南陽市水道事業経営戦略

南陽市水道事業経営戦略
山形県南陽市
策定:平成 29 年3月8日
計画期間:平成 29 年度 ~
平成 48 年度
第1 経営戦略策定にあたって
本経営戦略は、住民生活と産業活動に不可欠なライフラインである水道水の供給を、未
来の世代に持続的に継承してゆくために、今後の水道事業の経営指針を、国立社会保障・
人口問題研究所が公表した本市の将来人口予測に基づき策定するものであり、ここに公開
します。
第2 水道事業の概要
(1)現況
本市の水道は、昭和9年、旧赤湯町に簡易水道として創設されて以来、80 余年を経過し
ました。その間、需要増加に対応した給水量の拡張、遠隔地や山間部への給水範囲の拡大、
小滝簡易水道との経営統合を実施し、ほぼ市内全ての地区で水道が使用できるまでに普及
しています。
現在、県営置賜広域水道からの送水を受けて小滝地区を除く市内全域に給水する宮内配
水池系と、小滝地区の自主水源から地区内に給水する小滝浄水系の2系統で事業を展開し
ています。
① 給水
(平成 27 年度末現在値)
供 用 開 始 年 月 日 昭和 46 年 12 月 10 日
計画給水人口
34,600 人
法適(全部・財務)
現在給水人口
31,045 人
有収水量密度
5.403 千㎥/ha
・ 非 適 の 区 分
全部適用
② 施設
(平成 27 年度末現在値)
水
施
源 宮内配水池系(受水)
設
数
計 画 給 水 量
小滝浄水系(表流水)
浄水場設置数
1
配水池設置数
11
宮内配水池系 13,800 ㎥/日
小滝浄水系
70 ㎥/日
1
管 路 延 長
施設利用率
宮内配水池系 255.48 千m
小滝浄水系
6.91 千m
宮内配水池系
76.98%
小滝浄水系
48.57%
③料金
料 金 体 系 の 用途別従量制(用途毎に基本料金が異なる。超過料金は同じ。)
概 要 ・ 考 え 方 使用水量に応じた料金設定を行っている。
料金改定年月日
平成 26 年 4 月 1 日
④組織
上下水道課組織員数(水道事業より給与支出分を太字記載)
課長
水
道
部
門
課長補佐
1
係長
お客様係 1
1
下水道部門
1
係員
水道係
1
下水道係
1
お客さま係
3
水道係
2
経営係
1
お客さま係
3
下水道係
2
経営係
2
(2)これまでの主な経営健全化の取組
水道事業の経営にあたっては効率向上を念頭に、人員配置を随時見直してきました。
平成 19 年度
県広域水道全量受水により浄水場廃止
16 名→14 名
平成 20 年度
下水道課と組織統合(上下水道課の新設)
水 14 名+下 11 名→22 名
(水道部門職員 11 名)
平成 21 年度
業務整理による定員削減
水 11 名+下 11 名→19 名
(水道部門職員 10 名)
また、効率的な資金運用に努めて起債発行の抑制を図り、繰上償還可能な企業債を積極
的に償還することで、費用の圧縮に取り組んできました。
(3)経営比較分析表を活用した現状分析
※別表参照
第3 将来の事業環境
(1)給水人口と水需要の予測
①行政人口、給水人口の推移
平成7年度
平成 17 年度
平成 27 年度
行政人口(人)
37,191
△5.0%⇒
35,349
△8.3%⇒
32,408
40 歳未満人口(人)
16,757
△14.0%⇒
14,419
△18.9%⇒
11,688
平均年齢(歳)
42.4
給水人口(人)
33,886
水道利用率(%)
91.1
45.9
△2.6%⇒
33,005
93.4
2
49.1
△6.1%⇒
30,989
95.6
②1日平均有収水量の推移
宮内配水池系
11,000
10,000
9,000
8,000
7,000
㎥
/
日
6,000
その他
5,000
工場用
4,000
家庭用
3,000
2,000
1,000
0
H7
H9
H11 H13 H15 H17 H19 H21 H23 H25 H27
人口減少に伴い宮内配水池系の有収水量も漸減しており、ピーク時(平成9年度)の年
間 3,669,760 ㎥から、平成 27 年度末においては 3,213,606 ㎥と、12.4%減少しています。
この要因として、温泉業や工場、学校などの大口需要先や営業店舗の減少、節水型器具の
