司法判断への期待: 川内原発再稼働をめぐる 2 つの訴訟 2014 年年 11 ⽉月発⾏行行 国際環境 NGO グリーンピース・ジャパン ブリーフィング・ペーパー 執筆委託・ジャーナリスト まさのあつこ _̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲_̲ 概要 九州電⼒力力株式会社(以後、九電)の川内原⼦子⼒力力発電所 1、2 号機(以後、川内原発) の再稼働を巡り、⿅鹿鹿児島地⽅方裁判所で⼆二つの司法判断が求められている。 川内原発の操業差⽌止を求める訴訟と、川内原発再稼働差⽌止を求める仮処分の申し⽴立立て である。 2012 年年 5 ⽉月 30 ⽇日、「原発なくそう!九州川内訴訟原告団」(団⻑⾧長・森永明⼦子、弁護 団⻑⾧長・森雅美弁護⼠士、事務局⻑⾧長・⽩白⿃鳥努弁護⼠士)1は、川内原発の操業差⽌止を求め、国 と九電を被告として提訴した。以下の 3 点の司法判断を求めている。 1.九電は、川内原発を操業してはならない 2.国は、川内原発を操業させてはならない 3.被告らは連帯して、2011 年年3⽉月 11 ⽇日から川内原発の操業差⽌止が実現するまで 原告 1 ⼈人につき⽉月 1 万円を⽀支払え 川内原発再稼働差⽌止仮処分は、上記の訴訟の結論論は出ていない状況で国の再稼働への ⼿手続きが進んでいるため、2014 年年 5 ⽉月 30 ⽇日に、同原告らの⼀一部が九電に「川内原発 1 号機 2 号機を運転してはならない」と命ずるよう求めたものだ。 このブリーフィング・ペーパーでは、この⼆二つの訴訟の訴えのポイント、⽇日程、司法 判断への期待を⽰示した。 川内原発再稼働をめぐる2つの訴訟 誰に対しての訴訟 訴えの主体 訴えのポイント か 川内原発操業 被告:九電・国 川内原発操業差 原発事故の被害の甚 差⽌止訴訟 ⽌止訴訟原告団 ⼤大性、危険性、原発 の反公共性と反倫倫理理 性および必要性 川内原発再稼働 債務者:九電 債権者:川内原 地震・地震動の危険 差⽌止仮処分 発操業差⽌止訴訟 性、避難計画の⽋欠如 原告の⼀一部 及び⽕火⼭山の危険性 九州電⼒力力の川内原発(所在地、⿅鹿鹿児島県薩摩川内市久⾒見見崎町字⽚片平⼭山) 認可出⼒力力 運転開始 建設費 燃料料 1 号機 89 万 kW 1984 年年 7 ⽉月 2787 億円 低濃縮(約 4〜~5%) ⼆二酸化ウラン 2号機 89 万 kW 1985 年年 11 ⽉月 2287 億円 1、2 号機とも加圧⽔水型軽⽔水炉(PWR)で停⽌止中。 九州電⼒力力ウェブサイト(2014 年年 10 ⽉月末現在)より作成2 1 原⼦子⼒力力規制委員会における新規制基準に基づく適合審査状況 原⼦子⼒力力規制委員会は 2013 年年 6 ⽉月 28 ⽇日に新規 制基準(正式名称は「実⽤用発電⽤用原⼦子炉及びそ の附属施設の位置、構造及び設備の基準に関す る規則」)3を決定した。この新規制基準は、 原⼦子炉の位置、構造、設備などが「災害の防⽌止 上⽀支障がない」ことを確認するために、「核原 料料物質、核燃料料物質及び原⼦子炉の規制に関する 法律律」(以後、原⼦子炉等規制法)第 43 条の 3 の 6 第1項第4号4に基づいて定められている。 東京電⼒力力福島第⼀一原⼦子⼒力力発電所(以後、福島第 ⼀一原発)の事故を受け、原発の再稼働にあたっ ては、原⼦子炉の設置変更更許可、⼯工事計画認可、 保安規程認可の 3 つの⼿手続で新規制基準の適合 審査を必要とする。 九電は、2013 年年 7 ⽉月 8 ⽇日に設置変更更許可など 3 つの申請を⾏行行い、原⼦子⼒力力規制委員会は 2014 年年 9 ⽉月 10 ⽇日に設置変更更を許可、2014 年年 11 ⽉月 21 ⽇日現在、⼯工事計画と保安規定の許可申請の補正審査 を⾏行行っている5。 ⽴立立地⾃自治体の意向 ⿅鹿鹿児島県薩摩川内市では、市議会が 2014 年年 10 ⽉月 28 ⽇日に再稼働賛成の陳情を採択、岩切切秀雄市 ⻑⾧長が同意の意向を表明した6。⿅鹿鹿児島県議会は 11 ⽉月 7 ⽇日に再稼働を求める陳情を賛成多数で採択、 伊藤祐⼀一郎郎知事が記者会⾒見見で再稼働への同意を表明した7。 1. 川内原発操業差⽌止訴訟 原告と被告 川内原発操業差⽌止訴訟は、2012 年年 5 ⽉月 30 ⽇日、「原発なくそう!九州川内訴訟」原告団と弁護団 により⿅鹿鹿児島地裁に提訴された。 訴状で「原告」とは「⽇日本国内に居住する住⺠民」とされている。原発でひとたび事故が起これば、 「直接的かつ重⼤大な被害を受けるものと想定される地域」に居住し、原発の運転差し⽌止めを求める 「法律律上の利利益を有する」としている。⿅鹿鹿児島、宮崎、熊本の住⺠民を中⼼心に、東京から沖縄まで多 地域から参加、2497 ⼈人を原告とするマンモス訴訟となった(下表)。 原発なくそう!九州川内訴訟原告団 第 1 次提訴 2012 年年 5 ⽉月 30 ⽇日 1,114 名 第 2 次提訴 2012 年年 10 ⽉月 3 ⽇日 566 名 第3次提訴 2013 年年 3 ⽉月 28 ⽇日 278 名 第4次提訴 2013 年年 9 ⽉月 11 ⽇日 137 名 第5次提訴 2014 年年 3 ⽉月 11 ⽇日 147 名 第6次提訴 2014 年年 9 ⽉月 16 ⽇日 237 名 計 2014 年年 11 ⽉月現在 2,497 名 2 被告は九電と国で、国の担当⾏行行政機関と部署は、原⼦子⼒力力規制委員会原⼦子⼒力力規制庁、経済産業省省資源 エネルギー庁電⼒力力・ガス事業部政策課、原⼦子⼒力力⽴立立地・核燃料料サイクル産業課、および法務省省である。 原告による訴え 原告は以下の理理由などで、九電には川内原発を「操業してはならない」、国には「操業させてはな らない」と求め、⼆二者に連帯して、操業差⽌止が実現するまで原告 1 ⼈人につき⽉月 1 万円の損害賠償を 求めている8 福島第1原発事故の被害の巨⼤大・広範性、深刻性、⻑⾧長期性 東京電⼒力力福島第⼀一原発事故では、政府⾸首脳が近藤駿介原⼦子⼒力力委員会委員⻑⾧長(当時)に「最悪のシナ リオ」を検討させ、4 つの原⼦子炉すべてがメルトダウンした場合は、⾸首都圏を含む半径 250 キロメ ートル圏、3000 万⼈人の避難が必要となるとされた。 実際には、数⼗十万⼈人の⽣生命・⾝身体の健康に脅威を与え、東北北、関東の農業や漁業などに深刻な障害 を与え、周辺住⺠民の⽣生活・⽂文化の場を奪い、地域社会に壊滅的な打撃を与えた。 放射能の減少には最⼤大数万年年を要し、爆発した原発は収束の⽬目途が⽴立立たないまま、放射能漏漏れや汚 染⽔水の流流出等が続いている。 原発は事故の深刻さ故に絶対安全性が求められる。しかし、実際には⾃自然災害、⼈人為的ミス、テロ などを完全に予知・防⽌止することは不不可能である。 原⼦子⼒力力発電の反公共性と反倫倫理理性 原発は、処分⽅方法が決まらない放射性廃棄物を未来世代に残し、異異常時はもちろん、平常時でも原 発労働者の被ばくを強いる。⼀一般国⺠民は年年間 1mSv までの被ばくしか許されないが、原発労働者に は年年間 50mSv までの被ばくが許される。その約 9 割が下請け企業の社員で、作業員の全被ばく量量 の 96%を被っているにもかかわらず、賃⾦金金は元請けから下請けの重層的構造により中間搾取され 3 ている。労働者の命と健康を犠牲に成り⽴立立つ発電であり、反倫倫理理性が著しい。原発に依らなくても 電⼒力力は賄え、エネルギーシフトも可能である。 九州電⼒力力への差⽌止請求 川内原発は⽇日本列列島の最⻄西端に位置し、福島第⼀一原発事故と同様の事故が起こった場合は、発⽣生し た放射性物質は偏⻄西⾵風に乗り、⽇日本列列島を直撃する可能性が⾼高い。影響を受け得る地域に居住する ⼈人々が安全かつ平和的に⽣生存する権利利、すなわち憲法が個⼈人に保障している⼈人格権(13 条)と⽣生 存権(25 条)を侵害している。 