はじめに 太平洋島嶼国のデジタルオポチュニティ研究会 委員長 渡邉昭夫 2002 年 4 月 に 笹 川 太 平 洋 島 嶼 国 基 金 の 自 主 事 業 と し て 「 太 平 洋 島 嶼 国 の デ ジ タ ル オ ポ チ ュニ テ ィ 研究 会 」 を立 ち 上 げた 。 メ ン バー に は 国内 外 の 通信 政 策 に関 わ る 識者 に 委 員として参加いただくことができた。 笹川 太平 洋島 嶼国 基金 は 1989 年 に太 平洋 島嶼 国と 日本 との相 互交 流・ 相互 理解 を促 進 す るた め に 設立 さ れ た基 金 で 、太 平 洋 島 嶼国 の 人 材育 成 事 業に 重 点 を置 い て きた 。 と り わ け広 大 な 太平 洋 に 散在 す る 島々 に 住 む 人々 の た めに 遠 隔 教育 の 支 援を 早 く から 実 施 し て きた 。 他 方イ ン タ ーネ ッ ト の世 界 的 な 普及 に 伴 い多 く の 途上 国 に デジ タ ル ディ バ イ ド ( 情報 格 差 )の 問 題 が浮 上 し 、太 平 洋 島 嶼国 の 問 題も 改 め てそ の 関 連に お い て議 論 さ れ る よ う に な っ た 。 2000 年 以 降 に は 国 連 機 関 、 各 先 進 国 、 NGO が デ ジ タ ル デ ィ バ イ ド解 消の ため の支 援に積 極的 に取 組み 始めた 。援 助大 国で ある日 本政 府も 2000 年 の沖 縄 サ ミッ ト に お いて IT 憲 章 を 発表 し 、 途 上国 の 情 報 格差 の 問 題 に 本腰 を 入 れ るよ う に な っ たが 、 太 平洋 島 嶼 国の 問 題 には 十 分 の 配慮 が な され な か った 。 ア ジア 、 ア フリ カ へ の 支 援政 策 は 活発 に 議 論さ れ て いた が 、 太 平洋 島 嶼 国の 支 援 政策 が 具 体的 な 方 向性 を も っ て策 定さ れ てい る 様子 はみ ら れな か った 。そ こ で過 去 10 年 以上 遠 隔教 育 を中 心と し た 当 該地 域 の 情報 通 信 政策 に 関 わっ て き た 当基 金 が 、日 本 の 太平 洋 島 嶼国 に 対 する 支 援 政策の策定を目的として本研究会を設立した。 太平洋島嶼国にとって情報通信支援がなぜ重要なのであろうか? 遠 隔 教育 ・ 遠 隔医 療 な どの 福 祉 分野 は む ろ んの こ と 、そ れ 以 外で も 島 嶼国 が グ ロー バ リ ゼーションの世界を生き抜くために情報通信の改善は重要である。 グ ロ ーバ リ ゼ ーシ ョ ン が 何を 意 味 す るか は 人 によ っ て 異 なる 。 し か し、 グ ロ ーバ リ ゼ ー シ ョン に よ って 資 本 、労 働 力 、情 報 な ど の地 球 規 模の 移 動 が容 易 に なる こ と につ い て は 意 見が 一 致 して い る 。そ の よ うな 中 で 海 に囲 ま れ た小 さ な 島国 と し ては 、 世 界の 経 済 活 動 や文 化 活 動の 中 心 地か ら 遠 く離 れ て い ると い う 悪条 件 を 克服 し 、 むし ろ そ の特 質 を 活 か すこ と を 心が け る べき だ が 、そ れ に は 情報 通 信 の整 備 が 不可 欠 で ある 。 以 下太 平 洋 島嶼国の社会経済的な4つの選択肢と情報通信との関連について考察する。 < 移 住> か つ ては 国 家 が資 本 を 選ぶ 時 代 で あっ た が 、今 や 資 本が 好 ま しい 条 件 のあ る 土 地 を 選ん で 移 動す る 時 代に な っ た。 し か し 、島 嶼 国 の遠 隔 性 や小 規 模 な立 地 条 件は 、 資 本 を 誘致 す る 上で は 有 利に 働 か ない 。 む し ろ、 島 嶼 国の 人 口 が有 利 な 労働 市 場 を求 め て 海外へ移動することのほうが多い。 た と えば 、 ト ンガ や サ モ アで は 海 外 で生 計 を 立て て い る 人口 の 方 が 島に 残 っ てい る 人 口 よ りも 多 い 。こ う し た出 稼 ぎ の結 果 と し て、 彼 ら の故 郷 の 島々 が 過 疎化 し て しま う の は 、 島に 留 ま る人 た ち にと っ て も不 幸 な こ とで あ り 、ま た 、 出稼 ぎ に 出た 人 た ちに と っ i て も 、自 我 喪 失 の危 機 ( Identity Crisis) を 招 いた り 、 本 来の 文 化 を失 っ た 移 住者 集 団 (Diaspora)に な っ た り す る リス ク が あ る の で 望 ま し い こ と で は な い。 し か し 、 情 報 通 信 の環境が整備されれば、海外の出稼ぎ労働者と故郷の島に留まる人たちとの間で経済 的・精神的な絆を維持することはこれまでよりも容易になり、いわば一人の人間が 2 つ以上の故国を持つこともそう難しいことではなくなる。 < 観 光> グ ロ ーバ リ ゼ ーシ ョ ン の時 代 で も 動か な い もの が あ る。 土 地 がそ れ で ある 。 む しろ動くのは人の方であって、島嶼国に魅せられた人たちが島々へとやってくる。 観 光 が 島嶼 国 の 経済 に と って 重 要 な地 位 を 占 める 所 以 であ る 。 情報 通 信 の整 備 に より 島 嶼 国の観光情報の発信や、観光客を送り出す国の市場ニーズの把握が容易になるであろう。 さ ら には 仲 介 業者 を 必 要と し な い、 オ ン ラ イン 予 約 やク レ ジ ット 決 済 とい っ た こと も 可 能になるであろう。 < 資 本> 市 場 規模 が 小 さい と い う島 嶼 国 の 条件 は 、 通常 、 資 本誘 致 に は適 し て いな い 。 だ が 、島 嶼 国 が国 境 を 越え て 移 動す る 資 本 に魅 力 的 な条 件 を 提供 で き る場 合 も ある 。 そ の 顕著 な一 例 は、 ケ イマ ン諸 島 のオ フ ショ ア・ バ ンキ ン グで ある 。 人口 30 万人 程度 の この島は、銀行融資の扱い高で世界第 5 位にランクされると言われている。税金その 他 の 法的 な 規 制の 緩 い こと が 、 投資 家 に と って の 魅 力と な っ てい る の であ る 。 いさ さ か 皮 肉 では あ る が、 こ れ は、 島 々 をベ ー ス と する 取 引 には 規 制 当局 の 監 視の 目 が 届き に く い と いう 性 質 を利 用 し た、 し た たか な ア プ ロー チ で ある 。 太 平洋 で は クッ ク 諸 島が オ フ シ ョ ア・ バ ン キン グ を 重視 し て おり 、 バ ヌ アツ の よ うに 様 々 な税 制 上 の優 遇 措 置を 講 じ て い る 国 も あ る ( い わ ゆ る タ ッ ク ス ・ ヘ イ ブ ン )。 こ の よ う な オ フ シ ョ ア 金 融 の 管 理 運 営にも信頼性の高い情報通信の環境は必要である。 < 越 境犯 罪 > もち ろ ん 、法 の 網 の目 を く ぐ り抜 け や すい と い う島 々 の 特質 を 利 用し よ う と す るの は 、 リス ク 覚 悟の 投 資 家だ け で は なく 、 麻 薬、 ギ ャ ンブ ル 、 銃の 密 輸 、マ ネ ー ロ ン ダリ ン グ など の い かが わ し い類 い の 行 為に 携 わ る輩 も い る。 