普及、若・青年層の減少による水需要の縮小が挙げられます。
小滝浄水系
70
60
50
㎥ 40
/
日 30
20
10
0
H7
H9
H11 H13 H15 H17 H19 H21 H23 H25 H27
小滝浄水系の有収水量は、人口減少の影響が一層顕著で、ピーク時(平成 11 年度)の年
間 20,875 ㎥から、平成 27 年度末においては 11,125 ㎥と、ほぼ半減するに至っています。
②今後の水需要予測
将来の人口予測については、国立社会保障・人口問題研究所が公表した本市の将来人口
予測(平成 25 年3月推計値)に基づき算出していますが、予測値のうち、既に経過した年
3
(平成 22 年、平成 27 年)の推計人口総数よりも実際の行政人口が上回っていたことから、
予測値の減少率を現在の行政人口に当てはめて再計算し、今後の給水人口と有収水量を推
計しています。
水需要については、当面大口の需要先が発生しうる見込みがなく、また給水人口の平均
年齢も上昇することから、現在の需要率より減少するものと想定しています。
給水人口と行政人口、有収水量の推移と将来予測(全体値)
40,000
3,900
38,000
3,700
36,000
人
( 34,000
左
) 32,000
30,000
千
㎥ 28,000
(
右 26,000
)
24,000
3,500
22,000
2,100
20,000
1,900
3,300
3,100
給水人口
2,900
行政人口
2,700
有収水量
2,500
2,300
H7 H11 H15 H19 H23 H27 H31 H35 H39 H43 H47
(2)水源の確保
現況に記載のとおり、宮内配水池系の水源として、県営置賜広域水道の笹野浄水場より
全量受水しています。現在の給水計画では1日受水量を最大 13,800 ㎥としていますが、置
賜広域水道の浄水能力には十分な余力があり、宮内配水池系の直近 5 年間の1日最大配水
量は 13,612 ㎥(平成 26 年度豪雨災害による、配水管破断漏水の発生時)であったことか
らも、将来の安定給水に不足はありません。
また、小滝浄水系については、平成 27 年度までに老朽化した給配水管の大部分を布設替
し、漏水による無収水量は大幅に減少しています。直近(平成 27 年度末現在)の水源余裕
率は 61.1%(1日最大取水量 90 ㎥、1 日最大配水量 35.0 ㎥)であり、将来の人口予測を
ふまえれば、充分な水量を確保しています。
(3)組織の見通し
現在の職員配置数は、事業規模が類似する他事業体と比較しても決して多くありません。
しかし、将来の水需要に拡大する見込みがない以上、水道インフラを安定的に維持するた
めには収益性の確保が不可欠であり、経費抑制の一環としての定員数の有り方ついて、今
後更に踏み込む必要があります。
限られた人員の中で滞りなく業務対応できるよう、計画的な人員配置と人材育成により
技術の継承を図りつつ、維持管理に支障を期さない範囲の業務委託化を進めることで定数
4
の更なる削減を図るなど、不断の経営努力が求められます。
(4)施設の見通し
昭和 42 年の合併により本市が誕生する以前、旧2町1村(赤湯町、宮内町、和郷村)は
それぞれ簡易水道による給水事業を展開していましたが、いずれも域内水源は湧水や地下
水に依存しており、必要水量の確保に苦慮していました。
合併後の昭和 40 年代後半、安定水源を最上川に求め、長井市小出地区に浄水場、市内宮
内地区に配水池を建設すると共に、浄水場と配水池間の送水管を整備し、配水池と旧町村
間を繋ぐことで、宮内配水池系の配水網が完成しました。また宮内配水池系とは別に、小
滝地区の水源から同地区内に給水を行う、小滝浄水系(旧小滝簡易水道)を整備しました。
昭和 50 年代以降、宅地開発に併せた新たな管渠の整備や、水道未敷設地域への給水拡張
により給水人口が増加したことに加え、生活習慣の変化に応じて水需要が拡大し、水量不
足を補うため県営置賜広域水道を一部受水することとして、新たな受水池を建設しました。
平成に入り、より安全な水を安定して給水するため、小滝浄水系においては平成9年度
に膜ろ過浄水設備を導入して細菌・微生物及び原虫などの混入を防ぐ対策を施し、宮内配