このような状況で、川内原発の稼働を続けること⾃自体が、九電の原告らに対する加害⾏行行為に他なら ない。原⼦子⼒力力安全神話の崩壊し原発の危険性が明らかになった福島第⼀一原発事故以降降、九電は原発 の運転を取りやめる義務を負う。 国への差⽌止請求 国は、1956 年年に原⼦子⼒力力三法(原⼦子⼒力力基本法、原⼦子⼒力力委員会設置法、総理理府設置法の⼀一部を改正す る法律律)を成⽴立立させて以来、原⼦子⼒力力開発を推進した。1934 年年には電源開発促進税法、電源開発促 進対策特別会計法、発電⽤用施設周辺地域整備法のいわゆる「電源三法」を成⽴立立させ、原発建設を後 押した。また、⽴立立地建設や使⽤用済み燃料料処理理コスト等が⾼高いために、総括原価⽅方式と地域独占体制 を通じて保護してきた。1961 年年には原⼦子⼒力力損害賠償法の制定により、損害賠償リスクも引き受け た。2006 年年に制定された新しい耐震設計審査指針で、国は地震による重⼤大事故の危険性や公衆の 被ばくの危険性を認めていたが、それを承知の上で操業を認めている。 ⼀一⽅方、2011 年年5⽉月には、総理理⼤大⾂臣であった菅直⼈人⽒氏が経済産業⼤大⾂臣(当時)を通じて中部電⼒力力浜 岡原発の稼働停⽌止を要望し、同原発の原⼦子炉の稼働が停⽌止された。つまり、国は原⼦子炉の操業やそ の停⽌止を事実上決定できる⽴立立場にもある。同様の事故の発⽣生を防⽌止する観点から、川内原発の操業 を⽌止めさせる義務を負う。 損害賠償請求 福島第⼀一原発の事故により、原告らの⼈人格権が侵害され、精神的に多⼤大な苦痛を被っている。この 侵害は川内原発の操業が停⽌止されるまで続く。原告らに対する不不法⾏行行為であり、連帯して、原告ら が被った精神的損害について賠償する義務を負う。 ⾨門前払い(却下)を求めた国 国は、「川内原発を操業させてはならない」と「2011 年年 3 ⽉月 11 ⽇日から操業差⽌止が実現するまで 原告 1 ⼈人につき⽉月 1 万円を⽀支払え」の双⽅方の訴えを、以下の理理由で却下するよう求めている。 操業差⽌止の請求には、原⼦子炉の設置許可の取り消し、運転停⽌止など規制権限を ⾏行行使する趣旨を含んでいる。原告は、原⼦子⼒力力規制委員会で原⼦子炉等規制法に基 づく権限を発動して差⽌止を⾏行行うよう求めているようだが、そのようなものは⺠民 事訴訟にはそぐわない、とした。 損害賠償請求については、福島第⼀一原発事故で、⼈人格権が侵害され、精神的に 多⼤大な苦痛を被っているというが、請求額1万円のうちには将来の請求が含ま れているはずだ。将来の給付請求については明らかではなく、損害賠償請求に はそぐわない、とした。 4 「具体的危険性はない」と棄却を求めた九電 「操業してはならない」と求められた九電は、原告が主張する福島第⼀一原発のような⼤大規模事故が 起こる具体的危険性はないとして、操業差⽌止と損害賠償の双⽅方の請求の棄却を求めている。 ⼈人格権(憲法 13 条)については具体的に記した法律律がないために、⼈人格権侵 害を理理由とする差⽌止請求は厳格でなければならない。抽象的、潜在的な危険性 だけでは⾜足りず、「具体的危険性」が存在することが必要で、その⽴立立証は原告 が⾏行行うべきだとした。 ⽣生存権(憲法 25 条)も「国に対し積極的な配慮として⼈人間的な⽣生活を送るこ とを求める権利利であり、その内容は抽象的で不不明確」で、具体的な権利利性は認 められていないとした。 原発は、エネルギーの安定供給と地球温暖化対策、経済効率率率性で優れており、 その必要性は変わらないとした。 地震・津波等については、⼗十分な調査と検討を⾏行行い、地域特性を⼗十分に把握し た上で、事故の発⽣生及び事故による影響拡⼤大を防⽌止する設備にした。また、最 新の知⾒見見を踏まえた評価や対策を講じていると主張した。