根元へ行く」と言って先に出港された「ジェニファー」が引返してくるのに出 会う。「風の強い所があったので出直すよー」と。我々は国後の山々を左に見ながら、その まま南下。25kt くらいの西風に一時出会う。低い野付半島をかわして 14 時に根室入港。広 く空いているところへ横付け。保安庁の人 2 人が、網の位置、通過推奨航路などを記入し た“根室海峡情報図”など持って訪艇。ヨットなどの面倒を見てくれる“根室海援隊”の 山崎さんという人が居ると、連絡先を教えてくれたので電話をすると、すぐ車でやって来 14 て、レンタカー屋へ連れて行ってくれました。今は根室に住んでいるが、若い頃はレーシ ングヨットのクルーとして活躍された由。我々はレン タカーで、明日通ることになる問題の納沙布岬を陸か ら観察に。晴れていたので2マイル沖に海から斜めに 突き出た貝殻島灯台、こちらの陸から 0.8 マイルくら い出ているらしい日本側の魚網の浮きなどがよく見 えました。通れるのは貝殻島との中間点と網の間の 0.2 マイルの間で、霧が出たらどうなることかと心配。 山崎さんご夫妻を夕食にお招きしたら、魚介類をどっさりご持参いただき、ヨットの話が 尽きることなく夜中まで宴会。 21 日 4:20 根室出港。曇り、幸い霧無くNE の風 10ktの好条件の下、2 ポイントリーフメイ ンのみの機帆走で 貝殻島との間を無事通過。北 と南の離れたところに巡視船が一隻づつ、通過船 を見守るように止まっていました。太平洋に出て 久しぶりにうねりを感じつつ、13 時に霧多布に入 港。広く空いた岸壁に横付け。こじんまりした町 の背後の丘の上に立派な“ゆうゆの湯”があり、 徒歩で上って入浴。山崎さんご夫婦が車でここま で会いに来られ「ヨットに食べ物を置いておくか ら」と言われてお別れしましたが、戻るとこんぶ、 カレイ、クリがにがどっさりでびっくり。ご馳走 様でした。 22 日 ここで下船の小林君の見送りを受けて、 5:15 霧多布出港。 南の風 7kt。途中 ずっと濃霧で視界約 50m。エンジン音す れども船影見えない 状態で、回転灯を点 灯し、レーダーが頼りの航海。かもめも霧で飛び づらいのか何羽かがヨットに休みに来ました。釧 路港が近づくと 16chに「こちら 2 万トンの×× 丸、西港へ接近中、付近の船は注意してください。」 など聞こえるが姿は見えず。周りがぼんやりの中、 GPS、レーダーを頼りに入港して、釧路川を遡ると、前に幣舞橋、左にフィッシャーマ 15 ンズウォーフが見えてきたので横の岸壁に、14 時に無事横付け。フィッシャーマンズウォ ーフ MOO にはショッピング街、レストラン街が入っていて大賑わいで、KING BEE に近 づいて話しかけてくる人も多数。街中を散策したり、4体の裸婦の彫像が立つ幣前橋を渡 ったりして午後を過ごす。岸壁に“岸壁炉辺焼き”と書いた大きなテントがあり、3軒店 が入っていて、ここでいろいろ買って、陣取った炉で焼くというところ。我々も夕食に入 ると、平日なのに 6 時過ぎでほぼ満員。旨くて安くて量があって、幸せ! 23 日 釧路連泊。朝 8 時前、4 人でタクシーで JR 釧路駅まで行き、下船する池原君と 別れたあとレンタカー屋へ。 曇り時々晴れの天気に恵まれ、先ず広々とした釧路湿原見 物。遊歩道の散策を楽しんだ後、摩周湖を目指す。 誰の行いが良いのか、我々が到着する少し前から霧 が晴れたそうで、青い空の下、きれいな湖面が見え、 第三展望台にも立寄って、心行くまで見物できまし た。摩周湖を後にすると天気が悪化してきて曇りに。 屈斜路湖、阿寒湖を観光して戻る。エンジンのアワ ーメーターでは前回交換から 250 時間を越えていた ので、オイルとエレメント交換を実施。 