水池系においては平成 19 年度より最上川浄水場を廃止して全量受水に切り替え、耐震性を
備えた新配水池を建設し、現在に至ります。
このように、本市の水道は昭和 40 年代以降、分散する市街地と点在する集落を繋ぐよう
に整備され、山間集落への配水に要するポンプ施設や配水池を建設してきました。
水道施設のうち、水道管の法定耐用年数は 40 年と定められています。実際には埋設環境
により耐久性は変化し、また材質の向上も進んでいるので、一概に 40 年で使用できなくな
るわけではありませんが、一定の目安として、老朽化に起因する事故が生じる前に、計画
的に更新を図る必要があります。
更新にあたっては、将来の水需要を考慮しながら、過剰投資とならないよう適切な更新
規模を見極めなければなりません。また、資産取得時の社会状況によって、次のグラフの
とおり建設規模にばらつきがあることから、更新時期を計画的に調整して再投資額の平準
化を図り、将来世代の再々更新期に柔軟に対応できる余地を残す配慮が求められます。
現有資産(建物・構築物)の取得年度別建設原価(※国土交通省建設工事デフレーターにより現在価値に換算)
1,000,000
800,000
(
千
円
)
600,000
400,000
200,000
0
S9 S28 S33 S38 S43 S48 S53 S58 S63 H5 H10 H15 H20 H25
5
本計画においては、水道管などの構築物が安全に使用出来得る耐用限度の目安を、概ね
50 年と見積もり、50 年サイクルで順次更新をおこなうものとして将来の更新事業費を積算
しています。その結果、今後 30 年間で約 59 億 8 千万円(約 2 億円/年)の費用を要する見込
みであり、更新を要する配水管路は約 171.5km(全管路長の7割)となります。
50 年サイクルの施設更新に係る予測事業費と、更新を要する配水管路長
1,800,000
45,000
左 1,600,000
・
必
要 1,400,000
額
千 1,200,000
円
1,000,000
40,000
右
・
更
新
管
路
長
m
800,000
20,000
600,000
15,000
400,000
10,000
200,000
5,000
35,000
(
30,000
)
25,000
( )
0
必要額
更新管路長
0
H29~ H34~ H39~ H44~ H49~ H54~ H59~ H64~ H69~
(5)経営状況の見通し
超高齢化の進展と人口減少に伴い、水の需要が減少していくことは確実です。一方、事
業経費としては、計画当時の需要要望に基づいて設計された建設費用償還のために基本料
金が固定されている広域水道受水費や、施設の維持・業務運用に係る委託費を始めとした、
水需要の減少に関係なく発生する固定費を削減するには限度があり、また、施設更新に毎
年約2億円を要するため、財源とする企業債の利払いが増加するとともに、新設資産の減
価償却の発生に伴い、平成 40 年度を境に経常支出が上昇に転じます。
現行の料金を据え置いて試算した場合、平成 43 年度以降には経常損失(赤字)を計上す
る見込みです。
現行料金を据え置いた場合の経常収支の将来予測(平成 29 年度値は予算額ベース)
800,000
750,000
700,000
千
円 650,000
経常支出
経常収入(料金据え置き)
600,000
550,000
500,000
H28 H30 H32 H34 H36 H38 H40 H42 H44 H46 H48
6
第4 経営方針
(1)運営面「安全で安定した水の供給」
安全な水の供給は、もっとも重要な使命です。水道が住民生活と産業活動に欠かすこと
ができないライフラインであることを再認識し、水源水質の安定や水質管理強化などの施
策に取り組み、徹底した管理に努めます。
①水源の保全
置賜広域水道用水については、経営主体である県企業局と連携を図りながら、関係機関
に水源の保全を働きかけていきます。また、小滝浄水系の水源については、今後の維持の
ため、周辺環境の調査をしながら近隣住民の皆さんと協力・協働して水源水質の保全に取
り組みます。
②水質管理の強化
水質検査の透明性を確保するため、検査地点や検査項目などを定めた水質検査計画を毎