さらに、全交流流電源、 海⽔水冷冷却機能などが喪失したとしても、福島第⼀一原発のような事故に⾄至ること がないよう安全対策を講じていると反論論している。 今後の予定 第 1 回⽬目⼝口頭弁論論以来(下表)、原告・被告の主張には隔たりがある。第 8 回⼝口頭弁論論は 2015 年年 2 ⽉月 17 ⽇日(⽕火)15 時から⿅鹿鹿児島地裁第 206 号法廷で予定されている(16 時半終了了⽬目処)。傍聴 希望者は 13 時半に「かごしま県⺠民交流流センター中庭」集合、13 時 40 分から裁判所まで⾏行行進、整 理理券の交付開始(傍聴は抽選)、14 時 30 分に抽選発表。九電側から⼤大飯原発の福井地裁判決に対 する反論論がある予定。「原発をなくそう!九州川内訴訟」を⽀支える会(事務局 塚⽥田ともみ)が組 織され、ウェブサイト9で情報発信を⾏行行っている。 川内原発操業差⽌止訴訟 2012 年年 10 ⽉月 16 ⽇日 第1回⼝口頭弁論論 2013 年年 1 ⽉月 22 ⽇日 第2回⼝口頭弁論論 2013 年年 5 ⽉月 22 ⽇日 第3回⼝口頭弁論論 2013 年年 12 ⽉月 3 ⽇日 第4回⼝口頭弁論論 2014 年年 3 ⽉月 25 ⽇日 第5回⼝口頭弁論論 2014 年年 7 ⽉月 1 ⽇日 第6回⼝口頭弁論論 2014 年年 11 ⽉月 11 ⽇日 第7回⼝口頭弁論論 5 2. 川内原発再稼働差⽌止仮処分 概要 川内原発の差⽌止訴訟の提訴から 2 年年、再稼働に向けた審査は「待ったなし」であるとして、同原告 らの⼀一部が申⽴立立⼈人となり、2014 年年 5 ⽉月 30 ⽇日に川内原発再稼働差⽌止仮処分の申⽴立立を⿅鹿鹿児島地裁に ⾏行行った。 同⽉月 21 ⽇日に関⻄西電⼒力力の⼤大飯原発 3、4 号機の原⼦子炉の運転差⽌止を命じる判決(以後、福井地裁判 決)が出たにも関わらず、原⼦子⼒力力規制委員会が司法判断を反映せずに適合審査を進めたことが背景 にある 。 仮処分とは、債権者(差⽌止訴訟でいう「原告」)に⽣生じる著しい損害や急迫の危険を避けるために、 ⺠民事保全法に基づいて債務者(ここでは九電のこと)に発する命令令である。 現在までに、第 1 回(2014 年年 7 ⽉月 30 ⽇日)、第 2 回(2014 年年 9 ⽉月 12 ⽇日)、第 3 回(2014 年年 10 ⽉月 24 ⽇日)の裁判(審尋)が⾮非公開で⾏行行われている。 写真提供:原発なくそう!九州川内訴訟原告団 原告による申⽴立立ての理理由 原告による申⽴立立ての理理由は、短期間で決定を得るために、争点を、地震・地震動の危険性、避難計 画の⽋欠如及び⽕火⼭山の危険性の 3 点に絞っている。 第 1 の争点:地震・地震動の危険性 ̶—「基準地震動」の過⼩小評価、10 年年で 5 回 第1の争点は、川内原発の耐震設計に必要な「基準地震動」の想定⽅方法に⽋欠陥があり、新規制基準 でも改善されておらず安全性は確保されていないという点だ。 原発の耐震設定指針は 2006 年年に⾒見見直され、極めてまれにしか発⽣生しない地震でも安全が損なわれ ない「基準地震動」を想定し、その想定を上回るリスクを⼩小さくするよう設計することが求められ てきた。 6 基準地震動の算定⽅方法のうち「震源を特定して」⾏行行う⽅方法では、活断層調査を基礎として、検討に 使う地震を複数選択し、地震が原発を揺らしたときに与える影響(地震の⼤大きさ、継続時間、周期) や共振性、断層⾯面に溜溜まった歪みの解放エネルギーなどに「不不確かさ」を考慮する。この評価⼿手法 には、「応答スペクトルに基づく地震動評価」と「断層モデルを⽤用いる地震動評価」の 2 種がある。 もう⼀一つは、「震源を特定せずに」⾏行行うやり⽅方で、特定の活断層と結びつけることが困難な過去の 地震動などの観測記録に地域特性その他の影響を考慮する。 しかし、これらの⽅方法による基準地震動は、過去 10 年年間、5 つの原発で想定を超えた事例例があり (下表)、過⼩小評価であったと国会事故調の報告書でも指摘されている。 