天井レンガの一部損傷に対する原因究明及び対策(PDF形式(2730kb))

資料1
天井レンガの一部損傷に対する
原因究明及び対策について
※ページ右肩に「本文P○、添付資料‐○」とあ
るのは、「再処理施設高レベル廃液ガラス固化
建屋 ガラス溶融炉(A系列)の一部損傷につ
いて(最終報告)」(平成22年7月28日付け報
告)との関係を示す。
平成22年8月6日
日本原燃株式会社
1
経過報告(その2)以降に実施した項目
○レンガ損傷関係
熱上げ、レンガ回収、ドレンアウト
回収したレンガの観察
ドレンアウト後の炉内観察
KMOCにおけるレンガ成分分析
KMOCで確認された類似事例の調査
2
原因調査のためのガラス溶融炉の熱上げ等の作業実績
原因調査のために実施するとした熱上げ、レンガの回収等の作業について、天井レンガが一部
損傷した状態で行うことに対する安全性の評価(経過報告(その2)で報告)を行った上で、作業を
実施した。
(1)ガラス溶融炉の熱上げ及びレンガ回収作業等における温度管理
原因究明に係る作業においてさらにレンガが損傷する可能性を低減するため、天井レンガに
発生する熱応力を小さくすることを目的として、間接加熱装置(ヒータ)の温度(以下、「ヒータ温
度」という)降下速度を抑制することとした。
そのための具体的な方策として、間接加熱装置を停止する際のヒータ温度の降下速度につ
いて、熱応力発生抑制のため10℃/10分程度以内となるよう運転を行うという方法を採用し
た。
今回の熱上げ等の作業実績として、ヒータ温度の降下を行った回数はガラス溶融炉の熱上
げ時及びガラスの抜き出し作業時の2回であった。
3
本文P3
添付資料‐1
原因調査のためのガラス溶融炉の熱上げ等の作業実績
熱上げ時においては、プログラムによる自動制御によりヒータ電力を徐々に降下させることで、ヒータ温度降下
速度10℃/10分程度以内という管理を概ね満足することができた。
30
ヒータA温度
間接加熱装置A温度
20
10
ヒータB温度降下速度
間接加熱装置B温度降下速度
ヒータA温度降下速度
間接加熱装置A温度降下速度
0
温度自動制御
-10
自動制御による電力降下
間接加熱装置停止開始
変圧比切り替えにより瞬間的に電力が低下し温
度降下速度が大きくなっているが、すぐにもと
の温度に復帰している。
26 0:00
10/3/26 3:00
10/3/26 6:00
温度降下速度[℃/10min]
温度/℃,電力/kW
間接加熱装置B温度
ヒータB温度
10/3/26 9:00
-20
間接加熱装置電力
10/3/26 12:00 10/3/26 15:00 10/3/26 18:00 10/3/26 21:00
-30
10/3/27 0:00
4
本文P3
添付資料‐1
原因調査のためのガラス溶融炉の熱上げ等の作業実績
ガラスの抜き出し作業時においては、熱上げ時と同様にプログラムによる自動制御によりヒータ電力を徐々に降
下させたものの温度降下速度が大きくなってきたことから、プログラムによる自動制御から手動による電力制御に
切り替えて温度を降下させた。
実績として、ヒータ温度降下速度10℃/10分程度以内という管理を概ね満足することができた。
30
20
間接加熱装置A温度
ヒータA温度
温度[℃],電力[kW]
10
ヒータB温度降下速度
間接加熱装置B温度降下速度
ヒータA温度降下速度
間接加熱装置A温度降下速度
0
自動制御による電力降下
温度自動制御
-10
間接加熱装置電力
/2 0:00
10/7/2 3:00
10/7/2 6:00
10/7/2 9:00
10/7/2 12:00
温度降下速度[℃/10min]
ヒータB温度
間接加熱装置B温度
変圧比切り替えや、制御
モード切替時に瞬間的
-20
手動による電力降下 に電力が低下し温度降
下速度が大きくなった。
10/7/2 15:00
10/7/2 18:00
10/7/2 21:00
-30
10/7/3 0:00
5