と く に国 際 的 な対 テ ロ 取 り 締り の 強 化の 必 要 が叫 ば れ てい る 今 日 、こ の 種 の国 際 犯 罪の 場 と して 島 嶼 国が 利 用 されることには十分な警戒が必要である。 また、資本といえども常に好ましい結果をもたらすとは限らないことは、短期資本(資 産 運 用投 資 ) の急 激 な 出入 り に よっ て 大 き な経 済 混 乱を 被 っ た1 9 9 7年 の ア ジア 諸 国 の 事 例が 示 す 通り で あ る。 い ず れに せ よ 、 法規 制 が 緩く 、 ま た法 が あ った と し ても そ れ を 守 らせ る 力 が不 足 し 勝ち な 島 嶼国 は 、 越 境取 引 に 従事 す る いか が わ しい 者 た ちが 集 ま る 格 好の 舞 台 とな り や すい 。 こ の種 の 危 険 を避 け る には 、 情 報の 管 理 が必 要 に なっ て く る。そういった点では情報通信は諸刃の刃ではあるが避けて通れない現実である。 こ の よう に 情 報通 信 を 、 距離 に 起 因 する 島 嶼 国の ハ ン デ ィキ ャ ッ プ を軽 減 し 、世 界 的 な情報時代を生きぬくための選択肢を広げる手段として積極的にとらえるべきである。 本報告書は2年間の研究会活動の成果を5つの章にまとめた。 ii 第 1 章で は 本 研究 会 の 政 策提 言 を 紹 介す る 。 なお 、 こ の 提言 を 策 定 する 際 に 多く の 示 唆 を 得 た ハ ワ イ ワ ー ク シ ョ ッ プ ( 2002 年 8 月 ) で の ワ ー キ ン グ グ ル ー プ の 報 告 も 参 考 として同章に入れることとした。 第2 章では 太平洋 島嶼 国の ICT の現状 に関す る報告 である 。太 平洋島 嶼国の ICT に 関 す るレ ポ ー トは こ こ 数年 種 々 の関 係 機 関 が作 成 し てお り 、 その 多 く がオ ン ラ イン 上 で 入 手 可 能 で あ る ( http://www.pita.org.fj/ な ど )。 そ こ で 研 究 会 で は Pacific Islands Forum (PIF)の前 情報 通信 政策 担当 ギル ド博 士に 概要 の執 筆を 依頼 し、 さら に 2002 年 PIF が 中 心 に な っ て 策 定 し た ICT 政 策 ・ 戦 略 計 画 の 分 析 を 佐 賀 委 員 が ま と め た 。 同 政 策 ・ 戦略 計 画 は当 該 地 域の 情 報 通信 政 策 を 考え る 上 で基 本 と なる も の であ る 。 中島 委 員 には 本研 究会 活動 の一環 とし て 2003 年3 月に実 施し たニ ュー カレド ニア にあ る太 平洋 共 同 体 事務 局 ( SPC) へ の 出張 報 告 を 基 に 太平 洋 地 域 の 遠 隔医 療 に 関 し て 概 観し て も ら った。 第 3 章 は ミ ク ロ ネ シ ア の 現 状 と 課 題 と 題 し 、 2003 年 3 月 に 実 施 し た ミ ク ロ ネ シ ア 出 張 ( 小 菅 、 佐 賀 、 田 中 、 ヒ ガ 委 員 ) の 報 告 と 、 JICA の 専 門 家 派 遣 で ミ ク ロ ネ シ ア 地 域 に 約 4ヶ 月 滞 在し た 織 田委 員 に その 調 査 結 果を ま と めて い た だい い た 。な お 織 田委 員 が JICA 派 遣 の 事 前 調 査 と し て 行 っ た 情 報 収 集 に は 本 研 究 会 が 協 力 し 、 同 氏 に は 帰 国 後 本 研 究 会 委 員 に 加 わ っ て い た だ い た と い う 経 緯 が あ る 。 2003 年 8 月 パ ラ オ で 開 催 さ れ た ワークショップ(パラオ ICT アドバイザリー委員会、PalauNationalCommunications Corporation、 ハワ イ 大 学 PAECESAT 共催 ) に は 本 研究 会 を 代 表し 佐 賀 委 員 に出 席 い ただいたが、その報告をヒガ委員が執筆した。 第 4 章は 国 連 と ITU が 主 催す る 「 世界 情 報 社会 サ ミ ット 」( World Summit on the Information Society: WSIS) に 関 し て ま と め た 。 も とも と 本 研 究 会 で は 太 平 洋 島 嶼 国 の 情 報通 信 支 援政 策 を 策定 す る と同 時 に 、 太平 洋 島 嶼国 の 人 々が 世 界 の情 報 通 信政 策 を 議 論 す る 場 に 参 加 で き る よ う 側 面 支 援 を 行 う こ と も 計 画 に 含 ん で い た 。 2002 年 の 時 点 で は 沖 縄 IT 憲 章 を き っ か け に 設 置 さ れ た ド ッ ト フ ォ ー ス の 活 動 に 注 目 し た が 、 2003 年 1 月 に 日本 で 開 催 さ れ た 「 WSIS ア ジ ア 太 平 洋 地 域 会合 」 に 本 研 究 会 と オー ス ト ラ リ ア の 研 究 機 関 , The Foundation for Development and Cooperation( FDC) が 太 平 洋 イ ベン ト を サイ ド イ ベン ト と して 実 施 し 、大 き な 成果 を 上 げた ( 東 京宣 言 に 太平 洋 島 嶼 国 の 問 題を 新 た に 盛 り 込 ん だ) こ と を き っ か け に、 WSIS の 活 動 に 重 点 をお く よ う に な っ た。 ピ ー ク委 員 に はこ の 東 京会 議 に 関 し報 告 し てい た だ き、 東 京 会議 を き っか け に 本研究会のメンバーとなっていただいた FDC のマシソン委員には 2003 年 12 月にスイ ス、ジュネーブで開催された WSIS での太平洋イベントの報告をまとめていただいた。 第 5 章 で は 太 平 洋 島 嶼 国 に 応 用 可 能 な 日 本 の 試 み と し て KDDI 研 究 所 の 山 崎 氏 に 奄 美 大島 で の実 験 な どを 下 敷き と した 無 線 LAN 利 用 促進 に 関し て まと め て いた だ いた 。 2002 年 に メ デ ィ ア 教 育 開 発 セ ン タ ー の 客 員 助 教 授 と し て 日 本 に 滞 在 し た ヒ ガ 委 員 に は 日 本 と太 平 洋 島嶼 国 を 結ぶ 遠 隔 教育 の 可 能 性に つ い て技 術 な らび に 内 容の 観 点 から 調 査 研究し報告していただいた。最後に 2002 年 12 月に首相官邸が主催する IT 戦略会議の 具 体 的 試 案 「 ア ジ ア ブ ロ ー ド バ ン ド 計 画 」( 総 務 省 ) に つ い て 、 パ ブ リ ッ ク コ メ ン ト の 募 集 があ り 、 本研 究 会 から コ メ ント を 提 出 し、 最 終 計画 書 に は支 援 政 策を 太 平 洋島 嶼 国 へ も 拡大 す る こと が 盛 り込 ま れ た。 日 本 の 情報 通 信 支援 政 策 とし て は 初め て の 具体 的 施 iii 策であるこの「アジアブロードバンド計画」について佐賀委員にまとめていただいた。 最 後 に研 究 会 の発 足 以 来 諸方 面 か ら ご協 力 を 得る こ と が でき た こ と に感 謝 し たい 。 