10 思い出に残る病院食~行事食について~(PDF:140KB)

思い出に残る病院食
~行事食について~
医療法人財団中山会
草山
恵
渡邉
八王子消化器病院
栄養科
咲
【目的】
患者様にとって、入院中の唯一の楽しみは「食事」である反面、世間では「病院食は美味しく
ない」という言葉を耳にする。そのような病院食のイメージを払拭しようと、消化器疾患の専
門病院である当院では、「食事は治療の重要な一環である」という考えの下に、患者様に如何
にして美味しく楽しく食べていただくかの様々な取り組みを行っている。今回は、その取り組
みの 1 つである行事食について報告する。
【方法】
当院では、毎月 1 回、四季折々の食材を用いて、松花堂弁当による行事食を提供している。
①掛け紙や品書きの作成:弁当はもとより掛け紙や品書きまで、すべて栄養科スタッフが手
作りしている。②献立の作成:手術後や治療中は食事制限が多いが、行事食は 3 分粥から対
応しており、常食と見た目が変わらないように食材や調理方法等を工夫している。③案内ポ
スターの作成:行事食は、患者様のご家族にも希望により有料で提供しており、各病棟に案
内ポスターを掲出している。ポスターには、掛け紙や品書と同様に、その月の行事や旬の食
材・花等、季節を感じられる題材を取り入れるように心掛けている。④食材発注・納品:一
定に仕切られた弁当箱に形良く美しく収まるように、食材業者に長さ・太さ・大きさ等を指
定して発注し、納品時には指定通りの食材であるかの確認を怠らない。⑤仕込み:仕込みは、
通常よりも飾り切りや型抜き等の細工が多く手間がかかることから、作業人数を増やしてい
る。⑥調理・盛付:食種によって調理方法を変える等しているため、作業工程が多く時間が
かかるが、衛生管理上の問題から時間を繰り上げて作業することはできない。そのため、通
常よりも作業人数を増やして対応している。ある時、行事食を申し込まれた患者様からの「家
族が来院するのが夕方になるため、冷蔵庫で保存しておきたい。」との申し出に対し、行事食
には保存料等を一切使用していないことから、丁重にお断りしたというエピソードがあった。
それ以降は、行事食に『お礼カード』を添付し、早めに召し上がっていただくこと、持ち帰
りはできないことを明記すると共に、行事食申込書にもその旨を追記した。また、年 6 回の
嗜好調査のうち 2 回は、行事食の提供日にメニューに関する調査を兼ねて実施し、今後の参
考にしている。
【結果】
「糖尿病の治療で入院したのに、みんなと同じ松花堂弁当を食べられて嬉しい。
」と感激され
たり、クリスマスや正月等を止むを得ず病院で迎えなければならない患者様から「家族みん
なで同じ弁当を食べることができて幸せでした」等のお礼の手紙を多数いただき、栄養科ス
タッフの励みになっている。また、食事をあまり召し上がれない患者様も、いつもと異なる
趣に興味を持ち、通常よりも召し上がることも少なくない。行事食は、晴れた日には美しい
富士山を見渡せる患者様食堂や病室を一時、家族団欒の場に変えたりして、健康的な食事を
伝える絶好の機会となっており、正に「思い出に残る病院食」であると自負している。
【結語】
月 1 回の行事食だけではなく、毎日の 1 食 1 食を「思い出に残る病院食」にしていきたいと
いう想いの下、病院での食事を自宅に帰られてからも思い出してもらえるような創意工夫を
凝らして、栄養科一同、日々の業務に取り組んでいる。