24 日 4:30 釧路出港。襟裳岬に近い、75 マイ ル先の庶野(しょや)港を目指す。曇り。時々霧に 出会う。風は始め E10kt、後 15kt。視界 100m く らいの霧の中を 15:20 庶野港に入港し横付け。採 れた昆布を、曇天続きで干せないので一時保管のた めに岸壁から海中へ吊るす作業をしていたおばさ んたちに「どこか見物するとこないですか?」と聞 くと、「何も無いよ」と返事。“襟裳の春は、何も無い春・・・”が耳にこびりついてるの かな?街には食料品店、雑貨やが数件であとは何も無く淋しい感じだが、各住居が大きい と印象に残る。また、若い漁師が多く、一生懸命働いていたことも印象的。 25 日 レンタカー屋も無いため、10:30 発のバスに 乗って襟裳岬見物に出掛ける。30 分で到着。帰りのバ スは 14:50 分まで無いため、ゆっくり見物。“風の館” に風洞があって風速 40m まで体験できました。館内に は望遠鏡がいくつか置いてあり、ガラス越しに襟裳岬 の沖に連なる岩の上を見ると、ゼニガタアザラシが沢 山寝そべっており、ラッコが一匹仰向けになって浮かんでいました。岬の丘は草花で覆わ れていて、眺めていると、47 年前の夏に友人と二人でテントかついで北海道一周をして、 大雪山縦走、利尻富士、羅臼岳登頂などして、襟裳岬にやってきて、この辺りにテントを 16 張ったことを思い出しました。 港へ戻って早めの夕食を済ませ、曇天の中 18:15 指す。20 時 庶野港出港し 120 マイル先の室蘭を目 襟裳岬南3M 地点を通過。南の風 7kt。満月がしばらくきれいに見えていた が夜半に曇の中へ。 26 日 朝 6 時前から 8 時頃まで霧で視界 100m。はじめ岸から 10M 沖を走っていたが途 中から苫小牧沖 20M を目指し、ついで南東の室蘭手前の地球岬方向へ転針。全行程の 3 分 の 2 までは 1−2kt の追い潮、気温 20 度弱で寒かったが、その後は弱い逆潮になって暖か さを感じるようになる。温度計が 22.5 度に。14 時 室蘭港内のエンルムマリーナ室蘭に到 着。上陸すると函館でお世話になった小松さんが愛艇“マイウェイ”を上架して船底塗替 え作業中で久しぶりの再会を喜び合う。隣で作業中のカタマランの浅野さんをご紹介いた だく。浅野さんは 35 フィートのカタマランでハワイ、タヒチ回られて昨年ご帰国、来年は 米国西海岸へ行かれるそう。我々は洗濯、艇内の雑巾がけを実施。夕方、浅沼さんに車で 寂れた室蘭駅(今は東室蘭駅が中心地になっている) 近くの老舗の焼鳥や“吉田屋”へ送っていただき、鳥 ではなく豚なのに焼き鳥という室蘭名物料理を楽し みました。大変美味しかった。女将さんが作った“い ももち”(じゃがいもを蒸してつぶして裏ごししたも のに片栗粉を加えて錬って団子を作り、低い温度の油 で揚げたもの、バター焼きも OK)も旨かった。 27 日 室蘭連泊。朝タクシーで東室蘭駅まで行っ てレンタカーを借り、曇天の下、9 時過ぎに観光に出発。先 ず昭和新山見物。ケーブルカーで隣の有珠山に登ったが霧の 中で、洞爺湖などの景色は見えなくて残念。洞爺湖南岸沿い に走ってから西の山道を登り、G7 が開催されたウインザー ホテルを目指したが、濃霧でホテル全容が全く見えないまま 地下駐車場へ。中はさすがに立派だったが、巨大なガラス窓 から見えたのは霧だけ。昼食は紅茶ケーキセットで済ませて早々に下山。東に走って峠越 えをし、登別温泉へ行って、小雨降る中でクマ牧場見物。えさをねだるヒグマが沢山居ま したが、狭いところでなんだか憐れを感じました。17 時帰着。スーパーで買い物をし、夕 食はカレイ、あさり、いかなど入れたブイヤベース。 