ハ ワ イ のワ ー ク ショ ッ プ には サ モ アの 文 部 大 臣を 始 め 多く の 方 が自 費 参 加を し て くだ さ っ た 。 WSIS の 東京 会 議 で は 短 期 間 の準 備 に も 拘 ら ず 島 嶼国 の 多 数 の 関 係 者 が参 加 し 、 早 朝から深夜まで草稿作成に努力した。 こ の 報告 書 が 日本 の 太 平 洋島 嶼 国 の 情報 通 信 支援 政 策 の 一助 と な り 、同 時 に 太平 洋 島 嶼 国 の 情 報 通 信 の 改 善 に 役 立 つ こ と を 願 っ て い る 。 な お 、 本 研 究 会 は フ ェ ー ズ II と し て平成 16 年度からさらに2年間継続する予定である。 iv Foreword Professor Akio Watanabe Chairman Pacific Islands Digital Opportunity Research Committee November 2004 The Sasakawa Pacific Island Nations Fund (SPINF) launched the Pacific Islands Digital Opportunity Research Project (PIDO) in April 2002. Members of the committee include both Japanese and foreign experts in the field of telecommunications policies. The SPINF was founded in 1989 in order to promote mutual understanding and exchange between Japan and the Pacific Island Nations. It aims at human resource development for the people of the Pacific Islands and has been extending support for, among other things, distance education throughout the Pacific region. As use of the Internet spreads throughout the globe, the problem of digital divide was recognized, requiring closer attention to and intense discussion about the state of affairs in the Pacific Island Nations. From around the year of 2000 various organizations from the United Nations, developed nations and NGOs began to address issues of digital divide. As for the Japanese government, it announced an IT Charter on the occasion of G8 Summit at Okinawa in 2000, indicating it’s supportive stance in alleviating digital divide problem. Despite this and other encouraging initiatives, the Pacific Island Nations has not received adequate attention. While there have been various projects for assisting the developing nations in Asia and Africa, none of them included specific considerations for the Pacific Island Nations. To address this imbalance, the SPINF established the PIDO research committee with the objective of formulating Japan’s assistance policy for the Pacific Island Nations. With over ten years of experience concerning ICT policy centered on distance education within the region, the SPINF thought it should take an initiative for that purpose. There are several reasons why ICT assistance is of special importance for the Pacific Island nations. Apart v from obvious benefits to be obtained from such activities as distance education and telemedicine, information and communication technologies (ICT) can and should be utilized in order for the Pacific Island Nations to survive and thrive in the world under extensive globalization. Globalization means different things to different people. They will all agree, however, about the fundamental fact that it is characterized by facilitation of movement of capital, labor, information and other resources on a worldwide basis. There can be various ways of utilizing ICT to overcome peculiar difficulties of being a small island country surrounded by a vast ocean and located far from centers of economic and cultural activities of the world. Put it differently, small island nations can take advantage of those characteristics to create new opportunities by make a best use of ICT. This is what makes the development of ICT infrastructure vital to the Pacific Island Nations. Let us try to illustrate the point by considering four socioeconomic options that