原告はその原因は、これらの⽅方法が過去の地震の平均像を求めるやり⽅方であり、原⼦子⼒力力規制委員会 は、新規制基準の内規「基準地震動及び耐震設計⽅方針に係る審査ガイド」で、過⼩小評価される原因 を突き⽌止めることもなく、「不不確かさ」を考慮する具体的な規定も定めていないと主張する。 想定した基準地震動を超えた原発 2005 年年 8 ⽉月 16 ⽇日 宮城県沖地震 ⼥女女川原発 2007 年年 3 ⽉月 25 ⽇日 能登半島沖地震 北北陸陸電⼒力力志賀原発 1 号機、2 号機 2007 年年 7 ⽉月 16 ⽇日 新潟県中越沖地震 柏崎・刈⽻羽原発 2011 年年 3 ⽉月 11 ⽇日 東北北地⽅方太平洋沖地震 福島第⼀一原発 2011 年年 3 ⽉月 11 ⽇日 東北北地⽅方太平洋沖地震 ⼥女女川原発 ̶—⼤大飯原発の福井地裁判決 原告は福井地裁判決を取り上げ、「⼈人格権は憲法上の権利利(憲法 13、25 条)であり、⼈人の⽣生命を 基礎とする。わが国の法制下で、これを超える価値を他に⾒見見いだすことはできない」、「⼤大飯原発 から 250km圏内に居住する⼈人々は、原発の運転によって直接的にその⼈人格権が侵害される」と引 ⽤用した。 ⼤大飯原発では基準地震動以下の地震動でも主給⽔水(循環させる⽔水)などの遮断が起きたことをこの 判決は認めており、⼤大飯原発と同じ構造の加圧⽔水型軽⽔水炉(PWR)である川内原発も同じことが ⽣生じ得る。それ以外の判決内容はすべての原発にあてはまるのであり、この判決理理由をすべて否定 できない限り、⽇日本の原発訴訟で原告敗訴の判決を下すことはできないとした。 ̶—川内原発の危険性 原発の耐震設計では「不不確かさ」の考慮が重要だと原告は主張する。たとえば九電は、断層の⻑⾧長さ など様々な「不不確かさ」を考慮したと⾔言うが、結局は「平均像」を算出する⼿手法での考慮に過ぎず、 残された「不不確かさ」は相当に⼤大きいとする。 九電は川内原発の基準地震動を 620 ガルだと想定したが、過去にはこれを超える地震動も観測され ている。地震動が九電の想定の何倍にも達する可能性があり、再稼働を許すことはできないと原告 は主張する。 ̶—九電の反論論 これに対し、九電は、仮処分申⽴立立の却下を求めている。 第 1 回審尋では、九電は合理理的に可能な限りの調査を尽くし、平均像だけでな く多くの地震観測データに基づいて安全側の評価を⾏行行い、⼗十分な余裕を持った 耐震設計を⾏行行っていると主張した。原告の指摘する基準地震動を超えた 4 地域 7 と川内原発周辺とでは地域的特性が異異なっており、豊富なデータに基づいて地 域特性を反映していると反論論した10。 第 2 回審尋では、地震発⽣生のメカニズムや揺れの評価⼿手法、川内原発の基準地 震動などを説明11、第 3 回審尋では、基準地震動を超過する地震動が発⽣生した としても、川内原発の耐震安全性に直接影響を与えるものではなく、万が⼀一、 事故が発⽣生したとしても、⼗十分な安全確保対策が講じられていることから、放 射性物質の⼤大量量放出事故に⾄至る危険性がないと主張した。12 第 2 の争点:避難計画 第 2 の争点が、避難計画についてである。事故発⽣生時の周辺住⺠民全員の避難が可能である保証なし に原発稼働を認めることは許されるものではないが、関係各⾃自治体が策定する川内原発半径 30 キ ロメートル圏内の避難計画には実効性に疑問がある、とりわけ福祉施設や病院の⾼高齢者・障害者・ ⼊入院患者等の災害弱者については、避難計画策定の⽬目途さえたっていないと指摘した。 第3の争点:巨⼤大噴⽕火 第 3 の争点が、⽕火⼭山噴⽕火の予知 に関するものだ。新規制基準に 基づく「原⼦子⼒力力発電所の⽕火⼭山影 響評価ガイド」では、⽕火⼭山活動 が原発に影響を与える可能性が ⼗十分⼩小さいと⾔言えない場合は、 「原⼦子⼒力力発電所の⽴立立地は不不適」 と定められた。