本文P3
添付資料‐1
原因調査のためのガラス溶融炉の熱上げ等の作業実績
今回の運転において、ヒータ温度降下速度がわずかな時間(十数分程度)であるが10℃/10分を
超える部分があった。
ドレンアウト後の間接加熱装置のヒータ温度降下時は、通常運転時と異なり炉内にガラスがない
状態であるため、解析温度条件で炉底部の温度をガラス液面位置に入力することによりガラスが
無い状態をモデル化し、運転実績の温度データを用いて解析を行った。
その結果、レンガには高い熱応力が発生しないことを確認。
⇒ヒータ温度降下速度10℃/10分の超過が今回のような一時的なものであれば、その際に発生する
熱応力は小さい。
6
本文P3、4
添付資料‐2
原因調査のためのガラス溶融炉の熱上げ等の作業実績
(2)レンガ回収作業
平成22年4月3日よりレンガ回収治具を用いたレンガ回収操作を開始し、平成22年6月17日
にレンガを回収した。主な時系列は以下のとおり。
4月
3日~ 20日
レンガ回収治具を用いた回収作業の実施。
レンガを中央に寄せることができず、レンガを回収することができなかった。
5月15日~ 21日
把持板に改良を加えたレンガ回収治具(改良1)を用いた回収作業の実施。
レンガを中央に寄せることができたが、レンガを回収することができなかった。
5月24日~ 26日
レンガ回収治具(改良前のもの)を用いた回収作業の実施。
レンガを把持することができたが、引き上げる際に脱落してしまった。
5月28日~ 30日
レンガ回収治具(改良1)を用いた回収作業の実施。
レンガを把持するが、レンガが縦起こし状態となっていることが想定され、回収することができなかった。
6月17日
レンガ回収治具(改良2)を用いた回収作業を実施し、レンガを回収した。
~
①レンガ回収治具の設置
②保守治具入口シャッタの
開操作
④レンガ回収治具の下降
通電
③通電の停止
⑤レンガの把持操作
7
本文P3、4
添付資料‐2
原因調査のためのガラス溶融炉の熱上げ等の作業実績
(2)レンガ回収作業
~
~
改良後
レンガ回収治具の
把持部
レンガ
②ハンドルの上昇幅が大
きくなるため、部品の
干渉防止のために取手
の高さを低くした
・把持板を角型・固定に
変更
・把持しやすいように
把持板間隔を拡大
低くする
^^^^^
今回のレンガ回収作業の成果として、今後
万一レンガが損傷した場合においても、損
傷したレンガを底部電極上まで移動させて
回収する手法を得ることができた。
回転してしまう
^^^^^
4月3日~20日にレンガ回収治具を用いて実施した作業において、レ
ンガの回収が困難であった要因として以下のものが挙げられた。
・レンガが炉底の中央からずれて、傾斜部に一端が乗り上げて斜めに
なり動き難い状態であり、さらに裏返し
(台形型のレンガの面積の小さい面(破断面)が下になった状態)に
なって不安定な状態にある
・把持板同士の間隔が狭く、レンガの向きによっては把持できない場合
があった。
・レンガを中央に寄せる操作にあたり、レンガに接触した円盤把持板が
回転してしまい、レンガを動かすことができなかった。
長くする
①ネジを長くし、ハンドル
の回転数を増加させた
広くする
改良後
(横たわった状態)
(縦起こしの状態)
8
本文P4
添付資料‐3
原因調査のためのガラス溶融炉の熱上げ等の作業実績
(3)ドレンアウト
レンガ回収作業の後、ガラス溶融炉内に保有するガラスを抜き出すドレンアウト作業を実施した。
最終的に10本分の流下ガラスを抜き出し、補助電極間抵抗の変化率などから推定されるドレンア
ウト後の炉内残留ガラス量を十数kg程度と評価した。
間接加熱装置
廃ガス
間接加熱装置
廃ガス
電極冷却
電極冷却
1
主電極間通電
2
3
4
5
6
7
8
主-底間通電
主電極
主電極
9
補 -底間通電
10
底部電極
補助電極
流下ノズル
ガラス固化
体容器
底部電極
補助電極
流下ノズル
結合装置
ガラス固化
体容器
結合装置