年策定し、将来、水道水質基準の強化や試験項目の追加があった場合は、これらに迅速に
対応します。検査計画に基づき、効果的な水質検査を実施し、水質監視に万全を期します。
③効率的・計画的な施設整備
今後、昭和40年代後半以降の給水拡張期に布設された管渠の更新期に入ることから、将
来の改築・更新サイクルの平準化を考慮しつつ、水需要の変化に対応し、災害に強い配水
網への改築・再整備に取り組みます。
④給水装置管理への関与と貯水槽水道適正管理の推進
給水装置はお客さま(所有者)の財産であることから、お客さまに適正に管理いただく
ため、水道事業者として判りやすい情報提供を行います。
(2)経営面「サービス水準の向上と健全な水道経営」
経営状況などの必要な情報について情報公開をすすめ、ニーズを把握して利便性の向上
を図り、利用者の信頼を得るよう努めます。
水需要の減少により、経営環境が厳しくなることは確実なことから、企業としての収益
性を重視した効率的な事業経営に努めます。
①利便性の向上
ライフスタイルの変化と料金収入の確実性を高めるため、口座振替と納入通知書による
コンビニエンスストアを含めた収納に加え、クレジットカード決済の導入やインターネッ
トを利用した諸手続きの電子化について検討を進め、一層の利便性向上を目指します。
②情報公開とお客さまニーズの把握
これまでも必要な情報について、市報やホームページに掲載するなど情報提供に努めて
7
きましたが、内容をさらに充実させるとともに、ソーシャルネットワークサービス(SN
S)等を活用した情報発信の強化に努めます。また、お客さまニーズの把握についても、
SNSの利活用を含め、調査・検討を進めます。
③情報管理の効率化
顧客情報や資産情報を管理している現行の電算システムは、上下水道課として組織統合
を図る以前に導入されたもので、システム構成上の輻輳により、これ以上の効率化が望め
ないことから、将来の窓口業務委託化も見据え、下水道事業と一元管理を可能とする統合
型システムへの更新を急ぎ、情報管理効率と需要予測精度の向上を図ります。
④業務委託の推進による経費削減
水需要は今後も減少することが確実であり、収益性を確保するためには、更なる効率化
による経費節減の努力が必要になります。定型業務の委託化に一層踏み込み、既に委託し
ているメーター検針業務に加え、窓口業務、各種料金収納業務、閉開栓業務などの委託に
ついても、しかるべき時期に実施し、職員数の適正化を図ります。
(3)施設面「災害に強い水道施設の構築」
水道事業には、地震や水害など災害発生時においても、生活用水の安定供給が求められ
ます。本市は平成 25 年7月と翌 26 年7月に2度の局地的豪雨に見舞われ、宮内配水池系
の橋梁添架管や送配水管の破断・流出による断水の発生など、水道施設にも大きな被害を
受けました。幸い、近隣市町の応援給水や仮設管の設置により断水は短時間で解消しまし
たが、近年例を見ない災害であったことから、この経験を踏まえ、橋梁添架管や送配水管
網の強化に取り組むと共に、一般行政部局や市内の水道関係企業と連携を密にし、万一の
際により迅速な対応が可能となるよう、これからも一層の対応力強化に努めるとともに、
被災経験を踏まえて、被害を最小限に抑える強靭な施設の整備に取り組みます。
①基幹施設と管路の耐震化
本市平野部は軟弱地盤が多いことから、水道施設の更新に当たっては耐震性などを考慮
し、自然災害に備えた施設の強靭化を進めます。
配水管の更新には、病院や避難施設など、災害時に給水が必要な施設への供給路から優
先して取り組みます。配水池、加圧ポンプ場などの基幹施設については、更新の際に適切
な耐震機能を有する設備を導入します。
②応急給水体制の充実と災害対応能力の向上
ハード面として、万一の大規模災害発生に備え、避難場所、医療機関等に水道水を供給
するための応急給水設備の充実を図るとともに、緊急資材備蓄庫を整備し、市内全域で不
足なく利用できるよう、給水拠点の構築を進めます。
ソフト面として、災害発生時の迅速な対応を可能とするため、対応マニュアルの更新を
怠らず、平時より訓練を重ね、対応能力強化に努めます。将来、業務の委託化が進んだ場
8