are hopefully made available in the age of ICT for the Pacific Island Nations. (1) Emigration Traditionally, it was the nation that chose capital; now, capital chooses and moves to locations in search of favorable conditions. However, remoteness and mini-scale -- geographical and social conditions peculiar to most of the Pacific Island Nations -- are not conducive to attracting sufficient capital. Rather, it is the people of the islands that emigrate overseas in search of more favorable labor market. For example, a higher percentage of Tongans and Samoans live abroad than in their home countries. If their home islands became depopulated as a result of emigration of productive age groups, that would be unfortunate both for those families who remain on the islands and for the emigrant workers themselves who risk suffering from an identity crisis and degenerating into diasporas. However, in the age of globalization with the facilitation of movement of people and distant communication, it is becoming easier for island people to have, shall we say, double homelands by sustaining economic and psychological ties between the emigrant workers abroad and those who remain on the native island. Remittance is already an important means connecting the emigrants and their homeland. ICT can be utilized to reinforce those traditional means of connecting the emigrants and their homeland. vi (2) Tourism Even in the age of globalization, there is one thing that does not move, namely land. Rather, people from overseas attracted by the beauty of nature, for instance, do come to remote lands. That is why tourism is an important industry for many island nations. By developing adequate an ICT infrastructure the Pacific Island Nations can publicize tourism information more effectively and grasp market needs of target countries more easily. Online reservations will eliminate troublesome booking procedures and payment can be easily accommodated with online credit card remittance. (3) Capital Due to the limited size of their markets, the island countries are not usually suitable for attracting capital. They can provide, however, an attractive option for capital moving across national boundaries in a rather ironical manner. An outstanding example of this is the offshore banking of Grand Cayman. This island, with a population of about 30 thousand, is said to rank fifth in the world in terms of booking bank loans. The fact that tax regulations and other legal restrictions are loosely enforced is a factor of interest to investors. This also is a hardheaded approach that takes advantage of the region’s peculiarities, namely the difficulty for the regulating authorities to fully exercise their control over transnational activities based on the island. The Cook Islands, for instance, place an emphasis on offshore banking. Another example is Vanuatu, which adopts various preferential measures in taxation (so-called tax haven). The maintenance and operation of these offshore financial systems require a highly reliable ICT environment. (4) Transnational Crimes Of course, it is not only risk-taking investors that try to exploit the nature of the islands’ where it is relatively easy to evade the law, but also those who engage in illegal and indecent activities, such as drug trafficking, gambling, weapons