初校 / 台 湾 最 南 端の緑 茶 恒春は今でも城壁が残り、四方の門 が全て残されている台湾でも珍しい街 だが、 その恒春に清朝時代に派遣され た県長がお茶好きで、帰郷した際、福 建 省 か ら 武 夷 種 な どの茶 を 持 ち 帰 り、 まで行き、そこからバスに乗ろうとし ことが分かった。 まずは恒春という街 その時から現在まで、茶の種を直播 す る という 独 特 の 方 法 が 採 ら れ て お どに献上されていたようだ。 いるとして、茶作りが始まり、役人な 須賀 努 コラ ムニスト 台湾で『緑茶は作られていないのか』 という 質 問 を す る と、『戦 後日 本に研 たが、何と1日に2本、それも早朝と り、 朱さんの店には『雑種茶』 という ㎞)が適して 近隣に植えさせたところ、現在の満州 修に行って、 蒸 し 製 緑 茶 を 作って 輸 出 夕方にしかなく、とても訪ねることは 郷港口村(恒春から約 し たよ』 などという答えが返ってくる できない。宿泊先で相談すると、そこ リゾート地、 墾丁ビーチの近くにある 南端に緑茶があるよ』 と言われて驚い のが普通だが、ある茶商から『台湾最 か ら しょっぱい』 な ど と 言 わ れて困 惑 しいとは言えない。 海辺に茶畑がある か、と尋ねると『古くからあるが美味 た。お茶好き台湾人にどんなお茶なの はずだったが、 訪ねてみると不在。 紹介し てもらっていた茶農家には前 日も電話を入れて訪問を約束していた て行ってくれた。 は台湾、 親切にもスタッフが車で連れ ざり合い、様々に変化しているという。 は育たなかった。直播は交配するため、 表記もあった。 雨が少なく、 挿し木で 差しは強かった。 もう熱帯と思えるこ らしい。 それにしても訪問した日の日 そ の 茶 畑 は 屏 東にあ る と 言 わ れ た が、いざ行って見ると、 台湾最南端の 岸から訪ねて行ってみた。 るのか?』 を知りたく て、 急きょ東海 ら れ ている の か?一体 だ れ が 飲 ん でい お茶が100年以上もの間、作り続け 出すのだという。 茶葉が渋みと、そしてほのかな甘みを 増し、成分が内包される。この肉厚の 伺うことができた。 ん夫妻に歓待され、その歴史と現状を そこで港口茶の伝承者である朱松雄さ ところに、『港口茶』という幟が見えた。 の仕事をしているらしい。 困り果てた 月下旬は茶のシーズンではなく、 皆他 もう一つは後継者がいること。 代 目だという朱さん( 歳)に聞くと『正 ともなく、残っていたともいえる。 られていた。この地区では茶山と呼ば 一望できる斜面に茶樹がきれいに植え 実際に裏山に登り、茶畑を見学した が、恐らく海抜300mもない、海が 茶葉を使っているのも特徴的だ。 30 付 近には 古 び た 製 茶 室 の 建 物 が 見 え、その歴史を感じさせる。小規模に、 茶のシーズンには 時 々 戻って き て、 茶 が強かった、 ということを何となく思 で流通させる。 茶畑から眺める海は一 いう。現在息子も台北で働いているが、 い出した。 段と輝いて見えた。 朱さんの家には馬 茶はほうじ茶のような感じで飲みやす 茶畑は少なく、産量も極めて少ない。 このお茶が100年以上続いているの 英 九 前 総 統 の 写 真 が 飾 ら れ ていた が、 かった。 以前佐賀の嬉野から、 山を越 は、 地元にしか流通しない、 そして老 『実 は 総 統 は この環 境 が 大 好 き で、 2 吹くから、と教えられる。その風は強 人などが飲みやすい、ほうじ茶や番茶 烈で、暑さも吹き飛ばす。そして茶葉 の位置づけだからだろう。もし台北な 回も我が家に泊まったよ。 だから家に 作りを手伝い、 そのノウハウを伝承し どで売り出そうとすれば、高山茶など は プレジデンシャル・ スイート と 呼 ば ている。 との競争に勝つことはなく、 無くなっ れる部屋があるのさ』と笑いながらお えて出たところにあった彼杵(長崎県) ていたはずだ。 最近は珍しいお茶を探 茶を口に含んだ。 その日焼けした笑顔 (すが つとむ) 昔な がらの製法で簡単に作って、 地元 し求める人が出てきて、知られるよう が何とも良い。 から、一過性のブームに惑わされるこ になった が、 以 前 は 誰 も 知 ら な かった の茶畑の風景を、そして彼杵茶も焙煎 直 茶 だ け で 食って い く こ と は で き な 5 年 は 経っている 茶 樹 の低地で、どうしてお茶が作れるのだ 軽焙煎と重焙煎の2種類の茶を作っ ていた。 実際に現地で飲むと、 言われ 71 れていた。 既に ろうか。 き、 定年になって茶作りを継いだ』 と い。 自分も若い頃は恒春の消防署で働 この茶樹はここにしかない、 不揃いな 基本は武夷種だった物が、 各品種が混 する。では『なぜそんな美味しくない 10 ていたほどの苦みもなく、 特に重焙煎 11 はその風から身を守るために、厚みを それは地元で『落山風』と呼ばれる 北東から季節風が 月から 月頃まで 3 茶山から海を眺める 月刊「茶」2017/3月号 00 00 月刊「茶」2017/3月号 11
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