主電極通電可能範囲
補助電極通電可能範囲
通電停止範囲
9
本文P4
添付資料‐3
原因調査のためのガラス溶融炉の熱上げ等の作業実績
(3)ドレンアウト
今回のドレンアウトを通して主電極‐底部電極間、補助電極‐底部電極間の通電において、入力の
電流値と炉内ガラス抵抗から必要な電力が掛けられていることが確認でき、且つそれに伴う底部電
極温度の昇温が行われていることから、炉底部のガラス温度の上昇が問題なく実施できていること
が確認された。
温度(℃),主電極電力(kW)
A002
A003
A004
A005
底部電極温度
主-底抵抗
主底部間は、主電極間の回路
と完全に独立ではないため、主
電極間の電流・電力が変動し
た影響を受けて、主底電力が
増加した。
主-底通電によりガラス温度
が上昇し抵抗が低下したことで
電力が減少した。
ドレンアウトに伴うガラス液位
減少により主電極間電圧を減
少させたことによる影響。
補-底抵抗
主-底電力
補-底電流
主-底電流
主電極電力
主電極電流
補-底電力
/21 12:00
2010/6/22 12:00
2010/6/23 12:00
主底・補底電力(kW),主底・補底電流(A),主電極電流(A/100),抵抗(Ω×100)
A001
通電により底部電極温
度が上がっている。
2010/6/2:00
通電に伴う底部電極の昇温も確
通電に伴う底部電極の昇温も確
認できることから、底部電極の
認できることから、底部電極の
電極としての機能に問題はない。
電極としての機能に問題はない。
ドレンアウトにより炉内のガラ
ドレンアウトにより炉内のガラ
スをほぼ全て抜き出すことがで
きスをほぼ全て抜き出すことがで
きたたここととかからら、、底底部部電電極が損
極が損
傷・変形していることも考えに
傷・変形していることも考えに
くい。
くい。
10
本文P4
添付資料‐4
経過報告(その2)以降に確認された事実等
(1)回収したレンガの観察
回収したレンガを観察した結果、レンガはガラスに覆われているものの、回収治具の把持板の寸法
及びモックアップ試験実績との比較から、経過報告(その2)で示した原因により損傷した場合には
損傷部位がほぼそそのままの形状で損傷しているとした推定どおりの寸法・形状で天井レンガが損
傷していたことが確認された。
75
235
140
正
面
横向き
①
[寸法測定結果]
① 長さ:約24cm
② 幅 :約14cm
③ 高さ:約 8cm
④
②
①
③
11
本文P5
添付資料‐3
経過報告(その2)以降に確認された事実等
(2)ドレンアウト後の溶融炉内の観察
天井部、側壁部、炉底部を観察
ドレンアウトの状況、
損傷したレンガ以外に損傷が無いこと及びかくはん棒による損傷が無いことなどを確認
炉底部には、ガラスで表面が覆われているものの、レンガ片は確認されなかった。
①底部電極表面及び稜線部にガラスが残留している状態であり、過去のドレンアウト後のガラス残
留状況と比較しほぼ同等の状況であることから、ドレンアウトとしては良好な結果であったと考える。
天井部
側壁西面
側壁北面
稜線
主電極B
稜線
残留ガラス
補助電極B
補助電極A
主電極B
主電極A
底部電極
側壁南面
稜線
側壁東面
補助電極B
補助電極A
稜線
主電極A
イメージ図
底部電極
炉底部
12
本文P5
添付資料‐3
経過報告(その2)以降に確認された事実等
②天井レンガ、側壁レンガ、炉底部レンガについては、損傷したレンガ以外に損傷は確認されな
かった。また、かくはん棒による損傷は確認されなかった。
天井部
※炉内から見た図
ガラス温度計挿入孔
間接加熱装置B挿入孔
⑥
天井部
側壁西面
①
側壁北面
⑤
④
③
予備孔
主電極B
廃ガス冷却器挿入孔
主電極A
②
側壁南面
側壁東面
補助電極B
原料供給器挿入孔
N
補助電極A
底部電極
炉底部
予備オフガス挿入孔
間接加熱装置A挿入孔
13
本文P5
添付資料‐3
経過報告(その2)以降に確認された事実等