smuggling, money laundering and so on. In this age of global war on terror in which countries are called upon to strengthen anti-terrorism countermeasures, we need to be particularly aware of the danger to Pacific Island Nations that are used as a base to conduct international crime. It also is true that capital does not always lead to favorable results, as is illustrated in the 1997 financial crisis of the Asian countries where the sudden influx and corresponding outflow of short-term capital (portfolio investment) brought about major financial chaos. In any case, there is a tendency for dubious transnational actors to become concentrated in the islands where legal regulations are loose to begin with vii and that, even if there are regulations, the government lacks the capability to enforcing them. From that point of view, ICT may be a double-edged sword, although one that cannot and should be avoided. In conclusion, always keeping in mind of the last-mentioned pitfall, ICT should be actively developed as a tool to broaden socio-economic opportunities available to Pacific Island Nations by compensating for the handicap of geographical distance. Contents of the report This report is the result of two years’ activities of the PIDO Committee and made of five chapters. Chapter 1 introduces the PIDO committee’s policy proposal. For reference purposes, the chapter includes the working group’s report about the Hawaii Workshop held in August 2002. At the Workshop many suggestions were brought to light, many of which are incorporated into the committee’s policy proposal. Chapter 2 reports on the current state of affairs of Pacific Island Nation’s ICT. Various institutions have compiled reports on the Pacific Island nation’s ICT status, many of which are available online (e.g. http://www.pita.org.fj/). The committee requested Dr Guild, former IT policy advisor of the Pacific Islands Forum (PIF), to write the outline. Committee member Prof. Saga compiled an analysis of the ICT Policy and Strategy Plan; a plan mainly created by PIF in 2002 and is fundamental when considering IT policy for the region. It includes also a review of telehealth in the Pacific region based on Committee member Prof Nakajima’s field report on his visit to the Secretariat of the Pacific Community located in New Caledonia. That was conducted as part of the committee’s activities in March 2003. Chapter 3 addresses the current issues facing Micronesia and includes the results of surveys conducted by Committee members Prof. Kosuga, Prof. Saga, Mr. Tanaka and Ms. Higa during their visit to Micronesia in March 2003. Also included is the field report by Mr. Orita, who visited Micronesia for four months as a JICA expert. Mr. Orita was supported by the Committee in information gathering prior to the on-site survey for JICA and later became a member of the PIDO committee. The last item arose out of the attendance of Prof. Saga in August 2003 at the Workshop held by the Palau ICT Advisory Committee, Palau National Communications Corporation and PEACESAT of University of Hawaii. Ms. Higa authored the report from the workshop. viii Chapter 4 relates to the World Summit on the Information Society (WSIS) organized by the UN and ITU. Originally included in the committee plan (in addition to establishing an