合においても、職員及び受託者の災害対応能力が低下することのないよう強化を図ります。
(4)環境面「環境保全と省エネルギー対策」
水道事業は、循環資源である『水』を利用する事業であり、自然界における水資源の循
環が健全に機能することに依存して成立しています。水循環に係る関係機関と連携し、水
源の環境保全に積極的に取り組みます。また、水道事業は浄水・送配水のポンプ設備など
に多くの電力を消費しています。機器更新の際には、エネルギー効率の良い機器や環境負
荷の低いシステムを導入することにより、省エネルギー化を推進します。
①漏水対策の徹底
漏水防止により有収率を向上させることは、収益性向上に付与することはもちろん、水
循環系への負荷を軽減する効果もあると言われています。漏水調査の実施により漏水しや
すい老朽管の早期補修と更新に努め、漏水対策に徹底して取り組みます。
②環境負荷の低減
水道施設更新の際は、回転数制御可能なポンプ設備を導入するなど、電気エネルギーの
削減に努めます。車両購入にあたっては低燃費・低公害車の導入、物品購入の際には普及
の進むLED照明をはじめとした省エネ機器への転換を図ると共に、グリーン購入(環境
省が提唱する、環境にやさしい購入手法)を進め、環境負荷の軽減に努めます。
第5 投資・財政計画(収支計画)
(1)収支計画
収益的収支及び資本的収支における見通しは別紙のとおりです。収支計画は平成 27 年度
の実績とともに、平成 28 年度の決算見込みを考慮しています。
水道料金収入は有収水量将来要予測値に基づき算定しています。
なお、今後の企業債借入期間と借入利率をそれぞれ 30 年、1.0%で固定し、平成 31 年度
以降の消費税額は 10%、同時期に窓口業務の委託化を想定、将来の人件費や物件費等の物
価上昇率は見込まず、置賜広域水道からの受水費は現在検討されている水準で推移するも
のとして算定しています。
人口減少に伴う水道収益の減収は顕著であるものの、利益剰余金(内部留保)を活用し、
起債借入を極力抑えることで、今後 10 年程度は現行の料金水準を維持できる見込みですが、
平成 40 年度を境に経常支出が上昇に転ずることから、平成 39 年度に 20 円/㎥の料金値
上げ、平成 44 年度に再度 20 円/㎥の料金値上げを想定しています。
(2)投資・財政計画(収支計画)の策定にあたっての説明
①投資について
市内の水道需要を満たす配水管網の整備は基本的に完了しています。
今後の施設投資は、老朽施設の更新を主とし、道路新設や宅地開発がなされる場合には
管路新設をおこないます。
9
老朽施設の更新については、市政施行後から昭和末期にかけての管路網接続や宅地開発
により整備された宮内配水池系の構築物が順次更新の目安とする 50 年に達することから、
これらの布設替に取り組みます。また、小滝浄水系の施設について、平成 23 年度から 27
年度にかけて管路をほぼ更新済みですが、部分的に未更新の施設が残されていることから、
損耗度合いを勘案しながら適切な時期に更新を図ります。
構築物の更新に要する額は、更新対象の資産取得費を現在の貨幣価値に換算した約 31 億
3千万円(更新配水管路延長 99.6km)を見込みます。これを 20 年で均等割りにした1年
あたり約1億6千万円(管路長約 5km 相当)と、管路新設や機械設備、窓口システム、車
両等の更新、その他不測の事態に備える費用4千万円を加えた合計2億円を単年度の投資
上限として、災害耐性の強い施設への更新を図ります。
なお、施設更新の進捗状況をみながら、総投資額の範囲内において、宮内地区に既に取
得済みの資材備蓄用地(2,755 ㎡)に、災害に備える資材備蓄庫を整備します。
②財源について
投資財源は企業債発行(借金)と損益勘定留保資金、消費税及び地方消費税資本的収支
調整額、利益剰余金の取り崩しにより賄います。平成 27 年度末時点において利益剰余金と
して 9 億 8,846 万円の内部留保がありますが、このうち約2億円は、平成 28 年度から 30
年度にかけて、旧浄水場の解体及び残存送水管のモルタル注入処理費に用い、残りを今後
の施設更新と起債償還の原資として活用します。
企業債は極力発行額を抑え、将来負担となる償還利払いの軽減を図ることで経費を抑制