28 日 小松さんにお見送りいただいて 7:00 室蘭 出港。大沼公園北方の森港を目指して南西へ。曇り、 NW7−8 ノットの風を右舷から受け、ワンポイント リーフメイン、60%展開のジブで機帆走。森港に近 づくと、3 マイルくらい沖から向こうはホタテ網の浮 きがびっしりで埋まっているのが見える。港を 200 17 度に見る辺りに開きがあったので進入したら、早過ぎで迷い込みの状態に。岸の方へしば らく進むと、今度は西方への開きがあったのでそちらへ進んでいたら、北方から漁船が高 速で接近。「どちらへ?」と問われたので「森港」と答えると、「ついておいで」と言って ヨットのスピード(6−7kt)で親切に港内まで先導してくれ、係留位置も教えてくれ ました。11 時少し前に横付け。後で訊くと、港入り口の真北方向に通路が開いており、網 の北端に赤白一対の浮き灯標があるとのこと(出港のとき確認しました)。 上陸すると、大きなベルトコンベアが石ころのようなものをごろごろとトラックに落と している設備があり、高岡君が近づいて珍しそうに話しかけると、石ころ様のものはホタ テで、「やるから入れ物持ってきて」と言われたとのこと。バケツに 15 個ももらって帰っ てきました。でかした! 11 時過ぎから約 15 分歩いて JR 森駅へ行き、次の大沼公園行き は 13:19 と分かって駅前で昼食。2 両編成のワンマン列車で単線の函館本線をのんびり走っ て大沼公園駅で下車。遊覧船に乗ったり、橋 で結ばれた多数の小さな島々を 1 時間で歩く 島巡り散策をしたりしましたが、駒ケ岳は雲 の中で見えずじまい。5km ほど東に流山温泉 があると聞いてタクシーで。JR が開発した温 泉とのことで、太い木をふんだんに使ってあり、なかなかの温泉。すぐ近くの JR 駅から今 度は海岸周りの線で森へ帰る。もらったホタテと野菜の網焼きで夕食。ホタテの中身は大 きくてジューシーで大満足でした。 29 日 8 時起床。雨、SW の風6−7m。天気予報が芳しくないのでもう一日待つこと に決定。今回の航海で初めての天気待ちでした。軽油 240 リッター購入。 30 日 6:00 北海道最後の寄港地の森港を出港。帰りは違う港に寄ろうということで下 風呂より5マイル東の大畑港を目指す。 曇り、風は、始め NE、後に SW に変わり 7−12kt。 津軽海峡中央に近づくと急に波が高くなる。うねりが NE から来ているのに風は反対の SW からだからか波頭も崩れて白波が一面に。 エンジン 2500rpm に上げても潮流により左へ 40 度以上振られていることが GPS プロッターで分かる。しばらく走ると静かな海面になり、 14 時から晴れ。16 時に大畑港入港。広く空いている岸壁があったので横付け。道を尋ねた 漁協の人が親切に車でスーパーまで送って下さる。夕食は北海道料理のチャンチャン焼き。 フライパンにキャベツ、もやしなどの野菜を敷き、その うえにほっけ、鮭などの骨を除いた大きな開きの身を置 く。その上から味噌をみりんで溶いたものをかけて、ふ たをして焼く(というより蒸す感じ)。火が通ったらふた を取り、魚の身をほぐして野菜と混ぜていただく。美味 しいのでファンになり、自宅でもやりました。写真は羅 臼のレストランで撮ったもの。 31 日 6:10 大畑港出港、70M 先の八戸を目指す。曇り、時々雨や霧。西のち南の風 7kt。 18 尻屋崎まで逆潮 2kt、尻屋崎を回って南へ向かっても逆潮 2kt で不可解。岸から3M まで 近づくと逆潮が減少。15 時頃、突然「ズンッ」という感じでエンジン回転数が急減し、排 気が黒くなる。はしごを下ろして水中眼鏡で覗くと、プロペラが青シートを巻き込んでい る。