①
②
予備孔
N
レンガ損傷部は、損傷確認時
の状況と変わっている様子は
見られない
レンガ損傷部
N
表面付着物の剥離
表面付着物の剥離
間接加熱装置A挿入孔
③
曲がったかくはん棒が接触した跡
④
表面付着物の剥離
表面付着物の剥離
N
レンガ損傷部
N
原料供給器挿入孔
14
本文P5
添付資料‐3
経過報告(その2)以降に確認された事実等
⑤
⑥
N
ガラス温度計
間接加熱装置B挿入孔
表面付着物の剥離
N
15
本文P5
添付資料‐3
経過報告(その2)以降に確認された事実等
天井部
側壁西面
側壁北面
主電極B
主電極A
側壁南面
側壁東面
補助電極B
補助電極A
底部電極
炉底部
側壁部
側壁北面
側壁東面
側壁南面
⑧
側壁西面
⑨
主電極B
主電極A
補助電極A
補助電極B
16
本文P5
添付資料‐3
経過報告(その2)以降に確認された事実等
⑧
付着したガラスが割れ落ちた跡
拡大写真
レンガのひび割れ
拡大写真
レンガひび割れやガラスの剥離し
た跡が確認された
⇒通常のガラス溶融炉の使用状態
で発生するもの
付着したガラスが剥離した跡
拡大写真
17
本文P5
添付資料‐3
経過報告(その2)以降に確認された事実等
⑨
レンガのひび割れ
拡大写真
付着したガラスが剥離した跡
レンガのひび割れやガラスの剥離
した跡が確認された
⇒通常のガラス溶融炉の使用状態
で発生するもの
拡大写真
18
本文P5
添付資料‐3
経過報告(その2)以降に確認された事実等
③炉底部は、ガラスで表面が覆われているものの、レンガ片は確認されなかった。
A3
A1
天井部
側壁西面
側壁北面
稜線方向
稜線方向
主電極B
主電極A
側壁南面
側壁東面
補助電極B
B1
拡大写真
補助電極A
B2
レンガのひび割れ
底部電極
炉底部
主電極B
稜線
A1
残留ガラス
A2
B1
補助電極B
C1
A3
稜線
C1
補助電極A
C2
B2
C2
A4
底部電極
稜線
主電極A
稜線
通常のガラス溶融炉の使用状態で発生するようなレンガの割れや欠け以外のものは見られず、天井レ
ンガ損傷事象以外の新たに原因究明等を行う必要のある損傷事象は確認されなかった。
19
本文P5,6
添付資料‐5
経過報告(その2)以降に確認された事実等
(2)KMOCにおけるレンガの成分分析
アルカリ成分によるレンガ損傷の可能性を評
価するために、茨城県東海村の当社ガラス溶
融炉と同規模の確証改良溶融炉(KMOC)の
天井レンガ表層及び付着物等について試料を
採取し、アルカリ成分の浸透やレンガ成分の
分解の有無等について確認した。
天井レンガ表面全体にアルカリ成分が付着し
ていることが確認された。
天井レンガにアルカリ成分が浸透すること及
びレンガ表層サンプルからレンガ成分の分解
が確認され、それよりもレンガ内部の位置(ダ
ボ部の高さ)のサンプルからは、レンガ成分の
分解等は確認されなかった。
(分析方法)
①天井レンガへのアルカリ成分の浸透の有無
分析内容 : Li、Na、Al、Zr成分の分析
分析方法 : X線蛍光分析(XRF)、湿式分析
②βアルミナへの変化の有無
分析内容 : βアルミナ結晶の分析
分析方法 : X線結晶構造解析(XRD)
③ジルコンの分解の有無
分析内容 : Zr-Si結晶の分析
分析方法 : X線結晶構造解析(XRD)
目地
目地部への
アルカリ成分の付着・凝縮
レンガ
蒸発したアルカリ成分
レンガへの浸透
アルカリ成分とレンガ成分の反応により生成した
βアルミナ、ジルコニアの膨張による力が発生する
・アルミナの変質
レンガの脆化
・ジルコンの分解
20
本文P5,6
添付資料‐5
経過報告(その2)以降に確認された事実等
炉外側
4隅を欠いた構造としているため、
高い位置まで変色している。
炉内側
(b)サンプル採取位置及びレンガ変色部図
(a)サンプル取得位置写真
サンプリング位置
レンガ内部側
(分析サンプル取得)
表面側
(c)80mm 位置サンプル写真