ICT assistance policy for the Pacific Island Nations) was the goal of creating a place for Pacific Island Nation people to participate in dialogue on the World’s IT policies. As of 2002 the DOT Force activities were highly recognized as an outgrowth of the Okinawa IT Charter. In January 2003, at the WSIS Asian Pacific Regional Conference held in Japan, the PIDO committee in association with the Foundation for Development and Cooperation (Australia) held a side event concerned with the Pacific Island Nations. This was instrumental in making the issues facing the Pacific Island Nations addressed in the WSIS Tokyo Declaration. This also led to PIDO placing more emphasis on WSIS-related activities. Committee member, Mr. Peake, reports on the Tokyo conference. Mr. Mathison also reports on the Pacific events held by WSIS at Geneva, Switzerland. Chapter 5 contains a summary by KDDI’s Mr. Yamazaki on the promotion and use of wireless LAN systems that was piloted on the island of Amami Oshima, south of Kyushu, Japan. This is a method that could be applied in the Pacific Island Nations. Committee member Ms. Higa, who stayed in Japan during 2002 as a Visiting Associate Professor at the National Institute of Multimedia Education, reports on her research into the potential for distance education in linking Japan with the Pacific Island Nations from a technological and contents perspective. Finally, Prof. Saga writes about the Asia Broadband Program, Japan’s first concrete policy for ICT international assistance. PIDO committee offered comments in December 2002 to a request for public comments on the Asia Broadband Program (Ministry of Internal Affairs and Communications), which was overseen by the Prime Minister’s Office. As a final point, we would like to thank many individuals and organizations that generously offered cooperation for the activities of the PIDO committee since its inception. Many individuals, including the Education Minister of Samoa, attended at the Hawaii Workshop with their own budget. We were also deeply impressed by those participants from the Pacific Island Nations in the Tokyo WSIS conference, who worked hard from early morning to late at night on creating the draft of the report. We sincerely hope this report will be used for improving Japan’s ICT assistance policy for the Pacific Island Nations. It is also hoped that it will contribute to improvement of ICT in the Pacific Island Nations. The PIDO committee enters its second phase, which will continue for two years from 2004. ix 目 次 はじめに......................................................................................................................... ⅰ Foreword ................................................................................................................... ⅴ 太平洋島嶼国のデジタルオポチュニティ研究会委員リスト........................................... ⅹⅱ 研究会記録.................................................................................................................... ⅹⅳ 第 1 章 研究会からの提言 Chapter1:PIDOPolicyRecommendations 太平洋島嶼国のデジタルオポチュニティのための提言......................................................2 PolicyRecommendationsforthePacificIslandDigitalOpportunity..........................8 AGlobalSummaryofPIDOWorkingGroupRecommendations.............................15 第 2 章 太平洋島嶼国の ICT の現状 