後進に入れたり前進に入れたりしても自然に外れるようすはない。覚悟を決めてウェ ットスーツ、足ひれを身につけ、よく切れるナイフを持って潜る。少し切っては息継ぎに 上がり、30 分格闘して完全除去に成功。波風が無かったのが幸いでした。1 時間遅れで 16 時に再発進、18:10 八戸港入り口灯台通過。往路と同じく北西の奥へ進み、遊覧船シャーク 号の前に 19 時ちょっと前に横付け。すぐ近くの“極楽の湯”で疲れを癒し、隣の 1575 円 食べ放題の“旬菜会館”で夕食。 8 月1 日 6:20 シャーク号岸壁を離岸、向かい風(S)20kt 以上の予報のためナイトは やめて 63M 先の宮古を目指す。薄曇り。9 時くらいまでは風 E 約 6kt で穏やか。ヨット一 隻に追いついたので VHF で交信。鹿児島県阿久根を 4 月 20 日に出て、北海道を一周して 帰りの「Tinkerbell」の米次さんと分かる。シングルハンドなので無理せず 30M づつ刻ん でいて、今日は久慈港だそう。10 時頃から風真向かいに変わり見かけ 22kt(真 15kt)と なる。うねりも結構出てきたので風波を斜めに受け るようタックを繰り返しながら機帆走で南下し、 17:15 宮古港内閉伊川河口にある“海の駅シート ピアなあど”の岸壁に横付け。宮古湾手前から急に 熱気を感じ、ついに暑いところへ戻ってきたと実感 しました。すぐ前で、ちょうど夏祭りが始まり、民 謡、バンド演奏など楽しみながら、屋台のビールと つまみで夕食。海鮮焼きセットは安いのに食べ切れ ないくらいだった。 2日 5:40 宮古出港、やはり S の風が強く天気もいまいちの予報なので今日も刻むこと にして 70M 先の気仙沼を目指す。薄曇。午前中は N-NE の風。のち S に変わり 20kt 以上 になってしぶきが上がってくる。15:20 気仙沼入り口灯標通過。三陸の港は奥深くて湾口 からが長い。大規模の魚市場、係留された多数の大型漁船などを左に見ながら進み、最奥 部のすぐ手前の左が小さな湾になっていたので、そこへ左折進入し、道路横の長い岸壁に 横付け。「丘の上を自転車で走ってたら見えた」といって地元のヨット乗り(旅館経営され ている方)が来られ、「ここは良い停泊場所」と言 って、いろいろ便利情報を教えていただき、軽油屋 さんも呼んでもらう。西へ歩いて数分のところにあ る公衆浴場“亀の湯”で入浴し、その近くの“評判” の居酒屋“ぴんぽん”で夕食。安くて旨くて、月曜 なのに、広い店内は満員でした。 3日 5:55 気仙沼離岸。やはり予報はまだ芳し 19 くないし、石巻は遠回りになるので近く(33M)の女川へ行くことにしたが、外海へ出る と霧に囲まれる。周囲が全く見えないまま、レーダー、GPS プロッターを頼りに女川湾に 進入。両側にある魚網に引っかからないよう GPS を信じてど真ん中を奥へ。びっしりある 浮きが急に現れたりする。漁港入り口左右の赤白の 灯台も、見えないまま進んだが、突如まん前に見え てほっとする。GPS 様々!11:00 最奥部の岸壁が 広く空いていて横付け。近くに“マリンパル女川” と言う 3 階建ての大きな茶色のビルがあり、中は海 をテーマにした展示館、水産物販売店などになって いて、ここで時間をつぶす。近所の釣り道具屋でも んどりが 3000 円で売っていた(安い!)ので一個 購入。これまでのは 10 年以上使ってつぎはぎだらけになったので、これで安心。今度は、 引き上げ忘れで引きずって走ることのないよう注意しよう。 4日 6:05 女川出港。晴れ。今日も向かい風が強く見かけ 20kt。1P リーフメインと ステイスルの機帆走で 8 時頃金華山瀬戸を通過。始 め少し追い潮だったが、金華山を過ぎて西へ振ると 潮は無くなる。