(d)45mm 位置サンプル写真
(e)損傷したKMOCアンカレン
ガからのサンプル採取位置
21
本文P6
添付資料‐6
経過報告(その2)以降に確認された事実等
(3)経過報告(その2)以降に得られた類似事例
KMOCにおいて、間接加熱装置に近いアンカレンガのひとつが部分的に損傷していることが確認された。
損傷部位の観察結果から、アンカレンガのダボ部から亀裂が入り、レンガの角部分が欠けている状態であるこ
とが判った。損傷部位の観察結果及び運転データの評価等から、ガラス溶融炉(A系列)で見られた天井レンガ
の一部損傷と同様の原因により発生したものである。
オフガス出口
南東間接加熱装置
欠損部
ダボの R 部
北西間接加熱装置
予備(閉止)
22
本文P7
添付資料‐5
経過報告(その2)以降に実施した追加評価
(1)設計、製造の観点
経過報告(その2)では、レンガ組積構造に係る設計の妥当性確認を行い、ガラス溶融炉で採用されている
レンガ組積構造は一般産業で用いられるせり構造、ダボ構造を用いた構造であり、熱膨張等の吸収代も十
分であることから設計は妥当であると評価した。また、ガラス溶融炉築炉時の検査記録により、築炉が設計
どおり行われていたことを確認した。(経過報告(その2)報告後に行われた意見聴取会において、「目地の寸
法、目地寸法を確保するための施工管理方法等」について説明した)
(2)使用環境の観点(経年劣化による影響)
経過報告(その2)では、経年劣化による影響として、レンガの腐食速度等をふまえた経年劣化について評価
を行ったが、ガラス溶融炉に供給される高レベル廃液中に含まれるアルカリ成分が蒸発・揮発し、その成分が
目地等で凝縮することによりレンガが損傷する可能性について、KMOCの天井レンガの分析を行い、追加で
評価を行った。
分析結果から、アルカリ成分は天井レンガ表面からレンガ内部に浸透し、表層部分ではレンガ成分の分解は
あるものの、表層よりも深い位置(ダボ部の高さ)においてはレンガ成分の分解はないことが確認されたため、
アルカリ成分による影響が、天井レンガ損傷の原因となったとは考えられない。
23
本文P7,8
添付資料‐8
経過報告(その2)以降に実施した追加評価
(3)外力負荷発生の観点
ガラス溶融炉に関連する作業に伴う外力負荷発生として、発生応力と加速度の関係に係る評価方法も含め、
ガラス溶融炉に外力を加える可能性のある具体的な遠隔作業を考慮した評価を行った。
経過報告(その2)では、ガラス溶融炉に関連する作業に伴う外力負荷発生として、発生応力と加速度の関
係に係る評価方法も含め、ガラス溶融炉に外力を加える可能性のある具体的な遠隔作業を考慮した評価を
行った。
ガラス溶融炉に外力が加えられた場合、外力は直接レンガに作用するのではなく、ケーシング等の変位に伴
い発生する静的荷重あるいは加えられた外力による振動(加速度)としてレンガに作用する。
かくはん棒の遠隔操作によりケーシングに100kgfの荷重がかかる外力を想定した場合、それによる変位は
最大で0.003mm程度と評価しており、この程度の変位は天井レンガ上部の断熱材に吸収されるため、レ
ンガに対して曲げに至る力は発生しない。
ケーシング
断熱ボード
LP-135
変位の吸収イメージ
ファイバーウール
AZGS
24
本文P7,8
添付資料‐8
経過報告(その2)以降に実施した追加評価
経過報告(その2)で報告したとおり、当該アンカレンガを損傷させるためには1000G以上の加速度が必要で
あることを確認している。
ガラス溶融炉に関連する作業の代表的な例として、かくはん棒が溶融炉天井部に落下した場合を想定し、保
守的に100kgの重量物を10mの高さから落下させた場合にアンカレンガに作用する加速度を概算すると約6
4Gとなった。
ガラス溶融炉に関する遠隔作業で1000Gを超える加速度を発生させることは考えられず、遠隔作業による外
力が原因とはならない。
かくはん棒
②原料供給器負圧維持オリ