川内原発は 5 つ の活⽕火⼭山に囲まれ、3 つのカル デラ(加久藤・⼩小林林、姶良良、阿 多)の⽕火砕流流が過去に「敷地に 到達した可能性は否定できない」 ことは政府も認めている。 九電は地中海における 1 事例例を 根拠に巨⼤大噴⽕火は予測が可能と しているが、その論論⽂文を書いた 研究者⾃自⾝身が、カルデラ⼀一般に 適⽤用できるものではないと表明 している。また、噴⽕火の予知・ 予測が困難であると多くの⽕火⼭山 学者が述べており、たとえ予知 できたとしても、川内原発には、冷冷却が必要な使⽤用済み核燃料料が 888 トンも貯蔵されており、核燃 料料や使⽤用済み核燃料料等を運び出す時間などないと、原告は主張する。 また原告は、原⼦子⼒力力規制委員会の⽥田中俊⼀一委員⻑⾧長が「安全だとは申し上げません」と適合審査書案 了了承後の記者会⾒見見で述べたことをとらえ、規制基準に適合してもなおリスクが残ることを認めたも のだと指摘している。 8 原告の再反論論 「防災対策は国際基準を満たしていない」 安倍内閣が新規制基準を「世界最⾼高⽔水準」と評しても国際基準すら満たしていない。国際基準とは、 IAEA(国際原⼦子⼒力力機関)による 5 層の防護策である13。それどころか、原告は旧指針類と⽐比べても、 それらより⼀一部後退していると主張する(下図)。 新規制基準では、①1 層⽬目の異異常発⽣生防⽌止対策や 3 層⽬目の放射性物質異異常放出防⽌止対策に関して⼤大 きな修正がない。②4 層⽬目のシビアアクシデント対策が不不⼗十分で、③5 層⽬目の防災対策が⽋欠如して いる。また、④旧安全指針類にはあった⽴立立地審査指針(原⼦子炉周辺を⾮非居住区域とする離離隔要件が 含まれていた)の適⽤用が求められていないと指摘した。 仮処分準備書⾯面8・⼤大飯判決あてはめ(H26.9.8 付)14より 今後の予定と司法判断への期待 仮処分第4回の審尋が11⽉月28⽇日13時:30分から予定されており、原告側は、同⽇日に審尋 (裁判)を終了了し、速やかな決定(訴訟の「判決」に相当)を求める⾒見見込み。 脱原発弁護団全国連絡会代表の河合弘之弁護⼠士は、2014 年年 11 ⽉月 19 ⽇日に開催された「国内原発再 稼動への危機〜~現地からの緊急報告〜~院内集会」で審尋での模様を報告し、「裁判官が⾮非常に踏み 込んだ質問を原告にも被告にも投げかけていて、特に、九電側に踏み込んだ質問をする。基準地震 動を超える可能性はないのかと聞くと、九電が『いや、なくはないです』みたいな答弁をする。積 極的な審理理であり、今までの原発裁判とは違う様相を呈している。決定は年年内に出ることは確実だ」 15 と述べている。 川内原発再稼働差⽌止仮処分 2014 年年 7 ⽉月 30 ⽇日 第1回審尋 2014 年年 9 ⽉月 12 ⽇日 第2回審尋 2014 年年 10 ⽉月 24 ⽇日 第3回審尋 2014 年年 11 ⽉月 28 ⽇日 第4回審尋 差⽌止訴訟の訴状で原告らは、司法に対しても⼀一⾔言を呈していた。重⼤大事故発⽣生の危険性を繰り返し 訴えてきた住⺠民原告の主張を斥け、国、電⼒力力会社、⼀一部の学者の⼼心配はないとの主張を容認し続け てきた裁判所も変⾰革を求められているというものだ。 9 「原発の安全性の問題は、政治問題ではない。憲法上の最も基本的な権利利である原告らを含む国⺠民 の⼈人格権・⽣生存権が真に確保されているかという問題なのである」と訴状は締めくくられており、 この最も根源的な権利利が問われているのが、この訴訟であり仮処分である。 <本件に関するお問い合わせ> 国際環境 NGO グリーンピース・ジャパン 核・エネルギー担当:鈴鈴⽊木かずえ [email protected] 広報担当: 柏⽊木愛 [email protected] 〒160-‐‑‒0023 東京都新宿区⻄西新宿 8-‐‑‒13-‐‑‒11 NF ビル 2F Tel 03-‐‑‒5338-‐‑‒9800 www.greempeace.org/japan 1 http://no-‐‑‒sendaigenpatsu.a.la9.jp/ 2 http://www.kyuden.co.jp/nuclear_̲outline_̲index.html 3 実⽤用発電⽤用原⼦子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則 http://law.e-‐‑‒gov.go.jp/htmldata/H25/H25F31901000005.html 4 原⼦子炉等規制法第43条の3の6第1項第4号で「発電⽤用原⼦子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料料物質若若しくは 核燃料料物質によって汚染された物⼜又は発電⽤用原⼦子炉による災害の防⽌止上⽀支障がないものとして原⼦子⼒力力規制委員会規則で 定める基準に適合するものであること」と定められている。 5 2014 年年 10 ⽉月 21 ⽇日、原⼦子⼒力力規制委員会への九州電⼒力力提出資料料「川内原⼦子⼒力力発電所1号機⼯工事計画認可申請(補正) の概要について」http://www.nsr.go.jp/activity/regulation/tekigousei/h26fy/data/0150_̲03_̲01.pdf 6 ⽇日本経済新聞「川内原発再稼働、最終局⾯面に 薩摩川内市⻑⾧長が同意」(2014 年年 10 ⽉月 28 ⽇日) http://www.nikkei.com/article/DGXLASFB28H5X_̲Y4A021C1EA1000/ 7 ロイター「⿅鹿鹿児島県が川内原発再稼働に同意、最後の関⾨門は地裁判断に」(2014 年年 11 ⽉月 7 ⽇日) http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0IR08L20141107 8 川内原発差⽌止等請求事件訴状 http://no-‐‑‒sendaigenpatsu.a.la9.jp/sojo_̲sendai.pdf 9 http://sendai-‐‑‒balloonpro.jimdo.com/ 10 九州電⼒力力プレスリリース平成 26 年年7⽉月 30 ⽇日川内原⼦子⼒力力発電所再稼働差⽌止仮処分第1回審尋について http://www.kyuden.co.jp/press_̲140730-‐‑‒1.html 11 九州電⼒力力プレスリリース平成 26 年年 9 ⽉月 12 ⽇日川内原⼦子⼒力力発電所再稼働差⽌止仮処分第 2 回審尋について http://www.kyuden.co.jp/press_̲140912-‐‑‒1 12 九州電⼒力力プレスリリース平成 26 年年 10 ⽉月 24 ⽇日川内原⼦子⼒力力発電所再稼働差⽌止仮処分第3回審尋について http://www.kyuden.co.jp/press_̲141024-‐‑‒1.html 13 ⽇日本弁護⼠士連合会「新規制基準における原⼦子⼒力力発電所の設置許可(設置変更更許可)要件に関する意⾒見見書」2014 年年 6 ⽉月 20 ⽇日 http://www.synapse.ne.jp/peace/opinion_̲140620_̲2.pdf 14 http://no-‐‑‒sendaigenpatsu.a.la9.jp/karijunbi8.pdf 15 YouTube 配信 20141119 UPLAN【現地からの緊急報告】川内原発再稼働国内原発再稼働 STOP! http://www.youtube.com/watch?v=jGP76jdobP4&list=UUhjEbWVGnGHhghoHLfaQOtA 10
© Copyright 2024 ExpyDoc