しばらして“さわら”が立て続けに 2 匹、ケンケンに掛かる。15:15 相馬港の中の松川 浦漁港岸壁に横付け。はじめ南東奥の船溜まりに入 ったが船で一杯だったので、手前の漁協がある方へ 移動したら広く空いているところがあった。周りに は何も無く、町まで6kmとのことだったので買い物もあきらめ。 5日 5:45 相馬港出港。馬場さん予報では今夜 19 時から 22 時くらいにかけて南の風が 強いがそれ以外問題なさそうなので、夜間航海して 200M 先の鴨川(千葉)まで行くこと に。晴れ。心配した逆潮もあまり無く、風は日中弱かったが、夕方には南風が吹いてきて、 予報どおり 19 時に見かけ 24kt になりうねりも強くなる。夜半過ぎに多少風が落ちる。 6日 晴れ、うねりもだんだん減ってくる。鴨川フィッシャリーナに電話すると、「午後 4 時半から 5 時半の間、入り口前でエビ漁の網を入れるので入港できない。4 時半より遅れ たら前で待機してほしい」とのこと。何とか間に合うだろうと走っていたら、向かい風が 結構強くてスピードが思ったより出ず、最後は短時間 3000rpm に上げ 8.5kt で走ったが、 入り口に着いたのは 4 時 40 分過ぎ。多くの漁船が並んで見ている中、何とか入港させても らいました。17 時に着岸横付け。軽油はいわゆる割高の“マリーナ価格”ではなくスタン ドが直接運んで来る、とのことだったので 180 リッター購入。高岡君がマリーナの自転車 で買い物に。その後連れ立って 10 分歩いて近所の旅館の風呂に入りに行く。 7日 6:30 鴨川出港。天気予報は晴れで穏やかとのことだったので、ナイトセーリング で一気に五ヶ所湾へ帰ることに。馬場さん予報では沖出ししてもずっと追い潮で、目を疑 20 う。家内からの携帯メールの海流予想図でも追い潮。黒潮がずっと離れてかなり沖まで反 流域らしい。実際、逆流だったのは石廊崎通過時の 1 時間く らいだけ(1kt 弱)で幸運。昼ごろ野島崎と大島の間を走っ ているとき、ケンケンに何かかっているのが見える。よく見 ると針は一つなのに、背びれが小と大の 2 個。ゆっくり引き 寄せると、なんと、引っかかっ た“しいら”を食わんと、ハン マーヘッドシャークがま近に くっ付いている。しいらを引き 上げたら、しぶしぶ方向転換し てかなたへ。しいらの尾びれは 一部ちぎれ、胴体にも歯形がありました。大島の北側、神子元島と横根の間を通り、夕暮 れ時に石廊崎沖を通過。空にいろんな色が混じって海にも写り、それらが時とともに変化 し、灯台の白、赤の点滅も見えて、美しかった。いつか絵にしよう! 8日 石廊崎から大王を狙い一直線に走る。夜半まで星空で天の川も見えたが、その後 時折弱い雨も降り出す。本船と時々出あうので気が抜けない。曇り空の中、五ヶ所湾へと 走り、13 時志摩ヨットハーバーに到着。 “クレイラ”の榊さん、 “フールズ No.1”の吉岡さ ん、迎えに来ておられた徳子さんのお嬢さんの礼子さんが舫いを取ってくれました。 4.終わりに 小杉さん他出発前に情報を下さった方々、盛さん、小松さん、浅沼さん、菊池さん、佐 藤さん、石川さん、山崎さん他航海中にいろいろお世話下さった方々、ずっと同乗して美 味しい料理を作っていただいた丹羽徳子さん、事前整備を手伝い、要所々々で同乗してく れた KING BEE メンバーの皆さん、八戸まで乗ってくれた力持ちの「ACY」の杉原さん、 有難うございました。お陰でさまで安全に楽しく航海を全うできました。 来年はみんなでハワイ、南太平洋へ行こう! 21
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