し、利益率の確保に努めます。起債にあたっては固定金利・半年賦元利均等償還とし、償
還年数を原則 30 年以内とします。
企業債の推移予測
120,000
1,600,000
左
・ 100,000
借
入
償 80,000
還
額
千
円 60,000
1,400,000
1,200,000
1,000,000
(
800,000
)
企業債残高
(既借入分)
新規借入額
600,000
40,000
400,000
(
右
・
残
高
千
円
企業債残高
(新規借入分)
20,000
)
200,000
0
0
H28
H31
H34
H37
H40
10
H43
H46
償還額
③資金管理・調達に関する事項
投資に要する高額資金については、公的資金(財政融資資金、地方公共団体金融機構)
より融資を受けます。
④投資以外の経費について
赤字経営を回避するために、経費節減に不断の努力で臨みますが、業務委託費や回線使
用料をはじめとする通信費をはじめ、固定経費の圧縮には限界があります。水道インフラ
を良好に維持するためには、人口減少に伴う水需要の減少による収益低下を、経費節減だ
けで吸収することは不可能です。企業債の借入れで当面の資金調達はできても、それは負
担の先送りに過ぎません。
人口減少が一層進む将来世代に水道インフラを引き継ぐ上で、必要以上の負担を付け回
さないためにも、不断の経営努力を重ねつつ経営状況の情報公開を進め、最小限の料金改
定について市民の理解を得る必要があります。
第6 効率化・経営健全化のための抜本的な検討
これから本市の水道事業が抱える問題は、水道利用者が減少していく中、現存する水道
インフラを如何に安定的かつ長期的に維持するか、という難問です。
安定した事業経営を続けるためには収支の黒字を維持しなければなりませんが、水道料
金の改正による黒字化は、水需要の上昇転換が望めない以上、一時しのぎに過ぎません。
水道インフラを無事継承していくために、ある程度安定した経営が見込まれる本計画期
間内に、将来の事業経営の有り様について充分な研究を重ね、方向性を定めなければなり
ません。
(1)組織等に関する事項
本計画期間内に予定している窓口業務の委託化によって、組織体制のスリム化を図り
ますが、危機管理対応力を担保しつつ、更なるスリム化に踏み込むことが可能であるか、
引き続き個々の職員の技術力向上と市内水道事業者との連携強化に努めながら、今後の
ICT技術の発展を踏まえつつ、検討を重ねます。
(2)広域化に関する事項
人口減少に伴う水需要の縮小は、長期的にみれば、自治体単位での独立した事業継続
が人的にも資金的にも困難になることが明らかです。同様に認識されている近隣市町と
の情報交換や業務改善策の共同研究に取り組み、広域事業体としての統合も視野に、協
力関係の強化に努めます。
(3)民間の資金・ノウハウの活用に関する事項
定型業務の民間委託化を視野に、業務実施状況の評価を行い、委託可能範囲の選定に
ついて検討を進めます。また、民間事業者との連携(PPP“パブリックプライベート
パートナーシップ”/PFI“プライベート・ファイナンス・イニシアチブ”
)の適用可
11
能性について、引き続き研究を進めます。
(4)その他重点事項
給水人口の減少は、水道網の利用率が低下することであり、水道利用者1人当たりの
維持負担が増大してゆくことに他なりません。
水道施設を持続的に維持・運用していくためにも、施設利用の効率化を図るダウンサ
イジングについて、行政と共に、本市の将来像を見据えた長期的ビジョンを持って検討
します。
平成 27 年度の値を1とした、給水人口当たりの負担率推移(平成 29 年度値は予算額ベース)
1.35
1.3
1.25
1.2
管路長/給水人口
1.15
経常費用/給水人口
1.1
1.05
1
H27 H29 H31 H33 H35 H37 H39 H41 H43 H45 H47
第7 経営戦略の事後検証、更新等に関する事項
本経営戦略は、各年度の決算結果に基づき、投資計画の進捗状況、財務状況、人口推移の
確定値を踏まえて将来の経営見通しの修正を図り、更新した内容を改めて公表します。
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