Chapter2:CurrentStatusofPacificIslands-OverviewandEnvironmentalScan PacificIslandsICTStatusOverview RobertGuild......................................................................................................................22 太平洋島嶼国・地域の ICT 政策・戦略計画 佐賀健二............................................................................................................................26 SPCE-Healthproject 報告書 中島功...............................................................................................................................32 第 3 章 ミクロネシアの現状と課題 Chapter3:CurrentStatusofMicronesia-OverviewandEnvironmentalScan MicronesianMissionReport ToshioKosuge,KenjiSaga,MasatomoTanaka,andChristinaHiga .............................................40 x ミクロネシア 3 国における遠隔教育・遠隔医療開発へ向けての提言 織田知則............................................................................................................................70 APacificIslandLeadershipWorkshopSummary “CommunicationSatelliteServices:NewOpportunitiesforthePacificIslandRegion” ChristinaHiga ...................................................................................................................93 第 4 章 世界情報社会サミットと太平洋島嶼国 Chapter4:WSISandPacificIslandNations PacificIslandCountries:InternationalPolicyMakingandICTforDevelopment AdamPeake ....................................................................................................................114 PacificIslandsDigitalOpportunityProjectintheWSISGeneva2003 StuartMathison ...............................................................................................................129 第 5 章 太平洋島嶼国に応用可能な日本の試み Chapter5:JapaneseExperiencesandPossibleApplicationstothePacificIslands 太平洋島嶼地域における無線 LAN 技術利用の促進に係る提言 山崎克之..........................................................................................................................174 Proposal on Promoting the Exploitation of Wireless LAN Technology in thePacificIslandsArea KatsuyukiYamazaki ......................................................................................................179 Bridging Telecommunication Networks and Shared Program Areas Between Japan,HawaiiandthePacificIslands ChristinaHiga .................................................................................................................185 IT 戦略会議の具体的試案「アジアブロードバンド計画」の太平洋島嶼国への汎用性 佐賀健二..........................................................................................................................207 各章論文構成.............................................................................................................216 xi 太平洋島嶼国のデジタルオポチュニティ研究会委員リスト TheCommitteeforthePacificIslandsDigitalOpportunityStudyProject <委員長 Chair> 渡邉昭夫 平和安全保障研究所理事長 (笹川太平洋島嶼国基金運営委員長) ProfessorAkioWatanabe President,ResearchInstitutefroPeaceandSecurity (Chair,SteeringCommittee,SasakawaPacificIslandNationsFund) <委員 Committee> 嘉数啓 琉球大学理事 Dr.HiroshiKakazu,VicePresident,UniversityoftheRyukyus 小菅敏夫 電気電信大学電気通信学部人間コミュニケーション学科教授 ProfessorToshioKosuge,UniversityofElectro-Communications 佐賀健二 独立行政法人 情報通信研究機構 招聘研究員 Professor Kenji Saga, Visiting Researcher, National Institute of Information and CommunicationsTechnology 田中正智 電気電信大学歴史資料館学術調査員 Mr.MasatomoTanaka,Researcher HistoricalMuseum,UniversityofElectro-Communications 中島功 東海大学総合医学研究所 先端医工学部門 教授 