フィス開操作における振動
原料供給器
①かくはん棒と原料供給器
の接触
原料供給ノズル
損傷アンカレンガ
③はつり作業による振動
:振動
25
本文P8~10
推定原因及び対策
推定原因
経過報告(その2)以降に確認された事実等を踏まえた評価結果が経過報告(その2)において示した推定原
因に対して影響するものではなかったことから、推定原因は以下のとおりであると考える。
「天井レンガの一部損傷に対する原因究明の結果、過去に実施した間接加熱装置のヒータ温度降下が急激
であったため、その際に発生した応力が大きく、アンカレンガに亀裂が発生し、最終的に損傷に至った。」
天井レンガの一部損傷に対する対策
(1)天井レンガの損傷防止に対する対策
天井レンガの損傷防止に対する対策については、
・原因調査のために実施するとした熱上げ、レンガの回収等の作業において、間接加熱装置を停止する
際のヒータ温度降下速度の管理方法を用いた運転を行い、概ね満足することが出来たこと
・経過報告(その2)以降に確認された事実及び追加評価が、経過報告(その2)に示した推定原因に対し
て影響するものではなかったこと
から、経過報告(その2)で示した間接加熱装置を停止する際のヒータ温度降下速度が10℃/10分程度以内
となるように運転を実施することを天井レンガの損傷防止に対する対策として実施することとする。
26
本文P8~10
添付資料‐11
推定原因及び対策
(2)レンガ損傷の検知に係る対策
ガラス溶融炉内の負圧に係るインターロックの作動や電源異常等による計画外の間接加熱装置の加熱停止
は起こる可能性があり、その際に天井レンガが損傷する可能性は否定できない。
レンガが損傷した場合には、今回の天井レンガ損傷事象で見られたように、その影響は溶融ガラス流下性の
低下として現れる可能性がある。
溶融ガラス流下性の低下が見られた場合の対応としては、平成20年6月11日に報告した「再処理施設高レ
ベル廃液ガラス固化設備の安定運転条件検討結果報告」で示す対応手順に従い対応していくこととなるが、そ
の対応の中で溶融ガラス流下性の低下が損傷したレンガによる影響であると推定された場合には、レンガの回
収作業を行うこととする。
レンガ回収を行った後、ドレンアウトにより炉内のガラスを抜き出し、炉内観察を実施する。
また、今後の運転管理として、ドレンアウト(当面の間、最低でも隔年の頻度で行う)を行った際に、ドレンアウト
の状況や炉内の健全性を確認する。
27
本文P8~10
添付資料‐11
推定原因及び対策
廃液供給運転
流下性低下の指標が回復運転に
※1 この時点では、流下性低下の原因が、白金族元素堆積の
影響かレンガ損傷の影響かは判断できない
移行する判断基準に到達※1
回復運転へ移行
回復運転
洗浄運転の実施
改善効果の判断指標を
満足
YES
廃液供給再開へ
NO
※2
直棒挿入時に、
① 底部電極中央穴に挿入できない
② 底部電極上面高さより高い位置で直棒の降下が止まる
場合、または、曲棒操作時に
③ 引っ掛かりがある
場合には、レンガ損傷の可能性ありと考え(ただし、①の場
合にはかくはん棒を取り出し、真直度確認を実施)、
さらに、炉内温度、抵抗及び流下映像等の運転・監視データ
等を確認したうえで総合的にレンガ損傷の可能性があるか
を判断する。
かくはん操作の実施
レンガ損傷の可能性
※2
NO
YES
シャットダウン・炉内観察(次頁)へ
改善効果の判断指標を
満足
YES
廃液供給再開へ
NO
ドレンアウト(または再度かくはん操作)へ
28
本文P8~10
推定原因及び対策
(3)設備更新のために設計及び製作するガラス溶融炉への知見の反映
今回のガラス溶融炉天井レンガの一部損傷に係る原因究明で得られた知見をふまえ、今後、設備更新のために
設計及び製作するガラス溶融炉については、熱応力の発生を低減でき、脱落しにくいレンガ組積構造・形状や耐
アルカリ性に優れたレンガの採用等の検討を行い、必要に応じて反映していくこととする。
29