Prof.IsaoNakajima,TokaiUniversityInstituteofMedicalSciences ノーマン・オカムラ ハワイ大学PEACESAT 博士 Dr.NormanOkamura,TelecomSpecialist SocialScienceResearchInstitute/PEACESAT,UniversityofHawaii クリスティーナ・ヒガ ハワイ大学PEACESAT 運営部長 Ms.ChristinaHiga,Director SocialScienceResearchInstitute/PEACESAT,UniversityofHawaii xii 会津 泉 DOTForceNPO 日本委員会 (国際大学グローバル・コミュニケーション・センター)主幹研究員 Mr.IzumiAizu,ExecutiveResearchFellow CenterforGlobalCommunications,InternationalUniversityofJapan アダム・ピーク DOTForceNPO 日本委員会 (国際大学グローバル・コミュニケーション・センター)主幹研究員 Mr.AdamPeake,ExecutiveResearchFellow CenterforGlobalCommunications,InternationalUniversityofJapan 織田 知則 日本アイビーエム Mr.TomonoriOrita,IBMJapan,Ltd. べリス・グウィン 開発協力財団 理事長 Ms.BerisGwynne,ExecutiveDirector,TheFoundationforDevelopmentCooperation スチュアート・マシソン 開発協力財団 プログラム・マネージャー Mr.StuartMathison、ProgramManager,Information&CommunicationforDevelopment TheFoundationforDevelopmentCooperation <事務局 Secretariat> 窪田 新一 笹川太平洋島嶼国基金 室長 ShinichiKubota,Director,SasakawaPacificIslandNationsFund 早川理恵子 笹川太平洋島嶼国基金 プログラム・コーディネーター Ms.RiekoHayakawa,ProgramCoordinator,SasakawaPacificIslandNationsFund xiii 研究会記録 第1回「太平洋島嶼国のデジタル・オポチュニティ研究会」 日 時:平成14年5月29日(水) 11時30分より13時30分 場 所:日本財団ビル 議 事: 1. 委員の紹介 2. 事業の概要 渡辺委員長 3. 成14年度事業計画について自由討議 3.1 ハワイでのワークショップに関して ヒガ委員 3.2 GLOCOM との共催事業に関して 会津、ピーク委員 3.3 沖縄と南太平洋地域との共通アジェンダ 嘉数委員 3.4 COL,PIF,PECC, 総務省等他の関連組織の活動 事務局 3.5 他委員からの提案 4. その他 第2回太平洋島嶼国のデジタル・オポチュニティ研究会 日 時:平成14年11月21日(木) 11時00分より14時00分 場 所:日本財団ビル、笹川平和財団会議室 Agenda: 1. ReportonHawaiiMeeting2002byDr.Watanabe,Ms.Higa 2. CollaborationworkwithPECC-PINbyDr.Watanabe,Dr.Kosuge 3. HawaiiMeetingJanuary2003byMs.Higa 4. Planfor2003(ResearchMission,Meetings,InterimReportandetc.) 5.Reporton “MicronesianRegionalDistanceLearningand TelehealthSatelliteTelecommunication Network” byHisExcellencyBillyKuartei,ChiefofStaff,RepublicofPalau 6.Others xiv 第 3 回太平洋島嶼国のデジタル・オポチュニティ研究会 日 時:平成15年1月11日(土)10時00分より12時00分 場 所:国連大学 本部ビル「UN ハウス」5階 CommitteeRoom2&3 Agenda: 1. ReportfromPIDOcommittee 1.1 NetworkingIslandSocieties-ACaseofOkinawa-byDr.Kakazu 1.2 J-NetandPEACESATsatellitelinkageforOkinawaproject”byMs.Higa 1.3 TelehealthinPI/PlanforstudytriptoNewCaledonia/WHOactivities”byDr.Nakajima 1.4 ReportoftheAsiaBroadbandProgram”byDr.Saga 1.5 ReportonWSIS”byMr.Peak 2. ReportfromGuestorganizations 2.1 “LocalcontentsofMediaforICT”byMr.JohnsonHonimae,PresidentofPINA 2.2 Report on activities of FDC by Ms. Beris Gwynne, Executive Director, The Foundation for DevelopmentCooperation 2.3 ReportonICTactivitiesinYap”byMr.JamesStevenson,EducationTechnologyEngineer,Yap StateEducationEnterprisingDepartment 2.4 ReportonITCactivitesofUNESCO”byMs.TarjaVirtanen,RegionalCommunicationAdviser forthePacificStates,UNESCOOFFICEforthePacificStates 2.5 “Report on UNDP meeting in Palau” by H.E. Billy G. Kuartei Chief of Staff, Office of the President 3. Others 第 4 回「太平洋島嶼国のデジタル・オポチュニティ研究会」議案 日 時: 平成15 年10 月 29 日(水)10 時00 分より12 時00 分 場 所: 日本財団ビル 笹川平和財団 4 階 会議室 議 事 案: 1. Re-planningofPIDOproject:ConclusionofthefinaldraftandpossibilityofPIDOphaseII by Watanabe,SagaandOkamura 2. ReportofNewCaledoniaMissionbyNakajima 3. ReportofMicronesianmissionbyHiga,Kosuge,TanakaandSaga 4. ReportofPalauworkshop,byHigaandSaga 5. JICAsurveyonMicronesiabyOrita 6. ReportofWSISandotheractivitiesinthePacificIslandsRegion,byMathisonofFDC 7. Othermatters xv
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